法曹倫理( 2 単位) 日野 孝俊 平江 徳子・山口 幸雄

授業科目名
法曹倫理( 2 単位)
担当者名
日野 孝俊
平江 徳子・山口 幸雄
授業科目の概要
法曹倫理を弁護士倫理を中心に学習する。法の支配の拡充に貢献すべき法曹の役割を基本に据え、倫理の根幹
にあるものを見つめつつ、倫理と法律が交錯しながら変化する歴史的展開を視野に入れ、法曹が日常の実践の場
で直面する具体的・個別的な問題について深く考察すると同時に、最先端の現代的な課題も取り上げる。
達成目標
⑴ 法曹の職業倫理の特質を理解する。
⑵ 「法の支配」を実現するための「正義の総合システム」と法曹の役割を理解し、法曹倫理が固定的なもので
はなく、時間軸や空間軸において相対的なものであることを理解する。
⑶ 具体的な事案において、倫理規範に基づいた適切な判断ができる。
教材
参考図書:小島武司・柏木俊彦・小山稔編「テキストブック 現代の法曹倫理」(法律文化社・2007 年)
森際康友編「法曹の倫理」
(名古屋大学出版会・第 2 版)
シラバス
授業の方法
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主として具体的設例を挙げてプロブレム・メソッドでディスカッション等を通じて法曹倫理について考えても
らう。
予習については、参考図書の授業の該当部分を事前に読んで問題点を検討しておいて頂きたい。
成績評価の方法
課題報告、レポート、小テスト、発言等の平常点による。
授業計画
正義へのアクセス
と法曹の役割
第 1 回 特に弁護士と依頼
者の関係
(日野)
多様な紛争解決のための法システムが、有機的・総合的に「法の支配」を実現
するための「正義の総合システム」として稼動しているが、その法システムの全
体像を概観するとともに、その中で働く法曹の役割を理解する。
そして、弁護士と依頼者との関係は委任契約にもとづくものであるが、一方弁
護士には公益的役割があることから行動規範に制限があるとともに、専門家とし
ての責任を果たすために独立性が保たれなくてはならない。これらの一見対立す
るかのような関係について検討する。
守秘義務
(日野)
依頼者の秘密の保持について規定した弁護士法 23 条、及び「弁護士職務基本
規程」23 条から、秘密の範囲はどこまでか、秘密の開示が許されるのはいかな
る場合か、などの問題を設例によって検討する。
第2回
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第 3 回 利益相反
第 4 回 (日野)
第5回
共同化と利益相
反・守秘義務
(日野)
第 6 回 民事訴訟と倫理
第 7 回 (日野)
依頼者の利益を損なうものであるがゆえに弁護士が職務を行い得ない事件につ
いての定めである弁護士法 25 条と「弁護士職務基本規程」27、28 条の解釈問題
を具体的設例によって検討する。
法律事務所の共同化、大規模化は弁護士職の大きな流れであるが、共同事務所
では利益相反や守秘義務が拡張することによる問題があることを具体例をもとに
検討する。
弁護士には、
「司法機関的性格」
(公益的性格)と「代理人的性格」があり、民
事訴訟手続の中においてこの両者のバランスが重要であることを具体例を挙げて
検討する。また、真実尊重義務や誠実義務についても検討する。
法律相談・交渉・
民事保全・民事執
民事訴訟におけると同様に、法律相談・交渉・民事保全・民事執行の中でも義
第8回
行と倫理
務の衝突、利益の対立に関し問題が発生することを具体例を挙げて検討する。
(日野)
第10回
弁護士広告及び弁
護士報酬と倫理
(日野)
弁護士と依頼者との出会いは、個々の問題解決のための端緒であるとともに「正
義の総合システム」が機能するための前提条件である。
弁護士広告の規制と自由化の歴史の中で、広告がどのように倫理と関わってく
るのかを検討する。
また、依頼者から報酬を得る弁護士において依頼者への誠実義務と依頼者から
の独立性をどのように両立していくのか、適正な報酬決定のメカニズムを倫理と
の関係の中で検討する。
第11回
第12回
刑事弁護人の役割
と倫理
(日野)
弁護士は、民事事件においても刑事事件においても「基本的人権を擁護し、社
会正義を実現することを使命とする」が、刑事弁護においては、刑事弁護特有の
重要な倫理問題が存在することを検討する。
第13回
第14回
検察官の役割と倫
理
(平江)
訴裁量行使の適切性、被害者・被告人の権利への配慮、手持ち証拠の取扱いの
適切性といった問題を具体的設例を用いて職業倫理の見地から検討する。
第15回
裁判官の役割と倫
理
(山口)
第9回
裁判官の独立性(憲法 76 条 3 項) と倫理規範との関係を検討する。
裁判官の罷免・懲戒処分の制度についても検討する。
備 考
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シラバス
企業法務と倫理
弁護士の公益活動
(日野)
今後は企業弁護士も増加してくるものと思われるが、利益を上げることを目的
とする企業において、正義を実現することの責務を負う弁護士がどのように活動
すべきか、また、守秘義務との関係も検討する。
通常の職務活動を超えて、弁護士に対して社会正義実現のための公益活動が要
請されているが、様々な制度の中で弁護士が活動することと弁護士の倫理との関
係について検討する。
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