フレッシュマンジュエリーデザインコンテスト 2013 受賞対談 - GIA Japan

フレッシュマンジュエリーデザインコンテスト 2013 受賞対談
フレッシュマン ジュエリーデザインコンテスト2013 ダブル入賞!江川麻紀さん、
大塚かなえさんおめでとうございます!
日本とアメリカのジュエリーカルチャーの
ン、
クオリティのものが少ないということ
案の切り口を求めて
で考えると、
シルバージュエリーなどは比
違い、対国内、海外へ新しいジュエリー提
でした。デザイン性、技術面、価格ゾーン
較的安価な価格ゾーンでも様々なものが
木下:ファインジュエリーとしてのエレガン
選べますが、
ファインジュエリーの「中間
トでありつつ、黒と白の羊をパールで表現
ゾーン」はそうとは言い難い、だから自分
チ、YG(イエローゴールド)と羽根モチーフ
ものを生み出せるためにきちんと勉強し
で普段使いしたくなる江川さんのロング
前からありました。難しいとわかっていま
したユーモアあふれる大塚さんのブロー
が欲しいと思えるデザイン、
クオリティの
で重厚だがパールとの軽快な組み合わせ
たい、
それを試してみたいという思いは以
ネックレスです。受賞作品のデザインの背
景、
こだわりのポイントを教えてください。
頑張る 戦う 女性よ、美しくあれ
すが…。
と同時に高額帯のジュエリーをもっ
大塚かなえさん入賞作品
と深く知りたいという思いもありました。
して羊のようなかたちになった円の連続
江川:クールとキュートというような方向
性の違いこそあれ、キラキラと輝きあるも
「勝利の女神」のイメージ
が ユ ーモラスで 、か つ自分 がある羊 の
キャラクターが好きだったことから
「羊」、 のを嫌 い な 女 性 は い な いと思 います。
(笑)私もキラキラ、ひらひら(リボンモ
「円といえばパール」
ということでこのデザ
チーフのような)は大好きです。ただし
インに決めました。
( 木下)先生にラフデ
ジュエリーの世界に飛び込もうと思った
ザインを提出した時、
「とてもいい!ユー
直接のきっかけは
モアがありつつパールの形としての球形
3.11の震災で
した
。震 災 以前 に
を見事にデザイン造形に取り込めてい
40歳という節目を
る。是非これで進めてほしい、ただし 単に
迎え、
このままでい
ポップなデザイン にならないよう、
ファイ
いのか、何か始め
ンジュエリーとしての品格を持つ一品に
よう、ステップアッ
仕上げてほしい」
と
「絶賛と提案」がかえっ
プしたいと模索す
てきました。
る気持ちが重なり、
江川麻紀さん この年からアルゼ
そこでダイアモンドやルビーのメレー
江川麻紀さん入賞作品
ンチンタンゴを始めたりしています。
ちな
を加え、パールとは違う輝きと質感を取り
みに昨年のJJF2013ニュークリエーターオ
江川:何かにチャレンジして新たなものを
込みました。羊を白黒のセットにすること
ブザイヤーでグランプリをいただいたハ
つかみ取って前進していく、そんな力強さ
で、色、質感、輝きの三種のコントラストで
イヒールのペンダントは、
自分がタンゴを
を現代女性の方は持っていると思います。
魅せられるファインジュエリーを目指して
習い始めて、初めて買ったタンゴシューズ
それを後押しするようなものをジュエ
います。パールを選んだのは球形で落ち
がモチーフです。模索を始めた矢先、震災
リーが持っているといいなと思い「勝利の
着いた輝きなので着物にも合うかなと考
を経て強く思ったのは、
「なくても生きられ
る、
でもあったらもっと充実して生きられ
女神」
のイメージでデザインをおこしました。
えたからです。自分自身が着物好きなの
る、
そのようなものに携わり生きていきた
ロンドンオリンピックの後でしたので女性
で「着物からジーンズまで」幅広く使える
い」
ということでした。
これが、
キラキラ、ひ
アスリートたちの活躍が心に残っていました
ものがいいと思いデザインしました。
らひらが好き!という部分と結びつきジュ
し、
東京招致活動もありましたから、
そうした
エリーの世界に行こう!と決意しました。
社会の動きからも影響は受けていますね。
木下:お二人がジュエリーの世界に飛び
異業種からの挑戦だったので、宝飾素
込もう、ジュエリーデザインを学ぼうと
材等のことを体系的に学んでからその世
界に入った方がよいと思いました。かつそ
白黒羊でポップだがファインジュエリーと
思ったきっかけは何だったのでしょうか?
れが業界で評価される資格のかたちに
しての品格を持ち
「着物からジーンズまで」
なっていれば、
自身の信用や後ろ盾にもつ
幅広く使える。
大塚:幼い頃から祖母や母の持つ美しい
ながると考えGIA JAPANの学校説明会に
ジュエリーに興味がありました。成長に伴
参加し入学しました。
大塚:私はデザインの段階で円をたくさん
い様々なジュエリーにふれる中で感じる
描いていたら、
これは雲?動物?というかた
ようになったのは、
日本のファインジュエ
欧米社会でジュエリー着用の機会が多いの
ちができ、
でも雲だと面白くないから、動物
の方がいいなと組み立てていきました。
そ
リーは 頑張れば手が届く価格帯 の「中間
ゾーン」で自分が欲しいと思えるデザイ
は、頻度 の問題ではなくドレスコードとい
う社会の 規制 のため。
西部開拓の
「移動」
の
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性 格 が 文 化 的 背 景 に 強 く あ り 、ジ ュ エ
リーのように資産を身に着けるかたちで
持つ習慣が育った
木下:10代〜20代をアメリカで過ごし、今
は日本で生活されている大塚さんです
が、日本とのジュエリーカルチャーの違
いは感じますか?
木下:江川さんは「バブルの時代」と「バブ
ル後」の両時代を体感された世代ですが、
現在30代以下の世代と40代以上の世代で
求められるジュエリーの傾向に違いがあ
ると感じられますか。あるとすればどん
な違いが感じられるのか、そしてどのよ
うに対応されているのでしょうか?
江川:バブルの時は学生だったためそれ
は憧れの世界でした。ただ日本の傾向の
大塚:あくまでも自分が感じたことです
が、違いは二つほどあります。一つ目は、 中では異質な時代だった思います。例え
ば、若い男性が幅広の金の喜平ネックレ
欧米社会ではファインジュエリーが着け
スを当たり前に着けるような華やかで
られるべき場所が確固としてあり、機会
も日本より断然多いということです。た 「着・飾る」時代の空気は、他の時代とは違
うと感じます。
だこれは“頻度”の問題ではなくドレス
40代以上の世代には、ジュエリーは「特
コードという社会の“規制”のためだと思
別で高揚感をもたらすもの」という感覚
います。日本では、身近で盛装していく機
があるかと思いますが、経済状況の変化
会というと、結婚式が一般的かなと感じ
もあり一般に若い世代にはそれは見られ
ますが、これはあちらのパーティーのイ
ません。
メージですと、
「 昼間のパーティー」くら
先日20代の方々とお話ししましたが、
い か と 考 え ま す 。欧 米 社 会 で は 、パ ー
今は300円ショップでもアクセサリーが
ティーでも昼と夜で違うドレスコードが
売られ、そこで購入がされたりします。そ
ありますから、当然ジュエリーも相応の
こには
「着・飾る」
という感覚はなく特別な
も の が 必 要 に な り ま す 。ち な み に 夜 の
思い入れもありません。
その象徴がジュエ
パーティーの盛装では裾は長いが上半身
リーの収納。尋ねると、机の奥にごちゃっ
は肌の露出があり、昼のそれは裾は短く
としまっている、
壁にかけたりしていると
上半身は服で覆われます。
のこと。
ただし例えば頑張って買った20万
二つ目は、様々な人がジュエリーを身
のジュエリーを同じように扱えるかと聞
に着けています
くと、
やはりそれはできないと答えてくれ
が 、そ れ は フ ァ イ
ます。そしてそんな一品は、着用のシーン
ンジュエリーがい
きっか
もワクワクする特別な時でしょう。
ざ と い う 時 、売 っ
けは300円のアクセサリーでもジュエリー
て お 金 を 得 る「 身
を着けることによって、
特別な高揚感を味
に 着 け る 資 産 」と
わってもらえたらと思います。
そのために
いう側面を持ち合
私は、
欧米社会のようにジュエリーや宝石
大塚かなえさん わせているからと
が、
ご家族のかけがえのない分身のように
考えます。いつどうなるか分からない、だ
特別なものとして受け継がれることを推
からこそ「資産をまとう」という考えがあ
し進めていきたいです。
り 、ど ん な 階 級 ク ラ ス の 方 で も ジ ュ エ
リーを着ける、着けなれているというこ
対海外ではインパクトあるデザインが
とです。歳を重ねる毎にそれを増やして
鍵。アコヤの強い光沢と金属チェーンの
いくのも当たり前という感覚があると感
組み合わせでネックレスを差別化。ジュ
じます。そんなわけでジュエリーの市場
エリーは自分のためのものだけでなく一
スケールは大きいと思います。
緒にいる方のためのものでもある
アメリカは西部開拓の歴史にみられる
ように、
「 移動」の性格が文化的背景に強
木下:今回の受賞作では斬新なパール使
くあるのではないかと考えます。開拓時
いが印象的です。新しいジュエリー提案
代は、移動手段も馬車ですから、資産も
の切り口としてイメージしていることを
ジュエリーのような身に着けるかたちで
聞かせてください。さらに日本を代表す
持つ習慣が育ったのは理にかなっている
る素材として、グローバルに受け入れら
と思います。
れるアコヤのジュエリーを考えるとした
ら、具体的にどのようなデザインのもの
40代以上=ジュエリーは「特別で高揚感
が考えられるでしょうか?
をもたらすもの」という感覚。若い世代に
は、一般的にそれはない。だからジュエ
大塚:対国内としては50、60代の今まで
リーや宝石が、特別なものとして家族の
あまりジュエリーに近づいてこられなか
中で受け継がれることを推し進めたい
った方々を対象に、派手ではないスタイ
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ル、大きくない中石、メタルはホワイト
で、まずはダイアモンドのジュエリーか
らというかたちで提案していければと思
います。
江川:日本では、個別にはシンプルで、組
み合わせることによってゴージャスにも
見せられる、というかたちがマッチする
かと思いますが、対海外ではやはりイン
パクトを与えられるデザインが鍵になる
と考えます。
例えば江戸小紋のパターンや
寺社等の伝統的建築様式の組み合わせを
三色程度の色合い、
リアルとディフォルメ
のバランスで追求してみたいですね。
大塚:アコヤは光沢が強いので 大胆に金
属のチェーンと組み合わせて目を引く
ネックレスにし、石はあえてファセット
加工石でないものを選び差別化を図って
みたいです。
江 川:私 は 映 画「 プ リ テ ィ ウ ー マ ン 」で
ジュリア・ロバーツが、美しいハイジュエ
リーを着用しエスコートされている姿を
見た時ジュエリー観が変わりました。そ
れまでは、ジュエリーは自分のためのも
の、という意識が漠然とありましたが、そ
うではなく一緒にいる方のためのもので
もあるのだと、目から鱗が落ちる思いで
した。ですから今は、着用者ご本人だけで
なくご一緒される方、周囲の方にも喜ん
でいただけるような「遊び」もデザインに
盛り込んでいきたいです。
木下:今日はお忙しい中、お時間を頂き
有り難うございました。
インタビュアー インストラクター 木下 紀恵
江川 麻紀(えがわ
(きのした みちえ)
まき)
保育士を経て出版社でスポーツ誌の発行に携わった
後2011年、震災を機に「なくても生きられる、でも
あったらもっと充実して生きられる、そのようなも
のに携わり生きていきたい」とジュエリー業界へ進
もうと決意。同年GIA JAPAN GG全日制クラス入学。
2012年GG取得後、同年12月ジュエリーデザインクラ
ス卒業。GG、デザインクラスとも同期で女優の天正彩
さんとジュエリーユニット「GIAGGIOLO」を立ち上げ
2013年JJF出展。JJF2013 ニュークリエーターオブザ
イヤーにてグランプリ受賞。
http://giaggiolo.net
大塚 かなえ(おおつか
かなえ)
幼い頃から祖母や母のジュエリーにふれ興味を持つ
ように。10代〜20代をアメリカ西海岸で過ごし帰国。
日本のファインジュエリーをデザイン性、技術面、価
格ゾーンで分析した時、
「 頑張れば手が届く」中間
ゾーンに多様性が乏しく自分が欲しいと思えるもの
が少ないと感じたことから、自身で勉強し手掛けた
いと考え2011年GIA JAPAN GG全日制クラス入学。
2012年GG取得後、同年12月ジュエリーデザインクラ
ス卒業。江川さんとはダイアモンドプログラム、デザ
インクラスとも同期。ワインにも造詣が深い。