ATMドライブスルー装置 - 三菱自動車エンジニアリング

ATM ドライブスルー装置
Automatic Teller Machine (ATM) Drive-Through System
福 田 清 正*
石 丸 孝 一*
Kiyomasa Fukuda
Takakazu Ishimaru
概 要
店舗設置型として広く普及してきた自動預金支払機(以下,ATM とする)は非常に便利で
ある一方,マイカーによる利用者にとっては,駐車場がない,または離れているといった
不便さがあった。
このたび,これらの不便さを解消し,より多くの利用者に ATM を快適にご使用いただけ
る「ATM ドライブスルー装置」の開発を設備メーカー殿よりご注文を受け,2000 年 4 月に
納入したのでそれを紹介する。
Abstract
ATMs installed in many stores are very convenient for pedestrians but are not necessarily
convenient for car users if parking facilities are distant or not available.
To make ATMs more accessible to car users, MAE developed an ATM drive-through system and delivered it to the client, a facilities manufacturer, in April 2000. This paper outlines the construction and function of the system.
Key words: ATM Drive-Through System, User Friendly, Convenient, Equal Opportunity
1. 背景・ねらい
2. 構 造 概 要
店舗設置型 ATM は利用者がその前に立って使用
ATM ドライブスルー装置は,ATM 本体ユニッ
するようにレイアウトされており,マイカーを主
トを乗せている①架台,車両と側面方向の距離を
な移動手段としている利用者にとっては,路肩ま
最適にする②幅寄せ機構,車高に対し最適な高さ
たは駐車場で車両から降りて操作する煩雑さがあ
に合わせる③昇降機構,防犯用の④シャッター機
った。これを解消するため,都市近郊部の一部の
構,車両と ATM の距離を読み取る⑤センサーの5
銀行で固定式 ATM ドライブスルーが考案された
つの要素で構成している(図1)。
が,車高や運転技量の違いから,車両に乗ったま
ま操作できるほどの自由度を達成することができ
ず,あまり発展しなかった。
そこで,使う人の立場にたち利便性を更に高め
ることをねらいとし,車両の高さや停止位置に合
わせ ATM 本体ユニットを移動させる装置を開発す
ることとなった(写真1,2)。
3. 特 長
(1) ATM が,操作しやすい最適位置まで自動移
動。
(2) 徒歩及び 2 輪車のドライバーもそのまま利用
可能。
(3) 防犯性の高いシャッターを装備。
(4) 屋外の使用で安定しているセンサーを採用。
*
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京都生産技術部
(5) 音声による警告装置を装備。
ATM ドライブスルー装置
写真1 自動車と ATM
写真2
Car and ATM
Photo 2
架台は,故障及び誤動作を防
止するため堅牢な構造とし,
④シャッター
振動を発生させないようにし
⑤対人センサー
③昇降機構
た。
また,現金投入・取り引き
②幅寄せ機構
明細書用紙の補給など頻繁に
メンテナンスが実施されるた
⑤幅寄せセンサー
①架台
め,容易にアクセスが行える
ようにした。
(2) 幅寄せ機構
ATM本体
万が一 ATM の真横に停車で
きなかったときには,車まで
の距離をセンサーが読み取り,
⑤車高センサー
最大 300 mm のストロークで
自動的に移動して,ATM 操作
に最適な距離を保てるように
した。車体装備品との干渉が
図1 正面図及び側面図
無いようにブースへの車両侵
Front and side views of system
入時から脱出時まで,建屋・
ピットなど建築構造物までを
4. 構成と機能
4.1 構 成
含め適切な位置関係を決めた。
また,現金の落とし込みがないよう,各摺動部
分の隙間をなくす機構にした。
(1) 架台
(3) 昇降機構
精密機器である ATM 本体ユニットを乗せている
ATM を操作する運転者の位置を読み取り無段階
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ATM ドライブスルー装置
2,075
550STR
750
1,110
3,250
2,500
300STR
1,300
1,000
3,000
2,900
図2 立体構造説明図
System construction
で位置制御する装置を指向したが,人体のみを判
また,紙幣や取り引き明細などの用紙類は,湿
定する最適なセンサーがないため,ブースへの車
気を帯びると ATM より上手く排出されないことか
両進入時の屋根高さを読み取り,操作者位置と等
ら,機密性を保ちかつ塵埃を防ぐため,利用され
価とするシステムとした。
ていない間は常に閉じる機構とした。
各種車両を調査した結果,例えば三菱車製ミニ
(5) センサー
カトッポのように運転席は普通乗用者並に低いの
センサーは車高・幅寄せ・対人の 3 種類を装備し
に,車高は RV 車並に高いというような例は稀であ
ている。屋外での使用環境であるため,検知対象
り,普通車と RV 車という 2 段階の設定がコストパ
車両に付着する水滴や埃などで誤作動を起こさな
フォーマンスに優れると判断し採用した。
いよう超音波センサー方式を採用した。
屋根が極端に狭く後部窓の傾斜がきつい車両な
ど,車高センサーが反応しないというトラブルを
4.2 機 能
避けるため,2 トントラックから軽自動車,スポー
これら主な 5 つの要素を電気的に制御し,ブース
ツカーからオープンカーまで各種車両により確認
に車両が進入して来たときに車高を,ATM 側面に
試験を行い,センサー感度や検知エリアの適性化
車両が停止したときに横方向距離をそれぞれ読み
を図った。
取り,ATM 利用者が操作しやすい位置に自動的に
徒歩及び 2 輪車はセンサーエリアを通過しない可
能性があるので,専用押しボタンを装備し利用可
能とした。
(4) シャッター
強制的開放または長時間開放のままである場合
は,セキュリティーサービスに信号を送るように
して防犯性を高めた。
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ATM を移動させ,利便性の向上を図った(図2)。
5. 主 要 諸 元
本装置の主要諸元を表1に示す。
6. ま と め
地元の新聞,テレビのトピックで紹介されたり,
ATM ドライブスルー装置
「駐車場を探す必要がない」,「雨の日でも濡れるこ
表1 主要諸元
System specifications
とがない」,「赤ちゃんや子供連れでも安心」とユ
ーザーの評価が上々であることを納入後に聞き及
び,当初のねらいであった「使う人の立場に立っ
た装置の開発」は達成されたと満足している。
装置外寸
(mm) 2,075L × 3,250H × 1,300W
装置重量
(kg) 2,000
シーケンサー
入出力点数 256 点 メモリー容量8K
ステップ,カレンダータイマー付き
昇降モーター
インバーター制御,出力 0.7 5 k W ,
ブレーキ付き,ギアードモーター
幅寄せモーター
インバーター制御,出力 0 . 2 k W ,
ブレーキ付き,ギアードモーター
シャッターモーター
インバーター制御,出力 0 . 1 k W ,
ブレーキ付き,ギアードモーター
など多くのものが求められるが,何よりも装置を
センサー
超音波センサー 5 個
使用する人の立場に立った,使いやすい製品を造
音声警告装置
音声録音方式,最大入力 16 パターン
しかし今回のように屋外に設置され,常に多く
の人から見られる装置の外観仕上げは,更に格段
の配慮をする必要があったことが反省点である。
今後もこのような装置の製作に当たっては,機
能,コスト,納期,安全性,操作性,環境適合性
りあげていくことを心掛けたい。
今回の業務を推進するに当たって,ご協力を頂
いた皆様に心より感謝し,この場を借りてお礼を
申し上げます。
福 田 清 正
石 丸 孝 一
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