(3 00 Co m pa rativestu dyof di百erence inco nce - 断層映像研究会

(80
- 24
)
断層映像研究 会雑誌
原著
3(
第 33巻第2号
頚動脈の CTAにおける造影剤濃度
0
0mgI!mL と 370 mgI!mL) の 比較検討
天神美穂・土屋
一洋・立石秀勝 ・ 吉田
真衣子・大原有紗 ・ 似鳥俊明
杏 林大 学 医 学 部放射線 医学教室
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抄録
[目的] 頚動脈の CTA では頚動脈と脊椎および内頚静脈との重なりがしばしば障 害 となるが、これらの重なりをよ
り少なくするためには頚動脈自体の吸収値を高くし、また動静脈相互の吸収値の 差 を大きくすることが有効と考えら
れ、我々はこれらの点で従来 一 般に用いられている 300 mgIlmLの造影剤に比し 370 mgI/mLが有利と推論しこ
れを検証した 。
[対象・方法] 頚動脈の狭窄性病変の評価のため CTA を依頼された計 18名の患者 (58-83歳、平均 67.6歳、男性
12名、女性6名 ) において 300 mgI/mL と 370 mgIlmL を交互に各9名で、用いた 。 CTA は 16列の MDCT にてヘリカル
ピ ッ チ 15 、 0.5
mm厚 、再構成間隔 0.3
mm とし、大動脈弓に関心領域を置き閲値 130 H.U.に設定してスキャンを開
始する Real Prep 法を用いた 。 造影剤は自動注入器で計 100 ml を全例右肘静脈から注入した 。 得られた元画像
で、左右の頚動脈分岐直下の総頚動脈と内頚静脈に関心領域を設定して吸収値を計測した 。 また視覚的に最終画
像で内頚静脈の描出の点数化 (最低O~ 最良 3) を行 っ た 。
[結果] 総頚動脈の吸収値 (H.U.) は 300 mgI/mL と 370 mgI/mL で、右側 328 と 488、左側 331 と 488 でありいずれ
も有 意 ( P<O.Ol ) に 370 mgIlmLが 高 値であ っ た 。 両側での総頚動脈と内頚静脈の吸収値の 差 ( H.U.) は 300
mgIlmL と 370 mgI/mL で、 169 と 306で、 370 mgI/mL において有意 ( P<O.Ol ) に大きか っ た 。 CTA 画像の視覚評
価は 300 mgI/mL と 370 mgI/mL で1.72 と 2.1 7で、後者で、内頚静脈との 重 なりが軽度で‘ あ っ た 。
[結論] 内頚静脈の 重 なりを軽度にした良好な頭部 CTA を得るには、 370 mgI/mLの造影剤が300 mgνmL に
比して優れている 。
Abstract
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別刷 請 求先: Tl 81-8611 東京都 三 鷹市新川 6-20-2
杏林大学医学部放射線 医学教 室天神 美穂
TEL:0422-47-5512
内帝泉5041
FAX:0
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[緒言]
mgI/mLが有利であると推論し検証を行 っ た 。
ヘリカル CT スキャンの出現によりボリュームデータ
[方法]
が得られるようにな っ たことで、 1990年頃より頭頚部血
管構造の 3次元的画像化への応用が試みられるように
な っ た 1) 2 )3) 4 ) 。
頚動脈の狭窄性病変 評価の目的で CTA を依頼さ
頚動脈分岐部病変が増加している今日、超音 波検
査や MR
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後の精査として CT
1) 対象
れた連続する計 18例 (男性 12名、女性6名、 58~ 83歳、
によるスクリーニング
平均 67.6歳) を対象とした 。 当 院で CT検査に用いて
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y(CTA ) は今や必要
いる通常濃度の造影剤を通常投与量 の範囲で使用し
不可欠の検査となっている 5 ) 。
ており、特に本検討については倫理委 員会 の認可お
しかし頭頚部領域では隣接する脊椎との 重 なりの
ほか、頭蓋内からの静脈還流が早いためにおこる併
走する頚静脈との 重 なりが3次元画像での観察の妨げ
となることがある 。 最近の multi-detector
row CT
よび患者の同 意 は得ていない 。
2 ) 撮影法
使用装置は東芝メデ イ カル シ ステムズ製の 16列の
検出器を搭載した MDCT ( Aquillion16) である 。 撮影
( MDCT ) の出現により高速撮影が可能となったこと
条件は 120 kVp、 300 mA 、スライス 厚0.5mm 、スキャ
で、頚動脈 ・ 頚静脈相互の 重 なりは軽度となる傾向は
ンピ ッ チ 15、テーブル移動は 7.5 mm/ 回転とし、大動
あるが、依然として両者の 重 なりは頚動脈の評価に際
脈弓に関心領域を置き閥値 130 H.u.に設定し、これ
ししばしば読影の障害 となっている 。 CTA のように閥
をスキャン開始のトリガーとするボーラストラ ッ キング
値設定が周囲の構造物から血管のみを抽出する切削
法 (Real Prepì法) にて撮影を行 っ た 。
に関与する 重要な因子である場合、これらの 重 なりを
画像は true
cone-beam tomography( TCOT) に
より少なくするためには頚動脈自体の吸収値を高くし、
て画像再構成関数フ ァ ンクション 10 、再構成間隔 0.3
動静脈相互の吸収値の 差 を大きくすることが有効と考
mm の元画像を得た 。 CTA は volume
えられ、我々はこれらの点で従来 一 般に広く用いられ
( VR) 法、ならびに maximum
ている 300 mgI/mL の造影剤に比しより高濃度の 370
( MIP) 法にて再構成を行 っ た 。
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-28 (26 )
断層映像研究会雑誌第 33巻第2号
造影剤は上記 18例に対し非イオ ン性造影剤イオパ
ミロン(日本シェ ーリ ング社製 )300 mgI/mL と 370
mgI/mL を交 互に用いた 。 注入法は自動注入器(オ
ートエンハンス 60、根本杏林 堂)で計 100 mL を 3
mL/ sec で、全例右肘静脈より注入した 。
3) 評価法
得られた元画像で左右とも頚動脈分岐直下の同 一
レベルで総頚動脈と内 頚静脈内部に関心領域を 設定
し吸収値を計測した( 図 1 ) 。 左右それぞれにおける
総頚動脈の吸収値(H. U.) 、および総頚動脈と内頚静
脈の吸収値の 差 をそれぞれ3箇所で計測し平均値を
図 1.
吸収値計測法
元画像で両側とも頚動脈分岐直下の総頚動脈と内頚静脈内
部の吸収値を計測 。 いずれも計3 回計測し平均値を算出した 。
算出 した 。
また CTA の視覚評価法として内頚静脈の描出 程度
の点数化を行った 。 これは、頚動脈分岐部を目安と
し、これより 下方 まで摘出されているものを O点、分岐
表 1.
最終画像における内頚静脈摘出の視覚評価法
点数
。
内頚静脈 の 描出 範 囲
頚動脈分岐部下方まで描出あり
部付近までの摘出を L点、分岐部上方にとどまるもの
を 2点、全く描出のないものを 3点とするものである(表
1)( 図 2 ) 。 これは、 2名の放射線科医がまず別々に判
頚動脈分岐部付近までの描出
定 し、相違があ った場合 は 合議にて最終決定を行っ
2
頚動脈分岐部上方にとどまる
た。
3
全く描出されない
以 上の評価法につき、 造影剤 300 mgIlmL と 370
B: 内頚静脈の摘出が頚動脈分岐部上方にとどま っ ており 2点とした症例
c: 内顕静脈の描出がなく 3点とした症例
今回の結果からは頚動脈分岐部下方まで描出されているものはなか っ た 。
C
最終画像における内頚静脈描出の視覚評価
B
A
図 2.
A: 内頚静脈が頚動脈分岐部付近まで摘出されており 1 点とした症例
.38 (72 )
2006年8 月 3 1 日
表 2.
吸収値の計測結果
3
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0lgm /mL
造影剤濃度
3
7
0lgm /mL
327 . 6 士 77.8
右総頚動脈吸収値
88::!::7.271
t 検定
Wilco x on検定
0.0
0
1
4
487 . 6 士 97 . 5
0.0
0
5
4
.
2
199 . 3 士 102.3
0.5
6
2
0
0.6
2
7
2
右恨IJA-V 吸収値
451 .9
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左総頚動脈吸収値
0327::!::.9
.2
84
.1
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0.0
0
1
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左内頚静脈吸収値
74517::!::.8
.1
1
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左側IJA-V吸収値
183.1 士 68 . 9
324.2 士 100 . 2
0.0
0
3
1
0
.
0
0
5
4
両側平均 A ー V吸収値
169 . 0 士 73 . 5
603 78:2:.!::
0
.
0
0
2
4
0
.
0
0
4
1
右内 頚静脈吸収値
表 3.
内頚静脈描出の視覚評価結果
造影剤濃度
3
0
0lgm /mL
.6
部病変が増 加し ている今日、これら非侵襲的検査が
3
7
0lgm /mL
右 ( 平均点 )
1.6
7
2
.
1
1
左 ( 平均点 )
1.7
8
2
.
2
2
虚 血性脳血 管障害のスク リーニ ングに果たす役割 は
大きくなりつつある 。 特に頚動脈狭窄病変は脳卒中の
原因として注目されるようになってきており 6 ) 、 North
A m re ica n Symptomatic Carot
mgI/mL とで比較を行 った 。
lairT
4) 統計処理
T
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l(EC
2群聞の差の検定には t検定を用いた 。 数値は平均
(NA
SCET
i
d E nd arterectomy
)7 ) や European Carot
i
d Surgery
ST )8 ) では内科的治療よりも外科的治療の
脳梗 塞に対する予防効果が証明されている 。
値±標準偏差で表示した 。 また、母 集団の差の検定
Asymptomatic C
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d At he
sor
には Wilcoxon検定を用いた 。 いずれも P<0.05 を有意
(ACAS
lc sore
i
s Study
差 ありとした 。
以上の 血管狭窄にも外科的治療の有用性が証明さ れ
)9 ) の co ntrolle d study で、は無症候性の 60%
た 。 したが って頚動脈狭窄病変を より安全に正確に評
[結果]
価することが重要であると考えるが、超音波は狭窄の
程度を過大に評価する傾向があり、血管壁の石灰化
1)総頚動脈の服収値
300 mgI/mL、 370 mgI/mL それぞれ 右 側 328
を伴う症例で、はこの部分が高輝度を 呈 しfalseitisop
ve
H.U.、 488 H.U.、 左 側 331 H.U.、 488 H.U.と 左右とも
になりやすい 。 また MRA も乱流の影響に より 狭窄の
に 370 mgI/mLで、有意に ( P <O.o 1)総 頚動 脈の吸収
程度を過大評価することが多い 5 ) 。
値は高値となった 。 (表 2 )
2) 総頚動脈と内頚静脈の吸収値の差
従来 よ り gold standard として通常の血管撮影
d
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nangiography(DSA) が施行されて
300 mgI/mL 、 370 mgI/mL それぞれ 右 側 155
きたが、合併症の危険性および、侵襲 やコストの問題が
H.U. 、 288 H.U.、 左側 183 H.U.、 324 H.u.と 左右とも
ありスクリーニング検査としては適していなし、 。 これに
370 mgI/mL において 有意に ( Pく0.0 1)吸収値の 差
対し、 CTA は病変部の狭窄の強さに関わらずDSA と
が大きか っ た 。 (表 2 )
同様の評価が低侵製で可能である 10 ) 。 また、 CTA は
3)CTA画像の視覚評価
病変を明確に描出することができ、インフォームドコン
300 mgI/mL、 370 mgI/mL それぞれ 右 側1.67、
セントに重要な役割を果たすほか、狭窄の範囲や形
2.1 1左側1.78、 2.22 と左右とも 370 mgIlmL で、 内頚静
状、 血管壁の石灰化 や潰蕩形成などの点で術前精査
脈の描出が少なく、総頚動脈と内頚静脈との重なりの
として重要な情報を得ることができる 。
少ない画像が得られた 。 (表 3 )
300 mgI/mL と 370 mgI/mL をそれぞれ用いた l
症例の MIP およびVR像を ( 図 3 、 4 ) に示す。
しかし、 CTA がDSA と同様の評価が低侵襲で可能
で、あっても、頚動脈と頚静脈との重なりの目立つ CTA
画像では、病変をより正確に把握することが困難なこ
ともあり、また、特に頚動脈分岐部においては任意の
[考察]
方向からの観察が出来ず、治療方針決定において十
近年、 MRA や超音波の power Doppler 法の 画像
分な情報を得ることができない他、患者および、家族へ
解析精度は著しく進歩している 。 本邦でも頚動脈分岐
の説明の際にも、病変を 一 目瞭然にとらえることが難
-48 (
2
8
)
断層映像研究 会雑誌第 33巻第 2号
図 3.
3
0
0mgl/mL における 1 症例
A:MIP像
68歳男性
S:VR像
3
0
0mgl/mL て‘ もこのケースでは内腔の評価は
かなり可能ではあるが、 内頭静脈が頚動脈分岐
下部までみられ 1 点とした症例である 。
しい場合も考えられる 。 よって、頚動脈と頚静脈との
なか っ たが、熱感や癖痛およびその他の自覚症状に
重 なりの少ない CTA画像を得るということは臨床的意
ついての調査は系統的には行 っ ていないため、これ
義のあることであると思われる 。
近年、 CT の高分解能をいかしたワークステーショ
ン上の血管計測用アプリケーションソフトが開発され
らのある程度の定量 的な評価を含めて今後検討して
いきたいと考えている 。
今回の結果から、頚動脈の CTA においては従来用
mg
mL
たことで、 CT のデータを用いて 血管の径や屈曲 した
いてきた造影剤濃度 300 mgI/mL より 370
血 管の長さなどの自動計測も可能となり、より正確な
の高濃度造影剤を用いることで、頚動脈自体の吸収
情報を得られるようにな っ たが、 全体像の把握や病変
値を高くすることが出来ることが証明された 。 径の小
の範囲、形状などの評価は CTA が優れている 。 この
さい冠動脈の CTA でも高濃度造影剤を有用とする同
ようなソフトは、まだ一般に広くどの施設にも普及して
様の報告 15 ) があるが、比較的太い頚動脈でもそれ自
いるわけではないが、今回検討したような従来からの
体の吸収値が上昇し周囲の構造との吸収値の 差 が大
I/
CTA の画像と併せればより詳細な情報を得ることが
きくなることは有効であると考えられ、病変の範囲や
できるであろう 11 ) 1 2 ) 。
形状のより正確な把握が可能となり CTA 診 断の精密
また、石灰化の程度の強い病変に関しては、 CTA
度の向上につながるものと考えられる 。 目的血管の吸
画像だけでなく、元画像や MPR画像とあわせて判断
収値をより高くすることの有用性の指摘は、冠動脈の
することで、より詳細な評価 が可能となると思われる 。
他、 頚動脈に関しでも既に報告がなされている 。 真壁
確かに CTA は造影剤を 急 速静注するため廃痛や
らは、高濃度造影剤は粘調度 ・ 浸 透圧ともに高く周囲
熱感、さらに造影剤投与による 一般的な副作用を生じ
組織への染み 出しが少ないため、周囲の組織との吸
る可能性はある 。 しかし、 300 mgI/mL と 370
収値の 差 を大きくすることができ、しきい値分離に良
mgI/mL で、は造影剤注入時の熱感は 370 mgI/mL で、
い結果をもたらすと述べている 16 ) 。 これは今回の検討
有意に高いものの、終痛やその 他の 自覚お よび他覚
でも同様と思われた 。
症状から認識できる副作用は使用する造影剤の濃度、
なお、血管 内腔の吸収値上昇でプラークの石灰 化
投与量 に依存しないとの報告がある 1 3 ) 14 ) 。 今回対象
の同定に困難が生じる可能性があるが、今回の症例
とした 18 例では、 他 覚症状としての副作用は 300
では MIP法での画像や、検討対象には含めなかった
mgI/mL、 370 mgI/mL のいずれにおいてもみられ
元画像において石灰 化病変の識別は問題なく可能で
8
5
(
2
9
)
2006年8 月 31 日
図 4. 370mgl/mL における 1 症例 76歳男性
A:MIP像
S:VR像
内頚静脈の描出はみられず3点とした症例であ る 。
あった 。
また 、 肘静脈からの造影剤投与の際、頚静脈への
逆流が動脈の描出を妨げることがあるが、今回の結
今回は症例の体重との相関は十分に調査できなか
ったこともあり、検討には含めていない 。 この点も本
検討の問題として残る 。
果からは特に問題は認められなか っ た 。 これには右
また、肘静脈から投与した造影剤は上腕静脈や鎖
肘静脈からの注入を行ったことが寄与した可能性が
骨下静脈、上大静脈に停滞するが、生理食塩水で後
考えやすい 。
押しすることで、これらの停滞している造影剤を有効
今回、高濃度造影剤を用いることで総頚動脈と内
利用し造影剤投与量 を減量 することが可能となる 1 7) 。
頚静脈との吸収値の差を大きくすることが出来るとの
今回、生理食塩水で、の後押しは行っていないが、これ
仮説が証明され、後処理で頚動脈と内頚静脈との分
により良好な画像が得られれば造影剤の投与 量 減少
離が容易にで、きることがわかった 。 具体的には、モニ
をはかることができ、患者およびコスト面両者に対し
タ ー 上で用手的な切削による頚動脈の内頚静脈から
非常に有益であると考える 。
の分離を容易にし、頚動脈のみを取り出してあらゆる
また、造影剤の注入速度をあげ、注入時間を短縮
方向からの観察が可能となる 。 このような用手的な方
することで頚静脈への還流の影響が少ない早い段階
法によらず、特定の物体を選択して半自動的に頚動
での撮像も可能と考えられる 。 しかし最適な造影剤投
脈の切り出しを行う際にも内頚静脈が連続してしまう
与量および注入速度のほか、患者側の因子である 心
ことが避けられる 。 こうして得られる頚動脈のみを取
機能や循環血 液量 など、頚動脈の CTA における造影
り出した画像は狭窄性病変の正確な範囲ならびに治
剤投与法の最適化 にはさらに多くの課題がある 。 CT
療方針決定に有用な情報を提供すると考えられる 。
装置や画像処理装置の急速な進歩に対し、ややこれ
加えて総頚動脈と内頚静脈との吸収値の 差 が大きく
らの評価は遅れ気味との印象があり、我々の施設で
なることは、主観的判断に左右されやすい CTA 画像
もさらに検討を続けていく予定である 。
の作成において、作成者によらない再現性がより優れ
た CTA 画像の作成にも寄与するものと考える 。 調べ
得た範囲では、このことに関する頚動脈の CTA にお
ける造影剤選択に関する報告はみられなか っ た 。
[結論]
頚動脈自体の吸収値を高くし、かっ内頚静脈との
重なりを軽度にした良質な頭部の CTA 画像を得るた
断層映像研究 会雑誌第 33巻第2号
7
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めには 300 mg1/mL に比し 370 mg1/mL のヨード造
1
0
秋山義典,今北哲,鈴木進,他:ヘリカル CT
scan による頚部頚動脈狭窄病変の検索.脳神
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