ノート 磁性体による高信号 artifact(遊走性金属artifact)の除去 - MT Pro

日本放射線技術学会雑誌
406
磁性体による高信号
artifact
(遊走性金属artifact)
の除去
ノート
土橋俊男・藤田 功1)・岩崎 淳・森 克彦・鈴木 健
論文受付
2001年 5 月16日
日本医科大学付属病院放射線科
1)
浦和市立病院中央放射線科
論文受理
2001年11月 5 日
Code No. 261
はじめに
スライスの共鳴周波数と等しくなることにより高信号
体内金属の影響で発生するmetal artifactには,金属
として描出される5).
近傍の画像歪,信号消失と金属材料の存在している場
画像歪および信号消失は,データ収集時のsampling
所から離れたところに発生する異常高信号
(遊走性金
bandwidth
(BW)
を広帯域に設定することにより減少す
1∼7)
.これらのmetal artifactは,体内
ることができる7,8).しかしながら,頭部magnetic
金属が存在することによりその周囲で磁場が歪み,そ
resonance imaging
(MRI)
検査において歯科の治療に用
の結果,共鳴周波数が変化してプロトンの位相がずれ
いられている金属材料の影響で発生することが多い遊
るためである.特に遊走性金属artifactについては,磁
走性金属artifactは,データ収集時のBWを広帯域に設
性体近傍で静磁場強度の増大が起こり,その影響で共
定してもその発生を防止することは不可能である.遊
鳴周波数がずれ,この共鳴周波数がずれた信号が他の
走性金属artifactの影響を少なくするには,位相エンコ
属artifact)
がある
Removal of High Signal Artifact(Marching Metal Artifact)
by the Magnetic
Substance
TOSHIO TSUCHIHASHI, ISAO FUJITA,1)ATSUSHI IWASAKI, KATSUHIKO MORI, and TAKESHI
SUZUKI
Department of Radiology , Nippon Medical School Main Hospital
1)
Department of Radiology ,Urawa Municipal Hospital
Received May 16 2001; Revision accepted Nov. 5, 2001; Code No. 261
Summary
During this project, we evaluated methods to prevent high-signal artifact
(marching metal artifact)
that
are caused by magnetic substance. Marching metal artifact is caused by the resonance frequency created by
magnetic substance. Phase encoding and frequency encoding are often switched to minimize the influence
that marching metal artifact have on the image. However, this method will only change the position at which
marching metal artifact occur. It does not have the ability to completely prevent marching metal artifact.
Our research illustrated that marching metal artifact can be prevented by changing the strength of the slice
selective gradient field at the 90° RF pulse and 180° RF pulse. In other words, marching metal artifact can be
prevented by changing the frequency bandwidth for the 90° RF pulse and 180° RF pulse. The incorporation
of the phase correct option in the device used for our research
(SIGNA LX and SIGNA CV/i)
results in different slice selective gradient field strengths at the 90° RF pulse and the 180° RF pulse. This indicates that
the use of phase correction enables marching metal artifact to be prevented.
Key words: Metal artifact, Marching metal artifact, Phase correct
別刷資料請求先:〒113-8603 文京区千駄木1-1-5
日本医科大学付属病院 放射線科 土橋俊男 宛
第 58 卷 第 3 号
磁性体による高信号artifact
(遊走性金属artifact)
の除去
(土橋・他)
407
ードと周波数エンコードの入れ替えで行われることが
多い5,7,8).ところが,ケミカルシフトartifactやflow
artifactの発生方向が変化するため,診断に支障を来す
場合があると同時に,遊走性金属artifactを完全に画像
上から除去することは不可能である.そこで今回われ
われは,遊走性金属artifactを完全に画像上から除去す
る方法について検討したので報告する.
1.方 法
使用装置は,GE横河メディカルシステム株式会社
製SIGNA horizon LX
(1.5T)
およびSIGNA CV/i
(1.5T)
Fig. 1 Geometry of magnetic substance and slice position.
である.
われわれが使用している装置では,高速SE法で撮
像した画像には遊走性金属artifactを認めず,conven-
1-1 ETLの影響
tionalなspin echo sequence
(SE法)
で撮像した画像にの
TR
(repetition time)
=3,800ms,実効TE
(高速SE法に
み遊走性金属artifactを認める.そこで,高速SE法で
おけるecho time)
=90ms,matrix=256×256
(周波数エン
選択可能ないずれかのparameterが遊走性金属artifactの
コード数×位相エンコード数)
,BW=±15.6kHz,スラ
除去に関与しているものと考え,検討を行った.検討
イス厚=6mm,スライス間隔 2 mm,スライス枚数=9
したparameterは,echo train length
(ETL)
,BW,flow
枚の撮像条件において,ETLを6,12,24と変更して
compensation,phase correctおよびXL optionである.
遊走性金属artifactの発生を比較した.本検討は,flow
なお,phase correctは,magnetic resonance signal
compensation,phase correct,XL optionのすべてを使
(MR信号)
の配列不良や渦電流による位相ずれを補正
用しない状態で行った.
する機能で,異なったecho time
(TE)
の信号を用いて
画像再構成する高速SE法特有のartifactを低減する機
1-2 BWの影響
能である.この機能を選択すると,90° radio frequency
TR=3,800ms,matrix=256×256,ETL=12,スライス
(RF)
pulse印加時と180° RF pulse印加時でスライス選
厚=6mm,スライス間隔 2mm,スライス枚数=9 枚の
択用傾斜磁場強度が異なるため,両者の周波数帯域が
撮像条件において,BWを±7.81kHz,±15.63kHz,
変化する.XL optionは,RF pulseの存続時間を短縮す
±31.25kHzと変更して遊走性金属artifactの発生を比較
ることによりecho space
(ES)
を短くする機能である.
した.なお,BWを変更するとESが変化するため実効
この機能を選択するとRF pulseの帯域が広がる.その
TEも 変 わ る が ,90msに 一 番 近 い 設 定 と し た .
ため,XL optionを選択しない場合と比べ,同一スラ
±7.81kHzでは92ms,±31.25kHzでは88msとなる.本
イス厚においてスライス選択用傾斜磁場強度が強く印
検討は,flow compensation,phase correct,XL option
加される.
のすべてを使用しない状態で行った.
それぞれの検討項目について,臨床において発生す
る遊走性金属artifactと同様なartifactが発生するように
1-3 flow compensationの影響
ファントムに磁性体を置き,各parameterを変更し
TR=3,800ms, matrix=256×256, ETL=12,
て,その影響を検討した.今回使用した磁性体は,ホ
BW=±15.63kHz,スライス厚=6mm,スライス間隔
チキスの芯
(KOKUYO STAPLE製No.SL-10N)
であ
2mm,スライス枚数=9 枚の撮像条件において,flow
る.これは,鉄を主成分とし,亜鉛メッキを施した線
compensationを使用した場合と使用しない場合で遊走
材である.鉄以外の成分は,炭素0.7∼0.85%,ケイ素
性金属artifactの発生を比較した.本検討は,phase
0.15∼0.35%,マンガン0.3∼0.6%,リン0.03%以下,
correct,XL optionを使用しない状態で行った.
イオウ0.03%以下の割合で含まれている.
ファントムの形状と磁性体の設置方法およびスライ
ス位置をFig. 1に示す.撮像断面は横断面である.今
1-4 90° RF pulseと180° RF pulseで異なる周波数帯
域を使用した場合の影響
(phase correctの影響)
回検討に用いた装置のスライスの順番は,1,3,5,
1-3と同一撮像条件において,異なる周波数帯域の
7,9,2,4,6,8となる.
90° RF pulseと180° RF pulse が印加されるphase correctを使用した場合と使用しない場合で遊走性金属artifactの 発 生 を 比 較 し た . 本 検 討 は , flow
2002 年 3 月
日本放射線技術学会雑誌
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(a)
(a)
Flow compensation
(b)
(b)
Phase correct
Fig. 2. Relationship between ETL , BW and marching metal
artifact.
ETL is unrelated in marching metal artifact
(a)
.
BW is unrelated in marching metal artifact.
However, the position of marching metal artifact
changes
(b)
.
(c)
XL option
compensation,XL optionを使用しない状態で行った.
1-5 RF pulseの照射時間の変化による影響
(XL optionの影響)
1-3と同一撮像条件において,RF pulseの照射時間
を短縮するXL optionを使用した場合と使用しない場
Fig. 3 Relationship between flow compensation,
phase correct, XL option and marching metal
artifact.
Flow compensation is unrelated in marching
metal artifact
(a)
. Phase correct is able to
remove marching metal artifact
(b)
. XL option
is unrelated in marching metal artifact. However, the position of marching metal artifact
changes
(c)
.
合で遊走性金属artifactの発生を比較した.本検討は,
flow compensation,phase correctを使用しない状態で
行った.
tifactが完全に除去された
(Fig. 3b)
.
2.結 果
2-5 RF pulseの照射時間の変化による影響
(XL op-
2-1 ETLの影響
ETLを変更しても,遊走性金属artifactの発生に全く
tionの影響)
RF pulseの照射時間を短縮するXL optionを選択する
変化がみられなかった
(Fig. 2a)
.
と,遊走性金属artifactの発生する位置が変化した.し
2-2 BWの影響
かしながら,artifactを除去することは不可能であった
BWを変更すると,遊走性金属artifactの発生する位
(Fig. 3c)
.
置が変化した.しかしながら,artifactを除去すること
3.考 察
は不可能であった
(Fig. 2b)
.
今回検討した遊走性金属artifactは,マルチスライス
2-3 flow compensationの有無による影響
の範囲内に磁性体が含まれた場合だけでなく,スライ
flow compensationの有無で,遊走性金属artifactの発
ス範囲の近傍に磁性体が存在した場合においても発生
生に全く変化がみられなかった
(Fig. 3a)
.
する.また,磁性体が存在する部分にサチュレーショ
ンpulseを印加しても発生を防止することができな
°
°
2-4 90 RF pulseと180 RF pulseで異なる周波数帯
域を使用した場合の影響
(phase correctの影響)
°
°
い.日常の臨床では,頭部MRI検査において口腔内に
歯科用の金属材料が存在する場合によく経験する.こ
異なる周波数帯域の90 RF pulseと180 RF pulseが
の遊走性金属artifactは,画像上の周波数エンコード方
印加されるphase correctを選択すると,遊走性金属ar-
向に発生し,周波数エンコード用傾斜磁場強度によっ
第 58 卷 第 3 号
磁性体による高信号artifact
(遊走性金属artifact)
の除去
(土橋・他)
409
て,発生する位置が決まる.また,スライス厚を変更
しても発生する位置が異なる.つまり,周波数エンコ
ード用傾斜磁場の方向およびその強度と,スライス選
択用傾斜磁場強度により発生する位置が決まる.した
がって,日常の検査においては,BWの変更や位相エ
ンコードと周波数エンコードを入れ替え,発生する位
置を変えてその影響を抑制することが多い5,7,8).し
かしながら,これらの方法では画像上から完全に遊走
性金属artifactを除去することは不可能であった.今回
の検討においても,周波数エンコード用の傾斜磁場強
度が変化するBWの変更やスライス選択用傾斜磁場強
度が変化するXL optionを選択すると,遊走性金属artifactの発生する位置は変化したが,遊走性金属artifact
そのものを画像上から除去することは不可能であっ
た.この遊走性金属artifactの発生原因は,磁性体によ
る共鳴周波数の変化である5).Fig. 4に示すように,磁
性体により局所的な磁場の変化が起き,その結果,磁
性体近傍の共鳴周波数がずれる.そのずれた共鳴周波
数が他のスライス位置の共鳴周波数と同じになり,そ
のスライスに重なって遊走性金属artifactとして現れ
る.90 ° RF pulse印加時と180° RF pulse印加時のスラ
Fig. 4 The principle of marching metal artifact.
The increase of a local magnetic field occurs by the
magnetic substance. As a result, resonance frequency deviates and become the same as the resonance frequency of other slices(a)
. The signal
overlaps in slice-two and marching metal artifact
occurs
(b)
.
In this case, slice selective gradient field of 90-degree pulse and 180-degree pulse are same. Therefore, the frequency band of 90-degree RF pulse and
180-degree RF pulse are same.
イス選択用傾斜磁場強度が異なると,磁性体による共
鳴周波数のずれは同じであるが,90° RF pulse印加時
と180° RF pulse印加時で,ずれた共鳴周波数の信号が
重なるスライスが異なる.このため,共鳴周波数のず
れた遊走性金属artifactの発生元となる信号に対して,
90° RF pulseだけが印加され,180° RF pulseが印加さ
れなくなり遊走性金属artifactが発生しなくなると考え
られる
(Fig. 5)
.つまり,一つのスライスに対して異
なる周波数帯域の90° RF pulseと180° RF pulseが使用
されることになるため,遊走性金属artifactが発生しな
くなる.基本的には,1 スライス以上の周波数帯域の
変化があれば遊走性金属artifactは防止できる.今回検
討に使用した装置においてphase correctを選択する
と,90° RF pulse印加時のスライス選択用傾斜磁場強
度が,約1.5倍となる.
Fig. 6に臨床例を示す.phase correctを使用しない高
速SE法および,conventionalなSE法による撮像で遊走
性金属artifactが発生している.BWを 2 倍に広げても
遊走性金属artifactの発生する位置が変わるだけで,画
像への影響は認められる
(Fig. 6a-2)
.また,位相エン
コードと周波数エンコードは入れ替えても同様に遊走
性金属artifactの発生する位置が変わるだけで,画像上
からは除去不可能である
(Fig. 6b-2)
.高速SE法を使用
し90° RF pulseと180° RF pulse印加時のスライス選択
用傾斜磁場強度が異なるphase correctを選択すること
により,画像上から遊走性金属artifactを完全に除去可
能である.Fig. 7に示すような非常に大きな遊走性金
2002 年 3 月
Fig. 5 The removal of marching metal artifact.
Slice selective gradient field is changed with 90degree RF pulse and 180-degree RF pulse
(d,e)
.
The frequency differs with 90-degree RF pulse and
180-degree RF pulse by using different slice selective gradient field. The signal
(a)
that deviated resonance frequency with slice-1 becomes the same as
the resonance frequency of slice-2 when it does 90degree RF pulse applied
(b)
. The signal that deviated resonance frequency with slice-1 differs from
the resonance frequency of slice-two when it does
180-degree RF pulse applied
(c)
. As a result, marching metal artifact is removed.
日本放射線技術学会雑誌
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Fig. 7 Influence of metal dental materials on MR imaging.
Large marching metal artifact has occurred due to
the magnetic substance
(a)
.
Marching metal artifact is removed by using phase
correct
(b)
.
a: conventional SE imaging.
b: fast SE imaging.
ETL of the fast SE imaging is three.
a
b
Fig. 6 Influence of metal dental materials on MR imaging.
Marching metal artifact has occurred with
(a-1)
and
(b-1)
. Marching metal artifact is impossible removal
with the change of BW
(a-2)
. Also, marching metal
artifact is impossible removal with the swap of phase
encoding and frequency encoding
(b-2)
. As for these
parameter, the position of marching metal artifact
only changes. Marching metal artifact is removed
by using phase correct
(a-3 ,b-3)
.
a: The image is all the fast SE imaging.
b: Image one and two are conventional SE imag ing. Image three is fast SE imaging.
ETL of the fast SE imaging is three.
a
属artifactも,本法を使用することにより完全に画像上
b
c
から除去可能である.
本方法の欠点としては,スライス選択用傾斜磁場強
度を強くすると,RF pulseの印加時間が短くなるた
め,ピークSAR
(specific absorption rate: 比吸収率)
が
上昇する場合がある.しかしながら,著者らの経験で
は臨床において制約を受けたことはなく,問題にはな
らないと考えられる.また,180° RF pulse印加時のス
ライス選択用傾斜磁場強度を弱くすると,180 ° RF
pulseの印加時間が長くなるため,高速SE法ではESが
Fig. 8 The examination in conventional SE imaging.
a: Slice selective gradient field in conventional SE
imaging is usually equal with 90-degree RF pulse
and 180-degree RF pulse.
b: Slice selective gradient field is changed to two
times with 90-degree RF pulse applied.
c: Slice selective gradient field is changed to two
times with 180-degree RF pulse applied.
The removal of marching metal artifact is possible
even the conventional SE imaging, when slice selective gradient field is changed with 90-degree RF
pulse and 180-degree RF pulse.
延長する可能性が考えられる.
今回検討した方法は,高速SE法だけでなくconventionalなSE法においても,遊走性金属artifactを除去可
correctを選択して遊走性金属artifactを防止している.
能である
(Fig. 8)
.現在われわれが使用している装置
しかしながら,conventionalなSE法においても90° RF
では,高速SE法でのみ選択可能なphase correctと呼ば
pulse印加時と180° RF pulse印加時のスライス選択用傾
°
れるoptionを選択することにより,90 RF pulse印加時
°
斜磁場強度を変え,同一スライスに対して異なる周波
と180 RF pulse印加時のスライス選択用傾斜磁場強度
数帯域の90° RF pulseと180° RF pulseを使用すること
が異なる.そのため,T1強調画像を撮像する場合にお
により,遊走性金属artifactを除去することは可能であ
いても,ETLを少なくした高速SE法を使用し,phase
る.また,今回検討に使用した装置だけではなく,す
第 58 卷 第 3 号
磁性体による高信号artifact
(遊走性金属artifact)
の除去
(土橋・他)
411
べてのMRI装置で応用可能な方法と考えられる.
4.まとめ
撮像範囲内もしくは撮像範囲近傍に磁性体が存在
今回検討した遊走性金属artifact
(磁性体が存在する
し,遊走性金属artifactの発生が予想される場合のarti-
位置から離れたスライスに現れる異常高信号)
は,90°
fact対策として,90° RF pulseと180° RF pulse印加時の
RF pulseと180° RF pulseを印加するときのスライス選
スライス選択用傾斜磁場強度を変更可能なシーケンス
択用傾斜磁場強度を変えて撮像することにより画像上
またはoptionの追加が望まれる.
から完全に除去可能である.すなわち,90° RF pulse
phase correctと同様な効果が期待できる手法とし
と180° RF pulseの周波数帯域を変えて撮像することに
て,90 ° RF pulse印加時と180° RF pulse印加時のスラ
より除去可能である.
イス選択用傾斜磁場の極性が反転するシーケンスが存
在する.この方法においても,90° RF pulseと180° RF
本研究に対しご協力いただきましたGE横河メディ
pulseの周波数帯域が異なるのは同じであり,遊走性
カルシステム株式会社MR研究室 松田 豪氏に感謝申
金属artifactを除去できるものと思われる.
し上げます.
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2002 年 3 月
日本放射線技術学会雑誌
412
図表の説明
Fig. 1
磁性体の配置とスライス位置.
Fig. 2
ETL,BWと遊走性金属artifactとの関係.
ETLは,遊走性金属artifactに無関係である
(a)
.BWは,遊走性金属artifactに無関係である.しかしながら,遊走性金属
artifactの位置は変化する
(b)
.
Fig. 3
flow compensation,phase correct,XL optionと遊走性金属artifactとの発生の関係.
flow compensationは,遊走性金属artifactに無関係である
(a)
. phase correctは,遊走性金属artifactを除去できる
(b)
.XL
optionは,遊走性金属artifactに無関係である.しかしながら,遊走性金属artifactの位置は変化する
(c)
.
Fig. 4
遊走性金属artifact発生の原理.
磁性体により局所的な磁場の増大が発生する.その結果,共鳴周波数がずれ,他のスライスの共鳴周波数と同じになる
(a)
.
スライス 2 に信号が重なり,遊走性金属artifactが発生する
(b)
.この場合,90° RF pulseと180° RF pulseのスライス選択用
傾斜磁場強度は同じである.したがって,90° RF pulseと180° RF pulseの周波数帯域は同じである.
Fig. 5
遊走性金属artifactの除去.
90° RF pulseと180° RF pulseでスライス選択用傾斜磁場強度を変える
(d, e)
.周波数帯域は,異なるスライス選択用傾斜磁
場強度を使用することにより,90° RF pulseと180° RF pulseで異なる.スライス 1 で共鳴周波数がずれた信号(a)
は,90°
RF pulseを印加するときはスライス 2 の共鳴周波数と同じになる
(b)
.スライス 1 で共鳴周波数がずれた信号は,180 ° RF
pulseを印加するときはスライス 2 の共鳴周波数と異なる
(c)
.その結果,遊走性金属artifactが除去される.
Fig. 6
歯科用金属材料のMR画像への影響.
(a-1)
および
(b-1)
で遊走性金属artifactが発生している.遊走性金属artifactは,BWの変更で除去不可能である
(a-2)
.また,
遊走性金属artifactは,位相エンコードと周波数エンコードの変更で除去不可能である
(b-2)
.これらのparameterは,遊走性
金属artifactの位置が変化するだけである.遊走性金属artifactは,phase correctを使用することにより除去されている
(a-3,
b-3)
.
a:画像はすべて高速SE法である.
b:画像 1 と画像 2 はconventional なSE法である.画像 3 は高速SE法である.
高速SE法のETLは 3 である.
Fig. 7
歯科用金属材料のMR画像への影響.
磁性体の影響で非常に大きな遊走性金属artifactが発生している
(a)
.
遊走性金属artifactは,phase correctを使用することにより除去されている
(b)
.
a:conventional なSE 法.
b:高速SE法.高速SE法のETLは 3 である.
Fig. 8
conventionalな SE法での検討.
a:conventional なSE 法におけるスライス選択用傾斜磁場強度は,通常90 ° RF pulseと180° RF pulseで等しい.
b:90 ° RF pulse印加のとき,スライス選択用傾斜磁場強度を 2 倍に変更.
c:180 ° RF pulse 印加のとき,スライス選択用傾斜磁場強度を 2 倍に変更.
遊走性金属artifactの除去は,90° RF pulseと180° RF pulseでスライス選択用傾斜磁場強度を変えると,conventional なSE
法でも可能である.
第 58 卷 第 3 号