2 鶏卵殻乾燥粉末を 利用したきのこ 苗床栽培試験

平成 13年度育林 試 報告
2
鶏卵殻乾燥粉末を 利用したきのこ 苗床栽培試験
一ヒ ラタケ苗床栽培試験一
坂
要
本
紙
美
約
鶏卵殻乾燥粉末を 利用した ヒ ラタケ苗床栽培試験を 行った。 その結果、 鶏卵 -散乾燥粉末無添加
区と
鶏卵殻乾燥粉末添加区を 比較して、 菌 まわり、 収穫日数に明確な 差はみられなかった。 また、 鶏卵殻
乾燥粉末添加による 子実体増収効果がみられた。 ヒラタケ苗床栽培における 添加栄養剤として、 鶏卵
殻 乾燥粉末を利用できる
1
可能性が示唆された。
はじめに
きのこ産業は 生産資材費の 上昇、 価格の低迷から 収益性の低下が 著しく、 経営環境は大変厳しいも
のになっており、 栽培の効率化によるコストダウン、 きのこの品質向上による 市場競争力の 強化等が
現在の課題となっている。 また、 最近、 環境への配慮、 資源の有効利用の 観点から、 産業廃棄物、 副
産物の利用可能性を 模索する動きが 高まっている。
また、
ヌ
パリスギタケ 等の菌 床 栽培において、
貝 化石などの有機石灰系土壌改良剤利用に
よる
子実
体 収量の増加の 報告があ る。 け /
そこで、 本報告では、 最近、 産業廃棄物から 有用化がはかられ、 現在は土壌改良剤として 利用され
ている鶏卵殻乾燥粉末を、 ヒラタケ栽培の 栄養添加 剤 として利用可能かどうか 検討した。
11 材料と方法
1 .
試験方法
1) 使用した鶏卵殻乾燥粉末
グッドエッバ
(
キューピータマゴ 株式会社製 ) を使用した。
2) 試験区の概要
表一
1
に示す。
3) 快訊菌株
ヒ
ラタケ 森 39号を用いた。
4) 培地調整
基材 として丸鋸
( 帯鋸 )
製材のブナのおが 粉を用いた。 培地添加物はコーンブラン
社 ホーネンコーポレーション 製 ) 、 精選フス マ
が粉
:
フス マ
:
コーンブラン 二 10
: 1
: 1
(
(
株式会
日清製粉 製 ) を使用した。 培地組成はブナ
( 容積地 )
、
9
: 2
: 1
( 能重量比 )
お
に混合したも
のに鶏卵殻乾燥粉末を 各試験区の量になるように 添加し 、 水は水道水を 手で培地をきつくにぎっ
一 8 一
青森県林業試験場 提供
て 指と指の間から
水がにじみ出るまで 加えた。
5) 容器と詰め込み
培地は 90仇Ⅲ 容 PP 栽培ビンに、 直径 35mm のフィルタ一のついたキャップを 使用した。 培地は
ピ ン ロ から 30mm 下のビン肩ロところまで
充填し、 接種孔は中央に
1
人、 底に達するようにあ
け
」。
た
6) 殺菌と冷却
培地は高圧殺菌 釜で 12l。C 、 60分間殺菌した。 その後 m0。C に設定した冷却 室 で一晩冷却した。
7) 接種
種 菌を薬さじで 接種 礼は 種苗が落ちて
るくらい
(約
い くよ う
に接種
し、
さらに培地表面が 種苗で被覆され
20cc) 接種した。
8) 培養
設定温度 23 。C 、 湿度 64% 、 植物育成灯を 設置した培養室で 28 日間行った。
9) 発生処理
培養期間終了後、 菌 かき
。C 、 湿度は超音波加湿器を
( 平 かき )
5
を行い、 注水 (4 時間 ) を行った。 その後、 設定温度 15
分運転 W0分休止のサイタルで 稼動させて調節している 発生 室 に移
した。 原基形成が見られるまでは
ピ
ンを逆さにして 管理し、 幼子実体が確認できた
ピ ンは ピ ン
口を上に戻し 生育を促した。
10) 生育と採取
傘径が 2cm になった子実体が 発生した子実体の 60% になった時点で 採取した。
2. 調査項目と方法
1) 初期培地合水率
培地作成後、 赤外線水分 計 (FD 一 230 型株式会社ケット 科学研究所 ) で測定した。
2) 初期培地 DH
培地試料
5
9
に蒸留水 100 血を入れ、 30 分間 撹絆 後、 10分静止放置し、 pH メーター (HM30
S 東亜電波工業株式会社 )
で測定した。
3) 平均培地重量
接種後、 栽培ビンごと 測定した。
4)
菌 まわり日数
ビン表面に菌糸伸張が 完了するまでの 日数を調査した。
5) 収穫までの日数
接種から子実体収穫までの 日数を調査した。
6) 子実体発生量
傘径が 2cm になった子実体が 発生した子実体の 60% になった時点で、 子実体から培地をはさ
みで取り除き 収穫
し、
生 重量を測定した。
7) 子実体本数
傘径が 5mm 以上のものを 測定した。
一 9 一
青森県林業試験場 提供
I11 結果と考察
図一
1
は各試験 因め pH を示したグラフであ る。 鶏卵殻乾燥粉末の DW が 9.7 「であ ったことから、 添
加 量が増加するに つ れて、 培地 DW が上昇した。
図一 2
は各試験 区 の 含 水率を示したグラフであ る。 鶏卵殻乾燥粉末の 添加量が増加するに つ れて、
含 水率が減少した。 これは、 培地調整を行 う際 、 手で培地を握って 、 水が指の間から、 にじみ出る程
度で含 水率を調整したことから、 固形物であ る鶏卵殻乾燥粉末を 多く含むことになった 試験 区 のほう
が 、 遊離水分が増加し 、 握ったとき水がにじみやすくなり、 含 水率が少なくなる 傾向を示したためで
あ
ると考えられた。
図一 3
は各試験 区 の 菌 まわり日数を 示したグラフであ る。 各試験 区 において、 平均 14 日∼ 16 日 と顕
著 な差はみられなかった。 鶏卵殻乾燥粉末を 添加した培地は
DH が上昇するが、 ヒラタケの最適 DH
5.5 ∼ 7.0 に近い値となり、 菌 まわり日数への 影響は見られなかった。
図一 4
は各試験区の 収穫までの日数を 示したグラフであ る。 各試験 区 において、 平均約 46 日と顕著
な差はみられなかった。 菌 まわり日数と 同様に収穫までの 日数にも鶏卵殻乾燥粉末の 影響はみられな
かった。
図一 5
区
は各試験区の 子実体発生量を 示したグラフであ る。 分散分析の結果、 すべての試験
と有意差
(
危険率 5%)
がみられ、 鶏卵殻乾燥粉末添加割合が
809 の試験 区 では、 無添加 区 に対して
図一
る
6
2
区 で対照
高 い ほど増加する 傾向がみられた。
倍近い発生量を 示した。
は各試験区の 子実体本数を 示したグラフであ る。 鶏卵殻乾燥粉末添加割合が
傾向がみられた。 しかしながら、 分散分析の結果、 109
と
209 には対照
高 い ほど増加す
区 との有意差
(
危険率 5%)
はみられなかった。
図一
7
は子実体
1
本 あ たりの重量を 示したグラフであ る。 各試験 区 において、 平均 3.6 ∼ 3.89 と顕
著 な差が見られなかった。 鶏卵殻乾燥粉末添加割合が
また子実体発生量も 増加したため、 子実体
1
本あ
高 い ほど、
子実体本数が 増加する傾向がみられ、
たりの重量は 鶏卵殻乾燥粉末添加、 無添加にかかわ
らず、 ほぼ 同量 となった。 また、 本数が増えることにより 子実体
あ
W
1
本あ たりの重量が 減少することが
るが、 そのような現象はみられなかった。
おわりに
以上の結果から、 鶏卵殻乾燥粉末には
ヒ
ラタケ子実体増収効果があ ることが認められ、 弊害もめる
れないことから、 ヒラタケ苗床栽培に 利用できると 考えられた。 しかしながら、 鶏卵殻乾燥粉末添加
の 影響がどのようにあ らわれ、 子実体収量が 増加したのか 確認することが 出来なかった。 今後は培地
DH の変化、 培地空隙率などの 検討をする必要があ ると考えられる。
今後は、 培地 DW の変化、 培地空隙率、 最適添加割合の 検討を行がたい。 さらに鶏卵殻乾燥粉末 添
加 が子実体中のカルシウム 量にどのように 影響しているかを 検討し、 カルシウム量の 多い付加価値の
ある ヒ
ラタケが生産可能かどうか 検討したり。
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青森県林業試験場 提供
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青森県林業試験場 提供
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