4Pa124-144 - 分子科学会

4Pa124
磁気泳動による金属イオンの分離
(広島大院理 1、分子研 2)
○知恵賢二郎 1、藤原昌夫 2、藤原好恒 1、谷本能文 2
【序】 我々は磁気力を利用したイオンの磁気分離の可能性を探っている。磁気力を
利用した物質分離は新しい分離技術として最近特に興味が持たれている。我々はこれ
まで、反磁性の Ag+イオンと常磁性の Cu2+イオンを磁気泳動によって分離に成功し、
互いに常磁性である Fe3+イオンと Co2+イオンの分離にも成功した。その結果、磁化
率と移動距離は比例関係にならない事が解った。この矛盾を解明するために、磁場を
印加しない条件で拡散を観測し、金属イオンのシリカゲルへの吸着の度合いを調査し
た。また、シリカゲル上を磁気力を用いて金属イオンを泳動する方法と、薄層クロマ
トグラフィーによって展開する方法との違いも調査したので報告する。
【方法】使用した超伝導磁石は、水平のボアチューブ(内径 50 mm、長さ 374 mm)
を持ち、強度は中心で 8 T、強度×勾配は中心から 65 mm 離れた点で 410 T2 m-1 で
ある。水 40 ml で飽和したシリカゲル 25 g(ワコーゲル C-200)をガラス容器(長さ
390 mm × 幅 40 mm × 高さ 13 mm)に入れ、Fe3+イオンと Co2+イオン各々1 mol
dm-3 を含む水溶液 50 μl をスポットした。スポット点が磁場中心から 100 mm 離れ
た位置になるようにガラス容器を超伝導磁石中に置き、8 T、0 T それぞれの磁場
で 4 時間静置した後、ガラス容器を取り出して 0.5 %オキシン-エタノール溶液で Fe3+
イオンを呈色、アンモニア水溶液で Co2+イオンを呈色し、デジタルカメラで撮影した。
画像をパーソナルコンピューターに取り込み、各イオンの濃度分布を解析した。
薄層クロマトグラフィーには分取用シリカゲルプレート(メルク、厚さ 2 mm)を
用いた。プレートを長さ 180 mm × 幅 20 mm にカットした後、下から 50 mm の
点に金属イオン溶液 10 μl をスポットし、水 6 ml を用い、展開槽で 45 分間展開し
た。磁気泳動の場合と同様に、プレートを呈色し、濃度分布を解析した。
【結果と考察】 Fe3+イオンと Co2+イオンの混合溶液をシリカゲルにスポットして磁
場中に置くことによって、Fe3+イオンはスポット点から 0−50 mm の範囲に分布し、
Co2+イオンはスポット点から 40−80 mm の範囲に分布することが確認された。すな
わち、スポット点より<45 mm の領域では Fe3+イオンが 82 %の純度で分離でき、
スポット点より>45 mm の領域では Co2+イオンが 82 %の純度で分離できた。
また、自然拡散を行い、半値幅を求めたところ、Co2+イオンの場合は 29 mm 拡散
したのに対し、Fe3+イオンでは 23 mm しか拡散しなかった。これは、Fe3+イオンの
方が Co2+イオンよりも強くシリカゲルに強く吸着されることを意味している。
Fe3+イオンと Co2+イオンの分離実験より、Fe3+イオン(14600 × 10-6 cm3 mol-1)
が磁化率の小さい Co2+イオン(9500 × 10-6 cm3 mol-1)よりも移動距離が短いとい
う結果が得られたが、これは、Fe3+イオンのシリカゲルへの吸着が Co2+イオンのシリ
カゲルへの吸着よりも強いために、本来なら磁気力が強く働いて移動距離は大きくな
るはずが、シリカゲルへの吸着により抑えられたためである、ということが解った。
つまり、磁化率の差が大きく離れた常磁性イオン同士に磁気力によって分離を試みて
も、シリカゲルへの吸着が同程度であれば、両方のイオンの集団が混合したまま移動
して分離が難しいことを意味している。このことは、反磁性イオンと常磁性イオンの
混合溶液それ自体を勾配磁場中に置いても、イオンの分離は起こらない実験事実から
も支持される。
また、薄層クロマトグラフィーを行った結果、全ての金属イオンがテーリングを伴
いながら移動することが解った。磁気力による泳動はテーリングを伴わないため、分
離に有用であると言える。
250
C o++
濃度
200
150
Fe+++
100
50
0
-50
0
50
移動距離(mm)
100
150
図 1 磁気力による Fe3+と Co2+の分離
140
Fe+++
120
濃度
100
80
Co++
60
40
20
-50
-25
0
拡散距離(mm)
25
図 2 Fe3+と Co2+のシリカゲルへの吸着
50
4Pa125
シアノ基を含む陰イオンを用いた EMI 塩:作成・構造・物性
(京大院理・京大低物セ)○藤井順一、吉田幸大、室井孝之、大塚晃弘、斎藤軍治
【序】
5
室温溶融塩(イオン性液体)は新たな反応溶媒や電解溶媒
という観点などから基礎および応用面で注目されている。その中で
も1-エチル-3-メチルイミダゾリウム(EMI)陽イオンを含む溶融塩
は、広い電位窓、不揮発性、高イオン伝導性といった特徴を持ち、
4
N
8
7
N
3
1
2
6
EMI 陽イオン
近年さかんに研究されている。本研究では高イオン伝導性 EMI 塩
の作成を目的に、シアノ基を含む4種の陰イオンとの塩を作成し、その構造および物性を調
べた。
【作成】
[EMI]X (X = N(CN)2 , C(CN)3)は、[EMI]I と AgX の複分解により作成した。得
ら れ た 塩 は 共 に 無 色 透 明 の 室 温 溶 融 塩 で 融 点 は そ れ ぞ れ –12 ℃ 、 –11 ℃ で あ る 。 な お
[EMI][N(CN)2]は既知物質(1)である。
[EMI][Ag(CN)2]は[EMI]I と AgCN を反応させることで得られた。得られた粗結晶をアセ
トニトリル/酢酸エチル混合溶媒中で再結晶し、無色透明の針状結晶を得た。融点は 73℃で
ある。
[EMI][Au(CN)2]は[EMI]Cl と K[Au(CN)2]の複分解により作成した。得られた粗結晶を酢
酸エチル中で再結晶し、無色透明の針状結晶を得た。融点は 60℃である。
【結果と考察】
X 線回折測定によって
[EMI][Ag(CN)2]の結晶構造を決定した。
晶系は斜方晶で空間群は Pbca、格子定数
は a = 6.4370(2) Å, b = 17.745(1) Å, c =
19.076(1) Å であり、結晶学的に独立な分
子は1分子である。EMI 陽イオンはエチ
ル基とイミダゾリウム環間の C–H··π相
互作用によってジグザグ鎖を形成してい
る(図1)。また EMI と Ag(CN)2 間におい
て、van der Waals 半径和(3.75 Å)よりも短
い C(2)–H··N 距離(3.19 Å)が確認され(図
2)、水素結合の存在を示唆している。一
方、直線型 Ag(CN)2 陰イオンは直 接
Ag••Ag 間相互作用(3.226 Å)により一
図1 EMI 陽イオンによる一次元ジグザグ鎖
破線は C–H··π相互作用を示している。
次元鎖を形成しており、隣接する Ag(CN)2 陰イオンは互いに約 90°回転している。これは van
der Waals 半径和(3.44 Å)よりも短く、Ag(CN)2 間でも分子間相互作用が存在することを示唆し
ている。今回作成した N(CN)2, C(CN)3 塩と比較して[EMI][Ag(CN)2]の融点が高いのは、主に
この Ag••Ag 間の分子間相互作用によるものと考えられる。なお当日は[EMI][Au(CN)2]の結
晶構造についても報告する予定である。
図2 EMI と Ag(CN)2 間の相互作用
点線は C(2)–H··N 間水素結合を示
し、破線は van der Waals 半径和
より短い C(2)··N 間相互作用を示す。
[EMI][N(CN)2]と[EMI][C(CN)3]の 22°C での粘性(η)はそれぞれ 17 cP および 18 cP で、
20°C
でのイオン伝導度(σ)はそれぞれ 2.7×10–2 S cm–1 および 1.8×10–2 S cm–1 であった。これらの
値は非 1:1 EMI 塩で最も高いイオン伝導性を示す[EMI]F·2.3(HF) (25°C で伝導性は
1.0×10–1 S cm–1、粘性は 4.9 cP (2))よりは小さな値であるが、1:1 EMI 塩で最も高いイオン伝
導性を示す[EMI][AlCl4](25°C で伝導性は 2.3×10–2 S cm–1、粘性は 18 cP (3))と近い値を示し
ている。これまでにイオン伝導性および粘性が報告されている 11 種の室温溶融 EMI 塩に加
え、今回得られた N(CN)2, C(CN)3 塩のイオン伝導性(σ)の値を(Mη)–1(M は式量)に対して
プロットすると図3のようになり、ほぼ直線に乗ることがわかった(σ [S cm–1] = 86.3×(Mη)–1
[g–1 mol cP–1], r = 0.993)。したがって、これらの塩の伝導メカニズムは類似していると考え
られる。
図3
室温以下の融点を持つ[EMI]X 塩
のσの(Mη)–1 に対するプロット(20–26°C)
X = (a) F·2.3(HF), (b) N(CN)2, (c) AlCl4,
(d) C(CN)3, (e) BF4, (f) CuCl2, (g)
CF3CO2, (h)
CF3SO3, (i) NbF6, (j)
(CF3SO2)2N, (k) TaF6, (l) (C2F5SO2)2N,
(m) CH3CO2
●
今回得られた N(CN)2 塩, C(CN)3 塩
〇
これまでにデータが報告されている
11 種の室温溶融 EMI 塩(1:1 塩)
△
[EMI]F·2.3(HF)
(非 1:1 塩)
参考文献
(1) MacFarlane, D. R.; Golding, J.; Forsyth, S.; Forsyth, M.; Deacon, G. B. Chem.
Commun. 2001, 1430.
(2) Hagiwara, R.; Hirashige, T.; Tsuda, T.; Ito, Y. J. Electrochem. Soc. 2002, 149, D1.
(3) Fannin, A. A.; Floreani, D. A.; King, L. A.; Landers, J. S.; Piersma, B. J.; Stech, D. J.;
Vaughn, R. L.; Wilkes, J. S.; Williams, J. L. J. Phys. Chem. 1984, 88, 2614.
4Pa126
水素結合型電荷移動錯体の単結晶−単結晶転移と
電子構造変化
(阪大院理 1、九大院理 2、埼玉大分析セ 3)
○久保孝史 1、中谷智也 1、北川 宏 2、池内賢郎 1、齋藤一弥 1、徂徠道夫 1、齋藤英樹 3、中筋一弘 1
【序】プロトンと電子の共役移動は、生化学や電気化学、触媒反応の分野において重要な機構の一つ
となっている。我々は水素結合型電荷移動錯体において、プロトンと電子の協同的な動きが錯体の固
体物性にどの様な影響を与えるか調べている。固相状態のプロトンと電子の連動現象の研究では、キ
ンヒドロン錯体が代表的である。プロトン・電子ドナーであるハイドロキノンと両アクセプターであ
るベンゾキノンからなるキンヒドロン錯体は、高圧下でプロトンと電子が移動した中性ラジカル相
(PET¹state)へと転移することが知られている。我々は、プロトン・電子ドナーとして o-アミノチ
オフェノラート金属錯体を、両アクセプターとして TCNQ を選び、両者から得られる電荷移動錯体の
性質を調べることにした。
【結果と考察】ジメトキシ o-アミノチオフェノラート白金錯体(D
D )と TCNQ(A
A )の電荷移動錯体の
単結晶化、構造解析及び電導度測定の結果は既に報告している。この CT 錯体は結晶溶媒として DMF
を D :A
A :DMF¹=¹3:3:4 の割合で含んでいる。D
D と A は交互積層様式であり、DMF は D の NH と水素結合し
ているものと、空隙を埋めているものの二種類が存在していた。この結晶は室温下においては DMF を
失うことなく、数ヶ月間安定に存在する。この CT 錯体の電導度は、DMF が失われる温度付近で急激に
向上しており、何らかの結晶構造変化が示唆された。そこで、温度を変えながら X 線結晶構造解析を
行ったところ、加熱の条件により二種類の転移様式が存在し、D
D A もしくは D DD DA AA A の積層様式に転
移することが明らかとなった。
D A 様式に転移する場合は、結晶が微結晶状態にあり、しかも減圧もしくは窒素ガス吹き付けの様
な DMF が抜け出しやすい条件にある
ため、より低温で転移が起こる。DD
と A は DMF が存在していた空間を埋
H3CO
H
N
H3CO
S
S
OCH3
NC
CN
N
H
OCH3
NC
CN
Pt
D
A
H3C
N
H3C
H
O
DMF
めるような形で水素結合シート内を
D:A:DMF = 3:3:4
(DA 交互積層)
移動しており、DD の NH は全て TCNQ
と水素結合を形成していた。
一方 D DD DA AA A 様式に転移する場
結晶状態
常圧
115℃
微結晶状態
減圧(or(窒素吹付
85℃
合は、結晶が比較的大きい状態にあ
り、常圧下であるため DMF が抜けに
D:A = 1:1
(DA 交互積層)
D:A = 1:1
((DDDDAAAA 四量体交互積層)
くく、より高温で転移が起こると考
えられる。水素結合シート内では、
D A 様式同様 D と A は DMF が存在し
ていた空間を埋めるような形で移動
結晶状態
常圧
室温
D:A:AN = 1:1:2
(DA 交互積層)
CH3CN
AN
しており、D
D の NH は全て TCNQ と水素結合を形成していた。分子積層方向は非常に珍しい構造を取っ
ており、D
D の四量体と A の四量体が交互積層カラムを形成していた。D
D の四量体中では、中央の二分
子が Pt−Pt 結合を形成しており、モノカチオンラジカルダイマーとなっていることが示唆された。
転移後の CT 錯体の IR では、3290¹cm-1 と 3200cm-1 に二種類の N-H 伸縮振動が確認されており、D
D には
中性状態とモノカチオン状態の二種類が存在していることがわかった。つまり四量体の内、中央の二
分子がモノカチオン状態、端の二分子が中性状態にあると考えられる。電子スペクトルでは 3200¹cm-1
を中心に A-band が観測され、DD DD D もしくは A AA A 四量体中の分子間遷移が観測されたものと考えられ
る。電導度の急激な向上は、この部分電荷移動状態の出現が原因であると思われる。
D と A をアセトニトリル(AN)から再結晶すると、D
D :A
A :AN¹=¹1:1:2 の単結晶が得られた。X線構
造解析の結果、アセトニトリルは水素結合をしておらず空間を埋めているのみであった。そのため、
この結晶は常圧下室温に於いても結晶溶媒を失う。この結晶も溶媒の消失に伴い転移を起こし、転移
後の構造は D :A
A :DMF¹=¹3:3:4 結晶で見られた D A 様式のものと同一であった。転移後の CT 錯体には、
A-band が観測されなかった。IR は 3290cm-1 に一種類の N-H 伸縮振動が観測されたのみで、転移後の CT
錯体は中性錯体であることがわかった。
¹¹¹D :A
A :DMF¹=¹3:3:4
D :A
A ¹=¹1:1(D
D A 型)
D :A
A ¹=¹1:1(D
D 4A 4 型)
CT 錯体結晶構造。上段:水素結合シート、下段:積層カラム
¹
:¹DD
:¹A
A
:¹DMF
4Pa127
β-(BEDT-TTF)2PF6、AsF6およびSbF6のESR
(総研大・分子研)○前田圭介、中村敏和
【序】
近年、有機導体の電荷分離状態の理解の進展により、金属-絶縁体転移の発現機構が
再検討されている。(BEDT-TTF)2PF6 、AsF6およびSbF6 は室温直下で金属-絶縁体転移を
起こす。その機構はこれまで2kF CDW転移により説明されていたが、Nogamiらによる超格
子構造の解析により、電荷変調が非常に大きく、イオン性分子が強く二量化していることが
見出された1)。さらに、PF6塩の相転移については、Dingらによるラマンスペクトル測定により、
ドナー分子の電荷は0.2+と0.8+へ分離することが示された 2) 。これらの結果は、これまで
CDWによって説明されてきた転移機構に疑問を投げかけるものである。我々はESRを用い
てこれらの系の物性について詳細な測定を行い、絶縁体相の電子状態について検討して
いる。本発表では、SQUIDによる磁化率測定の結果もあわせ低温電子状態について議論
を行う。
【方法】
本研究で用いたBEDT-TTF塩の単結晶は既報に従い作成した。PF6塩およびAsF6塩はそ
れぞれ[CH3(CH2)3]4NPF6および[CH3(CH2)3]4NAsF6を用いて、1,1,2-トリクロロエタン(TCE)溶
液中での電解酸化により作成した。SbF6塩はKSbF6および18-6クラウンエーテルを用いて
TCE溶液中での電解酸化により作成した。
ESR測定はBruker EPR-300Eを用いて行った。照射マイクロ波はX-バンドを用いた。キ
ャビティは円筒型キャビティTE011を用いた。
【結果】
1. (BEDT-TTF)2PF6のESR
ESR積分強度から見積もったスピン磁化率は、293Kで相転移と思われる急激な減少を
示し、その挙動はSenadeeraらのSQUID測定3)から見積もったスピン磁化率の挙動とほぼ一
致した。290-110Kの領域ではギャップ的ではなく直線的に減少し、110K以下でほぼ消失し
た。
25
350
300
(a)
20
2.012
(b)
2.01
250
200
150
(c)
15
2.008
10
2.006
5
2.004
0
150 170 190 210 230 250 270 290 310
T(K)
2.002
150 170 190 210 230 250 270 290 310
T(K)
100
50
0
150 170 190 210 230 250 270 290 310
T(K)
Fig. 1
(BEDT-TTF)2PF6 の a 軸(△)、b 軸(○)および c 軸(◇)についての ESR スペクトルの
(a)積分強度; (b)線幅; (c)g 値.
ESR線幅ΔHppは、室温以上の領域においては温度の低下とともに減少し、金属状態で
あることを支持している。磁化率の減少する293K近傍でΔHppは急激に減少しており、スピ
ン系のダイナミクスが大きく変化していることがわかる。260-180Kの領域でΔHppがほとんど
変化しないのは、電子スピンが各サイトに局在しているためと考えられる。また、ΔHppは高
温領域ではc軸方向(積層方向)成分が最小であったが、180K以下ではa軸方向(分子の短
軸方向)成分が最小となり、異方性の変化が観測された。このような線幅の振る舞いは電
荷分離転移ではしばしば観測されるものである。
2. (BEDT-TTF)2AsF6のESR
スピン磁化率は、295K付近で相転移と思われる、急激な減少が見られた。磁化率の温
度依存性はPF6塩のものとよく似ている。
線幅ΔHppは295K付近で急激に減少し、280-160Kの領域ではほとんど変化しなかった。
異方性についてはPF6 塩の場合と同様に、a軸およびc軸方向成分の間で、260Kで変化し
た。
40
400
300
30
250
25
200
20
150
15
100
10
50
5
0
100
150
200
250
300
0
100
T(K)
Fig. 2
(b)
35
(a)
350
2.012
(c)
2.01
2.008
2.006
2.004
150
200 250
T(K)
300
2.002
100
150
200 250
T(K)
300
(BEDT-TTF)2AsF6 の a 軸(△)、b 軸(○)および c 軸(◇)についての ESR スペクトルの
(a)積分強度; (b)線幅; (c)g 値.
これらの室温近傍の異常は電荷分離転移を強く示唆している。しかし、θ型BEDT-TTF
塩や八面体アニオンを持つTMTTF系に見られる電荷分離転移と異なる点として、相転移温
度以下でも磁化率が大きく変化し、線幅も緩やかな変化を見せていることが挙げられる。ま
た、転移温度がカウンターアニオンの種類には強く依存しないこともこの系に特徴的である。
以上の点から、この系の相転移は電子相関のみでなく、いくつかの要因が複合した結果で
ある可能性がある。その物性については現在検討中であるが、さらに詳細なESRの解析に
より解明できるのではないかと期待している。
(BEDT-TTF)2SbF6のESRは現在測定中であり、そのデータもあわせて当日議論を行う。
1) Y. Nogami and T. Mori, J. Phys. IV, 12, 233(2002)
2) Y. Ding, and H. Tajima, Syn. Met., 135, 599(2003).
3) G. K. R. Senadeera, T. Kawamoto, T. Mori, J. Yamamura, and T. Enoki, J. Phys. Soc. Jpn.,
67, 4193(1998).
4Pa128
ポルフィリン分子ワイヤーの
量子輸送過程に関する理論的研究
(九大先導研)○濱山慎也、近藤正一、多田朋史、吉澤一成
【序】ポルフィリン分子は生体内において非常に重要な役割を担っている分子
であることはもちろん、単一分子デバイスとしてもその利用が期待されている
分子である。整流装置、メモリー素子、導電性ワイヤーなど、ポルフィリン分
子のナノサイエンスにおける期待は非常に大きい。特に、ポルフィリン分子を
含んだナノスケールの分子ワイヤーは現在までにいくつもの種類が合成されて
おり(例えば、[✤,✥])、その導電性に関する研究の進展が待たれている。そこ
で、ポルフィリン分子ワイヤーの量子輸送過程を理論的に検討し、その導電性
ワイヤーとしての有効性に関して研究を行った。
【方法】分子ワイヤーの導電性の検討にはランダウアのモデルを用いた。ラン
ダウアモデルとは、散乱体(分子など)が理想的な導線を介して無限の電子溜
めに接続されている回路におけるコンダクタンスを与えるものであり、散乱体
による電子の透過確率 ✻ が回路のコンダクタンス ❈ に比例している、というも
のである(式1)。
2e 2
g=
T ( EF )
(1)
h
ここで ✲✳ はフェルミエネルギーを意味している。透過確率 ✻ は非平衡グリー
ン関数を利用することで得られることが知られており、非常にシンプルな一次
元系において ✰❂❍ol❊ らが導出した透過確率の式を拡張して計算を行った。今回、
亜鉛ポルフィリンがアセチレン分子を介して一次元的に配列した分子ワイヤー
(図1)を対象とし、電極には金を用いた。金電極にはチオール分子がよく吸
着するということを考慮し、ポルフィリン分子ワイヤーの両末端を硫黄でター
ミネイトさせることで電極との強い結合状態を保ったままでの計算を行った。
ポルフィリン分子ワイヤーの構造最適化には ✷M✦ 法を用い、分子の電子状態
計算には ✯✦L❀✷/L❂nl✥✱Z を用いた。
N
S
N
N
Zn
N
N
N
Zn
N
N
N
N
Zn
N
N
N
N
Zn
N
N
N
S
Zn
N
図1亜鉛ポルフィリンとアセチレンからなる分子ワイヤー
N
N
【結果】亜鉛ポルフィリンを1分子だけ含む単量体から亜鉛ポルフィリンを5
分子含む5量体(図1に対応)までの系についてその透過確率を計算した(図
2)。フェルミエネルギーにおける透過確率は分子ワイヤーの長さが長くなる
につれて指数関数的に減少していく、という量子細線の電気伝導における典型
的な結果が得られた。このコンダクタンスの指数関数的減少を式で表すと、次
式のようになる。
g = g0 e − γL
単量体
二量体
三量体
四量体
五量体
ここで、❈✣ は接触抵抗の逆
数、L は分子ワイヤーの長
さ、 γ は減衰因子と呼ばれ
EF
✤✣
(2)
るものである。図2の結果
T(E)
✣.✤
をもとに、この減衰因子を
✣.✣✣✤
見積もるとγ = ✣.✥✥Å-✤ とな
-5
った。また、コンダクタン
✤✣
スと分子軌道(特に、
-✪
✤✣
✵OMO と L✼MO)との間
-✬
✤✣
には重要な相関関係がある
-✤✤
✤✣
-✧
-✥
✣
✥
✧
E –EF/ eV
図2 計算によって得られた亜鉛ポルフィリン
分子ワイヤーの透過確率。
が[✦] 、透過確率が図2の
ような挙動を示すことを分
子軌道と照らし合わせて解
析した結果、このポルフィ
リン分子ワイヤーにおいては L✼MO が非常に重要であるとの結論を得た。
当日は、このポルフィリン分子ワイヤーの分子軌道とコンダクタンスの関係
について詳細に報告するとともに、他の導電性分子ワイヤーについての計算結
果も合わせて報告する予定である。
【参考文献】
[1](a) A. Osuka, H. Shimidzu, Angew. Chem. Int. Ed. 1997, 36, 135. (b) A. Osuka, N. Tanabe, S.
Nakajima, K. Maruyama, J. Chem. Soc. Perkin Trans. 2 1995, 199.
[2](a) M. J. Crossley, P. L. Burn, J. Chem. Soc. Chem. Commum. 1991, 1569. (b) M. J. Crossley,
P. L. Burn, J. Chem. Soc. Chem. Commum. 1987, 39.
[3](a) T. Tada, K. Yoshizawa, ChemPhysChem 2002, 3, 1035-1037. (b) T. Tada, K. Yoshizawa,
J. Phys. Chem. B, in press.
4Pa129
セレン含有ドナーからなる TTP 系伝導体の構造と物性
(東工大院理工・姫工大院理・京大院工・広大院工)
○圷(佐藤)あかね・芦沢 実・森 健彦・圷 広樹・山田順一・中辻慎一・御崎洋二・
田中一義・瀧宮和男・大坪徹夫
[はじめに]
TTP を中心‫ڲ‬格とするドナーのうち,分子片側末端にシクロヘキサン環を有する
ChTM-TTP は,これまでに,AuBr2-, Au(CN) 2-, GaCl4-, ReO4- との塩が報告されてい
る.このうち, (ChTM-TTP) 2Au(CN)2 は(TMTTF)2X 塩์似の擬一次元伝導体であり、
120 K で金属絶縁体転移をおこし,その後 40 K 付սで磁気的秩序を生じることが分
かっている[ref. 1-3].また, AuBr2 塩, GaCl4 塩も 38 K, 32 K という,かなり‫ژ‬温で反
強磁性転移をӭこす [ref.4].
そこで,本研究では,伝導パス形成に役割を演じている ChTM-TTP の‫ڲ‬格にセレ
ンを導入した ChSM-TS-TTP の錯体を作成し,より強力な分子間相互作用が生まれ
ることを予想し,セレン導入の効果が構造と物性にいかに反映されるかを探索した.
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
ChTM-TTP
SCH3
S
S
S
S
Se
SCH3
S
S
S
S
Se
SeCH3
SeCH3
ChSM-TTS-TP
[実験と結果]
ChSM-TS-TTP と AuBr2-, Au(CN) 2-, FeCl4- のテトラブチルアンモニウム塩と THF
中,40~50ºC で数日間一定ૣ流を流すことにより,目的の錯体を得た.得られた錯
体は,自動四‫ބ‬型X線回折‫ב‬あるいは CCD により構造データを収集した.データの
Ж析は直接法で行い,Full Matrix 最少二乗法により精密化した.
Au(CN)2 塩ならびに FeCl4 塩はともに,相当する ChTM-TTP 塩と同形構造をとる
ことがわかった.AuBr2 塩は結晶性が良くないため,現在のところ,結晶構造は明ら
かになっていない.
Table 1. 結晶学データ
(ChSM-TS-TTP)2Au(CN)2
(ChSM-TS-TTP)2FeCl4
System
Triclinic
Triclinic
S. G.
P-1
P-1
a/Å
9.836(1)
9.890(3)
b/Å
17.312(2)
17.08(1)
c/Å
9.002(1)
9.673(3)
a/°
98.944(2)
91.656(7)
b/°
116.341(9)
118.441(2)
g/°
73.511(9)
94.58(1)
V / Å3
1316.4(3)
1428(1)
Z
1
1
R / Rw
0.104 / 0.105
0.140 / 0.150
Temperature
30 °C
35 °C
Figure.
(ChSM-TS-TTP)2FeCl4 の結晶構造
ૣ気伝導度の測定ならびに.磁化率の測定結果については,当日報告する.
[参照論文]
1. M. Ashizawa, et al., Chem. Lett., 1998, 649.
2.M. Ashizawa, et al., Synth Met., 102, 1603 (1999).
3.M. Ashizawa, et al., Master’s thesis of Tokyo Institute of Technology (1998).
4. T. Kawamoto, et al., Bull. Chem. Soc. Jpn., 75, 435 (2002).
4Pa130
ベンゼンヘキサカルボン酸による
π-ドナー分子配列制御(その3)
(北大院理 1・北大創成 2) ○小林 典仁 1、内藤 俊雄 1,2、稲辺 保 1
n–
メリト酸(ベンゼンヘキサカルボン酸、Scheme 1)アニオン([C6(COO)6H6–n] )は結晶中で多様
な水素結合ネットワークを形成する。我々はこれまでにピリジン誘導体を対分子に用いた結晶の系統
的な構造ӕ析から、メリト酸アニオンが強い自己集合能を持っており、そのアニオン配列は脱プロト
ン化された数(n)に依存した水素結合様式が基になっていることを報告している。n が 3 の時には
Scheme 2(a)に示すような三Ԓ形の水素結合ユニットが基本となり、シート状のネットワークが形成
される。一方、n が 2 の時には Scheme 2(b)に示すような二種の”dual hydrogen-bond”と呼ばれるユ
ニットが基本となり、シート状、チャンネル状などの多様な水素結合ネットワークを形成する。
我々は本研究において、メリト酸アニオンの強い自己集合能により形成される水素結合ネットワー
クが֩定する空間に、π-ドナー分子を配列させるࠟみを行っている。π-ドナー分子には、種々の TTF
誘導体を用いた。これまでに TTF (2:1, n = 2)、EDT–TTF (3:1, n = 2)、BEDT–TTF (3:2, n = 2)、TM–TTF
(2:2, n = 1)などとの単結晶が得られており、その結晶構造を中心として昨年の分子構造総合討論会 1)、
今年の日本化学会春季年会 2)において報告している。
+
–
今回、TM–TTF 塩([TM–TTF ]2[C6(COO)6H5 ]2 ・2CH3OH)(1)が得られた同じ条件で、新たに組
成 の 異 な る 結 晶 ( 5:4 )( 2 ) が 得 ら れ た の で そ の 構 造 と 物 性 を 報 告 す る 。 ま た 、 TTF 塩
+
2–
([TTF ]2[C6(COO)6H4 ])
(3)の SQUID、ESR 測定を行い、螺旋状カラム内における TTF ラジカル
カチオンの配向ディスオーダーに関する新たな知見が得られたので併せて報告する。
結晶作成は஢ӕ法を用いて行った。溶媒にはジクロロメタン/メタノール混合溶媒を用い、脱プロ
トン化によりメリト酸をアニオンにするため、ピリジンを溶液中に共存させた。
+
–
2–
‫ݪ‬色板状結晶(2)は、X線構造ӕ析より組成が[TM-TTF ]5[C6(COO) 6H5 ]3[C6 (COO) 6H4 ]・C5H5N・
x(Solv.)であることがわかった。結晶学的に独立なメリト酸アニオンは四分子存在し、༄り合うアニオ
ン間では強い水素結合によって結びつけられていた。また、溶媒分子であるメタノールや、水分子を
介した水素結合ネットワークが形成され、全体として、a ࡃ方向に伸びるチャンネル構造が形成され
ていた。(Fig. 1)。TM-TTF はそのチャンネル内に閉じこめられ、カラム状に配列されていた。それ
ぞれのカラム内の分子は分子面を平行にし、
分子ସࡃ方向にずれた様式で積層している。
TTF ‫ݱ‬格中の C=C 結合‫״‬離、組成より全
ての TM-TTF 分子は一価のカチオンになっ
ていると考えられる。
Fig. 2(a)に示す TTF 塩(3)では、メリ
ト酸アニオンが作る六Ԓ形のチャンネル内
に TTF がカラムを形成している。このカラ
ム内に存在する独立な TTF カチオン(I、
II)はそれぞれの分子の中心が 62 ࡃ上に一
Fig. 1 Crystal structure of the TM-TTF salt (2).
致し、I、II は交互にスタックしていた。このうち、TTF(II)は TTF(I)に対して、ほぼ真上に重
なる配向と、分子面方向に 30 回転した配向の二種་がディスオーダー状態になっている(Fig. 2(b))
。
SQUID による磁化率測定を行ったところ、TTF ラジカルが等間隔にスタックしている構造から予想
されるより遙かに小さな磁化の値が観測された。また温度変化を Curie-Weiss モデルを用いてフィッ
ティングすることにより、常磁性成分が約 3.4%であると見積もられた。このことから、次のような
モデルを考えた。TTF(II)の二つの配向は、その分子の上もしくは下に位置する TTF(I)と二量
化を֬こすため生じ、Fig. 3(c)に示したようにカラム内で上方向に二量化するドメインと、下方向に
二量化するドメインが等しい確率で存在することが配向ディスオーダーの֬源となっていると考えら
れる。全体としては、スピン対を形成した二量体単位で 120
回転している螺旋カラムだといえるが、
そのドメイン境界にあるラジカルカチオンが൉分的に取り残され、孤立したスピン源として振る舞っ
ていると考えられる。
当日はこれらの錯体の ESR 測定結果についても報告する予定である。
Fig. 2 TTF salt (3) (a) TTF helical column in channel, (b) overlap mode of TTF (I) and (II),
(c) dimerization pattern of TTF cations
1) 小林典仁、他 2002 年 分子構造総合討論会要旨集 3B16
2) 小林典仁、他 2003 年 日本化学会春季年会予稿集 4J4-39
4Pa131
コバルトおよび銅ナノ球殻磁性体の合成と物性
(名大院理・名城大)小塚康晴、堀口朝示、塩澤尚典、土屋りつ子、
○阿波賀邦夫、坂東俊治、飯島澄男
【序】 微粒子磁性体の開発が盛
んに行われ、メゾスコピック系特
500 ℃
Cu(NO3)2
有の物性の発現が観察されてい
Cu or CuO Shell
る。このような磁性体では、形状
に依存した磁区構造や磁気特性
urea
が期待され、磁性とナノ構造との
aging
相関が興味深い。
PS latex
本研究で対象としたのは、ポリ
スチレンラテックスの表面に球
Cu(OH)2CuCO3
殻状に沈殿した分子磁性錯体で
ある。ポリスチレンラテックスに
はさまざまな用途(例えば電子顕
微鏡の標準試料)があり、粒径の
図1
尿素の熱分解による、ポリスチレンラテック
ス上への塩基性炭酸銅の均一コーティング[1]。
よく揃ったものが廉価で市販さ
れている。志保らは、硝酸銅水溶液を尿素で塩基性にすることによって、直径 500 nm
程度のラテックスの表面に、均一に塩基性炭酸銅を沈殿させることに成功している(図
1)[1]。銅水酸化物の磁気特性は Cu-OH-Cu の結合角に大きく依存し、小さな構造変化
から大きな磁性変化が生じるが、バルクとナノ球殻形状において磁気特性の差異が興味
深い。さらに志保らは、得られた球殻状の有機無機複合ナノコンポジットを、水素ある
いは空気気流下で煆焼させることによって、
銅あるいは酸化銅を成分とする球殻微粒子の
形成を報告している(図1)[1]。このような
手法は、直径が数 100 nm、厚みが数 10 nm の
ナノ球殻強磁性体や金属などの合成に十分応
用できるものと思われる。本研究では、ナノ
球殻形状の銅水酸化物錯体に対するサイズ効
果を調べるとともに、ナノ球殻コバルトの合
成を行った。
【実験】
ポリスチレンラテックスは市販の
ものを用いた。文献の方法[1]に従い、硝酸銅
と硝酸コバルトを原料にして、尿素の熱分解
反応による均一沈殿法により、ラテックス表
図2 水酸化銅錯体でコートされた
ポリスチレン・ラテックス。球の直
径は約 500 nm。
面に銅およびコバルト水酸化物をコートした。
反応時間を制御しながら、ポリスチレン表面
以外での沈殿を極力少なくするように努めた。
煆焼は、水素と窒素の混合ガス(1:1)を流
しながら、大気圧で行った。
【結果および考察】 銅錯体に関する SEM 像
を図2に示した。20 nm 程度の大きさの微粒子
が表面に凝集し、この厚みでほぼ均一なコー
ティングが成されている。ポリスチレンのサ
イズを変えながら、同様の合成を行ったとこ
ろ、直径 300、460、800 nm のものについて
コーティングに成功した。これらの 1 g あたり
の磁化率の温度依存性を図3に示す。サイズ
図3 ポリスチレンラテックス上に
析出した銅水酸化物錯体の磁化率。枠
内はラテックスの直径。
が小さいほど大きなキュリー常磁性を示した
が、これは表面積の増加によって、吸着量が
増したものと解釈できる。ワイス温度につい
ても系統的な変化を見出したが、これについ
ては当日議論する。
コバルトについても同様な合成を行った。
水酸化物を沈殿させた後、上記の還元的な雰
囲気下で煆焼し、ナノ球殻形状のコバルトを
合成した。TEM 像を図4に示す。内部が蒸発
して中空となっている様子が分かる。また球
殻厚みにはムラがあり、微結晶の集合体とし
て球殻が形成されていることが観察できる。
図4 煆焼して得られたコバルト
ナノ球殻磁性体の TEM 像。直径は
約 500 nm。
IR では分子性のシグナルは完全に消失し、粉
末X線回折は Co のものに一致した。300 K に
おける磁化曲線を図 5 に示した。急速な飽和
を示し、保磁力は 40 Oe 以下で、通常のコバル
トと同様にソフトな磁性体であった。磁化曲
線の形状は、液体ヘリウム温度までほとんど
変化しなかった。
粉末X線回折測定に便宜を図っていただき
ました分子科学研究所、横山利彦教授に感謝
します。
【文献】
[1] N. Kawasaki, H. Shiho, J. Mater. Chem. 10,
2294 (2000).
図5 ナノ球殻コバルトの磁化曲
線(300 K)。
4Pa132
BO錯体の湿度による可逆的な導電性の変化
(京大院理・CMMS・分子研・北大院理) ⃝羽根田剛、Adam.H Tracz、矢持秀起
Jacek Ulanski、Olga Drozdova、薬師久彌、武田定、斎藤軍治
<序>BEDO−TTF(BO)分子は、対成分の形状、サイズなどの違いによらず、安定した
金属錯体を与える。これは、BO分子が錯体中で自己凝集的に二次元層状構造をとることに起因
している。この自己凝集能の応用例として、(BO)2Br(H2O)3 を高分子膜に組み込むと、表面導電
性の透明な金属的薄膜が得られる。この表面導電性膜中では、高分子膜の一方の表面に
(BO)2Br(H2O)3 の微結晶が、結晶成長面を高分子膜の表面に平行にして、密に配列している。今
回、この膜が可逆性の良い湿度依存導電挙動を示すことを見出した。この機構を解明するため、
マクロスコピックに扱える単結晶(バルク結晶)の構造・物性と、薄膜中の微結晶のそれらとの
比較を行っている。
<実験と結果>表面導電性膜は以下の手順に従って大
気下で作成した(図1参照)
。o-ジクロロベンゼン
25 mL にBO 10 mg とPC(ポリカーボネート)1 g
1
BO/PC
を溶解させ、120 ℃のホットプレート上でキャスト膜
を作成した。溶媒が蒸発した後、BOが分子状に分散
した膜1が得られた(絶縁膜)
。これ
明な表面導電性膜3が得られた。
図2に表面導電性膜3の常圧下で
の湿度依存導電挙動を示す。測定は
0.3 cm × 1.5 cm の大きさに切り
取った膜に金線を金ペーストで4本
付着させて行った。試料を乾燥窒素
気流下( 2 L / min ) におくと抵抗は
BO−Br/PC
図1 電極をつけた透明表面導電性膜 3 と、
その作成過程段階での薄膜の外見
3
300
2
温度 (K)
KBr水溶液に浸すことにより、透
3
4
規格化した抵抗値
表面導電性膜2が得られた。これを
BO−I3/PC
305
に 1 L 当たり 8 g の I2 を含む塩化
メチレン溶液の蒸気を当て、有色の
2
1
0
100
200
295
測定開始からの時間(min)
図2 表面導電性膜3の湿度による伝導度の変化。横軸の青と黄で
示した部分は、各々試料を湿潤窒素、乾燥窒素の気流下においた
時間帯を示す。ただし白抜きの時間帯は、乾燥窒素を小さな流量で
流している。
約4倍に上昇し、湿潤窒素(蒸留水中を通じた後の窒素ガス)の気流下( 100 mL / min ) におく
と抵抗は元の値まで減少する。この抵抗の上昇と減少は、雰囲気の湿度変化に対してくり返し観
測され、試料は可逆性の良い湿度依存導電挙動を示した。
類似の導電性の変化が試料を真空下においた時にも観測されている[Tracz A., J. Appl. Polym.
Sci., 86 1465 (2002) ]。つまり、 10-2 Pa の真空下では、高抵抗状態となり、大気にさらすこと
により元の状態(低抵抗状態)に戻る。また、この実験においては、高抵抗状態と低抵抗状態で
のX線回折が行われ、反射面の間隔(面間距離)が、各々 15.45, 16.72 Å であることが報告さ
れている。
ここで観測された湿度依存導電挙動が、バルク
結晶でも観測されるかを検討した。(BO)2Br(H2O)3
の単結晶は蒸留水を含ませたTHFを溶媒とした
電解法によって得られた。金ペーストを用いて4
結晶2
本の金線を一つの結晶成長面に接着した単結晶試
料を3個用意した(図3参照)
。これらの内、一つ
結晶3
結晶1
図3 真空グリスを塗布した結晶の外見
の試料は、結晶全面に真空グリスを
接着した面と、これに隣接する側面
のみに真空グリスを塗布した(結晶
1.2
300
1
2)。第3の結晶には、真空グリス
を塗らなかった(結晶3)。これら
0
測定開始からの時間(min)
100
温度 ( K )
晶1)。また、別の結晶は、金線を
規格化した抵抗値
塗り、外気との接触を遮断した(結
305
295
の試料を真空グリス塗布後、すみや
図4 結晶2の湿度による伝導度の変化。横軸の青と黄色の時間帯は図2
かに伝導度測定に用いた。結晶1以
と同じである。
外は乾燥窒素気流下で抵抗が増大
し、湿潤窒素気流下で抵抗が減少した。ただし、結晶2については、同様に真空グリスを塗布し
た場合でも、塗布後12時間以上経た試料は、経時変化的に電気抵抗が増大し、きわだった雰囲
気依存性を示さなかった。
<考察>真空グリスを用いた伝導度の測定で、結晶2は雰囲気の湿度変化による抵抗の変化を示
した(図4)
。このことから、この伝導度変化は結晶表面だけではなく、バルク結晶全体で起こっ
ていると考えられる。つまり、バルク結晶を乾燥窒素気流下においた時、結晶の表面から水分子
が抜け出ているが、結晶中でも水分子の移動があると考えられる。従って、バルク結晶でも雰囲
気の湿度変化により結晶の構造が変化していると推測される。試料を乾燥窒素気流下においた後、
電気抵抗が上昇する応答速度(薄膜試料では抵抗が20分で約4倍に上昇、単結晶試料では20
分で約1.3倍に上昇)は、薄膜試料の方が単結晶試料より速かった。ここでバルク結晶の結晶
表面と、薄膜中の微結晶のそれとが単位表面積あたり、同じ速度で水分子を放出すると仮定する
と、応答速度の差異は、単結晶試料の方が単位体積当たり、より小さな表面積を持つことで説明
ができる。乾燥・湿潤窒素雰囲気下にさらす一回のサイクル後、薄膜試料は元の抵抗値を、単結
晶試料は元より有意に大きな抵抗値を示した。これは、一回のサイクルを行った後、結晶中に生
じる欠陥の数を考えた場合、薄膜試料より単結晶試料の方が多い為だと考えられる。
現在、構造変化の詳細を知るため、バルク単結晶試料でのX線結晶構造解析の検討を行ってい
る。電解後、結晶を飽和水蒸気下で保存した方が、結晶からの水の出入りを抑制でき、結晶の劣
化を防げると考えた。しかし実際には、飽和水蒸気下で保存した結晶を用いて回折実験を行った
ところ、格子定数の決定さえできなかった。結晶を飽和水蒸気下で保存しているうちに、結晶中
に過剰の結晶水が入り、結晶性を悪くした可能性が考えられる。
今後、他の結晶水を含むBO錯体も含めた検討を続けていく予定である。
4
4Pa133
水素結合系超分子化学アプローチによる有機分子性磁性
体の構造と磁性
(阪市大院理 1・科技団さきがけ 2)○塩見大輔
佐藤和信 1・工位武治 1
1,2
・伊瀬智章
1,2
・
有機磁性体の結晶中での分子配列を制御する方法のひとつに,水素結合を利用する
超分子化学アプローチがある.単一成分の有機ラジカル結晶では,今までにいくつか
の研究例があるが,スピン多重度の異なる2種の安定有機ラジカルの共結晶化に水素
結合が活用され結晶構造まで確定した例はない.本研究では,2種のラジカル分子か
らなる有機フェリ磁性体の構築を念頭において,シトシンやグアニンなどの核酸塩基
にニトロニルニトロキシドラジカルを導入した”nucleobase radical”(図1)を新たに
考案・設計した.核酸塩基間の選択的・相補的な多重点水素結合と,核酸塩基とπラ
ジカルのπ-πスタッキングにより,図2に示したようなフェリ磁性二重鎖が構築でき
る可能性がある.なお本研究では,合成上の理由から,シトシンの 1(N)位とグアニン
の 9(N)位にそれぞれラジカルを導入するが,最終目標は,天然の核酸に見られるリン
酸ジエステルポリマーの二重らせんに,らせんピッチをも考慮して安定ラジカルを配
置し,biomimetic molecule-based magnet 或いはス
多重点水素結合
ピ ン の 自 由 度 を 併 せ 持 つ molecular computing
device を開発することにある.本研究では,その
G C
プロトタイプとなる分子集合(non-polymeric)系の
building block を開発した.
C G
シトシンまたはグアニンに,アルキル置換また
G
C
C
G
H
N
ラジカル置換基
N
1
O
H
N
H
N
O
H
N
N
N
N
9
ラジカル置換基
核酸塩基とπラジカルの
π-πスタッキング
H
シトシン (C)
グアニン (G)
図2 フェリ磁性二重鎖モデル.
図1 nucleobase radical の水素結合ペア.
O
NH2
.
R CH2X +
N
NH
or HN
O
R-a,b,c
(i)
N
HN
C
R-a
N
N
or HN
N
.
R
H2N
N
N
H2N
O
C-a,b,c
G
G-a,b,c
CH2Cl
ON+
N.
O
O
NH2
N
CH2Cl
ON+
N
CH2Br
.
O+
N
ON+
N
O
R-b
.N
.
O
O
R-c
図3 nucleobase radical のニトロニルニトロキシド誘導体.
(i) K2CO3, KI / acetonitrile または NaH / DMF.
.
R
NHOH
CH2Cl
CHO
NHOH
CH2Cl
HO
N
N
OH
H2 O
R-a
H2O, CH2Cl2
quant.
77%
NC
NaIO4
CH2Br
DIBAL-H
toluene
OHC
CH2Br
R-b
CH2Cl
POCl3, DMF
R-c
OHC
CHO
図4 アルキルおよびベンジル置換ニトロニルニトロキシドの合成.
NH2
ON+
T = 296 K
ν = 9.23707 GHz
N.
O
N
N
O
C-a
g = 2.006
324
326
328
330
332
334
Magnetic Field / mT
図5 モノラジカル C-a の ESR スペクトル(CH2Cl2 溶液).
はベンジル置換のニトロニルニトロキシド(R-a, b, c)を導入した”nucleobase radical”
とその合成法を図3に示す.アルキル置換のモノラジカル R-a を chloroacetoaldehyde
から文献の方法[1]で合成した(図4).R-a とシトシンを直接反応させることにより,
モノラジカル C-a を 28%の収率で赤紫色固体として単離した.図5に C-a の溶液 ESR
スペクトルを示す.スペクトルの分裂は,ニトロニルニトロキシドの窒素核(|AN| =
0.74 mT)と,メチレン部位の2つのプロトン(|AH| = 0.22 mT)の超微細結合でほぼ
再現できる.現在,X 線構造解析用の単結晶の作成と磁化率の測定を行なっている.
ベンジル置換のモノラジカル R-b とビラジカル R-c については,ラジカルの原料と
なるアルデヒドの合成(図4)を,既報の方法[2,3]で進めている.
<文献>
[1] G. Ulrich, P. Turek, R. Ziessel, Tetrahedron Lett., 37, 2129(1996).
[2] (a)市村剛幸・鈴木由香里・石田尚行・野上隆,第 79 春季年会,講演概要集 p.609(2001).
(b)野上隆・伊瀬智章・市村剛幸・石田尚行,分子構造総合討論会,要旨集 p.503(2001).
[3] P.S. Traas, H.J. Takken, H. Boelens, Tetrahedron Lett., 1977, 2129.
4Pa134
基底一重項ビラジカルを配位子とする遷移金属錯体−
一般化フェリ磁性系の磁性
1
(阪市大院理 ・科技団さきがけ 2)
○前川健典 1・伊瀬智章 1, 2・塩見大輔 1, 2・佐藤和信 1・工位武治 1
Sb1
以前我々は、二種類のラジカル分子から
なる反強磁性ヘテロスピン分子集合系に
J3
J1
ついて、Heisenberg モデルを用いた理論的
J 2 Sm
考察を報告している[1]。この理論計算によ
り、基底一重項ビラジカル(S = 0)と二重項
Sb2
モノラジカル(S = 1/2)の交互一次元鎖(図
図 1 基底一重項(S = 0)ビラジカルと二
1)においても広義のフェリ磁性スピン整
重項(S = 1/2)モノラジカルの交互一次元
列(一般化フェリ磁性)が実現しうることを
鎖モデル
提案している。本研究では、一般化フェリ
磁性を実験的に検証するために、二重項モノラジカルを S = 1/2 の遷移金属イオンで
置き換え、基底一重項であることが知られているニトロニルニトロキシドビラジカル
bnn を配位子とした鎖状高分子錯体をモデル物質として設計・合成した(図 2)。また磁
気相互作用についての詳しい情報を得るために、高分子錯体の繰り返し単位を取り出
O - N+
+
N O-
L
J1
M
N O
L
bnn
M = Cu(II)
L, X = ClO4, NO3, BF4
X2
図 2 鎖状高分子錯体
[Cu(bnn)L2-n]Xn
hfac
O N
+
N O-
O - N+
N O J3
J1
J2
Cu(II)
O N
+
hfac
N O - J2
O - N+
N O
Cu(II)
hfac
bnn
J3
hfac
bnn
(a)
(b)
図 3 錯体[Cu(bnn)(hfac)2](1)の推定構造
(a : 単核錯体 ; b : 鎖状高分子錯体)
した単核錯体(図 3a)も合成した。なお、
bnn を配位子とした錯体では、Mn(II)(S
= 5/2)の二核錯体がすでに知られている
[2]が、本研究では、一般化フェリ磁性
の検証のために、S = 1/2 の Cu(II)を用い
た。
bnn は文献の方法[3]により合成した。
単核錯体 1 は、bnn の無水ジクロロメタ
ン溶液と Cu(hfac)2 の無水ジクロロメタ
ン溶液を混合することにより粉末とし
て得られた。元素分析の結果から
Cu(hfac)2 と bnn の比が 1:1 であることが
わかった。錯体 1 の推定構造を図 3a に
示す。磁化率の測定結果を図 4 に示す。
1.5
S = 1/2 3mol
χpT / emu K mol-1
O N
obs.
calc. (J2/kB = -55 K , J3/kB = 0 K)
calc. (J2/kB = -30 K , J3/kB = -30 K)
1.0
g = 2.18
0.5
0
0
50
100
150
T/K
図4
200
250
単核錯体 1 のχpT-T プロット
300
bnn と銅イオンのペアは、鎖状高分子の磁気的な繰り返し単位とみなすことができ、
スピンハミルトニアンは
H = −2 J 1Sb1 • Sb2 − 2 J 2Sb2 • Sm − 2 J 3Sm • Sb1
(1)
のように書ける。このスピンハミルトニアンの固有状態は、一つの四重項状態(S = 3/2;
Q)と二つの二重項状態(S = 1/2; D1, D2)をとる(図 5)。J1<0、J2<0、J3<0 の時、基底状態
は二重項になる。各状態の固有エネルギーと基底状態とのエネルギー差は、式(1)の厳
密対角化により、以下のように書ける。
1
EQ( S = 3/2) = (− J 1 − J 2 − J 3)
2
1
ED1( S = 1/2) = ( J 1 + J 2 + J 3) + A
2
1
ED2( S = 1/2) = ( J 1 + J 2 + J 3) − A
2
2
2
A = J 1 + J 2 + J 32 − J 1 J 2 − J 2 J 3 − J 3 J 1
Δ1 = 2 A
Δ2 = − J 1 − J 2 − J 3 + A
(2a)
(2b)
(2c)
E
EQ(S = 3/2)
∆2
∆1
ED1(S = 1/2)
ED2(S = 1/2)
(2d)
(2e)
(2f)
図 5 3 スピン系のエネルギーレベル
これらの固有エネルギーから、磁化率は
N A g 2 µ B2 10exp(-∆2 / k BT ) + 1 + exp(-∆1 / k BT )
χ pT =
4k B
2exp(-∆2 / k BT ) + 1 + exp(-∆1 / k BT )
(3)
と書ける。ここで g 値は、ニトロキシドラジカルと Cu イオンのスピンが交換結合し
たあとの平均値とした。bnn の分子内交換相互作用は J1/kB = -224 K と報告されている
[4]。錯形成後も J1 の値に変化はないと仮定して、式(3)による磁化率のフィッティグ
では J1 は固定し、bnn と Cu2+の間の交換相互作用 J2 と J3 を最適化した。その結果、
J2/kB ~ -55 K、J3/kB ~ 0 K(図 4 の破線)、J2/kB ~ -30 K、J3/kB ~ -30 K(図 4 の実線)のいず
れでも実験値をほぼ再現した。10 K から 70 K の範囲でのχpT の一定値が錯体の基底
二重項状態に対応する。10 K 以下でのχpT 値の減少は、錯体間の弱い反強磁性相互作
用の存在を示す。なお、錯体 1 は、図 3b に示した鎖状高分子の構造をとっている可
能性もある。その場合は、|J2/kB| >> |J3/kB| ~ 10 K と予想される。詳細な議論を行うた
めに、現在 X 線結晶構造解析を行っている。
金属塩として Cu(ClO4)2、Cu(NO3)2、Cu(BF4)2 を用い、錯体 1 と同様の混合法により、
三種の錯体が得られた。これらの錯体の構造は図 2 に示した一次元鎖になっていると
期待される。現在、磁化率の測定と結晶構造解析を行っている。
〔参考文献〕
[1] D. Shiomi, K. Sato, and T. Takui, J. Phys. Chem. B., 105, 2932(2001).
[2] M. Tanaka, K. Matsuda, T. Itoh, and H. Iwamura, Angew. Chem. Int. Ed. Eng., 37,
810(1998).
[3] (a) E. F. Ullman and D. G.. B. Boocock, J. Chem. Soc. Chem. Commun.,1161(1969) (b) R.
Weiss and N. Krant, Angew. Chem. Int. Ed. Eng., 41, 311(2002).
[4] F. Alies, D. Luneau, J. Laugier, and P. Rey, J. Phys. Chem., 97, 2922(1993).
4Pa135
ピリダジン環を有する非対称ドナー分子を用いた
有機伝導体の構造と物性
(分子研 1・総研大 2・JST CREST 3・東大院理 4)○大坪才華 1,2・高橋一志 1,3・崔亨波 1,3・
藤原秀紀 1,2,3・小林速男 1,2,3・藤原絵美子 4・小林昭子 4
[序] これまで当研究室では,bis(ethylenedithio)tetraselenafulvalene (BETS) を用いた分子
性伝導体の開発を行ってきた.特に,λ-(BETS)2FeCl4 塩では, π-d 相互作用に基づく金属—
絶縁体転移や磁場誘起超伝導転移など,磁性と伝導性が複雑に絡み合った、多くの特異な
物 性 を 見 い だ し て き た . 1) 一 方 、 含 窒 素 ヘ テ ロ 環 で あ る ピ ラ ジ ン 環 を 導 入 し た
pyrazino-ethylenedithio-TSeF (PEDTTSeF) では,窒素原子とカルコゲン原子の間の短い原子
間接触を通じた擬二次元フェルミ面の構築による金属相の安定化によって,幾つかの錯体が
低温まで金属的性質を示すことも明らかにしてきた.2) 今回,ドナー相とアニオン相との相互
作用を強くする目的で,窒素原子を分子長軸方向に配置したピリダジン環を有する EDST 型
分子 1 を合成し,その構造と性質を調べた.
[結果と考察] 1 は,既知のユニットである 2 と 3 によるクロスカップリング反応の後,シリカゲル
カラムとジクロロメタン/ヘキサンを用いた再結晶で精製することにより,15%の収率で橙色結
晶 として得られた (Scheme 1).
ドナー分子 1 の X 線結晶構造解析の結果,ユニットセル中に,結晶学的に独立な分子が2個
存在し,head-to-tail 型で配列していることがわかった (Fig.1).中性状態のドナー分子の TTF
骨格は,折れ曲がった構造がよく見られるが,1 の場合はほぼ平面構造であった.分子の配列
は herringbone 型であり,カラム間に 3.50 Å 以下の S-S 接触 (3.47 Å) や S-Se 接触 (3.48 Å)
が見られた.これにより,1 は,side-by-side の伝導パスが形成し得る構造であることが示唆され
た.Crystal data for neutral 3: C20H12N4S8Se4, Mr = 880.66, monoclinic, Pa, a = 11.522(5), b =
8.263(3), c = 14.983(5) Å, β = 113.12(1)°, V = 1311.9(9) Å3, Z = 2, Dcalc = 2.229 g/cm3, R = 0.040,
Rw = 0.040.
また 1 の電気化学的性質を,ベンゾニトリル中,サイクリックボルタンメトリーを用いて調べた.
第一および第二酸化還元電位は,+0.86 , +1.21 V (irr.) vs. Ag/AgCl であった (Fig. 2).第一
酸化還元電位は,BETS (+0.70 V) よりも 0.16 V 高く,ドナー性が著しく低下していた.一方,
PEDTTSeF (+0.85, +1.18 V) と比較すると,第一および第二酸化還元電位は共にほとんど等
しかった.従って,ドナー性の低下は,含窒素ヘテロ環の電子求引性に起因していることが示
唆される.
Fig. 1 Crystal structure of neutral 1.
Fig.2 Cyclic voltammogram of 1 .
定電流電気分解法により,カチオンラジカル塩の作成を試みた.そのうち,ReO4−塩の微細結
晶 (0.10×0.08×0.01 mm) においては,当研究室の X 線集光ミラーを備えた CCD (Rigaku
AFC-8 Mercury) を用いることで,X 線結晶構造解析に成功した (Fig. 3).Crystal data for the
ReO4− salt: C20H12N4O8Re2S8Se4, Mr = 1381.07, triclinic, P-1, a = 8.856(2), b = 12.288(2), c =
15.988(3) Å, α = 75.18(2)°, β = 73.08(2)°, γ = 80.63(3)°, V = 1601.8(5) Å3, Z = 2, Dcalc =
2.863 g/cm3, R = 0.048, Rw = 0.055.
ReO4−塩では,ユニットセル中に結晶学的に独
立なドナー分子が二種類と、アニオン分子二種
類が存在し、D:A 組成比 1:1 であった。結晶中
ではそれぞれのドナー分子が二量体を形成し
二量体の間に,ReO4−塩が入り込んだ構造をとり、
S-S 接触や S-Se 接触の存在は見られるが,ドナ
ー分子の明確なカラム構造は見られなかった.
また窒素原子による ReO4−塩への配位構造は見
られなかった.
本発表においては,その他のカチオンラジカ
ル塩の結晶構造ならびに電気伝導度や磁化率
などの物性についてもあわせて報告する.
参考文献
1) H. Kobayashi, A. Kobayashi, P. Cassoux,
Fig.3 Crystal structure for the ReO4− salt.
Chem. Soc. Rev. 2000, 29, 325.
2) E. Ojima, H. Fujiwara, H. Kobayashi, Adv.
Mater. 1999, 11, 459.
4Pa136
拡張 TTF 型ジチオレン配位子を有する単一成分分子性
金属[Ni(dmdt)2]の構造
(東大院理 1・産総研 2・分子研 3・科技団 CREST4)○༃木和佳子 1,*,藤原絵美子 1,*,
小林昭子 1,*,田中寿 2,藤原秀紀 3,4,岡野芳則 3,小林速男 3,4
【序 】分子性結晶の金属化には、
(1)有機分子を配列させバンドをつくらせるプロ
セスと(2)バンドを形成している分子と異種の化学種(分子やイオン)との間で
ஏ荷移動を行わせ、バンド内にキャリヤ−を発生させるプロセスが必要である。従
って、中性単一分子のみではキャリヤーの発生は極めて困難であるため、単一成分
で構成された分子性金属の合成は難しいという考えた方が一般的であった。しかし
ながら、我々は、0.6 K まで安定な金属状態を保つ中性単一分子で構成されたニッケ
ル錯体[Ni(tmdt)2](tmdt = trimethylenetetrathiafulvalenedithiolate)を得ることに成功し、
強束縛‫ة‬似バンド‫ٽ‬算とド・ハース効果の測定結果から、[Ni(tmdt)2]が三次元のフェ
ルミ面を有した三次元金属であることを明らかにした。今回、X 線結晶構造ӂ析に
より、໸似のニッケル錯体[Ni(dmdt)2](dmdt = dimethyltetrathiafulvalenedithiolate)の
結晶構造が明らかになったので、その詳細について報告する。このニッケル錯体に
ついては、以前加圧成形ࠌ料の伝導性や磁性を報告しており、230 K まで金属状態を
保つことや(sr.t. = 200 S cm–1)、Pauli 常磁性的な挙動を示すことがわかっている。
【実験 】合成は、以下のスキームに従って行った。まず、保۲基のついた TTF 誘
導体 1 を THF 中、25 wt% 水酸化テトラメチルアンモニウム/メタノール溶液で処理
し、アンモニウム塩 2 を発生させた。これを塩化ニッケル・六水和物のメタノール
溶液と反応させることにより、 空気中で不安定な(NMe4)2[Ni(dmdt)2] 3 がピンク色粉
末として得られた。ニッケル錯体 3 を過塩素酸テトラ-n-ブチルアンモニウムを含む
アセトニトリル中で 3 週間、定ஏ流ஏӂ法(0.5 mA)で酸化することにより、[Ni(dmdt)2]
が‫ݗ‬色の微小な針状結晶として得られた。この錯体の X 線結晶構造ӂ析は、݄輝度
X 線発生装置と X 線集光ミラーを組み合わせた CCD 型単結晶X線回折装置を用いて
行われた。Crystal data for [Ni(dmdt)2]: C16H12S12Ni, triclinic, P`1, 0.06 ¥ 0.02 ¥ 0.01 mm3, a
= 6.620(4), b = 7.615(6), c = 11.561(8) Å, a = 86.46(7), b = 74.22(5), g = 79.43(6)º, V =
551.2(8) Å3, Z = 1, R = 0.076, Rw = 0.057.
【 結 果 及 び 考 察 】 [Ni(dmdt)2]の分子構造を
Fig. 1 に示す。Ni(dmdt)2 分子は、分子全体が
ほぼ平面構造をとることがわかった。Ni-S の
平均結合‫ס‬離は、2.173(4) Å であり、S1-Ni-S2
のӿ度は 92.15(15)ºであった。[Ni(dmdt)2]の結
晶構造を Fig. 2 に示す。1つの Ni(dmdt)2 分
Fig.1
[Ni(dmdt)2]の分子構造.
Fig. 2
[Ni(dmdt)2]の結晶構造.
子が、[0 0 `1]方向と[0 `1 `1]方向の二方向
に 3.44 Å と 3.74 Å の分子間面間‫ס‬離で積
層していた。また、side-by-side 方向にファ
ンデルワールス半径の和以内(< 3.7 Å)の
S···S ‫ة‬接‫ס‬離がみられた。
得られた[Ni(dmdt)2]の結晶構造をもとに、
拡張 Hückel 法を用いて重なり積分を求めた
(Table 1)。更に重なり積分の値を用いて、
HOMO-LUMO ギャップの値を 0—1 eV の
範囲で変化させて、強束縛‫ة‬似バンド‫ٽ‬算
を行った。重なり積分の値から、この錯体
では,分子積層方向に強い分子間相互作用
がある可能性が示唆された。また、[1 0 1]
方向(tP1,tP2)と[1 `1 `1]方向(tQ1,tQ2) Table 1 [Ni(dmdt)2]の重なり積分(¥ 10–3).
H-H
H-L
L-L
L-H
にも、比ԁ的大きな重なり積分がみられた。
バンド‫ٽ‬算の結果は、HOMO-LUMO ギ
ャップが 0.05—0.48 eV の場合に、フェルミ
面が存在している可能性があることを示し
た。HOMO-LUMO ギャップの値が 0.1 eV
である場合の状態密度分布図を Fig. 3 に示
tC1
–7.28
6.21
tB1
–5.58
5.05
tP1
–0.88
0.78
tP2
-0.88
–0.78
tO1
–0.90
0.79
tQ2
–0.90
0.79
H HOMO、L LUMO
フェルミ面が存在することがわかった。以上の
結果から、[Ni(dmdt)2]は金属であることが推測さ
れる。
*
21世紀 COE プログラム「フロンティア基礎化
学」研究拠点形成事業の下に研究を行った。
0.1
Energy / eV
準位を横切り、正孔とஏ子に対応する2種໸の
–6.21
–5.05
–0.78
0.78
–0.79
0.79
0.2
す。Fig. 3 に示されているように、HOMO
由来のバンドと LUMO 由来のバンドがフェルミ
5.35
4.54
0.69
0.69
0.69
0.69
0.0
eF
-0.1
-0.2
-0.3
-0.4
0.0
1.0
2.0
3.0
Density of States / a.u.
Fig. 3 [Ni(dmdt)2] の 状 態 密 度 分 布 .
HOMO-LUMO ギャップ = 0.1 eV.
4Pa137
MeDA-TTP および MeDH-TTP のラジカル塩の
磁気的性質と圧力下での電気物性
(都立大院理・姫路工大理)○関屋広道・西川浩之・兒玉健
池本勲・菊地耕一・山田順一
【序】我々は新たな有機超伝導体を開発するために、従来のドナー系に比べ大きなオンサイ
トクーロン反発をもつドナー分子からなる有機導体の研究を行なっている。ドナー分子のオ
ンサイトクーロン反発を大きくするための分子設計として、 π電子共役系を縮小させた分子
に着目しており、これまでに TTF 系ドナーに比べ π電子系の縮小したドナーである DODHT
[(1,4-dioxane-2,3-diyldithio)dihydrotetrathiafulvalene]から超伝導体を見出している。一方、
TTP 系の縮小 π電子系である Alkyl-DH-TTP と Alkyl-DA-TTP についても研究を行っており、
これまでアルキル基にメチル基をもつ MeDH-TTP と MeDA-TTP の合成と、そのラジカル塩
の結晶構造と電気物性を報告してきた。
Me
S
S
S
Me
S
S
S
Me
S
S
S
Me
S
S
S
MeDH-TTP
MeDA-TTP
図1に示すように、MeDH-TTP のラジカル塩は head-to-head タイプに二量化した κ型ド
ナー配列をとり、強い二次元的な相互作用をもつ。これに対し MeDA-TTP ラジカル塩は
head-to-tail タイプに積層した β型 のカラム構造をとり、カラム間に比べカラム内により強い
相互作用をもっている。これらの塩の伝導挙動は図 2 に示すように、(MeDH-TTP)2PF6 の比
抵抗の温度依存性は室温から半導体(Ea=18meV)であり低温で絶縁化した。これに対し、
(MeDA-TTP)2PF6 は室温から 200K 付近まで温度依存性の小さい金属的な伝導挙動を示し、
200K 以下では徐々に抵抗が増し低温で絶縁化した。
今回、低温での絶縁化を抑えるために MeDH-TTP 塩と MeDA-TTP 塩の様々な圧力下での
電気物性を調べた。また、常圧での絶縁相の性質を明らかにするため ESR を用いその磁気的
性質を調べた。
log(ρ/Ω・cm)
8
6
4
2
(MeDH-TTP)2PF6
0
(MeDA-TTP)2PF6
0
図 1. (MeDH-TTP)2PF6 の結晶構造(左)
(MeDA-TTP)2PF6 の結晶構造(右)
100
T/K
200
300
図 2.
(MeDH-TTP)2PF6 と(MeDA-TTP)2PF6 の
比抵抗の温度依存性
【実験】
圧力下での(MeDA-TTP)2PF6 と(MeDA-TTP)2ClO4 の電気抵抗の温度依存性を直流四端子
法で測定した。PF6 塩と ClO4 塩の 0kbar、3kbar、5kbar の結果を図3に示す。PF6 塩は常
圧では室温から 205K まで金属的挙動を示すのに対し、3kbar と 5kbar では室温から半導体
であった。しかし、共に電気抵抗の温度依存性は非常に小さく 90K 以下で急激に抵抗が増大
し絶縁化した。また 5kbar の圧力までは電気抵抗の温度依存性に圧力の効果はほとんど見ら
れなかった。一方、ClO4 塩は全ての圧力において室温から半導体的挙動を示したが、常圧で
は 100K 以下で抵抗が大きく増大するのに対し、3kbar、5kbar では 50K まで抵抗の温度依
存性は小さく絶縁化がより低温まで抑えられた。また 90K 以上のアレニウスプロットから活
性化エネルギーを求めたところ、PF6 塩、ClO4 塩とも圧力による大きな変化は見られなかっ
た。
10
6
0kbar
3kbar
5kbar
6
10
5
10
R / Rr.t.
8
logR / Ω
7
10
0kbar
3kbar
5kbar
4
10
4
3
10
2
10
2
0
1
10
0
10
0
100 T / K
150 200
T/K
MeDA-TTP 塩の圧力下における電気物性
200
図3
300
左)(MeDA-TTP)2PF6
50
100
250
300
右)(MeDA-TTP)2ClO4
(MeDA-TTP)2PF6 の ESR 測定の結果を図4に示す。g 値の温度依存性は小さく、全温度領
域でほぼ一定の値を示した。ESR 線幅は室温で 8.51G であり、約 50K までは単調に減少し
50K 以下で急激に減少した。また ESR 強度から見積もられるスピン磁化率は室温から 100K
まで単調に増加し 50K 以下で急激に増加した。常圧における電気抵抗の温度依存性において
アレニウスプロットの微分をとったところ、50K 付近に大きな変化が見られ、これらの異常
温度と絶縁体化の温度に相関が見られた。
g value
2.0085
2.0080
2.0075
1.10
12
1.05
10
8
1.00
6
0.95
4
0.90
2.0070
50
100 150 200 250
T (K)
図4
0
左)g 値の温度依存性
右)ESR 強度と線幅の温度依存性
100
T (K)
200
300
∆ H pp (Gauss)
Intensity (arb.units)
2.0090
4Pa138
(阪大院理)
【序】
直鎖多核 Ni 錯体[Ni5(µ5-tpda)4X2]の
磁気的相互作用に関する理論的研究
○ 北河康隆・庄司光男・小泉健一・丸野祐介・西山祐輔・
浜本智大・山口 兆
近年、直鎖多核金属錯体の合成の報告が多数なされるようになった。これらの一次
元金属系は、その特異的な結合に対する理学的興味のみならず、分子性機能材料への応用の
可能性という観点からも、非常に注目されている。さらにそれらがどのような電子状態を成
しているか、特にそれらが共役系を成しているかどうか等、理論的アプローチによる解明が
期待されている。我々はこれまで、金属− 金属結合をもつ直鎖多核金属錯体に着目し、金属
イオンのスピン間に働く有効交換積分値(Jab 値)の定量的考察のために密度汎関数法の改良
を行ってきた(magnetic Effective Density Functional; MEDF 法)[1]。当研究グループではこれ
までに、種々の二核および四核錯体に MEDF 法を適用し、金属種や軸上および架橋配位子が
磁気的な相互作用に及ぼす効果を定量的に考察してきた[2]。本研究ではその改良されたハイ
ブリッドを更に巨大な一次元多核金属錯体である Ni(II)直鎖5核錯体[Ni5(µ5-tpda)4X2](tpda =
tripyridyldiamido)に適用した(図1)
。Peng 等によって合成されたこの錯体は、両端の Ni(II)
にスピンが生じその間に弱い反強磁性的相
N
互作用が生じるが、その大きさが軸上配位子
N
N
N
N
N
N
N
N
N
X Ni1
Ni2
Ni3
Ni4
Ni5
X
N
N
N
N
N
の種類によって変化する事が明らかになっ
ている[3]。そこで、MEDF 法を用いて、幾
N
N
N
N
N
N
N
N
N
つかの軸上配位子の場合(X=Cl、CN…)に
N
おいて、Jab 値と電子状態の関係を系統的に
=
考察した。また、さらに螺旋状の架橋配位子
が Ni− Ni 結合に及ぼす影響を考察した。
【理論】
N
密度汎関数(DFT)法は電子交換
図1
相関効果をより少ない計算機資源で取り入
N
N
N
N
Ni(II)直鎖5核錯体[Ni5(µ5-tpda)4X2]
れることができるという利点を持つ。しかしながら、磁気的な相互作用を考察する上では、
Hartree-Fock(HF)法が有効交換積分値(Jab 値)を過小に見積もるのに対して、DFT 法では
負に大きく見積もり過ぎるという欠点があった。そこで、MEDF 法では、磁気的な性質を見る
上での、よりよい両者の融合を目指し、HF 法に対する DFT 法に対する動的電子相関の補正と
いう観点から交換相関項のハイブリッドスキームを考える。具体的には、下式を用いた。
(
)
EXC = c1E XHF + (1 − c1 ) E Slater
+ ∆E XB88 + ECVWN + ∆ECLYP
X
(1)
これまでの研究から、ハイブリッドパラメータ(c1)とラジカル軌道の不安定性指数に相関があり、不安
定性指数よりハイブリッドパラメータを見積もる事が可能であることが分かっている。そこで、本研究に
おいても、この方法にてハイブリッドパラメータを見積もった。
【計算及び結果】 Ni(II)直鎖5核錯体[Ni5(µ5-tpda)4X2]の構造は X 線構造解析のデータを
使 用 し た 。 軸 上 配 位 子 と し て は 、 Cl 、 CN 、 N3 が 配 位 し た も の を 比 較 し た 。 表 1 に
[Ni5(µ5-tpda)4Cl2]の J 値の計算結果を示した。実験結果が弱い反強磁性的相互作用であるの
に対して、計算結果は非常に弱いながら強磁性的相互作用を示した。これは、基底関数と計
表1 [Ni5(µ5-tpda)4Cl2]の有効交換
積分(Jab)値*
計算値**
実験値
6.5
-8.3
*cm-1
**basis set Ni : MIDI, others 4-31G
c1 = 0.5 in eq (1)
表2 [Ni5(µ5-tpda)4Cl2]の金属上
の電荷密度とスピン密度
Atom Charge
Spin
Ni1
1.41
1.78
Ni2
1.07
0.03
Ni3
1.16
0.00
Ni4
1.07
-0.03
Ni5
1.40
-1.78
算精度の問題であると考えられる。しかしながら、錯体内の磁気的な相互作用が非常に弱い
という事を再現する事が出来た。表2に、得られた電荷密度やスピン密度を示した。このよ
うに、計算結果はスピン密度は両端の Ni 上に局在するという実験的な予想を再現した。また、
自然軌道解析による金属− 金属結合の解析や架橋配位子の特徴も議論した。当日はさらに大
きな基底関数を用いた精度の高い計算結果を示し、軸上配位子の違いによる Jab 値の変化を議
論する。
【参考文献】
[1] (a) Y. Kitagawa, T. Kawakami, K. Yamaguchi, Mol. Phys., 100 (2002) 1829, (b) Y.
Kitagawa, T. Soda, Y. Shigeta, S. Yamanaka, Y. Yoshioka, K. Yamaguchi, Int. J. Quant.
Chem., 84 (2001) 592.
[2] (a) Y. Kitagawa, S. Nakano, T. Kawakami, K. Mashima, K. Tani, K. Yamaguchi, Mol.
Cryst. Liq. Cryst., 379 (2002) 525, (b) Y. Kitagawa, S. Nakano, T. Kawakami, K.
Mashima, K. Yamaguchi, Polyhedron, 22 (2003) 2019.
[3] (a) C-C. Wang, W-C. Lo, C-C. Chou, G-H. Lee, J-M. Chen, S-M. Peng, Inorg. Chem.,
37 (1998) 4059, (b) S-M. Peng, C-C. Wang, Y-L. Jang, Y-H. Chen, F-Y. Li, C-Y. Mou,
M-K. Leung, J. Magn. Magn. Matter., 209 (2000) 80.
4Pa139
水素ガス圧下でのシトクロムc3 薄膜の電気伝導度とその機構
(A 熊大院自然・B 熊大理・CNASDA)中原祐典 A、○中川将士 B、市村憲司 A、井口洋夫 C
1.序論
一般に、固体相(薄膜)における蛋白質は絶縁体的であるが、その中で、ヘム蛋白質だ
けは良好な電気伝導性を示す。ヘム蛋白質のヘムの状態が酸化型:Ferri-Heme(Fe3+)であ
るか還元型:Ferro-Heme(Fe2+)であるかよって、その電気伝導度(電導度)は大きく異な
っている。シトクロムc3薄膜の電導性においても還元率が低い酸化型的な領域では絶縁体
的特性を示すが、還元率が高い領域では Fig.1 に示されような Z 形の特異な半導体的温度依
存性を示す。電導度は比較的狭い温度変化に対し、その変動は数桁にも及び、大きな変化
を示す。特に、Fig.1-A部の電導度の減少が数桁にも達し、その機構を説明することがで
きなかった。今回、これが試料内部に発生する逆起電力に関係していることを確かめるこ
とができた。この伝導機構について議論する。
2.薄膜調製と電導度測定
脱ガスしたシトクロム c3 溶液(還元酵素:Hydrogenaze を含まず)から液体窒素トラップ
を持つ真空系の中でキャスト法によって石英基板上に
M
GM
Conduc-
シトクロム c3 薄膜を調製する。石英 Fig.1 基板上には
金の櫛形電極が蒸着してある。その後、c3 薄膜を真空
系に連結した電導度測定装置に移動し、その中の空気
tance
を排気し、同時に真空乾燥する。次に、0.1MPa 程度
の水素ガスを導入し、50~70℃に加熱し、再び排気す
LogGS/S
GQ
る。この操作を数回繰り返し、乾燥した c3 薄膜を調製
Q
TQ
TM
する。
一般に、水素ガス雰囲気下において c3 薄膜を還元形
Temperature,T-1/10-3k-
にするためには酵素として若干のヒドロゲナーゼをそ
の中に添加するが、ここでは酵素を加えないで2Mpa Fig.1 電導度温度依存性モデル
の水素ガスだけを導入し、室温中に放置する。ヒドロゲ
ナーゼが存在し無くても、長時間(数ヶ月以上)を必
要とするが、c3 薄膜は還元される。 放置期間中に約 353K(80℃)以下の温度範囲で c3 薄膜
の電導度の温度依存性を随時測定する。c3 薄膜の電導度 σは時間の経過と共に絶縁体的特性
に始まり、還元率が 80%を越えると急激に電流が増加し, Fig.1 のようなコンダクタンス
GS の温度依存性がえられる。このときのコンダクタンスの温度依存性は低温域から温度を
上昇させるとコンダクタンスは増加し、半導体的特性を取り、最大値 M(低温度域:-10~
20℃)に至る。M 点を過ぎ、さらに温度を上昇させるとコンダクタンスは急激に数桁減少
し、最小値 Q(高温度域:約 70℃)に至る。Q 点を過ぎ温度を上昇させると伝導度は増加
し、再び半導体的特性を取る。M 点と Q 点を持ち、その差は数桁の大きな変動であり、活
性形または負活性形の半導体的特性を取る。この特性を説明するために Fig.2 に示される回
路が用いられる。印加電圧 E(V)時の電流 Is(A)とスイッチを切り替え印加電圧ゼロ時
の逆電流 It(A)を測定する。回路より、コンダクタンス Gs(S)と逆起電力 Es(V)は
次のように求めることができる。
Gs=(IP-IQ)/E
Sample
Es=IQ/GS
P
E
M
3.結果と考察
2MPa の水素ガス圧力下に置かれたシト
GS
ES
Q
クロムc3薄膜は測定開始時には 30℃、30
気圧、印加電圧 12V で 10‐11 A の電流しか
Fig.2
流れなかったが、数ヶ月間放置すると同一条件下で 10
‐8
A の電流が流れた。この電流増加
は分子中のヘムが酸化形(Fe3+)から還元形(Fe2+)に移行し、ヘム間相互作用が強くな
ることを意味している。
高圧水素下において固体薄膜は還元され、その後も水素は分離され、次式で示される反
応式が得られると考えられる。
Ferri-cytochrome c3(4Fe3+) + 2H2 + nH2
Ferro-cytochrome c3(4Fe2+) + 4H+ + 2nH+ + 2ne‐
ここで、ヘムの 100%還元と同時に分子内には 4 個以上の水素イオン(2n+4)個と電子
(2n)個が存在するようになる。この状態でのコンダクタンス GS と逆起電力 Es の温度
依存性が Fig.2 の回路で測定され、その結果が Fig.3 と Fig.4 に示される。Gs は本来の活
性形に戻り、逆起電力 Es の発生は水素イオンの発生と関係しているようである。これらの
ことについて議論する。
Fig.3 The conductance
Fig.4 The electric motive force
4Pa140
光合成細菌の光合成中心で生じる
プロトン移動の理論的解析
(名大院理 1・京大 2)〇兼子 祐 1・林 重彦 2・斉藤 真司 1・大峯 巌 1
【序】
酵素反応は「プロトン移動」「電子移動」「ラジカル移動」を基本の柱としている。
本研究はプロトン移動と電子移動が複雑にカップルした反応を触媒する酵素として、
紅色細菌 sphaeroides の光化学系複合体に内在する反応中心に着目し、そのプロトン
移動のメカニズムの解明を目的とした。
反応中心では Quinone の還元反応が生じる。この Quinone の還元反応は、光励起に
よって反応中心に内在する Bchla(バクテリオクロロフィル A)二量体から長距離電
子移動を経てもたらされる電子と、細胞質から反応中心内部を通る長距離プロトン移
動によってもたらされるプロトンによって生じる。この長距離プロトン移動は単一の
プロトンが移動するような単純な反応ではなく、幾つかのプロトンが連鎖的に移動す
るといった複雑なプロセスを辿る。そのため、長距離プロトン移動を生じさせるため
にはプロトンの通り道が必須であり、なおかつプロトンが Quinone へ効率良く一方向
に移動しなければならない。
現在までのポイントミュ
ーテーション等の実験によ
る研究結果から、幾つかのア
ミノ酸残基がプロトン移動
に強く関係し、プロトン移動
の通り道として利用されて
いる事が示唆されている 1)、2)。
しかしプロトン移動の通り
道となるアミノ酸残基は複
数のプロトン状態を持ち、実
験的にも各々の残基のプロ
トン状態は決定されていな
い。そのため、プロトン移動
のメカニズムを理解するた
めには実験では解析できな
図 反応中心のX線構造(PDB code 1AIG)
い電子、原子レベ
ルで詳細に議論できるアプローチが必要となる。そこで、本研究ではプロトン移動過
程で生じる共有結合の生成消滅を正しく記述するために、電子状態を考慮した量子化
学計算と分子動力学法を組み合わせた QM/MM 法を用い、プロトン移動経路の探索とそ
の解析を進めた。
【方法と結果】
量子化学計算プログラム GAMESS に、分子動力学プログラム AMBER の force field
を組み合わせて QM/MM 計算のプログラムを作成した。システムが大きいため並列計算
を可能にし計算効率を上げた。反応中心の構造として、 PDB code 1AIG の X 線構造を
使用した。プロトン移動する際に通り道となる酸性残基と塩基性残基のうち、プロト
ン状態が不明なもの(ASP-L210、ASP-M17、HIS-H126、HIS-H128)がある。プロトン
移動の解析を進めるうえで通り道となる残基のプロトン状態を明らかにしなければ
ならない。そこでそれぞれのプロトン状態を組み合わせて複数の状態を作成した。ま
た、X 線構造で観測されてい無いが構造上プロトン移動するためには、上記の残基周
辺に水が必要だと考えられた。この水が無いと上記のアミノ酸残基のプロトン状態に
よっては構造が不安定になり、プロトン移動の通り道が見いだせなかった。そこで、
水を一分子から三分子まで加えた状態も作成した。これらの構造について QM/MM 法に
てそれぞれ構造最適化を行い、プロトン移動可能な経路を探索した。その結果、経路
付近には酸性残基が集中しているために、それぞれの酸性残基にプロトン化している
経路が多く得られた。得られた構造をもとに、プロトン移動反応のポテンシャルエネ
ルギー面を見積もった。得られたポテンシャルエネルギーから、どの状態がプロトン
移動反応に大きく寄与するのかを推測した。
【参考文献】
(1)M.L.Paddock, P.Adelroth, C.Chang, E.C.Abresch, G.Feher. and M.Y.Okamura
Biochemistry 40 6893-6902(2001)
(2)Eliane Nabedryk, Jacques Breton, Melvin Y.Okamura, and Mark L.Paddock
Biochemistry 40 13826-13832(2001)
4Pa141
✂✁✄ ✆☎✞✝✠✟☛✡✌☞✎✍✎✏✒✑✔✓✆✕✗✖✙✘✛✚✜✍✣✢ ✤✥✏✞✦✛☎★✧☛✩✫✪✜✬✮✭
✯✱✰✌✲☛✳ ✧✵✴✷✶✞✸✵✹✵✺✫✻ ✼✾✽✵✿✵❀✫✻ ✼ ✲✣❁✮❂
❙❯❚❲❱
❈❨❳❬❩❇❭❪❩❴❫❛❵❜❭❪❝❡❞❣❢●❊✾❢✐❤❥❤❥❩✱❦✗❈❨❧♠❩❇❭❪❢❇❝♦♥q♣r❈❋❊●❈ts✂✉❑✈①✇
pG
❏③②⑤④✄⑥⑤⑦☛⑧⑩⑨❷❶❹❸✐❺❼❻❽❸❪❾❷❸✐❿➁➀❽➂➃❺❇⑨➄⑧⑩⑨❷❶❹❸❜➀❽❻❷➂❜❶❹⑨❉❍➆➅❖➇
❃ s
❃ 3ns
➈⑤➉●➊ €➌➋▼➍❲➎✄➏➑➐➒◗➔➓■→★➣❑↔➒↕➛➙ ➈⑤➉➜➊ €
➋✠➝⑩➞✒➟➡➠➤➢①➥❲➦➛➙➨➧✄❈❋❊➜❈①✉①➩➫❍➔❏①▲➭◆❖€
◗❲➯❘➲➤➳➸➵➻➺✥➠➔➳➸➼➆➽➾❍❘➚➻➪✒➣❑➶➫➦➻➥➘➹➷➴❘➬➑➮
➱✄✃➫❐➷❒➤❮➡❰ÐÏ ➧ ❰ ❍Ñ➮ ➱■✃➫❐ ✉➆❏➫▲①◆❲€Ñ◗
pB
pR
❃ 200µs
❍➑Ò✄Ó✒❍➒Ô➫➬➷➠●Õ❘➲ ➈①➉Ö➊ €Ñ➋⑤×➨Ø✮Ù✷Ú✄Û✒❍
Ü ➦③Ý▼Þ➆◗➭ß➻à ✃③á ❍▼â➔ã➒ä③å■æ▼❍➑Ó❲ç⑤➣➾è
➇▼➬➻×➾➙➌é■ê➭➣➑ë❲ì➨í➭➦➨➚➒➪❲➍①î▼➙➑➧➛ïð➺➷ï
❄ ❅❇❆❉❈❋❊●❈■❍❑❏▼▲❖◆❖€❘◗
➬③×➡➠⑤❈❋❊●❈✄❍❑❏⑤▲❖◆❖€❘◗➛➯❑➲ñ➎⑤➏➨➐✄◗➒➓➫→
❍❘ò➫ó➫ô➫õ☛➝ö➞➭➟✞➠●➢▼➥▼➦➾➙✒➳➸➼➨ô▼õ✒✉❘÷❖ø
➮ ➱ ×❑ù■ú■û➭➯ñ➝➌✉➑ü➭➬⑤➙ ❰ ➝Ö×❑ý☛➠●➢✄➥■➶ÿþ ➲ ✁✄✂ è⑩➮ ➱✄☎✝✆ ✉✟✞Ñ➢➫➥➫➦✄➬■➦❑➧✄➩
❰ ✡
➍ ✠☞☛✍✌❖➍➾✏
✉ ✎✒✑✔✓✝✕ ✗
➣ ✖ñþ ➲ñ➩✄❍❘➮ ➱▼✃⑤❐ ❒✙✘✍✚✜✛✍✢ à➔◗❲➍➔Ó✤✣✵ï●➲★➩✄❍➘❏⑤▲
◆❲€➑◗❖❍■➯➒➍ ✁✤✂ ✦
è ✥✄⑥❖×✄ç✥➠Ö➺✄➍⑤➬■➦✞➳➸➼❘ô➫õ✒❍➑➮ ➱✤✧☞★ ❒ Ò✤✩✗✪⑤➬✬✫✤✭❖➺✥➠ Ø✯✮
✰ ✱
➧ ✞➛➠❘➣❑➲✒➩➫❍➘➚➫✤
➪ ✲✔✳✵✴❲Ý➫✷
➐ ✶✍✸✒✹✷✺▼€ ✛ ➣③➇①➦■➥❖❍➨Ó✤✣ ❒ Ø✒➦➻➲ ➈➾➉ð➊ €❘➋
✼➣ ✻✣➠Ö➢➛✾➙ ✽❀✿✜✪❲➬➆➮ ➱➫✃▼❐ ❍❲â➒ã■ä➫å➫æ①➣➒➇⑤➦■➥❲❍➆✍
➞ ❁ ❒ ✏
Ø ✮ ✰ ➧
❙❃❂✡❄➛❱
❏⑤▲❖◆➾€❘◗❖➯✄❅✼❆ñ❍✯❇✝❈➫÷➭ø➘➮ ➱❊❉ ❅●❋ ❍■❍✗❏➾➣▲❑◆▼€❖€❖€❖❘◗★❍❘ù✍❙ ✚✜❒❯❚✍❱ ï ✰ ➮ ➱
❒❯❲✤❳ ➮ ➱ ➝③ï ✰ ➧❖➩■❍❘➮ ➱ ➣➔➶⑤➦③➥❩❨ö❤❭❬❫❪€❴Ñ➺✆➠❛❵⑤✇✵❜✙♣ ➀❞❝ €✒❡➒◗✡❢▼s ➽✝❣✤❤✵✪❲➣✔✐
❥❧❦ ♥➉ ♠✍♦ ❒ Ø★➦➔➲★➩▼✬❍ ♣➷❍➨➮ ➱▼✃❲❐ ✬❍ q ✚✜s❒ r✍t ✪❲✒➬ ❙ ✚ ♦✵✉✍✈ ♣✇✎✒✑ s①✓✄✕✒➍③②
④ ï ✰ ⑥
➧ ⑤ ✰■⑦ ➣❑✄
➲ ❨ö⑧❤ ❬⑨❪€❴❶⑩✔❷✙❸
➝ ❵⑤✗
✇ ❜❖✾
❍ ❹☞❺ ❒ ➚✄✔
➪ ❻✄❼✙➝■ï ✰❾❽✼❿ Ý❲Þ➘◗➷ß③à ✃
❐ ❒ ✓✝✕ÿï ✰ ➧
❙ ÷✍➀✵➝➄➞☞❁ ❱
➁➃➂ ❍➑➃
Ø ✮ ✰ ✓❀✕★➣➔➶➫➦③➥➘➲✾❨➄❤⑧❬⑨❪€❴➄⑩☞❷❖× ❽ ❵✟✪❲➣s❵➫✇✵❜■➺✥➠➆➅✏➇➑➺❖➙ ♦ ➴➑×✄✻✥➠
➢ ✰ ➧➭➩✒ïÑ➥❖➩✄❍ ♦ ➴➒➣✬➈➭➦➔➲☞➉✄➊✤➋☞➌☞➍ ➣■➎➏✞➘➬➨➮ ➱➫✃⑤❐ × ❮✣❰ þ ➲☞➐✷❝❭➑ ❅●❖€➒➔➓★❍
❄❩→❴❆❘❵▼✇✜❜✡❍✄➣ñ❍❘➮ ➱
↔⑥↕■❲☞❳ ➮ ➱ ➙➜➛✜↕ ❑✔●❅ ❖❴⑨♥ ➑➝♣➷❍❘➮ ➱
✬➯ ➞★❍✟➟➜❝❷➎➻à ❦➡➠ ➣■î⑤➙❶➢✤➤➾×❑ú✄➥★➣▲➦⑥➧➭ï ✰ ➧✬➐✷❝❭➑ ❅●❖€➒ ✉▲➨✄➩✗✪①➣❖è①➳❬➵■➺✥➠■➳➸➼✄❍
➚■➪➾➍❑ú✤➥➷➣▲➦⑥➧ Ï ➙ ❰ ➝➤× ✧☞★ ✞➑➢▼➥▼➦❲➙ ❉ →€❋ ✰✄➫ ❰ ❍➑➮ ➱▼✃▼❐ ✉▲➭➃➯■➬➭è➨❍➒➍①î
➙➭➝ ➞➛➟ ➠➜➢➛➙Ñ■
➧ ✽ ❂ ➲✙❵➫✇✟❜✄➺✜➠❛❺❲➢ ✰ ❨ö❤❭❬⑨❪➲❴➄⑩☞❷✒✉▲❵✄✇✵❜③❍❀➣★❍s➳✄ù✵✪▼➬✝➵ ✢⑥➸
❦ ➺➡➻➠ ➺✄➼ ■➣ ➽✱➾✍➧➷ï➤➲■ú☞➥✜➣■➦➚➧➷ï ✰ ♣ ❄➪→❴s ➧❾⑤ ✰ ➲★➩➻➢✒➣✾➈★➦③❵①✇✜❜✄❍✤➣➷❍❑ù
❐ ÷▼②ñÞ ➸ ❦❮❒ à➾€➒✉❑➹✞❾
➴ ❰ ✃①❐ ï ✰ ➧
❍ ✖➾Ù➤➬ ✃➫❐ ✒
✉ ➹❖s
➣ ⑩✤❷✒❍ ❚✷Ð❘✃
Ï ➠ ✗
❐ ③
➍ Ñ ✁ ✞➑➢➛➙Ð➮ ➱■✃▼❐ ➍①î✥þ ➲ ➈①➉Ö➊
€➨➋➭③
❍ Ò✄Ó▼➮ ➱ ➣➫■
✉ ➤✔Ô✄ô①õ➛➍➾î➾➙ ⑨➳ ❨
❸➝ Õ✝Öÿïð➥ñ✦è ×★➣➑➹ ➴➨➬ ✃➫❐ ③✉ ✻✆➠➜➢①➬
➺ ✮ ✰ ♣Ø
⑥
❄ ➶❴s✱➧✥ï➌➺✜ï❘➬③×➡➠⑩✝
➲ ⑩✍❷ñ❍ ❚
Ð❘✃➫❐ ✟
➣ ✖➻➙ð➮ ➱③✃▼❐ ✉❘é✄ê✒➣❘➹ ➴➨➬➭è
❍➻➍①î✥þ ③
➲ ×★➣ ➈①➉Ö➊ €➑➋❲✬
➯ ➞★✵
❍ ➟③➎③à
➝ ➉③➊✝➋❀⑩★✙
❍ Ù➾×➔➹ñ⑥
➴ ❰➜☞
➬ ✮ ✰
❦ ✙❍ ➌✄➍ÿ✄
❰ ➝ð✉➑➲Ö❈q❊➜❈➑×➆Ø☛Ùð➎➫➏➑➐➔◗➘➓➒→ÿ➝Ö↔✾Ú
❄ ➶❴➘❆ ➹❀❷ñ✾
❊
❍ ➴☞➷➫➮ ➱
Ï ■
➙ Û✝Ü✄ó❖×➔➞➭➟✥➠Ö➢➭➙➆➧
➬ ✇ ↕ ⑨➳ ❨❸➮➜➱➫✇ ↕ ✓✄✕➛✼➍ ✃✵➠Ö➢ ✰ ➮ ➱
✉ ❨➄⑧❤ ❬⑨❪€❴➄⑩✝❷✒❍ ❚✷ÐÑ✃
Ï ➠ ❍Ñ➮ ➱■✃➫❐ ⑥
❐ ❶
➣ ÝßÞ✒ïÖ➥ ❮✜❰ ✮➜➥■➦▼➙➾á
➝ à ✆ ✞➌➢①➙➌➧
➩ ❰ ✱
➍ ❨➄⑧❤ ❬⑨❪€❴➄⑩✄❷✠❛
➝ ❵✄✟
✇ ❜▼▲
❍ ❹✝❺ ❒ ➚➒➪
❻☞❼✙➝■ï➑➥ ❽✼❿ Ý①Þ➔◗★ß✄à ✃⑤❐✜❒ ✓✄✕✵ï ✰ ➧ ❰ ❍■Ý■⑥
➐ ✶✔✸✒✹✜✺⑤€ ✛ ✬
❍ ✥⑤⑥ ➣➻➇❲➦■➥
Ï ✧☞✆ ➍❲î①➙➆➧
✉ ➯➃â➨▲
☞
➣ ã ✼
❉ ❅ä❋❭❨ö❢✐♥➸❝❥❵æåç➮éèáê➜ëìê❋❢❜❭➄❫❴❤⑧ê⑧➮➜í①îðïòñðó①îæñðô➝õ÷ö÷øùô➜ú➲û€ü÷ýðþäÿ€ÿ✁ ✁✂
ô ☛✍✌☞✡✏✎✒✑✁✓✔✌⑧✖ô ✕❘✏ï ✗ ✙î ✘➝✙ñ ✚♥✜ï ✛✣✢✥✤✧✦ ✩ô ★✫✪ ô ✭þ ✬÷þ●û ý ú€û€û ✭þ ✂
✄ ✆ú ☎✞✝✠✟✞✡●☞
4Pa142
マンガンポルフィリンと酸素の相互作用における理論的研究
(‫ޥ‬大院理) ○ 小泉健一・庄司光男・西山祐輔
丸野祐介・北河康隆・山口兆 [序]
生体ܼ素は特定の化学反応を活性化することで必要な反応を取り出し、化学反応の
連鎖がうまく働くように機能的に作用している。このようなܼ素の性࠽はほとんど
の生化学反応において深く関与している。ܼ素反応の理論的研究の第一段階として
我々は遷移金属とܼ素の関係に注目した。遷移金属イオンは様々なܼ素の活性中心
として用いられている。最も知られている系としては、ヘモグロビンでの鉄の役割
である。鉄は酸素と結合することで、酸素運搬の役割を担っている。本研究では、
このアナロジーとしてマンガンポルフィリンと酸素の反応を調べてみることにした。
マンガンは多様な酸化数がとりえるが、今回の研究においては二価のマンガンを用
いた。
[方法]
本研究ではまずポルフィリン環を四つのアンモニアでモデル化した。この時、環内
でマンガンがとれる最安定状態を調べた。具体的には、マンガンの二重項状態と六
重項状態について、環の中心からの‫ס‬離をパラメータとして変化させたときのトー
タルエネルギーの変化を調べることで、マンガンの最安定位置及び最安定スピン状
態を決定し、そのஏ子状態を考察した。さらに、この最安定状態のマンガンに対し
て結合ӿ 180 度及び 90 度で酸素分子を‫ة‬づけ、そのポテンシャル曲線から、酸素
とマンガンの結合を調べた。同様の研究をフルモデルのポルフィリン環にも行った。
ポルフィリン環は平面型と歪み型の二種໸を使っている。これは生体内のヘモグロ
ビンが酸素と結合するとき、環が歪むことを反映しておりこの構造変化が、活性中
心の金属と酸素の相互作用に影؉をもたらすだろうという予測によるものである。
また、フルモデルでは二重項、六重項両方に対してポテンシャル曲線からの考察を
行った。これらの酸素との結合状態の比ԁとして、リガンドのない裸の状態でのマ
ンガン-酸素とのポテンシャルも‫ٽ‬算し、これと比ԁすることで、マンガン-酸素の
結合においてポルフィリン環の及ぼす影؉を考察した。
手法は DFT(UB3LYP) を用いた。
マンガンの基底関数としては Fujinaga の MIDI+P
を用い、酸素とポルフィリンの基底関数として 6-31G*を用いて Gaussian98 によ
る‫ٽ‬算を行った。
[結果及び考察]
マンガン-酸素のポテンシャル曲線とマンガンポルフィリン-酸素のポテンシャル曲
線(両方とも結合ӿは 180 度)を以下に示す。一連の研究によりモデル錯体、フル
モデル錯体両方において配位子は酸素との結合を弱くするすることがわかった。さ
らにフルモデル錯体はモデル錯体よりも酸素との結合が弱いということがわかった。
分子軌道を考察することにより、フルモデル錯体ではモデル錯体よりもマンガンと
環との明らかな MO の重なりがないことから、当初フルモデル錯体はモデル錯体よ
りも比ԁ的ゆるくマンガンを保持しており、このため環の影؉が小さくなると予想
していたが、逆にポルフィリン環が強く酸素を遠ざける原因となることがわかった。
また、スピン状態については六重項が一貫して二重項より安定であることもわかっ
た。今回の研究では環の歪みの効果と結合ӿの違いは明らかに表れることはなかっ
た。さらなる詳細に付いては当日報告する予定である。
[参考文献]
1. 小泉、庄司、西山、丸野、北河、山口、分子構造討論会 2002、4p054
4Pa143
PYP とその໸似化合物に関する理論的研究
(‫ޥ‬大院理)○浜本智大、庄司光男、北河康隆、山口兆
1.序論
Photoactive Yellow Protein(PYP)の発色団であるクマル酸は PYP 中ではアニオンとして存在し
ており、໱接するアミノ酸と水素結合のネットワークを形成し安定した構造を保っている。ひ
とたび光異性化が始まると、クマル酸の構造は歪められ水素結合のネットワークは時々刻々と
変化する。このプロセスはプロトン化—脱プロトン化をくり൶し新たな水素結合ネットワーク
を形成しながら異性化をすすめていく。PYP の光異性化において、このような水素結合の変遷
過程が大きな役割を担っていると考えられる。
本研究ではまず、ポリエン鎖がのびることによる異性化反応への影؉を、エチレン、1,3-ブ
タジエン、1,3,5-ヘキサトリエンをとりあげ、考察した。次に水素結合の変化が異性化に与える
効果を、クマル酸、クマル酸チオエステルモデルを用い、回転障壁とஏ子状態に着目して考察
した。
2.方法
2—1 ポリエン鎖のଥさによる影؉について
エチレンの二重結合、1,3-ブタジエンの 1-2 二重結合、1,3,5-ヘキサトリエンの 3-4 二重結合
についてそれぞれ、二重結合を挟んで片側の原子団ともう一方の原子団の二面ӿを変化させて
いき、ポテンシャル曲線を求めた。1,3,5-ヘキサトリエンでは、cis 体を 0 度に、trans 体を 180
度にとっている。一重項基底状態、三重項状態でそれぞれ‫ٽ‬算した。‫ٽ‬算手法については DFT
法、UNO-CASCI 法などを用いた。
2—2 水素結合の変化の影؉について
クマル酸(図1)、クマル酸チオエステルアニオンモデル(図2)の C2-C3二重結合につい
て 2-1 と同様に二面ӿを変化させていきポテンシャル曲線を求めた。cis 体を 0 度に、trans 体を
180 度にとっている。‫ٽ‬算手法は DFT 法を用いた。一重項基底状態と三重項状態でそれぞれ‫ٽ‬
算している。
O
HO
C2
C3
C2
OH
O
S
C3
O
図1.クマル酸 図2.クマル酸チオエステルアニオンモデル
3.結果と考察
3-1 ポリエンଥによる影؉
100
Relative Energy (kcal/mol)
図3にポリエンの回転ポテンシャル曲線を
示した。‫ٽ‬算手法は UB3LYP を用いている。
ポリエン鎖がଥくなるにつれ、回転ポテンシ
ャルの遷移エネルギーが小さくなっている。
80
60
40
20
0
ヘキサトリエンの三重項ではトランス体で極
0
40
エチレン一重項
エチレン三重項
小 値 を と る 。 こ れ に 関 し 、 UNO-CASCI で
80 Angle
120
ブタジエン一重項
ブタジエン三重項
160
ヘキサトリエン一重項
ヘキサトリエン三重項
図2.ポリエン੹による影՝
90~180 度までのポテンシャル曲線を‫ٽ‬算した
結果が図4である。活性空間を8ஏ子8軌道まで
54
とるとトランス体での極小値は消えた。
Relative Energy (kcal/mol)
53
3-2 水素結合による影؉
図5にクマル酸の、図6にクマル酸チオエステ
ルアニオンモデルの回転ポテンシャル曲線を示し
52
51
50
49
48
47
た。クマル酸では一重項基底状態と三重項状態の
100
120
UB3LYP
ポテンシャルが交差型の曲線を示しているが、ク
Angle
140
160
CASCI(6,6)
180
CASCI(8,8)
図4.ヘキサトリエンについて
マル酸チオエステルアニオンモデルでは逆に೗交
差型の曲線を示した。
その他の詳細は当日発表する。
80
Relative Energy (kcal/mol)
Relative Energy (kcal/mol)
100
80
60
40
20
60
40
20
0
-20
0
0
50
100
図5.クマル酸
150
200
Angle
250
300
350
0
50
100
150
200
250
300
Angle
図5.クマル酸チオエステルアニオンモデル
350
4Pa144
ミオグロビン部分鎖におけるヒスチジン-ヘム間結合
の安定性に関する理論的研究
(名大院人情) ○高柳昌芳・長岡正隆
【序】 合成されたミオグロビン(Mb)は 93His のイミ
ダゾール環にヘムが配位結合したフォールド構造をし
ていることはよく知られているが、リボソームで翻訳途
上にあるアポミオグロビン部分鎖は共翻訳的にフォー
ルディングを行い、ヘムと結合をすることが実験で確認
されている 1)。また Mb 部分鎖の2次構造も調べられて
おり、完全な Mb 鎖に比べ、C’ 末端側から数十残基を
切り落とした短い部分鎖はαヘリックス構造の比率が
低く、βシート構造の寄与が大きくなっており、残基長
が短いほどこの傾向が強くなると報告されている 2)。本
研究では、様々な長さの Mb 部分鎖における疎水性のヘ
ムポケットの形成度、立体構造の特徴、ヘムの取り込み
過程を調査することを目的として、分子動力学(MD)
シミュレーションを用いて理論的解析を試みた。
【方法】
図1
ミオグロビンの立体構造(7つ
のヘリックス A~H、および 93His に
結合したヘムから成る)。
MD 計算は AMBER ver7.0 を用いて行った。
タンパク質力場は parm99 を用いた。ただし、ヘム Fe
と 93His イミダゾール環 N 間の結合ポテンシャルには、
FeⅡを含む五配位ヘムの力場をもとに、長距離における
Fe-N 間の力を再現するようにファンデルワールスポ
テンシャルと同形のレナード・ジョーンズ型関数にクー
ロン相互作用を加えた次式
U Fe − N (r ) =
A B qFe qN
− +
r12 r 6
r
(1)
を付け加えた。ここで、レナード・ジョーンズパラメー
タ A と B は、以下で説明する分子軌道(MO)計算を利
図2
用してフィッティングした。 qFe と qN には AMBER 力
体系の最適化構造
ポルフィリン-イミダゾール環合
r(Fe-N)=1.96Å
場の Fe および N 原子の電荷を用いた。また、ある原子
X と Fe-N 結合間の結合角 θ (X-Fe-N)に対する変角ポテンシャルは、平衡結合距離付近で、本来
の結合定数 Kθ に一致し長距離では減少するように、平衡原子間距離に対する原子間距離の比の6
乗に反比例するような有効結合定数 κθ を定義して、次式
6
U X − A − B (θ ) = κθ (θ − θ eq ) 、
2
 rXeq− A   rAeq− B 
κθ ≡ Kθ ⋅ 
 

 rX − A   rA − B 
6
(2)
で表わした。ここで、
(A,B)=(Fe,N)あるいは(N,Fe)である。なお、Fe-N を含む二面角の
パラメータはすべて 0 とした。
ポルフィリン-イミダゾール環間の Fe-N 結合の結合エネルギーは、Gaussian98 を用いた
MO 計算により求めた。まず、方法 B3LYP/ LANL2DZ により、ポルフィリン-イミダゾール環
合体系の構造最適化を行った。次に、その最適化構造をもとにしてポルフィリンおよびイミダゾ
ール環単体それぞれについて一点エネルギー計算を行い、合体系からのエネルギー差として結合
エ ネ ル ギ ー を 見 積 も っ た 。 な お 、 基 底 関 数 重 ね 合 わ せ 誤 差 ( BSSE ) を 矯 正 す る た め に
counterpoise(CP) 補正を用いた。
MD シミュレーションには、時間ステップを 1fs とした速度ベルレ法を用い、Berendsen のア
ルゴリズムによる温度制御を用いて、温度一定(473K)を実現した。Mb の初期構造は PDB デ
ータベースに登録されている Sperm Whale Myoglobin の結晶構造 104M をもとに、ヘムの位置
をタンパクの中心から外側に 14Å平行移動したも
のを用いた。また初期速度は、473Kにおけるマク
スウェル速度分布に従って割り当てた。水素原子を
A
含む結合は SHAKE で拘束し、誘電率を 1 として、
Mb 全体について真空中でシミュレーション時間
600ps の計算を行った。
【結果及び考察】
MO 計算の結果、Fe-N の結合
エネルギー56.9 kcal/mol、平衡結合距離 1.96Åを得
た。この結合エネルギーは、BSSE 補正なしのもの
と比べて、およそ 10%程度小さい。これらの値から
レナード・ジョーンズパラメータ A と B はそれぞれ
1.83×105 kcal/mol・Å12 と 6.45×103 kcal/mol・Å6
B
と求まった。今回の MD 計算によって得られた、グ
ロビンのヘム取り込み過程のスナップショットを図
3に示した。初期構造(スナップショット A)から
数 ps のうちに、ヘムはグロビンに接近し、ヘムポケ
ットの入り口付近で揺らぐ状態になる(スナップシ
ョット B)。その後、250ps を超えたあたりでヒスチ
ジン残基が回転し、ヘムがポケットの中に収まる過
程が観察された(スナップショット C)。
当日は MD 計算に関する詳細とともに、ヘム取り
C
込み過程に関する解析結果や、部分鎖長の変化に伴
うヘムポケットの構造の変化についても議論する予
定である。
【参考文献】
1)Komar, A. A., Kommer, A., Krasheninnikov, I. A., and
Spirin, A. S. (1997) J. Biol. Chem. 272, 10646-10651.
2)Chow, C. C., Chow, C., Raghunathan, V., Huppert, T.
J., Kimball, E. B., Cavagnero, S. (2003) Biochemistry
42, 7090-7099.
図3
アポミオグロビンがヘムを取り込むシ
ミュレーションのスナップショット A: 初期
構造,
B: 100ps 後,
C: 300ps 後。