特別養護老人ホームの介護者の動きに関する調査研究 -釧路KKホームと

特別養護老人ホームの介護者の動きに関する調査研究
釧路 KK ホームと釧路 SS ホームについて(ユニット型)
指導教員
1.研究目的
特別養護老人ホームで働く介護職員について、その労働
条件や介護負担を知るために、職員に対してのヒアリング
や歩数計調査、アンケート調査を行い実態を明らかにする。
2.研究方法と施設概要
調査対象は釧路 KKホームと釧路 SSホームとし、介護職
員に対してヒアリング調査、一週間の動きを歩数計で計測
を行い、介護職員を対象とした動線調査を実施した。
3.釧路 KK ホームの調査結果
3-1 建物概要とユニットケア
介護形態はユニットケアで、基本的には数人の介護職員
が 1つのユニットを介護している。1ユニットに 10人の入
居者が生活しており、全個室により家庭的な雰囲気の中で、
一人一人が自由に暮らしながら個別のケアと家族の想いを
暮らしの中に生かした環境づくりを進めている。
個室化を実現することにより、集団生活において個別性
を発揮することが出来、これにより、施設内集団における
コミュニケーションを確立し、感情の開放、生活の自律性
を得てさらに自律性の向上に繋がるといえる。
3-2 ヒアリング調査の結果
施設の設備については開設されて 2 年ほどしかたってお
らず、特に大きな問題はないということであった。浴室に
は取り外しのできる手すりを使用しているなどの工夫がさ
れていた。しかし居室に設置されているトイレがやや狭く、
車椅子での使用は車椅子がトイレ内に入りきらず、介助が
大変になってしまうとの意見があった。
大友
惇平
依田
有康
同室での食事であったり、介助なしで食べてる人もいたた
め、共同室内の細々とした動きはあったが大きい動線はな
かった。
逆に昼食時間が終わり14:00~15:00ぐらいになると、
掃除を始めたり入居者をお風呂に入れてあげたりなどで介
護者の動線は増えていた。
表2.KK ホーム施設概要
釧路 KK ホーム外観
開設年月日
構造
延床面積
ユニット数
介護員数
平均年齢
入居者人数定員
入居者平均年齢
入居者平均介護度
平成17年 9月
RC造2階建
7329.23㎡
10(11)個
53名
33.2歳
90(110)名
85歳
4.4
図1.KK ホームの1階ユニット部平面図
表1.ヒアリングの結果一覧
居室(個室)
浴室
トイレ(共用)
建物全体
居室の広さとしては十 広さとしては十分で 広さ、数、位置ともに 施 設 が 広 い た め
ある。特殊浴室も完 よい。
分である。
水・光熱費が かか
しかし居室内のトイレが 備されている。個別 汚物処理室との連携 る。
やや狭く車いすでの使 浴室にもリフト がつ も問題はない。
用 は 介 護 が 大 変 で あ けられている。
28000
(歩)
24000
20000
る。
16000
3-3 歩数計調査
図2の勤務体系別で見た歩数である。その歩数は全体的
に 1万歩を超える結果となった。
図3は年代別平均歩数は、20代から 50代まで平均歩数を
比較した場合、年代があがるにつれて平均歩数は下がった
数値となった。これは勤務年数による経験と知識が、入居
者の起こすパターンをいち早く察知し、無駄な動きのない
スムーズな対応を行っていると考えられる。
3-4 動線調査
あるユニット内において、介護者・入居者の動線を調査
した。比較的、食事の時間 12:00~1:00は、ほとんどの人が共
12000
8000
4000
0
早番
日勤
遅番1
勤務状況による平均歩数一覧
早番
13629歩
日勤
13880歩
遅番1
13457歩
遅番2
11269歩
夜勤
10455歩
遅番2
夜勤
早番
7:00∼16:00
日勤
10:00∼19:00
遅番 1
12:00∼21:00
遅番 2
13:00∼22:00
夜勤
22:00∼7:00
図2.勤務体系別に見た平均歩数
16000
14000
12215
12073
11974
12000
10478
10000
8000
6000
4000
2000
0
20代
30代
40代
分ではトイレから汚物室までの連携、浴室のリフト付など、
介護者・入居者、共に使いやすい設備が整っていた。
歩数計調査においては KKホームは歩数計が増えた分、ユ
ニットの外においての活動が多く、コミュニティーが豊富
にあるのではないかと感じられた。逆に SSホームにおいて
は本来のユニット内だけにおける歩数が顕著に現れている
のではないかと思われる。
50代
図3.KK ホームの年代別に見た平均歩数
4.釧路 SS ホームの調査結果
4-1 建物概要
介護形態は、KKホームと同じ 1ユニットに 10人の入居者
が生活しており、数人の介護職員が1つのユニットを介護
している。
4-2 ヒアリング調査
平成 19年の 4月に開設したばかりであり、まだ特に大き
な問題は出てこなかった。居室では死角になってしまうと
ころがあり、転落の危険性があるので、床にはクッション
性のある材質などを使うなどの工夫がされていた。しかし
KKホームと同様にトイレの狭いという意見が出てきて、車
椅子でのトイレの使用は狭く介助が大変とのこと。
居室(個室)
浴室
トイレ(共用)
居室の広さは十分で 広さとしても十分で 面積がやや狭く、
ある。窓が普通より低 ある。特殊浴槽も 車椅子での使用
く設計されている
きちんと設備され はギリギリである。
ている。
表4.SS ホーム施設概要
釧路 SS ホーム外観
開設年月日
構造
延床面積
ユニット数
介護員数
平均年齢
入居者人数定員
入居者平均年齢
入居者平均介護度
平成19年 4月
RC造2階建
3411.49㎡
6個
39名
37.7歳
50(60)名
85.5歳
3.8
建物全体
南西に設置されて
いる非常階段の通
路の窓が結露して
しまう。
表3.ヒアリングの結果一覧
4-3 歩数計調査
図4は勤務形態別にみた平均歩数である。全体的に約
7000歩の数値となった。
今回のSSホームでの歩数計調査は、
調査人数(6人)が少ないためデータが取れなかった。
5.KK ホームと SS ホームの歩数計の比較
図2と図5の KKホームと SSホームとの平均歩数の違い
としては夜勤、遅番2には大きな差は現れなかったが早番、
日勤、遅番1では 1.5倍近くの平均歩数の差が現れた。これ
らの原因としては2つ考えられ、1つは入居者の生活パター
ンの違いである。SS ホームでは入居者が共同生活室での生
活が多いのに対して、KKホームでは個室・共同生活室を往
来した生活パターンが多く占めている。
このため KKホーム
では移動する都度、車椅子を押したり、個室などをのぞい
て管理しなくてはいけないため歩数が増加してしまう。
2つ目としては施設の大きさである。SSホームが 3411㎡
に対して KK ホームは 7329 ㎡と2倍以上の面積である。そ
のためユニットから余暇活動などのために、コミュニティ
ースペースまでの移動等は動線がどうしても長くなってし
まい、歩数の増加に繋がっていると思われる。
6.まとめ
ヒアリングの調査によって、2つの施設ともトイレの狭さ
に困っていた。これは車椅子での使用での最低限の寸法で
しか設計されていないからであると思われる。その他の部
図4.SS ホーム2階ユニット部平面図
28000
(歩)
24000
20000
16000
12000
8000
4000
0
早番1
早番2
勤務状況による平均歩数
早番1
7543歩
早番2
7251歩
遅番1
5365歩
遅番2
8359歩
夜勤
7107歩
遅番1
遅番2
早番1
早番2
日勤
遅番1
遅番2
夜勤
図5.勤務体系別にみた平均歩数
夜勤
7:00∼16:00
8:00∼17:00
9:00∼18:00
12:00∼21:00
14:00∼23:00
23:00∼9:00