密閉室内の燃焼性状に関する研究(第 1報) - 東京消防庁

消防科学研究所報 22号(昭和60年)
密閉室内の燃焼性状に関する研究(第 1報)
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nTheClosed Room
. (Series. 1)
鳥 井 内 郎 ・
千 葉
博日
男
田島川
武中新
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と安 併せも つ酸素指数計測用 の燃焼性試験器か
1. は じ め に
ら構成されている。
ガス混合部では さ
を素及び酸素を所定の重
量 紫濃
東京消防庁管内において年間数件の割合で自然
度(濃度範聞約 15~21%) 及び流 {I[
鎮火火災が発生している。
01e
/min
一定)に調節し,円筒燃焼室内 に供給した。
この自然鎖火現象を検討すると,燃焼によって
酸素濃度が低下し始め,燃焼限界酸素濃度付近ま
荷重変換器,増幅器及びぺ ンレコ ーダーを所
で低下す ると ,燃焼継続に必要な熱1kを維持でき
定の状態にセットし,試験片下端をガスバーナ
なくなるため鎮火すると 戸
考えられる。
ーにより点火し,それを燃焼室内 に入れ.アー
しかし,実際にこの現象を把握するには 資料が
ムに吊り下げ,測定した。
不足して いる ため難しい状況にある。
このため,密閉室内の燃焼性状について実験的
研究を行~
>,自然鎮火の可能性のわ無について判
断する際の基礎資料の一部を得た ので報告する。
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0,
2
.実 験 目 的
密閉空間内における自然鎮火の可能性の有無を
ぺ
幾度の低
判断する際の基礎資料とするため, 置
費 紫i
J
レコ
ダー
下に伴 う燃焼速度の変化及 び燃焼限界該当ミ
濃度 を
知る。
図 l 実 験 装 置 概 略 図 (1)
3 実験装置及び方法
(
2
) 燃焼ガス分析及び燃焼温度変化
実験装 f
i
'
1
の概略図を図 2に示す。
(
l
) 燃焼速度
実験装置の概略図を図 lに示す。
装i
i
Eは荷重変換器,増幅器及びぺ ンレ コ
本図は図 lの点線により固まれた部分を変え
ダ
た。図 lと比べ,測定部には温度測定のためマ
ーからなる 重2測定部と,ガス混合部と燃焼室
ルチ ロガー及び熱電対,燃焼ガス分析のためガ
ス採取用ポンプ及びサンプリングバッグを 用い
$第一研究笈
・・予防
部
予
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(1
9)
試験片表面中央にC.A 熱電対を付け,前実
て濃度測定した。
(
3
) 試験片
験と 同様に 下端に点火し,調整済みガスが流入
試験片は表 lに示す 3穐類の形状に整形後,
する燃焼室へ入れ,同時にマルチロガーをスキ
真空中 6
0
'
C加混. 2
4時間乾燥させ,絶乾状態(木
ャンさせ,試験片を吊り下げた。
材水分計にて水分測定不能状態)にした杉の辺
ガスの採取は測定開始後 15~25秒の聞のガス
をポンプによりサンプリングバッグへ入れた o
材を用いた 。
なお,採取したガスは室温で冷却後,北川式
ιおぞ 51)
表l 試験片の形状
,-
検知 t~ により一酸化炭 紫 及び二酸化炭 素に つい
「一一一一一一一一一一一ーユw///
-
悔 ×厚
さ×長
さ
No.1
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0
No.2
1
2x 3 x 1
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0
No.3
2
4x 3 x 1
5
0
3. 実験結果及び考察
)
1
(
重量減少の状況
試験片(寸法 1
2x3x1
5
0
) を供給酸素襖度
2
0.8%の雰囲気中で燃焼させた場合の盟
.
.
b
J
:の時
間的変化を図 3に示す。
試験片重量 は次の 3つの状態を経て減少する
と考えられる。蔽初は燃焼が盛んになっていく
成長期(約
図 2 実験装置概略図 (2)
o
~16秒間).次に安定した燃焼状態
である定常期(約 17秒 ~33秒間).最後に火 勢 が
2
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)
図 3 試験片重量の時間的変化
(20)
4
0
5
0
6
0
衰え消えるまでの減衰期である。定常期は可燃
物が酸素供給量に見合う最も激しい燃焼をする
期間であり,成長期は定常期に至るまでの燃焼
5
.
12030150
シヘン叶イズ
拡大期間。減衰期は可燃物の sが定常期を維持
するには不十分となり,火勢が衰えていく期間
である。
なお,この定常期におけるグラフの傾き値を
燃焼速庵とする。
c
E
(
2
) 燃焼速度と酸素濃度との関係について
れ,それらをもとにその酸素濃度における燃焼
比j
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コ
豆
速度をプロッ卜したものである。
2
.
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Z
α
4
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各穐試験片について前述と同様なグラフが得ら
JfJ
30
国
)
燃焼速度と酸紫濃度との関係を 図 4に示す。
コ
酸素濃度が 21%から低い方へと行くに従凶,
∞
3種の試験片ともに燃焼速度が直線的に減少す
10
る和買向にある。
酸素濃度が約 16%付近かう燃焼速度は急激に
降下し,約 15%付近で燃焼継続不可能, すなわ
。
。
ち燃焼限界となる。
1
5
燃焼速度が急激に降下する途中の試験片の燃
2
0
OXYGENCONCENTRATION (%)
焼状態は深部の炭化を伴わない表面燃焼や片面
燃焼という状態であった。
図 4ー 2 燃焼速度
5
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;
OXYGENCONCENTRATION (
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;
図 4-3 燃焼速度
図 4-1 燃焼速度
21
燃焼速度と酸紫濃度とが比例関係にあると思
述べられているが,木材試験片を用いた本実験
われる濃度範囲約 16~21% についてそれぞれ直
結果では 2
4四幅の種類と他 2種から得られたデ
ータを比較すると.碓井氏の説と同様の傾向を
線 回帰式を 算出した ので同じく悶 4に示す。
示す。
燃焼速度と酸紫濃度との関係に及ぼす寸法効
しかし,他 2種のデータどうしを比較しでも
果について考察してみる。
燃焼速度と酸素濃度とが比例関係にあると思
その傾向はみられなかった。
(
3
) 燃焼ガス分析について
われる淡度範囲では同一酸 素濃度 においては形
状の大きな試験片ほど燃焼速度は大きな値をと
燃焼速度と酸紫担当度が比例関係にある範囲に
っているのに対し,そうでない濃度範囲では寸
おける燃焼ガス中の二酸化炭素と一酸化炭素と
,
/
COと供給酸紫 濃 度との関係を
の濃度比 CO
法効果は成われなかった。
Q度において
ただし,この範囲では同一重
量紫i
図 5に示す。
同一燃焼速度の場合は,形状の大きな種類の試
グラフの線分は直線回帰計算による結果であ
v初期重虫)は低
験片の方が燃焼率(焼失重量
る
。
0,濃度が低下するに伴い, CO,/COが低下す
い傾向を示した。
,よりも
ることから, 0,波度が低下すると CO
碓井氏のアルコールを用いた燃焼実験により
得られた説に よると,燃焼面積が小となる :
こ
従
COの生成する比率が高くなり,不完全燃焼状
い.燃焼限界酸素濃度も小となる傾向があると
態となることを示している。
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CO
,
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CO].3.
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COと0,温度との関係
図 5 CO
(
4
) 燃焼温度変化について
各温度のヒークの挽われる順序:.:tより下の黙
潟度
燃焼;品度として試料表面温度及び雰囲主 L
電対の方が早くまむコれる傾向がある。
を測定したので図 6に示す。
なお,緩い凹凸や急激な温度上昇の原因は可
燃ガスの突出,着火によるものと思われる。
雰閤気温度に関しては,炎の上昇特性のため,
試験片表面温度に関しては,ピーク値は各条
より上方にある熱電対が高い温度を示している。
時間の経過とともに温度は上昇し,緩い凹凸や
件とも約 6
0
0
'
C強ぐらいであり,雰囲気温度のピ
温度上昇またはピーク{直を通り,
急激な j
ーク{直よりもさらに遅れる傾向がある。この遅
しだし〉
に冷やされていく。
れは,雰囲気j
温度 !
i炎の編射及び対流により影
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図 6ー l 表面温度及び雰囲気温度の時間的変化
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図 6-2 表面温度及び雰圏気温度の時間的変化
ff,j ~ を受け,早目にピークが表われるのに対し
(2) 駁主
総浪度が約 1
6%以下の燃焼速度は急激に降
1
0
2
0
3
0
表蘭温度は炎の基である炭化現象の生ずる燃焼
得が高温を示すことによる。
4 結
下し,燃焼限界に至る。
(
3
) 本実験の範囲内では燃焼限界酸素濃度は約
15 ~16% に存在する。
論
5
.おわりに
杉の辺材を 用 いた燃焼実験により次の 結論が得
られた。
(
1
) 燃焼速度は 酸素濃度が2
1%から約 1
6% 主で依
下するのに伴い 直線的 に減少する。そ H ノでii'i~3l
今後の研究としては燃焼に伴う熱収支を踏まえ,
こ│期す
密閉小空間内における換気を考慮 した燃焼 l
る法本的現象の解明に努めたい。
回帰式により表わした。
2
3.