5・炉工学試験用ミラー炉と真空技術 岡 本 耕 輔 (日本真空技術(株)) (1986年3月28日受理) A Mirror Type Engineering Test Reactor and its Va,cuum Techno豆ogy Kosuke Oka,moto (Receive礎March28,1986) Abstract Va£uum technology on a,mirror type engineering test reactor on the model of the Tandem Mirror Technology I)emonstration Facility (TDF)designed at Lawrence Livermore Na,tional La、bora,tory is described. The va£皿um technology used霊n miHor type machi皿e is remarkablyαifferent from that in torus type one. 1. 序 説 核融合炉工学技術の開発に用いる小形タンデムミラー炉の設計が日(FEF)1),米(TDF)2),西独 (TASKA−M)3)で進められており,これらは定常プラズマのDT反応中性子を用いた材料及びブランケット 試験,装置の高稼動率運転,装置構成系の保守の実施などを目的としている。現在の日・米のミラー装置は 何れもプラズマ閉じ込め性能の向上を目的としており,トリチウムを用いることがなく,プラズマ持続時間 は秒の桁であるため,標題のミラー炉の真空技術は現在の装置とは違ってくる。 ミラー炉の真空技術は,また,トーラス炉とも大きく違っている。トカマク型実験炉はINTORグループ で検討されており,その内容は本誌で解説されている4)’鬼 INTORは運転時間200,,休止時間50,を繰 り返すパルス炉であり,準定常的に燃焼するプラズマのヘリウム(He)濃度は5%以下であることが必要で ある。このためにプラズマから流出するHeの1%を除去することで排気系の条件が決まる。トーラス部で 2×1056・51の実効He排気速度を持つために,トーラス軸に対称に12の単位排気系を配置し,それらは 排気ダクトとHeに対し5×1044・s−1の排気速度を持つ2台のクラィオポンプで構成されている。2台の ポンプのうち1台は排気し,他の1台は再生あるいは待機の状態にある。燃料水素はヘリウムの排気に伴っ ULy∠4C COTpoずα孟ゴoη,Cんゴgαsα勉,Kαηαgαwα253. 391 核融合研究 第55巻第5号 1986年5月 て排気される。 ミラー炉の一例TDFは定常炉であり,燃焼プラズマにつながって,その安定性を与えているプラズマに, それを囲む空間から流入して冷たいプラズマとなるガス量を,中性粒子ビーム入射による冷たいプラズ》の 除去量よりも充分小さくするため,周囲空間の圧力を5×1σ”6Torr以下に保つ必要がある。プラズマが流 出してガス化するセル(ce11)での燃料水素排気速度は7×1074・s4であり,ポンプは排気ダクトを用いず, セル内に置かれる。Heは別に備えた系により排気する。 この講座は,最も設計が進んでいる米国リバモア研究所(LLNL)のTandemMirrorTec㎞ologyDemon− stration Facility(TDF)の全般と物理を簡単に紹介し,真空壁と排気系について述べる。 2. TD F TDFは本格的な炉工学試験炉をつくるのに必要な炉工学上の設計資料を得ることを目的としている。プラ ズマの閉じ込め・加熱には概ね既知といえる知識を用い,核融合反応出力と加熱パワーの比であるQ値は1 よりも小さいが,14M認一次中性子による1MW・ゴ2以上の定常壁負荷試験を行おうとするタンデム・ミ ラー装置である。 従って,次のことを使命としている。 ・炉材料照射およびブランケット試験を行うのに充分な定常中性子環境をつくる。 ・高い中性子束環境下でプラズマ加熱系,真空排気系,超電導コイル系,トリチウム処理系などの定常運転 を行う。 ・機器の使用・制御と保守の方法を開発・実行することにより,炉の運転が安全・可能なことを示す。 装置は中央セル,その両側のアンカーセル,エンドセルからなり,全長は59mである。図5.1,図5.2 ロロパしリロ ロむ を ロハ ドピロ 欄欝瓢笥 糠隅欝㎜彪鋤 肌ASMA . TR^N馴馴甑 TES四・DUしE HePUMPS ほハしロ ー一 ㎜AC S l.O・ F響f _罷D㎜.黛り》’.嘱.汎.繭 魏 一 劃一懲 _即_ 1糠……齪.耀・編□□ 乳1… 孟一咽、一 乙 ’駕 一凝ζ蠣…卿灘轍ヨ・巳4−_脚 《NCH。RPUMP倒G VACUUM l,譲,漁壽 ロピハリロハピ ロハは ユゆバ 槻囎騰蕊、騨㎜鼎謝灘響・_ O l2 34 56 7 8 910 BEAM DUMP 一 納ETERS 2) 図5、1 TDFの断面図 392 岡 本 5.炉工学試験用ミラーと真空技術 講 座 0臼肥L・OWG82・3t74A FEO は全体および中央セルの断面図であるが, 装置を構成する各系の1要素のみを,装 CHOKE CO肌, 置軸回りの方位角をずらして示している。 ORIF了了UBε 図5・3は実際の方位角を示している。 駆矯, CENTER CEしL 巳EAM DUMP 中央セルには2個の常電導チョークコ 獲 必 イル,3個の超電導ソレノイド・コイル により,チョークコイル部の15Tと, 諺 その間8mにわたり4・5Tの強さをもつ 軸対称ミラー磁場がつくられる。アンカ 【 ] ーセルでは,それぞれ,1対の超電導イ \ ン・ヤン・コイルにより極小磁場配位が つくられ,その磁場は超電導トランジシ TRANSロTlO∼ PUMPING ョン・コイルによリチョークコイルの軸 5EAM DU旧P マRANS畦丁[ON 4.O m− PUMPING 4.9m 3EA納DUMP Z笛0 対称磁場にっながる。エンドセルにはア 2) 図5.2 中央セル部断面図 ンカーセルから流出するプラズマを受け o 一 『 CE圓TER CεLL 曽 1冒◎ B猷}DUMP 、 雲討㌧ ’.下’ 勤 CRVOPA斡Eし ACCESS PARTICLE DUMP CRYOPANEしS 層 / 一 『 加 _ げ 陀t巳マ帆託Cτ(取CHOKE COL ACCESS 一一 一一 }∴一 甲 1 一 一 一 甲 , − 一 = 一 一 ===岩一藁響 ㌣ 一 一 一 1 一 1, 騨 一 恥PUMPS 一’ 一 ’ ∫=もこ≡’ 層 ‘6二 甲 一 TEST MODULE ,噺■し『・♪ ACCESS ・即’影ド 気謡鳥事・恥 、詑 ’1 璽 01 ELEVATlON VIEW END VIEW 図5.32)TDFの瓶および側醐 393 核融合研究 第55巻第5号 1986年5月 るプラズマ・ダンプとそこで生じるガスを排気するクライオポンプが設けられる。表5・1に物理的パラメー ター,表5.2に工学的パラメーターを示す。 中央セルのミラー磁場には平均イオンエネルギー37k乱電子温度2k6V,密度6×1014cm−3,β値0.4 半径10cm,寿命11msの高温プラズマが閉じ込められ,その核反応出力は20MW,中性子出力密度70 W・c㎡’3であり,半径25cmの壁面での14M魂中性子東は1.4MW・ガ2である。照射試験部の大きさは装 置中央の軸方向に4.5m,表面積7n∼であり,その半分は2個所にある間隔1.2mのソレノィド・コィル の間を通して利用できる。高温プラズマの加熱と粒子補給は80kVの加速電圧を用いた,等量のD,Tから なる平均エネルギー60k6V,1080A ,65MWの中性粒子ビーム(NB)入射により行われる。プラズマ eq の不安定はNBを65。で入射することによるアルフェン・イオンサイクロトロン不安定の抑制,800Aeq のP2ペレット入射によりつくられる密度5×1013cnf3,寿命1msの中温プラズマと,その10%が中央 とアンカープラズマの間を往復することによるMHDおよびドリフト・サイクロトロン損失角不安定の抑制に より得られる。中温イオンの閉じ込めは中央プラズマとアンカープラズマ外側の電位差4kVによりなされる。 2) 表5.1 TDFの物理的パラメーター Central CelI Plasma length(m) 8.O Plasma radius(m) O,1 Solenoid(丁) 4,5 Peak beta 0.4 Hot−ionaverageenergy(keV) 37,0 H。t−i。ndensity(cm−3) 6×1014 Beam voltage(kV) lncident beam power(MW) 80.0 64.8(1080A/60keV) Trapped beam current(A)atomic 853,0 監rllecti◎n angle(degrees) 65.0 I Pe腎et gas feed(A)atomic ∼800,0 Fusion power(MW) Neutr。nwallflux(MW/m2)atR需O,25m ∼20,0 1,4 Choke… Transition Pmax choke(T) 15、0 Plasmalength(m) Pbsmadensity(cm−3) 4.75 −12 <3×10 Field atmidpI議ne(丁) 1,0 Pumping NBl 80kV,(59.2A/60keV)3,6MW Anch◎rs Pbsma length(m) Plasmaden吊ity(cm−3) 3,3 Field at mirror(T) 3.0 懇2 ∼5×10 Field at midplane(T) 1.0 Sloshingneutral beams 80kV,(4,2A/60keV)0,25W ECRH 500kW@35GHz l667kW@60GHz 80kV,(2,9A/60keV)0,174MW Pumping NBl 394 5.炉工学試験用ミラーと真空技術 講座 岡 本 2) 表5.2 TDFの工学的パラメーター Quantity System ●Overall machine >100 Full power run Iength (hr) Availability (%life av.) Design Iife (Fu闘p◎wer years〉 Capitai cost (SM) Year of fir』st operation 5.4 ∼1000 1990 ●Plasma Length(centralceII) (m) 8.O Radiu5 (m) O,10 Peak beta 0.4 ● Test zone First wa”radius (m) O。25 Area available (m2) 1,4 ∼8 Neutron wa旧◎ad (MW/m ) 50 20 Heat bad (W/cm2) Fusion power (MW) ●Tritium Cpnsumpti◎n rate (gm/hr) O.1 ∼0.3 lnventory (k9) ●Vacuum Basepressure (丁◎rr) 5.O E−06 T◎tal pump speed (β/s) 1.3EO8 ●Magnets Superconducting Material Nb−Ti Peak cond.field (T) Peak center field (T) 8 4.5 Resistive Materlal Cu alby Peak center field (丁) 15 ●Neutral beams Contlnuous Mode 80 52 3.8 Maximum energy (keV) Power Central ce” (MW) Pumping (MW) Sloshlng (MW) 0.25 ●Radio frequency sources ECRH Type Frequency (G月z) 35/60 Power (MW) 1.2 ●PeIlet inject◎rs 1500 500 Vel◎city (m/s) Pelletrate (/s) トランジション部プラズマの磁力線は悪い曲率を持ち,一方MHD安定の評価はプラズマのβ値で重みを っけた曲率積分で行う故,同プラズマを満たすイオンは中央プラズマの不安定を抑えるために往復する中温 イオンと,アンカープラズマのドリフト・サイクロトロン不安定を抑えるstream安定化のための通過イオ ンが大部分を占めることによりβ値を小さく保つ必要がある。このため,各トランジション部プラズマに平 均エネルギー60keV,30A のpumping NBを入射する。 同プラズマ内に捕捉されている局所的なイオン eq は荷電交換により中性粒子となり外に行き,新たに生じたNBのイオンはチョーク・コイル磁場により反射さ れ,アンカープラズマを通り抜けてエンドセルに流出する。 395 核融合研究 第55巻第5号 1985年5月 アンカープラズマのMHD不安定は極小磁場配位により,損失角不安定は同プラズマを通って流出するプ ラズマにより抑えられる。中央プラズマ電位13kVよりも4kV高い電位を保つことにより中温イオンのplug 機能を持ち,1β荷重されだ磁力線の曲率積力に安定項を与えて,中央プラズマを安定化する。中温イオンが電 位により反射される前にアンカープラズマ内にできるだけ遠くまで入り込ませるため,アンカー中央面近くに 電子に対するバリア最小電位を持ち,外側にイオンに対するプラグ最大電位を持っような軸方向に非対称な電 位分布を持っている。このため,内側の電位極大部にsloshing NBを,外側の電位最高部に60GHz ECRH マイクロ波を,中央面の電位最小部にpumping NBと35GHz ECRHマイクロ波を入射する。sloshing NB入射により電位最大部のイオン密度が高くなり,中央面部のイオン密度が低くなる。60GHz ECRHに より,電位により捕えられている電子の温度が高くなり,両極性電位が高くなる。pumping NBは電位によ り捕えられ中央面附近で往復しているイオンを荷電交換により除去し,新たに生じたイオンはトランジショ ン部を通り抜け,中央部に行く。また,35GHz ECRHにより磁気的に捕捉されている,高温度のsloshing 電子をつくり電位の凹み(サーマル・バリァ)を大きくしている。 磁場・電位および密度の軸方向分布を図5.4に示す。図にはNBとECRHマィクロ波の入射位置と値を示 してある。また・加熱,粒子補給及びpumping NB系の値を表5・3に示す。 幽, 2.1A 2。1A 30A 30A 1,5Aゆ PO 5m ゆ1.5A 鵬 17kV 1 A φ 17脈v ¶3耽V 10kV 250kW,35GHz333麗W,60G麗= 250鷺W,35G腫zo 6.5×1014 3360 333kWg 60G”2 5×1014 篭41耳10 2) 図5.4 磁場,電位および粒子密度の装置軸方向分布 菰 396 5.炉工学試験用ミラーと真空技術 講座 岡 本 2) 表5.3、加熱,粒子補給およびポンプ系の表 で 1丁◎「「●¢s.は1128Aeq 量on Average Equivalent lnjecti。n T「apPing Frequency Gasfl・wt・talf・r source neutral neutral Input angle fractionno voltage energy current power (KV) (keV) (A equiv,) (MW) (deg) (dlmensi・n)(GHz) (ng∼O・33) Central ce” Fueling neutral beam injection system 80 60 1080 64.8 65 O.79 ロ ロ 540A D 十540A (1620AD十1620A’丁) Pellet injection 800A D (800ADequiv,) 一 一 800 Transition ce旺s Pumping neutral beam injecti◎n system 80 60 60 30 3.6 o (180ADO) へむ Anchor ce”5 Sloshing neutral beam hjection system 80 60 4.2 0.25 90 (12.6AD’equiv.) Pumping neutral beam injection system 80 60 60 3.6 10 0 2.9A D (8,7A D equiv,) ’O.667 ECRH(a) 一 一 一 ECRH(b)一 .一 」 TotaI 0 4.2A D 0。50 70 2621A D十1620A T ◎r232丁一1/5D2十 14,4丁一1/s T2 ng≡gas e伍ciency◎f the neutral beam. (a)Point a is de而ned as the◎utboard sloshing ion density peak in the anchor. (b)P◎int b is de罰ned as the midplane sloshing ion density minimum in the anchor, 3。真空容器 TDFの大気に対する第1の真空容器は不鋸鋼製で,中央セル,その両側のアンカーセル,エンドセルから なり,その直径と長さは,それぞれ,7,8;7,6;16m,19・5m,全長59m,容積8600m3である。装 置構成要素のうち超電導コィル・放射線シールド・燃料水素排気ポンプ,プラズマ・ダンプは真空容器内に 取り付けられ,チョーク・コイル,入射NBダンプ,照射試験モジュールは真空壁のフランヂを介してプラ ズマ周辺に配置され・また・各種NB入射器,ペレット入射器,He排気ポンプはフランヂを介して真空壁外 側に取り付けられる。 超電導コイル系は各ソレノイド・コイル毎に計3個,各イン・ヤン・コイルとトランジェント・コイルの 組、み合せ毎に計2個の第2の真空容器内に収めてある。このように独立した真空容器を用いるのは,他の装 置要素の保守などの時に必要となるコィルの昇温をなくすためである。ソレノィド・コィルが互に引き合 う大きな力の支えとなるコィル間の太い梁は,コイルの真空容器と液体窒素冷却の熱シールドを延長した容 器内にあって,梁による熱入力を小さくしている。 397 騨 核融合研究 第55巻第5号 1986年5月 ソレノイド・コイル間に挿入する中性子照射モ ロド し じハし ジュールは,1挿入部に2個のモジュールが想定 臥TEDc。NNE㈱閥sEAしwELD されておりジその真空シールと力の支えの状況を 一.グ㎜轟劔一 図5。5に示す。 s同IELαNG TESTM蝋E’^1 TεSTM。D旺「B’”sH謹DING 園 各要素毎のフランヂ接合,冷却およぴ給電のサ ービス配管,多くの溶接部など,真空漏り発生の R PLATE 予想される多数の場所を持っ巨大な真空容器内に, ,。・L 不純物の少ない定常高温プラズマを維持して,装 VESSEL SK嗣 置稼動率を高く保つためには,装置の運転を止め ,、,, MODULε ε ることなく真空漏り場所の検出,漏入量を減らす 2) 対策がとれ,また更には,漏りおよび放出ガスに 図5。5 試験モジュールのシール よるプラズマヘの不純物流入量を小さく保つ対策 を持つことが必要であるが,設計書2)ではこれら に触れていない。対策としては,漏りの発生が予想される溶接部,フランヂ接合部,配管導入部,ベロー接 続部などを第3の真空壁で包み,そのつくる空間を排気,あるいは,プローブガスで満たすことにより漏り 場所を固定し,その空間を排気して低圧力に保つことにより第1の真空容器内への漏り流量を小さくするこ とであろう。また,プラズマヘの不純物流入量を小さく保つには,プラズマを更に第4の真空壁で包むこと になる。これらに対する技術は,今後の開発を必要としている。なお,漏りは小さな寸法の隙き間,クラッ ク,ピンホールなどにより生じるので,漏り場所の面する第3の真空壁内の空間を1(r4Torr前後の圧力に 減圧すればよいと考えられる。プラズマを包む第4.の真空壁の不充分な接合により生じる不純物のプラズマ ヘの流入量も,それを包む第1真空容器内の圧力を1σ5Torr前後の圧力に保っことにより,プラズマヘの 燃料水素注入量に比べて充分小さくすることができると考えられる。 4. 真空排気系 定常運転されるTDFへの燃料水素はNB入射源とペレット入射源に外部から供給され,前者ではその一部 がNBとしてプラズマに入射され,残りのガスはNB源排気系により排気される。後者では全量がペレット としてプラズマに入射される。プラズマは両端のエンドセルに流出し,プラズマ・ダンプに入ってガス化し, エンドセルに配置した排気系により排気される。排気されるガス量は,DT反応で生じたHeを小量含むが, プラズマヘの入射量に等しい。各排気系の排気速度は,ポンプが排気する空間の所定の圧力の下で,上記の ガス流量を排気できる大きさである。 排気ポンプには燃料水素用とHe排気用の2種類があり,前者はエンドセルおよびNB源内に配置され, 後者はエンドセル真空壁面に外から取り付けられる。両者ともクライオポンプであり,液体窒素(L−2V2) 398 講座 5.炉工学試験用ミラーと真空技術 岡 本 冷却の,周囲からの熱放射を遮蔽するシールドと排気するガスを冷却するルーバーにより囲まれた,液体ヘ リウム(L−He)冷却のパネルからなる構造を持っている。 上記のポンプは凝縮,吸着あるいはクライオ・トラッピングによりガスを排気し,これをポンプ内に蓄積 するため,蓄積量に応じて定められた排気時間の後には再生しなくてはならない。TDFではトリチウムの蓄 積量が主な間題になる。再生の過程は次のようになる。先ず排気口を閉じて排気する空間との間を遮断し, 別に備えた再生用排気系の弁を開け,L−He冷却パネルの温度を上げて蓄積したガスを気化・排気した後, 再生用排気系の弁を閉じ,L−He冷却パネルの温度をもとに戻す。 排気系に常時同じ排気速度を持たせるため,排気系は排気中のポンプ9台,再生過程にある1台から構成 されているものとする。また,真に再生に必要な時間と排気再開を待機する時閲を合せて娠S,娠の後ポン プが排気を再開すれば,排気しているg台は順次再生過程に入るものとする。また,排気するガス流量Q Torr・4・計はg台のポンプにより均等に排気されるものとするとき,排気系に蓄積されているガス量は次 のようになる。再生に入るポンプの排気時間はg娠であり,他のg台のポンプの排気時間は,それぞれ, 0×な,1×な,……,(g−1)娠になる。ポンプ再生時に遮断弁から排気する空間へのガスの漏りが 無いとき,排気するガス流量QOは,例えばプラズマヘの入射量1に等しい。再生するポンプの蓄積ガス量 は %o=(Q。/9)×9オR=Q。な, 他のg台のポンプの蓄積量は %。=(QO/9)×(0+1+……+(9−1))渉R=(1/2)×(9−1)Q。≠R, 従って,排気系の蓄積ガス量は r。=%o+%o=(1/2)×(9+1)QO∫R. 燃料水素を排気する場合,排気するトリチウムの流量をQT。とすれば,排気系のトリチウム蓄積量は 購。=四。×(QT。/Q。)。 再生時に,遮断弁からの漏りにより,蓄積したガス量%のうちα礁が排気する空間に漏れるときは, 再生用ポンプが排気するガス量は漏りの無い時と同じでなくてはならないから %=鴎。/(1一α)。 トリチウム蓄積量も1/(1一α)倍になる。 再生時のクライオポンプ内の圧力をP,Torr,再生用排気系の実効排気速度をS.4・s−1, 漏りのコ ンダクタンスをC.4・s一∼蓄積したガスの気化速度と排気が完了するまでの時間を,それぞれ,9R Torr・ 4・S−1,τRSとするとき 399 核融合研究 第55巻第5号 1986年5月 α一五㌦ら4纏{㌦G4砿㌦(G+畠)4∫ ≒CR/(CR+SR). 排気系が排気する空間の圧力をP T。,,,排気速度をS4・,一1とするとき,漏りの無いときは, po=Q。/S,有るときは P=(QO十PRCR)/S=po×(1十PRCR/Q。)。 従って,再生時の漏りに基づくトリチウム蓄積量および排気する空間の圧力の増大の割合いを小さく保つた めには,C鳶の値を小さくすることは勿論であるが,P.≒9R/SRであるから・ CR《 SR,PR C忍≒ 9R CR/SR《QO を満足するS刃および㊨の値が必要である。 後述するように,クラィオポンプを用いる排気系の排気速度は105∼1074・s−1が必要であるため,TDF の真空容器の外にぎ≧プを置き,排気ダクトを通じて排気することはできない。何れの排気系もポンプを真 空容器内に設置,あるいは,容器壁に取り付けており,再生時に用いる大面積の遮断弁を真空容器内に設け ている。トリチウムとの共存性から有機材料のエラストマー・ガスケットを用いることができず,また,例 えば金属0一リングの使用は大きな締め付け力を必要とするだけでなく,多数回の開閉を行うための問題があ る。 4.1 エンドセル燃料水素排気系 プラズマは両端のエンドセルに流出してプラズマ・ダンプに入りガスとなる。定常運転されるTDFの排 気系は表3に示したプラズマヘの燃料水素入射量を0℃のガス量に換算した1。〒1400Aeq=125Torr・ 4・s−1,1T=540Aeq=48Torr・4・s『1に相当するP2,PTろと燃焼で生じるHeの混合ガス流量, それぞれ,QF三173,Qπ、=0.17Torr・4・ぎ1を5×10−6Torr以下の全圧力の1下で排気する。 エンドセルのガスの一部はアンカーおよぴトランジション部プラズマを包む表面から流入してイオンとな り,プラズマのβ値を高くする。上昇値を小さく抑えるためには,流入するガスの捕捉速度を,pumping NB入射によるポンピング速度に比べて充分小さくする必要がある。プラズマを包むハロー・プラズマによ るガス流入量の減衰を100以上として,エンドセル空間のガス密度は1011cm−3以下,0℃の圧力に換算し て5×10}6Torr以下であることが必要になる。 173Torr・4・s−1の燃料水素量を5×10−6Torr以下の圧力の下で排気するためには,1074・s−1の 桁の抹気速度を持つ排気系が必要になる。このため,ポンプの保守・交換も考慮して,Z)2ガスに対し 1.2×1064・s『1の排気速度を持つ,多数の単位凝縮ポンプからなる排気系をエンドセル内に設置する。 単位ポンプはL一醜冷却のシエブロン・バッフル(CB)のルーバーを閉じることにより・再生時に必要な 400 講座 5.炉工学試験用ミラーと真空技術 岡 本 遮断弁の機能も持っている。 単位ポンプ6台で1群を構成し,両エンドセルに,それぞれ,6群を設置し,g=5群で排気を続け, 残る1群を再生過程におく。計10群の排気速度はZ)2に対しSp2=7・2×1074・s−1であり・Z)T・7… に対する排気速度は分子量の平方根に逆比例する。 プラズマヘの入射量1p=125,1,=48Torr・2・s−1がプラズマとなり,再びガスに戻るとき生じる 、02・・OT・ろガスの組成比は 1p2/2:1DIT:1T2/2=1:0.77:0.15 であり,Qρ2=90,QpT=69,Q72=14Torr・6・s−1が,それぞれ排気される。エンドセルの燃料水 素全圧力は PF−Qp2/5P2+QPT川4/5Sp2)+QT2/(π万Sp2)一2・6×・σ6T・rr・ なお,ガス温度は総て0℃として論じているが,プラズマヘのガス流入量,ポンプの排気流量は両者ともガ ス分子の密度と平均熱速度の積に比例する故,後者がプラズマヘの入射量に等しく,従って一定のとき,ガ ス温度が変っても前者の値は変らない。 排気系に蓄積される燃料水素の量はQ.=173Torr・4・」1,g=5,17/(1,+1、)=0.28から,2 つの群が再生を始める時点で,総蓄積量%=5.2×102♂./(1一α)Torr・4, トリチウム総蓄積量 %=1.5×102∫R/(1一α)Torr・4ニ5・3×10−2≠,/(1一α)g,再生に入る単位ポンプの蓄積量 %=14∫R/(1一α)Torr・4となる。TDFでは∫R=600sを想定しており,単位ポンプは50min排 気・10min再生のサイクルを繰り返す。このとき,略=31/(1一α)g,%=8・4×103/(1一α)Torr 4=0.49/(1一α)molとなる。 用いる単位ポンプを図5.6に示す。L−1V2冷却のZ形2重C.βの中央ルーバーの間に,一連のL−Hβ冷 却の凝縮パネルをガラス繊維製の受けで固定したクライオ・パネルであり,大きさは2m×4m,裸のまま エンドセル内に設置する。0βの外側の2組のルーバーは中央のルーバーに蝶番で結合されており,開状態 で両面から排気する。再生の際は閉じて,上下の履い板と共に気密室をつくり,遮断弁の機能を持たせる。 再生は次の手順で行う。先ず可動ルーバーを閉じ,次に再生用排気系の弁を開き,L−Heを凝縮板か ら追い出し・L一ハら温度のC.βからの放射熱および伝導熱により凝縮した水素を気化し,排気する。再 生用排気系の弁はポンプ下部の履いとL−He冷却の再生用ポンプをつなぐ短いダクト部にある。同ダクト および再生用ポンプの容器もL一.〈ら温度にある。固体水素同位体の蒸気圧および昇華熱を表5.46) に示す。 0℃のZ)2分子の平均熱速度万=・1.2×105cm・s『1,Cβの通過係数々=0・25,凝縮面への付着確率 ・0=1から,C.β単位面積当たりの排気速度は(1/4)万々C=7.54・s樋・cm−2である。C.β両面の面 積16㎡3から単位ポンプのP2ガス排気速度は1・2×1064・s−1になる。 単位ポンプ再生時の状況を調べる実験が,同じ構造の0・5mX lmのクライオパネルとP2ガスを用いて 401 1986 5 LHe vent manifold LN2 vent manifcld Col lector pum p LHe cooled baff te Side view Liquid h8tium passages _I Liquid nitrogen pas$8ge5 LHe caoled pum ping ./:',, surface / l IQ each-O.QQ3" th i F atuminum foil hinge thermal tie5 kypicat at aN pivQt points) tl' J- l LHe LN2 cooted 62) : :h' LN2 in let manifoU intet baff le manifotd Verticat section view Oetail l5. , i774;t; /7/ ; J O)1 t; l I 5. 46) i 71 (D :EE (Q* ) Qs (K) (pa) 4.2 1 .3 (-4) 1.8 (-1) 1.5 (1) 2.4 (2) 20 1 .27 (5) 21 1 .79 (5) 1 .72 (3) 7.41 (3) 2.33 (4) 5.88 (4) ( ) F O) nT2 Qs Hs (J/mol) 6 8 10 12 14 16 18 ) nD2 nH2 " (H 823 863 908 952 993 1 ,o 25 1 ,043 1 ,039 1 ,002 966 (pa) 5.6 (-9) 2.2 (-4) 1.3 (-1) 6.7 1.0 (2) 7.36 (2) 3,41 (3) 1 .1 6 (4) 3.1 8 (4) 4.93 (4) ,tt 402 Qs Hs (Jlmol) 1 .21 9 1 1 1 1 1 1 1 1 1 ,254 ,293 ,332 ,370 ,406 ,438 ,459 ,464 ,459 (pa) 2,4 (-11) 6,7 (-6) Hs (J/mol) 5,09 (3) 1 1 1 1 1 1 1 1 1 ,58 (4) 1 ,68 1 2.59 (4) 1 ,683 1 , I (-2) 1 .o 2.3 (1) 2,22 (2) 1 .27 (3) ,424 ,458 ,495 ,532 ,569 ,605 ,638 ,665 5。炉工学試験用ミラーと真空技術 講 座 岡 本 なされている7)。ルーバーを閉じてつくる気密室を排気する再生用 ポンプはL一鑑冷却の容器に入れたL−He容器であり,q径7.5 .cmの弁を介して短管でつながり,高真空での実効排気速度は7×102 4・s−1である。クラィオパネルを入れた12004の真空容器は5.5 ×1034・sqの速度で排気し,同容器と気密室の圧力を室温のバラ 100 トロン真空計で測定する。図5・7はP2ガス蓄積量が4、9×103Torr・ 4(クライオパネルのm2当たりの蓄積量はTDF予定値の約10倍) o o のとき,再生時の真空計の値の時間経過を記録したものであり,高 × 匡 α 4864TORR・UTERS oト ur 50 い値は気密室,低い値はクライオ・パネルを入れた容器の圧力であ α ⊃ の 切 回 広 ユ る。なお,気密室の温度を80Kとするとき,その圧力は記録値の 1・9倍になる。凝縮したP2ガスは,L−2V2温度め壁面からの熱入 力により約10s後に気化を始め,35s後に全て排気されている。 こ.の間の圧力上昇の最大値は,気密室内が0.23Torr,真空容器が 0 0.02Torrであり,ルーバーからの漏り率は約30%としている。 10 20 30 40 TIME−SEC 実際に行ってはいないが,気密度を良くし,再生用排気系の実効排 7) 図5.7 再生中の圧力の時問経過 気速度を大きくすることにより,漏り率を5%にすることは容易で あると著者は述べている。 単位ポンプ6台でつくる群を図5・8に示す。群は1台の再生用排 気系を共用している。排気系設置の状況は図5.3に見ることができる。 Vacu■mve5田1 陣二rr二二司 し \ 、 輌一 _ し=:_ 61。.一一」 End vi酬 一Cryoμ』mp 、 一 一1 「『 1 −ll 一L 一 一 一 ll ・旨 峯 P盤ao》i6w 2) 図5.8 単位ポンプ6台でつくる群 403 εle》ation》iew 核融合研究第55巻第5号 1986年5月 L−He冷却系への熱入力は約4。5kWであり,6.5×1036・ガでL−Heを消費する。その内訳は次のよ うである。熱放射による入力:L−1%冷却のパネル総面積は1150㎡であり,再生用クライオポンプその他 の面積をその40%として総面積1.6×103m2。L−1V2冷却シールドとL−He冷却面間の実効放射率を 0.4として熱放射による入力は1.5kW。 ・中性子による熱入力:アルミニュム構造材の容積3.8×106c㎡},中性子による平均発熱密度を4×1σ4 ハ cm として1.5kW。 ・再生過程での熱入力:1・5kWとする。 L−1V2冷却系への熱入力は,熱放射率を0.7とし,中性子による平均発熱密度を同じ値とするとき,590 kWであり,L−1V2消費量は1・2×1044・h−1になる。 排気系の保守・交換は図5。3のcryo−panel accessを通して行う。真空容器からクライオ・パネルの群を抜 き出す状況を図5。9に示す。この図では3個のパネルで群をつくっている。パネルの群の寿命は1.1Full Power Year(FPY)と評価されている。 再生用排気系の再生に用いるポンプは真空容器の外に設けてある1800m3・ゼ]の揺動スパイラノレポンプ8) で行い,燃料処理系に移送する。到達真空度∼1(r2Torr,吐出し圧力1atm,排気速度600m3・h−1のポン プ3台を用いる。 CRYOPANEL ASSEMBLV C腕VOPA囲EL 圓A髄DL咽G END CElL DEVにε 倉 、男 \ WORK PLA●『FORM 導 2) 図5.9 エンドセル燃耕水素排気ポンプの群の取り出し 404 5・、炉工学試験用 ミラrと真空摸術、 講 座 岡.本 、4・2、干ン、Fセ!レ”嚇気牽 轡畑・1排鰍中来セ1吻,神Pτ、嘩1・,岬㊥生じる・1・7㎞・‘1、ボ1あ聴 爆料螺ガネカ郷夢で礎圧5脚炉6%;町φもと碓郷9即庄を全卑.1/・・師.すな わ’ち,51〈10−7T。,,以≠ID庄ガ牽排気するPとき,3.4×10541‘,=1以上の排気遠度が必要である。 Heを排気する機構としては,L−He冷却パネルに接着されているモレキュラー・シーブ,活性炭などの吸着媒 による吸着・L−H・冷綱1町四か、cg遡など轡桝郷嘩碑1樫みがあ徳高 享空の下砒較的多早叩ヂ醐郷とき・、どれ騨輔煙は198◎鞘特騨御熊 .そ傾騨騨料塑噸除蜘’事i噴麟P涜、,=滋,・1器盤,、、 Tesl、Ass¢mや’y(TST今)の被計がロスァラモス研騨岬9、 Lg . で進められ,燃料水素と亘eを排気するポンプとして複合クライオポ BNL’COCONUT o “ し7 CHARCOAし 亀El ンプ1すなわち,∠一He冷却CBで先ず水素を凝縮・除去し,次い 騨O L5 1ω ω1隠 でL−He冷却バネルでHeを排気するポンプ』の採用が決まったが, 匡 u ヒ5』 、ヨ‘ Heの排気にはLLNLがナルゴンガスによるクライオ・トラッピシ 00,9 LINL、ARGON レ o ・ CRYOTRAPING 脚 コリ 『窃07 グ,ブルックヘブン研究所(BNL)は活性炭,LANLはモレキュ LANL LMOLEP 俳5 ラー・シーブを,それぞれ,屠いる複合クライォポンプをつくり, Sl年VE5A 0。5 その性能を比較することとなった9)。3者の比較は1982年に10), 0.l o 、Ol l:LO』『2ρ 一↓O』多4ρ・・’5ρ、6◎ LLNL・・!むNL・2〉麻ンヲ1ま、983隼1と報告さ簸.』 ΣQτORR UT匠RS cm−2 ・蕃o〉 図5」而 水素と入リウムの混合ガスを・ 3者め比較を図5。10,表5。5に示す。モ『レキュラー・シーブは ・排気す奇3理類㊨複合クラ イオポンプの排気量とペリ 排気速度が小さく,小量の排気量でHe排気速度が急激に低下ず’ ウム排気速度の関係の実験 結果 10) 表545 水素とヘリウムの混合ガス牽耕気すう3種類q). 複合クライオポンプの実験結果 Los AIamos Cooling DTpump DTarea Hepump Hearea PT5P曾ed He speed♂’P』〆、ギ 「SpegificS僻d』 forD2 Specific Speed 2−Phase『Fbw 2 0。28m M、.S,5A.一一 斗←し』・1、1』日NLi 、、_』r唖r え ロ コ 09:㌧1,1024・m l 窯1、、』・1嘩㌧ 〇。16絶・ 11巾2、ゼ1・移㎞2 890d2ノ言』 600004/S耳』』1年oqO謄 ド1』60q2/s 2 2,85諺/5cm 2200q4/蓬『1』L−3gqg一ゑ/$2 ・:1ひ珍/5cm 2 2.02/scm盆・一 >2.02/scm2 1・OT丑/cm 2 2 2. 5・64ぎm. .飾β/軌、㌧ for←{e l Hecap弓殉. He capacity 1600T2 1・Oη/cm 6・OT4/cm lOOOOT2 >10000Tμ 4,05 核融合研究 第55巻第5号 1986年5月 る。これは,広い吸着面を提供している無数の小室をつなぐ細孔が,凝縮する水素あるいはHeによりふさ がるためである。クライオ・トラッピングと活性炭の吸着によるHe排気速度は,小量の排気量までは同じ であるが,排気量が大きくなると前者の速度は急激に低下する。どの排気量まで良いかはHe排気流量とア ルゴン吹き付け量との関係で変ると思えるが,活性炭の性能が最も良い。クライオ・トラッピングには ガスの30倍のアルゴンが必要とされており11),再生時の漏りによるプラズマ中のアルゴン不純物量の増大, 燃料処理系の負荷の増大,アルゴン吹き付け性能の維持などの不利な点が考えられる。 TDF設計当時は上記のことが明らかでなかったので,He排気系はアルゴンガスによるクライオ・トラッ ピングを用いている。すなわち,L−1V2冷却のZ形2重0βの間に配置してあるL−He冷却パネルに面し た噴霧管よりアルゴンガスを吹き付け,Heを排気する。燃料水素は凝縮,吸着あるいは取り込み排気される。 燃料水素排気系の場合と異なり,真空箱の中に図5.11のクライオパネル2組を隔壁をへだてて入れ,それ ぞれ,排気口を持つことにより,2台のポンプで単位排気系とする。1枚のフラッパー弁を共有し,排気口 の一方を開として排気,他方を閉として再生することを繰り返すことにより,一台のポンプが排気を続ける。 別に弁を設けたのは,再生時アルゴンガスが漏れることを考慮したものと思われる。現時点では活性炭を用 いることにより,燃料水素排気系と同様にクライオパネルを裸のまま配置して,同じ排気速度を小形のポン プで得ることが考えられる。 単位排気系のHe排気速度は1.5×1054・s−1であり,2台の単位排気系を各エンドセルに真空壁の外から 取り成け,計4台のポンプの排気速度6×105召・s−1により排気する。He分圧は2.8×10−7Torrとなり, 燃料水素の分圧2.6×10−6と併せて全圧は2.9×10−6Torrとなる。 LN2 一伽m vent maoifold ent lN2vent Ar Argo闘 09d manifogd 一 manifold m 「 『 } 13m 酢 ll しN2c・・led しNba 『 ba佃e 『gon P『ay t”be ■ mping pane8 Argon nifold 』_1・ 一 卿 03m 63m o 一 ツ i 1 0103m 0.1 8 LN2inlet『 manifold 曹 Side》iew 、 0.219m 0.219m manifold Vertical sectio瞬vlew 2) 図5.11 ヘリウムーアルゴン クライオ・トラッピングのパネル 406 講座 岡 本 5.F炉工学試験用ミラーと真空技術 4,3 中性粒子ビーム源燃料水素排気系 TDFでは,表5.3に見るように,4種類 のNBがプラズマに入射されるが,最もビー 、REGIO閥 REGION REG10紬 , 1 2 31 ム電流が大きい中央セル・プラズマの入射 系につき述べる。 ∼唾 曽隔∼ ∼r ∼ DT反応を起こす中央プラズマの粒子補 _一 一 給と加熱のため,80k“840A(P+80 二一一 一 =一z二 %,塔15%,塔5%)・67MWのイオ ンビームからつくる,平均エネルギー60 k6VのZ)oあるいはT。を,それぞれ,540 REAR CRVOPA閥EL A 32MW入射する。プラズマの両端近 eq くの真空壁下側に,それぞれ,4台の単位 BAFFLE FRONT CRVOPANEl 凧GNEτ 2) 図5.12 中性粒子ビーム源の断面図一1 NB源がフランヂ結合で取り付けられ,25 %の余裕度で運転される。それらのビーム・ ダクトは超電導ソレノイド・コイルとチョ ーク・コイルの間の中性子シールド内に設 匿ON SOURCE 10N gDURCEON DUMP NEUTRALiZER 置される。 単位NB源は,直径3m,長さ4mの円 CRYOPANEし 筒形の真空容器内にあり,ガス効率22% で60k“ 180Aeqを入射する。図5・12 BAFFLE 5 1 と図5.13は,その構造を示す断面図であ り,ゲート弁を介して4個のイオン源を持 つ。領域1には中性化室,イオンビーム・ ダンプ,領域2には中性化しなかったイオ ンビームを分離する磁石とイオンシールド があり,領域3にはコリメーターがあり, 1 13 、、 、馬、ノ5 イ 10N SH量ELD MAGNET NEUTRO”SHlEしD 1 巳 畏 CRYOPANEし COししIMATOR フランヂを介してビームダクトにつながる。 領域1と2は後部クライオパネルにより排 2) 図5.13 中性粒子ビーム源の断面図一2 気され,両者の閲はバッフルにより区切ら れている。領域3はビームダクトと共に前 部クラィオパネルにより排気され,領域2 との間は磁石および磁石と真空容壁をつな 407 核融合研究 第55巻第5号 1986年5月 ぐ壁により仕切られている。 中性化室を通り抜けるイオンビームにより作られたNBの強度が,軌道上のガス分子との衝突による再電 離および荷電交換により減衰する量を10%程度にする各領域の圧力およびガス発源と発生量を表5.6に示 す。 各領域に設けるクラィオパネルの構造を図5.14に示す。クライオパネルの円周方向は図5.15のように 6区画に分けられ,1区画が再生過程にあるとき,他の5区画は排気を続ける。各区画はL−1協温度の可 動ルーバーを持つ8つの小ポンプよりなり,再生時にはルーバーを閉じる。 80kVで加速された280Aのイオンビームの組成はP+224A,、砿42A,塔14Aであり,粒子ビームと しては350A、ゴ22MWになる。プラズマに入射するNBは平均として60k認,180A llMWであ eq eq, るから,パワーの差11MWはNB源内で熱となり,その配分は表5.6の各要素のガス発生量に比例する。領 2) 表5.6 ガス負荷・ガス源と発生量および目標圧力 Regi◎ns Gas bad Gas sources (Torr・liter5/5) (T◎rr−liter5/s) (T◎rr) 一4 Neutraiizers(40) ≦二10 53 1 Target P「es5u「e 10n dumps(13) 2 1.4 10nshield(1) く5×10 一5 1 一6 ≦5×10 Reionizati◎n Reionization(4) 3 VAしV寧2(Sec。ndaryt・Manifdd) VA」VE1(Primary to Secondary) FOREPUMP 、 PRIMARY LHe PANEL 、 岱、、 LOUIVRE MANIFOLD SECONDARY LHe PANE…L LN2S←鵜ELD TDF−NBIS,CRYOPANEL DETAIL (NO:TO SCAしE=) 2) 図5.14 中性粒子ビーム源のクライオ・パネルの模式的構造図一1 408 5.炉工学試験用ミラーと真空技術 講座 岡本 ’『RERεIS A’『0’『AL OF6SεCTI㎝S IN EACH CRYOP州E』, 5AREPUMPINGA吋D l ISDEGAS肇”GAT州VGIVE閥TaME CRYOPA睡Eし しにロ ハピリマ 遽ひ CRYOPANEしSEC【TlON ・ 160◎1 姦 書’ 昏 .、 、 、 〆〆1 ¥ ノ ¥ 一一一一←一一一 2) 図5.15 クライォパネルの構造図一2. 域1にある中性化室,イオンダンプでの発熱量が大部分であり,これらの表面温度は相当高くなるため, L−He冷却の凝縮パネルに入るガスはL一ノV2冷却のルーバーにより充分冷やされず,従って,凝縮係数は 小さくなることが予想される。設計はルーバー単位面積当たりの排気速度として,凝縮係数が1のときの 80%,68s}1cゴ2を想定している。 表5.6の,各領域のガス発生量に対し,・領域1,2,3にそれぞれ,有効排気面積8.3,3.3,8.7m2のク ラィオ面を配置し,6×1じ5,2.5×1σ5,5×1(「6Torrの圧力分布を得られるとしている。. 単位NB源の冷却系トの熱入力を表5・7に示す。中性子の平均発熱密度を5×1(r4W・cmr3,アルミ合金 2) 表5.7 単位中性粒子ビーム源のクライオパネルのパラメーター Parameter Region1 Regi◎n2 Region3 Effectivepumpingarea(m2) 8,3 3.3 8.7 Net capture probability 0.2 0.2 0.2 Neutron heating LN2/LHe(W) 41/40 16/15.5「 43/42 Thermal radiationlheating LN2/LHe(W) 1289/3.3 5,6/1,3 145/3,4 LN2/LHe(W〉 0/2,4 0/1.0 0/2.4 Total heat input LN2/LHe(W) 1330/45,7 72/17,8 188/48 LN2flow rate(liter5/hr) 29.3 3,3 LHe fbw rate(liters/hr) 62.8 24.5 65.9 Pressure drop thr◎ugh LN2 circuit(pst at77K) 5 3 5 Pressuredropthrough LHe 0.4 0,2 0.4 Gas condensation heat impac㌻ circuit(psiat38K) 409 4.2 核融合研究 第55巻第5号 1986年5月 製L−1V2およびL−He冷却パネルの容積を,それぞれ,3×105,、1×105cm3としたときの各領域の値で ある。熱入力が大きいため,強制冷却方式をとっている。 クライオパネルの寿命は0.5FPYと見積もられている。保守などのため単位NB源を取り外す状況を図5. 16に示す。 OR網L・DWG82・3337 FεD nx日D閃UCUEハR S翻尼し0 E閥D CELL ”AG髄E’『SHIELD& BEA麟L網εCO閉PO閥Eπ『S RE麟OVABLε ”UCしEA闘SHIElO &麟AG閥ET S約に心D CEM陀R CEIL ㍉ ㍉ 縷 CE酵『ER CE」 BEA號L困E ADJUS’『ABU…SUPPORT&PLAτFORM 2) 図5.16 中央セルの単位中性粒子ビーム源の取りはずし 5. 結 語 LLNLの炉工学試験用タンデムミラー装置TDFを紹介した。長年にわたり,多数のミラー装置を建設・ 運転した経験を持っ研究所が設計したものである。 真空技術の立場からいうと,1076・s−1の桁の大きな排気速度を持つ系を構成する単位クラィオポンプの, シェブロン・バッフルのルーバーを開閉することにより,クラィオパネルを包む真空容器と大口径の再生用 遮断弁を不要としたことは新しい技術である。高真空内で弁の開閉を実施する上の問題は,摺動面のトラィ ボロジー,アクチュエーターの選択,ルーバー閉時の漏り量を小さくする対策などであろう。 ヘリウム排気の機構には,アルゴンガスのクライオ・トラッピングよりは活性炭による吸着を用いる方が, 多くの点で得策と思える。 中性粒子ビーム源のパワー効率は50%で低く,大きなビームパワーが小さな体積のビーム源内で熱化し, クラィオ面へ熱入力が大きい。また・P2ガス温度を充分低くできないため・クラィオポンプの排気速度が 設計値以下になるおそれがある。従って,負イオン源,中性化しなかったイオンビーム・パワーの電力への 直接転換などの採用が必要であろう。 筑波大学河辺隆也先生の御協力に感謝します。 410 講座 5.炉工学試験用ミラーと真空技術 岡本 参 考 文 献 1) T.Kawabe and H.Nariai: Fusion Engineering Facility,」。Fusion Energy3(1983〉45L 2) Lawrence Livermore National Laboratoryε診α」.:∠4Tα寵ε勉MかゲoゲTec肋oJo8g De7ηoηs霊γα. 翻oπFαc臨瑠,1983,UCID・19328. 3) TASKA・Team: Tz4SK∠4−M,∠4Lo耀Cos診,1VεαγTe僧πTα裾egηMJ7γoT DωεceブoγF%s’oπ Tεc肋oJo8g Tεs伽8,1984,KfK3680,FPA−83−7,UWFDM・600。 4)苫米地顕他:核融合研究52(1984)5. 5)小林武司他:核融合研究52(1984)99. 6) トリチウムの化学=日本原子力学会(1982年3月),p28. 7)T.H.Batzer and W.R.CaH:J.Vac.Sci.TechnoL Al(1983)1315. 8)岡本耕輔:核融合研究51(1984)187. 9)D.O.Co笛n and C.R.Walth6rs:IEEE(1979)513, 10) J.L.Anderson and J.R.Bartht:Pγoc.12∫んSμπp.oπF秘sげoηTεchηoJ.(J“hch1982)p.527. 11)T.H.Batzer,R.E.Patrick and W.R.Call:J.Vac.Sci.Technol.18(1981)1125. 12)H.C.Hsech and H.A.Worwetz:J.Vac.Sci.Tec㎞ol.18(1981)1131. 411
© Copyright 2024 ExpyDoc