(かつらぎ) 「つくばスタイルフェスタ2005」イメージリーダー街区のまちづくり

研究学園葛城(かつらぎ)
(茨城県つくば市)
「つくばスタイ7レフェスタ2005」
イメージリーダー街区のまちづくり
㈱岩村アトリエ
石崎竜一・
1.計画地の概要
せて楽しむことができる暮らし方の
の暮らしにこだわるファミリーなど
昨年の8月末に、秋葉原とつくば
こと」と定義されており、単なる田
が浮かび上がってきた。
を最短45分で結ぶ都市高速鉄道「つ
舎暮らしではなく、自然、マルチメ
それらの与条件を受けて、住宅祭
くばエキスプレス(TX)」が開通した。
ディア、知的文化交流を大切にし、
ではTX沿線各地区のまちづくりテ
このTXの整備に合わせて沿線の各
都会と自然の調和を重んじた質の高
ーマである「つくばスタイル」のブ
地区では、新駅周辺を中心に土地区
い生活スタイルを目指す暮らしのこ
ランド化や、これからの時代に求め
画整理事業等が順次進められ、10万
とである。地域に隣接した筑波研究
られる住宅や街のあり方について、
人の居住者を見込んだ新たなまちづ
学園都市は、研究施設などの移転で
具体的に提案することを目的と位置
くりが進行中である。開発が進む地
始まった開発から約30年以上を経て
づけた。
区の中で、都心からの終点つくば駅
都市的機能が充実し、周辺地域の自
計画地は、PRイベントの会場(展
のひとつ手前の「研究学園駅」が核
然環境も豊:かであり、まさにつくば
示住宅会場として運営、閉幕後に販
となる葛城地区(図1)において、2005
スタイルを実現する好条件が整って
売)であったこともあり「つくばス
年10月に住宅祭が開催された。
いると考えられた。また、その暮ら
タイル」という暮らしの提案を確立
葛城地区は、つくば市役所の移転
しを実践する住まい手のイメージは、
するための詳細な建設指針が都市機
予定や、2007年秋には沿線最大級の
研究学園都市やつくば近郊に居住し
構側で準備されていた俵1)。その内
ショッピングモールが開業を予定し
ている研究者、定年を目前に第二の
容は、一般的なセットバックの規定
ているなど、今後、都市開発が進み
人生を楽しむための住み替えを考え
や緑化の推進に加え、その提案を具
発展が期待されている地域である。
る団塊の世代、その他、TXの開通
現化する住宅仕様と生活テーマが複
今回の住宅祭は、「つくばスタイル
に伴い都心で働く高学歴で高所得層
数定められていた。参加企業は、こ
フェスタ2005」会場での開催であ
り、地区内だけでなく、TX沿線各
地区の住宅づくり・まちづくりのイ
〒妻木局、・、 N
一… ^灘
灘
じ セ
茨城県、UR都市機構、つくば市、
遮4L地
つくばクレオスクエア
\圏
コ・キュート
吾妻西瞳●
葛城小〔=] 剛麗
華ご
となって、郊外の豊かな暮らし「つ
くばスタイル」・をPRするイベント
である。その「つくばスタイル」と
は、「知的な環境の中で、都市の利
便性と豊:かな自然、その両方をあわ
図1 研究学園駅位置図
家とまちなみ53〈2006.3>
羅一嘉灘
研究掌園駅
守谷市、伊奈町、谷和原村が主催者
54
ノ!
「つくばスタイルフェスタ2005」は、
〆
メージリーダーとしての役割を担っ
ていた。
緊魁\命
の建設指針を満たしつつ住宅祭とし
ての設計ルールを満足する必要があ
り、必然的にハードルは高いものに
表1 建設指針
鐵地概要
地区名
葛城地区 所在地 茨城県つくば市
踊
葛城一体型特定士地区画整理事業区域内E−37街区(A区分)
敷地面積
6,078甫(30画地) 土地利用計画 計画住宅用地
用途地域
第一種低暦住居専用地域
第一種庄居地域(鉄道用地端か
なった。
街区構成は、通常のハモニカ型で
法規制
ら30m)
はなく、つくばスタイルを実現する
ための生活基盤として、都市機構が
こだわったクルドサック型の街区構
道路にそれぞれ4∼7戸の画地がぶら
下がった、供給戸数34戸の街区であ
地区整備計画
建築物の外壁、若しくはこれに代わる柱の面から敷地境界線までの距離は、道
路、歩行者専用道路及び隣地境界から1m以上確保してください。
囲障は、生.け垣又は1.5m以下の透視可能なフェンス、又は天然材を主要材
に用いた塀とし、開放性のあるものとなるよう努めてください。
(主な事項)
基本方針
当該地は平成17年秋開業予定のつくばエクスプレス研究学園駅の東5∞mに位置し、平成17年
10月に開催を予定しているPRイベント「(仮)つくば住まいと暮らし博」において、地域の特
色・利点を活かした豊かな郊外におけるライフスタイルを実現する先進的な住宅を、モデル的に展
示するエリア(つくばエクスプレスζTX)沿線開発のイメージリーダー街区)として位置付けて
います。
都市機構は茨城県とともにそのライフスタイルの提案を「つくばスタイル」という言葉でブラン
ド化していく計画です。住宅計画にあたってはその点に充分留意し、それを具現化できる住宅とし
て整備してください。・また、住宅の販売にあたっては、「つくばスタイル」というブランドの確立
に配慮してください。
遵守事項
用途
建物の用途は戸建住宅とします。
画地規模及び形状の変更はできません。
留意事項
敷地利用計画
うに住宅を配する案を提示していた
駐車場の出入りについては、クルドサック道路から行うものとします。(外周
目路からのアクセスはできない)
当該街区は、クルドサック道路による6つのクラスター(コミュニティ空間)
を形成しているため、クラスターに面する街なみ景観形成に配慮した建物等の配
置、外観及び外構デザインにしてください。
色彩については、周辺の環境との調和に配慮してください.
が、やはり、クルドサックのまちづ
くりであれば、回転広場を取り囲む
1)住宅の異様
住宅の仕様については、次のいずれかのテーマの住様を1つ以上備えた住宅と
ように配する方が、将来的なまちの
異冒し環境難(下記仕様。,選択.て.だ。。、
建築計画
るとともに、来場者へのメッセージ
・省エネル ーエ ’エネルギー設備機器の設置)
(設備翼壁の例示.撚親電1 コージェネレーションシスデム、太陽光エネル
ギー活用機器、自然冷蝶(CO2)給湯器)
・資源の高度有効利用住宅
(例=リサイクル建材、水資源の有効利用・循環、ロー・エミッション化)
・人の健 ・ 一 一 の徹底使用住宅
テ喜羅ビ情靴漸四則四七立田8講四隅配管
性も高まるため、街区中央に位置す
・放送・通信開連の情報 入ロを一箇所に集約する情報ステーションの設置
・防犯システムの設置
るクルドサックを利用する計画を提
案し、最終的な配置が確定した。
2)生活スタイルテーマ
生活スタイルテーマを下記の中から一つ選択し、その生活スタイルにふさわし
い設備等を備えた住宅として計画してください.
テーマa)農・アウトドア
画地の平均規模は、約205㎡(62
(設備等の例)
・屋外から利用可能な収納スペース
・屋外リビング(ウッドチッキ)
・ガーデニング・菜園空間
テーマb)食へのこだわり
坪)で充分な広さがあり、街区中央
を貫くS字道路沿いは、高木と地濡
(設備等の例)
濡による幅1mの植栽帯付きの画地
建築計画
であった。また、電線類の地中化や
・広母としたキッチンシステム
・食材貯蔵庫
・菜園空間(ハーブ園等)
テーマ。)ペットとの共生
(設備等の例)
・床や壁への傷防止表面加工
・足洗い尾バン
・給湯可能なシャワー付屋外給水設備
テーマd)子育て・.福祉
クルドサック内舗装の高論化など仕
(設備等の例)
様の高い基盤整備が成されていた。
・住宅内外でのバリアフリー対応(車椅子対応の廊下幅、段差解消等)
・緊急通報装置(急病、火災、防犯等)
・可変型子供部屋
テーマθ)趣味・アート
(設備等の例)
2.まちつくりコンセプト
・ホビールーム、書斎
・音響ルーム
街区外周部及び中央の区画道路沿いについては、当該街区の連続した緑による
一体性のある領域感を演出するため、生垣等、. A栽地として積極的な緑化に努め
私たちは「つくばスタイル」とい
う暮らしの提案を実現するために、
地区名称 一般住宅地区、沿道住宅地区
葛城地区地区計画(予定)
都市機構は、街区全体に点在するよ
姿をそのままつくりこむことができ
40/80
(60/200)
地区計画名称
った。そのうちの13画地が今回の住
宅祭の会場として用意された。当初、
(鉄道沿い)
その他の地域地区
成(図2)である。街区の規模は、約0.7ha
とコンパクトで、6本のクルドサック
建蔽率/容積率
てください。
外構計画
また、クルドサックや歩行者専用道路に面する部分についても、積極的な緑化
に努めてください。
道路境界から15m以内の民有地境界部にはフェンスの設置をしないよう努め
てください。
ライフスタイル.コンセプトを検討し、
設備計画
建設指針に沿って街区づくり方針、
CATV対癒可能な住宅となるよう努めてください。
駐車場は、戸当たり1台分以上を確保するとともに、2台目の駐車が可能なス
ペース確保に努めてください。
クルドサック道路に面した駐車場の舗装については、クルドサック道路部分の
舗装との調和に配慮してください。
宅地内植栽の管理については、一定ルールを設け、永続的な庄環境の担保に努
住まいづくり方針および運営方針か
らなるまちづくり方針を策定した(図
.3)。.そして、「住人が自ら.の手でと
もに街や地域をはぐくみ、価値を創
その他
めてください。
当機構及び茨城県が「主体となり平成17年秋に開催を予定しているイベント
『(仮)T×つくば 住まいと暮らし博』について当機構ζ調整を図り、展示用
住宅の開放と来場者への応対について協力するものとします。
※展示住宅の戸数については、別途『募集要綱』に記載することとします.
蜜全・安心のまちづくりに努めてください。
ノーマライゼーションの推進に努めてください.
家とまちなみ53〈2006。3>
55
少々、スケール感や立地条件は異
なるが、まちを構成するヒントとし
ニー十一=二⊥一
ほらげ
て筑波近郊の「洞下の集落」をイメ
茄1
庭を囲んで配置されている。その構
ラ
魔℃浄hh ︸茄 ︸2賛酬唱訓 U
成が、街区中央を貫くS字道路に、
一
クルドサック(中庭)を中心として
眠\、
8,808㎡
その両脇に農家の母屋や蔵、納屋が
‘
189㎡
1,941㎡
ており、まちの中央を街道が貫き、
弔1
’グ, り5 ’ ウ㌻ル ゥ︾
1,012㎡
からまちを守る屋敷林に取り囲まれ
一 田 1
’
740㎡
歩行者専用道路
小計
合計
“︻
S字道路
クルドサンタ道路
一[磁心 弔 1 一 一︸ 一 し亜㎡瓢
6,867㎡
公共用地
一↓L・コqト﹁h膏
宅地
丁
面積(㎡)
ージした。その集落は、筑波おろし
一
1﹁
土地利用
rク 互凸 ︵
〆疑4望つ 4
〆 聾窩φ〆 r 一 一 鵠
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濯御 、 、緯
一
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例ピ、ρ
一 ﹂儒 ’ /
ツるり多/ウ 一 一 一
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酬 鴫22 を﹁ 140 ㍉ ﹁ 2 瓦 覗
ノ 〆r ソ
h昌 r’ [ 械 ︸
1胃ア
剛樹
−﹂
冨 ,.11 .,4
13 1−5 1−1
住宅が配置される今回の敷地に重な
ったからである。
次に、住まいづくり方針としては、
割合 備考
780%
84%
115%
21%
220%
1000%
34戸、電線類全面地中化
道路幅員6m、コミ置場面積を含む
道路幅員6m
幅員25m(緑地スペースなし)
建設指針の住宅仕様である「環境共
生住宅、若しくは、高度情報化対応
住宅とすること」を受けて、環境共
生住宅認定基準における必須要件(表
2)の性能を確保し、環境共生型住宅
とすることを基本とすると共に、高
図2葛城地区E−37BL画地図
度情報化対応住宅の仕様も合わせて
りあげる」そのようなまちの姿をイメ
軒の調整
満足することを条件とした。そして、
・クルドサック、駐車場、庭先、主
建設指針で掲げられている生活テー
討を進めた。
庭、窓先、建物と段階的な領域感
マ(a=農・アウトドア、b:食への
まず、街区づくり方針では、クル
を表現する要素・部材
こだわり、c:ペットとの共生、 d:
ドサックによる街区構成を効果的に
○暮らしの気配が感じられるS字道
子育て福祉、e:趣味・アートの5つ)
活用・表現するため、「クルドサッ
路、及び、街区周辺道路に面する
の中から一つ以上を選択し、その生
ク毎に個と共の空間的な相互関係が
住宅妻側のデザイン
活スタイルにふさわしい空間や設備
ージしながら、基盤となるハードの検
生まれる中庭のような居住環境のデ
ザイン」を目指した。
0ライブスタイルコンセプト:
暮らしから、豊かな街・地域をともにはぐくむ
○クルドサックの単位を明確に表現
o『 偽
ゆ 嚇
コ コ
お む
すること
e爵 魯亀
g b
σ ・
■ 蟻
o も
・クルドサックの外周は生垣を配し、
クルドサック内部はオープンな外
構
・クルドサックの入口はゲート性の
ある空間(端部住宅のデザイン、
外構、植栽)
ら
い サ い
:鱗融鵡とした :嘩霧鵬,を支。、
誰蹴クティブr 讐攣藝i雛ン
1 弩 一 一
〇 ゆ
O o
㊤ 8
駄 o
O o
隔 ρ
唖 9
騒 9
も ◎
る の サ ご
や サ き お り
も・④一1運営方針(博覧会蒔): θ
0クルドサックと取り囲む住宅によ
、つくば冬マでル¢体慈・罪感の促準
り心地よいく中庭〉感を演出
もの て む
・住宅および外構要素の配置、高さ、
・④ぞ運営方針(居住時)ご 一㌦
楼、まもづくりの考え方の継承 .
図3 まちづくり方針
56
家とまちなみ53〈20063>
表2 環境共生住宅認定基準 必須要件一覧
鯉
省エネルギー
省資源・廃棄物の削減
項目
性能及び基準
省エネルギー性能
日本住宅性能表示基準 省エネルギー対策等級3に適合
耐久性能
日本住宅性能表示基準 劣化対策等級3に適合
維持管理性能
日本住宅性能表示基準 維持管理対策等級2に適合
節水
節水型便器(大8リットル、小6リットル以下)の採用
雨水の地下浸透あるいは利用
雨水の地下浸透あるいは雨水利用の実施
植栽地の確保
戸建て住宅の場合は、15%の植栽地を確保
c地の場合は、20%の緑地を確保
地域適合・環境親和
郷土穫
戸建て住宅の場合は、郷土種を一本以上植える
c地の場合は、郷土種を主体として緑地とする
健康快適・安全安心
まちなみ景観への配慮
まちなみ景観の向上に資する工夫を、建物及び建物以外の外構で実施
バリアフリー
公庫住宅等政策融資技術基準バリアフリー構造に係る基準
に適合
コ内空気質
庶コの内装仕上げに用いる建材・施工材料は、F☆☆☆☆で、
gルエン、キシレンは不使用
を備えた住宅とした。また、「つく
知的で豊かな生活スタイルを演出
ばスタイル」らしい暮らしが表出す
・大型テラスなどを活用し、申間領
る室内から主庭に至る中間領域のデ
ザインを必須事項として取組んだ。
域での生活イメージを形成
・クルドサックの中庭的な利用のイ
メージさせる重要なポイントである
と考えたためである。
計画の対象となる3本のクルドサ
ックは、4∼6軒がひとつのまとまり
「住まいづくり方針」
メージやそこでの暮らしを提案
であり、コミュニティの単位として
○大型テラス、温室、デッキ、バル
○クルドサックを中心とした「中庭
もセミプライベートな空聞としても
コニーなど中間領域のデザイン
をもつ」住宅地の設計ルールの継
理想的な規模であった。そのスケー
○クルドサックに面したりビング・
承
ル感を活かすために、クルドサック
・本街区全体がまとまったまちなみ
の入口に立った視線で、全ての住宅
シの採用
を形成するための設計の考え方を
が見渡せるように、とくに入隅に配
○ルーバーや外付けブラインドなど
統一
置される住宅の顔づくり(写真1)と、
ダイニング・キッチンの大型サッ
視線の微調整が可能な外構要素や
建具の採用 など
・一 ツ一つの住宅の質を確保するた
その手前に位置する住宅の建物形状
めに隣接した住宅同士で配慮すべ
(壁面の雁行、セットバックなど)を
きルールを統一
調整した(図4、写真2)。
また、真正面に位置する住宅は、
さらに、運営方針として、イベン
ト時とその後の考え方を提案した。
3.まちづくりの検討
イベント時は、つくばスタイルにつ
クルドサックの活用
いて、来場者が具体的なイメージを
街区づくり方針は、クルドサック
描けるような演出とPRを行い、イ
を活用した中庭景観の形成である。
ベント後は、まちづくりの考え方を
そのために、住宅祭におけるまちな
継承し、今後、建設を行う隣i接ブロ
みルールに中間領域での取り組みを
ックにおいても、同様のまちづくり
加えた。通常の統一外構は、設計の
が継続されるよう、その考え方・ル
視点が道路側からであるが、その視
ールをまとめ、提案することとした。
点を室内側へ移し、室内から主庭、
高木と共に外壁面の設えや特徴ある
庭先、そしてクルドサックへと繋が
○知的な環境の中で、都市の利便性
る連関性も合わせて検討することと
と豊かな自然、両方の魅力を併せ
した。それは、今回のまちづくりで、
持つ暮らし方を演出
とくに庭と室内の間である中間領域
・インテリアなどの配置によって、
の演出が、「つくばスタイル」をイ
写真1クルドサックへの表情をつくる玄関庇
を兼ねた大型バルコニー
家とまちなみ53<2006.3> 57
建物形状によって視線を受け止め、
回転広場に向かう建物ファサードの
提案を求めた(写真3)。そして、クル
ドサックを取り囲む庭先や玄関廻り
は、大きく枝葉を広げ涼しげな緑陰
を形成する高木を植栽するとともに、
匿圏漁路監W−8βm≧
区獺(W謁Om,
駐車スペースの舗装とクルドサック
の舗装を素材、パターン共に整合さ
せ一体的に整備することで、官民の
・鱒
境界を意識させない広がりのある中
庭景観の演出に努めた(写真4)。
エキストラ・リビング
住宅の内と外をつなぐ中間領域の
図4全体配置・整備イメーシ図
計画では、リビングやダイニング、
麗
キッチンから直に庭へつながるタイ
ル貼りの大型テラス「エキストラ・リビ
麗
ング」(写真5)を全戸共通で設置した。
.鋼
家の中と庭をつなぐエキストラ・リ
ビングは、居室の延長であると共に、
ペットライフ、アウトドアライフの
場ともなる。エキストラ・リビング
をインターフェイスとして、つくば
写真2 入隅住戸と手前住戸の関係
臨
驚
物麟脚
写真4 素材、パターン共に調和させた駐車スペ
ースとタルトサックの舗装
影欝
麟轟
麟. 蜘・鹸。講
ノ幽一働卜
端
写真3 アイストップとなる住戸のファサード。シンボル樹とル_ハ_フェンスの 写真5 エキストラ●リヒンク。タイル張りのテラス十テラス’シンク
組み合わせ (屋外水栓)・キッチン・ガーテン・アクセントツリー(高木植栽〉
58
家とまちなみ53〈20063>
写真8エキストラ・リビング側に全開放サッシを採用し、内外の連続性に
配慮した住戸
写真6 中庭的な雰囲気をつくるアプローチ廻りの植栽
スタイルがまちの風景になることを
とができなかったことが残念である。
備機器の採用、太陽光発電や家庭用
期待した。
今年は、春から夏にかけて葉を茂ら
燃料電池、県産木材の採用など、各
繊
せ、緑豊かな中庭の風景が見られる
社ごとに個性のある環境共生型住宅
中庭を彩る植栽は、都市機構によ
ことを期待している。なお、美しい
が提案されている。
ってS字道路に沿いに植栽されるハ
景観を維持するためには将来的な育
また、情報化社会には欠かせない
ナミズキと同種のヤマボウシを各戸
成管理が重要課題であり、緑の管理
情報分電盤や情報コンセント類は、
のアプローチにシンボル樹として植
に関する対策が不可欠である。
標準装備であり高度情報化対応住宅
栽し、一部の日陰となる北入り住戸
防犯対策
仕様に全戸が対応した。
のアプローチには、半日陰を好むヒ
また、中庭的な空間は、近年、ま
プランニング
メシャラを配した。その他の高木は、
ちづくりの大きな柱として求められ
プランニングに最も影響する生活
地域の植生に配慮しつつ、園芸種と
る防犯対策としても効果的である。
テーマについては、「食」をメイン
して楽しめるもの(シラカシ、エゴノ
死角をつくらない外構計画や防犯ガ
のテーマとした住宅タイプが最も多
キ、カツラ、ソヨゴなど)を検討し、中
ラス、防犯センサーなど建物側での
く、オープンキッチンを中心に構成
庭的な雰囲気づくりを行った(写真6)。
対策も不可欠であるが、最も効果的
されるプランや、エキストラ・リビン
S字道路沿いの1m範囲は、都市機
な手法は、コミュニティ全体でまち
グとの関係に配慮したプラン(写真8)
構の植栽範囲であったため、計画か
のセキュリティを高めることである。
等の多彩な提案が集まった。各社の
らは外されていたが、まちなみ景観
今回のまちづくりは、クルドサック
プランは、オリジナリティにあふれ、
上は、重要な場所である。そこで、
とのつながりを考慮した目の行き届
お互いの植栽が重なり合う計画を都
くプランニングと防犯設備、そして、
市機構へ提案し調整した(写真7)。
オープンな外構計画によってその条
また、高木類は、フェスタの開催
件を満たすことができた。
期問中に見劣りしないよう、植栽検
環境共生型住宅
査の際に樹形の美しいものを探し、
住まいづくりに関しては、建設指
当初から大型樹木(h=4。0∼5。Om)
針の関係もありレベルの高い住宅仕
を植栽した。
様が実現した。環境共生住宅認定基
しかし、葉を落とした状態で植え
準の必須要件に基づき、省エネルギ
つけられた落葉樹は、開催期間中に
ー性能、耐久性能、維持管理性能、
再生することは困難であり、選別し
節水、バリアフリー、室内空気質な
た際の美しい姿で来場者を迎えるこ
どの基準を満たし、かつ、高効率設
の植栽
家とまちなみ53㎜> P59
曝
鍵∵㌦蹴
讐で繋
瀞撫
細
蔀
自
「
難噸蜘累
難画
写真9 まちなみ
西側クルドサックの入り隅住戸バルコニーから東西クル
翁
欝
縷
醜r嬉
写真10 まちなみ 西側クルドサックの入口住戸の屋上から東側クルドサ
ックの入ロ付近を望む
ドサックを望む
ダイナミックさや意外性、来場者へ
プトに共感し魅力を感じてくれる方
書店には、『つくばスタイル』と
のメッセージ性に富んだ興味深いも
は確実にいた。
いう雑誌が並べられ、その横には
のであり、それぞれが、建設指針の
今回の住宅祭のテーマは、「つく
『湘南スタイル』、『沖縄スタイル』な
生活テーマを充分に満足した建物と
ばスタイル」のブランド化と、これ
ど同種の雑誌が並んでいる。内容は
なった。
からの住まいとまちのあり方を提案
基本的に「1わが町自慢1冒である。要す
その結果、見えてきた姿は、じつ
するまちづくりであった。暮らしの
るにまちに愛着をもてること、それ
に多彩で楽しげなまちなみであった
スタイルはそれぞれが自由につくり
が「私」スタイルになり、その「ま
(写真g、10)。これは、クルドサック
あげるものであるから、「つくばスタ
ち」のスタイルになる。つくばスタ
という街区形状が、パターン化され
イル」についてもさまざまなイメー
イルを本当の意味で実現するために
た外構と屋根並みが連続するまちな
ジがうまれるのは当然のことである。
は、ハードだけの整備では無理なこ
みの観点を取り除いたこと、PRイ
このまちの特徴を理解し、納得した
とである。やはり、住まいや庭の管
ベントの展示住宅エリアとして位置
方々に住んでいただき、それぞれの
理、そして、まちの育成に住民自ら
づけられていたことによるものであ
スタイルをつくりあげていただきた
が積極的に参加できる機会をつくる
る。
いと考えている。
ことが必要であると思う。住宅祭の
つくばスタイルフェスタ2005の開
当街区は、葛城地区の中でも基盤
整備範囲が少しでもその手がかりに
催期間(1ヶ月間)の来場者は約213,000
整備のグレードが高く、かつ、住宅
なればと考えている。これからもこ
人であった。多くの来場者が当会場
も質の高いものが建設されている。
のまちの変化をじっくり見守りたい
に訪れ、ある住宅には期間内で2,050
そこで、今後の整備範囲では、その
と思う。
組(約5,000人)もの方が見学した
質を担保することが不可欠である。
とのことである。
現在、残りの画地での工事が開始さ
来場者の評価
れ、既に住宅祭で実施した内容を整
来;場者の評価については、イメー
理した「まちづくりルール」が運用
ジしていた「つくばスタイル」とま
されている。できる限り、現在の仕
ちの印象は結びつかなかった、「つ
様がそのまま実現するように取り組
くばスタイル」とは何なのか、まだ
んでいただきたい。
理解できない、といった厳しい意見、
また、まちの育成管理についても、
インテリアとエキストラ・リビング
将来的には住民が積極的に関われる
(テラス)の演出などからつくばス
管理組織を立ち上げ、現在、建設段
タイルをイメージできた、好感が持
階で運用されているまちづくりルー
てるなど、感想はさまざまのようで
ルを育成管理のルールに展開し、運
ある。私も会場で実際に来場者と話
用して行く必要があると考えられる。
をしてその反応を感じたが、コンセ
60
家とまちなみ53<2006.3>
1漁
石崎竜一(いしざき・りょういち)
1970年生まれ。東京都墨田区出身。北海道東
海大学芸術工学部建築学科卒業。93年岩村ア
トリエ入社、現在に至る。建築・まちづくり
計画・設計担当。