External Affairs Division Vol. 14 (26 Nov. 2014) IMO MSC94 審議結果 2014 年 11 月 17 日~21 日にロンドンの国際海事機関(IMO)本部にて開催された、IMO 第 94 回海 上安全委員会(MSC94)の審議概要をお知らせします。 なお、本速報は、本会出席者からの非公式な情報及び議場で配布された Working Paper をもとに、 速報性を重視して作成しておりますことを御了承願います。 章の改正(下記 4.参照) 1. 採択された強制要件 (2) 貨物タンクの通気装置の二次的手段として P/V 弁 を各貨物タンクに設置を要求する SOLAS 条約第 II-2 章第 4 規則及び第 11 規則の改正 今回の会合で採択された主要な強制要件は以下の通 りです。 (1) 極海コード (3) 雰囲気管理装置を導入した場合における RORO 区域等の換気回数作動を減らすことを認める SOLAS 条約第 II-2 章第 20 規則の改正 (概要) 極海を航行する船舶に対する要件を定め る極海コード(新コード)及び同コードを強 制化するための SOLAS 条約第 XIV 章の 新設(下記 3.参照)。 (適用) 2017 年 1 月 1 日以降の起工船。それ以 前の現存船は、2018 年 1 月 1 日以降の 最初の中間又は更新検査のいずれか早 い時期まで。 3. 極海コード(Polar Code) デンマーク、ノルウェー及びアルゼンチン等の提案 により、極海を航行する船舶の安全確保及び環境保護 等を目的とする極海コード(Polar Code)の策定作業が 2009 年から行われてきました。 (2) 閉鎖区域の雰囲気を測定するための持運び式計 測器の搭載 極海コードは安全要件と環境要件の二部構成となっ ており、Part 1 の安全要件(船体強度、復原性、機関設 備、通信設備、航海設備等)、Part 2 の環境要件が、こ れまで各委員会において審議され、同コードを強制化 するための SOLAS 条約改正案及び MARPOL 条約改 正案も併せて作成されてきました。 (概要) 閉鎖区域の雰囲気を測定するための持 運び式雰囲気計測器の搭載を要求する SOLAS 条約第 XI-1 章第 7 規則の新設 (適用) 2016 年 7 月 1 日以降 (3) コンテナ重量の検証 今回の会合では、前回 MSC93 で承認された極海コ ードの安全要件及び同コードを強制化する SOLAS 条 約 XIV 章の改正が、採択されました。 (概要) 荷主がコンテナ重量を検証し、船長や港 湾ターミナルの代表者に情報を提供する ことを強制化するための SOLAS 条約第 VI 章第 2 規則の改正 (適用) 2016 年 7 月 1 日以降 適用については、2017 年 1 月 1 日以降の起工船、 並びにそれ以前の現存船は 2018 年 1 月 1 日以降の 最初の中間検査又は更新検査のいずれか早い時期ま でに適合することとなりました。 2. 今回承認された主な強制要件 極海コードの対象海域については、図 1 をご参照下 さい。また、コード案の構成と概要については、表 1 を ご参照下さい。 以下の改正案は、MSC95(2015 年 6 月開催予定)で の採択される見込みです。 (1) ガス又はその他の低引火点燃料を使用する船舶 の安全に関するコード(IGF コード)及び同コード を強制化するための SOLAS 条約 II-1 章及び II-2 SOLAS 条約 XIV 章による極海コードの安全要件の 適用対象船舶は、極海を航行する船舶で、SOLAS 条 1/4 約第 I 章による SOLAS の証書を有する船舶とされて います。 他の装置」の解釈として圧力指示器が該当する旨 の解釈。 なお、海洋環境保護に関する MARPOL 条約の関連 改正案並びに極海コード Part 2 は、MEPC68(2015 年 5 月開催)において、採択のための審議が行われる 予定です。 (2) 固定式ガス消火装置から消火ガスを放出する際 の可視可聴警報が不要とされる「通常の貨物区 域」を RORO 区域や冷蔵コンテナ区域以外の貨 物区域とする解釈。IACS 統一解釈 SC132 から 変更なし。 4. ガス又は低引火点燃料を使用する船舶の安 全に関するコード(IGF コード) (3) 試料抽出式煙探知装置の制御盤の CO2 ルーム への設置に関する解釈。IACS 統一解釈からの変 更点として、制御盤の設置箇所である火災制御場 所を CO2 ルームとする解釈から、試料抽出式煙 探知の検出管を CO2 ガス放出管と兼用する場合 に制御盤を CO2 ルームに設置することを認めるよ う変更(UI SC260 を基に作成)。 IMO では、2009 年に発行した「天然ガス機関を使用 する船舶の安全に関する暫定ガイドライン(Res. MSC 285(86)」をもとに、2010 年からガス又はその他の低 引火点燃料を使用する船舶に適用する強制コード (IGF コード)の策定作業が行われています。これまで 各小委員会において IGF コードの要件について審議 が行われ、同コードを強制化するための SOLAS 条約 改正案も併せて作成されてきました。 (4) A 級仕切りの貫通部に薄肉の鋼製スリーブ等を 使用する特殊な場合について、耐摩耗性や気密 性を評価するための追加の要件を規定する火災 試験方法に関する解釈。IACS 統一解釈からの変 更点として、貫通部の確認に 6mm ギャップゲー ジを使用するよう変更(UI FTP6 を基に作成)。 今回の会合では、次回 MSC95 での採択に向けた 審議を行い、その結果、IGF コード案及び同コードを強 制化する SOLAS 条約 II-1 章及び II-2 章の改正が原 則承認され、次回 MSC95 において正式に承認し、採 択する運びとなりました。 (5) 船首部等居住区から離れた位置にある救命用い かだの積み付け場所と乗艇場所が異なる場合を 認める解釈。IACS 統一解釈からの変更点として、 「救命いかだの乗艇はしごの長さを承認されたロ ーディングマニュアルにおいて乗艇位置が最も軽 荷喫水となる状態で 20 度傾斜した状態で計算さ れる。」旨のはしごの長さを算定するための解釈 は削除された(UI SC213 を基に作成)。 MSC95 で採択された場合、最短で 2017 年 1 月 1 日以降に建造契約する新造船及び低引火点燃料を使 用するために改造を行う現存船に対し、IGF コードの 適用が見込まれます。 第一段階として採択予定の IGF コードは、天然ガス を燃料として使用する船舶に対する詳細要件が規定さ れていますが、今後、メタノール、エタノール及び低引 火点燃料油を燃料として使用する船舶に対する要件を 取り入れるため、CCC 小委員会でドラフトの作成が計 画されています。 (6) 貨物タンク後方に設置される固定式甲板泡消火 装置のモニターの設置箇所として燃料油タンク上 方に設置を認める解釈。MSC.1/Circ.1120 の改 正。 (7) タンカーの消火主管ラインに設置される遮断弁の 保護に関する解釈。現行 MSC.1/Circ.1456 の改 正。 5. 各種ガイドラインの承認等 (8) パイロットラダー単体で登る高さ 9m を算出する際 には船体横傾斜 15 度を考慮する解釈。船体横傾 斜 15 度を考慮する必要はないとする旨の IACS 統一解釈 UI SC257 から変更された。 今回の会合において統一解釈、ガイドラインが承認 されました。主要なものは、以下のとおりです。以下で 参照されているIACS 統一解釈(UI)については、本会 のホームページ(http://www.classnk.or.jp/)又は IACS ホームページ(http://www.iacs.org.uk/)に公開してい ます。 (1) MSC91 において採択された FSS コード 3 章の改 正により消防員装具用の自蔵圧縮空気呼吸具に は、シリンダ内の空気の量が 200 リットル以下に 低下する前に使用者に対して警告を発する可聴 警報及び可視装置もしくはその他の装置を備える よう要求されている。この「可視装置もしくはその 2/4 なお、各監査チーム(5 チーム)の検証結果は、その 後、整合を図る等の作業が実施され、MSC96(2016 年)での承認のため、最終レポートが作成される見込 みとなっています。 6. GBS(目標指向型基準) 油タンカー及びバルクキャリアを対象とする「新造船 の構造に関する GBS(ゴールベースの新造船構造基 準)」は 2004 年の MSC78 から検討され、2010 年 5 月の MSC87 に於いて当該 GBS 及び GBS を導入す るための条約改正案等が採択されました。 7. 液化水素運搬船の安全基準策定計画 なお、適用は 2016 年 7 月 1 日以降の建造契約の船 舶ですが、具体的な技術要件は IMO GBS に適合して いると IMO が判断した船級協会等の規則に従う必要 があります。 現在、オーストラリアで水素を製造し、これを液化し 日本に輸送するプロジェクトが計画されており、このプ ロジェクトの実現に向け、ばら積み液化水素運搬に関 する安全基準策定が必要となっています。このため、 IMO における当該国際基準の早期策定のために、こ れまで日豪間で協議が行われ、液化水素運搬船の安 全基準の検討を始める新規作業計画が、日豪共同提 案として提出されました。 前回会合(MSC93)では、12 の IACS メンバー等か ら GBS 適合検証申請を受理し、監査作業を開始した 旨が IMO 事務局より報告されました。 今回会合では、監査作業の進捗状況について、IMO 事務局より報告がありました。 今回の会合において、液化水素運搬船の安全基準 の策定について、2015 年の CCC 小委員会から作業 を開始し、2016 年までに作業を完了する作業計画が 承認されました。 (1) 調和 CSR 以外の IACS 統一規則等に基づく IACS 共通の技術資料等を監査するチームが 3 月に作業開始、NK 等が個別に提出した申請書 類を監査するチームが 7 月から作業開始。 (2) IACS は IMO 事務局と協議の上、調和 CSR に 基づく IACS 共通の技術資料を 6 月末に提出済 みであり、当該資料担当の監査チームは 7月に 作業を開始。 図 1 極海コードの対象海域 南極海 北極海 3/4 表 1 極海コード案の構成と概要 章 項目 Part I-A 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 安全規制(強制要件) 総則 極海域運航手順書 船体構造 復原性及び区画 水密及び風雨密 機関設備 防火設備 救命設備 航行安全 通信 概要 定義、検査及び証書等 極海を航行する際の条件、手順等 航行する氷海域に応じた船体強化等 氷の付着等を考慮した復原性等(損傷時・非損傷時) 閉鎖装置等の凍結防止、低温時の操作性等 機関設備・非常電源等の凍結防止等 消火管系統の凍結防止等 救命設備の凍結防止等 氷・気象情報の受信設備、探照灯等の追加等 極海域の遠隔性を考慮した通信設備の追加、支援 船との連絡等 11 航海計画 航海計画策定にあたり考慮すべき事項等 12 船員・配乗・訓練 船員の配乗、資格、訓練の上乗せ要件 Part I-B 安全規則(推奨要件及び Part I-A 実施のためのガイダンス) Part II-A 環境保護規制(強制要件) 1 油汚染防止 極海域での油排出禁止、 油を積載するタンクの保護等 2 有害液体物質汚染防止 極海域での有害液体物質排出禁止、 有害液体物質を積載するタンクの保護等 3 容器に収納した有害物 (現時点で要件なし) 質による汚染防止 4 汚水による汚染防止 極海域における汚水排出要件 5 廃物による汚染防止 極海域における食物くず等廃物排出要件 Part II-B 環境保護規制(推奨要件及び Part II-A 実施のためのガイダンス) 以 上 日本海事協会 国際室は、国際動向等に関する情報を、皆様に迅速にお伝えしてゆきます。 なお、本件に関してご不明な点は、国際室までお気軽にお問い合わせください。 一般財団法人 日本海事協会 (ClassNK) 本部 管理センター 国際室 住所: 東京都千代田区紀尾井町4-7(郵便番号 102-8567) Tel.: 03-5226-2038 Fax: 03-5226-2024 E-mail: [email protected] 1. Disclaimer ClassNK does not provide any warranty or assurance in respect of this document. ClassNK assumes no responsibility and shall not be liable for any person for any loss, damage or expense caused by reliance on the information in this document. 2. Copyright Unless otherwise stated, the copyright and all other intellectual property rights of the contents in this document are vested in and shall remain vested in ClassNK. 4/4
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