2 1 5 酢酸ピニル,無水マレイン酸共重合物 誘導体の界面活性剤に関する研究 山田正盛・高瀬愚・大下統治・奥田義昭 Studies on the Surfactants Obtained byPartialEsterfication of Vinylacetate-Maleicanhydride Copolymer ByMasamoriYAMADA ,IwaoTAKASE,TojiOSHITAandYoshiakiOKUDA 占1: a l e i c a n h y d r i d ecopolymerswithlowdegreeo fp o l y m e r i z a t i o nwerep r e V i n y l a c e t a t e pared i nt o l u e n es o l u t i o n and t h ec h a i nt r a n s f e rc o n s t a n to ft o l u e n ea tc o p o l y m e r i z a t i o n r e a c t i o nwasmeasured. Reactiono ft h e s ecopolymerswiths e v e r a lhighera l c o h o l sgavem o n o a l k y l e s t e r swhich weret e s t e da ss u r f a c t a n t s . Thed i s p e r s i n g power o fs o l i df i n ep a r t i c l e s was s u p e r i o rb u to t h e rp r o p e r t i e s were i n f e r i o rt ot h et y p i c a ls u r f a c t a n t snowi nm a r k e t . 緒 ー = 匡司 酢酸ピニノレ,無水マレイシ酸共重合物の塩または低級アノレキノレエステノレは現在,合成経糸糊材, 接着剤,染色助剤などとしてある程度実用になっているが 119 共重合物中の酸無水物基は反応性に 富むから,種々の誘導体を合成しうる D 著者らはその誘導体の一種として共重合物に種々の高級ア ルコーノレを反応せしめてエステノレを合成し,その界面活性剤としての性質について試験を行った。 合成高分子物を界面活性剤の出発物とする研究は最近多くの特許 2) と共に報告別も発表されてお り,現に著者らと同じ酢酸ピニノレ,無水マレイシ酸共重合物誘導体を塩化ビニーノレの重合における 乳化剤として用いる考案もある 430 ただし特許はその性質上綜合的なデータに欠けるうらみがあるので著者らはアルコーノレをオクチ ノレからステア 9 ; レの聞に変えて共重合物酸無水物基 l と反応せしめ,その生成物について界面活性剤 の基本的な性質と見られる表面張力,起泡性及び泡の安定性,浸透力,国体粒子の分散懸垂力など を測定し,市販白代表的製品と比較検討した。 実 2 . 験 2 . 1 低重合度共重合物の製造 2 . 1 . 1 トルエン溶媒合成高分子物はその機械的強度が問題になる場合には重合度がある程度 以上高い乙とを必要とするが,界面活性剤のように機械的強度を必要としない場合には諺透性など を考慮して,重合度はなるべく低いことが望ましい。そ乙で共重合反応の溶媒をこれまでのべ y ゼ シの代りにトノレエシを用いて低共重合物の製造実験をおこなった。酢酸ピニノレの重合におけるトノレ エY の連鎖移動定数 Cs・ 1 04ニ 2 0 . 8 9( 6 00 C) はベ yぜ yのやく 7倍である乙とは P a l i t氏ら引により報告されているが無水マレイシ酸との共重 合反応においても,その重合度低下作用がそのまま現われるか明らかでない D トノレエ y を溶媒とする共重合の実験法は既報の 6)ベシゼン搭媒と全く同様であるロえられた 8 00 C 普教授, 州文部技官 制持卒論学生 2 1 6 福井大学工学部研究報告第 1 1巻 第 ト 2号 共重合物中の酢酸ピニノレ,無水マ νイジ酸のモノレ比は1.0 7 -1 .0 8であった。これを一規定食塩水 で水溶液となし粘度を測定すると 〔 η]NaCI. 30oC=O.135 をえた o 物延一男氏 1 1 は惨透圧の測定から得た分子量をもとにして 仁 マ コ =KM<l 第 1表 共 重 合 実 験 無水マレイン酸 0 . 2モル,酢酸ピニ jレ0 . 2モル, B.P.O.2.0拓,加熱時間 3hrs の型の粘度式を出している o 乙の粘度式 ,600 となる O 乙 による分子量はやく 20 れは既報のベンゼン溶媒の数分のーの値 である。 崎明誘開問i 芳宇│分子量 実験│ 溶媒とその量 次に 2, 3の条件をかえて共重合実験 をおこなった結果を第 1表に示した。 すなわちトルエシの代りにキ V レンを 用いても,重合度の低下はわずかであっ 1 I 2 I 卜Jレ エン, 5佑量 / / 80 3 6 I 9 7 . 6 120, 6 0 0 加 3 5 I 9 7 . 6 3 I キ、ンレン, 5倍量 80 5 5 8 7 . 5 4 Iトノレエン, 5倍量 1 0 0 8 I9 5 . 1 ←一一一 I 1"'''-''' , .P . ! : i : ! . . 一 一 ! 2 0, 6 0 0 i 此 却O 1 9, 6 0 0 i │ た口また温度をあげると誘導期間は少し短かくなったが,重合度には大きな違いはなかった口 第 2表重合調節弗j を添加した共重合 無水マレイン酸,酢酸ピニル等モル, B.P.O. r s,加熱椙度 80oC,格媒 2 . 0財,加熱時間 3h トルエン 5他量,封管重合 r トJレエ Y 溶媒である程度低重合物がえられ たが,これに重合調節弗jとして知られている アセトアノレデヒドあるいは四塩化炭素をさら 「一室ヲ調面荊友吉一寸語主主扇町豆天平丁一一一ーに汽加して,その重合度低下作用をしらベた v I~(分)"YI ( 労)[51子量 実験! その量(拓 函 00 結果を第 2表 lこ示した。 第 2表は封管重合のためかどうかトノレエ y 1 0 5 0 0 8 7 . 4 2 0, 2 i アセトアルデヒド1.0 8, 1 0 0 だけの重合度は,第 1表に比べてやや高かっ 8 9 . 4 1 3 !アセトアルデヒド 4 . 0! 5 7 l 二 i l 子下云:子 l 2 4 I アセトアルデヒド 8.0 6 5 I四 塩 化 炭 素 1 .0 I 1 8 6 I四 塩 化 炭 素 6 . 0I 1 1 2 . 1 . 2 連鎖移動定数 9 6 . 0 8 8 . 5 9 8 . 3 7 0 0 たが,これにアセトアノレデヒドを添加すると 1 4, 8 0 0 重合度は明らかに低下した口ただし四塩化炭 24, 2 0 0 24, 素はほとんど影響なかった。 共重合反応における溶媒の連鎖移動定数は二つのラ U カノレと溶媒との聞 の反応の綜合値として出るので単独重合におけるように簡単でないロただし乙乙では単独重合と同 じ扱い方をして溶媒トノレエ y の量と生成共重合物の重合度との関係をもとめ,次の式を用いて常法 により連鎖移動定数を出して見た D 工 一 旦 = 1 _ =よ十 c p帽 p o ~O (MJ 伺 I れえられた平均重合度 Pno溶媒がない場合の平均重合度 Cs 連 鎖 移 動 定 数 ( s J溶 媒 濃 度 (MJ モ ノ マ ー 濃 度 重合実験の結果を第 3表に示した。 帽を縦軸に, 第 3表の l/P 第 3表 トルエン量をかえた共重合 無水マレイン酸,酢酸ビニノレ等モ Jレゆ . 2モノレ),加熱温度 8 OoC,加熱時間 3hrs, B.P.O ( モ Jレ ) モノマ~ ( モ Jレ)十ト Jレエン(モル) =0.001268 iトJレエン I B .P .0 I, " 1 . 7" . m . I1 I D .1{\~5 I . 1 0 CS) j(MJ 実験((モ川Icモ J・ レ 3)[ 分 子 量 [l/Pn I W 1 2 3 I 9 7 1 .9 3 . 0 4 . 0 I 3 . 0 4 20, 6 0 0 I I 7, 8 0 0 4 . 3 1 I 1 0 0 I 5 . 5 8 I1 5,6 4 4 7 I 5 1 5 5 8 8 5 . 0 7 . 5 1 0 . 0 (S]/(M]を横軸にとって関係点を結べば第 1図に示すような直線とな るO この直線の勾配から Cs ・104=2.82 がえられる o すなわち酢酸ピニノレ単独の値に比べるとはるかに小さくなっている o これによれば 2 1 7 酢酸ピニノレ,無水マレイン酸共重合物誘導体の界面活性剤に関する研究 ~ 一 → -CH-CH-CH-CH +tCH .¥ ~ '-v -CH-CH-CH-CH2 ・十 C H3 r1 1 CO CO 0 ¥/ o COCH3 の反応がモノマー無水マ 2 • 3 CO CO 0 ¥/ 0 COCH3 r1 1 νイン酸の存在によって , 著 し く 阻 害 さ れ る こ と に な る D 乙れは Alfrey 日O P r i c eの Q,e値の eが無水マレイン酸では+,酢 酸ピニノレではーであるために,両者の共重合速度 は典型的なラジカノレ重合のそれより大きいことと も 結びつけて考えられる o 2 . 2 共重合物エステ J (,誘導体の合成 便; トノレエシを溶媒として合成した共重合無水物の ノ レl 乙オクチノレないしステア ベ y ゼy ゲ Fノレの数種 のアルコーノレを反応せしめて,エステノレ誘導体を 合成した。オクチノレアルコーノレを例として操作の 40 数 定 J刀 MlnHJ 爪U 連 ゲノレをとり, オクチ Jレアノレコーノレ 0 .4モノレ (52g) 図 第 物 0 . 1モ ル ( 1 8 . 4g ),ベンゼン 0.5モノレ ( 3 9g) S初 移 G 鎖 大略をのべると, 200m!三ツ口プラスコに共重合 を加え, 8 0 C において 7h r sかきまぜた口つぎに減圧蒸溜によって溶媒ベンゼ yの大部分及び未 0 反応アノレコーノレの一部を除き,残波を石油エーテノレに投じると白色の沈殿をうる D これをろ過し石 油エーテノレでよく洗って未反応のアノレコールを除き滅圧で乾燥した。生成物は白色の粉末である o 乙の試料ゃく 0.5gを精秤してアセト:/50mlにとかし,水 50mlを加えて 0.5N-NaOHで 酸 価を測った口乙れからエステノレ化率を計算で出した口別に全鹸化価を測り上の酸価を引く方法でエ ステノレ化率を出したが両者は大体一致した。 エステノレ合成の条件と生成物のエステノレ化率などを一括して第 4表に示した口 第 4表 尖豆合物エステノレ誘導体 反応に触媒を用いなかった アルコールの程│共重合│加熱!加熱│エステ│以後の試験に 知 と そ の 量 │ 無 水 物 Ii M度 i 時間│ル化率│ (g) I J 5 1 1 5 2 2 6 o o 8 l l │ オクテレレ デ シ L デシ . 0 ラウリノレ 8 . 9 5 セチノレ 1 1 .8 8 ステアリ J レ1 3 . 2 (g) 1 8 . 4 1 8 . 4 9 . 2 9 . 2 9 . 2 9 . 2 I (oC) ( h r ) 8 0 8 0 9 0 9 0 9 0 9 0 7 1 3 3 0 1 5 2 0 1 7 I (箔) I おける試料名 のでエステノレ化はモノエステ ノレの範囲に止っている。表の エステノレ化率はとのモノエス 1 0 0 ククチノレ 1 0 0 レ 4 2 テノレ 100% と し た 数 字 で あ 4 2 デシ J 口 9 8 デシ J レ 9 8 る 8 7 ラウリノレ 8 7 これらのエステノレを界面活 6 性剤として試験するには試料 8 6 セチノレ 8 3 2 . 5 ステアリノレ 3 2 . 5 をまずアセトンに溶かし,水 をほぼ同量加えて苛性ソーダを以て中和し次に減圧下に加熱してアセト y を蒸発せしめ共重合物の エステノレーソーダ塩の水溶液をえた。 2 . 3 界面活性剤としての性質 2 . 3 . 1 表面張力 濃度をかえて 25 C 及び 45 C における表面張力をデュヌイ張力計で測定し 0 0 た。結果を第 5表及び第 2図に示した o これによれば表面張力はデ v ) レエステノレ 42%が最も低く, 2 5Cにおいては市販品にかなり近い。 0 2 . 3 . 2 起泡力及び泡安定性 試料の 0.2%水溶液 20m!を 100m!共栓メス v9:/Yーにとり, 25 C あるいは 45 C に保温後 20田上下にはげしく振りまぜ,ふたたびその温度に保持し O分な 0 白 2 1 8 福井大学工学部研究報告第 1 1巻 第 ト 2 号 第 5表 表 面 張 力 (dyne/cm) z型空竺10叫0.0510山判。叫 00 7 1 F湾 [ 五 ーース1 7 9 / レ 3 2 . 1 ' 't"-I~ 8 6 t:'1f~II- 'OO 再 晶一一テ~~寸レ 42 =t:)ゲン 寸 o0 . 1 02 0 . 3 0. 40 . 5 1 .0 6 ラ守リ吋レ 8 7 オ テ ザ1 1 11 0 0 ーーテーラーJ レ 守B ずyJ レ4 2 s . " o ;ス:l 1 'O~'" 毛J ゲン 30 いし 20分 後 の 泡 量 ( m l )を 測 定 し た 。 泡 安 定 性 は 5 第 2図 表 面 張 力 評 価 し た ロ 結 果 を 第 6表に示した。 これによれば起泡性は 25 C においてセチ 0 ノ レ , 45 C に お い て デ V ノレが高く温度による 0 節 6表起泡力及び泡安定性 ( 0 . 2%) I I ~ ,, 1 1 0I 1 5 I 却 I~(A (OC)1 試料名 _ _ _ _ _ _ _ _ _ 1 I (A)1 1 1 (B)I X 1 0 0 度卜 討 1 に及ばなかった。泡の安定度もセチノレは比較 的よいがこれも市販品にくらべると劣った口 漫 透 力 濃 度 0.01ないし1.0郊 の 2 5 試 料 溶 液 の 表 面 に 25x25x5mm ーのブエノレト を 静 か に の せ 沈 降 し は じ め る ま で の 時 間 10回 の 平 均 を と っ た 。 結 果 を 第 7表に示した。 沈 降 に 15分 以 上 要 す る も の を ∞ と し て 示 し た 。 表 に よ れ ば 表 面 張 力 の 最 も 低 い デ Vレ ノ 42 は浸透力も最大である口ただし市販品にはる かに劣った。 2 . 3 . 4固 体 粒 子 の 分 散 懸 垂 力 炭酸カノレ ν ワ ム , 酸 化 チ タ ン , カ ー ボ ン ブ ラ ッ ク の 3種 の固体粒子を用いた。炭酸カノレ V ワムについ て試験法を述べると,沈降性炭酸カノレ V ワム i 時間(分) 0 ¥ 1 1 4 5 nI'¥ 1 r . LV V 影響を見るととができるが,いずれも市販品 2 . 3 . 3 1 . 0 o 0 . 1 0 . 2 Q.3 014 0.5 分後と 20分 後 の 泡 量 の 比 を も と め , そ の 郊 を も っ て . LV オ ク チ Jレ 1 0 0 デシノレ 4 2 デ シ Jレ 9 8 ラウリノレ 8 7 セ チ Jレ 8 6 ステアリ Jレ3 2 . 5 モノゲン 非1 0 0 スコアロー Jレ 3 5 2 3 2 5 3 2 3 5 2 3 9 5 2 2 2 0 2 0 2 6 2 3 1 6 20I 1 9 2 2 1 8 1 4 1 7 7 7 . 3 2 0 1 9 9 5 1 7 1 7 8 5 22 2 2 8 4 . 6 1 6 1 4 6 0 . 9 .9 1 2 1 1 . 5 71 7 1 71 1 0 0 7 1 71 5 5 3 9 0 0 オクチノレ 1 デ シ Jレ 4 2 デ シ Jレ 9 8 ラウリ Jレ 8 7 セ チ Jレ 8 6 ステアリ Jレ3 2 . 5 モノゲン 特1 0 0 スコアロール 4 1 3 3 30 3 1 2 7 24 7 . 0 24 2 3 . 52 2 . 51 8 . 57 30 3 0 27 2 5 8 3 . 3 24 24 2 1 1 8 7 5 . 0 7 1 2 3 2 1 1 5 6 5 . 2 4 1 2 3 1 7 1 0 4 3 . 5 3 1 1 5 1 3 1 2 8 0 . 0 3 6 9 2 . 4 813 613513 41 8 9 . 5 5713 00ml共栓メス V リシダーに秤取し試料界面活性剤の 0.01及 び 0.1%水溶液を加え, 10 O.5gを 1 回倒立法でかきまぜ, 25 C恒温槽中に保温静置し, 30分後メス v9yYーの l 50ml線上から 10ml 0 を吸い上げ,その中に含まれている炭酸カノレ V クム量を測り,次式により懸垂力を求めた。 分散懸垂率(彪)=CaCO s含 量 x2000 酢酸ピ、ニ Jレ,無水マレイン酸共重合物誘導体の界面活性剤 l と関する研究 酸化チタシ,カーポ y ブラックについても 2 1 9 第 7表 浸 透 力 温 度 450C,時間 s e c . 試料の量,吸い上げる液量はちがうが,ほぽ ¥ ¥ ¥ 運 型 濃 度 情 ) 10・0 11 0 .閃 1 0 . 1 0 1 0 . 2 0 1 0 . 5 0 1 1 . 0 0 試 料 名 一 一 一 一 一 V V.l. V.V v..l.V v . . . . v v. V 同様な方法を行った。実験結果を第 8表 に 示 一 一一 Cわ co Cわ 0 0 Cわ c x コ C幻 オ ク チノレ 1 した。 Eわ c x コ Cね 5 レ ノ 4 2 co 5 . 4 21 デ シ .0 乙れによれば本試料の分散懸垂力は概して デ シ H 11 co co Jレ 9 8 " " f 〆 11 市販界面活性剤のそれより大きい口乙れは試 ラ ウ Jレ 8 7 M " 11 11 11 11 Jレ 8 6 λr 料の本体をなす高分子化合物の水中における セ チ " 11 11 11 11 11 リ レ ノ 3 2 . 5 ステア 分散安定性が固体粒子の附着あるいは吸着に 6 7 5 1 9 15 9 . 62 . 0 0 . 0 8 . 1 7 ゲン より,低分子化合物にくらべて影響されるこ てノ 軒1 0 0 ) レ . 3 . 0 2 . 5 2 スコアロ ー >300 3 8 . 5 1 3 . 7 3 との少ない結果と見る ζ とができる o ただし 1 1 oJ 1 1 1 庁 oJ I 庁 庁 その分散懸垂力も固体粒子の種類により,ま たエステノレの種類によりそれぞれ異なり,同 じエステノレでも濃度の低いものが高い値を示 すなどその間一定の傾向を認めることはでき ない D 3 . 考 察 以上数種の共重合物エステノレーソーダ塩に ついて界面活性剤としての性質を市販品と比 較して試験した。そのうちには表面張力のよ うに市販品にやや近いものもあるが起泡力, 浸透性において明らかに劣り,固体粒子の分 第 8表国体粒子の分散懸垂力 ( 2 50C) 記劃。 : : l T ; 。 1 3 l カーボンブラック 0 . 0 1 0 . 1 0 オ ク チ Jレ デシノレ 4 2I 5 . 2I 6 . 0 デシノレ 9 8I 7 . 8I1 0 . 4 ラウリノレ 8 7! 5 . 2I 6 . 6 セ チ Jレ 8 6 3 . 0 1 3 . 2 . 8 9 . 2 ステアリル 3 2 . 5 0 2 . 8 6 . 4 モノゲン 葬1 0 0 1 .8 2 スコアロー Jレ . 0 71 .7 6 5 . 9 7 4 . 3 7 0 . 7 7 2 . 1 6 7 . 8 .2 61 8 . 0 1 .2 1 9 . 6 3 . 2 5 . 8 4. 4 4 . 6 9 . 6 4 . 9 3 . 2 6 . 0 2 . 2 3 . 8 4 . 5 6 7 . 8 4 . 3 9 . 6 散懸垂力においてはるかにすぐれていた。乙れは高分子化合物誘導体としては一応うなずきうる性 質である口これらの界面活性剤としての性質はエステノレ成分であるアノレキール基の大きさと共にそ の結合割合にも関係する。本実験においてはエステノレ揺を規則的に変えることはできなかったので その影響を最密に比較しえないが大体の傾向をうかがう乙とはできる o まずエステノレ化率の影響をデ VJ レ42とデ V ー ノ レ 98について見ればエステノレ化率の低い方は界面活 ノ98はすでに疎水性が強すぎるのでは 性剤としてのいろいろの性質にすぐれている o すなわちデ νレ 十 ないか。 レエステノレーソーダ塩ポ Pマーの構造式は 100%エステノレ化物として次のように示され いまデ VJ るo 〆11 官 且 EEJ rEEK T且 、 L 口 I一 乙れに対しデ νレ ノ42はエステノレ化率50%としてつぎのような構造式に相当する 印叶叶ト d N a0 ' ( C H I } 9 C H 3O C O C卜 3 1 ( 0 C O O ト l . aO N川 市 、 o c ∞ O C H 3 C H 十 卜 卜 ト ト 一 一 ← 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 一 - ﹃EEJ O 肝 仰 ト H i 一 C O ( ; 0 ' [C U ト H . i 十 ト 卜 ト 一 f 一 一 一 一般に界面活性剤においてはカノレポン酸ソーダのような親水性基一個に対し疎水性基の炭素数12 1 8が適当と考えられている G 上 の 構 造 式 (1Jはほぼこれに相当するものであるが実験結果によ 220 福井大学工学部研究報告第 1 1巻 第 1・2号 れば構造式 (1) の方が界面活性剤として適当しているように見える o この異常性の原因として考 えられるのは構造式花見るように乙の場合親水性基と疎水性基とは相隣合って存在している O とれ によって疎水性の長鎖アルキノレ基は隣りの親水性基を包囲してその本来の性能をかくし,高分子化 合物全体を疎水性に偏らせてしまうのではないか。 つぎにアノレキノレ基との関係を大体近いエステノレ化率のデ VJレ9 8, ヲワリノレ 8 7,セナノレ 8 6について 比較すれば表面張力,起抱性,分散懸垂力いずれもデ νレ ノ9 8がややすぐれている O すなわちアノレキ ノレが高級になる程,界面活性剤としての性質に劣るのは上と同様に疎水性の上昇によるものと説明 される。しからば乙のようなものはエステノレ化率を低くしたらどうかと考えられるがステアロル 32 . 5が必ずしもよくない処から見れば,このような長いアノレキノレ基が距離をへだてて存在しても疎水 性,親水性の釣合いがよく保たれないものと推測される O 以上のようにして著者らの実験範囲ではデ Vレ ノ4 2は界面活性剤として最も適当であった。アノレキ J レ基は乙の場合のように中位の長さのものがよいようであるが,エステ Jレ化率42%が最適であるか どうか何とも言えない口 98%が高すぎるのであるからもっと低い処50--60%付近に適当な処がある かも知れないが,このこまかい影響についてはまた別の機会にゆずりたい。 付記 研究試料を提供していただいた荒川林産化学工業(株〉に感謝する凸また低共重合物の製 造は同社中村技師の実験を参考にした。 文 献 1) 2) 3) 4) 著者らの研究 日本特許 2 4 3, 7 0 5(昭和 3 3 年) 小田良平,寺村一広; 界面活性剤の合成と其応用(槙書庖 1 9 5 9 )参照 小西,石東哲男; 高分子化学 1 71 2 5( 1 9 6 0 ) 日本カーバイト特許公告 N o.496(昭和 3 5 年) MonsantoC h e m i c a lC o . A .P . 2, 8 9 8, 2 4 4( 1 9 5 9 ) 5) S .R .P a l i t P r o c .R o y .S o c .A 2 却 8 2( 1 9 5 4 ) 高分子実験学講座(高分子学会編) 1 0 ,2 4(昭和 3 3 年) 6) 山田正盛,高瀬巌; 福井大学工学部研究報告 7 ,2 9( 19 5 3 ) 7) 物延一男,未発表 (受理年月日 昭和 3 7 年1 0 月2 9日)
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