第8回不動産デリバティブ仮想市場アンケート 結果報告 内容 1.トータルリターンスワップ取引市場 2.J-REIT(株価/NAV)の予測市場 早稲田大学国際不動産研究所(CIRE) http://www.cire-research.org/ 協力 社団法人不動産証券化協会(ARES) http://www.ares.or.jp/ CIRE 第8回不動産デリバティブ仮想市場取引の報告 はじめに このたび早稲田大学国際不動産研究所では、開設いたしました不動産デリバティブの仮 想市場(実験市場)における第8回目の調査を行い(社団法人不動産証券化協会様のご 協力を頂いております)、その結果を取りまとめましたので、ここにご報告申し上げま す。調査では、これまでと同様に、不動産デリバティブ商品の需要や価格に関する質問 を、不動産証券化協会の会員およびデリバティブの専門家の皆様に送付し、ビッド/ア スクの価格などの形でご回答いただきました。 今回のアンケートは、昨年来の所謂サブプライム問題の余波で、金融マーケット、とり わけ信用マーケットが依然不透明な状況の中での実施となりました。こうした環境が、 どのようにこの不動産デリバティブズ実験市場に影響するのか、非常に興味深いところ でもあります。 お忙しい中、調査にご協力いただいた皆様には、この場をお借りして厚く御礼を申し上 げます。本調査は継続して行ってまいりますので、今後ともご協力のほどよろしくお願 い申し上げます。 早稲田大学国際不動産研究所 川口 所長 有一郎 第8回調査概要 調査期間:2008 年 2 月 18 日∼2008 年 2 月 26 日 回答総数:12 2 CIRE 第8回不動産デリバティブ仮想市場取引の報告 1. トータルリターンスワップ取引市場 3 CIRE 第8回不動産デリバティブ仮想市場取引の報告 1-1.売買する不動産インデックス ① MTB-IKOMA 不動産投資インデックス 総合収益率(都心5区、オフィス) ② ARES J-REIT Property Index 総合収益率(オフィス) ③ ARES J-REIT Property Index 総合収益率(住宅) ④ ARES J-REIT Property Index 総合収益率(商業) 1-2.価格付け(1 年 LIBOR に対するスプレッド)の結果 今回調査の中央値(Offer/Bid)は、次の通り(調査期間 2008 年 2 月 18 日∼26 日)。 MTB-IKOMA(Office) : 750bp / 475bp ARES (Office) : 900bp / 600bp ARES (Residential) : 525bp / 325bp ARES (Retail) : 725bp / 500bp 前回第7回調査の中央値は、次の通り(調査期間 2008 年 1 月 21 日∼30 日)。 MTB-IKOMA(Office) : 610bp / 450bp ARES (Office) : 850bp / 600bp ARES (Residential) : 550bp / 300bp ARES (Retail) : 750bp / 450bp 1-3.コメント (1) すべてのインデックスにおいて Offer/Bid の分布が重なり、これらを原資産とした トータルリターンスワップの取引、すなわち市場が成立することを示している。 (2) 前回調査(1 月)との比較においては、横這いの ARES(Residential)以外は、 全て強含みとなった。特に MTB-IKOMA(Office)においては、Mid で 1%(=100bp) 弱の上昇が見られた。また、ヒストリカルに見た場合、昨年 8 月あるいは 9 月を ピークにした下落傾向が、Office においては転換する兆候が見られたものの、 Residential と Retail においては、トレンドが変わるところまで至っていない。 (3) 回答間のデータのばらつき(標準偏差)については、MTB-IKOMA(Office)にお いて縮小が目立ったが、その他は若干の拡大となり、不透明な環境の中、マーケ ット参加者の見方が分かれていることを示した。 (3) ARES Index において比較する限り、スプレッドの水準は、 住宅(Residential)<店舗(Retail)<事務所(Office) の順にワイドである。この傾向は、第 1 回調査から連続して続いている。 4 CIRE 第8回不動産デリバティブ仮想市場取引の報告 1-4.価格付けのデータ(アンケート結果) 【 MTB-IKOMA Index ( central 5 wards ) 】 今回調査 Offer 前回調査 Bid Offer Bid データ数 6 8 9 11 平均(bp) 825 506 801 475 中央値(bp) 750 475 610 450 最大値(bp) 1200 700 1300 700 最小値(bp) 600 400 500 250 標準偏差(bp) 232 115 315 157 データの分布 1400 Offer Bid 1200 1000 800 600 400 200 0 今回調査 ※ 前回調査 縦軸:α(bp)、横軸:同じα値を回答した人の数 5 CIRE 第8回不動産デリバティブ仮想市場取引の報告 _ 【 ARES J-REIT Property Index ( Office ) 】 今回調査 Offer 前回調査 Bid Offer Bid データ数 7 8 10 11 平均(bp) 815 625 859 614 中央値(bp) 900 600 850 600 最大値(bp) 1200 1000 1300 1000 最小値(bp) 205 400 240 200 標準偏差(bp) 366 198 337 200 データの分布 1400 Offer Bid 1200 1000 800 600 400 200 0 今回調査 ※ 前回調査 縦軸:α(bp)、横軸:同じα値を回答した人の数 6 CIRE 第8回不動産デリバティブ仮想市場取引の報告 _ 【 ARES J-REIT Property Index ( Residential ) 】 今回調査 Offer 前回調査 Bid Offer Bid データ数 8 8 11 10 平均(bp) 546 400 522 323 中央値(bp) 525 325 550 300 最大値(bp) 1000 800 1000 800 最小値(bp) 240 150 290 100 標準偏差(bp) 224 205 194 197 データの分布 1200 Offer Bid 1000 800 600 400 200 0 今回調査 ※ 前回調査 縦軸:α(bp)、横軸:同じα値を回答した人の数 7 CIRE 第8回不動産デリバティブ仮想市場取引の報告 _ 【 ARES J-REIT Property Index ( Retail ) 】 今回調査 Offer 前回調査 Bid Offer Bid データ数 6 8 9 11 平均(bp) 775 569 728 484 中央値(bp) 725 500 750 450 最大値(bp) 1300 1100 1300 1100 最小値(bp) 550 350 400 150 標準偏差(bp) 281 236 259 245 データの分布 1400 Offer Bid 1200 1000 800 600 400 200 0 今回調査 ※ 前回調査 縦軸:α(bp)、横軸:同じα値を回答した人の数 8 CIRE 第8回不動産デリバティブ仮想市場取引の報告 1-5.過去の価格(アンケート結果)の推移 【 MTB-IKOMA Index ( central 5 wards ) 】 中央値 800 700 600 500 400 300 200 Offer Bid 100 0 2008/02/29 2008/01/31 2007/12/28 2007/11/30 2007/10/31 2007/09/28 2007/08/31 2007/07/30 平均値と1標準偏差の推移 1,600 Offer Bid 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 2008/02/29 2008/01/31 2007/12/28 2007/11/30 2007/10/31 2007/09/28 2007/08/31 2007/07/30 9 CIRE 第8回不動産デリバティブ仮想市場取引の報告 【 ARES J-REIT Property Index ( Office ) 】 中央値 1,400 1,200 1,000 800 600 400 Offer Bid 200 0 2008/02/29 2008/01/31 2007/12/28 2007/11/30 2007/10/31 2007/09/28 2007/08/31 2007/07/30 平均値と1標準偏差の推移 1,800 Offer Bid 1,600 1,400 1,200 1,000 800 600 400 200 0 2008/02/29 2008/01/31 2007/12/28 2007/11/30 2007/10/31 2007/09/28 2007/08/31 2007/07/30 10 第8回不動産デリバティブ仮想市場取引の報告 CIRE 【 ARES J-REIT Property Index ( Residential ) 】 中央値 800 700 600 500 400 300 200 Offer Bid 100 0 Offer Bid 1,200 2008/02/29 2008/01/31 2007/12/28 2007/11/30 2007/10/31 2007/09/28 2007/08/31 2007/07/30 平均値と1標準偏差の推移 1,400 1,000 800 600 400 200 0 2008/02/29 2008/01/31 2007/12/28 2007/11/30 2007/10/31 2007/09/28 2007/08/31 2007/07/30 11 第8回不動産デリバティブ仮想市場取引の報告 CIRE 【 ARES J-REIT Property Index ( Retail ) 】 中央値 1,200 1,000 800 600 400 Offer Bid 200 0 Offer Bid 1,400 2008/02/29 2008/01/31 2007/12/28 2007/11/30 2007/10/31 2007/09/28 2007/08/31 2007/07/30 平均値と1標準偏差の推移 1,600 1,200 1,000 800 600 400 200 0 2008/02/29 2008/01/31 2007/12/28 2007/11/30 2007/10/31 2007/09/28 2007/08/31 2007/07/30 12 CIRE 第8回不動産デリバティブ仮想市場取引の報告 1-6.参考資料(1年円 LIBOR の推移) (%) 1.20000 1.15000 1.10000 1.05000 1.00000 0.95000 0.90000 2008/02/29 2008/01/31 2007/12/28 2007/11/30 2007/10/31 2007/09/28 2007/08/31 2007/07/31 13 CIRE 第8回不動産デリバティブ仮想市場取引の報告 2. J-REIT(株価/NAV)の予測市場 14 CIRE 第8回不動産デリバティブ仮想市場取引の報告 2-1.使用するインデックス FF-Kawaguchi Index(J-REITのNAV1に対する株価の比率から1を差し引いたもの)によ れば、J-REITの「P/NAV-1」の直近(2008 年 1 月)の値は−4%と、前月の+20%から大 きく下落した2。市場参加者には、±0%(J-REITの株価がNAVと同じ水準で取引される) を基準として、半年後、1年後、2年後の値を予測してもらった。 2-2.予測の結果(アンケート結果) (1) 半年後(2008 年 7 月)の予測 直近の値±0%を上回る 50%(6 名) 直近の値±0%を下回る 50%(6 名) (2) 1 年後(2009 年 1 月) (3) 直近の値±0%を上回る 67%(8 名) 直近の値±0%を下回る 33%(4 名) 2 年後(2010 年 1 月) 直近の値±0%を上回る 83%(10 名) 直近の値±0%を下回る 17%(2 名) 【過去のアンケート結果】 基準月 基準値 半年後 1年後 2年後 + − + − + − 第1回 2007/6 +30% 60% 40% 53% 47% 33% 67% 第2回 2007/7 +25% 57% 43% 57% 43% 43% 57% 第3回 2007/8 +25% 50% 50% 33% 67% 33% 67% 第4回 2007/9 +15% 50% 50% 50% 50% 30% 70% 第5回 2007/10 +15% 25% 75% 56% 44% 50% 50% 第6回 2007/11 +15% 13% 87% 47% 53% 47% 53% 第7回 2007/12 +20% 21% 79% 21% 79% 36% 64% 第8回 2008/1 ±0% 50% 50% 67% 33% 83% 17% 1 FF-Kawaguchi Indexは、J-REITが保有する物件の時価(市場価値)を、株式会社T-MAXと筆者が共同 開発した現地踏査およびエコノミック・キャップレートの推定などの独自の方法で、毎月値洗いするもの です。アナリストが机上の計算で推定しているものとは異なります。 2 米国のREITの場合+7%程度である。 15 CIRE 第8回不動産デリバティブ仮想市場取引の報告 2-3.コメント インデックスが前月の+20%からマイナス圏にまで急落した為、今回の予想の基準値は ±0%とした。さすがにこの基準では、1年後,2年後の予想にあるように、強気予想 が大勢を占めたが、半年後の予想ではちょうど均衡となった。この結果から、マーケッ ト参加者は、いくらかのプレミアムがついた水準(例えば前々回の報告書で述べた+15% という水準)を長期的な均衡水準と考えているものの、直近半年ぐらいまでは不透明要 因を払拭しきれず、見方も分かれていることが示された。 +50% 今回の調査結果 FF-Kawaguchi Index (実績値) 0% Dec-09 Oct-09 Aug-09 Jun-09 Apr-09 Feb-09 Dec-08 Oct-08 Aug-08 Jun-08 Apr-08 Feb-08 Dec-07 Oct-07 Aug-07 Jun-07 Apr-07 Feb-07 Dec-06 2-4.過去のアンケート結果のレビュー 今回、2007 年 1 月のインデックスが発表されたことで、第2回目のアンケートのうち半年 後の予想について、実際の結果との比較が可能となった。結果は以下の表の通り。 サブプライム問題が顕在化する前の 2007 年 7 月のアンケートでは、さすがに今回の−4% というセンセーショナルな結果は予想できなかったようである。 アンケート内容 アンケート結果 実際の結果 回 基準月 基準値 予想時点 予想月 + − インデックス +or− 第1回 2007/6 +30% 半年後 2007/12 60% 40% +20% − 第2回 2007/7 +25% 半年後 2008/1 57% 43% −4% − 16 CIRE 第8回不動産デリバティブ仮想市場取引の報告 70% 3,500 60% 3,000 50% 2,500 40% 2,000 30% 1,500 20% 1,000 10% FF-Kawaguchi Index(左目盛) 0% 500 東証REIT指数(配当込み)(右目盛り) -10% 東証REIT指数(配当込み) FF-Kawaguchi Index 2-5.参考資料(FF-Kawaguchi Index と東証 REIT 指数の推移) 0 Dec-07 Sep-07 Jun-07 Mar-07 Dec-06 Sep-06 Jun-06 Mar-06 Dec-05 Sep-05 Jun-05 Mar-05 Dec-04 Sep-04 Jun-04 Mar-04 Dec-03 Sep-03 Jun-03 Mar-03 注) 東証 REIT 指数は、 直近 2008 年 2 月末までのデータ、FF-Kawaguchi Index は 2008 年 1 月分までのデータとなっている。 17 CIRE 第8回不動産デリバティブ仮想市場取引の報告 参考資料(アンケート用紙) 18 CIRE 第8回不動産デリバティブ仮想市場取引の報告 質問1 御社において、以下の不動産インデックス・トータル・リターン・スワップを行うことを想定した場合の、提示 スプレッドαをお答え下さい。なお、御社にとってニーズのないインデックス・タイプや立場につ いては、未回答ということでも結構です。 また、カウンターパーティーの信用リスクは考慮しなくてよいものとします。 約定日:2008/2/29 想定元本:20 億円 期間:3年 金利交換:1 年毎 変動金利:1 年円 LIBOR 不動産インデックスの総合収益率 A B 1年円 LIBOR + α ご回答欄(α=?、bp 単位) 不動産インデックス 御社がAの立場である場合 御社がBの立場である場合 αo αb MTB-IKOMA 不動産投資インデックス 総合収益率(都心5区、オフィス) ARES J-REIT Property Index 総合収益率(オフィス) ARES J-REIT Property Index 総合収益率(住宅) ARES J-REIT Property Index 総合収益率(商業) ※ αo > α b 19 CIRE 第8回不動産デリバティブ仮想市場取引の報告 質問2 NAV プレミアム(P/NAV ‒ 1)を示す FF-Kawaguchi Index は、直近(2008/1 月現在)で▼4%と 急低下し、2002 年 4 月以来のマイナスのインデックス値となりました。 そこで、おうかがいいたします。半年後、1年後、2年後のこの値が、P = NAV の水準を意味す る±0%を基準として、これより大きくなるか小さくなるか(二者択一)、予想してお答え下さ い。 FF-kawaguchi Index 70% 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% -10% 01/12 02/2 02/4 02/6 02/8 02/10 02/12 03/02 03/04 03/06 03/08 03/10 03/12 04/2 04/4 04/6 04/8 04/10 04/12 05/02 05/04 05/06 05/08 05/10 05/12 06/2 06/4 06/6 06/8 06/10 06/12 07/2 07/4 07/6 07/8 07/10 07/12 -20% ご回答欄(+か−でお答え下さい) FF-Kawaguchi Index ±0%より大きくなると予想する場合: +を記入 ±0%より小さくなると予想する場合: −を記入 半年後 (2008 年 7 月) 1年後 (2009 年 1 月) 2年後 (2010 年 1 月) 20
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