三浦守正(宮城県) 東北大学医学部医学科卒業 PancreaticPolypeptide

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みうらもりまさ
氏名(本籍)
三浦守正(宮城県)
学位の種類
医学博士
学位記番号
医第1446号
学位授与年月日
昭和57年9月8日
学位授与の要件
学位規則第5条第2項該当
最終学歴
昭和49年3月
東北大学医学部医学科卒業
学位論文題目
PancreaticPolypeptideの血中放出機序ならび
に膵疾患時の血中動態に関する臨床的研究
(主査)
藤由夫
教授佐
藤寿雄
一77一
教授石森
土早
論文審査委員教授後
論文内容要旨
1諸言
第4の膵ホルモンとして注目されてきたPancreaticPolypeptide(PP)は,その分泌細胞の
93%以上が膵に存在しており,糖尿病や慢性膵炎との関連が興味深い。また,その分泌刺激と
しては迷走神経や消化管ホルモンの関与が考えられている。そこで私は,PPのラジオイムノア
ッセイを確立し,はじめに正常人にセクレチン,ガストリン,セルレインを投与してPPの血中
放出機序を検討し,次に糖尿病と慢性膵炎患者でのPPの血中動態について検討した。
HPancreaticPolypeptideの血中放出機序
対象および方法:健康成人を対象として,その空腹時血漿PP値および食餌負荷(700Kca1;
脂肪15g,蛋白質30g),セクレチン(50CHR単位),ガストリン(0.5μg/Kg),セルレイ
ン(30ng/Kg)静注後のPP反応をみた。また,セクレチン,セルレインについては投与量と
PP分泌反応の関係についても検討した。PPの測定は,クロラミン丁法により標識した。
1251-BPPを用いて,ラジオイムノアッセイニ抗体法で行った。標準曲線にはHPPを用いた。
成績:空腹時血漿PP値は加令とともに高くなる傾向を示したが,有意の差ではなかった。食
餌負荷では,摂取後30分で有意の増加を示し,4時間にわたり高値を持続した。セクレチン,
セルレインの投与量の増加とともに,PP反応は増加傾向を示した。また,セクレチン,ガスト
リン,セルレイン刺激後のPP分泌反応は,静注後5分で有意の増加を示した。
皿糖尿病,慢性膵炎におけるPancreaticPolypeptide血中動態
対象および方法:糖尿病患者および日本膵臓病研究会診断基準により診断した慢性膵炎患者を
対象として,その空腹時血漿PP値および食餌負荷,セクレチン,ガストリン,セルレイン静注
後,さらに糖尿病患者ではアトロピン筋注後のPP反応をみた。
成績:糖尿病患者では,空腹時血漿PP値は健常者群に比して高値を示したが,有意ではなく,
治療法による差も認められなかった。また,セクレチン,ガストリン刺激後のPP値分泌反応は,
健常者に比して高反応であったが有意ではなかった。アトロピン筋注後のPP値は有意に低下し,
セクレチン刺激にもほとんど反応しなかった。一方,慢性膵炎患者では健常者に比して,空腹時
血漿PP値は有意に低値であり,食餌負荷,セクレチン,ガストリン,セルレイン刺激後のPP
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分泌も有意に低反応であった。また,糖尿病患者および慢性膵炎糖尿病合併者へのセクレチン静
注後のPP分泌反応を比べると,慢性膵炎患者では有意に低反応であった。
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IV考按
従来,セクレチンにはPP分泌作用はないと考えられていたが,今回の著者の研究や最近の
Glaserらの報告から,セクレチンはPP分泌刺激物質であると考えられ,その作用はアトロピ
ン前処置により消失することから,迷走神経との関連が強・く示唆された。一方,糖尿病や慢性膵
炎患者では,PPの血中動態が健常者と異なっており,糖尿病患者では高反応を示す傾向があっ
た。慢性膵炎患者では,食餌負荷,消化管ホルモン刺激時のPP分泌は有意に低反応であり,こ
れはPP細胞数の減少やPP細胞の感受性の低下によるものと考えられた。このことから,高度
膵外分泌機能障害を伴う慢性膵炎の診断には,消化管ホルモン刺激後の血中PP値の測定が有用
と思われる。また,慢性膵炎糖尿病合併患者に比して,糖尿病患者でのセクレチン静注による
PPは有意に高反応であり,これは両群での糖尿病発症機序の違いを示唆しているものと考えら
れた。
V結語
1.ヒトでは,セクレチン,ガストリン,セルレイン投与によりPP分泌反応がみられた。セク
レチンはこれまでPP分泌反応を示さないとされていたが,セクレチンとPP分泌の間には用
量反応がみられ,その分泌機序には迷走神経が強く関与していた。
2.糖尿病患者では,健常者に比して空腹時血漿PPの値は高値,消化管ホルモン刺激による
PP分泌は高反応をとる傾向があった。・
3.慢性膵炎患者では,健常者に比して空腹時血漿PP値は有意に低値であり,食餌負荷,消化
昏管ホルモン刺激によるPP分泌も有意に低反応であった。これは,膵実質の線維化に伴うPP
細胞数の減少やPP細胞の感受性の低下によるものと考えられた。
一79一
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審査結果の要旨
三浦守正
Pancreoticpolypeptide(PP)は膵ホルモンとして知られているが,その分泌機構や疾患時
の意義については不明の点が多い。この研究は他の消化管ホルモンによるPP分泌ならびに糖尿
病および慢性膵炎患者でのPPの血中動態を明かにすることを目的に行ったものである。
健常成人に早朝空腹時にセクレチン(50CHR単位),ガストリン(0.5μg/kg)・セルレイン(30
ng/kg)をそれぞれ静注し血漿PPを測定すると,いずれの場合にも静注5分後に有意の上昇が
認められた。つぎに糖尿病患者および慢性膵炎患者の血漿PP動態をみると,精尿病患者では健
常者よりも高値を示し慢性膵炎患者では低値を示した。糖尿病患者ではセクレチン,ガストリン
投与後のPP反応は健常者より高反応の傾向がみられ,慢性膵炎患者では有意に低反応であった。
またアトロピン筋注後はPPは低値となりセクレチン投与による上昇も認められなかった。
これらの成績より著者はPP分泌には迷走神経が強く関連し,また糖尿病および慢性膵炎患者
のPP分泌は健常者と異り,前者で高反応,後者では低反応を示し,これはPP細胞数の増減と
PP細胞の感受性にもとずくものであろうと述べている。
この研究はPP分泌について新たな知見を加えたものであり学位授与に価する。
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