LCD-CF製造用インライン式 スパッタリング装置

ULVAC TECHNICAL JOURNAL No.64 2006
LCD-CF 製造用インライン式
スパッタリング装置
吉瀬寿彦*,今村俊一*
本稿で紹介するインライン式スパッタリング装置
1.はじめに
SDP-s シリーズ(図1)は,上記ユーザーの要求を満足
する弊社のフラットパネル向けスタンダードモデルであ
液晶テレビが一般家庭へ普及して来た理由は,パネル
メーカーの努力により価格を下げ一般家庭に手の届くよ
る。下記にその特徴を挙げる。
うにした事が直接的であるが,製造装置メーカーによる
1)傾斜キャリア,片面成膜
装置自体の生産性の向上や,要求される装置価格へのコ
2)真空リターン,往復成膜
ストダウンへの取組みも普及を支える一員と言えるであ
3)ノジュールレス高速成膜カソード
ろう。設備投資効率の向上がますます求められている製
2.装置の特徴
造ラインにおいては,基板サイズの拡大がいっそう加速
し,2005 年の LCD 工場設備においては基板サイズ
1)大型基板に適した傾斜キャリア,片面成膜
2400 ×2000【mm】以上の大型基板を短時間に処理する
第5期(基板サイズ 1100 × 1250【mm】)までのイン
設備が求められている。
プロセスの一翼を担う,カラーフィルター上の透明電
ラインスパッタ装置SDP-s シリーズは,成膜面側に傾斜
極膜(ITO)の成膜工程においては,生産性において優
したキャリアに成膜面を外側にして基板を装着する方式
れた装置が必要であり,インライン式スパッタリング装
であった。この方式は基板を保持する装具を持たないこ
置が使用されている理由がそこにある。
とで基板着脱の時間を短縮できる利点があった。しかし
図1 SDP-s シリーズ装置外観
* (株)アルバック 第2 FPD 事業部
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ながら,この方式を第6期以降の拡大した基板サイズ向
ペースの縮小を実現しているだけでなく往路,復路で成
け装置に採用した場合,基板の自重による撓みで成膜時
膜物質,雰囲気を変え,カラーフィルター(有機物)上
に必要な基板の平坦性が得られず基板内の膜厚制御を満
へのデリケートな成膜プロセスに対応可能な構成であ
足するための障害となる事が予測される。
る。
3)ノジュールレス高速成膜カソード
第7期向けインラインスパッタ装置は,成膜面と反対
方向に傾斜させたキャリアの面に基板を預ける方式を採
片面成膜でありながら要求する生産性を満足するた
用する。この方式の利点は基板裏面の最適な位置に撓み
め,キャリアは高速で搬送する必要があるが,従来型の
を補正するための受けを配置でき,成膜時に必要な平坦
カソードでは成膜速度が遅くカソードの搭載台数を増加
性を確保できる構成が可能なことにある。
する必要があった。
インライン式スパッタリング装置 SDP-s シリーズは,
基板着脱の際はキャリアを着脱ポジションで展開し,
従来型カソードの2倍の成膜速度を達成する新開発のカ
基板を着脱のためリフトアップさせる方式を採用した。
キャリアを停止させ複雑な動作で多関節ロボットを制御
ソード(W −αカソード)を搭載し,キャリア搬送速度
し基板着脱した従来型と異なり,新型装置で採用した基
の増加による搭載カソード台数の増加を最小にしてい
板をリフトアップさせる方式は,他の製造ラインでも採
る。更に第7期向け新型装置に搭載するカソードでは,
用している汎用性の高い方式であり,ユーザーサイドで
ターゲット面上のノジュールの生成を極力押さえメンテ
も移載システムを準備することが可能である。基板移載
ナンスサイクルの長期化が図られた新型カソードを搭載
システムに使用するロボットを共通化することによる操
し標準型装置でも1週間の連続生産を実現する。
作性,メンテナンス方法の統一等によるメリットが期待
3.今後の予定
できる方式である。
2)真空リターン,往復成膜
従来型 SDP-s シリーズと同様にスパッタ室の後端に真
以上の特徴を兼ね備えた新型SDP-s シリーズの標準型
空中でキャリアを反転するチャンバーを装備し,往復で
装置は基板サイズ 2400 × 2000【mm】以上を対象とし,
成膜可能な構成を採用する。このため設置スペースは最
ITO1500Å 成膜で30 秒/枚の生産性を予定している。
小であり,拡大した基板サイズを処理する工場の占有ス
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