お だ きよし 氏 名 織田 潔 学位の種類 博士(医学) 学位授与年月日 平成21年9月9日 学位授与の条件 学位規則第4条第1項 研究科専攻 東北大学大学院医学系研究科(博士課程)医科学専攻 学位論文題目 IDENTIFICATION OF THE BOUNDARY OF THE COCHLEAR NUCLEUS BY ELECTROPHYSIOLOGICAL MAPPING WITH A SURFACE BIPOIJAR MUIJTI-CHANNEL MICROELECTRODE (多チャンネル表面バイポーラー刺激電極による蛸牛神経核の輪郭の同定) 論文審査委員 主査 教授 小林 俊光 教授 冨永 悌二 教授 上月 正博 論文内容要 旨 聴性脳幹インプラントは、聴神経が原因で聴力を失った患者に対して脳幹に電極を埋め込み聴覚 を取り戻す人工臓器技術である。聴性脳幹インプラントの最もよい適応は神経線維腫症(NF-Ⅱ)で あり、聴性脳幹インプラントは、これらの患者さん対する福音として、欧米で治験段階の臨床応用 に入り、成功例では満足すべき成績が得られることがわかってきたが、成功率が十分でないことも あり我が国における効果的な臨床応用のためには、問題点の解決が急務であった。同じ、電気的聴 覚による聴覚再建医療である人工内耳にくらべ、その成績が十分ではない原因の一つとして、聴性 脳幹インプラントでは電極を埋め込む至適部位の同定が、解剖学的指標のみからは決定できないこ とが多く、術中の電気生理学的同定により決定しているが、現時点では、 1-2-の間隔を有する電 極を用いているため、精度が不十分なことが挙げられる。本研究では、より精度の高い蛸牛神経核 の同定を目的に、多チャンネル表面バイポーラー刺激電極を用いた電気刺激誘発聴性脳幹反応の計 測と、同反応を用いた的牛神経核のマッピングを動物実験にて検討した。動物は、 400-700gのモ ルモットを使用し、ケタミン(60mg/kg)とキシラジン(5mg/kg)の筋注により十分麻酔を行ったのち、 特注の64又は260チャンネル表面双極刺激電極を的牛神経核の上に留置した。64チャンネルは、0・ 7 ×0.7mの範囲に64個の直径50〃mの電極が100〃m間隔で設置されており、260チャンネルは、3・8 ×2.4mmの範囲に260個の直径100〃mの電極が200〃m間隔で設置されている。 64チャンネルの刺 激電極の100〃m2点間刺激により、再現性のある的牛神経核を電気刺激した際の聴性脳幹反応を記 録することができた。260チャンネル表面双極刺激電極で電極間距離が200〟mの2点間刺激を行い、 陰性箇所と陽性箇所の境界が明瞭に検出された。また、既存の臨床用のプローブの電極間距離に相 当する1.2mmと200〃m2点間刺激によるマッピングの比較を4例で行った。 200〃mのマッピングに ょる境界と1.2mmのマッピングの精度の差は0.5mmが1例、 1mmが2例、 2mm以上が1例であった。 人間の蛸牛神経核の表面が8×3mmである事を考慮すると、位置決め用プローブの電極間距離は -35- 1.2mmより200〃mの方が優れていると考えられ、より正確に位置決めをするためには短い間隔で数 多くの刺激点で電気生理学的マッピングするのが理論的には理想的である。電極間距離が100、 200 〃mのバイポーラー刺激電極で明瞭なEABRの検出が可能であり、刺激する部位を少し動かしただけ でEABRが突然消失したり、波形が変化・L,たりすることから、電極は選択的な刺激を与えることが示 唆される。電気生理学的に区別された境界と解剖学的な境界との関連性については検討が必要であ るが、 260チャンネル電極を用いて蛸牛神経核のマッピングを試み、境界を明瞭に抽出することがで きた。多チャンネル表面バイポーラー刺激電極を用いた電気刺激誘発聴性脳幹反応を指標としたマ ッピングは、聴性脳幹インプラントを埋め込む至適部位の同定の臨床応用に有用である、と考えら れる。 -36- 【所定様式⑬No.1】大学院の課程による者(課程博) 審 査 結 果 の 要 旨 博士論文題名 MICROEI.ECTRODE _(多チャンネル表直些土壁ニラ-刺激電極による蛸牛神嘩核q)輪郭卑屈 所属専攻・分野名 氏名..__"級乱_一腰__ー____"- 聴性脳幹インプラントは、神経線推腫症(Neurofibromatosis type II)などの人工内耳の適応とならない嫡 牛神経障害例が適応であるが、同じ、電気的聴覚による聴覚再建医療である人工内耳にくらべ、その成績が十 分ではない。その原因の一つとして、聴性脳幹インプラントでは電極を埋め込む至適部位の同定が、解剖学的 指標のみからは決定できないことが多く、術中の電気生理学的同定により決定しているが、現時点では、 1- 2mmの間隔を有する電極を用いているため、精度が不十分なことが挙げられる。本論文はより精度の高い蛸牛 神経核の同定法を研究したものである。 申請者は、独自にデザインし特注し作成した64チャンネル刺激電極を用い、鯛牛神経核を100〟mの間隔と した2点間を電気刺激して、再現性のある聴性脳幹反応を記録することに成功した。これはこれまでの報告の 表面電極による最短の電極間距離の10分の1に相当する。現在鯨床で用いられている電極間距離である12皿と200〟m2点間刺激を比較した結果、長い電極間距離の2点間刺激では一方が陽性の領域であると・たと ぇもう一方が陰性の領域であったとしても陽性と出る可能性が示唆され・より正確に位置決めをするためには 短い間隔で数多くの刺激点で電気生理学的マッピングすることが理想的であることを支持する所見が得られ た。また、特注の260チャンネル表面双極刺激電極で電極間距離が200LLmの2点間刺激も行い、陽性箇所と 陰性箇所の境界が明瞭に検出された。加えて、電気生理学的に区別された境界と解剖学的な境界との関連性に っいて検討し、蛸牛神経核と小脳との境界が明瞭に抽出できることを証明した。 本論文は蛸牛神経核の境界を電気生理学的に区別することに成功した初めてのものであり、より精度の高い 蛾牛神経核の同定方法の手がかりを与えるものであり、将来的に神経線維腫症(Neurofibromatosis type II) の患者さんへの福音となりうる重要な研究と考えられる。 よって,本論文は博士(医学)の学位論文として合格と認める。 -37-
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