INDUSTRIAL & FINANCIAL SYSTEMS(IFS)社 - ERP研究推進

INDUSTRIAL & FINANCIAL SYSTEMS(IFS)社
IFS 社の企業概要,ERP パッケージの構成概要及び,
分野毎における導入事例(実績)の紹介と伴に,将来展望について報告及び Q&A
1. 会社概要
(1)会社名 :INDUSTRIAL & FINANCIAL SYSTEMS AB
(2)本社所在地 :スウェーデン(リンショピン)
Teknikringen 5 SE-583 30
Linkoping,Sweden
(3)パッケージ名 :IFS Applications
(4)売上高 :126.4 億円
(97 年度,SEKI1.00 =20 円換算)
(632 million SEK)
(5)従業員数 :1,283 人以上
2.AGENDA
1998 年 6 月 2 日 9:00∼12:15
内
容
スピーカー氏名(役職)
① IFS−The company
: Mr.Ulf Annas,IFS Operations
② IFS−The market
: Mr.Ulf Annas,IFS Operations
③ IFS−Foundation1
: Mr.Patrik Palm,Manager IFS Training
④ IFS−Applications
: Mr.Stefan Pettersson,Director of Products
⑤ IFS−Active Enterprise:Mr.Stefan Carllson,Manager of Quality
−IFS Active Modeler
−Active implementation
−Active link
−Active QDS
41
⑥ IFS−Future Vision : Mr.Michael Hallen,President IFS R&D
3.内容
3.1 IFS−The company(企業概要)
(1) ビジネス・コンセプト
当社のビジネス・コンセプトは、企業発展の為には、競争と先進的なテクノロジーを基本として標準化し
たビジネス・システムを使い行動の自由が重要であるとし、その概念のもとビジネス展開をはかってき
た。
(2) IFS−国際的な ERP と EMMS ベンダー
① 収入:US$135,000,000.-以上
② 研究開発:320,000 時間
③ 顧客:950 以上
④ 子会社数:12 社
⑤ パートナー数:27 社
⑥ 進出国数:29 カ国
⑦ 従業員:1,283 人以上
(3) IFS−グローバル・パートナー
世界を7つのエリアに分け、各エリアがそれぞれ独立しており、その地域(エリア)の全て
のサポートを行う。
各エリア:北欧、中東・アフリカ、中央・東部ヨーロッパ、アメリカ、アジア、日本、R&
D
(4) IFS−社歴
1983 年:Oracle・コンサルティング・カンパニーを設立
1986 年:初めてのアプリケーションを発表(IFS メンテナンス)
1991 年:アプリケーション提供拡張用Avalon・ソース・コードを受注(1988 年∼1991
年の間、IFSはAvalonのパートナーだった。)
IFSポーランドを設立:国際化の始まり
1992 年:IFSアプリケーション−全て完成
1994 年:プロジェクト Everest−新らしいアーキテクチャを定義
1995 年:オブジェクト指向アーキテクチャによる最初のモジュールを発表
1996 年:IFS,Avalonを吸収
1998 年:Active Enterprise の紹介,Avalonの顧客をIFSアプリケーショ
ン99へアップグレード
42
(5) 日本における IFS
1998 年 3 月 :IFS アプリケーション体系の最初のものとして、IFS Maintenance をス
タート
1998 年 4 月 :IFS Manufacturing と IFS Distribution をスタート
1998 年 5 月 :NEC とIFSアプリケーションの市場・販売契約書を締結
NEC とIFSは、製番を含む日本市場要件のシステム開発共同プロジェクト
をスタート
1998 年秋
:IFS アプリケーション99をスタート予定
1998 年末
:IFS アプリケーション99/製番をスタート予定
3.2 IFS−The market(市場活動)
(1) 営業実績概要
① 850 社を越すグローバル・カスタマー
② 1997 年で 77%、そして 1998 年第一四半期で 148%の成長を遂げる(売上ベース)
③ スウェーデン以外への輸出は 52%、今後の予測として、米国、欧州、日本への伸びが期待
④ 1997 年どの同業種間での成長率は第 2 番目の順位を獲得、本年第一四半期ではトップ
(2) IFSアプリケーションの特徴
① IFS Active Enterprise 横断的アプリケーションとして、それを支えるIFSアプリケー
ション・モジュールとFOUNDATION1(F1)を提供
② IFSアプリケーション・モジュールはサードパーティーのモジュールも取り込み、企業
の各種課題を解決へと導き、そのためのモジュールをコンポーネント化して取り揃えてい
る。
③ F1 Development Cycle
④ Total Cost of Ownership
(3) IFS R&D-230 developers over the world(世界の各開発拠点で230名の開発者)
3.3 IFS−Foundation1
(1) Development Cycle
急激なビジネス変化に対応したシステム開発を念頭においている.
3階層構造(3-tier)に基づくシステム開発のサイクルを以下に捉え,スパイラルに進める.
ロジック/DB の設計はRational Roseを用い,プレゼンテーションの設計は
Centuraを用い,一元管理している.
43
① Object 指向に基づくプロセスの定義/モデル化
↓
② ロジック設計と DB 設計
↓
③ コーディング
↓
④ ユーザインターフェース構築
↓
⑤ 実行
↓
再度① モデルの見直し
↓
--------------------------(2) Foundation1 Components
F1 は以下のコンポーネントからなる.
IFS/Quality
IFS/InfoServices
IFS/Localization
IFS/Deployment
IFS/Design
IFS/Connectivity
IFS/Security
IFS/Server
IFS/Client
3.4 IFS−Applications(アプリケーションズ)
IFSのアプリケーションは、いくつかのセグメントに分けられ企業の業種にマッチしたアプ
リケーションを、提案しつ続けている。
業種セグメント 企業名(国名) 採用アプリケーション
(1)Automotive & Repetitive
Volovo Car Corp.
IFS Manufacturing
(Sweden,Belgium)
IFS Distribution
Rover Group(UK),Lotus(UK),Scania(Sweden),Volovo Trucks(Sweden)
(2) Complex Manufacturing
Ships,oil platforms, IFS Engineering
turbines IFS Manufacturing
(Norway & Scotland)
IFS Distribution
IFS Financials
44
IFS Maintenance
Caterpillar
(3) Utilities
a.Power Generation
Nuclear Power Plants
Sweden
IFS Maintenance
: 2 sites
Lithuania : 1 site
Hydro Power Plants
IFS Resource
Management
IFS Financials
Sweden&Norway
: 100 sites
Coal
Poland
b.Power Distribution
: 10 sites
High and Medium Voltage IFS Maintenance
Swedish State Power Board IFS Resource
Swedish Power Networks
Distribution Network
Management
IFS Financials
in Poland
(4) Service Operations
Stockholm Community
IFS Maintenance
(Hospital/Sweden)
IFS Distributon
Gardemoen Airport
IFS Financials
(Norway)
(5) Batch Process
Impregnated Paper
(Sweden,Canada,Malaysia)
IFS Manufacturing
Coatings
IFS Distribution
(Sweden,Finland,Germany,
IFS Financials
Netherlands)
Ink(UK)
(6) Telecom
Ericsson
IFS Maintenance
(Sweden and Norway)
IFS Manufacturing
Telia(Sweden)
IFS Distribution
Netcom(Norway)
IFS Financials
PTK Centertel(Poland)
IFS Engineering
Mutiara Telecom(Malaysia)
(7) Forest
a. Pulp & Paper
Asia Pulp and Paper
IFS Maintenance
(Indonesia)
IFS Manufacturing
45
SCA(Sweden)
IFS Distbution
Stora(Sweden)
IFS Financials
Intercell(Poland)
b. Wood
Kimball Lodging Group(UK)
(Q&A)
Q: IFS の中小企業への取り組みはどのような状況ですか。
A: 当社は当初中小企業へのアプローチから始まったので実績は多い。PC1 台で 20~30 人
規模の企業で1モジュールからでも対応している。現在までの顧客数約 950 社の約 50%が中
小企業)。
3つのモデル導入/3user ライセンスで US$ 5 万程度からある.
Q: アドオン、カスタマイズが日本では多いですが、スウェーデンでは如何ですか。
A: カテゴリーは2つあって、一つは、スタンダードを基にした改作、そして二つ目が、特注
です。因みに、受注規模は約 US$200 万程度。
30~40%が特注である.
3.5 IFS−Active Enterprise
プロジェクトの成功要因を,Knowledge(知識),Technology(技術),Functionality(機能性)と
捉え,開発ライフサイクルの各工程で以下のツールや方法論を採用している.
Active Implementation Method(AIM)
Active Modeler
Active Training
Active DQS
Active Link
(Q&A)
Q: QDSとは何の略ですか。
A: Quality and Distribution System の略で、顧客情報を管理し、客とベンダーの情報を
共有化するためのシステムです。
Q: QDSを始めてどれくらいになりますか。
A: 1987 年からですので10年になります。
Q: ユーザで改造したメンテは切れるのでしょうか。
A: QDS にて情報を共有化することが大切で、その為同じ客の情報を常に維持している。
3.6 IFS−Future Vision(将来へのビジョン)
(1)IFS R & D
要員250名
46
ソフトウェアの研究及びアーキテクチャーやテクノロジーの方向性についての調査・研究
(2)IFS Applications 98
IFS の一里塚として、オリエントナイズした設計と GUI を兼ね備えた初めてのERPパ
ッケージの一つとして、世界的に広がる可能性があり、ノルウェーでは「Product of the
year」を獲得したソフトです。既に北欧だけで50以上の新規顧客を得ています。
(3)IFS Applications 99
顧客からの要望に応じ、必要なものを加え、且つ不必要なものを取り除いて、他のシステ
ムと統合していく多機能搭載のソフト。
(質疑応答)
Q: ローカライゼーションには何人ぐらいを関与させているのですか。
A: International Standard として250名が標準の開発に専念している。
ローカライゼーションには(日本は日本と言った)各ハブが対応する体制を取っている。
Q: 複数言語の同時使用は可能か?、
A: クライアント毎に設定可能である.
Q: 大学や研究機関との関連は、
A: ヨーテボリ工科大学とは学生・大学院生20名が参画したプロジェクトを組んでいる。
特に寄付などはしていない。
Q: ユーザーコンファレンスは実施されているのですか。
A: 欧米では毎年ユーザー会を開催している。アジア地区は今後のテーマ。
5.補足コメント
今回の IFS のプレゼン他の場には日本法人社長も駆けつけ,かなりの気の入れようであった.
IFS 社の提供パッケージは,分析/設計/開発にはツール使用を前提としており,一元管理
下での開発が可能な様に思われる.
Active DQS による管理により,常に,顧客と同じ状態を保持できる機構は優れていると思わ
れる
.
47
I
n
t
ent
ia社
スウェーデンに本社を置くERPベンダー
パッケージ「MOVEX」の特徴と今後の方針を聞いた
1.会社概要
(1)会社名 :Intentia
(2)本社所在地 :スウェーデン(訪問先も同じ)
(3)売上高 :1,650msek (1997 年度、対前年 53%増)
(内、ライセンス収入 704msek)
(4)従業員数 :1,743 名
(5)顧客数 :2000 社以上
(6)その他 :ヨーロッパで No.3、世界で No.8(ガートナー調査)
2.AGENDA
1998 年 6 月 2 日(Tue) 14:00∼17:00
スピーカ :Ulf Hagberg (Process Design Manager) 他
3.「MOVEX」に関して
(1)特徴
・7 つのビジネスプロセスをベース
・「モジュール」という捉え方はせず、各プロセス毎にユーザーと内容を詰めていく
・財務に関しては、単純な経理にとどまらず、高度なマネジメントを実現する
・電話、FAX、インターネットによる受注処理
・品質、安全基準の評価が可能
・納期の管理
48
・意志決定支援環境の整備(データの統計処理)
・言語は多国語、貨幣も多国籍に対応している
(2)ターゲットユーザ
・製造系
・売上にして、5,000 万$∼10 億$の企業
(3)導入方法
・Implex(intentia Project Method)を使用。以下に示すプロセスを辿る
(a) Position
ラフなビジネスプロセスを描き、ストラクチャを決定
(b) Design
ストラクチャ、プロセスの詳細化、アプリケーションメニューの決定
(c) Configure
実際の業務にマッチさせる。教育、テスト計画も立てる
(d) Implement
(e) Startup
・BPP(Best Practice Process)の策定を目指すために使用
・以前は Configure から始めていたが、ユーザーとの乖離が大きすぎたため、Position と Design
を加えた。現在は全ユーザーにこの方式で対応している。
・Implex の期間は、最短 7 日、最長 7 ヶ月
・ツールとして、
「Movex Visual Enterprise」を使用する。当ツールは Position から使え、Configure
までをサポート
・導入ユーザーとの契約は、Position 開始時と、Design 開始時
4.コンサルタント育成
・元々の社員はビジネスプロセスを構築できなかったため、当初、Implex の Position、Design に
は引き抜いた社員を充てた。
・現在は、MOVEX Consultant から出発し、Business Consultant もしくは Senior MOVEX Consultant
を経た後、Executive Consultant へと至るパスを用いている
・コンサルタントとして、300 人のスタッフを抱えている
5.パートナー提携
・OEM パートナー、Alliance パートナー、Interface パートナーの 3 種の提携方針をもつ
6.今後の製品動向
・「SEIBAN(製番)」対応中
49
・NT への対応(DB2、SQL Server 利用)も準備中。来年初にも出荷予定
・Movex 対応 API(MAPI)の出荷も予定
7.その他
・2002 年までに、9,000msek の売上を目指す。
8.補足コメント
①日本での知名度が高くないため、どれだけ販売促進を行うかが勝負だと思う。
②Movex Visual Enterprise の機能、使用感について、もう少し確認したかった。
③コンサルタント育成までの苦労話や、適正等、についても時間があれば確認したかった。
④Intentia 社は、当初ERPの販売と導入のみをビジネスとしていた。その後、ERPパッケー
ジ導入のより上流な業務領域であるコンサルタント業務も手がけるようになった。このことは日本
のSI’erやパッケージベンダーにとって非常に参考となるケーススタディである。今後、自社
の業務内にコンサルタィングを取り入れたいベンダーは、否応なくIntentia社と似た経験
をする必要に迫られるであろう。
50
SaaB Training System社
IFS Applicationsのユーザとして訪問
IFS社との共同プロジェクトにより 1994 年から販売・購買・在庫管理、
財務会計、原価計算、MRP、ドキュメント管理など短期間に新システムの構築
1.会社概要
(1) 会社名 :Saab Training Systems
(2) 業種 :軍需産業
・軍事訓練用機器の開発、製造
・シュミレーションシステムの研究、開発
(3) 売上高 :7億クローネ(130億円)
SaaBグループ全体の年間売上が、87億クローネ(日本円換算1740億円)。
(4)販売先 :ヨーロッパ全土で 62億クローネ、(うちスェーデンが42億)
北米 18億
アジアにも販売している。日本の自衛隊もトレーニングに来社。
(5)組織 :
SaaBグループ 戦闘機等の軍事航空部門 約30%
ロケット等の宇宙部門 約27%
トレーニングシステム 約20%
SaaBトレーニングシステムは、主に戦闘機同士の航空戦やタンク等地上戦闘をシミュレーシ
ョンする装置を作っている部門からなる。
(6) 従業員数 :トレーニングシステの従業員は、約 260 人
2.AGENDA
1998 年 6 月 2 日(Tue) 9:00∼12:15
・Company Presentation
・Approach to Information Systems
51
・Co-operation with ERPvendor
・Experience from implimentation
スピーカ:・Johan ohlson
・Sunil Joshi(ロジスティック情報システムの責任者)
3.情報システムに対する考え
社員の誰もが社内の情報を活用でき、個人の仕事に役立つこと
4.ERPベンダーとの協調関係
・長期的戦略を持ったベンダー
・ビジネスの変化に柔軟に対応できるベンダー
・アップグレードパスを持つベンダー
5.ERPパッケージの導入
・1994 年までは Saab 社で開発した資材管理中心にしたDOSベースのシステム(端末入力専
門ユーザー
35)
・1994 年からIFS社と共同でプロジェクトを組み、パッケージの導入の検討を開始
・1995 年
LOTS−95(プロジェクト名)により半年でシステムを稼動(Windows ベー
ス、ユーザー
50)
・1997 年 LOT−97(プロジェクト名)によりシステムを再構築(ユーザー数 80)
・1997 年 DOC−99(プロジェクト名)により検討を開始
[導入モジュール]
販売管理、購買管理、在庫管理、財務会計、原価計算、MRP、ドキュメント管理
[体制]
・コアメンバー 4名
・ユーザ代表 4名
からなるプロジェクト。
[導入手順]
・各モジュールごとに時期をずらしてテストを行った。
・全モジュールのテストが終了した時点で総合テストを行い全モジュール同時に稼動さ
せた
[モディフィケーションとスタンダード]
スタンダード機能で使い始め、機能の追加要求が多くなったらアップグレードする。
[ユーザートレーニング]
第一ステップ 概要 2時間
第二スッテプ デモ 4時間
第三ステップ 実習 8時間
52
その後は、インターネットを使った講習や特別テーマの講習を行う。
6.補足コメント
①サーブ(SaaB)と言う会社を聞かれて皆さんは、あーあのサーブか、時々町で見るカッコいい車
の会社かと、、、思われるでしょ。 我々視察団全員、行って見てびっくりしました。それは、ま
ず会社に入って、少し挨拶があってから、会社案内のビディオを見せられた。何とそれは、戦争の
ビデオと戦車や大砲を使う教育、航空戦争シミュレーションの教育、すなわちトレーニングセンタ
の風景であった。見ているうちに、なぜここにERPが必要なのか、どのような関係があるのかと、
視察団は驚きで、ビデオを見られていたに違いない。レポートをまとめる私にとっては、戸惑いと
苛々で一瞬どうしょうか、更にすべて英語でのやりとり、通訳といったら、専門用語が多々でてく
るので、日本語になっていないし、困り果てた。ビデオの後、SAABトレーニングセンタの会社
概要というか、『トレーニングとは』という局面で、約40分位説明があった。ここでもどこが、
『ERPなのか』と、考えながら、先方にとっては、ピント外れの質問を繰り返した。というのは、
ERPをたち上げていく教育と兵器を使う教育が会い重なって、また、我々日本人には戦争には全
く縁がなく、そのうち訳が分からなくなって、誰かが、コーヒブレイクとスモーキングブレイクと
いうことになった。
ITの活用の方法等を30分ほど聞いているうちに、ERPシステムの導入の教育と、ごちゃ
ごちゃになってしまった。特に教育、ラーニングサイクルの説明が上手で、興味をそそったの
で、、、、、
②スェーデンは中立国で、今まで戦争はなかったと聞いているが、兵役制度がある国である。
③プロジェクトの進め方としては、他の会社と同じであるが、その中で興味をもったのが4つあっ
た。
ⅰ.SIベンダとどのようにコンタクトをとるか、fax e―mail会合としたが、あまり
インフォーメーションが多いのもよくないとの発言が印象的であった。そして、スタンダー
ドパッケージとモディフィケーションの問題、できるだけスタンダードに。
ⅱ.『機能と時間』というグラフのOHPでは、導入後6ヶ月までは基本機能のレベルで、その
後約1年位に、追加機能が要求され、アップグレードして、97年にはLOT―97にした。
ⅲ.『成果とリソース』というグラフのOHPで、導入後、成果を上げていってある時点まで人
は減らないという説明。
ⅳ.ユーザトレーニングとして、14時間。最初の2時間で概要、次の4時間でデモ、そして最
後の8時間の実習ということ。後はインターネットによる詳細な情報と特別テーマの講習で、
スケジュ―ルされたトレーニングシステムがあるとのこと。
53
「欧州ERPビジネス視察」を終えて
ダイヤモンドコンピューターサービス(株) 中嶋吉行
実は視察の報告をまとめようと思って昨年の米国訪問の報告書を見ていましたら、4日間で10
社訪問というハードスケジュールに驚いてしまいました。
今回の視察ツァーは昨年の反省があったのか、比較的余裕のある日程となっていました。
4ヶ国を回るものの2週間で9箇所の訪問、しかも名にしおう快楽の街アムステルダムで一夜の
快楽どころか4泊も過ごすことができる。我々が、意気高く出発したことは言うまでもありませ
ん。ハイデルベルグの美しい街、ブリュッセルの古い広場などと期待を上回る見せ物が次々と現
れて今回の旅の順調さを象徴するようでした。
ところが、旅も後半に至り、視察先での昼食、おやつ、さらにはディナーでの歓待、移動の度毎に
出てくる食事(飛行機だけでなく、列車でも食事が出てきました)で、全員が養鶏場の鳥のように
なったのでありました。
以上、仕事に関係ない話はこれくらいとして、視察の感想をいくつか述べたいと思います。
今回、一番面白く感じたのはBAANを素材にERPを教育するHOGEスクール。
確かに、ビジネスプロセスとコンピュータを併せて教育するには、ERPの教育が最適なのか。並
の経営学の講義などよりは、遙かにビジネスの構造が身につきそう。ここで教育を受けたオランダ
人大学生がヨーロッパ各地だけでなく、全世界でBAANの普及に力を発揮するのですね。BAA
Nも先は明るいようです。
SAPは相変わらずの大本営発表(公式発表の繰り返しということです)。ドイツの本社まで行
ったからには、もう少し、本音の部分での戦略、苦労話などを聞きたかった。ま、もっとも公式発
表をひとつひとつ確実に実現していくところがSAPの凄いところだとは思いますが。
SAPユーザーのGROFA社は日本では斜陽としか思えない自転車産業で業績を伸ばしている
とのこと。確かに、ヨーロッパの街はどこも自転車が多く、町中に自転車専用道が附けられている。
我々は何度も歩道と間違えて自転車専用道に入り、自転車に轢かれそうになった次第。あと、どの
街もトラム(いわゆる路面電車です)がある。街の中はトラムと自転車、企業のオフィスは郊外の
広い場所に立地し車で通勤というのがヨーロッパのスタイルとなっているようです。
それからIFSさんには、運河クルーズを初め、3日間に渡り大変お世話になりました。今回最
も我々を歓待して頂いたベンダーでした。ここまでやってもらってIFSを検討の対象に加えない
のはおかしいとの声がでるほどの歓待ぶりでした。
あと、ベンダーではインテンシアを訪問しましたが、どうもベンダー各社とも同じようなこと、
例えばコンポーネント化、サプライチェーンへの対応など、を言っているような気がします。つき
つめれば、ERPパッケージは皆同じ場所に着地するのか。各社の特色は薄まっていくのか、少し
54
寂しい気がします。
最後の訪問国スウェーデンの通貨はクローネ(1クローネは20円弱)と言います。
スウェーデンでのチップは日本語の洒落を兼ねて、5クローネ(ご苦労ね)で良いそうです。とい
うことで、今回のツァーで大変ご苦労された野村ツーリストの久保田さんとERP研究推進フォー
ラムの大石さんに5クローネ、もとい本当に有り難うございました。
55
スターリック株式会社 猪瀬 彰
あれは 1988 年 4 月、当時社命で現地法人設立の為にドイツへと
向かったフライトが日本航空の成田−フランクフルト直行就航便
JAL407 であったことを思い出し、あれから10年かと、偶然に
も同じ便で「欧州ERPビジネス視察」へ向かう機内、感慨深い
思いを抱いての、今回の旅立ちでした。
機上 12 時間、到着したドイツの空の玄関口、久しぶりのフラン
クフルト・アム・マイン空港は、EU の本格的統合を前に、設備も
さることながら、入国検査システムも変わりつつあって、今後の
欧州統合を象徴するかのような強い印象を受けました。(入国検
査時、パスポートにスタンプを誰もが押された事は、以前の入国
検査を知る人であれば、多少戸惑いを隠せなかったのでは、) そ
して、私たちの約2週間に渡るハードな視察が始まりました。
なだらかな丘陵と単調な緑の風景が続くハイデルベルグ郊外の田園の中に、ひときは威容を誇る
ビルが見え、何かこれがドイツらしいのかな、でも少々周囲とのコントラストに違和感があるなと
思える一群の建物が、今や ERP ベンダーの方やの雄SAPの本社ビルでした。
ここSAPの本拠地では、今なを新社屋ビルの建設が次々と続いており、説明に当たられた御担
当者の話では、本年度中にドイツ国内だけで 1,400 名の新規雇用が計画されており、まさに躍進途
上の勢いを感じずにはおれませんでした。
特に、ERPパッケージメーカーと言う事以前に、ドイツ企業として見ると、財閥系大企業が煌
き立つドイツ産業界の中にあって、一種独特な光を放つ新しいタイプの企業のように受け取れまし
た。多分、私の中で、その生い立ちと状況が米国マイクロソフト社とダブって見えたのかも知れま
せん。
翌日、SAPのユーザーGrofa 社を視察して、正味2日のドイツ滞在を終了して、ベルギーへ向
かい、翌日オリジン社の歓待と同時通訳を交えたミーティングを行い、その足でオランダへと移動。
オランダでは、Baan 社の関係先である Hogeschool や Baan Institute そしてヘッドオフィースと
アムステルダム周辺に分散する Baan 社の中核機関を訪問し、ある意味での充実感を得る事が出来
ました。
しかし、Baan 社訪問途上の車窓から見たオランダの風景は、あくまで平坦な草原で草を食む牛や
羊たちに代表される長閑さで、心和む心地良さがありました。逆に言えば、その長閑さの中で、最
先端技術産業の一端を担う Baan 社のような企業が培われていると思うと、ドイツやベルギーと同
じような違和感を感じたのは私だけだったのでしょうか。
以前抱いていた印象とはまた違ったオランダを胸に、一路スウェーデンへと渡った私たちを待っ
ていてくれたのは、この旅では久々の「晴天」でした。眩い北欧の太陽は、まさに白夜の季節を印
56
象づけるもので、思わず私もサングラスを入手してしまいました。
それから IFS、インテンシア、そしてユーザーであるサーブ・トレーニング・システム訪問へと
向かいましたが、やはりそれまで訪問致した中央ヨーロッパの国々とは違った北欧の厳しさの一端
を垣間見るような自然が、車窓いっぱいに広っていた事が印象的でした。
IFS 社訪問では、ストックホルムからバスにて南下、リンショピン市へ向かいましたが、出迎え
の車中から IFS のスタッフの方々には、視察中フル・アテンド頂き、大変お世話になりました。
またそれは、今回の視察で訪問致した各社様全般に言える事で、心暖かく迎え入れて頂き、合わ
せて、私どもの訪問に際して、かなりの気配されたセッティングと充実した資料には、改めて訪問
先各社様へ、この紙面をおかり致し御礼申し上げます。
さて、今回の視察全般を振り返り、特にベンダーにおいて各社の持つ製品とそれを生み出した背
景が理解出来、改めて各社のパッケージの持つ特異性が際立って見えてきたような気がします。
特に、SAP と Baan のコントラストは印象的で、「実質の SAP」,「理念の Baan」と私自身は受け
取れたのですが、非常に興味深い事でした。
ただ今回、濃厚なテーマを限られた訪問時間内でレクチャー頂いた訳ですが、かなりタイトな内
容となり、ハードなものであったなとつくづく感じております。
今後の ERP 普及を睨み、その一助を担うべく当社でもその取り組みを研究し始める事になってで
の視察参加でしたが、今回の経験は得難いものがあったと感じております。
世界的なベンダーへの訪問、ERP ユーザーとの懇談、そして、今回ご参加された他視察メンバー
との都度交わしたディスカッション等など、色々と学ぶ事の多い旅であったと改めて回顧致してお
ります。
色々な企業で構成され、立場を異にした人々の集まりであった今回の視察団も、帰国を前に心一
つにし、そして、参加メンバー22 名全員の無事な帰国を持って、収束致しました。最後になりま
したが、今回の視察を影に日向に支えて頂きましてERP研究推進フォーラム、野村ツーリストビ
ューローその他多くの関係各位に敬意と感謝を表し、結びと致します。
57
編集後記
ERP研究推進フォーラム 清水 求
私の旅への期待は、ERPビジネスを知ることができるほかに、多くの有力なERPパッケージ
が出現した根元にあるヨーロッパの文化に触れことができることでした。ERPパッケージそのも
のについては、インターネットをはじめとして文献などに触れることができますので、土地の風を
感じることやERPパッケージの開発者の哲学に触れることが重要であると思っていました。コン
ピュータやソフトウェア工学の重要な技法はヨーロッパが発祥です。したがって、有力なERPパ
ッケージの出現もヨーロッパであったことには疑問がありませんが、ヨーロッパ文化の歴史の重み
は感じざるを得ません。ヨーロッパの大地は初めての経験ですから、自然や街や人々の生活を見る
ことにより、歴史の重みや美意識について、少しでもそれを現地で検証してみたいという思いがあ
りました。私にとっては、期待通りの有意義な旅であり、訪問先での説明や雑談の中から、ERP
ビジネスや文化について少しばかり理解を深めることができたような気がします。
文化の触れ方にはいろいろな方法がありますが、私は歩いて感じることにしました。旅行前には
できるだけ多く歩いてみたいという心の準備をし、結果として80kmほど歩いたことになるかも
しれません。夜の団員との懇談も魅力のあることでしたが、胃潰瘍を理由に不義理をし、自由時間
の多くは歩きでした。北ヨーロッパのこの時期は日没が遅く、9時頃まで(ストックホルムは11
時頃まで)は明るいのでたっぷりと歩くことができます。さすがに、暗くなってから独り歩きをす
る危険は避けましたが、早朝と夕刻を合わせれば1日に6時間以上歩くことができます。
歩くことは行動範囲が小さいわけですが、深く観察することができます。何よりも汗をかき、風
を切り、雨に濡れることなどは、深い印象を体にきざみます。思い出は貴重な財産になります。車
で通り過ぎるのと異なり、人々の顔がよく見えます。一瞬の時間にしかすぎませんが、土地の生活
のにおいをかぐことによって、ヨーロッパの人間と価値観を共有したように感じます。殊に通りに
面したテーブルで飲食している人々の開放的な風景は、絵や映画でみかけたなつかしい風景のよう
でした。
日本においてERPパッケージの普及が遅れている理由のひとつに、日本における情報処理シス
テムの遅れがあるような気がします。ドイツでは滞在日数が短かったため経験できませんでしたが、
オランダやスウェーデンでは、クレジットカードで公衆電話ボックスから国際電話をかけることが
できました。ホテルの電話代が公衆電話の5∼6倍以上ですから、公衆電話でクレジットカードを
使うことができることはとても便利です。電話機の操作性も良いように感じました。ハイデルベル
グは小さな街ですが、交通システムを観察していると、日本の同程度の街よりは便が良いように思
いました。ストックホルムの地下鉄では1時間フリーという切符があり、目的地を定めずに行き当
たりばったりに乗ってみようという私にとっては助かります。身障者への配慮は、どの国も日本よ
りは量的にも質的にも配慮してあるように思いました。日本はついこの前には、経済一流と誇って
58
いたように思いますが、実は、便利な情報化はヨーロッパより遅れていたわけです。日本に帰って
から間もなくNHK教育テレビで、情報化先進地アムステルダムからの発信という番組をしていま
した。生活の中の情報化はインフラと言えますから、日本の生活レベルのインフラ遅れは企業の情
報化の遅れとも類推できるのではないでしょうか。ことに情報処理においては、ISOの標準化活
動をみても日本は後塵を拝しているのではないでしょうか。
アムステルダムで、ホテルの部屋の案内パンフレットに天気予報が載っていました。初めての外
出でそれをふと目にしたのですが、朝から良い天気であるにもかかわらず、今日の雨の確率が 60%
になっていました。予報は外れだろうと思って傘をもたずに外出しましたが、途中でスコールのよ
うな雨に出会ってしまいました。土地の情報は信用した方が良いようです。オランダやベルギーで
は、ガイドさんの案内によると、私の住んでいる富山と同じように気流の変化が激しいようであり、
めまぐるしく天気が変わるそうです。今、どのあたりを歩いているのか確認をする暇もなく雨宿り
したいかがわしそうな土産物屋のテントの軒先、雨がしばらくやみそうにないので食事に入った小
さな中華料理屋、その中華料理屋のお客は人種のルツボのような状態であり、しかも、日本よりは
効率的と見えるPCを使った情報処理(飲食店のERP?)、などなど雑食の好奇心で100倍ヨ
ーロッパを楽しんだような気がします。
ハイデルベルグ、アムステルダム、ストックホルムなどの美しい街並、それらの郊外の美しい農
村風景などは期待に反しないものでしたが、日本に戻ってから歩いた東京の風景がなつかしくもあ
りアンバランスな街並みが美しくも見えるから不思議なものです。今、日本はガーデニングブーム
であり、巡ったヨーロッパの都市以上に東京でも多くの花をみかけます。私にはヨーロッパの生活
もそれなりに良いようにも見え、一方問題も抱えていますので、どの国の社会体制が良いのかよく
分かりませんが少なくとも日本は良い国であることにはまちがいありません。ビッグバンというこ
とで、日本の経済界は困難に直面していますが、ERPについて、もっと自信をもって取り組めば
よいように思います。ただ、ここ30年間は基礎をおろそかにしてきたような気がします。基礎を
高めることは短期間で達成することは容易でありませんが、ヨーロッパの社会資本が長期にわたっ
て蓄積されてきたことを考えれば、学ぶべきものは謙虚に学び、新しいことにチャレンジして作る
べきものは作りということが大切でないかと思います。
当報告書の作成にあたり、安田団長をはじめとして団員の皆様には、短い納期までに分担分を書
いていただき、速報版を早々に出すことができました。改めてお礼申し上げます。また、訪問しま
した企業・団体様には、期間中に多大なお便宜を賜り、また、帰国後も資料などの補充を賜り厚く
お礼申し上げます。更に、日本のベンダー様にもご多忙の折りにもかかわらず査読をいただき深く
感謝いたします。旅行のお世話を下さいました野村ツーリストの久保田様をはじめ現地の通訳・ガ
イド様など関係者各位に深く感謝いたします。
59
<参加者名簿>
No.
氏名
1 安田
一彦
会社名
部署名
役職
東北大学
経済学部
教授
(団長)
2 宮口
家治
(株)トーキン
情報システム室
室長
3 藤井
洋
(株)野村総合研究所
情報技術本部事業企画室
リーダー
4 尾﨑
譲治
ウッドランド(株)
5 田村
純一
NTT
法人本部システムサービス部
ERP統括部長
6 横山
広志
NTT
第3営業部ソリューション部
担当部長
7 猪瀬
彰
スターリック(株)
8 齊藤
健
鉄道情報システム(株)
第二営業企画部営業開発課
9 鈴木
康志
富士通エフ・アイ・ピー(株)
産業システム部
10 米津
正義
(株)SRA
11 手島
徹
東電ソフトウェア(株)
システムコンサルト部
課長
12 堀口
修男
(株)シーエーシー
ERP本部
ディレクター
13 伊東
晃一
日本電気ソフトウェア(株)
NB−ERP
主任
14 中嶋
吉行
ダイヤモンドコンピューターサービス(株)
事業開発部
部長代理
15 志村
雅樹
(株)アイネス
業務統合パッケージ本部
コンサルタント
16 伊藤
周
東洋情報システム技術研究所
専務取締役所長
17 和田
英男
ERP研究推進フォーラム
専務理事
18 古山
英一
ERP研究推進フォーラム
導入手法研究部会
主席研究員
19 高須
泉樹
ERP研究推進フォーラム
導入手法研究部会
主幹研究員
20 大石
高至
ERP研究推進フォーラム
主席研究員
21 清水
求
ERP研究推進フォーラム
主幹研究員
取締役
取締役副社長
部長
常務取締役
(準不同 敬称略 参加時の組織・役職)
60
[第 2 回 海外視察調査 欧州ERPビジネス視察報告書]
(資料番号 ERP-2005-0)
発
行 平成10年9月
編
集 ERP研究推進フォーラム
〒135-8073
東京都江東区青海2-45 タイム24ビル17階
TEL:03-5531-0152 FAX:03-5531-0153
責任者
事務局長 永井 滋
印刷製本 倉敷印刷株式会社
61
ERP研究推進フォーラム
〒135-8073 東京都江東区青海2-45 タイム24ビル17階
TEL:03-5531-0152 FAX:03-5531-0153
http://www.TokyoInfo.or.jp/~ERP
62