理科に理解のある立派な理科ぎらい - 河合研究室 - 豊橋技術科学大学

■■■■■■■■■■■■■■■■■■
豊橋技術科学大学
知識情報工学系
河合 和久
理科に理解のある立派な理科ぎらい
1.大学における理科教育の枠組
大学における理科教育は、おおきく二つにわけることができよう。専門教育として
の理科と、教養教育としての理科である。1991 年のいわゆる「(大学設置基準の)大
綱化」以降、教養教育の枠組は大きく変わった。教養部の解体や教養課程の縮小など
である。その結果、大学において理科教育をまったく受けない学生があらわれた。極
端な例をあげれば、最後に学校で習った理科は、高校の「化学I」である、という博
士号取得者がいるわけである。もちろん、多くの大学では教養教育の重要性に鑑み、
その教育課程の改訂・改善につとめている。しかしながら、大学において理科をまっ
たく学ばない学生が少なからずいることは知っておくべきである。
2.大学による在学生以外を対象とする理科教育
大学の使命が、教育と研究、社会貢献の三つにあるとされ、多くの大学が地域貢献
活動を積極的に行なうようになったのは、1998 年文部省大学審議会答申「21 世紀の
大学像と今後の改革方策について」が示された頃からであろう。この流れのなかで、
大学による在学生以外を対象とする理科教育も、生涯学習、地域連携、高大連携(接
続)と、さまざまなキーワードのもと、さまざまな形態で行なわれている。ここでは、
本学(豊橋技術科学大学)における同教育について概観し、若干の私見を述べたい。
表に、昨年度行なった代表的なものを
名称
対象
人数
頻度
まとめた。のべ 1000 人を超える地域の
一般公開講座
高校生以上 100 名 8 回/年
方々に、理科教育をうけていただく機会
OC体験講座
高校生以上 100 名 1 回/年
を提供していることがわかる。学生定員
高専生体験実習
高専生
160 名 2 週間/年
が学部・大学院をあわせても 1812 人で
SPP教育連携講座 高校生
320 名 2 回/年
あることを考えると、本学の地域の教育
に取り組む姿勢をご理解いただけよう。 Jr.サイエンス講座 小学生以上 500 名 1 回/年
筆者は、理科をすきでない人、否、理科をきらいな人にこそ、こうした教育を受け
ていただく意義があると考えている。そうした人に、理科の本質に触れてもらい、理
科を学ぶことの意味をはだで感じてもらうことが大事であり、例えば、将来、理科の
分野に進むことがなくても、理科に興味をもたなくても、理科の分野にかかわる問題
になんらかの意志決定を求められたとき、理科の専門家とともに協同作業をすすめな
ければならないとき、そうしたときに、理科の本質にたったものの考え方を理解でき
る、あるいは、少なくとも、そうしたものの考え方のあることを認められる、そうし
た素養を身につけておいてもらうことが大事だと思うのである。理科に理解のある立
派な理科ぎらいに育ってほしいと考えている。