IMO MSC93 審議結果 - ClassNK

External Affairs Division
Vol. 11
(28 May 2014)
IMO MSC93 審議結果
2014 年 5 月 14 日~5 月 23 日にロンドンの国際海事機関(IMO)本部にて開催された、IMO 第 93 回
海上安全委員会(MSC93)の審議概要をお知らせします。
なお、本速報は、本会出席者からの非公式な情報及び議場で配布された Working Paper をもとに、
速報性を重視して作成しておりますことを御了承願います。
にまで射水するための移動式の水供給装
置(モバイル・ウォーター・モニター)及び
コンテナに刺突し、消火栓からの水を中に
送る器具(ウォーター・ミスト・ランス)を搭
載する要件を追加するもの。なお、モバイ
ル・ウォーター・モニターは甲板上5段以
上にコンテナを積載する船舶に、ウォータ
ー・ミスト・ランスは甲板上にコンテナを積
載する船舶に搭載が義務付けられる。
(適用) 2016 年 1 月 1 日以降の起工船
1. 採択された強制要件
今回の会合で採択された主要な強制要件は以下の通
りです。
(1) 操舵装置の試験要件
(SOLAS 条約 II-1 章第 29 規則)
(概要) 海上試運転の最大航海喫水の確保が困
難な場合における操舵装置の試験要件を
定めるもの。
(適用) 2016 年 1 月 1 日以降
(5) 機関室からの脱出設備の追加要件
(SOLAS 条約第 II-2 章第 13 規則)
(2) イナートガス装置搭載の適用拡大(SOLAS 条約
II-2 章第 4 規則、IBC コード、FSS コード)
(概要) イナートガス装置の搭載を 20,000DWT
以上のタンカーに義務付ける現行規則を、
中小型のケミカルタンカーにおける爆発
事故事例に鑑み、その適用対象を
8,000DWT 以上に拡大するもの。また、
イナートガス装置の性能要件を改めるも
の。
(適用) 2016 年 1 月 1 日以降の起工船
(3) 通風ダクトの耐火性
(SOLAS 条約 II-2 章第 9 規則)
(概要) 旅客船及び貨物船の新造船に対し、その
機関区域内の機関制御室及び主作業室
は 2 系統の脱出経路を確保することを要
求するもの。なお、脱出経路は連続して火
災から保護され、脱出経路のはしご及び
階段の下方に鋼製シールドによる保護を
要求するもの。
(適用) 2016 年 1 月 1 日以降の起工船
(6) 水素自動車等を輸送する船舶の要件
(SOLAS 条約第 II-2 章第 20-1 規則)
(概要) 水素自動車及び圧縮天然ガス自動車を
積載する船舶への追加要件(電気設備の
防爆措置、持ち運び式ガス検知器等)を
定めるもの(現存船は、持ち運び式ガス検
知器の設置のみ)。
(適用) 2016 年 1 月 1 日以降
(新造船:2016 年 1 月 1 日以降の起工船)
(概要) 通風ダクトの要件について、その耐火性
の向上やダンパーに起因する火災拡大
の抑制を目的に、防熱材等のダクトを構
成する材料の要件、防煙ダンパーの設置
要件等を改めるもの。
(適用) 2016 年 1 月 1 日以降の起工船
(7) IGC コードの改正
(4) 甲板上にコンテナを搭載する船舶の防火要件
(SOLAS 条約 II-2 章第 10 規則)
(概要) 液化ガスに関連する新たな技術や運航形
態及び船舶の大型化に対応するための
IGC コードの全面改正。
(適用) 2016 年 7 月 1 日以降の起工船
(概要) 甲板にコンテナを搭載して運ぶ船舶に対
し、消火栓からの水を最上層のコンテナ
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(8) 復原性計算機の搭載の義務付け
(IBC コード、IGC コード)
(概要) ケミカルタンカー及びガスキャリア(現存
船含む)に復原性計算機の搭載を義務付
けるための IBC コード、BCH コード、IGC
コード及び GC コードの改正(油タンカー
については、MEPC66 にて MARPOL 附
属書 I の改正を採択済)。
(適用) 新造船:2016 年 1 月 1 日以降の起工船。
現存船:2016 年 1 月 1 日以降の最初の更
新検査まで(ただし、2021 年 1 月 1 日ま
で)。ガスキャリアは、それぞれ 6 か月遅
らせて適用。

貨物を収納したコンテナの重量を計測する方
法

収納された貨物等の重量及び空コンテナの
重量を合算する方法
(3) 極海を航行する船舶に対する要件を定める極海
コード(新コード)及び同コードを強制化するため
の SOLAS 条約 XIV 章の新設。
3. 極海コード
デンマーク、ノルウェー及びアルゼンチン等の提案
により、極海を航行する船舶の安全確保及び環境保護
等を目的とする極海コード(Polar Code)の策定作業が
2009 年から行われています。
(9) 救命胴衣標準試験体(RTD)の要件
(LSA コード第 2 章)
極海コードは安全要件と環境要件の二部構成となっ
ており、Part 1 の安全要件(船体強度、復原性、機関設
備、通信設備、航海設備等)、Part 2 の環境要件が、こ
れまで各小委員会において審議され、同コードを強制
化するための SOLAS 条約改正案及び MARPOL 条約
改正案も併せて作成されてきました。
(概要) 救命胴衣の RTD の数値基準の緩和及び
幼児、子供用救命胴衣の試験要件を一部
変更するもの。
(適用) 2016 年 1 月 1 日以降
(10) 2011ESP コードの改正
今回の会合では、次回 MSC94 での採択に向けた
審議を行い、その結果、極海コードの安全要件及び同
コードを強制化する SOLAS 条約 XIV 章の改正が、承
認されました。なお、このうち、航海設備・通信関係の
要件については、NCSR 小委員会(本年 6 月開催予定)
において最終化され、次回 MSC94 において採択する
運びとなりました。
(概要) 検査強化規則を定める IACS UR Z10 の
改正に伴う 2011ESP コードの改正。
(適用) 2016 年 1 月 1 日以降
(11) IMDG コードの改正
(概要) 危険物個品リストの運送要件を追加する
等、国連危険物輸送勧告(UN 勧告)と整
合を図るための IMDG コード及び同コード
付録の改正。
(適用) 2016 年 1 月 1 日以降
極海コードの対象海域については、図 1 をご参照下
さい。また、コード案の構成と概要については、表 1 を
ご参照下さい。
(12) IMO 規則実施コード(III コード)の強制化
SOLAS 条約 XIV 章による極海コードの安全要件の
適用対象船舶は、SOLAS 条約第 I 章により SOLAS
の証書を有する船舶とされています。なお、条約非適
用船舶への適用とそのための極海コードは、次の検討
課題として検討を始めることが合意されています。
(概要) IMO による旗国監査を定めるIMO 規則実
施コード(III コード)を強制化するための
SOLAS 条約 XIII 章の新設、国際満載喫
水線条約 1988 年議定書の改正、STCW
条約及び同コードの改正。
(適用) 2016 年 1 月 1 日以降
なお、海洋環境保護に関する MARPOL 条約の関連
改正案並びに極海コードは、MEPC67(本年 10 月開
催予定)において承認のために最終化される予定で
す。
2. 今回承認された主な強制要件
以下の改正案は、MSC94(2014 年 11 月開催予定)で
の採択を経て、2016 年 7 月 1 日発効の見込みです。
4. GBS(ゴールベースの新造船構造基準)関連
(1) 閉鎖区域の雰囲気を測定するために持運び式の
計測器の搭載を要求する SOLAS 条約 XI-1 章 7
規則の改正。
油タンカー及びバルクキャリアを対象とする「新造船
の構造に関する GBS(ゴールベースの新造船構造基
準)」は 2004 年の MSC78 から検討され、2010 年 5
月の MSC87 に於いて当該 GBS 及び GBS を導入す
るための条約改正案等が採択されました。
(2) コンテナ重量の検証を荷主に対し強制化するた
めの SOLAS 条約 VI 章 2 規則の改正。検証方法
として、以下の 2 通りの方法を認めるもの。
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COLREG1 を基に作成)。
なお、適用は 2016 年 7 月 1 日以降の建造契約の船
舶ですが、具体的な技術要件は IMO GBS に適合して
いると IMO が判断した船級協会等の規則に従う必要
があります。
(5) トン数条約の確実かつ統一的な実施のための統
一解釈 TM.1/Circ.5(1994 年策定)の改正
(6) オートパイロットの信号を受けて船橋航海当直警
報装置の自動起動することを要求する性能基準
に対し、自動起動を使用するべきでないとするガ
イドライン
今回の会合では、IMO 事務局より、ゴールベースの
新造船構造基準に関し、12 の IACS メンバー等からの
GBS 適合検証申請を受理し、監査作業を開始した旨
の報告がありました。
具体的には、18 の国及び 2 の国際機関から 37 名
の GBS 監査員の推薦があり 17 人を選出したこと、調
和 CSR 以外の IACS 統一規則等に基づく IACS 共通
の技術資料等を監査するチームを 3 月に設置したこと、
NK 等が個別に提出した申請書類を監査するチームを
間もなく設置予定である旨等が報告されました。
5. 各種ガイドラインの承認等
(7) 閉鎖区域の雰囲気を測定するために持運び式の
計測器の搭載を要求する SOLAS 条約 XI-1 章 7
規則の改正を受け、検知器の選定を定めるガイド
ライン。
(8) コンテナ重量の検証を荷主に対し強制化するた
めの SOLAS 条約 VI 章 2 規則の改正を受け、具
体的な検証方法を定めるガイドライン。
6. 旅客船の安全
今回の会合において統一解釈、ガイドラインが承認
されました。主要なものは、以下のとおりです。以下で
参照されているIACS 統一解釈(UI)については、本会
のホームページ(http://www.classnk.or.jp/)又は IACS
ホームページ(http://www.iacs.org.uk/)に公開してい
ます。
2012 年 1 月にイタリアにて発生したクルーズ船コス
タ・コンコルディア号の事故を受け、同年 5 月に開催さ
れた海上安全委員会(MSC90)において、旅客船の安
全対策強化について審議が行われました。その結果、
速やかに実施すべき運航上の安全対策(短期的措置)
と、事故調査結果を踏まえた技術的検討に基づき実施
する安全対策(長期的措置)に分けて検討を進めること
が合意されていました。
(1) SOLAS 条約 II-2 章第 9.7 規則に関し、空調機室
内の空調機と通風用ダクトの連結部には可燃性
材料(長さ 600mm まで)を使用することを認める
統一解釈(UI SC99 を基に作成)。
今回の会合では、長期的措置としてイタリアから提
出されたコスタ・コンコルディア号事故調査報告に基づ
き、事故の再発防止策について審議が行われた結果、
損傷時における対策として 5 つの検討項目が取り纏め
られ、関連の小委員会において今後検討することとな
りました。
(2) 貨物油タンクの塗装性能基準に関し、バラストタ
ンク塗装性能基準の統一解釈(UI SC223)をベー
スに作成された貨物油タンクの塗装性能基準の
統一解釈(UI SC259 を基に作成)。
(3) 貨物油タンクの塗装の代替手段として認められて
いる耐食鋼の性能基準に関する統一解釈(UI
SC259 を基に作成)。
(1) 損傷制御訓練要件の策定
(2) 損傷制御図ガイドラインの見直し
(3) 水密戸の最小限の開放
(4) COLREG 条約附属書 1 第 9(b)規則に関し、全周
灯 2 個を配置する場合に、一方の全周灯が 180
度を超えて遮蔽される場合であっても、もう一方
の全周灯の遮光角を調整することで 1 個の灯火と
して視認できる場合の配置に関する統一解釈(UI
(4) 機関室保護の強化
(5) 損傷時復原性訓練要件の強化
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図 1 極海コードの対象海域
南極海
北極海
表 1 極海コード案の構成と概要
章
項目
Part I-A
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
安全規制(強制要件)
通則
極海域運航手順書
船体構造
復原性及び区画
水密及び風雨密
機関設備
防火設備
救命設備
航行安全
通信
概要
定義、検査及び証書等
極海を航行する際の条件、手順等
航行する氷海域に応じた船体強化等
氷の付着等を考慮した復原性等(損傷時・非損傷時)
閉鎖装置等の凍結防止、低温時の操作性等
機関設備・非常電源等の凍結防止等
消火管系統の凍結防止等
厳しい環境での救命設備等
氷・気象情報の受信設備、探照灯等の追加等
極海域の遠隔性を考慮した通信設備の追加、支援
船との連絡等
11
航海計画
航海計画策定にあたり考慮すべき事項等
12
船員・配乗・訓練
船員の資格、配乗、訓練の上乗せ要件
Part I-B 安全規則(推奨要件及び Part I-A 実施のためのガイダンス)
Part II-A 環境保護規制(強制要件)
1
油汚染防止
極海域での油排出全面禁止、油を積載するタンクの
保護等
2
有害液体物質汚染防止
有害液体物質を積載するタンクの保護等
3
容器に収納した有害物
(現時点で要件なし)
質による汚染防止
4
汚水による汚染防止
極海域における汚水排出の陸地からの距離要件等
5
廃物による汚染防止
極海域における食物くず排出の陸地から距離要件等
Part II-B 環境保護規制(推奨要件及び Part II-A 実施のためのガイダンス)
以 上
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