シンテッポウユリ9月出し栽培における切り下球根の利用条件 佐 藤孝夫・山形敦子・間藤正美 (秋田県農林水産技術センター農業試験場) Storage Condition of L.× formolongi bulbs for Harvesting of Flowers in September Takao SATO, Atsuko YAMAGATA and Masami MATO (Agricultural Experiment Station, Akita Prefectural Agriculture, Forestry and Fisheries Research Center) 1 日、 1 作目切り花収穫期間: 2006 年 8 月~ 10 月 、 はじ めに 球 根 掘 上 げ : 2006 年 10 月 8 日 、 球 根 調 整 : 12 ~ シ ン テ ッ ポ ウユ リ は 、 播種 後 1 年 以 内に 開花する 14cm 、球根予冷温度・期間: 1 ℃・ 2006 年 10 月 25 性 質 を 有 す る 早期 開 花 性 のユ リ で 、 秋 田県 の花き生 日~ 12 月 6 日、球根冷凍温度・期間:ー 2 ℃・ 2006 産における生産額 は 1.1 億 円 ( 2007 年 ) に至り、キ 年 12 月 6 日~ 2007 年 6 月 18 日 、球根解凍温度・ ク類、トルコギキ ョウ 、リンド ウに 次ぐ第 4 位であ 期間: 5 ℃・ 2007 年 6 月 17 日 ~ 7 月 7 日、定植日 る。作型は露地栽 培が 中心で 8 月 ~ 11 月 が出荷期 : 2007 年 7 月 5 日 間である。そのなかで、9 月は全国的にシンテッポ 3 )球 根 の 大 き さ が 生 育 に 及 ぼ す 影 響 ( 2005 年 ~ ウ ユ リ の 端 境 期で 、 東 北 地方 の 生 産 が 主力 であり、 2006 年 高単価が期待でき るが 、採花期 が不 揃いで 9 月に集 球根サイズ区: 6 ~ 8cm 、 8 ~ 10cm 、 10 ~ 12cm 、 12 中出荷できる栽培 技術 求められ てい る 。本試 験では 、 ~ 14cm ) 他 の ユ リ 類 で 用い ら れ て いる 球 根 貯 蔵 法を 用いるこ 播種から定植までは、試験1と同じ。 とで 、9月出しに 適した 球根の 利用条 件を検 討する 。 2 4 )球 根 の 養 成 期 間 に よ る 球 根 肥 大 割 合 ( 2005 年 から 2006 年 試験 方法 (1 )試 験 場 所 秋田農試圃場) 鹿角市農家圃場) 球根養成期間区: 1 年、 2 年 栽 培 圃 場 :農 試 圃 場 、 秋田 県鹿角市 播種から定植までは、試験 1 と同じ。 1 作目切り花 農 家圃 場 収穫期間: 2005 年 8 月~ 10 月、 2 作目切り花収穫 (2)試験年次 2005 年 ~ 2007 年 期間: 2006 年 8 月~ 10 月 。 1 作目球根掘上げ: 2005 (3)供試品種 雷山 1 号 年 10 月 14 日 、 2 作目球根掘上げ: 2006 年 10 月 15 (4)試験区の構成 およ び耕種概 要 1) 試 験 1 : 球 根 の 貯 蔵 温 度 が 生 育 に 及 ぼ す 影 響 ( 2005 年 ~ 2006 年 鹿角市 農家圃 場) 貯蔵温度区: 1 ℃、 0 ℃ 、 - 1 ℃ 、- 2 ℃ 、- 3 ℃ 日 3 試験結果及び考察 (1)試験1: 播種日: 2005 年 2 月 5 日 、定植 日: 2005 年 5 月 10 1)球根貯蔵温度 1 ℃では、 3 月 5 日においてす 日、 1 作目切り花収穫 期間 : 2005 年 8 月 ~ 10 月 、 べて の球根 で発芽し、長期間の貯蔵温度には不適で 球根掘上げ: 2005 年 10 月 14 日 、球根調 整: 球周 10 あった(表1 )。 ~ 12cm 、 球根予 冷温度 ・期間 : 1 ℃・ 2005 年 10 月 2)貯蔵温度 0 ℃では、解凍後の出芽の伸長 が最 28 日~ 12 月 9 日 、球根 冷凍温 度・期 間:ー 2 ℃・ も早く 、2 輪以上の着生率が最も高かった 。さらに 、 2005 年 12 月 9 日 ~ 2006 年 6 月 18 日 、 球根解凍温 採花期間が 9 月 11 日~ 19 日までに揃った( 表1 )。 度・期間: 5 ℃・ 2006 年 6 月 18 日 ~ 7 月 6 日 2 ) 催 芽 期 間 の 違 い が 生 育 に 及 ぼ す 影 響 ( 2006 年 ~ 2007 年 秋田 農試圃場 ) 催芽期間区: 1 週 間、 2 週 間、 3 週 間 、 4 週 間 播種日: 2006 年 2 月 5 日 、 定植日 : 2006 年 5 月 8 3)貯蔵温度- 1 ℃では解凍後の出芽が良く 球根 の 腐 敗 も 無 か っ た が 、 1 輪 着 生 率 が 83.3% と 高 か っ た 。採花期間は 9 月中旬から下旬であった( 表1 )。 4)貯蔵温度- 2 ℃および- 3 ℃では、解凍 期間 に貯 蔵中の 凍害と思われる球根の腐敗があり、 特に - 3 ℃では 93.3% の 球根 が腐 敗した。 さらに- 2 ℃ (4)試験4: 1) 1 作目における球根の肥大は球周 8cm 以 上が では採花期間が 10 月 ま で抑制 され た(表 1)。 全体の 65% を 占めたが、球周が大きくなるほど球根 (2)試験2: 1 ) 各 催 芽 期間 に お い て、 切 り 花 長 はい ずれの区 割合が減少した(図1 )。 2) 2 作目における球根の肥大は、球周 8 ~ 10cm も 100cm 以 上確保で きて 、催芽期 間に よる切り花長 が全体の 40% を 占め、球周 8 ~ 14cm の 球根は 1 作 の差は認められな かっ た(表 2)。 2)催芽期間が長いほど、2 輪以上の花蕾数が多 目 よ りも 多 かった が、球 周 14cm 以 上の 大型の球 根 は 1 作目よりも減少した。 くなった(表2 )。 3) 7 月 5 日 の 定植に おい て、 催芽 期間 が 2 ~ 4 週間で、採花は 9 月 に終 えた( 表2 )。 4 まとめ 以上のことから、シンテッポウユリの 9 月出 し栽 (3)試験3: 1 )球根の球周 が大 きいほど 、切り花長 、花蕾数 、 培において、球根の貯蔵温度は 0 ~- 1 ℃が最 適で 葉数は増加し 、球周 8 ~ 10cm で は切り花 長が 67.1cm ある。解凍および催芽期間は 4 週間行うことで 、生 で、球周 12 ~ 14cm に お いては 90cm 以 上であった 育が 促進さ れ、花蕾数が増加する。球根サイズ は大 (表3) きいほど切り花長、花蕾数が増加するが、球周 8cm 2)球根球周で 8 ~ 10cm 区 と 10 ~ 12cm 区 の採 以 上 あ れ ば 出 荷 可 能 で あ る 。 球 根 8cm 以 上 の 球 根 花期間に差は認め られ なかった 。 12 ~ 14cm 区 の採 は、掘上げ球根数に対して 1 作目で 65% 、 2 作目で 花期間は 10 月ま で抑 制された (表 3 )。 85% 確保できる。 表1 球根貯蔵温度の違いによる球根品質および切り花品質比較(2006年) 定植時に 定植時 おける平 奇形花 採花盛 の球根 均出芽長 花蕾数別採花割合(%) 発生株 採花始期 採花終期 期 腐敗率 Y 割合 貯蔵期 試験 間内出 Z 球数 芽率 球根 貯蔵 温度 1℃ 0℃ -1℃ -2℃ -3℃ 30 100 30 30 30 (%) 100.0 0.0 0.0 0.0 0.0 (%) - 0.0 0.0 3.3 93.3 (cm) - 5.5 4.7 0.7 0.0 1輪 2輪 3輪 - - - 70.0 14.0 14.0 83.3 6.7 6.7 36.7 10.0 10.0 - - - 4輪 - 0.0 3.3 0.0 - (%) - - - - 2.0 9月11日 9月13日 9月19日 0.0 9月13日 9月17日 9月26日 50.0 9月19日 9月26日 10月 6日 - - - - 表2 催芽期間の違いが切り花品質と採花期間に与える影響(2007年) 定植時に 催芽期 試験 催芽開始 おける平 間 球数 日 均出芽長 (cm) 4週間 3週間 2週間 1週間 20 20 20 20 6月7日 6月15日 6月21日 6月28日 切り花長 花蕾数別株数割合(%) 採花始期 (cm) 6.4 4.4 1.5 0.0 105.8 104.9 103.0 102.7 1輪 36.3 42.9 55.8 56.8 2輪 45.5 44.8 33.1 33.3 3輪 18.2 12.3 11.1 9.9 9月7日 9月18日 9月19日 10月3日 採花盛 期 採花終 期 9月13日 9月18日 9月23日 9月26日 9月24日 9月28日 10月8日 10月12日 表3 定植日の違いと球根球周の違いが切り花品質と採花期間に及ぼす影響 (2007年) 球根球周 切り花長 試験球数 花蕾数 葉数 採花始期 採花盛期 採花終期 (cm) (cm) 6~ 8 30 57.3 1.0 38.4 9月16日 9月25日 10月5日 8~10 30 67.1 1.1 46.4 9月17日 9月27日 10月8日 7月7日 10~12 30 77.1 1.5 51.4 9月18日 9月27日 10月10日 12~14 30 90.8 2.7 63.7 9月18日 9月28日 10月12日 球根の球周別割合(%) 定植日 40 35 30 25 20 15 10 5 0 8cm以下 8-10cm 10-12cm 12-14cm 球根の球周 1年目 14-16cm 2年目 図1 球根養成期間による球周比較( 2006 年)
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