2007年7月号 『深水でイネの姿が変わる仕組み』

深水でイネの姿が変わる仕組み
編集部/協力・大阪府立大学 大江真道先生
深水イネの姿
①葉っぱが伸び
分けつが
抑えられる
④株がスッキリと開き
下葉まで光が届く
②葉耳の位置が揃い
生育が揃う
③茎が太くなり
倒れにくくなる
水を深くするだけで、イネの姿はこんなに変わる(倉持正実撮影)
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現代農業2007.7
変化その
1
葉っぱが伸び、分けつが抑えられる
やっと酸素が
吸える
▼葉耳が水没するような深水の場合
上
に
伸
び
る
苦し∼い
葉耳
分けつ
エ
チ
レ
ン
濃
度
上
昇
酸素不足のストレスによって
イネ体内のエチレン濃度が上昇
茎
葉
の
ジ
ベ
レ
リ
ン
感
受
性
高
ま
る
養
分
こっちには
養分が回って
こないのね
ジベレリン(植物を縦に伸ばすホルモン)
への感受性が高まり、イネは分けつを出
すより上に伸びることを優先する
もっと上に
伸びよう
▼葉耳より低い深水の場合
もっと酸素が
ほしいなぁ
出ようかな
どうしよう
かな
やっぱり
出ないで
いいや
孫やひ孫の
小さい分けつ
葉耳が水没するときほどではないが、この場合もイネはなるべく上に伸びようとする。
そのせいか主茎から出るような強い分けつを抑えるのは難しくても、孫やひ孫の分けつ
(肥料や天候の影響で出たり出なかったりする)は、結構抑えられる
稲作・水田活用
( 137 )
変化その
2
葉耳の位置が揃い、生育が揃う
ブ
ハ
ッ
スー
ハー
もっと
上まで
∼
深水期間中に伸びる葉は、酸素を吸うために葉耳を水面より上に
出すまで伸びる。そのため葉耳の位置が水面の高さに合わせて揃い、
分けつの揃いもよくなる
変化その
3
茎が太くなり、倒れにくくなる
ふ∼
抑えられた
分けつ
エ
チ
レ
ン
酸素不足や
水圧によって
誘導された
エチレン
エ
チ
レ
ン
が
肥
大
を
促
進
一
本
一
本
の
茎
に
十
分
養
分
が
い
く
イネの体が十分水面上に出る、
または落水することによっ
て低酸素条件が解消
とくに下位節間が太くなり
倒れにくくなる
よけいな分けつが少ないため1本の茎
にいく養分が多いこと、またエチレン
が今度は肥大を促進する方向に働くた
め、茎が太くなると考えられる
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現代農業2007.7
変化その
4 株がスッキリと開き、下葉まで光が届く
葉っぱ一枚一枚に充分
養分がいくためか面積
も厚さも長さも大きく
なり、ピンと立つ
①∼③の変化により、小さな分けつ
が抑えられて株元が混まず、茎が太
くて葉耳の位置も揃うため、パッと
開いたような印象の姿になる。葉が
大きくてピンと立つので、ますます
カッコイイ姿に見える
深水の時期による効果の違い
出
節間伸長期 穂
③
◎
一般的な
茎数の推移
有効分けつ数
決定期から最
高分けつ期ま
での処理
水位を変える必要がなく、
2週間ちょっとの短期間
で有効茎歩合が高まり、
穂も大きくなる。倒れや
すくなることもない
④
×
②
△
①
△
分けつ盛期に開始し、節間伸長とも重なるような
長期間の処理
分けつ開始期から
の処理
処理期間が短いと分けつ
⑤
×
出穂期以降
の処理
影響も効果も
ほとんど認め
られない
伸長節間が太くならない
節間伸長期 ばかりか、下位節間が著
以降の処理 しく徒長し、倒れやすく
なる
有効茎歩合は高くなるが、
破生通気腔が大きくなって
茎が弱くなる可能性あり
処理期間が長いと穂になるはずの
分けつまで抑えてしまい、最終的
な穂数が減少してしまう場合も
制御の効果がいまいち
どんな姿のイネにしたいかによって時期や方法は変わるが、もっとも効率がいいのが
③の中期深水。田んぼの条件に合わせて、ぜひ実践してみては?
もっと詳しくは大江真道先生の記事「深水栽培イネの不思議を解明」(2005年12月号、2006年1月号)をご覧ください
稲作・水田活用
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