小型風力発電システムの開発 ~ワンチップマイコンを用いたデータ収集~ 研究者 共同研究者 指導教員 1.は じ め に 地球環境に優しい再生可能エネルギーのひ とつとして風力発電が注目されている.なか でも小型風力発電は,大型風力発電に比べ軽 量で安価なため,設置が容易で緊急災害用の 非常電源などに用いられている. そこで本研究では,この設置が容易な利点 を 生 か し ,ワ ン チ ッ プ マ イ コ ン (H8)を 用 い て 制御を行い,風向・発電量の観測データ収集 を容易に行えるシステムの開発を目的とする. 木村容子 松下喜彦 高久有一 3.2 発 電 電 圧 の 表 示 H8 の A/D 変 換 の 許 容 電 圧 (5V)以 下 に な る よう,発電された電圧を分圧した.観測結果 は ,30 回 分 の 平 均 値 を と る こ と で 値 の ふ ら つ きを考慮した.また高速で出力ポートを切り 替えてトランジスタによるスイッチングを行 い ,3 つ の 7 セ グ メ ン ト LED に 表 示 し た ( 1 (図 4,5 参 照 ). 2.シ ス テ ム 概 要 発電機から風向・発電量の観測データを収 集 し , H8 の メ モ リ に デ ー タ を 保 存 す る . デ ー タ の 回 収 は , 遠 隔 地 か ら LAN ケ ー ブ ル 経 由 で 定 期 的 に デ ー タ を WEB に ア ッ プ す る 方 法 , シ リ ア ル ポ ー ト 経 由 で PC か ら の コ マ ン ドにより直接ダウンロードする方法の 2 通り を 考 え 開 発 し た (図 1 参 照 ). 本 研 究 で は H8/3664 を 用 い て ,後 者 の シ リ アルポート経由での回収の開発を行った. 図 4 電圧表示回路簡略図 3.3 システム全体図 3.研 究 内 容 3.1 風 向 検 出 支柱にグレイコードを考慮した円盤を取り 付け,3 つの光センサによって白黒を判別し 2 進 数 表 現 で ,8 方 向 を 判 断 す る (図 2,3 参 照 ). 図 2 方向観測図 図 3 方向判別 時間割り込み H8 の タ イ マ A 機 能 を 用 い て ,TMA の 設 定 に よ り 1 秒 間 隔 に 割 り 込 み を 行 っ た .( 2 1 分 間 隔 で 風 向・電 圧 の デ ー タ を 取 得 し ,LED と 7 セ グ LED の 表 示 の 更 新 を 行 う .ま た 1 時 間 毎 の 平 均 を 取 り RAM 領 域 の 配 列 (DATA1, DATA2)に 格 納 す る . 3.4 図 1 図 5 表示の様子 データサイズ H8/3664 の 内 臓 フ ラ ッ シ ュ メ モ リ は 32K バ イ ト ,RAM は 2K バ イ ト で あ る .こ の う ち , データ格納に使用できるフラッシュメモリは 3K バ イ ト で あ る . フ ラ ッ シ ュ メ モ リ へ の 書 き 込 み 単 位 が 128 バ イ ト で あ る た め , RAM の デ ー タ 領 域 は 128 バ イ ト 確 保 し た . ( 3 1 分ごとの平均観測データサイズは,風向 3 ビ ッ ト (8 方 向 )発 電 量 8 ビ ッ ト (00.0~ 15.0v), 時 間 5 ビ ッ ト (0~ 24)の 2 バ イ ト で あ る .配 列 と し て 保 存 す る の で , RAM 領 域 保 存 の み で , 64 時 間 (約 3 日 間 )分 の デ ー タ の 保 存 が 可 能 で あると考えられる. ま た ,H8 の A/D 変 換 の 精 度 は 8bit で ,分 解 能 は 0.02V で あ り , 今 回 は 0.1V ま で の 値 が読めればいいので,充分である. 3.5 保存データの取り出し シ リ ア ル ポ ー ト (RS232C) 経 由 で コ マ ン ド 入力により,データをいつでもパソコンに取 り 出 せ る よ う に し た (図 6 参 照 ). パソコン側のソフトウエアは,ハイパータ ーミナルを利用し,コマンド入力を行う. 「 d」 と 行 末 文 字 の 「 Ctrl+J」 の コ マ ン ド 入 力 に よ り , H8 か ら デ ー タ が 転 送 さ れ る . ま た ,H8 に 格 納 し て い る デ ー タ の 確 認 の た め , H8 か ら も 定 期 的 に デ ー タ 転 送 さ せ る よ う に した。 1s 毎 の 方 向 デ ー タ (確認用) データカウント 発電電圧 方向 図 9 観 測 デ ー タ 回 収 画 面 (受 信 画 面 ) 5.ま と め 図 6 データ転送イメージ図 4.測 定 実 験 の 結 果 方向の平均値を保存しているかを確認する ため,扇風機による人工の風で測定実験を行 っ た . ノ ー ト PC へ の RS232C 接 続 は ,USB ‐ RS232C 変 換 ア ダ プ タ を 用 い て PC の USB ポ ー ト に RS-232C デ バ イ ス を 接 続 さ せ た (図 7 参 照 ). 観 測 デ ー タ は , H8 か ら 定 期 的 に 1 秒 間 隔 で 観 測 し た 方 向 結 果 を 数 値 と し て 転 送 し ,PC からのコマンド入力により 5 秒間の平均を文 字で転送を行った.ハイパーターミナルで表 示させ,平均値が配列に保存されていること が 確 認 で き た (図 8,9 参 照 ).ま た ,1 分 間 隔 で データ取得し,1 時間の平均が保存できるこ とも確認できた. 図 7 変 換 ア ダ プ タ USB-RSAQ2 (I-ODATA) 図 8 実験の様子 H8 の 制 御 に よ り ,8 方 向 の 風 向 の 判 別 ,発 電電圧の観測が可能になり,方向は 4 つの LED, 発 電 電 圧 は 3 桁 の 7 セ グ メ ン ト LED で 少 数 第 1 位 ま で 表 示 で き る . 平 均 値 を H8 の メ モ リ に 蓄 積 さ せ , H8 に 蓄 積 さ れ た 観 測 データはパソコンからのコマンド入力によっ て,いつでも回収できるシステムになった. 今 後 の 課 題 と し て は , H8 の フ ラ ッ シ ュ メ モリにデータを書き込み,電源が切れてもデ ータ保存可能なシステムにすること,独立し たシステムの実現のために充電回路の設計の 必要がある.フラッシュメモリへの保存が可 能 に な れ ば ,ト ー タ ル で 1500 時 間 (約 2 ヶ 月 ) 分のデータを蓄えられると考えられる. 6.参 考 文 献 1) H8 マ イ コ ン 完 全 マ ニ ュ ア ル 藤沢幸穂 著 2) C 言 語 に よ る H8 マ イ コ ン プ ロ グ ラ ミ ン グ 入門 横山直隆 著 3) ト ラ ン ジ ス タ 技 術 2002.3
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