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EMBASE文献速報
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Fluoxetineはアストロサイトの神経栄養/成長因子の発現およびグルコース代謝を調節する
Fluoxetine regulates the expression of neurotrophic/growth factors and glucose
metabolism in astrocytes.
Psychopharmacology (Berl) 2011; 216: 75-84
Allaman I, Fiumelli H, Magistretti PJ, Martin JL
理論的根拠 : 大部分の抗うつ薬の薬理作用は、脳におけるセロトニン作動性およびノルアドレナリン作動性神経伝達の一方または両方の調節
に関与すると考えられている。最も頻繁に処方されている SSRI の 1 つである fluoxetine は、大うつ病の治療中に脳内に蓄積されるが、このこと
は fluoxetine が別の標的分子と相互作用する可能性を示唆している。これに関連し、アストロサイトが大うつ病の病態生理に関係しているとの
エビデンスが増加しつつある。
目的 : 本研究の目的は、抗うつ効果を有する神経栄養/成長因子の発現およびグルコース代謝に及ぼす fluoxetine の効果を培養した皮質ア
ストロサイトを用いて検討することである。
結果 : Fluoxetine および別の SSRI であるパロキセチンで処理したアストロサイトでは、脳由来神経栄養因子(BDNF)、血管内皮成長因子
(VEGF)、および血管成長因子(VGF) mRNA の発現が増加した。一方、三環系抗うつ薬であるデシプラミンとイミプラミンはこれらの神経栄養/
成長因子の発現に影響を及ぼさなかった。グルコース代謝に及ぼす fluoxetine の影響を解析したところ、fluoxetine はアストロサイトのグリコー
ゲンレベルを低下させ、グルコース利用と乳酸分泌を増加させることが明らかになった。同様のデータがパロキセチン処理においても得られた
が、イミプラミンおよびデシプラミンは、このグリア細胞集団においてグルコース代謝を調節しなかった。本検討の結果は、グルコース利用、乳酸
分泌、BDNF、VEGF、VGF 発現に対する fluoxetine およびパロキセチンの効果が、セロトニンに依存した機序を介さないものであることも示して
いる。
結論 : 以上のデータから、fluoxetine はアストロサイト由来の特定の神経栄養因子の発現やアストロサイトからの乳酸分泌を増加させることによ
り、大うつ病における神経細胞に対する栄養的 ・ 代謝的なサポートを正常化させることが示唆される。
(翻訳:エルゼビア・ジャパン)
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