琵琶湖水における化学物質のリスク評価の取組について(PDF - 滋賀県

平成24年度 びわ湖セミナー
H24.7.25
コラボしが21
琵琶湖水における化学物質の
リスク評価の取組について
滋賀県琵琶湖環境科学研究センター
環境監視部門 化学環境担当
津田 泰三
化学物質による環境リスク評価の取組内容
1.環境リスク(生態リスク)初期評価について
基準のない化学物質のスクリーニング的なリスク評価
(=環境中で検出された化学物質濃度のリスクの程度がどの程度で
あるかどうかの一次的な評価)
2.生物応答を利用した水質評価(バイオアッセイ)
原因となる化学物質が不明な場合も、生物に対する化学
物質の影響を直接評価
環境省ガイドラインの環境リスク評価(1)
『健康リスク評価』
『生態リスク評価』
暴露評価
暴露評価
人に対する暴露量の見積り
生態系に対する暴露量の見積り
有害性評価
有害性評価
人の健康に対する有害性
用量-反応 関係整理
生態系に対する有害性
濃度-影響 関係整理
リスクの程度を判定
両者の結果を比較する
リスクの程度を判定
両者の結果を比較する
環境省ガイドラインの環境リスク評価(2)
-初期評価と詳細評価-
スクリーニング的な評価
初期評価
多数の化学物質の中から相対的に環境リスクが
高そうな物質をスクリーニングする。
健康リスク初期評価
生態リスク初期評価
初期評価を受けた評価
詳細評価
化学物質の有害性および暴露に関する知見を
充実させて評価し、環境リスクの
低減方策等を検討する。
健康リスク詳細評価
生態リスク詳細評価
生態リスク初期評価の手順
評価の分類
予測環境中濃度の設定
安全側の評価を行う観点から高濃度
側の実測に基づき設定
生
態
リ
ス
ク
生態リスクの判定
PEC:予測環境中濃度 PNEC:予測無影響濃度
比率:PEC/PNEC
毒性データの収集・整理
藻類,甲殻類および魚類に対する
生態毒性(EC50, LC50, NOEC 等)
0
0.1
1.0
10
現時点では作業は必要ない
情報収集に努める必要あり
詳細な評価を行う候補と考える
予測無影響濃度の設定
生物に対して有害な影響を及ぼさないと
予想される化学物質濃度
生態リスクの判定
予測環境中濃度と予測無影響濃度との
比較により評価判定
琵琶湖水中の化学物質の生態リスク初期評価
予測環境中濃度の設定
医薬品原料の2-アミノピリジン
琵琶湖水中測定濃度最高濃度
PEC 0.0022 μ g/L
毒性データの収集・整理
急性毒性値:3 生物群のデータ入手
最低濃度の魚類1100 μg/L
アセスメント係数100を適用
予測無影響濃度の設定
PNEC 1100 / 100 = 11μg/L
生態リスクの判定
PEC / PNEC = 0.0002 < 0.1
現時点では作業は必要ない
水および大気環境中未規制化学物質
環境リスク初期評価
【H24年度計画】
平成24年度の環境省の委託調査
琵琶湖水および大気環境における測定データ
基準のない新たな化学物質
測定データの環境リスク評価
対象化学物質
1.化学物質の選択
滋賀県で使用量の多いものが基本
・ 香料
ペンタナール
・ 化粧品保存料
プロピルパラベン
・ 染料中間体
3,3’-ジメチルベンジジン
生態および健康リスク初期評価
2.文献検索により毒性データを収集・整理
3.生態リスク
4.健康リスク
予測無影響濃度の設定
無毒性量等を設定
5.環境中の測定データのリスク評価
生物応答を利用した水環境管理手法
-バイオアッセイによる水質評価ー
新たな水管理手法の導入
環境省は、現行の濃度規制による化学物質の管理
を補完する新たな方法を検討するため、2009年度
から「WET手法を活用した排水規制手法検討調査」
を開始しています。
環境水への適用も検討
WET手法とは?
WET手法:欧米および韓国で既に用いられている排水規制
の一つであり、魚類、甲殻類および藻類を用いた毒性試験
の結果に基づいて排水管理を行う方法
バイオアッセイの特徴?
環境汚染について私達が知りたいこと
どのような物質を何ppm検出したかではなく、そ
こに棲む生物に影響があるのか? 無いのか?
長所
(理化学的分析
方法に対して)
短所
・
・
・
・
複合汚染の影響を評価できる。
生物に対する影響が直接測定できる。
一般市民へのアピール効果がある。
安価で簡易に早く測定できる。
・ 影響因子の同定が困難である。
バイオアッセイ(生態影響試験)の生物
-環境省検討中の方法ー
ゼブラフィッシュ
二次消費者
魚類
一次消費者
甲殻類
ムレミカヅキモ
食物連鎖における生産者
一次生産者 藻 類
ニセネコゼ
ミジンコ
バイオアッセイの種類
• 藻類生長阻害試験
化学物質に72時間暴露した際の藻類
の生長、増殖に及ぼす影響(生長阻害半数影響濃度EC50、無影響濃
度NOEC )を求めます。
• ミジンコ急性遊泳阻害試験
ミジンコ(甲殻類)を対象と
し、化学物質に48時間暴露した際のミジンコの遊泳に及ぼす影響(遊泳
阻害半数影響濃度EC50)を求めます。
• ミジンコ繁殖阻害試験
ニセネコゼミジンコ(甲殻類)を対
象とし、化学物質に8日間暴露した際のミジンコの繁殖に及ぼす影響
(繁殖阻害半数影響濃度EC50、無影響濃度NOEC)を求めます。
• 魚類急性毒性試験
魚類(メダカ)を対象とし、化学物質に
96時間暴露した際の魚類に及ぼす影響(半数致死濃度LC50)を求めま
す。
• 魚類胚毒性試験
魚類(ゼブラフィッシュ)の卵を対象とし、化
学物質に9日間暴露した際の孵化、稚魚への影響(半数致死濃度LC50、
NOEC)を求めます。
ミジンコ急性遊泳阻害試験
項目
生物種
開始時
試験期間
試験濃度
方法および条件
マグナ・プリカリア
生後24時間以内
24時間・48時間
フミン物質のフルボ酸 5 濃度
BLおよび低濃度→高濃度
(一例:BL,0.2ppm,2ppm,20ppm,200ppm)
生物数
試験方式
希釈水
温度
測定
5頭4連×5濃度
止水式
天然水
20°C±1°C
幼体の死亡数、遊泳阻害数
pH、DO(試験前後)
遊泳阻害率
EC50
結果の算出
遊泳阻害試験の様子
ダフニア
マグナ
ダフニア
プリカア
難分解性有機物のバイオアッセイによる評価検討
【H23年度実績】
スワニー川フルボ酸を用い、ミジンコ
の遊泳阻害試験の手法を検討
EC50(mg/L)
24時間 985mg/L
48時間 82.6 mg/L
フルボ酸標準 ダフニア マグナ
ミジンコの阻害は非現実的な
高濃度でのみ影響があった。
琵琶湖における難分解性有機物
バイオアッセイによる評価
【H24年度計画】
難分解性有機物(フミン物質)の生物影響を把握するた
めにミジンコおよび藻類を用いた生物試験を行います。
フミン物質の抽出
琵琶湖水より
フミン物質抽出
フミン物質のバイオアッセイ
1.ミジンコ遊泳阻害試験の実施
2.ミジンコの繁殖阻害試験の検討
3.藻類生長阻害試験実施
藻類:クラミドモナス,ムレミカズキモ