ISSN 1348-6616 Education Center for International Students (ECIS) Nagoya University 名古屋大学留学生センター Journal of the ISSN 1348-6616 名古屋大学留学生センター 紀要 第 紀要 Volume 9 号 9 Contents Foreword • Language and International Exchange∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ MACHIDA Ken 第9号 1 Survey Reports • Analysis of the Labor Market for International Students in Aichi Prefecture, based on the “2010 Field Survey for International Students’ Job-hunting Activities within the Prefecture” by Aichi Prefectural Government∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ DOI Yasuhiro 5 目 次 • Report on “Working in Aichi”, a Seminar for International and Japanese 巻頭言 Students Who Plan to Work in Japan∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙WATANABE Rumi/TORAIWA Tomoka 13 ・国際交流と言語……………………………………………………………… 町田 健 1 • Supporting Indonesian Foreign Students’ Children: The Establishment 実践・調査報告 and Development of the “Bhinneka” Children Study Group∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ MURNI RAMLI 19 ・愛知県における留学生労働市場の分析… ―愛知県の平成22年度「県内留学生就職活動実態調査」を基に―……… 土井 康裕 5 Annual Report No. 18 (April 2010 ~ March 2011) I. Projects and Events ・名古屋大学学生のための就職セミナーの成果と課題… ―『地元企業経営者から学ぶ… 「愛知の仕事」セミナー』の試み―… …………………… 渡部 留美・虎岩 朋加 13 • ECIS Community Project: “Training Course for Japanese Language Educators in the Community”∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ KINUGAWA Takao 27 ・インドネシア留学生の次世代支援… ―「ビネカ子ども勉強会」の成立と発展―………………………… ムルニ ラムリ 19 • Nagoya University Community Project: “Improvement of the Disaster Management Learning Environment for International Residents: Seminars at Minato Disaster Management Center”∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ TANAKA Kyoko 29 年報 No.18(2010年4月~2011年3月) • ECIS Open Forum: “Islam and the Japanese”∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ TANAKA Kyoko 31 • Career Education for International Students: “Juku on Japanese Business Organization” Ⅰ事業報告 ・地域貢献事業「地域日本語教育に携わる人材養成講座」… …………… 衣川 隆生 27 ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙MATSUURA Machiko 33 ・名古屋大学地域貢献事業… 「外国籍住民のための発展型防災セミナーの環境整備:… 港防災センターでの研修実践」 … ………………………………………… 田中 京子 29 • “Global Family Program” Report 2010∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙OGURA Midori/MATSUURA Machiko 36 II. Section Reports ・留学生センターオープンフォーラム「イスラームと日本人」 … ……… 田中 京子 31 • Japanese Language & Cultural Education∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 41 ・留学生のキャリア教育としての「日本組織なじみ塾」 … ……………… 松浦まち子 33 • Japanese Language Education Media and Systems Lab (JEMS)∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 65 ・2010年度 地球家族プログラム 報告…………………… 小倉みどり・松浦まち子 36 • Advising and Resource Services (ADRES)∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 73 III. Data∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙159 Guidelines for Authors∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙172 2011 2011 • Nagoya University Program for Academic Exchange (NUPACE)∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙123 Ⅱ部門報告 ・日本語・日本文化教育部門………………………………………………………………… 41 ・日本語教育メディア・システム開発部門…………………………………………………… 65 ・教育交流部門・留学生相談室……………………………………………………………… 73 ・短期留学部門………………………………………………………………………………… 123 Ⅲ資料……………………………………………………………………………………………… 159 投稿規定…………………………………………………………………………………………… 171 巻頭言 国際交流と言語 町 田 健 人類が東アフリカで誕生し,その地から大なり小な としての地位を確立するのである。 りの集団が世界各地へと移住していくことで,人類の ギリシア人にはるかに送れて大国を築いたローマ人 言語は多様化し,時に相互に排他的な関係に立つ地域 の言語ラテン語は,ギリシア語に比べると文明による や国家が成立していった。成立した集団が完全に孤立 洗練を受けていない言語であった。しかし,ラティウ した状態で存立することが可能であるのならば,集団 ム地方の小都市国家から出発して,エトルリア文明を 間の交流が生じようはずはない。しかし,人間がその 吸収しつつ,周辺の初部族を征服することで,イタリ 高度な知力をもって,知識と行動,そしてその成果と ア半島全域やシチリア島を支配下に置くようになる頃 しての知覚可能な構築物を主要な構成要素とする文明 には,ギリシア文化とギリシア語の強い影響のもと, を発展させるべく運命づけられた存在であるとするな ラテン語は文学を表現し,哲学を論じるための調琢さ らば,文明の維持と発展のために,集団の間に交流が れた言語としての地位を獲得するようになっていた。 生じるのは蓋し必然的な現象である。 ローマ人は,ギリシア人と異なり,国家の版図を 誕生した時点では,軽度の方言的変異はあったに違 たゆまなく拡大していく民族であった。それは,か いないが,基本的には均一であった人間の言語も,集 の大カトーが元老院で演説する度に,「ともあれ私 団の移動と分化によって,多数の互いに異なる個別言 はカルタゴを滅ぼすべきだと思う(Ceterum censeo 語へと変化していった。人間の言語が変化する根本的 Carthaginem esse delendam)」という文句で演説をし な理由はまだ解明されていないのであるが,言語が変 め括ったという故事にもよく顕れている。ローマの拡 化したからこそ,言語がこれほど多様になったという 大は,ラテン語の使用地域の拡大でもあった。さすが ことは事実である。 に,バルカン半島のギリシア語にラテン語が取って代 異なった言語を使用する集団が相互に交流をする場 わることはなかったものの,かつてのギリシア語使用 合に,使用言語や翻訳の問題が生じてくるのは時代に 域であった南イタリアとシチリア島は,ラテン語を日 よって変わることはない。しかし,ある集団が武力に 常的に用いる地域となる。ラテン語の拡大にとって重 よって別の集団を征服し吸収するという行動こそが, 要であったのは,イタリアの北方にあるガリアとイベ 人類の長い歴史を通じて通常のあり方であった。この リア半島,そしてダキアがローマの属州となり,この 場合には,複数の言語の平和的共存よりも,一方の言 地域に移住したローマ人は当然のこととして,先住民 語の消滅という道を辿る方がむしろ普通である。 のほぼすべてが速やかにラテン語話者となったことで 人類史上最も偉大な文明を築き上げたギリシア人 ある。 は,その故郷からバルカン半島南部およびその周辺の 5世紀末にローマ帝国が崩壊することにより,ラテ 地中海上の島々へと移住した際には,すでにこの地に ン語はロマンス諸語へと分化するのであるが,言語変 居住していた,今となっては不明の民族の言語を,自 化という観点からして特に興味深いのは,フランス語 らの言語ギリシア語によって駆逐したことであろう。 の特徴である。ガリアに移植されたラテン語は,先住 都市国家の時代には,アテネ,スパルタ,テーベなどの 民であるガリア人の言語の影響で,イタリア本土のラ 諸都市が互いに抗争し合う状況であったから,ギリシ テン語とはいくらか異なったものになったと考えられ ア語の使用域が飛躍的に拡大することはなかった。し る。しかし,この変異はあくまでもラテン語内部の方 かしアレクサンドロス大王が大帝国を築き上げたこと 言的差異と見なすことができるようなものであった。 により,ギリシア語は古代エジプト王朝で使用されて ところが5世紀になって,ガリア北部にフランク族が いたエジプト語に取って代わり,プトレマイオス朝の 侵入してこの地域を支配するようになると,この地の 言語となる。そして,プトレマイオス朝の首都であっ ラテン語方言は,フランク語からの深甚なる影響を被 たアレクサンドリアが,ヘレニズム文化の中心地とな ることになる。強勢のない音節の母音の弱化や脱落, ることによって,ギリシア語は東地中海地域の共通語 強勢のある母音の二重母音化,ラテン語ではすでに失 -1- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 われていた子音 //h/ の復活などの音韻的側面,軍事, でいるのであるが,英語の数詞は古来のゲルマン語起 農耕,行政など幅広い分野における,フランク語から 源である。数詞が重要な基礎語彙であることは言うま の借用語の増加など,音韻と語彙の面で,誕生期のフ でもないから,その数詞を中国語起源の借用語に置き ランス語は,他のロマンス語とは異なった特徴を持つ 換えてしまったということは,日本語が中国語傍層か ようになった。 ら受けた影響は,意外に深いものであったと考える根 さらに特徴的なのは,「文頭の要素+動詞+他の要 拠を与える。語彙以外でも,日本語の音韻体系に拗音 素」という,現代のドイツ語にも見られる語順の規則 が加わったことや,撥音が音素として定着したことな が,フランス語初期の文献から例証されるという事実 ど,音韻変化にも中国語との接触が関わっている。さ である。言語接触によって,一方の言語が他方の言語 らに,漢語が導入されたことにより「漢語名詞+する」 の統語規則を導入することは稀である。中世後期に という形式の派生動詞が大量に形成されるという,形 は,フランス語の統語規則は他のロマンス語と同様に 態的な面での変化も生じている。 なるのではあるが,中世初期のフランス語は,極端に 日本語と中国語の間接的な接触の結果生じた変化 言えばラテン語とフランク語の混合言語とでも言える は,現代世界での言語接触の様態を思わせる。現代で ほど,フランク語の強い影響を受けていたものと考え は,武力による異民族の征服と支配による直接的な言 てよい。 語接触が生じることは,幸いにも極めて困難になって ピジンやクレオルと呼ばれる言語が混合言語の代表 いる。したがって,言語接触が生じるのは,異言語に だとされるが,パプア・ニューギニアの公用語として よって表現された文化的産物を媒介とする,間接的な の地位を獲得しているトク・ピシン語などを見てみる 場合が中心である。この時の異言語とは,英語である と,基盤となる言語が示す特性が,全体に単純化・規 のが通常観察される事態である。ヨーロッパの辺境に 則化したものとの印象を受ける。だからこそ,基盤言 位置するブリテン島でアングル族やサクソン族によっ 語が英語,フランス語,ポルトガル語などのヨーロッ て細々と使用されていただけのゲルマン語が,今や世 パ諸語であれば,これらの言語の言語的特徴には類似 界のあらゆる場所で,国際交流のために使用される共 性があるから,それを基盤として発達したピジン・ク 通語としての絶対的地位を獲得するに至っているの レオル諸語にも類似性が認められるのではないかと思 は,この島を征服したカエサルには想像すらできな える。 かったことだろう。 ところが中世初期のフランス語の場合は,ラテン語 国や地域によって程度の差こそあれ,英語との間接 的特徴の方が優勢ではあるにしても,音韻や統語の面 的な接触は不可避の事態である。たとえ間接的であっ でフランク語的特徴が顕著なのであるから,混合の程 たとしても,語彙以外の側面でも言語に変化が生じう 度はむしろ高いと言える。つまり,言語接触により生 るのは,日本語と中国語の接触で見た通りである。日 じた古フランス語は,ピジン化の過程を経ずして,混 本語では,一度は消滅した「ティ」という音節が復活 合言語に近接する特性を獲得するに至った珍しい言語 したり,「花たち」「野菜たち」のような,無生物を表 事例を提示しているのである。 す名詞に複数を表す接辞が付加されたりしているとい フランス語は,フランク語との直接的接触の結果生 う現象が観察されるが,これは英語からの影響である まれ出た言語である。翻って我が日本語を考えてみる 可能性はある。少なくとも前者については確実であろ と,フランス語のような,異言語を使用する民族によ う。いずれにしても,現代世界において英語との接触 る支配という,直接的な外国語との接触は経験したこ による言語変化が生じつつあるし,今後も生じるであ とがない。それでも,遣隋使や遣唐使を通じての中国 ろうことは十分に予測できる。もちろん,言語変化は, 語との接触は生じたのであり,たとえ傍層ではあって 数多くの可能な選択肢のうちで,偶然的に1つが実現 も,中国語の日本語への影響が非常に大きかったこと するという過程をとるものであるから,個別言語にお はよく知られている。現代日本語の語彙の半分以上 ける英語との接触による変化を確実に予見することは は,中国語からの借用語(漢語)であるが,驚くべき できない。言語変化の要因が言語接触に限定されるの は, 「いち」「に」「さん」などという漢語数詞が, 「ひ」 ではもちろんないが,その要因の1つとして,世界共 「ふ」「み」などの和語をほとんど駆逐してしまってい 通語としての英語との接触がありうるであろうという るという事実である。英語がフランス語からの借用語 のが,本論の結論である。 を大量に取り入れ,基礎語彙の側面にまでそれは及ん -2- 実践・調査報告 愛知県における留学生労働市場の分析1 ―愛知県の平成22年度「県内留学生就職活動実態調査」を基に― 名古屋大学大学院経済学研究科・留学生専門教育教員 土 井 康 裕 5.就職活動の前・後の留学生 要旨 6.結論 本稿では,増加を続ける留学生と国際化を進める日 本企業の間に存在する留学生採用のミスマッチを把握 1.はじめに するために,愛知県が実施した調査を基に,留学生の 労働市場について分析を行ったものである。特に, 「企 日本政府の留学生受け入れ拡大に関する方針は, 業側から見た留学生」,「日本人学生と留学生の就職活 2008年以降大きく変わってきている。1980年代に始 動」,「就職活動の前・後の留学生」という3つの視点 まった日本政府による留学生の受け入れ拡大政策「留 から留学生労働市場の特徴を明示した。今回の調査か 学生10万人計画」は,「我が国と諸外国との相互理解 ら,国際的に優秀な人材の活用を日本国内の企業に促 の増進や教育,研究水準の向上,開発途上国の人材育 すことを政策的に進めるには,各大学や地域の特性に 成等に資するものであり,…元留学生の中には,各国 基づいた留学生専用の就職支援を行う必要性があるこ の発展や我が国との関係で貴重な役割を果たしている とが明らかになった。大学等でも留学生の就職支援対 者も少なくない。2」という概念の基,2003年には留学 策に追われている中,愛知県地域振興部国際課が行っ 生受け入れ10万人という目標を達成した。その後も留 ている「留学生インターンシップ事業」や「留学生就 学生数は順調に増加し,2010年には14万人を超えるに 職フェア」等は,非常に大きな支援となっている。た 至った。ただし,時代とともに日本国内の少子高齢化 だし,今後さらに拡大する留学生数を考えると,大学 や経済のグローバル化が進み,留学生の受け入れ拡大 等と連携した地域としての支援体制構築が必要だと考 政策は当初の目的に加え,新たな政策的な意図を内包 えられる。 するようになった。 2008年,当時の福田首相の提唱により「留学生30万 人計画」骨子が策定され, 「…産学官連携による海外の キーワード 優秀な人材の大学院・企業への受入れの拡大」が進め 留学生,企業,大学,就職活動 られることとなった。つまり,日本国内の労働力人口 減少への対策と大学や企業のグローバル化促進のため の要素として,留学生の受け入れ拡大を活用すること 目次 と決めたのである。骨子の中では, 「日本社会のグロー 1.はじめに バル化」が提唱され,国際的に優秀な人材の活用を日 2.愛知県の調査概要 本国内の企業に促すことが明示されている。特に,留 3.企業側から見た留学生 学生の活用は明確な目標として挙げられており,留学 4.日本人学生と留学生の就職活動 生の日本企業への就職拡大を前提とした「将来の魅力 1 本稿は,愛知県地域振興部国際課が実施した平成22年度「県内留学生就職活動実態調査」にともない,同課から著者が依頼され た「調査票作成の支援」並びに「結果の分析」を踏まえ,その内容をまとめたものである。 2 文部科学省「当初の『留学生受入れ10万人計画』の概要」より。 -5- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 あるキャリアのための就職支援・雇用の促進」が政府 マッチを把握するため,愛知県国際課が実施している 主導で実行されることとなった。 「県内留学生就職活動実態調査」を基に,留学生の労 これにともない,日本の大学等による留学生の受け 働市場について分析を行ったものである。本節に続い 入れ拡大を追いかけるように,留学生の日本企業への て,2節では,愛知県の実施した調査の概要を解説す 就職も拡大傾向にある。法務省入国管理局の統計「留 る。3節では,企業から見た留学生の採用に関する問 学生の就職状況」によると,日本の企業への就職等を 題点を明らかにする。4節では,就職活動時期の日本 目的とした留学生の在留資格変更許可件数は,2001年 人学生と留学生を比較し,その違いと共通点を明示す の3,581人から2008年には1万人(11,040人)を超える る。5節では,就職活動前と後の留学生を比較するこ 許可件数に至っており,7年間で倍以上の拡大であっ とで,大学等で行われている留学生の就職支援や教育 た。その理由の一つとしては,21世紀に入り日本に来 がどのような効果として見えるかを表す。そして6節 る留学生の目的が学位取得を中心とした学問的なもの では,本稿の結論として本調査の意義と今後の課題に から,日本企業への就職を中心としたキャリアアップ ついて議論をまとめる。 を目的としたものへと変化したことが挙げられる。そ れでも,留学生数の拡大に対して在留資格変更者数 2.愛知県の調査概要 (≒日本の企業に採用された留学生)の拡大は相対的に 小さく,日本での就職を希望している留学生の内どの 本稿では,愛知県地域振興部国際課による平成22年 程度の割合で日本企業に就職できているのか,楽観視 度「県内留学生就職活動実態調査」の結果を基に,留学 できない状況もある。つまり,実際には日本の企業に 生の就職活動や日本での就職について検証を進める。 就職したいと思っていても,現実的にその夢を断念し 本節では,当該調査の趣旨や調査対象,並びに調査方 て帰国している留学生も少なくない。ここで注意すべ 法について概要をまとめる。 き問題点の一つは,日本企業への就職を希望する留学 本調査は,平成21年度に引き続き愛知県により行わ 生の数と実際の就職・採用に至った留学生の数に関す れた県内外国人留学生の就職活動に関する実態調査で る差異については,統計上の難しさもあり,明確な数 ある。愛知県では数年前から卒業後に県内の企業に就 値はほとんどないことである。 職を希望する留学生の支援を行っているが,政府によ 日本の企業を取り巻く環境も,近年における市場の る留学生30万人計画を踏まえ,留学生の就職支援施策 ボーダーレス化にともない,国際化の流れが急激に押 をさらに充実させるため本アンケート調査を実施し し寄せている。土井・江夏(2010)にあるように,日 た。平成21年度には,留学生就職活動の実態を理解す 本人だけでは対応できない多様化する各国の需要に合 るため,県内の留学生のみを対象としたアンケート調 わせるため,日本企業もこれまで以上に企業内の国際 査を行った。しかし,結果としてわかったことは,留 化を進めようとしている。2010年には,複数の日本企 学生側の情報をまとめるだけでは実態把握に至らない 業が外国人採用の拡大や会議での英語使用など,国際 ことであった。そのため平成22年度は,前年の調査を 化の取り組みを加速させている。特に,日本在住の留 参考に,県内の留学生だけではなく,留学生を受け入 学生採用と活用は多くの日本企業にとって急務である れる県内企業,さらには比較対象として県内の大学に とともに,非常に難しい課題とされている。そこには, 在籍している就職活動該当学年(学部4年生と大学院 日本独自の企業文化や給与・昇進制度など,外国人に 修士課程2年生)の日本人学生,さらに留学生を受け は理解することが難しいものも多く残されており,日 入れている大学にも調査を広げた。これにより,留学 本企業の国際化は抜本的な企業体質の改革にも繋がる 生からみた就職活動に関する実感を把握するのみでは と考えられる。ただし,企業体質の変革にもつながる なく,県内における留学生の就職活動の実態を多角的 日本企業の国際化は簡単ではなく,外国人労働者を受 に把握することが可能となった。 け入れることに抵抗のある企業も少なくないのが現状 本調査(表1)は,県内大学に在籍する外国人留学 である。 生約6,000人を対象とし1,995人(約32.6%)からの回答 本稿では,増加を続ける留学生と国際化を進める日 を得た。その内訳は,就職活動該当学年から423人(有 本企業の間に存在する留学生採用・活用に関するミス 効回答408),その他の学年から1,532人(有効回答1435) -6- であった。県内就職活動該当学年の日本人学生は,対 査では獲得したいグローバル人材として「日本に留学 象を2,140人,有効回答は825(38.8%)であった。こ し,大学等を卒業した外国人」に37.0% の企業が回答 れら学生向けの調査は平成22年12月10日から平成23年 した。つまり,日本企業の国際化において,日本の大 1月31日の間で,大学等を通じて調査票を配布・回収 学等に在籍している留学生の採用が大きな役割を果た (無記名方式)した。同時に県内大学における留学生の していることがわかる。ただし,同調査では中規模以 担当者にも調査票の記入を依頼した。また,県内企業 上の企業が対象となっており,大企業に属する企業も には1,000社を対象とし,平成22年12月15日から平成23 少なくなかった。 年1月31日の間で,郵送等により調査票を配布・回収 本稿で扱う愛知県の調査では,(表2)50人以下の (無記名方式)し,490(49.0%)の有効回答を得た。企 従業員数の企業が44.5%,50~300人の企業が43.6%と, 業向けの調査に関しては,土井(2009)を参考に質問 いわゆる中小企業が約9割を占めていた。逆に大企業 項目を作成した。 といわれる企業の回答は4%程度と非常に小さく,財 なお,愛知県の平成22年度「県内留学生就職活動実 団法人海外技術者研修協会の調査(2007)のような大 態調査」については,同県のホームページにて調査の 企業中心の全国的な調査とは分析対象の性格が大きく 概要等が公表される予定であるため,本稿では詳細の 異なるものとなった。 大部分を割愛する。 表2:回答企業の属性 業種 表1:調査対象と有効回答数 調査対象数 県内の大学 に在籍する 留学生 就職活動該当学年 上記以外 約6000人 従業員数 有効回答数 製造業 203(41.4%) 50人以下 218(44.5%) 408人 商社 64(13.1%) 51~100人 105(21.4%) 1435人 金融 12(2.4%) 101~300人 109(22.2%) 47(9.6%) 301~1000人 37(7.6%) 79(16.1%) 1001~3000人 14(2.9%) 就職活動該当学年の日本人学生 2140人 825人 サービス 県内の企業(無作為抽出) 1000社 490社 流通・小売 県内の大学等 50機関 43校 情報・通信 資料:愛知県(2011)「県内留学生就職活動実態調査(調査の 概要)」より マスコミ 3.企業側から見た留学生 3000人以上 4(0.8%) 回答できない 回答できない 1(0.2%) 無回答 その他 71(14.5%) 合計 無回答 6(1.2%) 合計 本節では,今回の調査で分かった就職活動に関する 3(0.6%) 6(1.2%) 0 1(0.2%) 490 490 資料:愛知県(2011)「県内留学生就職活動実態調査(調査の 概要)」より 企業側からみた留学生について概観する。特に,これ までの全国規模の調査との比較を行うことで,今回の 調査の特徴を明示することを目的とする。 さらに, 「あくまでも国内市場を中心とした展開」を 2010年は日本企業の国際化,特に外国人の採用拡大 行っている企業が76.6%であり,国際化を進める企業 という意味では大きな転換点になった可能性がある。 は約15%に留まっていた。さらに,過去5年間で留学 大手製造業を筆頭に,複数の企業が外国人の雇用を促 生を採用していない企業が85.1% に上り,基本的には 進させるためのグローバル採用等の新制度を設置し まだまだ企業内の国際化が進んでおらず,そもそもそ た。さらに一部の企業は会議の英語化等,企業内のグ の必要性も感じていない企業が存在していることを理 ローバル化を大々的に公表し,内外に明確な方針を打 解しなければいけない。 ち出した。これにともない,多くの日本企業において また,愛知県における産業の特徴である製造業が全 外国人労働者の採用に関する様々な取り組みが始まっ 体の4割を超えており,これも全国的な調査とは異な ている。これに先立った財団法人海外技術者研修協会 る要素の一つと考えられる。これまで留学生の採用に の調査(2007)によると,新卒採用においてグローバ 活発であったのは製造業の大手企業が中心であったと ルに活躍できる人材を獲得したいと考えている企業 考えられるが,今回は今後留学生の受け入れ拡大が期 が,調査対象全体の72.8%を占めていた。また,同調 待される中小企業が多く含まれていることは,全国的 -7- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 表3:留学生の採用試験について うまく対応でき ている ややうまく対応 できている どちらでもない あまりうまく対 応できていない うまく対応でき ていない エントリーシート 18(26.5%) 17(25%) 25(36.8%) 6(8.8%) 2(2.9%) 面接 28(34.6%) 13(16%) 31(38.3%) 4(4.9%) 1(1.2%) 資料:愛知県(2011)「県内留学生就職活動実態調査(調査の概要)」より な留学生採用拡大の可能性と問題点を明示するには十 はなく,留学生の活用にむけて行政・大学に期待する 分であると考えられる。 ことの中には以下のような意見も含まれていた。 次に,愛知県の調査の中で過去5年間に留学生の採 ・(留学生の) 安易な2年単位の入学はさせない方がよ 用経験がある68社からは,「採用試験における外国人 いのではないでしょうか 留学生の日本人学生と比較した印象」(表3)につい ・(留学生の) 採用へのハードルは高く設定せざるをえ て,興味深い回答を得ることができた。外国人留学生 ないと思う のエントリーシートに関して,肯定的な「うまく対応 ・とにかく日本人の雇用を第一に考えるべきだと思う できている」または「ややうまく対応できている」と ・まだまだ昔の考えをもつ日本人が多い事を教えるべ 答えた企業が51.5%と過半数を超えており,否定的な きだと思う 回答の11.7%を大きく上回る結果となった。さらに面 行政や大学としては,これらの意見もしっかりと受け 接に関しては,肯定的な回答が50.7%に対し,否定的な 止め,日本で就職を目指す留学生にも現状を理解させ ものが6.1%と非常に低くかった。これは,少なくても る必要がある。つまり,留学生が日本の企業に就職す 近年に留学生の採用経験がある企業の多くが,留学生 るということは,日本社会の一部として機能すること の就職活動やその対応に高い能力(適応力)を見出し が重要であり,留学生と同時に周辺の日本人または日 ていることが推測される。ここで注意をしておくべき 本企業との相互理解を深めることも重要であると考え ことは,企業は基本的に採用した留学生について述べ られる。 ていると考えられる点である。なぜなら,同様の質問 を大学等の担当者に聞いたところ,58.2%が否定的な 4.日本人学生と留学生の就職活動 「ややうまく対応できていない」か「うまく対応できて いない」と回答しており,企業から見た留学生と大学 本節では,就職活動該当学年(学部4年生と大学院 から見た留学生に乖離があることを暗示している。 修士課程2年生)の日本人学生と留学生の回答結果の 同時に,留学生のエントリーシートや面接に関する 比較を行うことで,留学生の特性を明示することを目 問題点についてでは,「日本語能力」と「日本ビジネ 的とする。多くの企業は留学生の採用活動を特別視し スマナー・社会常識」が上位に挙げられ,さらに「貴 ておらず,日本人学生の採用と区別せずに行ってい 社が求める人材への理解」についても不十分であると る。つまり,就職活動において留学生は日本人学生と いう回答が多くあった。この結果を逆手に取ると,日 比較されるが,実際には特徴に大きな差異があるた 本で就職を考えている留学生に対し,大学等における め,日本人学生と留学生を同様の過程で採用すること 「日本語」と「ビジネスマナー・社会常識」の教育を に疑問がある。一方で,企業の求める人材がある程度 充実させ,さらには「企業研究」の方法や企業との接 画一化されることは当たり前であり,このジレンマを 触機会を創出することができれば,留学生の採用がさ 解消することは容易ではない。 らに促進される可能性があることを意味している。た まず,卒業後の進路について日本での就職を希望し だし,これまでも同様の試みは既に行われており,特 ているかの問いについて比較をしてみる。(図1)企業 に「企業研究」等は日本人学生のために開催されてい に就職を考えている日本人学生は全体の89.9% と非常 るイベントも多くあるため,留学生に特化した効果的 に高い数値が出ているのに対し,同学年の留学生はわ な方法を確立する必要性があると考えられる。 ずか43.1% が日本での就職を希望している。それでは, 一方で,中小企業の大半は留学生の採用に積極的で 日本での就職を希望していない留学生はどのような選 -8- 卒業の一年以上前から始まる長期的な活動は,多くの 図1:日本人と留学生の就職希望 (日本での)就職希望 日本人学生 留学生にとっては理解することが難しいものであるこ その他 89.9% とを理解する必要性がある。 10.1% 上記二つの日本人にはある「覚悟」と「常識」が留学 生には足りないことが,就職活動における大きな劣性 留学生 43.1% 要因となっている。ただし,これは指導・教育によっ 56.9% て改善することが容易であると考えられる。5節でも 0% 20% 40% 60% 80% 説明するが,実際,ここ数年で留学生の就職支援活動 100% が整備されている中,留学生の考え方も少しずつ日本 資料:愛知県(2011)「県内留学生就職活動実態調査(調査の 概要)」より の就職活動に順応しようとしていることが見て取れる 部分もある。 択肢があるのだろうか。留学生に対して「(日本での就 表4:就職を希望する職種 (複数回答) 職以外に)どのような進路を考えているのか」という 職 種 日本人学生 留学生 一般事務(経理・法務等を含む) 33.8% 26.7% 営業・販売 43.4% 33% 6.1% 54.5% 13.5% 18.2% 9.4% 5.7% 研究・技術開発 15.4% 20.5% システム開発 10.2% 8.5% 流動性を促すことに繋がっている。結果として,留学 生産・品質管理 11.2% 21.6% 生は「日本での就職」にこだわりが少ないものも出て その他 14.3% 4% くることとなり,いい加減な態度をとっている一部の 無回答 0.8% 2.8% 質問をしたところ,1位の「日本での進学」が36.6%, 2位の「出身国での就職」が34.1% であった。つまり, 日本人の学生には「日本での就職」以外の選択肢は非 国際業務(通訳・翻訳を含む) 常に小さいのに対して,留学生にとっては「日本での 企画・市場調査 就職」以外にも「日本での進学」や「母国での就職」 広報・PR 等の選択肢が複数存在していることがわかる。これは 一方で日本人学生の就職活動に対する覚悟を促し,留 学生に対しては「他にも選択肢がある」という安易な 資料:愛知県(2011)「県内留学生就職活動実態調査(調査の 概要)」より 留学生が全体的な留学生の質や評判を下げている可能 性がある。大学等の受け入れ機関としては,日本での 就職を希望している留学生にとって帰国等の逃げ道が 続いて,今回の調査で明確になった日本企業におけ 存在しており,厳しい日本の「就職活動」中に諦めて る留学生の採用価値について議論を進める。表4で注 しまうものも少なくないことを理解し,しっかりとし 目すべきは「国際業務」の欄である。もちろん,多く た事前の教育や情報提供が必要であることを認識しな の留学生が国際業務に興味を持っており,全体の中で ければいけない。 断トツの割合(54.5%)を占めている。今回の調査で 次に,日本人学生と留学生の就職活動開始時期につ 興味深かったのは,日本人学生でたった6.1% しか国際 いて比較をしてみる。まず基準となる日本人学生の 業務に興味がなかったことである。これは昨今マスコ 「初めて企業にエントリーした時期」と「初めて会社説 ミ等でも話題になっている,日本人学生の「内向き志 明会に参加した時期」をみると,どちらも約7割の学 向」の強い表れであると考えられる。これでは,企業 生が最終学年の前年度10月から1月までに経験してい に入ってから日本人採用者をグローバルな人材として た。それに対して,同時期に「エントリー」や「会社 育てようにも,そこに意欲を持っている日本人学生が 説明会」を経験している留学生は約3割に留まってい 少ないのであれば,教育のしようがない。つまり,現 ることがわかった。日本人にとっては「常識」となっ 状では留学生の採用は企業の国際化に向けて数少ない ている日本の「就職活動」は,外国人である留学生に 手段の一つであると考えられる。 とっては常識ではないことを理解する必要がある。他 次に,今回の調査期間(平成22年12月10日から平成 国では卒業後に就職活動をすることも少なくなく,プ 23年1月31日まで)において,就職活動を行っている レエントリーやエントリーという特殊なプロセスや, (行っていた)日本人学生と留学生の内定率を比較し -9- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 てみる。平成22年度は未曾有の就職難と言われている と,58% と約6割が日本での就職を希望している。こ 中で,日本人学生の80.7% が「内定している企業があ こには,学位の取得を中心として留学している博士課 る」と回答した。それに対して,留学生では45.7% が 程の留学生も含まれており,就職該当学年から比較す 「内定している企業がある」と回答した。この結果を単 ると高い数値であることがわかる。つまり,日本での 純比較すると,留学生の内定率が圧倒的に悪いことが 就職を希望している留学生の中には,就職活動の難し 理解できる。さらに,就職活動中に日本での就職を諦 さやその複雑さから日本での就職を諦めてしまう留学 めてしまった留学生を加えると,その内定率はさらに 生が存在しているため,就職活動をしたが採用されな 減少することが推測される。単純計算すると,就職活 かった留学生数を明示することは難しい。結果として 動該当学年の留学生では約2割の留学生のみが日本企 日本の就職活動の難しさが,就職活動該当学年におけ 業からの内定を手にしていることとなっている。つま る「日本での就職」を希望する留学生を減少させてい り,留学生の数が年々急増しているのに対して,企業 ると推測される。 からの需要は増加はしているものの留学生の増加数に 表5:日本での就職を希望している留学生の希望勤続年数 は及ばず,結果として日本での就職を実現できない留 学生が増加していることが暗示されている。 最後に興味深い結果を紹介する。「就職を希望する 就職活動 該当学年 の留学生 左記以外 の留学生 18.8% 17.5% 14% 日本企業* の期待 都道府県」についての質問について,愛知県内の日本 5年未満 人学生62.1% が愛知県の企業への就職を希望したのと 5年以上10年未満 17% 23.9% 1.8% 同様に,留学生も59.7% が愛知県内の企業への就職を 10年以上20年未満 7.9% 6.6% 5.3% 希望していた。この結果から,県内の大学と企業が連 定年まで 15.9% 11.9% 29.8% 携体制をしっかりと作ることにより,日本人学生と留 特に希望はない/ わからない 35.8% 38.7% 40.4% 4.5% 1.4% 8.8% 学生の採用を組み合わせることができれば,県内労働 市場の活性化や県内企業の国際化を促すことはそれほ ど難しいことではないかもしれない。 5.就職活動前・後の留学生 無回答 資料:愛知県(2011)「県内留学生就職活動実態調査(調査の 概要)」より 日本企業 *:過去5年間に外国人留学生を採用したことがあ る企業を指している。 次に,日本での就職を希望している留学生の希望勤 本節では,平成22年度1月における就職活動該当学 続年数について就職活動該当学年の留学生とそれ以外 年とそれ以外の留学生,つまり就職を希望する場合に の留学生のアンケート結果を比較してみる。表5で分 は既に就職活動を経験している留学生と,まだ就職活 かるように,両者に劇的な違いは見られない。それで 動を経験していない留学生の比較を行う。ここでは, も,分類を10年未満と「定年まで」を含む10年以上に 特に就職活動による留学生への影響と,大学等で進ん 分けて比較をすると,違いが見られる。10年未満と答 でいる就職活動支援の効果について議論を進める。 えた割合は,就職活動該当学年の留学生(35.8%)はそ 今回の調査の中に,就職活動を経験した学生とそれ れ以外の留学生(41.4%)に比べて約5% 少ない。同時 以外を比較するのに最も分かりやすい項目がある。4 に,10年以上定年までと答えた就職活動該当学年の留 節でも述べたが,就職活動該当学年で日本での就職を 学生(23.8%)はそれ以外の留学生(18.5%)に比べて 希望している留学生は43.1% であった。ここで注意す 約5% 多いことが分かる。愛知県内の企業の約35% が べき点の一つは,入学時または就職活動開始時に同様 10年以上定年までを希望していることから分かるよう の数値が出るかどうかということである。今回の調査 に,日本の企業は伝統的に長期的な雇用を好む傾向に は1月末に回答を回収しており,「就職活動該当学年」 ある。一部の日本企業では,プロジェクトの責任を任 の多くは進路を明確にしている。つまり,「日本での されるまでの期間(有形無形・公式非公式の研修期間) 就職」を途中で諦めた留学生は「日本での就職」を希 を10年と考えている企業もあり,在職期間が10年以上 望する中には入ってこない。これを踏まえ今回の調査 なければ本当の意味での日本企業のノウハウを学ぶこ における「就職活動該当学年」以外の留学生を見る とは難しい。これを踏まえ,現在行われている大学等 -10- における留学生のための就職支援活動では,多くの場 た包括的な留学生の就職支援が期待される。特に3) 合で日本の企業に就職した後に短期間での帰国や転職 4)6)については,留学生への指導・支援により改 を避けるように指導している。例えば名古屋大学大学 善が可能なため,具体的な取り組みが期待される。 院経済学研究科では,「日本企業でノウハウを学びた ただし,上記の取り組みを各大学で推進することは い」と言っている留学生には,是非とも10年はその企 簡単ではない。既に,留学生数の多い大学では様々な 業に滞在することを進めている。そうしなければ,日 取り組みがされているが,実質的に十分な支援ができ 本企業のノウハウは学べないからだ。ただし,日本企 ているという大学は少ないことが予想される。今回の 業の期待の最大値が「特にない」であることに着目す 調査における大学の担当者からの回答でも,「他大学 る必要がある。これは,留学生の採用経験がある日本 と連携した留学生の就職支援としてあるといいこと」 企業も学んでおり,留学生を採用する際には長期的な に対して, 「就職説明会」(39.5%), 「ビジネス日本語の 雇用を諦めている可能性も考えられる。もし,これが 講座」「マナー講座」(共に23.3%)が挙げられている。 企業の「希望」ではなく「諦め」であるならば,これ つまり,限られた資源の中で展開される大学の就職支 を改善することは留学生の採用を拡大する大きな要素 援において,留学生の就職支援は必要であるという認 であると考えられる。 識はあっても,その負担の大きさから実現されていな いものも少なくない。その意味で,大学間の連携によ り「就職説明会」や各種「就職支援講座」を合同・共 6.結論 同で開催することができれば,支援の幅や深みが増す 本稿では,留学生の労働市場を把握するため,愛知 ことは明らかである。 県が実施した「県内留学生就職活動実態調査」を基に, また,現在行われている大学での留学生就職支援に 留学生と日本企業の間に存在する留学生の採用・活用 はもう一つ大きな問題点がある。それは,留学生の支 に関する問題点(ミスマッチ)について分析を行った 援講座等への出席率である。多くの場合,就職支援講 ものである。特に, 「企業側から見た留学生」, 「日本人 座等は単位のない自主的な出席を促すものとなってい 学生と留学生の就職活動」,「就職活動の前・後の留学 る。留学生の場合,単位が付かない講義等に対して極 生」という3つの視点から留学生労働市場の特徴を明 端に出席率が悪くなるケースがある。それは,出席す 示することを心掛けた。 ることの重要性を理解していないのと同時に,アルバ 本調査の結果から,愛知県内の日本企業と留学生の イトを含めた学外の活動に時間を割く傾向が強いから 採用・就職に関するミスマッチを改善する要素として だ。その意味では,学内・学外に関わらず,留学生が 6つのポイントが挙げられる。 積極的に就職支援を受けるような仕組みを構築する必 1)日本での就職を希望している留学生では,約6割 要がある。例えば,就職支援講座の単位化は,分かり が地元愛知の企業を希望している やすい例の一つだ。もちろん,本件に関しては賛否両 2) 「国際業務」を希望する留学生が半数を超えるのに 対して,日本人学生は非常に少ない 論があり,今後検討する課題の一つである。 今回の調査から,国際的に優秀な人材の活用を日本 3)大学等の指導によって,留学生の希望勤続年数が 増加している可能性がある 国内の企業に促すことを政策的に進めるには,末松 (2010)で提唱されているように,様々な言語・文化的 4)留学生では,就職活動開始後に日本での就職を諦 める可能性が2割ほどある 理由から就職活動において劣勢を強いられる留学生に 対して,各大学や地域の特性に基づいた留学生専用の 5)採用経験のある企業と留学生を抱える大学では, 留学生人材の質の認識に差異がある 就職支援を行う必要性があることは明白である。大学 等でも留学生の就職支援対策に追われている中,愛知 6)企業側からは,留学生採用の問題点として「日本 県地域振興部国際課が行っている「留学生インターン 語能力」と「日本ビジネスマナー・社会常識」が シップ事業」や「留学生就職フェア」等は,非常に大 上位に挙げられ, 「企業研究」も不十分であるとい きな支援となっている。ただし,今後さらに拡大する う回答が多くあった 留学生数を考えると,これまで以上の留学生に対する これらの要素を踏まえ,地域内での産官学連携を含め 支援体制がなければ,国際的に優秀な人材の地域外, -11- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 または海外への流出が加速することとなるだろう。 おける外国人留学生の就職促進に関する調査研究)報告 同時に,地域企業に対して留学生採用や活用に関す 書」,平成18年度経済産業省委託事業 . るアピールをすることも重要だと考える。今回の調査 から,愛知県の多くの企業では国際化に積極的ではな すべき役割と包括的な支援の基本事項-」,留学生教育 , いことがわかった。もちろん,国際化が必要ない企業 もあると考えられるが,市場のグローバル化がさらに 第15号,pp. 15-26. 土井康裕(2009)「留学生就職支援プロジェクト い。 調査報告 『留学生に関するアンケート』」,名古屋大学留学生セン 進むことを考慮すると,地域の企業に対して戦略的に 国際化を考える機会を提供することも必要かもしれな http://www.aots.or.jp/jp/press/pdf/press070514_2.pdf 末松和子(2010)「留学生に特化した就職支援-大学が果た ター紀要 ,第7号,pp. 13-20. 土井康裕,江夏幾多郎(2010)「日本企業の職場の国際化と 留学生のキャリア教育-高度外国人材の活用と定着-」, 本稿の結論としては,日本の大学で学んだ優秀な人 材を地域で活用するために,今後,留学生就職支援の 大学間や産官学の連携を通した地域ネットワークの構 築が必要であると考える。 留学生教育 ,第15号,pp. 27-34. 法務省入国管理局(2002,2009)「留学生の日本企業等への就 職状況」,統計に関するプレスリリース . http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/ nyuukokukanri01_00013.html 文部科学省(2002)「当初の『留学生受入れ10万人計画』の概 要」,留学生交流関係施策の現状等について . 参考文献 財団法人海外技術者研修協会(2007)「平成18年度構造変化 に対応した雇用システムに関する調査研究(日本企業に -12- http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/ 007/gijiroku/030101/2-1.htm 名古屋大学学生のための就職セミナーの成果と課題 ―『地元企業経営者から学ぶ「愛知の仕事」セミナー』の試み― 名古屋大学国際交流協力推進本部 大学院教育発達科学研究科 留学生担当教員 渡 部 留 美 名古屋大学国際交流協力推進本部 大学院国際言語文化研究科 留学生担当教員 虎 岩 朋 加 要旨 1.はじめに 本稿では,名古屋大学教育奨励費の助成により実施 平成20年,グローバル戦略を展開する一環として した『地元企業経営者から学ぶ「愛知の仕事」セミ 「留学生30万人計画」骨子が策定された(文部科学省他, ナー』について,セミナーの概要説明,参加者からのア 2008)。骨子では,留学生受入れについて,入口から ンケート結果を中心に報告を行う。本セミナーは,留 (入試・入学・入国整備など),受入れ体制の改善(英 学生が地元企業や日本の企業文化などについて興味を 語プログラムの設置,学習・生活環境整備など),出 持ち,自立的に就職活動が行えるよう支援することを 口(就職支援,帰国留学生支援など)に至るまで,優 目的としている。セミナーは,企業経営者からの日本 秀な学生を獲得するための方策が計画され,「グロー の企業文化,必要とする人材,雇用などについての講 バル30」「アジア人材育成」などが展開されている。 演を前半部分とし,日本の企業文化をテーマとした参 留学生の卒業・修了後のキャリア支援は,日本が少 加者(日本人学生,留学生混合)間のグループ・ディ 子高齢化による社会構造の変化に対応するためにも, スカッション及び発表を後半部分とする。 外国人高度人材の獲得という点から近年重視されてお セミナー後のアンケートからは,企業経営者から直 り,省庁,自治体,大学が個々に,あるいは連携しな 接話を聞き,日本の企業文化について知ることができ がら様々な支援プログラムを計画,実施している(独 た,日本人学生とのディスカッションを行い勉強に 立行政法人日本学生支援機構編,2010等)。 なったという意見があった一方,時間配分に問題が 名古屋大学においては,就職支援室において全学生 あったとの指摘が多く,課題として残った。 向け就職支援を行っているほか,名古屋大学留学生相 談室が「就職活動支援コース」「日本組織なじみ塾」の 実施,就職活動のガイドブック作成,経済学部が留学 キーワード 生向け就職説明会などを行っている。留学生がより一 日本企業文化,企業経営者,地元企業,就職活動支援 層就職活動を行いやすい環境を整備するため,今後も 多種多様な就職支援プログラムの提供が不可欠である 目次 と考える。 本稿では,名古屋大学教育奨励費からの助成により 1.はじめに 実施した『地元企業経営者から学ぶ「愛知の仕事」セ 2.セミナーの目的と実施要領 ミナー』について,セミナー概要,参加者からのアン 3.セミナー実施報告 ケート結果などの報告を行う。 4.アンケート結果から 5.まとめ -13- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 た。留学生への広報については,各部局の留学生担当 2.セミナーの目的と実施要領 教員へのチラシ配布及び,学内国際交流関係者が任意 2.1.目的 で登録している「フロントライン」メーリングリスト 本セミナーの趣旨と目的は次のとおりである。 に流し,学生への周知の依頼を行った。日本人学生へ 留学生は世界規模で有名な日本の大企業の名前は の広報については,学務部学生総合支援課就職支援室 知っているが,そうでない企業については,知らない の教職員に説明を行い,チラシの配布,掲示板への掲 ことが多い。まして,地域に根差す中小企業となると 載を依頼した。参加はセミナーの趣旨に基づき,修士 皆無に等しいといえ,いざ留学生が就職活動をし始め 課程1年生,学部1,2年生を優先することとしたが, ると,いわゆる有名企業にばかり目が向き,企業から 結果的に申込者全員が参加できた。 の内定をもらうことができず苦労している姿がみうけ 企業経営者による講演については,事前に2回講演 られる。さらに,日本独特の企業文化,社会形態などを 者と打ち合わせを行った。1回目はセミナー当日の2 知らないままインターンシップなどに参加しても,人 か月~1ヶ月半前に企業を訪問し,セミナーの趣旨説 間関係や仕事の取り組み方などについて戸惑い,日本 明,留学生の就職活動状況と大学による支援状況,正 での就職の動機づけとして結びつかないこともありえ 式な依頼と承諾書へのサイン依頼,当日のセミナーの る。従って,留学生が地元企業や日本の企業文化など スケジュール,講演いただきたい内容の説明を行っ について興味を持ち,自律的に就職活動が行えるよう た。経営者からは,企業の説明,雇用状況,工場見学 支援することが目的であり,本セミナーの位置づけと などをしていただき,セミナー実施者(筆者ら)が事 しては,実際に就職活動を始める前段階において,留 前にその企業について勉強することができた。2回目 学生が就職活動や日本で働くことについて知識を得, はセミナー当日の1週間ほど前に再度訪問し,参加者 日本人学生や企業経営者との相互交流のなかで自分自 の国籍や学年の紹介,当日の必要機器や配布資料の確 身の就職に対するイメージを描くことのサポートを行 認などを行った。 うことである。 3.セミナー実施報告 2.2.セミナーの企画と参加者募集 教育奨励費受給の決定を受けた6月末に準備を開始 セミナーは,1回2時間で,前半部分(約60分)を企 した。一回きりではなく,数回連続して実施すること 業経営者による講演と質疑応答,休憩を挟んで後半部 が望ましいと考えたため,平成22年度末までの間に3 分(約45分)は,参加者を3~4グループに分け,日本 回実施することにした。参加人数は,留学生・日本人 の企業文化に関するテーマをもとにグループ・ディス 学生各10名の合計20名とし,あえて小規模なものを設 カッション及び各グループによる発表・質疑応答にあ 定した。このような組み合わせと人数にしたのは次の てた。実施時期,講演者,講演内容,ディスカッショ ような狙いがあった。一つは,企業経営者と参加者の ンテーマ,参加者については表1のとおりである。 距離を短くし直接対話をしやすくするためである。参 参加留学生の出身国・地域は,中国,韓国,台湾,イ 加学生一人一人が講演者である企業経営者と話ができ ンドネシア,ウズベキスタン,バングラデシュ,オー ることはもちろん,経営者側にとっても,参加者の顔 ストラリア,イランであった。学年は,修士課程1年 や様子を見ながら話ができる環境を設定することが望 生が約半数を占め,その他は学部生,博士課程,修士 ましいと考えたからである。もう一つは,参加者同士 課程2年生など様々であった。日本人学生は学部生, の交流を促進するためである。日本人学生と留学生を 大学院生約半数ずつ参加があった。留学生,日本人学 同数設定することで,相互理解が進んだり,情報交 生どちらも理工系,文科系様々な学部・研究科からの 換・情報共有ができると考える。特に,後半部分のグ 参加があった。 ループ・ディスカッションでは数名単位にし,留学生 前半部分の企業経営者による講演では,各企業の事 にとっても発言しやすい環境を設定した。 業説明や中小企業と大企業の違い,経営者としての理 参加者の募集に際しては,A4の大きさのチラシを 念,社員教育・福利厚生,参加した学生へのメッセー 毎回作成し,セミナー当日の約1カ月前に広報を行っ ジなどが,パワーポイントや配布資料をもとに語ら -14- 表1 セミナー概要 第一回(2010年 9 月 8 日) 講演者 講演内容 第三回(2011年 1 月26日) 株式会社カサイ製作所代表取締役 株式会社野呂英作会長 葛西泉氏 野呂英作氏 栄印刷株式会社代表取締役社長 清水和久氏 *企業の概要説明 *製品の説明 *愛知の企業についての説明 *円高のメリット/デメリット *大企業と中小企業の違い、 メリット/デメリット *学生へのメッセージ *企業の概要説明 *製品のブランドとポリシー *ブランドの海外展開と戦略 *経営理念 *社員に期待すること *学生へのメッセージ *経歴とこれまで従事した仕事について *社長に着任してから実施したこと *社員教育と福利 *清水氏の考える「会社」について *エンプロイアビリティ(employability) について *企業が従業員に与える環境と従業員個 人がすべきこと 年功序列と成果主義 日本と他国の採用方法 ディスカッション 有給休暇と育児休暇 テーマ 参加者 第二回(2010年10月27日) 留学生7名、日本人学生7名、 教員2名 留学生7名、日本人学生6名、 留学生10名、日本人学生1名、 教職員2名 教職員4名、自治体関係者2名 れ,参加者は熱心に聞き入っていた。講演終了後の質 など)とアメリカの採用方式を例に挙げ,参加者は自 疑応答では次のような質問が出された。最も多かった 国の採用方法とどのように異なるか,またそれぞれの ものは外国人の雇用についてであり,「外国人を雇用 利点と欠点について話し合った。いずれの会も参加者 したことがあるか」,「採用時に日本人と外国人を区別 は KJ 法を用いてブレーンストーミングした後に,協 するか」,「外国人留学生の採用を考えているか」など 力し合って模造紙にまとめ,発表を行った。 の質問があった。これに対しては,どの経営者も外国 人と日本人の区別なく採用する,と回答していた。同 時に多かったものが人材に関するものであり,経営者 4.アンケート結果から の考える「よい人材」,「必要としている人材」につい 次に,参加者に対して行ったアンケート結果の一部 ての意見を求められた。これについては,中身が重要 を紹介しながら,本セミナーについて考察する。 である,一般常識を知っていることが即戦力につなが 問1:セミナーに参加した理由(複数回答) る,正直であること,などの返答が寄せられた。また, 2つのセミナーについては社員も1名同席いただいた 第一回 第二回 第三回 日本人 日本人 日本人 留学生 留学生 留学生 学生 学生 学生 6 1 6 0 7 0 が,彼らに対しての質問も寄せられた。様々な質問が 日本で就職したいから あるなかで,講演者3名ともが人と人のつながり,周 のテーマに基づいて日本人学生,留学生,企業経営 愛知の企業に興味があるから 日本の企業について知識を 得たいから 企業経営者と直接話ができ るから 日本人学生と留学生の間の 交流ができるから その他 者,社員,大学教職員などがそれぞれの立場から意見 セミナーに参加した理由としては,当然のことなが を出し合った。第一回では,日本人の有給休暇や男性 ら留学生の回答として日本で就職したいからというも の育児休暇の取得率の低さについて,その背景を推察 のが最も多かった。 囲の人とのコミュニケーション,社員との家族のよう な関係などを重視していることが印象的であった。 後半部分のグループ・ディスカッションでは,各回 2 3 2 0 4 0 2 2 5 1 3 0 2 2 2 1 4 0 1 2 0 1 2 1 0 0 0 3 0 0 することによって,日本企業の勤務体系や社員個人に 求められている働き方について知識を得ることができ 問2:セミナーをどこで知ったか た。第二回では,日本企業においては伝統的な年功序 列制度と近年導入されつつある成果主義についてそれ ぞれの利点と欠点について,留学生の自国の制度と比 較しながら議論を行った。第三回では,日本企業の採 第一回 第二回 第三回 メーリングリスト 5 3 2 チラシ 3 1 1 知人 / 友人 0 2 3 教職員から 6 5 5 用方式(新卒一括採用,就職活動開始時期,内定制度 -15- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 セミナーをどこで知ったか,という質問について きて,勉強することができます。/ 私は九月に来たばか りにも関わらず,就職活動が始まりまして,たくさんの 企業セミナー,説明会に参加しましたが,今日のように, のろさんがおしゃった個人がブランドを作るべきだと言 われたことがなくて,考えたこともありません。今から 考えると,あまりにも焦りすぎたと気付きました。本日 はこの貴重なお話をいただきまして,もう一度個人のや りたいこと,やりがいのあることを考えたいと思ってお ります。(以上,留学生) とても深くて,よいお話が聴けたこと。/ 中小企業の良 さを改めて実感しました。/ 中小企業の企業家の方のお 話をきいたことがなかったので,新しい価値観を垣間見 ることができました。/ 地元にこんなにすばらしい企業 があることを知れて,会長の考えを聞かせていただけた ことです。/ 留学生の方の視点による意見が聞けて興味 深かった。(以上,日本人学生) 第三回 今回のセミナーに参加して,企業経営者と直接話しても らう機会があってよかったと思う。清水社長の話を聞い て,自分に合う会社,みんなで協力してやることと従業 員たちが一つの家族を感じさせることが大事なことと分 かった。/皆さんの意見と考え方を聞けました/経営者 方のお話が聞けてよかったです。同じく就職という目標 を持った友たちに会えお話ができてよかったです。/社 長とお会いできて,よかったと思います。/議論の内容 が非常に充実していて,たいへん勉強になりました。初 めての group discussion という経験をさせて頂き,大変 勉強になりました。/清水社長のお話を聞いて仕事の内 容などについてもっと深く勉強することができました。 (以上,留学生) 企業や自治体の方のお話がきけたこと。(日本人学生) は,教職員からという回答は毎回同じくらいであった が,知人 / 友人から知ったという者が回数を重ねるに つれ多くなっており,少ない数字であるので明言でき ないが,口コミで広がる可能性もあることが示唆され た。 問3:名古屋大学における就職関係支援で望むもの (複数回答) 就職活動方法などの セミナーの充実 会社説明会の充実 ビジネス日本語講座の充実 第一回 第二回 第三回 日本人 日本人 日本人 留学生 留学生 留学生 学生 学生 学生 2 0 3 2 1 0 3 1 2 2 1 0 3 0 1 0 1 0 ビジネスマナー講座の充実 1 1 1 0 0 0 インターンシップ 早い段階からのキャリア 支援 日本企業の情報提供の充実 1 1 3 0 1 0 2 3 2 1 3 0 3 0 3 1 1 0 名古屋大学における就職支援で望むものについて は,回によって回答が異なっていた。これは開催時期 と関係すると考えられる。第一回は9月開催で,本格 的な就職活動が始まっていない時期であったため,ビ ジネス日本語や会社説明会,企業の情報提供などを求 めていたが,1月に実施した第三回では,早い段階か らのキャリア支援を必要と感じていることが理解でき 参加して良かった点については,第一に企業の経営 る。 者から直接話を聞いた点が挙げられる。日本の企業や 雇用についての知識を得たばかりでなく,経営者によ 問4:参加してよかった点(自由記述。原文ママ) 第一回 今までわかりつらかった大企業と中小企業のことを比較 的に理解できるようになりました。/企業経営者から留 学生の採用についての話が聞くことができてよかったで す。/日本企業の経営者の話を通して企業が人材に対し ての考えとか希望を分かりました。また日本の大企業, 中小企業の違いを分かりました。Discussion を通して日 本の文化も勉強するようになりました。/企業の話をい ろいろ聞けてよかったです。/面接の時のポイントにつ いて大切なご意見いだたきました。(以上,留学生) 経営者の生の声を聞くことができて非常に為になりまし た。/経営者の方のお話が体系づけられていてわかりや すかった。/ Group discussion が難しいことがわかり, いい経験ができました。/色んな国の人と話せた。/ GD ができたこと。(以上,日本人学生) 第二回 個人に関する知識を得た。/ 会社の会長の話を聞いて, モチベーションが発生します。/ 企業経営者と直接話が できた。/ 留学生と日本人の間にディスカッションがで る経営理念,社員教育や社員に対する思いを直に聞け たことは大変有意義であったようである。第二は,後 半部分で実施した日本の企業文化や就職についてのト ピックに基づいたグループ・ディスカッションである。 一グループ5名程度であったため,自分の意見が出し やすい環境にあったといえる。また KJ 法を利用した ため,まず自分の意見や考えをポストイットに書き出 し,全員でグループ分けを行うことで,頭の中を整理 しながらまとめていくことができたのではないかと考 える。さらに,グループ・ディスカッションは就職活 動においても直面する可能性があることから,練習の 機会となったと考えられる。第三は,参加者間の交流 である。日本人,留学生関係なく同じ就職活動を控え た学生として話ができたこと,留学生と日本人(学生, 企業側,大学教職員,自治体関係者)の間で意見交換 をすることによって深みのある議論を展開することが -16- できたり,新しい情報を収集することができたのでは は,留学生や外国人という立場での採用の可能性につ ないかと思われる。 いてのものが多かった。各セミナーにおける講演に対 する質問でも同様の質問が毎回出されており,留学生 問5:改善してほしい点(自由記述。原文ママ) が就職活動をするうえでの不安材料であることが理解 できる。 第一回 就職方法 、 企業関連情報を教えてほしいです。/もっと 時間が長いほうがいいと思います。(以上,留学生) グループディスカッションの時間が延長しすぎた(20分 程)とおもうのできめられた時間で行った方がいいと思 います。/クーラーの音がうるさかったです。ファシリ テーターがいるとディスカッションが良かったです。/ discussion を長くしてほしかった。/時間は最初から多 めにとってほしい。(以上,日本人学生) 第二回 就職についてもうちょっと具体的な話をしていただけれ ばよかった。/ 地元企業だけではなく 、 大手企業も参加 してほしい。(以上,留学生) 就職経験のある人の参加。/ 時間配分…ちょっと少な かったように思います。/ディスカッションの目的をさ らに明確にして頂けたらと思います。 (以上,日本人学生) 第三回 時間のコントロール/あっというまに終ったので,時間 が長ければよかったなと思いました。/時間を増やして ほしい。/グループ・ディスカッションする前に,かん 単なやり方をおしえていただけていたらよかったなと思 いました。(以上,留学生) 日本人学生が増えればと思いました。(日本人学生) 5.まとめ 以上, 『地元企業経営者から学ぶ「愛知の仕事」セミ ナー』について報告を行った。本セミナーは,単年度 のプログラムであるため来年度の実施については未定 であるが,将来的に開催することを視野に入れて,講 演者に対して依頼した事後アンケートの回答も紹介し つつ本セミナーの効果,改善点,課題を挙げながらま とめとする。 まず,参加者の視点から考える。今回のセミナーの 参加者はあえて,留学生,日本人学生の参加とし,半 数になるようにした。就職活動は,留学生間の競争で はなく,日本人学生とも肩を並べて行わなければなら ない。多くの採用企業が留学生の雇用については日本 人学生と区別せずに行っている実態から考えて1,必 要であると感じたからである。さらに,日本人学生に 改善してほしい点であるが,時間管理の問題が多く とっても,日常留学生と接する機会が少ない者が大半 指摘された。全体のセミナーの時間を2時間で設定 であることから留学生との交流をとおして学ぶことも し,前半部分を講演,後半部分をグループ・ディス 多々あると考えたからであり,アンケート結果からも カッションとしたが,グループ・ディスカッションの 効果があったことがみてとれる。ただ,留学生に比べ 時間が短すぎたようであった。また,時間の関係から て日本人学生の参加が少ない会もあり,広報の方法に グループ・ディスカッションの説明が不十分で,流れ ついて考えなければならないと実感した。 や目的が理解できていない学生もいた。これらの点に 本セミナーの目的のひとつである「留学生が地元企 ついては反省点とし,今後の課題としたい。 業や日本の企業文化などについて興味を持ち,自律的 に就職活動が行えるよう支援する」については,留学 問6:日本で働くことについて知りたいトピック(自 生自身にとってどれほど達成できたであろうか。アン 由記述。原文ママ) ケート結果からは,日本の企業について理解できた, 第一回~第三回 面接の種類。/雇用する時 、 外国人に対して標準とか希 望。/留学生に対して一番もとめること。/大企業の採 用方針。/ 「 受験 ・ 面接での成功 」 /留学生を積極的に 採用してくれる会社の情報です。/外国人を積極的に採 用を行う会社(以上,留学生) 採用における留学生の処遇。(日本人学生) という回答が複数寄せられ,モチベーションが上がっ 日本で働くことについて知りたいトピックとして 景まで突っ込んで質問できる時間があれば」という意 1 たと答えた者もいることから,留学生の自律的な就職 活動に少しは貢献できたのではないかと考える。他 方,講演者へ行った事後アンケートからは, 「人事部の 方や経営者との座談会を設けては」 「簡単な質問と答え だけで終わってしまい,学生側からその答えに至る背 労働政策研究・研修機構が2007年に行った調査によると,採用時「日本人社員と区別なく採用」と答えた割合が77.6% であった (労働政策研究・研修機構,2008) -17- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 見もいただいた。時間をかけてじっくりと学びあうよ ところで,第三回は,愛知県地域振興部国際課から うな仕掛けの工夫が必要であると考える。 2名の見学があった。外国人留学生の地域定着支援の 次に,講演者についてである。今回3名の企業経営 一環として,地域への就職支援にも取組んでいるそう 者に講演を依頼したが,特段企業経営者とのコネク である。当日は,この2名に加え,日本人は,企業, ションを持たない筆者たちにとって,講演者を探すこ 大学教職員,社会人経験者など多彩かつ社会経験豊富 とは容易ではなかった。講演者の事後アンケートで である者が多かったため,留学生にとっては,就職活 は,講演を引き受けた理由として,「留学生の役に立 動を控えた日本人学生とは異なった視点や情報を得る てれば幸いだと思った」「自分の思いを参考にしてほ 機会となったと思われる。今後は,自治体や地域など しかった」「学生に向き合い自分自身も勉強したいと も巻き込み,互いの良さを出し合いながら連携を図る 思った」などが挙がっており,このようなセミナーに ことも一つの方法であると考える。 興味をもち,御協力いただける経営者は少なからず存 本セミナーは名古屋大学ではこれまでになかった取 在すると考える。恒常的に講演者を確保することがセ り組みであったが,就職関係には素人である留学生担 ミナー実施の重要な課題であろう。 当者が試行錯誤をしながら実施した。参加した学生に 参加した留学生についての印象としては,「好奇心 は十分満足のいくものとなったかどうかいささか心も が旺盛」「日本の若者より積極的で性格も明るい」「十 とないが,参加してよかった点をみるにつけ,今後も 分な日本語能力を備えている」と留学生の良い点を挙 よりよいプログラム開発にむけて努力していく原動力 げていただいた一方,「結果を早く知りたがるように となったのは事実である。今回の課題を踏まえなが 感じた」といった指摘もあった。日本人学生同様,留 ら,本セミナーが来年度以降も発展・継続していける 学生と接点の少ない企業経営者にとって,日本で就職 よう働きかけを行いたいと思う。 を希望する留学生のことを知っていただくよい機会と なったと考える。 最後にセミナーの形式についてである。実施日程 謝辞 は,できるだけ学生の参加しやすい曜日と時間帯を考 本セミナーを開催するにあたりまして,お忙しい え,水曜日の午後に設定をした。授業のない学生が多 中,快くご講演をお引き受けいただきました講演者の く,参加しやすいと思われたが,年度の後半になると 葛西泉様,野呂英作様,清水和久様に感謝申し上げま 就職活動が始まっていたり,他の就職関係セミナーと す。また,名古屋大学留学生相談室(当時)の松浦教 バッティングしているときもあり,開催時期について 授には,セミナーの企画に際しまして御指導・御助言 は他のプログラムの情報を収集して考えなければなら いただきました。名古屋大学就職支援室の皆さまには ないと感じた。また,多くの参加者が時間設定に問題 広報におきまして御協力いただきました。末筆になり があると指摘した点であるが,3時間程度に拡大する ますが,感謝申し上げます。本セミナーは名古屋大学 か,セミナー内容を縮小して2時間以内に抑えるかし 教育奨励費の助成を得て実施することができました。 なければならないだろう。色々欲張りすぎて内容を盛 関係者の皆様に深く御礼申し上げます。 り込みすぎた感がある。あまり多くの情報を提供しす ぎて何も残らないようであれば意味がない。一つでも 参考文献 お土産として持って帰ってもらえる程度に抑えること 独立行政法人日本学生支援機構編(2010) 『留学交流』 (特集: も重要かもしれない。現在,留学生に対する就職支援 プログラムは各部局で実施しているのが実情であるこ とから,いくつかをまとめ,ユニットとしてプログラ 留学後のフォローアップ)2010年10月号 文部科学省,外務省,法務省,厚生労働省,経済産業省,国 土交通省(2008)『留学生30万人計画骨子』 労働政策研究・研修機構(2008)『外国人留学生の採用に関す ムを組む,インターンシップなどと組み合わせて単位 化するなどの工夫も考えられるだろう。 -18- る調査』 インドネシア留学生の次世代支援 ―「ビネカ子ども勉強会」の成立と発展― ディポネゴロ大学人文学部アジア研究センター ム ル ニ ラ ム リ1 3.3.運営者と教師 要旨 3.4.その他の活動 本稿は,名古屋大学留学生センターがインドネシア 4.問題点と今後の課題 留学生の活動についての支援報告である。日本へ両親 と緒に来るインドネシアの子どもたちは平日,日本の 小学校に通っている。その子どもたちは,帰国し,イ 1.はじめに ンドネシアの学校に入学・転校する際,インドネシア 名古屋にいるインドネシアの子どもたちは,親が留 語,文化,宗教などに関するテストがあるため,障害に 学生としてこの地域の大学に在学しており,その親と なる。この問題を受けて,在日インドネシア留学生協 一緒に日本に住んでいるケースが一般的である。子ど 会は2008年2月に【ビネカ子ども勉強会】を成立した。 もたちの多くは日常的には日本の学校(幼稚園・小学 勉強会では,インドネシア小学校のカリキュラムを加 校)に通っており,日本の教育を受けている。ほとんど え,宗教や文化などが含まれ,特別な学習内容で授業 の子どもたちが将来はインドネシアに帰国する予定で が行われている。教師はインドネシア留学生と生徒の あることから,日本の教育しか受けていないことは, 両親であり,ボランティアとして参加している。この 帰国後,インドネシアの学校に進学する場合に大きな 勉強会は,毎土曜日の午後3時から5時まで,名古屋 影響を与える。 大学留学生センターの教室を借りて実践している。ま さらに,日本語で教育を受けた子どもたちは,日本 た,2010年までには,ビネカ子ども勉強会は,様々な のよい面を自然に吸収する一方で,母語や自らの文化 場でインドネシア文化を紹介する活動も行っている。 を忘れるケースが多く,インドネシアの学校で勉強を 継続する際に,困難な状況に直面することになる。 これらの問題が顕在化してきたため,インドネシア キーワード の子どもたちを対象とした補習としてのインドネシア 留学生支援,留学生活動,子ども勉強会,外国籍子ど 教育が重要な課題と考えられるようになった。インド も教育,多文化教育 ネシア留学生協会は,子どものための勉強会を発足さ せようと考え,2007年11月から2008年1月かけて,そ 目次 1.はじめに 2.勉強会の名称 の実施形態や方法について検討した。 2.勉強会の名称 3.実施の経緯と状況 勉強会は, 「Kelompok Belajar Anak Bhinneka」(ビ 3.1.勉強会の日時・場所 ネカ子ども勉強会)と称された。 3.2.生徒数と生徒の年齢 「ビネカ」とは,「Bhinneka Tunggal Ika」(多様性 1 名古屋大学教育発達学研究科博士後期課程修了生(2010年7月修了),在日インドネシア留学生協会中部支部(ビネカ勉強会2008- 2010代表) -19- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 の中の統一)というインドネシア共和国のスローガン この勉強会及びクラスの名称は,私たち勉強会を主 から取った言葉である。「ビネカ」とは日本語でいう多 催した大人たちや毎週この勉強会に通う子どもたちに 様性の意味に近い。それは,インドネシアという多文 とって,意味深いことであると考えている。 化,多民族,多宗教の国家を表す用語である。 名古屋にいるインドネシア留学生は,様々な島から 来て,さまざまな民族性を有している。子どもたちに, 3.実施の経緯と状況 そのような多様性,多民族,またビネカ・テュンガル・ 3.1.勉強会の日時・場所 イカというスローガンを理解させるために,この勉強 子どもたちの小学校や幼稚園が休みで,親や教師に 会に「ビネカ勉強会」という名称を付けたのである。 とっても参加しやすい土曜日,そして遠方から来る子 ビネカ子ども勉強会は,名古屋大学留学生センター どもたちのことも考えて午後3時から4時半までの1 の施設を借りて,3つの教室で行われた。1年生と2 時間半を,勉強会の日時として設定した。2008年1月 年生の生徒は「Kelas Bali」(バリ・クラス),3年生と 21日に勉強会が正式に発足し,2008年2月2日に最初 4年生は「Kelas Halmahera」(ハルマヘラ・クラス), の授業が行われた(写真1と写真2)。 5年生と6年生は「Kelas Flores」(フロレス・クラス) 場所については,名古屋大学の留学生センターと話 というふうに区分した。 し合いの結果,学内者による関連事業ということか これらのクラス名称は,インドネシアの島の名前か ら,当センターの施設を無料で借りることになった。 ら取ったものである。バリは,インドネシアという国 当初は,同じ日時に学内者向けインドネシア語公開講 よりも世界や日本で有名な場所であることを子どもた 座を行うという交流事業の一環として試行したが,講 ちは理解している。しかし,バリがインドネシアの中 座への参加者が集まらなかったことから,子どもたち の一つの島であることを知らない子どもも少なくな の勉強会に絞って活動することになった。数か月間は 識 当センターを無料で借りたが,教室を確保できない日 い。バリはインドネシアの一地方だということを させるために,バリ・クラスという名前が選択された。 もあって予定が立てにくい状況が見られた。よって, フロレスは,東ヌサ・トンガラ州の中にある小さな島 使用料を支払い正式に予約を入れ利用することにし, である。ハルマヘラは,マルク州の中にある大きな島 現在まで継続している。施設利用料は3教室合わせて である。それらの島々は,東インドネシアに位置して 一カ月に1万1千円ぐらいであり,親たちからの寄付 いる島であり,インドネシアの子どもたちはほとんど で賄っている。 知らないところである。そこで,インドネシアの大き な島々(ジャワ島,スマトラ島,カリマンタン島,ス 3.2.生徒数と生徒の年齢 ラウェシ島,パプア島)より,小さな島,特色がある 最初の生徒数は20名であり,具体的には小学校6年 島を紹介したいため,フロレスとハルマヘラという名 生が1名,5年生が6名,4年生が1名,3年生が5 称を選んだ。 名,2年生が4名,1年生が3名と,各年齢に散らばっ (A) (B) 写真1 集合写真(A),ビネカ勉強会の開始式(名大留学生センターロビー)(B)(2008年2月2日) -20- (A) (B) (C) 写真2 バリ・クラス(A)とハルマヘラ・クラス(B),フロレス・クラス(C)(2008年2月2日) ていた。その後2008年3月~4月に帰国したインドネ 考える。しかし,それらの内容がインドネシア語では シア留学生がいたため,生徒数は2008年7月時点で17 どのように表現されるのか,またそれらに関するイン 名となった。後にまた増えて2010年8月時点の生徒数 ドネシア語の用語を理解させることが重要である。 は21名であり,5歳~8歳の子どもが多い。その内3 毎週土曜日午後3時から4時半までの間に,異なる 名の子どもは,両親のうち一人がインドネシア人で, 二科目が教えられている。2009年からは,親の希望に もう一人が日本人であるという幼児である。このよう より,ビネカ勉強会にイスラーム学習を取り入れるこ に,時期によって子どもの数や年齢には変動がある。 とになった。これは参加家庭が皆ムスリムであった が,自宅でイスラーム学習,特にクルアーン学習を行 3.3.運営者と教師 うことが難しいという意見から実施を始めたものであ 教師は名古屋大学のインドネシア留学生及び子ども る。日々の生活に必要なイスラーム宗教教育が導入さ の母親に任せ,最初は14名,勉強会全体のとりまとめ れたため,勉強会が30分程度延長されることになっ 役の代表を合わせて15名であった。会長1名,副会長 た。クルアーン学習は基本的にはクルアーン読解であ 1名,各クラスの担任教師が勉強会を運営している。 り,教師がそれぞれの子どもの読み方をチェックし, 会長は,運営の責任と渉外に関する管理役割を果た 何ページまで読んだか,自宅で練習してほしい点は何 し,副会長は財務や新入生・入会に関する責任をもつ。 か,などの報告をクルアーン読解カードに記入する。 担任教師は,週の授業計画を作成し,各時間の担当教 自宅や子どもたちのイベントなどでクルアーン読解時 師を調整する。全員がボランティアとして参加し,学 間があれば,そのカードを参考にすることができ,ク 生としての大学の勉強や実験,また母親として家事や ルアーン読解がどこでも続けられるようにした。 育児の仕事の間に熱心に指導している。教員免許や教 授業に関する教材は,基本的にインドネシアの小学 育関係の職歴を持っている人ばかりではないが,イン 校で使用されている教科書であるが,全ての内容を教 ドネシアの学校で教育を受けた経験をもとに,工夫し えることができないため,必要な内容を重点的に教え ながら指導している。現在の教師数は最初に設置され ている。また必要であれば,教師が他の教材を提供す た時の状況と同じで15名である。 る。 インドネシア学校の小学校のカリキュラムは,ビネ 3.4.学習内容 カ勉強会のでは授業時間数と,子どもたちのインドネ 学習内容は基本的にインドネシアの小学校のカリキュ シア語の理解度を考慮すると,そのまま実施するのは ラム計画に基づいて作成された。しかし,授業時間は, 困難である。そのため,勉強会当初から「ビネカ・カ 週に一回,さらに1時間半のみであるため,全ての科 リキュラム」を作成した。 目を網羅するのは困難であり指導科目は,インドネシ インドネシア小学校のカリキュラムは,9科目(宗 ア語,数学,総合理科,総合社会科,英語である。英 教科,公民教育,インドネシア語,数学,総合理科,総 語はバリ・クラスでは教えられていない。全ての科目 合社会科,技能・芸術,体育,英語,地方語)から構成 で,その内容よりもインドネシア語の能力が重視され されるが,ビネカ勉強会では6科目のみ教えられてい ている。生徒たちは,日本の小学校に在学しているた る。具体的なカリキュラムと授業時間は表1に示す。 め,理科,社会科,数学に関する内容は理解できると -21- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 表1 2009年~2010年ビネカ・カリキュラム・授業時間 週 第一週 第二週 第三週 第四週 時間 バリ ハルマヘラ フロレス 15.00~15.45 15.45~16.30 16.30~17.00 15.00~15.45 15.45~16.30 16.30~17.00 15.00~15.45 15.45~16.30 16.30~17.00 15.00~15.45 15.45~16.30 16.30~17.00 インドネシア語 数学 クルアーン学習 インドネシア語 数学 クルアーン学習 インドネシア語 数学 クルアーン学習 インドネシア語 数学 宗教科 インドネシア語 数学 クルアーン学習 総合理科 総合社会科 クルアーン学習 インドネシア語 数学 クルアーン学習 英語 数学 宗教科 インドネシア語 数学 クルアーン学習 総合理科 クルアーン学習 総合社会科 クルアーン学習 英語 宗教科 注:第四週で行われる宗教科はクルアーン学習と異なり,クルアーン読解よりも,礼拝のありかた, 道徳,イスラーム方針に関する内容を中心としている。 3.5.その他の活動 家族で夏旅行(海の方面)へ行く。 土曜日の勉強会に付随して,さまざまな教育・交流 4)8月,インドネシア独立記念日式典に参加する (写 活動が行われている。それらは次の7つである。 真4)。 1)5月,東郷市の子ども祭りに参加し,インドネシ 5)断食月(今年は8月)に,イスラーム勉強会と断 アの踊りや子どもたちの遊びやゲームなどを紹介 する(写真3A)。 食明けの食事会(buka puasa)を行う。 6)10月,名古屋国際センターで開かれるインドネシ 2)6月,名古屋大学祭に参加する(写真3B)。 ア・フェスティバルに参加し,演技をする。 3)7月,夏キャンプを行う。夏休みに入ってから, 7)11月,スカウト活動(グループによる野外での運 (A) (B) 写真3 東郷子ども祭り(A),2008年名大祭に参加(B) 写真4 インドネシア独立記念日式典に参加(2009年8月17日) -22- 写真5 スカウト活動(2008年12月8日) 動・交流活動)を,名古屋大学や東山公園で行な 師たちと話し合って,できるだけ静かに活動しようと う。具体的には,子どもたちはグループで地図を いうことが合意された。そのために,さまざまな努力 持って,決められた場所を探し,そこでインドネ をしている。例えば,借りていない場所(ロビーなど) シアに関することやインドネシア語を使用する簡 に親が集まらないように,できるだけ子どもが一人で 単な質問などを答えたり,タスクをしたりすると 勉強会に通うようにすることや,付き添ってきた母親 いう活動である(写真5)。 には教室の中で待ってもらうといことである。(名古 屋市外に住んでいる子どもたちもいるので,安全の ために親が付き添う必要がある場合も多い。) さら 4.問題点と今後の課題 に,勉強会後には名古屋大学の中央図書館前の広場に 毎週土曜日のビネカ子ども勉強会は,帰国後の就学 子どもたちを行かせ30分程度一緒に遊んで過ごさせて を支援するだけでなく,子どもたちにとっては楽しい いる。発表演技の練習があるときも,図書館前や豊田 交流の場でもあり,親にとっても同国のインドネシア 講堂の前の広場を利用して,子どもたちがのびのびと 人と会ったり話したりして,日ごろの問題を解決した 走ったり踊ったりできるようにしている。 り日本での生活によりよく慣れたりすることができる また,子どもの勉強会を待つ間,母親たちも勉強会 為,貴重であると言える。インドネシア人留学生やそ を開催して,共に学べると考えるようになった。その の家族皆にとって大切な機会である。 結果,2010年2月からは,毎週土曜日の正午から午後 設立時にはあまり多くなかった参加者は徐々に増え 4時まで近隣の自宅を使用して「お母さん勉強会」が てきた。母親・父親たちが,多忙にもかかわらず子ど 行われている。主にクルアーン学習から日々の生活を もを連れて来ること,さらに,ボランティアである教 考える内容であり,これによって,自らも学び精神 師たちもいつも一生懸命指導していることはがこの活 的にもより安定して生活ができるようになっている。 動の継続・発展の力となっている。この勉強会の存在 「お母さん勉強会」と言っても,参加者は独身のインド は,すべての関係者にとって学びの場であると言え ネシア人女性や学生以外もいる。この勉強会ではクル る。多くの人々の協力を受け,この勉強会が続けられ アーン学習以外は,インドネシア人女性の集まる会に ている。 もなっている。 学生たちにとってアクセスもよく馴染みの深い名古 子どもにとってより適した場所で勉強したり,遊ん 屋大学の留学生センターの教室を借りることができる だりすることが検討されているが,親は主に学生であ ことも幸いしている。しかし,子どもたちが集まると るため,子どもを勉強会に連れて行き,すぐに研究室 きはどうしても賑やかな雰囲気が避けられないため, に戻ることが必要なことも多い。親にとってもアクセ 当センターや,棟続きの法政国際教育協力センターの スしやすい場所がよいという意見も強く,そのため 研究・執務活動に支障をきたすことのないように,参 に,現在の名古屋大学留学生センターで実施すること 加者皆の配慮が必要である。 は利点が多く,継続が望まれている。 周りの人から苦情があったこともあり,親たちや教 勉強会の学習内容は,これまではインドネシアの小 -23- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 学校のカリキュラムに基づき,科目数や時間数を調整 入れた。このような内容になっていくと,両親や親の しているものであったが,日本の小学校で日々の教育 一方が日本人である子どもたちも,さらに参加しやす を受けている子どもたちにとっては,インドネシアの くなるであろう。 カリキュラムの内容そのままを理解するには困難があ 愛知県,特に名古屋市内の日本人の子どもたちや外 る。そのために,現在は,バリ・クラスではインドネシ 国人の子どもたちとの協同活動についても,これから ア語の日常会話を中心に学習するようになっている。 の課題として考えている。 インドネシア語の歌を取り入れて勉強することも取り -24- 年 報 Ⅰ 事業報告 地域貢献事業 「地域日本語教育に携わる人材養成講座」 名古屋大学地域貢献事業(総長裁量経費) 「外国籍住民のための発展型防災セミナーの環境整備: 港防災センターでの研修実践」 留学生センターオープンフォーラム 「イスラームと日本人」 留学生のキャリア教育としての「日本組織なじみ塾」 2010年度 地球家族プログラム 報告 Ⅱ 部門報告 Ⅲ 資料 日本語・日本文化教育部門 日本語教育メディア・システム開発部門 教育交流部門・留学生相談室 短期留学部門 地域貢献事業 「地域日本語教育に携わる人材養成講座」 衣 川 隆 生 日本語・日本文化教育部門及び日本語教育メディア・ 容とその理由を記入してください。 システム開発部門では「地方自治体が運営する国際交 ○学習支援システム・活動自体を知らなかったので, 流協会や NPO と連携し,地域日本語教育の向上に貢 知ることができてよかった。 献する」ことを中期目標の一つとして掲げている。平 ○日本における識字について知ることができた。 成22年度にはその一環として地域日本語教育に携わる ○当たり前のことと思っている言葉づかいの見直し 人材養成講座を2講座企画,運営した。 が必要だと思った。 ○外国人との会話の進め方等,具体的でわかりやす く役に立った。/どう会話を交わすのか,雰囲気 1.「外国人への日本語支援の方法」 をよくしてやる気にさせることが難しいことがわ 概要 かった。 平成22年9月に豊田市と共催で公開講座「外国人へ ○生きた言葉の習得と活用の必要性/インプットの の日本語支援の方法」を開講した。名古屋大学留学生 重要性/「聴き手」と「話し手」の立場の認識/ センターは平成20年度より豊田市の委託を受け,豊田 (学習者の)達成感を感じさせる事の重要性 市内に在住,あるいは在勤の外国人の日本語学習をサ 2)今後,どのような分野,内容の公開講座を希望し ポートする仕組みづくりを始め,平成22年3月には ますか。 「外国人への日本語支援」の柱となる「とよた日本語学 ○具体的な指導技術 習支援ガイドライン」をまとめている。この講座では 日本語ボランティアと日本語学習者の交流を通した日 本語学習支援のあり方について,ガイドラインの内容 を中心にワークショップ形式の講座を4回実施した。 各回の担当者,内容は以下の通りである。 月・日 担当 題目 1 9月3日 村上京子 豊田市の外国人の状況と海外の 移民政策 2 9月10日 衣川隆生 とよた日本語学習支援システム の考え方 3 9月17日 衣川隆生 日本語教室の進め方-会話中心 のクラス 4 9月24日 衣川隆生 日本語教室の進め方-読み書き 中心のクラス 受講者アンケート結果から 受講者:30名(定員30名) アンケート回答者:18名 以下,アンケート結果の代表的な意見をまとめる。 1)本講座全体を通して印象に残った,役に立った内 -27- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 ○実際に行われている教室での様子を知りつつ,ど 受講者アンケート結果から う学習者と接し,どうわからないことを解決して 受講者:40名(定員22名) いくかなどを学びたい。 アンケート回答者:7名 以上の結果から,留学生センターの受託事業である 以下,アンケート結果の代表的な意見をまとめる。 「とよた日本語学習支援システム」について受講者の理 ○日 本語を客観的に考えるのに,とてもいい機会 解を深められたこと,そして,従来の学校型の日本語 だった。 教育とは異なる側面についての理解を深められたこと ○ 「今あるもので練習すると,生き生きする」 「ゆっく がわかる。一方,概論だけではなく,具体的な教室活 りよりも,区切れのある言い方」 「相手が言ったこ 動の実践を通して学びたいという要望もあることもわ と以上に,コメントしない」のまとめで分かりや かる。今後は,講座と実際の教室を結びつける総合的 すかった。小学校での事務仕事の一助としたい。 な講座も計画していきたい。 ○名大の留学生との交流が楽しかった/名古屋大学 留学生の方々と交流し,プロジェクトを考え,他 国の文化に触れることができ,とても有意義だっ 2.「地域の国際化と日本語教育」 た/ぜひこんな機会を多くした講座にしてほしい。 概要 このように,肯定的な評価も数多くいただいたが, 名古屋市生涯学習推進センターが大学等高等教育機 中でも後半に実施した留学生との交流プロジェクトは 関と連携して実施する「大学連携講座」の一講座とし 特に高い評価を受けていた。一方,以下のような課題 て「地域の国際化と日本語教育」を開講した。この講 を指摘するコメントもいただいた。 座は,地域における日本語ボランティア活動に関心が ○日本語を母語としない人でも対象者は多岐にわた ある人を対象とし,外国人とのコミュニケーションと る。そのため,どこに焦点を合わせるのかによっ いう視点から日本語教育をとらえ,日本語を教えると て教え方も異なってくる。講座はその点で対象者 きに必要となる知識や技法の一端を日本語の習得プロ がはっきりしなかった/もう少し回数(時間)を増 セス,文法,音声,多様性などの観点から提示した。 やして,内容も範囲も増やしてほしい/来年は, また終盤には会場を留学生センターに移し受講者と留 内容を変えて実施して欲しい。 学生との協働学習の機会も設けた。各回の担当者,内 ○内容についてやや難しかった。 容は以下の通りである。 ○欠席者が多いのか,受講生が少なく勿体ない気が 月・日 した。 担当 題目 1 10月18日 衣川隆生 日本語教育から日本語学習支援 へ 2 11月1日 村上京子 日本語学習者の習得プロセスと その支援 消化しきれなかったという感想を反映したものだと考 3 11月8日 日本語の多様性:いわゆる「正 籾山洋介 しい日本語」をめぐって なっているのであろう。来年度以降は,これらのコメ 4 11月15日 李 澤熊 日本語の文法教育:類似表現の 使い分け 5 11月29日 鹿島 央 日本語音声の特徴と日本語学習 者による発音の多様性 6 12月6日 浮葉正親 留学生と学ぶ「日本事情」 (於名古屋大学留学生センター) 7 12月13日 衣川隆生 教室活動の実際 これらのコメントは7回の講座で,できるだけ多角 的な内容を盛り込もうとしたため,1回1回の講座が えられる。それが難しさ,欠席者の多さの要因にも ントも念頭に置きつつ,講座内容を検討していきたい。 -28- 名古屋大学地域貢献事業 「外国籍住民のための発展型防災セミナーの環境整備: 港防災センターでの研修実践」 田 中 京 子 対応における多文化視点の導入に向けて」という題で これまでの経緯と今年度の事業 報告した。) 1995年の阪神大震災は,留学生や外国人籍住民たち 2010年の本プロジェクトでは,総長裁量経費の助成 にも多くの被害を与えた。被災状況からは,言語や文 を受けて昨年度作成した見学ガイドと音声ガイドを活 化の異なる住民たちが,情報弱者,災害弱者となりが 用して,発展型研修として学内および学外で防災セミ ちなことが明らかになった。名古屋大学では,この教 ナーを実施した。音声ガイドは IC レコーダーに録音 訓から学び,同年1995年より,関係部局連携のもと留 し,港防災センターでの研修参加者一人一人がレコー 学生や外国人研究者のための防災セミナーを継続して ダーを携帯して見学した。参加者には参加後レポートを 行い,彼らが災害弱者にならないよう,研修を進めて 提出してもらい,港防災センターの見学がより効果的 きた。 に行えることを検証し,実施結果を検討した。大学と 2007年度は科学技術振興調整費により,また2008年 地域が連携して,東海地域に居住する外国籍住民が災 度は教育研究改革・改善プロジェクト経費により研修 害についての理解を深め,かつ彼らを受け入れる社会 内容を発展させてきた。2009度はさらに,総長裁量経 や関係機関が彼らの視点もとりいれながら環境を整備 費地域貢献事業として,名古屋市消防局および財団法 していけるよう,大学の専門性をもって貢献していく 人名古屋市防火管理会社と連携して,留学生たちの協 方向性を見出したと考えている。 力も得ながら,名古屋市港防災センターの見学ガイド および音声ガイドを「やさしい日本語」 ・英語・ポルト ガル語・中国語の4言語で作成した。これは,地震を 事業内容 知らないで来日する外国籍住民にとって,地震を知識 防災セミナーを,学内で前期1回,後期1回開催し と体験によって学ぶために有効な教材である。(ここ た。学内の専門家に地震についての基礎知識を講義し までの研修開発については,プロジェクト委員でまと てもらい,昨年度までの実践成果である多文化の視点 め『名古屋大学留学生センター紀要』第8号に「災害 からの防災意識や防災準備について,参加者に伝え, 名古屋市港防災センターでの研修 -29- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 また参加者間で意見交換をした。教材として携帯フ は,日本の文化としても注目されていることがわかっ ラッシュライトや三角巾を使用し,セミナー後も継続 た。名古屋港防災センターも,地域住民や外国からの して防災意識を高めることができるようにした。 観光客にも魅力的な施設になる可能性を検討できると 各セミナーの後,港防災センターへの半日見学・体 思われる。 験ツアーを実施し,昨年度作成した見学ガイドおよび 1月に,プロジェクト委員は名古屋国際センターが 音声ガイドを教材として利用した。 前期には,留学生 主催した防災ボランティアの研修会に参加した。東海 の家族も含めた20名以上がツアーに参加した。教材利 地域で外国籍住民の防災についてどのような対策がと 用に加えて,港防災センターの係員が,ジェスチャー られているかを学び,委員自らも避難所でのミュレー を交えて日本語で各展示や体験の説明をした。研修 ションに加わり,課題点を体感した。大学内での研修, 後,参加者から研修全体,また教材の効果や改善点に 港防災センターでの研修,そして地域全体での防災対 ついて報告してもらい,内容や利用方法の改善方法を 策が効果的に繋がっていくような体制作りについての 検討した。参加者の言語能力レベルにより,係員から 知見を得ることができた。 の説明の理解度は大きく異なり,多言語による教材が 年度末には,この15年間の防災研修開発事業をまと 有益であることがわかった。しかしそれらの同時利用 め,次の段階に入るため,神戸大学から関係教員を招 をより効果的にするには,工夫すべき点があることが いて,学内関係者と会議を催した。これまで協力して 明らかになった。後期にはその課題を解決すべく,見 きた留学生たちも出席し,本学での防災研修開発事業 学ガイドを前もって通読し,その後音声ガイドを携帯 のきっかけとなった阪神大震災の「その後」から学び して,係員の説明を聞きながら見学するという方法に つつ,今後の取り組みを検討した。神戸大学では,留 した。自分の理解度の高い言語で前もって知識を得 学生・日本人学生が震災から共に学ぶ授業や,外国で て,その後音声を聞くことで,係員による日本語での の震災復興に学生ボランティアを派遣する活動が展開 解説がより効果的に理解できるということがわかり,さ されており,また神戸学院大学では震災の写真から学 らに有効な方法として電子書籍の形を検討し始めた。 ぶ多機関連携授業が行われている。そして,年度末の 一方,プロジェクト委員は,東京にある防災関係施 3月11日に東日本大震災が起き,留学生の動向にも大 設を視察し,音声ガイドの利用方法や,展示方法につ きな影響を与えている。これから大地震を迎え撃つ東 いて検討した。施設によっては多言語での表示などに 海地域で,阪神地域・東日本から学び,連携しつつ, 工夫があり,今後東海地区でも見習うべき点がある。 大学の国際性向上や地域に貢献できる次の段階に入っ しかし音声ガイドは持ち運びや操作方法の点で課題が ていきたい。東海地震が来るのになお少しの余裕があ あり,今後の利用方法が検討されるべきである。関係 ることを願いつつ,今後5年~10年の期間で,大学か 者への聞き取りから,施設によっては,外国からのツ ら多文化を視野に入れた防災文化発信を増強していき アー客の見学コースにも入れられており,防災対策 たいと考えている。 氏 名 プロジェクト 委員 (※代表者) プロジェクト 協力者 (大学院生等) 所 属 役 割 山岡 耕春 環境学研究科(教授) 山口 博史 国際交流協力推進本部(特任講師) 専門知識提供,音声教材効果検証 *田中 京子 専門知識提供,見学ガイド効果検証 留学生センター(准教授) 全体のまとめ,留学生との連絡,関係機関との連絡調整 馬 小叡 国際言語文化研究科 研修検証 Iha Leandro 工学研究科 ポルトガル語版教材検証 小山 真央 環境学研究科(予定) 研修通訳 劉 るい 法学研究科 中国語版教材検証 Clara Chidammdzi 工学研究科 英語版教材検証 Ritu Kochar 国際言語文化研究科(休学中) 研修検証 寺田 騰 文学研究科 研修検証 -30- 留学生センターオープンフォーラム 「イスラームと日本人」 田 【日 時】2011年2月17日(木)17:30~20:00 中 京 子 環に位置付け,同文化会と協力して留学生センターの (開場 17:00 講演 17:30~19:00 オープンフォーラムとして公開開催したものである。 スナック紹介 19:00~20:00) 学生たち,留学生をホームステイで受け入れたことの 【会 場】講演-豊田講堂シンポジオン会議室, ある人々,地域のムスリム家庭,など様々な人たちが スナック紹介-豊田講堂ホアイエ 参加した。ムスリム学生が,自分の文化を紹介できる 【主 催】名古屋大学留学生センター 機会として友人・知人を招待した例も多かったようで 【共 催】名古屋大学イスラム文化会 ある。 【講 師】大久保 賢 イブラーヒーム氏 フォーラムでは,数少ない日本人イスラーム学識者 (埼玉県一ノ割マスジド 指導教員) である講師から,イスラーム文化(考え方,感じ方, 【参加者】一般参加者等67名,学生等約30名 価値観など)について,日本人や日本文化と関連づけ ながら学んだ。講師から,例えば餓死しそうな時に豚 〈講師プロフィール,Lecturer’s Profile〉 肉だけが入手できた場合,イスラームの教えではこれ 1986年にパキスタンから来日したタブリーグの伝道 を食べてよいのかどうかという質問が出された。会場 団に強く感銘を受け,イスラームに入信。パキスタン, からの「食べてもよい」という答えに対して講師から インドへ渡り,4ヶ月の研修を受ける。その後毎年40 「食べてもよい」ではなくて, 「食べなければいけない」 日の研修をパキスタン,インド,バングラデシュ,イ ということが紹介された。またイスラームの清潔や謙 ギリス,マレーシア,タイ,各国で行う。 虚という生活規範が,日本で重んじられてきた美徳と イスラームの善行の美徳を教える世界的な草の根運 動「タブリーク運動」の日本での中心的な役割を担い, 1992年からは埼玉県にある一ノ割マスジド(モスク) の指導教員として,日本を含め様々な国籍のムスリム や非ムスリムの教育にあたっている。 翻訳書『ファザイル・アマル(行いの徳)』『ファザ イル・サダカ(施しの徳)』『タアリームル・イスラー ム(初心者のためのイスラーム)』 〈講演会〉 多様な文化を背景とする人々が共に学び生活してい る現在,名古屋大学やこの地域でも様々な国籍,宗教 や信仰を持つ住民が増えている。日本人はイスラーム 文化を持つ人々と接する機会も増えており,イスラー ムについてのより深い知識を得る機会は貴重である。 これまで ICANU(名古屋大学イスラム文化会)が 主催して行ってきた 「 イスラームフェスティバル 」 を, 今年度は留学生センターの多文化ワークショップの一 -31- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 も重なっていることなど,わかりやすい説明を通して 国立大学法人が正式に場所を提供することは難しいで 学ぶことができた。 あろうこと,しかしムスリムにとって礼拝は,食事が 身体への栄養であるように,魂への栄養でありたいへ 〈料理紹介〉 ん重要であることなどが説明された。 講演の後にはムスリム学生たちが中心となって,お ムスリム学生たちからは他にも学生生活で経験した 国自慢の食べ物を紹介した。ポスターでは「スナック」 事例がいくつか紹介された。「指導教員に昼の礼拝時 と表していたが,実際にはエジプト,マレーシア,パ 間をとってよいかと相談したところ,研究中はいけな キスタン,インドネシア,トルコ,バングラデシュ, い,と言われた。しかし,他の学生が昼に数分研究室 ウズベキスタン7カ国のバラエティー豊かな料理だっ の隅で祈っている姿を目にした教員は『礼拝というの た。それぞれに国名や料理名のプレートがつけられ はこのことなのか』と驚き,許可してくれた。教員の た。 研究室を使ってもよいという申し出までしてくれた」 講演会終了後はムスリム学生たちが中心となって片 という例や,「ホームステイ受け入れ家庭が,ムスリ 付けや清掃を行った。豊田講堂ホアイエは,にぎやか ム学生を受け入れるということで配慮して食事を準備 に行われた料理紹介の後は,まるで何事もなかったか してくれた。卵や魚も使わない料理を苦労して作って のような静かな広い空間に戻った。このようなプロセ くれた。」などの例があった。イスラームについては, スから,参加者たちが学んだことは大きかったと思わ 様々な文献やメディア,また学内でも授業や講座など れる。 の中でいろいろな形で紹介されてはいるが,具体的な 知識やイメージが十分に伝わっていないことが明らか 〈意見交換会〉 にされた。 講演の翌日には,ムスリム学生の学生生活につい 研究会の成果として,今後,大学生活というコンテ て,意見交換会を持った。大久保氏,ムスリム学生3 クストの中でイスラームの正しい知識や具体的なイ 名,教職員3名が参加し,現状や課題を話し合った。 メージが伝えられるような画像入りの資料を作成しよ 講演会の感想を紹介し合った後,日ごろの学生生活 うということになった。これにより日本の大学で多様 について意見交換した。日々の礼拝について,かねて な文化がよりよく共生できるような工夫を継続してい から学生たちは,毎回適当な場所を探しながら礼拝を くことができるであろう。資料作成については来年度 行なうのが負担が大きいため,学内に公認の場所の確 以降の課題とし,関係者で協力して取り組みたいと 保を望んでいる。これについて大久保氏からは日本の 思っている。 -32- 留学生のキャリア教育としての「日本組織なじみ塾」 松 浦 ま ち 子 1.はじめに 3.「日本組織なじみ塾」とは? 名古屋大学留学生相談室(注)では、日本企業に就職を 「日本組織なじみ塾」は、「アルバイトを通じて日本 希望する留学生に対して、さまざまな就職支援を行っ 企業の仕事の仕方を学ぼう…」というものである。ア ている。求人情報の提供や個別の会社説明会の学内開 ルバイトという組織活動を通じて、チームワーク力、 催、また「就職活動支援コース」の実施、そして、2010 問題発見力、問題解決力、さらにコミュニケーション 年度には新たに「日本組織なじみ塾」を企画・実施した。 力を鍛えることを目的としている。留学生の多くが生 留学生の就職支援の必要性から、2007年度に試行的 活のためにアルバイトをしているが、単なる生活手段 に就職ガイダンスを開催したが、2008年度からは「就 として漫然と「作業する」のではなく、そこに一つの 職活動支援コース」を開講している。就職活動に戸 違う視点を入れ実践することで、 「仕事する」ことにつ 惑っている留学生を対象として、 「就活」に必要とされ いて多くを学び成長につながった。企業が留学生を雇 る「自己分析」「企業研究」さらには「応募書類準備」 用する際に一番心配なのは、「職場に馴染んでくれる や「面接・マナー」が学べる講座である。2010年度は、 だろうか?」だと聞く。その意味で、事前にアルバイ 3年目にあたり、12月で全体的な講座を終え、1月、 2月、3月は個別カウンセリングを行った。 2.「日本組織なじみ塾」の必要性 「就職活動支援コース」に参加する留学生をみてい て、留学生に対しては、教室で学ぶだけでなく、より 早い段階で日本企業の組織文化を実践的に学ばせ、体 得することの必要性を感じた。日本人学生であれば、 親や周囲の働く人々を見ながら育つ過程で無意識のう ちに身につけていると考えられるが、異なる文化背景 を持つ留学生には、体験させながら教えることが意味 を持ってくる。そのため、就職活動時期以前のキャリ ア教育として、「就職活動支援コース」講師陣により 「日本組織なじみ塾」が企画・提案された。この企画 は、名古屋大学留学生相談室が主体となって中島記念 国際財団留学生地域交流事業の助成金に申請し、採択 されて実現に至った。 (注)名古屋大学留学生相談室は、留学生センター教育交流部門と統合し、2011年4月1日留学生センターアドバイジング・カウ ンセリング部門として改組した。 -33- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 ト先という日本の組織の中で「仕事する」ことを学ぶ それぞれの学生が自分の職場で考え、悩み、作り上 なじみ塾生は、その不安を与えないだろう。 げた成果を1月19日(水)成果発表会として、企業人 事担当者、他大学の就職担当者、行政関係者、留学生 等約50人を前に改善活動の紹介を行った。 4.留学生によるアルバイト先の改善活動と成果 5名のなじみ塾生の発表は、いずれも興味深いもの 助成金趣旨に沿って、県内大学の留学生を対象に参 であり、 「教育」の効果がよく表れていた。発表テーマ 加者を募集し、4大学18名が、なじみ塾第1期生と は、「スーパーにおける商品廃棄の削減」「仕事の与え なった。2010年7月初め、参加留学生相互の連帯感を 方によるやる気の違い」 「中華料理店の一人当たりの売 育てることを目的として、一泊二日のキックオフ合宿 上金額アップ」「コンビニにおけるファーストフード を岐阜県郡上市で行い、その後は、大学の教室で毎月 の売り上げアップの試み」「披露宴会場におけるラン 1回の合同研修を重ねた。合宿では、自炊時の火起こ ナーの見える化」であり、専門の研究と異なるこれら しや料理のマニュアル化、宿泊先の「山の家」の改善 のテーマを見るだけでも学生の意欲が伝わってくるの 計画等、身近な話題を取り上げながら「仕事の仕方」 ではないだろうか。 を学んだ。また、合同研修では、職場で必要とされる それら職場の問題を改善することを通して学生が感 「5S」に関して、自らの5S を実行しながら、他の学生 じたことは次のとおりである。 の改善活動を聴き意見交換を行った。その間も、アル ➢課題を見つければ、単純作業も面白みが出る。課題 バイト先の理解と協力をいただきながら、学生はアル を見つけ、解決方法を考え、努力するのは非常に面 バイト先での改善活動に取り組んできた。 白い。 合同研修の様子(留学生センター) 合宿で薪を割り火を起こす(郡上市) 合宿:「 山の家 」 改善計画発表 職場改善活動成果発表会 -34- ➢仕事と作業の違いがわかった。作業は任されたこと だけを完成すればよい、仕事の場合は、自ら問題を 5.おわりに 「日本組織なじみ塾」に参加しながら「就職活動支 考え、日々変化する状況の中で自ら動くこと。 ➢データでの把握の大切さ。 援コース」をも受講した留学生が数人おり、彼らのこ ➢金額削減というデータとして現れたことで自分の努 れからの活躍が楽しみである。幸い、2011年度も中島 力が報われたと感じやる気が出た。 記念国際財団留学生地域交流事業の助成金に採択され ➢お客様への関心の持ち方が変わった。 たため、留学生向けの新しいキャリア教育モデルとし ➢以前よりやりがいや楽しさが出てきた。 て、さらに改善した「日本組織なじみ塾」を実施する ➢スタッフが同一の対応をするための情報の共有化や 予定である。 マニュアル化の有効性を感じた。 ➢人間関係、時間厳守、日本語能力の大切さを実感し た。 第1期生の一人が言った「これまで、アルバイトの 時間が早く終わらないかと時計ばかり見ていたが、最 近は客の商品の選び方を見ている自分がいる。」印象的 な言葉であった。 -35- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 2010年度 地球家族プログラム 報告 小 倉 みどり ・ 松 浦 まち子 したり,新入留学生オリエンテーションや,学部オリ 1 はじめに エンテーションでのチラシ配布,さらにレジデンス東 名古屋大学には,現在75カ国・約1500人の留学生が 山,山手,嚶鳴館,留学生会館にポスティングや掲示 在籍しており,大学はまさにグローバルソサイエティ を行った。 といえる。この恵まれた環境を利用して,大学及び地 域における国際理解をさらに深めることを目的とし, 地球家族プログラムでは,1998年からホームステイプ 4 ホームステイオリエンテーションの実施 ログラムを実施している。 参加が決まった留学生(工学部・教育学部のプログ 留学生にとっては,本プログラムを通して,日本文 ラム以外)を対象に,事前にホームステイオリエン 化を体験してもらうとともに,自国の文化を紹介する テーションを実施している。オリエンテーションで 大変良い機会となっている。 は,ホームステイ時の写真を見せながら説明したり, 注意事項として,感謝の気持ちを「言葉」で表すこと, 自分のホームステイの経験と友人の経験とを比較しな 2 ホストファミリー いこと,ホストファミリーにお金を借りたり,保証人 ホストファミリーは,近隣のボランティア団体及 になってもらうなどのことは絶対にしないこと,ホス び,名古屋大学教職員をはじめとする,個人登録者に トファミリーとの待ち待ち合わせ場所・時間を事前に ご協力をいただいている。 自分で連絡をとり確認することなどを伝えている。 2010年度はボランティア団体からは延べ103家族 (ヒッポファミリークラブ 69家族,多治見国際交流 協会ハピネスト15家族,国際ボランティアポレポレ3 5 マッチングについて 家族 知多市国際交流協会7家族 津市国際・国内交 各プログラムでの募集定員は,目安であり,最終的 流室9家族)にご協力いただいた。 には,留学生とホストファミリーの数が同数になるよ 個人登録者については,5家族にご協力いただい うに締切日を変更するなどして,応募者にはなるべく た。これらの家族は,友人からの紹介や,ホームペー お断りをしないように調整をしている。 ジを読んで興味を持った方からの問い合わせにのみ応 ホストファミリーから,留学生の国籍などの要望は基 じており,登録に際し,家族登録書を持参していただ 本的に受け付けないことにしているが,女性だけの世 き,ホームステイについての説明をした後,質問にお 帯だったりする場合,女性を受け入れしたいという希 答えするなどの面接を約15分間実施している。現在14 望には応えている。また,経験者には,以前とは,な 名の個人登録者がいる。 るべく違う国の方を受け入れしていただいたり,アレ また,これまでは,名古屋大学まで留学生を迎えに ルギーがある場合,また宗教上の理由で食べ物に制限 きていただいていたが,待ち合わせ場所を自由に決め がある留学生については,ホストファミリーの経験が ていただくようにしたことによって受入れがしやすく 豊富な方にお願いするように心がけている。 なり,協力者も増えたようである。 受入れが初めての方には,なるべく日本語が上手な学 生をあてたり,双方の趣味が一致していること等の配 慮をしている。 3 留学生の募集方法 マッチングの結果,表1の書類を,ホストファミ 留学生の募集については,ECIS のラウンジに掲示 リー,留学生双方に,ホームステイの1~2週間前ま -36- 表1 配布資料 マッチング後配布資料 留学生へ ホストファミリーへ 待ち合わせ場所・時間の案内 名古屋大学内の地図(大学内で待ち合わせをする場合) ホストファミリーのプロフィール 楽しいホームステイをするために 感想文用紙 でには届くように渡している。 待ち合わせ場所・時間の案内 名古屋大学の地図(大学内で待ち合わせをする場合) 留学生のプロフィール 感想文用紙 ムステイ,また,津市,知多市などの国際交流団体が 独自に企画したプログラムにも協力し,年間7回のプ ログラムを実施した(表2)。 6 2010年度実績報告 協力していただいた家族は,延べ108家族,参加した 2010年度は,地球家族プログラムとしての企画を3 留学生は延べ110名(27カ国)だった。アジア出身者が 回実施したほか,教育学部,工学部からの依頼により, 多く,比率は図1のようになっている。 名古屋大学に短期研修にきている留学生のためのホー 表2 日程 参加人数 受け入れ先 (名) (カッコ内は参加者数,※は1家族で2名受け入された場合の留学生数) * 4/25 津市,一般合同ホームステイ オリエンテーション 1 5/1-3 ゴールデンウィーク 2 5/1-4 津市国際・国内交流室主催のプ ログラム 3 6/26-27 工学部サマーセミナー 22 ヒッポファミリークラブ(11) ハピネスト(8) 半田ポレポレ(1(※2)) 個人(1) 4 7/31-8/2 夏休み 14 ヒッポファミリークラブ(10) ハピネスト(2) 個人(2) 5 11/22-23 教育学部国際大学交流セミナー 8 * 12/3 ホームステイオリエンテーショ ン 6/7 6 12/17-19 知多市国際交流協会主催の プログラム(写真1) 3/11 ホームステイオリエンテーション 3/19-21 春休み * 7 計 7回 一般 18 津市 7 30 9 7 ヒッポファミリークラブ(27) ハピネスト(2) 個人(1) 津市国際・国内交流室(9) ヒッポファミリークラブ(8) 知多市国際交流協会(7) 20/25 20 ヒッポファミリークラブ(13) ハピネスト(3(※ 4)) ポレポレ(2) 個人(1) 110 中南米3名 3% アフリカ2名 2% 中東1名 1% 欧州6名 5% 北米11 名 10% アジア87 名 79% 写真1(知多市国際交流協会のホームページ:http://chita-ia.jp/ より) -37- 図1 ホームステイ参加者地域別 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 7 地球家族プログラムだよりの発行 ホストファミリーとして協力いただいている方, 又,ホストファミリーに興味を持っている方を対象 に,ホームステイの感想文を写真とともに紹介した り,今後の予定などを掲載した「地球家族プログラム だより」(A4サイズのカラー版)を,今年度は3回発 行した(図2)。 尚,3月には,通常の記事のほかに,東日本大震災後 直後の春休みのプログラムについて,急遽帰国する学 生からキャンセルがあったことへのお詫びとともに, 春以降のプログラムを正常に行うことなどのインフォ メーションを掲載した。 8 ホームステイ感想文 ① 留学生の感想文から ・日本の家庭料理,たこやき,お好み焼き,おにぎ りを一緒に作り,とてもおいしかった。 ・可愛い子どもたちと遊んで楽しかった。 図2 地球家族プログラムだより 第15号 ・一人暮らしの女性のところにステイし,いろいろ 話をして,一緒に出かけたり,夕食を食べたり, お弁当を作ってくれたりして楽しかった。 ・日本文化の体験として,資料館に行って着物を着 ・日本の家族や文化についてたくさん知ることがで ました。一人で着ることがなかなかできなく,お き,また,自分の国や民族についてホストファミ 母さんに助けてもらいました。着物を着るのは大 リーに教えることができた。 変でしたが,楽しかったです。(写真2) ② ホストファミリーの感想文から ・観光に出かけたり,茶道,筝曲,太鼓等の演奏を 体験してもらった。 写真2 着物 写真3 伝統衣装の披露 -38- ・○○人だからこういう人だという,特定の国籍に対 2日目に用事があるからといって,帰宅してしまっ する固定概念をもっていたが,実際に会って話を たなどと,僅かではあるが,苦情も寄せられている。 することで,気付かされることがたくさんあった。 ホームステイオリエンテーションでは,これらの意見 ・宗教上の理由で,食事に制限があるということが をフィードバックし,注意事項として強調するよう心 心配されたが,お酒と豚肉以外は,なんでもおい がけている。 しく食べてもらえて嬉しかった。 ・自国の伝統衣装を持ってきてくれて,汗だくにな りながら,みんなにも着せてくれました。彼がそ 9 ホームステイの効果 自国から離れて暮らしている留学生にとって,日本 の衣装を着るととても素敵でした。(写真3) 人の一般家庭でのホームステイは,貴重な体験となっ ホストファミリーから寄せられた感想文のほとんど ている。 が楽しかった思い出等が寄せられているが,中には, 日本語が流暢に話せない学生でも,自国の料理を教え ホームステイ時に,感謝の言葉が聞かれなかったこと たり,民族衣装を披露することによって,言語以外の に対して,残念であるという意見があった。実際にそ 方法で,コミュニケーションをとることもできるな の留学生に感想をきいてみると,とても楽しかったと ど,有意義な経験となっている。またホームステイ終 いう返事があり,ホストファミリーへの感謝の気持ち 了後も,ホストファミリーとの関係を続けてゆく留学 は持っていたが,伝わっていなかったということがわ 生が複数いるようである。 かった。また,ホームステイが2泊3日だったのに, -39- 日本語・日本文化教育部門 ◦ FD 活動の報告……………………………………………………………… 籾山 洋介 42 ◦第62期(2010年4月期)日本語研修コース… ………………………… 鹿島 央 43 ◦第63期(2010年10月期)日本語研修コース… ………………………… 鹿島 央 45 ◦第29期 上級日本語特別コース(2009年10月~2010年9月) …………………………………………………………………………… 籾山 洋介 47 ◦全学向日本語プログラム 2010年度… ………………………………… 李 澤熊 49 ◦学部留学生を対象とする言語文化「日本語」…………………………… 浮葉 正親 53 ◦短期留学生日本語プログラム 2010年度… …………………………… 衣川 隆生 56 ◦第11期 日韓理工系学部予備教育コース… …………………………… 村上 京子 60 ◦[日本語・日本文化教育部門資料]………………… 平成22年度・各コースの担当者 62 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 FD 活動の報告 籾 山 洋 介 日本語日本文化教育部門では,平成14年に FD 班を 平成23年度から27年度まで(5年間)の FD 活動計画 設け,以後,現在に至るまで,日本語・入門講義の授 毎年度,教育(特に授業)を改善するための「研修 業を担当する教員全員で FD 活動に取り組んできた。 会」を開催する。 さらに,平成16年には,留学生センターの委員会とし 研修会の回数:各年度,2~4回程度。 て FD 委員会を設置し,教員個々の教授能力の向上, 研修会の形式など 授業の改善を目指している。 講演者・発題者があるテーマについて話し,その後, さて,今年度は,新たに,平成23年度から27年度ま 質疑応答・ディスカッション。 での FD 活動計画を策定した。その概要は以下の通り 火曜日の全体会の時間帯を当てる(1時間程度)。 である。 講演者・発題者は,話の内容を,A4,1~2枚程度 にまとめ,記録として残す。 -42- 日本語・日本文化教育部門 第62期(2010年4月期)日本語研修コース 鹿 島 央 今年度4月期の大使館推薦の研究留学生は28名で, 休業7月22日~8月27日,7月30日~8月5日には, 文系部局17名,理系部局11名であった。全員,名古屋大 国際言語文化研究科の院生による夏期集中日本語実習 学へ進学する研究留学生であった。文系部局では,国 を行った。8月30日㈪ 授業再開,9月7日㈫ 修了 際開発研究科が10名と昨年度4月期と同数であった。 式。見学旅行は,予算の関係で実施できなかったため, 名古屋市内を「めーぐる」という市内観光バスで巡っ 1.研修生 た。実施時期は,9月3日㈮で,当日予定されていた A.大使館推薦(研究留学生) 「専門発表」は,翌週の6日㈪に行った。 文部科学省より配置された大使館推薦の国費研究留 学生は,17ヶ国28名(インドネシア6名,カンボジア, フィリピン各3名,インド,ウズベキスタン各2名, 4.カリキュラム アルゼンチン,アルメニア共和国,イラン,エジプト, カ リ キ ュ ラ ム は, ⑴ 主 教 材 A Course in Modern ケニア,ニュージーランド,パラグアイ,ブラジル, Japanese [Revised Edition], Vols. 1 & 2(名古屋大学 ブルガリア,マラウイ,ミャンマー,ロシア各1名) 日本語教育研究グループ編)を中心とする授業,⑵そ であった。今回,28名のうち11名が全学向けの日本語 の他の活動(テーマを決めて話す:楽しかったこと,趣 講座を受講した。内訳は,IJ112(全学集中日本語初級 味,国の観光地,国との違い),ホームビジット,⑶専 後半)2名,IJ211(全学集中日本語中級前半)2名, 門について話す,の3つで構成した。以下に,概要に IJ212(全学集中日本語中級後半)2名,SJ300,SJ301 ついて報告する。 (全学日本語中上級,上級)3名であった。残りの2名 については,1名は研究上の理由により,IJ111(医学 (a)教科書を中心とする授業(1~14週) 研究科の研修生)を受講し,他の1名はレベルがかな 夏 休 み 前 に 主 教 材 で あ る A Course in Modern り高かったため,ビジネス日本語を受講した。 Japanese, Vols. 1 & 2が終了するカリキュラムとし, 以上のように,第62期は研究留学生28名のうち17名 最終テスト,話すテストを行い,夏休み明けに筆記テ が日本語研修コース,残り11名は全学向け日本語講座 ストのレビューを行った。以下は,授業内容である。 を受講した。 ・Drill ・Dialogue ・Discourse Practice & Activity 2.クラス編成 会話の運用練習として各課の Discourse Practice に 授業は,昨年度と同じく2クラス編成とし,専任教 もとづくロールプレイなど口頭練習を行った。対面 員2名,非常勤講師9名の計11名が担当した。 での許可をもらう練習,指導教員と会う約束を電話 で行う練習,ホームビジットの家族との電話連絡な どである。重要な活動であるとの評価を得ている。 3.時間割と日程 ・Aural Comprehension 授業はこれまでのように月曜日から金曜日まで,午 ・Reading Comprehension 前8時分か45から午後2時30分まで90分授業を3コマ ・WebCMJ(10課まで授業として) 行った。 ・漢字および漢字セミナー コースの日程は以下の通りである。 300字の導入と練習,L15での電子黒板を用いた漢字 4月9日㈮ 開講式,4月12日㈪ 授業開始,夏季 -43- 練習。教え方は,教師により異なるが,17名のうち 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 14名は満足しているというアンケート結果である。 (c) 「専門について話す」(第15週) このプログラムでは1名に付き8時間の指導の後, (b) その他の活動 各留学生それぞれが持ち時間8分(質疑応答も含む)で ・話す練習 専門領域について発表した。発表は207講義室で行っ これまでと同じテーマ(「楽しかったこと」「趣味に た。 ついて」「国の観光地」「国との違いについて」)に ほとんどの学生がパワーポイントを使用した。 ついてワープロで原稿を書き,話す活動として口頭 発表を行った。日本人ゲスト(各回2名)にインタ ビューする活動も例年通り2度行った。 このコースでは,話すことに重点を置いているが全 5. アンケート結果 ⑴ コースの満足度 4段階で評価してもらった。「3:とても満足」から 体的にみるとまだまだ少ない。 修了アンケートでも「より多くの話す時間を」とい うコメントをもらっているが, 「Talking time」の導 「0:まったく満足しない」で,17名中14名が「3」, 2名が「2」,1名が「1」の評価であった。 入もし,さらに時間的に増やしている。 ・ 書く練習 ⑵ 自身の学習成果への満足度 ひらがな練習のための“Hiragana Textbook”の使 4段階の評価で,「3:とても満足」から「0:まっ 用。ひらがなをいかに効率的に早く覚えるかが,こ たく満足しない」。17名中7名が「3」,8名が「2」, のコースでは鍵をにぎるが,この教材は,そのため 2名が「1」の評価であった。「1」の評価をした2名 の一助になっているようである。しかしながら,ま のうち,1名は,日本語が,コース開始時に期待して とまりのある文章を書くところまでは時間的に余裕 いたよりできるようになったと回答し,他の1名は期 がない。したがって,話す練習での原稿作成をワー 待していたのと同じレベルであったと回答している。 プロを用いて行なうような,話す練習と連動させる 全体的には,期待していたほどできるようにはならな ことで,書く練習を行っている程度である。 かったと回答した学生も3名いたが,成果には満足し ているという結果であった。 ・Pronunciation Practice コースの最初に発音システムを6回(45分 x6回)導 入・練習を行った。 会話の時間に「Sound Practice」という発音練習用 6.まとめと問題点 シートを使用し5分程度の発音練習を行った。主 今期はとてもまとまりのあるクラスであった。た に,アクセントとリズムの知覚と生成である。ねら だ,多少国で学習してくる学生については,逆に積極 いは,特殊拍の長さの知覚とアクセントの下降の位 的に日本語を使おうとせず,英語に頼る傾向もみられ 置の知覚をできるようにすることである。 た。前期には,9月の入学試験のために日本語学習に ・ホームビジットプログラム 集中できず欠席する学生もいるが,今期はそのような ホームビジットプログラムは,7月第2週目の土, 目立った休み方をするものはいなかった。ゼミなどで の欠席もなかったが,そのための準備などで,かなり 日に実施した。 日本人の生活を実際に見てみること,日本語での体 の負担があった学生もいた。研究のために農場にでか 験ができることが主な目的であるが,好評なプログ ける必要のある学生もあった。1名については,持病 ラムである。特に大きな混乱もなく,無事に終了で のため体調がすぐれず後半で欠席が多少あったが,夏 きた。 休み中に本国に戻り集中的な治療を行った。 -44- 日本語・日本文化教育部門 第63期(2010年10月期)日本語研修コース 鹿 島 央 見学旅行は,2月28日㈪に宇治平等院,醍醐寺,平安 1.研修生 神宮を見学した。 A.大使館推薦(研究留学生,教員研修生) 文部科学省より配置された大使館推薦の国費留学生 は,8ヶ国14名(韓国7名,インドネシア,エジプト, 4.カリキュラム エチオピア,スーダン,パプアニューギニア,ベトナ 今期の授業内容は,教科書を用いたカリキュラムは ム,マレーシア各1名)で,うち7名は日韓理工系学 62期と同じであったが,例年最終週に行っていた「専 部予備教育生である。残り7名のうち,3名が教員研 門について発表する」というプログラムは行えなかっ 修生で,残りの4名が研究留学生であった。進学先は た。前年度61期でも「専門について発表する」プログ 名古屋大学4名,愛知教育大学3名であった。今回の ラムは行わなかったが,今期行わなかった理由は全く 研修生の7名(日韓理工系学部生を除く)の内,1名 異なる。端的に言えば,学生間の差が大きく,日々の は中級以上の学習者であったため,全学日本語講座 学習内容を大幅に遅くする必要があったからである。 具体的な理由は,気候,ゼミ,新しい生活への不適応 (IJ212)を受講した。 などによる日本語学習への取り組みが十分でなかった B.学内公募(国費留学生) ためである。 今期も法学研究科から国費特別コース5名を受け入 れた。その他に,JICA 長期研修生1名も受講した。 以上のように,第63期日本語研修コースは国費大使 5. アンケート結果 館推薦留学生6名,学内推薦留学生6名の合計12名で ⑴ コースのプログラムの満足度 スタートした。ただ,法学研究科からの1名について 4段階で評価してもらった。「3:とても満足」から は,体調不良のため,第1回目の試験後から授業には 「0:まったく満足しない」で,11名中8名が「3」, 2名が「2」,1名が「1」の評価であった。 出席できなくなった。 ⑵ 自身の学習成果への満足度 2.クラス編成 4段階の評価で,「3:とても満足」から「0:まっ 授業は,2クラス編成とし,専任教員2名,非常勤 たく満足しない」。14名中2名が「3」,4名が「2」, 講師9名の計11名が担当した。 5名が「1」の評価であった。この結果から,自身の 学習成果にはあまり満足していない傾向が窺がえるこ とは,62期とは異なっていた。「1」の評価をした5名 3.時間割と日程 のうち,4名は,日本語が,コース開始時に期待して 時間割は62期と同様である。 いたよりできるようになったと回答し,他の1名は期 コースの日程は以下の通りである。 待していたよりずっと低いレベルであったと回答して 10月8日㈮ 開講式,10月12日㈫ 授業開始,冬季 いる。このことから,期待していたよりはよかったが, 休業12月23日㈭~1月10日㈪,1月11日㈫ 授業再 さまざまな理由から思うような成果があがらなかった 開,3月2日㈬ 修了式。春季休業中の集中日本語講 と考える学生が比較的多くいたことが分かる。 座は例年のように,国際言語文化研究科の主催する日 本語実習クラス(2月14日~2月25日)があった。 -45- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 う。1名については,5課終了のテスト以降から出席 6. まとめと問題点 ができなくなり,個人的な対応を試みたが音信不通 今期は,ゼミなど専門の授業の関連でよく休む学生 で,研究科の留学生担当教員と連絡をとり様子をみる がいた。この問題は例年あるものであるが,今期は特 こととした。早めの対応もできないケースがあるの に多かった。ゼミ以外でも,気候になじめず,体調を で,指導教員,留学生担当教員との連絡を密にする必 崩しがちな学生もあり,たびたびの欠席が他の学生の 要性を改めて感じた。 学習意欲をそぐ結果にもつながったことは確かであろ -46- 日本語・日本文化教育部門 第29期 上級日本語特別コース(2009年10月~2010年9月) 籾 第29期上級日本語特別コースは,「上級レベルの日 本語能力の習得(話す・聞く・読む・書くのすべてに わたって)」 「日本に関する基礎的理解」 「各自の専門分 野の基礎的な研究方法の習得と実践」の3つを目標と 山 洋 介 を14回(各90分)行った。前期は,「日本文化論Ⅰ」 「国際関係論Ⅰ」「日本語学Ⅰ」「言語学Ⅰ」であり,後 期は,「日本文化論Ⅱ」「国際関係論Ⅱ」「日本語学Ⅱ」 「言語学Ⅱ」であった。学生は,前期は4科目のうち2 して行われた。 科目以上を選択,後期は4科目のうち1科目以上を選 学習者は,9カ国,10名(中国:2名[内1名:香 択することとした。なお,入門講義は全学留学生が受 港],インドネシア:1名,オーストラリア:1名,韓 講できるものであり,大学院研究生,短期交換留学生 国:1名,スウェーデン:1名,チェコ:1名,ハン などとともに受講した。 ガリー:1名,ブラジル:1名,ミャンマー:1名) また,特殊講義(必修)として「音声学」(90分 × であり,10名の教員が指導に当たった。 7回)を行った。 以下,主要なプログラムおよびアンケートの結果な ⑷ 作文(レポートのための基礎訓練)(1月~4月) どについて概説する。 レポート作成に必須の基礎知識を体系的に身に付け ⑴ 教科書による日本語学習(10月~4月) ることを狙いとして,「書き言葉と話し言葉の基本的 『現代日本語コース中級Ⅰ』『現代日本語コース中級 な違い」 「論文・レポートに役立ついろいろな表現」 「文 Ⅱ』 『現代日本語コース中級Ⅰ 聴解ワークシート』 『現 末表現の諸相」「図やグラフの説明の仕方」「引用の仕 代日本語コース中級Ⅱ 聴解ワークシート』 (いずれも 方」「要約の仕方」などについて学習した。 名古屋大学日本語教育研究グループ編,名古屋大学出 版会)を教科書として日本語学習を行った。補助教材 ⑸ 発展読解(10月~4月) として,「プリテスト(予習のチェック)」「プリテス 発展読解として,「精読」(教科書の読解教材に代わ ト:補足(連語など)」「復習クイズ」「文法補足説明」 るもの), 「新聞読解」, 「問題付き読解」(生教材に読解 を使用した。また,3課ごとにテスト(筆記テストお の手助けとなる問題を付したもの), 「本の読解」 (エッ よび話すテスト)を実施した。話すテストについては, セイ・小説など,教員が用意したものの中から,学習 録音に基づき個別指導も行った。 者が興味のあるものを選択)などを行った。 ⑵ 応用会話(10月~4月) ⑹ スピーチ(10月~7月) 教科書の会話が大学などの限られた場におけるもの 自国の紹介,自分がふだん考えていることをはじめ であることから,社会における様々な場における会話 とする様々なトピックについて,学生がスピーチを 力(表現力,運用能力)を高めることを狙いとして, 行った(1人,1回,10分程度,スピーチ後に質疑応 「応用会話」を行った。教材として,各種のモデル会話 答)。 などを作成し,使用した。 ⑺ レポート(1月~7月) ⑶ 入門講義・特殊講義(10月~7月) 学生各自がテーマを決め,教員の個別指導のもとで 日本に関する基礎知識を身に付けること,レポート レポートを作成した。分量は A4,15~30枚程度であ のための基礎知識および基本的な研究方法を習得する る。なお,今期も, 「論文」 「調査報告」 「随筆」 「創作」 ことを狙いとして,10月~2月(前期)および4月~ という4つのカテゴリーの中から,学生が1つを選ん 7月(後期)の期間,それぞれ4つの分野の入門講義 で取り組むこととしたが,最終的に,全員が「論文」 -47- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 を執筆した。研究成果は『2009~2010年度日本語・日 ⑼ 漢字テスト・漢字コンクール(10月~7月) 本文化研修生 レポート集』(266ページ)として発行 漢字学習を計画的に進めることを狙いとして,「漢 した。また,中間発表会(5月,発表:18分/質疑応 字テスト」(20回)を行った。また,漢字学習をさらに 答:7分),最終発表会(7月,発表:20分/質疑応 活性化することを狙いとして「漢字コンクール」(4 答:5分)を実施した。レポートの題目は以下の通り 回)を実施した。 である。 ⑽ その他 1.アレックサンダー・マックシーモッフ(スウェー デン)「千年女優 今敏-平沢進の出発」 以上に加えて,独話練習,討論会(ディベート),こ とばのクラス(ゲームなどを通して日本語力を高める 2.アン・ニサ・ノビタ・ラーマ(インドネシア)「複 合動詞を形成する「見―」について」 プログラム)なども行った。さらに,本学の学部生向 けに開講されている教養科目の1つである「留学生と 3.ヴェロニカ・ベダーニョワー(チェコ)「「芸術」 日本:異文化を通した日本理解」にも参加した。 と「人生」― 芥川龍之介『地獄変』を読んで ―」 4.キム・エスダー(オーストラリア)「若者言葉に対 する留学生と日本人学生の意識の違い」 ⑾ アンケート 2010年7月に,学習者に対して,コースの内容など 5.金 セナ(韓国)「『とりかへばや物語』研究 ― 「ジェンダー」について考える ―」 に関するかなり詳細なアンケートを行った。以下, 「全 体としてコースの内容に満足していますか」という質 6.クニャ・ファウルスティヒ・ユーリ(ブラジル) 「文学作品の翻訳の問題 ― 川端康成の『古都』の場 問のみについて,アンケート結果を紹介する(回答者 8名)。 合 ―」 満足度 7.クリスティ(香港)「日本人大学生と留学生の昼食 評価 行動 ― 名古屋大学の学生に聞く ―」 回答者数 8.シュテーゲル・アーコシュ(ハンガリー)「葉蔵は 満足していない 満足している 0 1 2 3 0人 3人 3人 2人 真に人間失格者であろうか」 9.ス ミャッ ナイン(ミャンマー)「日本の少子化 ⑿ 今期の試みと今後の課題 今期は,まず,教科書の各課に対応する「復習クイ 対策と子ども手当の登場」 ズ」(18課分)について,様々な角度から見直しを行 10.馬萍萍(中国)「現代のおせちとその背景」 い,改訂し,使用した。また,上でも触れたが, 「総合 ⑻ 総合演習(5月~7月) 演習」の成果の一部を,『2009~2010年度日本語・日本 日本事情・日本文化に対する理解を深めることと上 文化研修生 レポート集』に掲載した。学習者が成果 級レベルの総合的な日本語力を養成することを狙いと をきちんと文章化したものを,『レポート集』に掲載 して,総合演習を行った。教材は新聞や雑誌の記事や し,公表することは,学習者の励みになることである テレビ番組などを使用し,学生は多様な言語活動を ので,今後も続けていきたい。 行った。テーマは「日本・愛知県の農業・農産物」「こ さて,今期は,上記のアンケート結果から見る限り, とばで伝える,ことばで遊ぶ」「日本人とスポーツ:心 例年に比べて,学習者全体の満足度が高いとは言えな 技体の世界」の3つである。各テーマの実施期間は1 かった。特に,プログラムの内容を十分に消化できて ~2週間である。 いない学習者が「学習内容が易しすぎる」と記してい なお,「日本・愛知県の農業・農産物」については, たケースもあった。重要な学習項目を含んでいるが, 3つのグループに分かれて,調査・インタビュー等を 一見易しい教材の場合,学習者の意欲をそぐ危険性が 行い,その成果を報告書にまとめた。報告書は, 『2009 あるということであろうか。学習者が, 「教材」をどの ~2010年度日本語・日本文化研修生 レポート集』に ように受け止めるかという観点も取り入れて,今後検 掲載した。 討していきたい。 -48- 日本語・日本文化教育部門 全学向日本語プログラム 2010年度 李 澤 熊 全学向日本語プログラムは,名古屋大学に在籍する ラス体制をとった。なお,標準コースはすべて午後 留学生(大学院生,研究生など),客員研究員,外国人 の開講となった。 教師などを対象に,日常生活や大学での研究生活に必 2)例年と同様,初級Ⅱ以上を希望する受講者を対象 要とされる日本語運用能力の養成を目指して開講され にクラス分けテストを実施し,日本語能力レベルに ている。 応じたクラス編成をした。なお,今年度もクラス分 2010年度は昨年度に引き続き,日本語プログラムを けテストの会場を2つ設け,上級レベルを希望する 見直し,効率を図るとともに,全学留学生を対象とす 者については,別途にテストを実施した。 る全学向日本語講座の拡充計画を立案し,実施した。 3)各クラスにおいて,出席および成績の管理を行 い,授業終了時に出席率および成績から合格者を発 表し,合格者は次期進級する際クラス分けテストを 1.2010年度の概要 免除している。再履修者についても同様である。た 1)2010年度は,前期・後期に「集中コース(IJ コー だし,上級Ⅰ,Ⅱにおける再履修者は定員を超える ス)と「標準コース(SJ コース)」を開講し,アラ 申し込みがあった場合,受講を制限することにして カルト授業として「オンライン日本語コース」「漢字 いる。 コース」「入門講義」「ビジネス日本語コース」を開 4)全学向日本語プログラムは,基本的には単位取得 講した。なお,「漢字コース」と「ビジネス日本語 をする授業ではないが,短期交換留学生に関して コース」は,それぞれ「漢字2000」,「ビジネス日本 は,別途に単位認定基準を設け,単位認定を行った。 語Ⅲ」を新たに設け,さらに充実を図った。 5)「学生の出入りが激しい」という問題点を解消す 集中コースは,短期交換留学生の受講が多いという るために,今年度からは登録の時に指導教員による こともあり,週20時間4レベル5クラスを設けた。 なお,集中コースはすべて午前の開講となった。 「受講承諾書」の提出を義務化した。 6)昨年度に引き続き,FD 活動の一環として学生に 標準コースは,7レベル9クラスを設けた。初級Ⅰ よるコース評価をレベル・科目別に行った。 レベルについては,昨年に引き続き前後期共に2ク 2.期間と内容 1)前期開講期間:2010年4月12日㈪~7月26日㈪ 14週間 2)後期開講期間:2010年10月12日㈫~2011年2月7日㈫ 14週間 3)開講クラスと内容: コース科目 標準コース (standard) レベル クラス数 目 標 教 材 初級Ⅰ SJ101 日本語がほとんどわからない学生を対象に,日本語文法 A Course in Modern Japanese, の初歩的な知識を与えるとともに日常生活に必要な話し [Revised edition] Vol. 1 & CD ことばの運用能力を育てる。(漢字100字,単語数800語) 初級Ⅱ SJ102 初級Ⅰ修了程度のレベルの学生を対象に,さらに基礎日 A Course in Modern Japanese, 本語の知識を与えるとともに日常生活に必要な話しこと [Revised edition] Vol. 2 & CD ばの運用能力を育てる。(漢字150字,単語数900語) 初中級 SJ200 初級Ⅰ,Ⅱで学んだ文法事項の運用練習を行うとともに, 留学生センター開発教材 中級レベルで必要となる漢字力,読解力を含め,日本語 運用能力の基礎を固める。(漢字200字,単語数1000語) -49- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 コース科目 標準コース (standard) 集中コース (intensive) 漢字コース (kanji) レベル クラス数 目 標 教 材 中級Ⅰ SJ201 初中級修了程度のレベルの学生を対象に,日本語の文法 『現代日本語コース中級Ⅰ』 を復習しつつ,4技能全般の運用能力を高める。 (漢字300字,単語数1200語) 中級Ⅱ SJ202 中級Ⅰ修了程度のレベルの学生を対象に,日本語の文法 『現代日本語コース中級Ⅱ』 を復習しつつ,大学での勉学に必要な日本語能力の基礎 を固める。(漢字400字,単語数2000語) 中上級 SJ300 中級Ⅰ,Ⅱで学んだ学習項目を実際の場面で使えるよう運 ・留学生センター開発教材 用練習を行い,上級レベルの日本語学習の基礎を固める。 ・『日本語上級読解』アルク (漢字500字,単語数3000語) 上級 SJ301 中上級修了程度の学生を対象に,大学での研究や勉学に 留学生センター開発教材 必要な口頭表現,文章表現の能力を養う。(漢字800字, 単語数4000語) 初級Ⅰ IJ111 日本語がほとんどわからない学生を対象に,日本語文法 A Course in Modern Japanese, の初歩的な知識を与えるとともに日常生活に必要な話し [Revised edition] Vols. 1, 2 & CD ことばの運用能力を育てる。(漢字150字,単語数800語) 初級Ⅱ IJ112 標準コース初級Ⅰ修了程度の学生を対象に,日本語文法 A Course in Modern Japanese, の基礎を固め,日常生活だけでなく勉学に必要な基礎的 Vos. 2 & CD,作成教材 日本語運用能力を養う。(漢字250字,単語数1000語) 中級Ⅰ IJ211 集中コース初級Ⅰまたは標準コース初級Ⅱ修了程度の学 『現代日本語コース中級Ⅰ』および 生を対象に,日本語の文法を復習しつつ,4技能全般の 留学生センター作成教材 運用能力を高める。(漢字300字,単語数1200語) 中級Ⅱ IJ212 集中コース初級Ⅱまたは標準コース初中級修了程度の学 『現代日本語コース中級Ⅰ・Ⅱ』 生を対象に,4技能全般の運用能力を高め,研究に必要な 日本語能力の基礎を固める。 (漢字400字,単語数2000語) 漢字1000 KJ1000 漢字300字程度を学習した学生を対象に,日本語能力試験 『漢字マスター Vol. 3 2級漢字 N3-N2程度の漢字1000字を目標に学習する。 1000』 漢字2000 KJ2000 漢字1000字程度を学習した学生を対象に,日本語能力試 『日本語学習のための よく使う順 験 N2の上から N1程度の漢字約2000字およびその語彙を 漢字2100』 学習する。 次の専門分野を日本語でやさしく解説する講義形式の授業である。日本語運用能力を高めるとともに,日本理 解を助ける科目である。標準コース中上級レベル以上の日本語能力が受講資格である。 国際関係論Ⅰ・Ⅱ Ⅰ:グローバリゼーションは開かれた社会・経済を推進 講読文献などは授業中に適宜指示 IR200 し,商品,思想などが縦横無尽に世界を駆け抜ける。さ する。 らに,ネットワーク社会の出現は人権やアイデンティ ティー意識の高揚をもたらしている。しかしながら,グ ローバリゼーションの行く末を案ずる声も大きくなって きている。グローバリゼーションをめぐる賛否両論を紹 介する。 Ⅱ:グローバリゼーションをキーワードとして,いくつ かの認識方法を手がかりに,現代国際環境の変容を見る。 日本文化論Ⅰ・Ⅱ Ⅰ:この講義では,日本の家族や学校をめぐる最近の問題 講読文献などは授業中に適宜指示 入門講義 JC200 を取りあげ,受講者の出身国の事例と比較しながら,日 する。 (introductory) 本の社会や文化の特徴を議論していく。取りあげるテー マは,夫婦別姓,国際結婚,いじめ,不登校,フリーター など。 Ⅱ:日本の社会や文化の特徴をより深く理解するために, 韓国を比較の対象として取りあげ,東アジアにおける「近 代」(西洋文明との出会い)の意味を考える。 言語学Ⅰ・Ⅱ GL200 Ⅰ:主に現代日本語を素材として,言語学の基礎を学ぶ。 講読文献などは授業中に適宜指示 取り上げるテーマは,言語学の基本的な考え方,人間の言 する。 葉の一般的特徴,言葉の意味(意味論) ,言葉と社会(社 会言語学) ,世界の言語と日本語(言語類型論)である。 Ⅱ:言語学の一分野である意味論(認知意味論を含む) について学ぶ。特に,現代日本語を素材として,類義表 現・多義表現などの分析方法を身につけることを目指す。 -50- 日本語・日本文化教育部門 レベル クラス数 コース科目 目 標 日本語学Ⅰ・Ⅱ JL200 Ⅰ:主に日本語教育で問題となる文法項目を取りあげ, 講読文献などは授業中に適宜指示 整理・検討することによって,文法の基本的知識を身に する。 付けることを目標とする。取りあげるテーマは品詞,ボ イス,テンス,人称,活用等 Ⅱ:主に日本語教育で問題となる文法項目を取りあげ, 整理・検討することによって,文法の基本的知識を身に 付けることを目標とする。 ・中上級読解作 文 OL300 ・オンライン漢字 OLkj 中級レベルを修了した学習者を対象に,400字~600字程 Moodle 版日本語教材 度の文章の理解とその文章の要約や関連作文を課し,文 章表現能力を養う。 初中上級レベルの学習を修了した学習者を対象とした漢 字のクラスを開講している。毎週1回オフィースアワー を開設する。 入門講義 (introductory) オンライン・ 日本語コース 教 材 ビジネス日本語 将来,日本の企業に就職を希望する人はもちろん,日本 『ビジネスのための日本語・初中 Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ 人のビジネスコミュニケーションに対する理解を深めた 級』スリーエーネットワーク など ビジネス日本語 BJ400 い留学生を対象とし,日本のビジネス・マナー及びビジ Business ネスで用いられる日本語表現を身につける。 (入門講義科目の「Ⅰ」は秋学期に,「Ⅱ」は春学期に開講する。) 3.受講生数 1)標準コース 初級Ⅰ(2クラス) 初級Ⅱ 初中級 中級Ⅰ 中級Ⅱ 中上級 上級 計 前 期 登録者数 修了者数 40 33 30 23 35 24 24 20 47 33 39 31 41 26 256 190 計 後 期 登録者数 修了者数 71 51 26 21 37 31 32 20 36 25 37 24 59 33 298 205 初級Ⅰ ・ Ⅱ(2クラス) 初級Ⅱ ・ 初中級 初中級 ・ 中級Ⅰ(2クラス) 中級Ⅰ ・ Ⅱ 計 後 期 登録者数 修了者数 33 30 15 14 36 32 29 22 113 98 初級Ⅰ 初級Ⅱ 初中級 中級Ⅰ 中級Ⅱ 中上級 上級 2)集中コース 初級Ⅰ ・ Ⅱ(2クラス) 初級Ⅱ ・ 初中級 初中級 ・ 中級Ⅰ(2クラス) 中級Ⅰ ・ Ⅱ 計 前 期 登録者数 修了者数 15 13 11 10 22 19 22 17 70 59 質問1:教材は役に立ったと思いますか。 4.学生によるコース評価 質問2:勉強したことがよく理解できたと思いますか。 昨年度と同様に授業改善と教授能力の向上を図るた めに,前期と後期に受講者を対象に,コース内容に関 前期 するアンケートを実施した。回答者数 (短期交換留学生 を含む)は前期と後期,それぞれ139名と150名である。 アンケートの内容はレベルによって異なるが,各レ ベルに共通して尋ねた質問のうち3つの項目について 報告する。 -51- そう思う どちらかといえば「はい」 どちらとも言えない どちらかといえば「いいえ」 そう思わない 回答者合計 Q1 102 17 16 3 1 139 Q2 78 33 18 7 3 139 合計 65% 18% 12% 4% 1% 100% 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 後期 そう思う どちらかといえば「はい」 どちらとも言えない どちらかといえば「いいえ」 そう思わない 回答者合計 Q1 104 23 11 9 3 150 Q2 65 63 15 6 1 150 5.今後の課題 合計 56% 29% 9% 5% 1% 100% 以上のように,2010年度は昨年度の実施結果を踏ま え,さらにプログラムの充実を図ってきた。しかし, 留学生30万人計画やグローバル30英語コースの開始な ど,国際交流のさらなる進展に伴い,今後日本語教育 へのニーズはさらに多様化するものと予想される。 以上の結果から分かるように,全般的に良好な評価 現在,全学向け日本語プログラムがかかえている問 結果が得られた。ただ,受講者によっては「大学院等 題として,次のような点があげられる。 の入試(例えば,面接試験)に役立つ項目も取り上げ 1)現在の時間割編成では,短期交換留学生の増加や てほしい」,「論文やレポートの書き方をもっと学びた 2011年後期からスタートする「グローバル30英語 い」「政治・国際問題など,授業で取り上げるテーマの コース」に十分な対応ができない。 領域をもっと広げてほしい」というような指摘もあっ 2)IJ コース(集中コース)では,14週間で教科書を2 た。今後,このようなニーズに対応していくために, 冊消化しなければならず,その学習量にかなり負担 さらに工夫が必要であろう。 を感じる学習者が多い。例えば IJ111を修了(合格) しても,学習内容が十分身についていない学生が多 質問3:日 本語の授業について意見やアドバイスが く見受けられる(多くの学生が次のレベル(IJ211) あったら書いてください。 で勉強できるほどの力がついていない)。 この質問には様々な回答があったが,全般的に寛大 そこで留学生センターでは,来年度から既存の日本 な評価が多かった。しかし,中には以下のような要望 語プログラムを見直し,さらに効率を図る予定であ も出ており,今後さらなるプログラムの改善に努める る。まず,1)に対応するために,標準コース(の一 必要があると感じた。 部)の開講時間帯を午前に変更する。そして,2)の ・「専門の授業と重なって,とれない科目があった」 改善策として,全学向け日本語プログラムのレベルの ・「クラス人数が多い」 見直しを進める。特に,初級1レベル~中級2レベル ・「E- メールの書き方など,実用的なことをもっと取 り上げてほしい」 (IJ コース全体,SJ101~ SJ202)の見直しが必要なた め,ワーキンググループを設置し,検討を進める。 -52- 日本語・日本文化教育部門 学部留学生を対象とする言語文化「日本語」 浮 葉 正 親 学部に在籍する留学生が大学で所定の単位を取得していくためには,講義を聴く,ノートをとる,ゼミで発表す る,レポート・答案を書く,ディスカッションをするなど,高度な日本語運用能力が要求される。授業ではそのた めの訓練を行うとともに,日本人学生や教官とのコミュニケーション能力の育成や,日本社会・文化に対する理解 を深めることを目的としている。 2010年度言語文化[日本語]の科目および受講者数は以下の通りであった。 期 対象 文系 理系 1期(1年前期) 工学(国) 工学(私) 文系 理系 2期(1年後期) 工学(国) 工学(私) 3期(2年前期) 4期(2年後期) 文系 文系 内容 文章表現 口頭表現 文章表現 口頭表現 口頭表現 文章表現 文章表現 口頭表現 文章表現 口頭表現 文章表現 口頭表現 口頭表現 文章表現 文章表現 口頭表現 文章表現 文章表現 時間 月3限 木3限 火2限 木2限 月2限 水2限 月2限 水2限 金2限 木3限 火2限 木2限 月2限 水1限 月2限 水1限 火1限 木1限 担当者 秋山 西田 村上 西田 秋山 魚住 村上 鷲見 秋山 村上 村上 西田 西田 魚住 秋山 鷲見 浮葉 浮葉 受講者数 12 12 2 2 11 11 12 12 12 12 2 2 11 11 13 13 16 16 コード 0011323 0014323 0012241 0014242 0011258 0013253 0011259 0013254 0025223 0024323 0022240 0024239 0021258 0023136 0021259 0023137 0031507 0044112 クラス 文系:文学部・教育学部・法学部・経済学部・情報文化学部社会システム情報学科 理系:医学部・理学部・農学部・情報文化学部自然情報学科 工学(国):工学部(国費留学生・政府派遣留学生) 工学(私):工学部(私費留学生・日韓理工系留学生) 読むなかで読む力の養成を、そしてレポート作成作業 授業内容 のなかで書く力を養成した。 1年前期 文系・文章表現 文系・口頭表現 読む力、書く力の練習。脱国家的な地球的問題群の 大学という環境における教室内外の日本語の使用能 ひとつを共通テーマとして取り上げた。テーマについ 力を高めることを目標として授業を行った。分かりや ての理解を深める過程で読む練習、書く練習をした。 すく伝えるための方法を学び、魅力的に話すための練 最終目標は、共通テーマに基づくレポート作成であ 習をした。具体的には、日本語ネイティブと同じクラ り、共通テーマは「グローバリゼーション」であった。 スでわかりやすい発表ができるために、ラベリング、 「市場原理主義」「グローバル・キャピタル」「グローバ オーダリング、ナンバリング等の技術を学び、同じ素 リゼーションへの懸念」の各小テーマに関する資料を 材を使って話す順序を変えることにより効果が異なる -53- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 技術をピア・ラーニング活動の中で習得した。また、 ということ実践的に学んだ。 レポートを作成するために必要なアウトラインの立て 理系 ・ 文章表現 方、引用・要約の仕方、レジュメの作成など基本的技 メールによる依頼文、マニュアルなどの説明文、資 能を段階的に学習した。学習者は授業に先立ちポート 料を活用した意見文など、大学生活で必要な文章表現 フォリオ作成の説明を受け、授業を通して意識的に自 技術をピア・ラーニング活動の中で習得した。また、 分の学習の仕方をモニターし、ポートフォリオを完成 レポートを作成するために必要なアウトラインの立て させた。 方、引用・要約の仕方、レジュメの作成など基本的技 能を段階的に学習した。学習者は授業に先立ちポート 工学系(私費)・ 口頭表現 フォリオ作成の説明を受け、授業を通して意識的に自 ・プレゼンテーションの実践を通して、発表及び質疑 応答の仕方を学んだ。 分の学習の仕方をモニターし、ポートフォリオを完成 1)プレゼンテーションに必要な表現の確認と運用 させた。 の練習 理系 ・ 口頭表現 2)プレゼンテーションの準備と実践(内容を豊かに 大学という環境における教室内外の日本語の使用能 するための活動・参考資料の活用・日本人を対象 力を高めることを目標として授業を行った。分かりや にしたインタビュー調査・アウトラインの作成・ すく伝えるための方法を学び、魅力的に話すための練 発表スライドの作成) 習をした。具体的には、日本語ネイティブと同じクラ ・受講者の関心に基づき、you-tube から素材を拾い、 スでわかりやすい発表ができるために、ラベリング、 視聴した内容をまとめ、口頭で伝える練習をした。 オーダリング、ナンバリング等の技術を学び、同じ素 材を使って話す順序を変えることにより効果が異なる 1年後期 ということ実践的に学んだ。 文系・文章表現 読む力、書く力の練習。脱国家的な地球的問題群の 工学系(国費)・ 文章表現 ひとつを共通テーマとして取り上げた。テーマについ 読解能力と論理的文章作成の基礎力養成を目的に、 ての理解を深める過程で読む練習、書く練習をした。 日本の大学生 ・ 文化 ・ 社会や科学技術を扱った新聞等 最終目標は、共通テーマに基づくレポート作成であ の読解、要約 ・ 意見 ・ ポイントを整理して書く練習を り、共通テーマは「グローバリゼーション」であった。 行った。その他、板書文字 、 文体 、 句読点、原稿用紙 「市場原理主義」「グローバル・キャピタル」「グローバ やメール・レジュメの書き方の学習、発表を行った。 リゼーションへの懸念」の各小テーマに関する資料を 読むなかで読む力の養成を、そしてレポート作成作業 工学系(国費)・口頭表現 のなかで書く力を養成した。 話す力、聞く力の練習。脱国家的な地球的問題群の ひとつを共通テーマとして取り上げた。テーマについ 文系・口頭表現 ての理解を深める過程で話す練習、聞く練習をした。 ロールプレイによる口頭表現練習や、ディスカッ 最終目標は、共通テーマに基づく口頭発表であり、共 ション、ディベート、提言スピーチを通して、自分の意 通テーマは「格差と成果主義」であった。 「戦後日本社 見を論理的、効果的に伝える技術の向上を目指した。 会の富裕層」 「現代日本社会の格差」 「成果主義」の各 学習者は授業に先立ちポートフォリオ作成の説明を受 小テーマに関する資料を利用し、情報伝達、大意伝達、 け、授業を通して意識的に自分の話し方や学習の仕方 質疑応答などの活動を通じて話す力の養成を行った。 をモニターし、ポートフォリオを完成させた。 工学系(私費)・文章表現 理系・文章表現 メールによる依頼文、マニュアルなどの説明文、資 前期に引き続き、論理的文章の書き方を中心に学習 料を活用した意見文など、大学生活で必要な文章表現 した。レポートの構成やインターネットによる必要な -54- 日本語・日本文化教育部門 情報の検索と要約、引用のしかたなどを、実際にテー 工学系(私費)・ 口頭表現 マに沿って書く練習を行った。福岡伸一「動的平衡」 ・ディベートの実践を通して、討論の仕方を学んだ。 を授業の中だけではなく、教室外の活動も含め読み、 (必要十分な資料の活用、論理的で一貫性のある内容 その概要説明文を作成した。 の構成、聞き手を納得させる効果的なスピーチ、相 手の内容を踏まえて自説を展開する効果的な討論) 理系 ・ 口頭表現 ・学術的な運用力に加え、基礎的口頭表現力を高める 大学生活において、より適切なコミュニケーション ことを目的として、 「川柳の鑑賞と作成」 「読書活動」 がとれるように、様々な場面に関してどのような会話 を行った。 をすればよいのかを、問題のある会話例を修正しつ 前者は、語彙力、自律的学習能力の向上、後者は日本 つ、さらに、工夫を加えるという練習を行いながら学 語・日本に関する知識の獲得を二次的目的とした。 んだ。さらに、前期に学んだ様々な分かりやすい話し 方のテクニックなども使って、自らの研究内容を専門 2年前期 外の人にもわかるように発表する練習をした。 文系・文章表現 日本社会・日本文化に関する文献等を読み理解を深 工学系(国費)・口頭表現 めるととともに、レポートや卒業論文に必要な論理的 適切に日本語を使えるようになるために、ラベリン な文章の書き方を学んだ。小学校での英語教育導入、 グ、オーダリング、ナンバリング等の技術を学び、同 ニート問題の中からテーマを選び、資料を読みなが じ素材を使って話す順序を変えることにより効果が異 ら、アウトラインと序文を作成した。 なるということ実践的に学んだ。さらに、魅力的に話 せるようにするために、見たい映画について発表し、 2年後期 それを実際に視聴することによって日本の文化的側面 文系・文章表現 について学んだ。また、自らの研究内容についてわか 前期で学んだ内容をふまえ、より高度な読解力、文 りやすく発表する練習をした。 章表現力の向上を目指した。要約と引用の方法を中心 に学び、興味のある本の内容を紹介するレポートを作 工学系(国費)・ 文章表現 成した。ここ数年話題となった新書を十数冊準備し、 さらに高度な文章表現能力の養成を目的に、図表の 選んでもらった。 説明・引用の仕方・レポートの書き方を学び、レポー トを2回作成・発表した。1回目はグループで(資料 丸写し防止と分析力養成のため図表を元に分析)、学 授業アンケートの結果 例年のように、授業終了時に行われたアンケート結 期末の2回目は各自で行った。テーマは自由。 果では、ほぼ全項目において非常に高い評価を得た。 工学系(私費)・文章表現 主な項目を下に示す。(4点満点) 読む力、書く力の練習。脱国家的な地球的問題群の ・この授業はシラバス等で説明された授業目標や評価 方法に沿って行われましたか(4.0) ひとつを共通テーマとして取り上げた。テーマについ ての理解を深める過程で読む練習、書く練習をした。 ・この授業に意欲的 ・ 自発的に取り組むことができま したか(3.8) 最終目標は、共通テーマに基づくレポート作成であ り、共通テーマは「グローバリゼーション」であった。 ・この授業で設定された学習内容を理解できましたか (3.8) 「市場原理主義」「グローバル・キャピタル」「グローバ リゼーションへの懸念」の各小テーマに関する資料を ・担当教員の熱意や工夫を感じましたか(3.8) 読むなかで読む力の養成を、そしてレポート作成作業 のなかで書く力を養成した。 -55- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 短期留学生日本語プログラム 2010年度 衣 川 隆 生 学生に対しても数多くの認定科目が提供できるように 1.2010年度の概要 なった。参考のため,表1に標準日本語コースのクラ 短期留学生を対象とした日本語コースは2005年度以 ス名,表2に集中日本語コースのクラス名を示す。 降全学向け日本語プログラムに統合されている。開講 このうち,SJ101,SJ102の初級コース(1日1コマ・ クラスと内容に関しては,全学向けプログラムの報告 週5コマ・全70コマ),IJ111,IJ112の初級~初中級 を参照いただきたい。 コース(1日2コマ・週10コマ・全140コマ)の受講者 は,総合的な日本語能力を身につけるために,週5日 出席すること義務づけている。SJ101,SJ102を修了し 2.単位認定科目の追加 た学生には5単位を,IJ111,IJ112を修了した学生に 短期留学生は日本語プログラムを受講することで単 は10単位を認定している。 位取得が可能である。2010年度においては,従来から SJ200以上のレベル,及び IJ211以上のレベルの学生 単位を認定していた1日2コマの「集中日本語コース」 は,レベルやニーズに合わせて文法・談話,読解,聴 4レベルと,1日1コマの「標準日本語コース」7レ 解,会話,作文のクラスを技能別に登録することが可 ベル,及び「入門講義」4科目に加え, 「ビジネス日本 能である。学生は1科目から最大5科目まで履修登録 語」(春学期より2科目,秋学期より3科目),「漢字 することができる。また,技能習熟度に合わせて配置 コース」(秋学期より2科目)においても単位認定を開 されたレベルよりも下のレベルのクラスを登録するこ 始した。これらの認定科目を追加したことにより,こ とも可能である。ただし,2レベルで同じ名称の科目 れまで単位認定科目が少なかった中上級以上の短期留 を登録することは認めていない。SJ においては1科目 表1 標準日本語コース(SJ) Japanese Level Class Name 初級Ⅰ SJ101 初級Ⅱ SJ102 初中級 SJ200(C1&C2) SJ200(R) SJ200(L) SJ200(G) 中級Ⅰ SJ201(C1&C2) S201(R) SJ201(L) SJ201(G) SJ202(C1&C2) SJ202(R) SJ202(L) SJ202(G) 中上級 中級Ⅱ SJ300(C1) SJ300(C2) SJ300(R) SJ300(L) SJ300(G) 上級 SJ301(C) SJ301(W1) SJ301(W2) SJ301(R) SJ301(L) Listening Grammar & Discourse 表2 集中日本語コース(IJ) Japanese Level 初級Ⅰ 初級Ⅱ Class Name IJ111 IJ112 初中級 Japanese Level Skill Class Name Conversation 1 初中級 中級Ⅰ 中級Ⅱ IJ212 (C1) Conversation 2 IJ211 (C1&2) IJ212 (C2) Reading IJ211 (R) -56- IJ212 (R) IJ211 (L) IJ212 (L) IJ211 (G) IJ212 (G) 日本語・日本文化教育部門 1単位を,IJ コースにおいては1科目2単位を認定し 表4は成績認定基準である。Audit 制度は秋学期よ ている。 り廃止している。 入門講義は2010年度には春学期,秋学期それぞれ4 表4 成績認定基準 科目開講し,1科目2単位を認定している。 ビジネス日本語は春学期に「ビジネス日本語1」「ビ ジネス日本語2」を開講し,秋学期には「ビジネス日 本語2」修了者を対象として「ビジネス日本語3」を 成 績 成績評価(100点満点) A* 100-90 A 89-80 B 79-70 C 69-60 F 開講した。各科目1単位を認定している。 59以下 *Audit 80% 以上の出席で受講証明 また,従来アラカルト授業として開講していた「漢 字コース」も秋学期から「漢字1000」「漢字2000」を開 ただし,初中級レベル以上のクラスについては技能 講し,それぞれ1単位を認定している。 別クラスで単位を認定するため,表3を基本として技 能クラスごとに適切な評価項目を示すこととした。ま 3.成績評価 た,NUPACE Japanese Language Program Grading 表3は短期留学生日本語プログラムの評価基準である。 Policy を策定し,教務オリエンテーションの際に,そ 表3 評価項目と配点 の内容の徹底を図ることとした。 Test またはレポート 60% Quiz 10% Homework 10% Attendance 10% Class Performance 10% 表5,6は春学期と秋学期の標準日本語コース,表 100% 7,8は集中日本語コースの登録者数及び成績を示し Total 4.登録・成績状況 表5 春学期標準日本語コースの登録・成績状況 春学期 SJ101 SJ102 SJ200会話1&2 SJ200読解 SJ200聴解 SJ200文法・談話 SJ201会話1&2 SJ201読解 SJ201聴解 SJ201文法・談話 SJ202会話1&2 SJ202読解 SJ202聴解 SJ202文法・談話 SJ300会話1 SJ300会話2 SJ300読解 SJ300聴解 SJ300文法・談話 SJ301会話 SJ301読解 SJ301聴解 SJ301作文Ⅰ SJ301作文 II ビジネス日本語1 ビジネス日本語2 A* 0 0 1 0 0 2 0 1 1 0 1 3 5 1 3 2 2 4 5 4 4 4 3 0 7 7 60 A 0 0 0 1 3 0 1 0 0 0 3 2 2 4 4 2 2 3 2 3 3 3 4 4 3 6 55 B 0 0 2 1 0 1 1 0 0 1 1 2 0 2 0 4 4 0 0 1 0 0 0 0 0 2 22 -57- C 0 1 0 1 1 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 0 0 0 7 F 0 0 2 2 1 2 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 1 11 Audit 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 4 1 9 登録者合計 0 1 5 5 5 5 2 2 2 2 5 7 7 7 7 8 8 8 8 8 7 7 9 4 10 16 155 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 表6 秋学期標準日本語コースの登録・成績状況 秋学期 SJ101 SJ102 SJ200会話1&2 SJ200読解 SJ200聴解 SJ200文法・談話 SJ201会話1&2 SJ201読解 SJ201聴解 SJ201文法・談話 SJ202会話1&2 SJ202読解 SJ202聴解 SJ202文法・談話 SJ300会話1 SJ300会話2 SJ300読解 SJ300聴解 SJ300文法・談話 SJ301会話 SJ301読解 SJ301聴解 SJ301作文 I SJ301作文 II 漢字1000 漢字2000 ビジネス日本語1 ビジネス日本語2 ビジネス日本語3 A* 0 0 1 1 1 1 0 0 0 1 1 2 2 0 1 2 4 1 2 4 4 2 3 2 6 2 5 3 1 52 A 3 0 1 1 0 0 0 0 0 0 3 2 2 5 0 3 2 0 2 0 0 1 2 0 2 1 1 6 2 39 B 3 0 0 1 2 2 0 0 0 0 0 1 1 0 0 1 0 0 1 0 0 0 0 1 1 0 0 0 1 15 C 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 F 0 1 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 6 Audit 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 登録者合計 7 1 3 4 3 3 0 0 0 1 4 5 5 5 2 6 6 1 5 4 4 3 5 4 10 3 6 9 4 113 B 1 0 1 0 0 0 2 0 3 2 4 13 C 0 0 0 1 1 1 1 0 2 4 0 10 F 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 Audit 2 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3 登録者合計 5 1 3 3 3 3 8 5 8 8 8 55 B 0 1 1 2 1 1 3 0 2 5 4 20 C 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 1 F 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 Audit 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 登録者合計 11 9 5 4 5 5 12 12 11 10 12 96 表7 春学期集中日本語コースの登録・成績状況 春学期 IJ111 IJ112 IJ211会話1&2 IJ211読解 IJ211聴解 IJ211文法・談話 IJ212会話1 IJ212会話2 IJ212読解 IJ212聴解 IJ212文法・談話 A* 1 0 2 2 1 2 2 0 1 0 1 12 A 3 0 0 0 1 0 3 5 2 2 3 19 表8 秋学期集中日本語コースの登録・成績状況 秋学期 IJ111 IJ112 IJ211会話1&2 IJ211読解 IJ211聴解 IJ211文法・談話 IJ212会話1 IJ212会話2 IJ212読解 IJ212聴解 IJ212文法・談話 A* 3 1 1 1 2 1 1 1 3 3 2 19 A 8 7 3 1 2 3 8 11 5 2 6 56 -58- 日本語・日本文化教育部門 たものである。登録者数は春学期には短期留学生の 82% に相当する77名中63名が,秋学期においては96% 5.今後の課題 に相当する73名中70名が登録をしている。春学期に比 春学期の延べ受講者数は2009年度が167名だったの べて秋学期の登録者数の割合が非常に高い要因とし に対して2010年度は210名であり,秋学期の延べ受講 て,中上級を対象とした単位認定科目の増加があると 者数は2009年度が183名であったのに対して,2010年 考えられる。 度は209名と増加している。2009年度の短期留学整数 次に成績状況を報告する。春学期の標準日本語コー は春学期には65名,秋学期には76名と2010年度と比べ スでは,延べ受講者数155名中,A* または A が115名 てほぼ横ばいで推移しているにも関わらず,このよう (74%),B が22名(14%),C が7名(5%)であった。 に受講者数が増加している要因は単に単位認定科目が 集中日本語コースでは,延べ受講者数55名中,A* また 追加されただけではなく,短期留学生の留学の大きな は A が31名(56%),B が13名(24%),C が10名(18%) 目的として日本語が意識されていることもあると考え であり,若干の低下傾向が見られる。秋学期の標準日 る。2011年度から始まるグローバル30により,今後さ 本語コースでは,延べ受講者数113名中,A* または A らに留学生数が増加することも予想される。それに対 が91名(80%),B が15名(13%),C が1名(1% 未満) 応するための内容的改善,及び体制的な整備を継続的 であった。集中日本語コースでは,延べ受講者数96名 に行う必要がある。 中,A* または A が75名(78%),B が20名(21%),C が1名(1%)であった。 -59- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 第11期 日韓理工系学部予備教育コース 村 第11期日韓理工系学部予備教育コースは,平成22年 10月8日から23年3月2日までの6か月(実質18週) 上 京 子 時間割 間,7名の学生を対象に開講された。このコースは, 工学部入学後の勉学や生活に支障のないよう,日本語 月 運用および専門基礎能力を養成することを目的に行わ 担当 1限 2限 3限 4限 8:45-10:15 10:30-12:00 13:00-14:30 14:45-16:15 教養科目 作文 専門科目 会話・練習 (留学生と日本) 村上 服部 れる。日本語に関しては,日常生活に必要な会話練習 火 聴解 のほか,科学読み物を読む,レポートを書く,講義形 担当 許 式のまとまりのある話を聴く等の練習を行う。また, 水 聴解 全学教養科目「留学生と日本―異文化をとおしての日 担当 服部 本理解―」や「日本事情」の授業を通じて日本文化に 木 文法 対する理解を深めることも目標とする。専門基礎教育 に関しては,工学部教員を中心に物理・化学・数学に 関して授業が行われた。 読解 専門科目 許 NUPACE/ 会話 ・ 練習 OL語彙・読解 留セ 田中 聴解 専門科目 応用会話 田中 会話 ・ 練習 担当 李 澤熊 国澤 金 漢字・語彙 日本事情 OL 作文 李 賢珠 OL 聴解 担当 全 全 留セ 留セ 基本テキスト 日 程 会話: 「現代日本語コース中級Ⅰ , Ⅱ」 10月8日㈮ 開講式・日本語診断試験 名古屋大学出版会 10月12日㈫ 日本語オリエンテーション 聴解: 「現代日本語コース中級 Web 聴解Ⅰ,Ⅱ」 10月13日㈬ 授業開始 CD.Web 版 10月27日㈬ バス旅行 読解: 「大学・大学院 留学生の日本語 読解編」 12月23日㈭~1月10日㈪ 冬休み期間 アルク 2月1日㈫ 工学部入試のため休講 作文: 「留学生のための理論的な文章の書き方」 2月22日㈫ レポート発表会 スリーエーネットワーク 2月23日㈬ 修了試験 漢字: 「KANJI IN CONTEXT 中・上級学習者のた 2月28日㈪ バス旅行 めの漢字と語彙」The Japan Times 3月2日㈬ 閉講式 本コース学生受け入れに関して6月29日に,工学 部・留学生センター・国際課(事務)の3者によるワー 科目別時間および担当者・内容 科目 コマ数 時間 日本語 13 専門科目 3 日本事情 1 全学教養 科目 1 担当 留学生センター教員・ 420 謝金講師5名 工学部教員・ 108 謝金講師3名 留学生センター教員・ 36 謝金講師1名 30 留学生センター教員 キンググループを立ち上げ,協議を行った。時間割の 内容 会話練習・聴解・ 文法・読解・作文 調整,開講期間など取り決め,緊密に連絡を取りなが 物理・化学・数学 来日直後,毎年実施している診断テストを行った。 ビデオ・新聞等を 使った日本事情 日本人学生との 合同クラス 7名の成績はある程度ばらつきはあるもののこれま らコースを進めていくことになった。 で受け入れてきた学習者の範囲に収まることから,予 定通りのカリキュラムで実施していくことにした。1 教室:工学部5号館2階 229号室 名病気で休みがちな学生がおり,やや習得の遅れが見 られたが,病院医師との協議で帰国させずに治療をし -60- 日本語・日本文化教育部門 ながら通学させることにした。 見が出され,各自真剣に答えていた。この経験は学習 例年と同様,各自が選んだテーマで資料を収集し, 者にとって今後の勉学に取り組む上での自信にもつ レポートを作成した。2月22日に工学部教員も招い ながり,貴重な体験となったと考えられる。 て,その発表会を実施した。レポートのテーマは, 「地 修了試験の結果,病気で欠席の目立った学生を除い 下鉄の自動改札システム」 「幹細胞の理解」 「無線充電 ては十分な成績を治め,来日時と比較して大きく向上 システム」「超ひも理論」「LED について」「ゲーム産 していた。遅れが目立つ1名については,特に漢字・ 業」 「医療用ロボット」であった。発表後,工学部教員 語彙に問題が見られたため,学部入学後も引き続き指 や日本語担当教員,先輩学生などから多くの質問・意 導していくことにした。 -61- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 [日本語・日本文化教育部門資料]平成22年度・各コースの担当者 1.日本語研修 コース 〈4月期:第62期〉 3.教養科目「留学生と日本 -異文化を通しての日本理解」 〈後期〉 李 澤 熊 鹿 島 央 浮 親 浮 葉 正 親 佐 藤 弘 毅 松 浦 まち子 石 崎 俊 子 魚 住 友 子 田 中 京 子 鹿 島 央 大 羽 かおり 坂 野 尚 美 籾 山 洋 介 佐 藤 弘 毅 川 隆 生 葉 正 須 沢 千恵子 高 橋 伸 子 4.全学向け日本語コース 衣 坪 田 雅 子 〈前期〉 初 服 部 淳 李 澤 熊 徳 弘 康 代 安 井 澄 江 浮 葉 正 親 秋 山 豊 松 木 玲 子 石 崎 俊 子 石 川 公 子 久 野 伊津子 村 上 京 子 久 野 伊津子 鹿 島 央 佐々木 八寿子 籾 山 洋 介 宗 林 由 佳 〈10月期:第63期〉 鹿 野 阿 れ 鹿 島 央 佐 藤 弘 毅 高 橋 伸 子 佐 藤 弘 毅 衣 川 隆 生 高 安 葉 子 魚 住 友 子 初鹿野 阿 れ 嶽 逸 子 大 羽 かおり 徳 弘 康 代 椿 由 起 子 須 沢 千恵子 秋 山 豊 坪 田 雅 子 高 橋 伸 子 石 川 公 子 西 田 瑞 生 坪 田 雅 子 久 野 伊津子 安 井 澄 江 服 部 淳 佐々木 八寿子 魚 住 友 子 安 井 澄 江 宗 林 由 佳 大 羽 かおり 松 木 玲 子 高 橋 伸 子 須 沢 千恵子 久 野 伊津子 高 安 葉 子 服 部 淳 嶽 逸 子 松 木 玲 子 2.日本語・日本文化研修コース 椿 由 起 子 松 岡 みゆき 〈2009年10月~2010年9月: 坪 田 雅 子 加 第29期〉 西 田 瑞 生 介 安 井 澄 江 佐々木 八寿子 魚 住 友 子 中 川 康 子 大 羽 かおり 西 田 瑞 生 須 沢 千恵子 向 井 淑 子 服 部 淳 松 岡 みゆき 松 木 玲 子 籾 山 洋 松 岡 みゆき 加 藤 惠 -62- 梨 藤 惠 梨 日本語・日本文化教育部門 5.学部留学生を対象とする言語 文化科目〈日本語〉 〈前期〉 浮 葉 正 親 村 上 京 子 秋 山 豊 魚 住 友 子 鷲 見 幸 美 西 田 瑞 生 浮 葉 正 親 村 上 京 子 秋 山 豊 魚 住 友 子 鷲 見 幸 美 西 田 瑞 生 〈後期〉 6.日韓理工系学部留学生日本語 プログラム 〈2010年10月~2011年3月〉 村 上 京 子 李 澤 熊 石 崎 俊 子 全 鐘 美 許 永 蘭 田 中 典 子 國 澤 里 美 李 賢 珠 -63- 日本語教育メディア・システム開発部門 ◦日本語教育メディア・システム開発部門報告 …………………………………………… 村上 京子・石崎 俊子・佐藤 弘毅 66 ◦大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業 G30国際プログラムにおける日本語科目 2010年度報告… ………………………………………… 初鹿野阿れ・徳弘 康代 71 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 日本語教育メディア ・ システム開発部門報告 村 上 京 子 ・ 石 崎 俊 子 ・ 佐 藤 弘 毅 日本語教育メディア・システム開発部門(JEMS)で ドを配布する際に,説明も加える計画をしている。 は,2010年度に以下の活動を行った。 2.文法コースの構築 1.オンライン日本語コースの改訂と運営 2.文法コースの構築 http://jems.ecis.nagoya-u.ac.jp/moodle/ 3.WebCMJ の改訂と運営 4肢選択問題形式の文法問題を作成し,オンライン 4.委託事業報告 コースに加えた。今後問題項目を増やし,学習者のレ (とよた日本語学習支援システム構築) ベル判定および文法自習教材として活用できるように していきたい。 1.オンライン日本語コースの改訂と運営 1)オンライン読解・作文コース http://jems.ecis.nagoya-u.ac.jp/moodle/ 前期 登録者数:17名,受講者数:10名, 修了者数:3名 後期 登録者数:30名,受講者数:15名, 修了者数:8名 終了時のアンケート結果では,「アクセス方法」「入 力のしかた」「読解の問題」等に関しては「問題なし」 を全員答えているが,「作文」に関しては,テーマを もっと具体的にしてほしい等意見が多数見られた。成 績表示に関して,ほとんど全員が「いつも見た」と答 え,表示方法に問題はないと答えている。評価基準に 関してより詳しく教えてもらいたいという意見が1件 3.WebCMJ の改訂と運営 書き込まれていた。作文問題の提示方法と成績表示に WebCMJ は,名古屋大学日本語教育研究グループに より詳しい説明を加える改善が必要だと考えられる。 よる初級日本語教科書 『A Course in Modern Japanese (改訂版)Vol.1 & 2』(名古屋大学出版会 , 2002)に基 2)オンライン漢字コース づいて開発された,Web 上で日本語初級レベルの文法 http://jems.ecis.nagoya-u.ac.jp/moodle/ 事項および日本語初級で扱われる漢字300字の読みが 例年通りのコース運営を行った。 反復練習できるコンピュータ教材である。1998年に初 前期 登録者数:20名,受講者数:5名, 版が開発され,2002年の教科書の改訂に併せて問題 ・ 修了者数:1名 形式・デザイン等が全面見直され,現在に至っている。 後期 登録者数:19名,受講者数:8名, ・WebCMJ 文法版 修了者数:1名 http://opal.ecis.nagoya-u.ac.jp/webcmjg/ 学習した漢字を使って文を作るという練習問題を追 ・WebCMJ 漢字版 加したが,その練習問題をする学生が少ない。やり方 http://opal.ecis.nagoya-u.ac.jp/webcmjk/ がわからないという可能性があるので,ID とパスワー WebCMJ を使用するための説明の文章や問題指示 -66- 日本語教育メディア・システム開発部門 文は,日本語学習者の世界分布や英語を苦手とする学 ジの閲覧件数,PV)は文法版が11,594件,漢字版が 習者の利便性を考慮して,文法版は英語版,韓国語, 3,438件であった。また,アクセス元の IP アドレスお 中国語(簡体字),中国語(繁体字),タイ語,スペイ よびドメイン名の分析より,学外の日本国内はもとよ ン語,インドネシア語,ポルトガル語,ベトナム語, り海外からのアクセスも多数見られ,国内外の日本語 ロシア語,タガログ語,フランス語,クメール語,ド 学習者に広く活用されていることがわかった。 イツ語,日本語(説明のみ)の15言語,漢字版は英語 版,インドネシア語,ポルトガル語,ベトナム語,ロ シア語,タガログ語,フランス語,クメール語,ドイ 4.委託事業報告 (とよた日本語学習支援システム… 構築・TNe とよた日本語 e ラーニング) ツ語,日本語(説明のみ)の10言語による WebCMJ 多 言語版の開発が2004年度から2009年度にかけて行なわ http://www.toyota-j.com/e-learning/ れた。 2008年4月に始まった「とよた日本語学習支援シス 今年度は,文法版に合わせる形で,漢字版に新たに テム」の「TNe とよた日本語 e ラーニング」の開発を 韓国語,中国語(簡体字),中国語(繁体字),タイ語, 引き続き行っている。会話教材は,市役所,病院,学 スペイン語の5言語を開発した。それぞれを母語とす 校のポルトガル語版が昨年度完成し,今年は主に多国 る留学生に,WebCMJ を使用するための説明の文章や 語版の開発を行い,文字教材に於いてもひらがな,カ 問題指示文の翻訳を依頼し,訳された文章を Web 上 タカナ,履歴書の多言語版の開発を行った。 に掲載した。 全体的なトップページ,会話,文字教材に様々な改 ・韓国語版 h ttp://opal.ecis.nagoya-u. 良を加えた。会話,文字教材に関しては詳細を1)と ac.jp/webcmjk/index.ko.html 2)で述べる。 ・中国語(簡体字)版 h ttp://opal.ecis.nagoya-u. 全体に関わる改良としては「トップページの改良」 ac.jp/webcmjk/index.cn.html が挙げられる。 多言語化に則し,各言語の各セクショ ・中国語(繁体字)版 h ttp://opal.ecis.nagoya-u. ンにすぐにアクセスできるようにトップージの改良を ・タイ語版 ac.jp/webcmjk/index.zh.html 行った。このページからは会話,ひらがな,カタカ h ttp://opal.ecis.nagoya-u. ナ,履歴書の5言語のうちの1つを選択することがで ac.jp/webcmjk/index.th.html きる。 ・スペイン語版http://opal.ecis.nagoya-u. ac.jp/webcmjk/index.es.html WebCMJ は,クラス単位で教師が学習者の成績を 管理できる機能も組み込まれているため,授業での運 用も可能となる。昨年度に引き続き今年度も,留学生 センターで開講している初級日本語研修コース(EJ), 全学日本語プログラムの初級コース(SJ101,SJ102, IJ111,IJ112)の各授業において WebCMJ を利用し てもらうため,受講者の ID とパスワードを発行した。 また,教師にその利用方法を案内した。各授業では, WebCMJ の該当する課を宿題として課し,復習用の教 材として活用された。EJ では,WebCMJ による演習 の時間や補習の時間が設けられた。SJ および IJ でも, WebCMJ の利用方法説明のための時間が設けられた。 各授業には,必要に応じて,JEMS の教員が補助要員 として参加した。 アクセスログの分析より,2010年度1年間の総アク セス数(検索エンジンのロボット等を除くトップペー -67- トップページ 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 1)会話教材 〈2010年度の進歩状況〉 ⑴ 学校のページの完成 ・保護者が電話で休みと学校に伝える ・学校から子供が怪我をしたと連絡が来る ・授業の有無と下校時刻を問い合わせる ・忘れ物を問い合わせる 上記の4場面の電話会話の中で下記の5つの タスクを練習する。 ・電話をかけて名乗る ・電話を受ける・切る ・欠席すると伝える ・お願いする 学校のトップページ ・電話をかけて用件を言う ⑵ 会話の各言語のトップページの追加 もに,各編のスクリプトと単語表を word と pdf でダ 5言語のトップページを作成し,市役所,病院,学 ウンロードできるようにした。言語の違いがひと目で 校編にワンクリックでアクセスできるようにするとと わかるよう,バナーの色を変えて作成した。 ポルトガル語 トップページ ポルトガル語スクリプト 中国語 トップページ 中国語単語リスト -68- 日本語教育メディア・システム開発部門 ⑶ 病院と学校編の多言語版完成 国語,英語,日本語)に続き,病院編と学校編の多言 市役所の5言語版(ポルトガル語,スペイン語,中 語版を完成させた。 スペイン語 英語 〈今後の予定〉 日本語 かた」,発音がきける「はつおん」,語彙の例が見られ ・市役所,病院,学校の5カ国語版は完成したが,誤 る「ことば」,練習および確認テストができるドリル型 字脱字,ビデオや音の不具合などをチェックし,修 CAI「れんしゅう」の各メニューが用意されている。 正を行う必要がある。 昨年度まではポルトガル語による教材を開発してき たが,今年度は新たに中国語,スペイン語,英語,日本 2)文字教材 語(説明のみ)による多言語版を開発した。発音表記 文字教材には,ひらがな,カタカナ,履歴書の3種 も各言語に合わせたものになっている(英語および日 類がある。 本語版はローマ字のみ)。語彙および練習問題につい ひらがな・カタカナ教材では,まずひらがな・カタ ては,一部まだ多言語化されていないものがある。今 カナそれぞれについて外国語での発音表記が付いた50 後はこれらの多言語化を進めると共に,多様な学習者 音表が見られる。また,各かなについて,書き順がア に対応できるようさらに充実させていく予定である。 ニメーションで見られる外部サイトへのリンク「かき ひらがな50音表の画面例 (50音表中のかなにマウスカーソルを載せると,各種学習メニューが表示される) ポルトガル語版 スペイン語版 英語版 日本語版 -69- 中国語版 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 ひらがな語彙の画面例 ポルトガル語版 スペイン語版 英語版 日本語版 中国語版 履歴書教材では,一般的に使用されている日本語の こちらも昨年度まではポルトガル語による教材を開 履歴書フォームが表示され,フォーム中に出てくる語 発してきたが,今年度は新たに中国語,スペイン語, 彙の外国語訳,漢字,ローマ字,読みがなが見られる。 英語,日本語(説明のみ)による多言語版を開発した。 また,その言葉の発音を聞くことができる。 履歴書教材の画面例 (履歴書中の語彙にマウスカーソルを載せると,外国語訳等が表示される) ポルトガル語版 スペイン語版 英語版 日本語版 -70- 中国語版 日本語教育メディア・システム開発部門 大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業 G30国際プログラムにおける日本語科目 2010年度報告 国際交流協力推進本部 初鹿野阿れ・徳弘康代 平成23年度(2011年度)秋学期より G30国際プログ 日本語セミナー1(3単位) ラムが以下の5つの学部で始まる。 【後期(春学期)】 ・自動車工学プログラム(工学部) 総合日本語2 (3単位) ・物理系プログラム(理学部,工学部) 日本語セミナー2 (3単位) ・化学系プログラム(理学部,工学部) クラスは,プレイスメント・テストにより決定する。 ・生物系プログラム(理学部,農学部) 中上級以上の学生は,言語文化科目Ⅱの日本語や,2 ・国際社会科学プログラム(法学部,経済学部) 年次以降に開講されるアカデミック日本語(文章理解・ 本年度の主な活動は,本プログラムにおいて開講予 文章表現),アカデミック日本語(聴解・口頭表現), 定の日本語科目の整備(履修規則およびシラバスの作 ビジネス日本語等を履修し,必修単位とする。 成)である。また,昨年度作成した『留学生のための 専門講義の日本語』について海外の学会にて発表を行 その他の日本語科目 うなど本プログラムの広報活動に努めた。 必修日本語科目以外に以下の科目が開講される。 アカデミック日本語(文章理解・文章表現) 1.国際プログラム(学部)における日本語科目 アカデミック日本語(聴解・口頭表現) ビジネス日本語 本年度は,設置する日本語科目とその内容,および これらは,レベルに応じて1~4まで開講する予定 履修規則について検討した。現時点での決定事項は以 である。学生は必修日本語科目以外に自分の興味と目 下の通りであるが,これらは今後変更される可能性も 的に応じて科目を選択し,履修することができる。ま ある。 た,上記で述べた通り,中上級日本語レベルと判断さ れた学生は,これら3つの科目を必修科目として履修 単位認定について することができる。 本プログラムでは,日本語12単位が外国語科目とし ただし,帰国子女等日本語が母語または母語に近い て必修となっている。しかし,日本語既習者等,日本 レベルの学生の外国語科目については日本語能力試験 語能力が高い学生は日本語能力試験の結果により単位 による単位認定,第三外国語を履修する等検討中であ 認定を行う。N3合格者は3単位,N2・N1合格者は6 る。 単位である。残りの単位は日本語または他の外国語で 履修する。 2.『留学生のための専門講義の日本語』 必修日本語科目 作成教材の配布 1年次で履修しなければならない日本語科目は以下 昨年度作成した『留学生のための専門講義の日本語』 である。 は,名古屋大学の留学生が自由に使用できるよう,中 【前期(秋学期)】 央図書館,および各学部の図書館に寄贈した。また, 総合日本語1(3単位) G30国際化拠点整備事業(大学の国際化のためのネッ -71- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 トワーク形成推進事業)に採択された名古屋大学以外 てもらうためには,本教材をオンライン化することが の12大学と,理系留学生が多くいる大学を中心に国内 有効であろう。現在留学生センター,日本語メディア 外の留学生教育関係者に送付した。いくつかの教育機 開発部門と協力し,準備を進めている。最終的には学 関からは,参考にし,使用してみるとの連絡をいただ 外,国外からもアクセスして利用できるようなオンラ いた。教材について気づいた点のフィードバックな イン教材を開発していきたい。 ど,今後の情報交換を続けていく予定である。 3.その他の活動 学会発表 2010年8月25日から27日までルーマニア,ブカレス G30日本語教育情報交換ネットワーク ト大学で開催された第15回 AJE 日本語教育シンポジ 2009年に G30国際拠点化事業に採択された13大学 ウムにおいて「大学の専門講義を受ける準備のための における日本語プログラムの充実を目指し,東京大 日本語教材の開発」という題で発表を行った。発表に 学 G30日本語教育担当者を中心にネットワーク作りを おいては,本教材を開発した背景,意義を紹介すると 行った。各大学により日本語教育事情は異なるが,お ともに,名古屋大学,国際プログラムの広報活動も 互いに情報を共有し,今後に向けて連携したいと考え 行った。発表を聞いた方々には本教材に非常に興味を ている。 もっていただき,好評を得た。また,国際プログラム についても海外の大学関係者から質問を受け,情報提 入学予定者向け日本語学習歴調査書の作成 供を依頼された。 来年度入学予定者の日本語科目を設置する上で,学 習者の実際の日本語能力を事前に把握することが重要 であると考え,日本語学習歴調査書を作成している。 完成したものを英訳し,入学予定者に事前に送付し, 回答してもらう予定である。 4.今後の予定 10月より始まる本プログラムに向けて,オリエン テーション,プレイスメントテスト,時間割,シラバ スの作成などの準備を進めていく。また,国際プログ ラム広報活動の一環として,以下の学会で発表予定で ある。 2011年4月2日に,ハワイ大学で開催される ATJ 2011 Annual Conference,Japanese for Speficic Purposes(JSP)SIG Panel「専門日本語教育から新し い日本語教育カリキュラムの可能性を考える」におい て, 「専門講義受講準備のための日本語教材の開発」と いう題で発表を行う。 オンライン教材化に向けて また,8月に天津で行われる2011世界日本語教育研 本教材が効果的に使用される一つの形態は自習であ 究大会にも「大学の専門講義を受けるための DVD 日 ると考えられる。DVD を視聴しながら,自分の興味 本語教材の開発とその web 化」という題で発表する予 に合ったテーマを自分のペースで学習していくことが 定である。これらの発表を通して,教材を改訂し,よ 望ましい。来年度国際プログラムへの入学者には本教 りよい教材としていくと同時に,国際プログラムの広 材を貸与し,試用してもらう予定である。しかし,教 報,および他大学日本語教育機関の同種プログラム担 材は数に限りがあり,今後より多くの学習者に活用し 当者との情報交換を行っていきたい。 -72- 教育交流部門・留学生相談室 ◦名古屋大学留学生相談室報告~留学生のための支援活動~……… 松浦まち子 74 ◦学生支援活動の体系化と展開~留学生センター相談室活動報告 ………………………………………………………… 田中 京子・柴垣 史 81 ◦海外留学室……………………………………………… 岩城 奈巳・熊坂佳代子 89 ◦異文化交流実践を授業へフィードバック…………… 浮葉 正親・田中 京子 108 Ⅰ.基礎セミナーA(前期)「 英語で学ぶ日本文化 」(田中京子)〈新規開講〉 Ⅱ.基礎セミナーA(前期)「 韓流ドラマから『パッチギ』まで ー日韓比較文化論のすすめ 」(浮葉正親)〈新規開講〉 Ⅲ.教養科目「留学生と日本-異文化を通しての日本理解-」(代表:浮葉正親) Ⅳ.大学院授業「異文化コミュニケーション論 a/b」:国際言語文化研究科 多元文化専攻メディアプロフェッショナルコース(担当:田中京子) ◦~名古屋大学留学生相談室(740号室)活動報告~………………… 髙木ひとみ… 112 国際化拠点整備事業(グローバル30) ◦名古屋大学留学生相談室 メンタルヘルス担当教員の活動報告… 坂野 尚美… 115 (資料)平成22(2010)年度 地域社会と留学生との交流 (教育交流部門による地域の連携・貢献活動)…………………………………… 118 留学生の宿舎状況…………………………………………………………………… 119 奨学金採択一覧表(平成21年9月~平成22年8月) … ………………………… 120 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 名古屋大学留学生相談室報告~留学生のための支援活動~ 松 浦 ま ち 子 び派遣留学生への適切かつ良質な支援をトータルに行 はじめに う部門として期待されている。 2010年度は,名古屋大学留学生相談室が学生相談総 また,留学生相談室専任教員の任期が平成23年3月 合センターの留学生相談部門として統合され2年目を で切れることから,総長管理定員に申請し平成23年4 迎えたが,国際化拠点事業(G30)の影響で,依然と 月から平成28年3月までの5年任期が許可された。 して名古屋大学組織図には「学生相談総合センター」 「留学生センター」「留学生相談室」がそれぞれ独立し 全体的傾向 た組織として記載されていた。11月末,総合企画室か ら組織が重複しているように見える現状を改善し,学 一般的な相談の中では,現在窓口を務めている留学 内外によりわかりやすい組織にするための企画が提案 生の就職に関わる相談が圧倒的に多くなっている。留 された。2011年秋に開始される G30英語コースをはじ 学生からの相談だけでなく,企業からの求人・採用相 め,今後さらに増加が予測される留学生のため,留学 談や会社説明会の開催,さらに留学生の就職支援事業 生の支援体制の強化と窓口の一元化の必要性から,留 に取り組む愛知県等行政関係者からの相談もある。ま 学生相談室はキーワード「相談」で括る学生相談総合セ た,名古屋大学留学生相談室主催による留学生への ンターの一部門としての立場を廃止し, 「国際」のキー キャリア教育支援「就職活動支援コース」や「日本組 ワードにより,元々協力関係の強い留学生センター教 織なじみ塾」においても,企画,実施,報告において 育交流部門と統合し,2011年4月1日付で留学生セン 多くの時間を費やした。しかしながら,その成果が留 ターの新たな部門として再出発することになった。新 学生の就職内定取得や助成金への再採用という形で評 部門名は,名古屋大学留学生センター「アドバイジン 価されていることをうれしく思う。 グ・カウンセリング部門」であり,受け入れ留学生及 平成22年度 留学生に係る相談内容と相談件数 相談内容 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 計 指導教員・進路 3 2 2 - - - - 2 1 - 1 1 12 日本語・勉学 - - 1 1 1 - 1 1 1 - 1 - 7 入国・在留関係 - 1 2 - - - - - - - - - 3 宿舎 9 10 7 8 12 12 7 3 15 10 8 21 122 奨学金・授業料 - - 4 3 - - 3 1 - 2 2 1 16 医療・健康 1 - - 2 - - - - - - - - 3 生活・適応 2 1 - 2 5 1 3 1 - 1 - - 16 就職・インターンシップ 11 17 21 24 11 17 27 17 22 13 18 18 216 家族 2 1 2 4 - 1 1 6 3 - 2 3 25 地域交流 4 11 8 5 4 3 8 - 3 5 2 - 53 人間関係 - - 1 - - - - 1 - - - - 2 NUFSA・留学生会 29 9 7 14 5 16 23 18 15 7 2 12 157 その他 14 8 12 9 8 22 11 18 34 18 11 25 190 75 60 67 72 46 72 84 68 94 56 47 81 822 計 -74- 教育交流部門・留学生相談室 なっているが,2010年度も大学から推薦するため,入 日本語・勉学 居希望者の面接を実施した。比較的大勢が入居できる 留学生のチューター制度におけるチューター謝金に 4月入居の NGK インターナショナルハウスや服部留 関して税務調査があり,長年,所得税を支払っていな 学生会館の面接には,推薦枠の2~4倍の応募者があ いことから,報酬か給与かとの議論が行われた。その り面接は一日仕事であった。 結果,チューター謝金は給与として源泉所得税を徴収 することとなった。チューター制度に関しては,これ 3.民間宿舎の提供 まで留学生への学習支援,及びチューター学生の国際 ⑴ プリマベーラ前山は,株式会社浜島書店社長のご 理解力向上・異文化への関心の拡大といった教育的効 厚意により,名古屋大学留学生のために大学の近く 果に焦点を当てて認識していたため,所得税という視 (昭和区前山町)に土地を購入して建てていただいた二 点で考えたことがなく,教育と謝金のあり方を再考す 階建てのアパートである。1996年4月以来13室のこの る機会となった。 アパートには,多くの留学生がお世話になってきてい る。留学生相談室はその空室情報提供や入居希望留学 生に対して入居手続き補助を行っている。 宿舎 1.国際交流会館 ⑵ 個人の自宅の提供がいくつかあり,大学の連帯保 ⑴ 国際交流会館付き留学生相談主事の立場で留学生 証事業を説明した上で,留学生を紹介した。 の宿舎に関わって,国際交流会館チューターの選考や ① 自宅を二世帯住宅に改築して,一方を留学生夫婦 社員寮入居希望者の面接選考(NGK インターナショナ に提供したいとの話があり,留学生夫婦を紹介し ルハウス,トヨタ社員寮,服部留学生会館,山田商会 た。下見をしたが,家具や電化製品が備わっており, 等)に関わった。チューター選考においては,教育面 留学生のための配慮が行き届いていた。留学生夫婦 を考慮して,海外滞在経験のある学生だけでなく,こ との相互理解の促進を期待している。 れまで国際交流経験がほとんどない学生にも,この機 ② 使用していない店舗兼自宅の留学生への提供があ 会を提供している。社員寮面接では,各社の条件や希 望を考慮して選考を行った。 り,希望する留学生家族を紹介し双方から喜ばれた。 ③ 大学に近い一軒家をシェアハウスとして留学生数 名に提供したいとの話があり,留学生に情報提供し ⑵ インターナショナルレジデンス山手 たところ,すぐに入居者が決まったようである。 (単身用106室):2010年4月1日入居開始 真新しい建物は清潔で美しかったが,反面温かみに 欠けたよそよそしい雰囲気も感じられた。6月,担当 留学生の就職支援 職員と留学生有志による花計画が提案されたが予算が 2008年秋以降,少し低迷気味であった日本企業の留 なかった。そのため,留学生のバザーでお世話になっ 学生採用が再び話題性を持って活気づいてきた印象を ている近藤産興株式会社からイタリア製のプランター 持った。6月,文部科学省主催「全国就職ガイダンス」 9個を寄贈いただき,関係の農家より沃土を提供して では,外国人留学生の就職支援のセッションが新規開 いただき,さらに園芸趣味の職員から花の苗をいただ 設され,名古屋大学から筆者はパネリストとして参加 くというさまざまな形でのご好意がこの計画を実現さ した。さらに,翌年2月国立大学法人留学生指導研究 せた。このことは,一人の力ではできないことでも, 協議会でも「留学生の就職支援」がテーマとして取り それぞれが持てる力を発揮することで可能にしたよい 上げられ,パネリストとして名古屋大学の取り組みを 例であった。また,異国に暮らす留学生の心のケアに 紹介する機会を得た。12月の学内就職担当者連絡会に も良い影響があったと考えている。 おいては,企業のゲストスピーカーよりグローバル採 用の潮流について,及び企業における育てる力の低下 2.社員寮の提供 について興味深い講演があった。また,愛知県から留 地域の企業社員寮には,多くの留学生がお世話に 学生の就職支援企画に関する相談があった。一方で, -75- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 卒業生や日本人学生から就職先に提出する「推薦書」 依頼や面接について個別の相談に対応した。 1.日本組織なじみ塾 中島記念国際交流財団の留学生地域交流事業助成金 に申請し採択されて実現した留学生のキャリア教育事 業である。7月初旬にキックオフ合宿を行い,翌年1 月に成果発表会を行って高い評価を得た。これについ ては,本紀要の年報「事業報告」で詳しく報告してい るためここでは省略するが,2011年度においても,同 財団の助成金に採択されたので,「日本組織なじみ塾」 第2弾をより改善した形で実施予定である。 2.就職活動支援コース 就職活動支援コースでは,毎年改善を加えている が,3年目にあたる2010年度は初めてキックオフ合宿 を取り入れた(10月,郡上市,留学生支援事業経費)。 登録者44名のうち,合宿には25名(+ 他大学2名,3 か国)の留学生が参加した。合宿の目的は,これから の長く厳しい就活でドロップアウトしないよう,相互 に励ましあい情報交換できる仲間意識,連帯感の強化 であった。合宿の効果は,その後12月まで7回開催さ 3.企業からの留学生採用相談と会社説明会の開催 れた学内での講座への好出席率として表れた。1月に 2008年秋以降,説明会開催を希望する企業数が激減 なって,参加留学生の一人から,コース参加者有志に したが,2010年度はやや上向きになってきた。6月河 よる自主勉強会を開催していることを聞いた。この留 村電器産業株式会社を皮切りに,1月ソニー株式会 学生が「毎週曜日を決めて夜,図書館で勉強会をして 社,さらに2月コニカミノルタホールディングズ株式 います。今の問題は,日本人学生がいないことです。」 会社の会社説明会を開催した。会社説明会がきっかけ と話した。2011年春,この中の数人から内定獲得報告 となって内定を取得した留学生もいた。一方で,留学 があり,その成果をうれしく思った。さらに,コース 生採用・求人相談は多く,次の表は,留学生に特化し の番外編として,女子学生を対象としてメナード化粧 た就職求人を扱う名古屋大学留学生相談室が直接対応 品会社の協力による「メイクアップ講座」開催や,大 した企業等である。採用・求人相談だけでなく,留学 和ハウス株式会社の協力で工事現場視察や住宅展示場 生の就職支援を事業とする会社も含まれている。企業 訪問が実現し,多くの留学生が参加した。 名は,情報保護の観点から社名を伏せて表記した。 企業名(★会社説明会開催) 1 HAND 社 コンタクト時期等 対象 3/23来訪,5/18 TEL バングラデシュ 備考 名工大,東北大に情報提供 2 KAWA 社★ 4/6来訪,6/18開催 中国及びアジア 15名参加,中国1名内定 3 SUOR 社 4/8,5/6,3/3来訪 中国 中国1名内定 4 INOA 社 4/14来訪 5 TOKA 社 4/12来訪 ベトナム,タイ 留学生の就職支援 6 BROT 社 4月 TEL 機械系,情報系 求人相談 学外会社説明会周知依頼 7 OHGA 社 4/6来訪 留学生全般 留学生の就職支援 8 SUKE 社 5/28 TEL 中国 中国1名内定 9 DISC 社 5/26来訪 留学生全般 留学生の就職支援 -76- 教育交流部門・留学生相談室 企業名(★会社説明会開催) コンタクト時期等 10 SASA 社 5/28 TEL,6/3来訪 中国 対象 11 SAKU 社 6/2 TEL,6/7来訪 タイ,中国 12 EMUT 社 6/9来訪 備考 留学生求人 中国 卒業留学生挨拶を兼ねて 留学生全般 留学生の就職支援 13 NIHO 社 14 AICH 社 15 MATS 社 16 ISHI 社 17 MAKI 社 8/19,2011年度開催 ベトナム,他 内定1名 18 TOHA 社 9/27 TEL,11/29来訪 中国,韓国,タイ 内定1名→取り消し 19 TOJI 社 7/26 TEL,7/27 TEL 求人票 8/5来訪 求人相談 留学生の就職事情 就職支援室と連携 9/7 20 SON 社★ 11/8,1/21開催 21 CHUO 社 11/16 22 TOTS 社 2/3 23 TOSH 社 2/10 24 SOSH 社 12/3 25 TOGO 社 12/6 TEL,3/3 26 KONI 社★ グローバル人材 42名参加(7カ国) カンボジア 留学生求人 中国 海外法人への採用 中国2名内定 ベトナム 留学生求人 中国,タイ,インド 技術系,今後具体化 2/16開催 12名参加(3カ国) 27 TSUR 社 1/13 中国 エコトピア研究所の紹介 28 TOTE 社 12/10 タイ,インド 日本生産性本部の紹介 29 TAKA 社 1/19 インド,タイ 30 YUTA 社 1/26,2/1 31 SHIN 社 2/23 グローバル人材 32 NORI 社 3/10 中国,ベトナム,タイ 33 NITT 社 3/29 中国 インドネシア,インド 愛知ブランド企業 肥料材料を中国から輸入 4.外国人留学生のためのインターンシップ ホームステイを実施し学内連携が高まっている。学生 愛知県では,留学生に対して夏のインターンシップ たちには好評だと聞いている。これらの経験を2011年 は愛知県主催,春のインターンシップは愛知労働局が 夏,米国ノースカロライナ州から名古屋大学及び附属 主催して毎年行われている。名古屋大学は留学生を多 高校を訪れる高校生の交流プログラムに活かす予定で く抱える大学として事前説明会の開催や参加者募集に ある。 関わり,各報告会等にも出席している。さらに労働局 の外国人留学生インターンシップ協議会の委員として ⑵ 名古屋商工会議所より,平成22年度留学生産業視 協力している。これらのインターンシップ事業につい 察会について相談があり年間5回開催した。参加留学 ては,学内のインターンシップ研究会で留学生のイン 生数は延べ116名であった。また,名古屋商工会議所 ターンシップとして報告している。 では,2005年以来,秋に NOGOYA UNDOUKAI を開 催しているが,名古屋大学も参加者募集に協力してい る。2010年度は地域の日本人(324名)と外国人(707 地域交流 名)が参加したと報告があった。 ⑴ 地球家族プログラム:2010年度の地球家族プログ ラムについては,本紀要の年報「事業報告」で詳しく ⑶ 中部国際空港㈱より夏休みの交流イベントの相談 報告しているのでここでは省略するが,地球家族プロ があり,2種類のイベントへの留学生参加(運営ス グラムが主催する通常のプログラムの他に,工学部の タッフ)募集,及び事前オリエンテーションに協力し 自動車工学のサマープログラムや教育学部の国際学生 た。いずれも日本の子どもたちに空港の仕事に興味を 交流セミナーで来日する学生たちを対象に,短期間の 持ってもらうことを目的としており,英語を使うこと 日本滞在中のイベントとして,日本の家庭を体験する を原則とした催しであった。留学生にとっては,楽し -77- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 みながらの良いアルバイトになった。 等で,全学向け日本語講座を受講できないため,家族 の日本語コースを受講する留学生が数名いた。この ⑷ 高速道路の会社から,ベトナムでのプロジェクト コースでは,前期は東山公園(5月)での校外学習とサ に関連して,ベトナム理解のためベトナム留学生を紹 マーパーティー(7月)を,後期はバス旅行の校外学 介してほしいとの依頼があり,ベトナム留学生会役員 習(11月)とイヤーエンドパーティー(12月)を行い, を紹介した。よい交流が続いているようである。 日本語学習を兼ねた親睦の機会を設けている。一方, 子ども連れの受講生が授業に集中できるように,ボラ ンティアグループ「ひろば」から無料託児サービスの 家族 支援を受けている。受講生は「ひろば」のメンバーや 「留学生の家族のための日本語・日本事情コース」 (以 日本語教師との会話を通じて,日本文化や慣習,生活 下, 「家族の日本語コース」)」は,名古屋大学に在籍す 上の情報を得ており,このコースは日本語教育だけで る留学生や研究者の家族を対象に週2日,レジデンス なく,日本の生活適応支援の役割も果たしている。ま 東山において開講しており,1994年秋以来,名古屋栄 た,年1回ライオンズクラブの例会で,受講生代表2 ライオンズクラブからの経済的支援,及び名古屋大学 名が日本語でスピーチを行い日頃の学習成果を披露し 留学生後援会からの補助金を得て運営している。2010 年度の受講生は次のとおりである。 学期 受講生数 (男女比) 内訳 国籍 前期 42名 家族:36,研究者:2, 18カ国 (男13:女29) 留学生:4 後期 47名 家族:38,研究者:2, 18カ国 (男14:女33) 留学生:7 合計 89名 2009年度から目立ってきた男性の受講生について は,2010年度はさらに増加した。また,時間割の関係 11月11日 秋旅行(長野へのりんご狩り) 家族の日本語コース 後期 案内(日本語) 家族の日本語コース 後期 案内(英語) -78- 教育交流部門・留学生相談室 ているが,このことは受講生の学習の励みとなってい る。さらに,コースのよりよい運営のために,教師や ボランティアとの会議を毎期3~4回行った。 今年度は前期後期とも受講生が数年ぶりに40人を超 えたが,留学生や研究者への周知については不十分な 点もあり,このコースの存在を知らなかったために受 講することができなかったという声を何度か耳にし た。今後の周知方法について改善を図っていきたい。 (報告:白石慶子) 第46回留学生の夕べ 主催スタッフ 留学生会 花フェスタ記念公園」を訪れた。秋は人気のリンゴ狩 1.事故による保険金請求 りを実施し110名が参加した。いずれもインターネッ 完了までに約半年を費やした「事故による保険金請 トで受け付け,日本人学生と留学生の交流を目的とし 求」相談があった。6月某国留学生会が実施したイベ たものでバス3台で実施した。また,毎年恒例の12月 ント先のテーマパークでランドカーが転倒し留学生3 の「第46回留学生の夕べ」は入場者と主催者合わせて 名が負傷した。幸い,テーマパークの保険が適用でき 311名が来場し盛大で楽しいイベントとなった。「名古 ることになったが,保険会社から大学関係者を紹介す 屋を明るくする会」からの寄付金を原資とする緊急援 るよう要望があって,イベント責任者が相談に来た。 助金事業では,愛知県内の留学生9名(6大学)に緊急 保険金請求書類は日本人にとっても複雑なため大学を 援助金を支給した。緊急援助金事業については,港区 通して…ということになったと推測される。留学生相 国際留学生会館から敷金の貸付制度との便宜供与につ 談室が保険会社と連絡を取り合い,留学生に請求書類 いて打診があった。 を準備させることになった。3名の留学生の怪我・通 院状況やアルバイト状況(休業補償適用)が異なったた め,一人ひとりへの対応が必要であった。楽しみにし おわりに ていたイベント先で大怪我を負い,アルバイトできな 留学生の増加とともに,留学生指導担当教員の職務 い状況で不安な気持ちの留学生にとって,保険金の支 範囲は,ますます多様化し拡大している。単に生活指 払いは安堵感を与えたといえる。約半年かかったが, 導に留まらず,日本企業への就職支援,異文化適応を すべて順調に終了した。 含むメンタルヘルスへの対応,さらにグローバル人材 育成等が期待されている。これらをすべて一人の教員 2.名古屋大学留学生会(NUFSA) が担えるわけではない。そのため,学生の力,教職員 2010年度の会長は,コンゴ出身のクリスチアンさん の力,行政や企業を含む地域の人々の力,それぞれが (GSID)だった。恒例の春のバザーは,約70名の参加 得意とする分野で持てる能力を十分発揮できるような 者があり純益約23万円,秋のバザーは,純益約19万円 仕組みづくり,様々なリソースを活用するためのトー であった。また,会長は入居オリエンテーション,大 タルコーディネーターとしての役割が留学生指導担当 学主催の新入留学生歓迎懇談会,送る夕べ等におい 教員に求められていると自認している。 て NUFSA の活動紹介や挨拶の役割を果たした。12月 一方,大学の教職員が,増加する留学生への対応に NUFSA の会計報告を会計担当者とともに作成し,名 何らかの指針を求め始めていると感じる1年でもあっ 古屋大学留学生後援会から支援金30万円をいただいた。 た。高等教育研究センターに協力して作成した「名古 屋大学教員のための留学生受け入れハンドブック」は 3.愛知留学生会後援会 その指針となるであろう。さらに年末に他大学の留学 2010年度の会長は陳斌さん(中国)であった。春の 生教育 FD/SD 講演会に呼ばれてお話しする機会が 国際交流バス旅行は128名が参加して「日本昭和村及び あったが,そのテーマは「留学生にどう接するか」で -79- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 あった。目の前の多文化共生社会に日本人の心が戸 が,この学生たちにとっても,名古屋大学で過ごす数 惑っている印象を受けた。 年間が人生の中でかけがえのない時期となるよう支援 2011年秋から G30プログラムの学生が入学してくる していきたいと考えている。 -80- 教育交流部門・留学生相談室 学生支援活動の体系化と展開~留学生センター相談室活動報告 田 中 京 子 ・ 柴 垣 史 新入生については,研修後他大学で専門研究を行う日 1.はじめに 本語研修生,および日本語・日本文化研修生に対して, 2010年度は,昨年度体系化しながら発展させた活動 空港迎えの希望を聞いた。希望する学生には,チュー を,より充実させて展開した一年であった。複数の資 ターや先輩留学生たちの協力を得て迎えを行った。 金助成を受け,またスタッフが役割を分担しながら活 動し,実現できたことである。多様なプログラムを企 ⑵ 到着後オリエンテーション(留学生センター所属 学生対象) 画運営し発展させるために,多忙を極めた一年とも言 える。 例年と同様,事務室と柴垣が中心となって,4月と 一方,年度末3月11日に発生した東日本大震災やそ 10月に数回に分けて行なった。事務室,相談室,日本 こから派生した原子力発電所事故等の事態は,国際教 語教育部門の連携により順調に行なえた。 育交流にも大きな影響を及ぼした。今後,全学・全国 レベルでの留学生受け入れに長期にわたって関与する ⑶ ワークショップ型オリエンテーション(全学学生 対象) できごとである。国際教育交流の意味やその長期的貢 献について再検討しながら,最善の方法を探って進め ていきたい。 今年度後期も留学生支援事業として予算がついた。 「日本の伝統文化」「日本の生活」「世界の言語文化」 という大きな枠を設けて様々な講座を提供した。数年 続けてきた華道講座では,教養教育院のプロジェクト 2.オリエンテーション:… ギャラリー「clas」を会場に,華道展とワークショッ 情報提供,信頼関係構築,交流促進 プを実施することができた。 留学生の渡日前から修了後にいたるまでの参加型, 他部局と連携してセッションを企画・運営したり, 交流型,日本語・英語併用オリエンテーションを継続・ 学生ボランティアグループや文化サークルが主体的に 充実させた。 企画・運営・実施するセッションに協力したりして, 日本と世界の言語・文化を多角的に学ぶ機会を提供す ⑴ 渡日前オリエンテーション(留学生センター所属 ることができた。 学生対象) 例年と同様,柴垣が事務室と協力して「入学前ガイ ドブック」を入学予定の学生たちに送付し,ホーム ワークショップの実施と内容(添付資料1,2参照) 【日本の伝統文化】 ページ上にも掲載した。留学生センターに所属する学 これまで継続し発展させてきた日本の伝統文化ワー 生たちには,渡日前からスタッフや学生たちと交流し クショップを,今年度は一部,基礎セミナー「英語で て信頼関係を築いていけるよう,渡日 前情報誌を作成しメール送信および郵 送した。在学中の留学生や修了生が情 報提供者として登録したため,新入 生・スタッフ・先輩学生たちが連携体 制をとることができた。新入生の空港 への迎えの有無は各受け入れ部局の判 「着物」着付け 断に任されており,留学生センターの 「日本舞踊」実習 -81- 「書道」参加者の作品 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 学ぶ日本の文化」として授業化し,ワークショップと 新しい文化との出会いであり,本展が,より多くの人 授業を連携講座として開催した。開催日時を,授業時 にとって,新たな文化と出会うきかっけになったとし 間である前期木曜5時限目に合わせたところ,留学生 たら幸いです。 にとって出席しやすいようで,参加希望者がこれまで より多くなった。前期授業の最後は,学生たちによる 日本文化紹介講座として公開し,ワークショップの一 環とした。後期は日も短く寒くなるため,これまでと 同様に4時限目の開催とした。 昨年度の年報に記したように,教養教育院のプロ ジェクトギャラリー「clas」が,展示会やワークショッ プに格好の空間であることがわかったため,このギャ ラリーで催しを行いたいと考えており,今年度それを 実現させることができた。 〈名古屋大学教養教育院プロジェクトギャラリー 「clas」アニュアル2010,p70より〉 華道展を通じた多文化との出会い 柴 垣 史 (名古屋大学留学生センター相談室 アドバイザー) 学内の観察園で枝や実を採集→学内ギャラリーで生け花 本学留学生センターでは,華道八代流の協力により 数年前から華道講座を続けており,多文化背景を持つ 【日本の生活】 受講者が講座で出会い,自己表現を楽しんでいます。 ・地震:今年度も環境学研究科との共同主催により, 彼らの作品を講座内でとどめておくのは惜しいと思う 名古屋に住む外国人留学生,研究者のための地震防 ようになり,講座の新たな挑戦として本展を企画しま 災研修会として初級レベルの講習を行なった。同研 した。単なる視覚的な作品発表展ではなく, 「多文化と 究科山岡耕春教授と国際交流協力推進本部山口博史 の出会い」を主題に, 「自然からのいただきものを繰り 講師と共に,昨年度に引き続き防災研修開発のプロ 返し楽しむ」を副主題とし,学内野外観察園の協力を ジェクト(総長裁量経費)を進めており,当プロジェ 得て,園内で植物や,植物の文化的背景を知ることか クトとの連携で名古屋市港防災センターへの訪問も ら活動を始めました。同園で頂いた植物を一部使い, 2回行った。 ギャラリーにて生けた華道作品は,家族・国・宇宙・ ・生活安全:千種警察署の協力指導により,事故防止 時代・情感などを表す題名が付けられましたが,まず と防犯に対する知識を高めるセッションを行った。 は鑑賞者が作品から自由に想像してもらえるよう,敢 ・引っ越し:例年のように,国際交流会館の退去時期 えて題名を伏せておきました。植物が鑑賞に堪え得る の2~3カ月前に行ない,余裕を持って引っ越しの よう,時間で劣化するものを新たな材料でアレンジす 準備ができるようにした。なお,名古屋大学生協が る予定でしたが,手を加え過ぎず,植物の姿・香りの変 留学生を対象とした引っ越し相談会を開催し,今後 化も作品の味わいとして鑑賞して頂くことなりました。 ワークショップとの連携について検討できると思わ 本展の参加者の多くは,日本を含む複数の国籍の学 れる。 生でした。彼らと,鑑賞者,本展に関わった華道講師, 学内スタッフは,国籍だけでなく,生活や活動の場, 【世界の言語文化】 趣味,年齢などで生じる様々な文化を持ち合せている ・ランゲージシャワーは年間で23回開催した。柴垣と 人々です。作品展の一連の活動や,作品鑑賞を通じて 学生スタッフが中心になって企画運営した。(次項 新たに感じたこと,発見したことが,彼らにとっての の「交流プログラム」に詳しく記す。) -82- 教育交流部門・留学生相談室 ・前期は,イスラム文化会主催企画「アラビア語初級 る登録者が多く,留学生登録者の母語やコミュニケー 講座」10回シリーズを共催,後期は同「初中級講座」 ション言語を考慮するとマッチングをすすめられない 10回を主催して行った。毎期,修了書を発行した。 ケースが多かった。このことから,ワークショップの ・学生支援プログラムとイスラム文化会と共同主催し 世界の言語文化を学ぶプログラムの一つとして提供し て「アラビア書道」講座も昨年度に引き続いて,4 ているランゲ-ジシャワーにより,パートナーシップ 回シリーズで開催した。 登録者の外国語でのコミュニケーションのニーズを楽 しく満たせるよう,参加者を募ってきた。 2006年度から留学生センター所属生がチューター制 度を利用できるようになり,パートナーシップ登録者 からチューターを募集する機会も増えてきた。特に, パートナーシップ登録をする日本人学生は学部1,2 年生の割合が多く,留学生の場合は大学院レベルの登 録者が大半であったことから,パートナーのマッチン グが難しいという問題があった。しかし工学部入学を 目指す日韓プログラム生が,彼らと年齢の近いチュー アラビア語講座ポスター ターを望むことが多かったため,パートナーシップ登 アラビア書道講座ポスター 録の学部1,2年生を紹介することができるように ・これまで2回協力または共催した 「イスラム文化フェ なったのである。 スティバル」を,今年度は留学生センターがオープ ランゲージシャワーについては,『2010年度名古屋 ンフォーラムとして主催した。ICANU(名古屋大学 大学国際交流グループ活動報告書』に詳細を記してい イスラム文化会)が会場設置や料理紹介を行い,学 るが,後期からは,パートナーシップ登録者でもあっ びの多いフォーラムとなった。(別稿「留学生セン た留学生の協力により中国語グループもでき,英語・ ターオープンフォーラム」を参照) 中国語グループで全20数回のセッションを実施した。 プログラムへの参加リピーターが増え,内容も充実し ⑷ 交流プログラム てきたのは,前年度から継続してこのプログラムの運 留学生センター相談室では,ワークショップ以外 営に携わった学生たちによるところが大きかった。グ に,主に,学生パートナーシップ(教育交流部門によ ループとして本年度の留学生センター長顕彰を授与さ り1998年4月開始)と,ランゲージシャワー(詳細は れたことは,学内全体でこの活動の貢献度の高さが認 『名古屋大学国際交流グループ 2010年度活動報告書』 知された結果といえる。しかし,活動を支えてきた大 (名古屋大学留学生相談室,2011)を参照)の2つの交 半の学生はこの3月で卒業・修了を迎えた。プログラ 流プログラムをコーディネートしている。 ムのコーディネータとしては,次年度から活動に参加 パートナーシップは,国際交流を希望する学生の登 したいと申し出のあった学生たちとノウハウを継承し 録により,一般学生と留学生を1対1で紹介し自由に ながら,プログラムとして持続可能な新たな活動の在 交流する「きっかけ」を提供するものであるが,1対 り方を探っていくことになる。 1での交流以外に,登録者の時間とニーズに合った活 動や交流が見つけられるよう,また,一般学生同士, 留学生同士でも新しい友人を見つけることができるよ 3. 学生個別教育:相談 う,登録者に学内外の交流イベント,海外留学関係情 相談室での相談活動を「個別教育」と位置づけ,名古 報を提供している。 屋大学の留学生に限らず,在学生や他大学へ進学した学 登録の際には,留学生センター相談室で簡単に面談 生,地域構成員などの相談にも可能な範囲で対応した。 し,彼らがどのような交流希望を持っているかを聞 き,後のマッチングの参考としている。これまで,特 ⑴ 相談時間 に日本人学生においては,語学力向上を交流目的とす これまでと同様の相談時間確保(週7-8コマ分) -83- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 を目処とした。相談時間を掲示し,その他の時間でも 寄せられなかった。 在室中は適宜相談に対応した。電子メールでの連絡や 伝言ボックスへの連絡は常時受けられるようにした。 ■医療・健康・安全 新型インフルエンザは昨年ほどの流行はなく,マス ⑵ 相談件数 クの流通不足も解消された。心身の不調をきたした学 留学生センター所属生については大きな問題が寄せ 生や交通事故にあった学生は複数いたが,指導教員や られず,来室による個別相談件数は減少したと思われ メンタルヘルス専門教員の助力もあって大きな問題に る。電子メールでの連絡が容易に行なえることに加え 至らず,幸いであった。 て,問題防止に役立つプログラムが充実して普段から 防災関係は今後も強化する必要があり,相談室とし 学生たちと接する機会が増えていること,またチュー ても関係プロジェクトに参加しつつ学生たちへの研修 ターによる支援が強化され,さらにメンタル相談専門 を継続して行なっていきたい。 教員による相談対応について学生たちに周知されてき ■家族 ていることも影響していると思われる。 家族を呼び寄せた人は数名あり,3月の震災とその ⑶ 特徴的な相談内容 後の放射能問題は特に小さい子どもを持つ学生にとっ 様々な相談の詳細その背景については,相談者個人 ては深刻であった。また,在籍生の母国にいる家族・ に関わることなのでここで報告することができない 友人の震災に対する不安も大きく,家族からの要望に が,今年度の特徴として以下を報告し,今後の活動に 応じて一時帰国する学生も多くいた。 活かしていきたい。 一方,家族を呼び寄せたくても,母国の日本国大使 ■勉学・研究 館で家族滞在ビザ申請が却下されるという例もあっ 専門研究をする配属大学・研究科について,選択肢 た。母国では当然共に暮らす家族であっても,留学生 があるがために迷うケースが数件あった。専門分野の という身分での外国生活では,外交問題が介在してく 教員たちの協力を得ながら,本人の人生設計の中で進 ることは避けられないのであろうが,当人たちにとっ 路を決定できるよう支援した。 ては精神的にも苦しい状況である。 日本語研修期間後に別の大学で専門研究をする学生 の場合,行く先の様々な情報を必要としているため, ■学生組織との連携 相談室と事務室で協力して進学先大学との連絡調整を 留学生を中心とした大学院生主催の国際・学際学会 行った。 FeedForth は,11月4日に,第5回目が開催された。今 論文を投稿しても掲載に至らないことから,投稿の 回は留学生センター相談室は,FeedForth を学生支援 方法や内容,教員との関係などについて相談する学生 プログラム担当者に紹介したのみで,学会の企画運営 が複数いた。大学や研究室独特の文化と関わる事項も はすべて学生たちが行なった。学生支援 GP の一環「名 あり,可能な範囲で助言・指導した。 大版サイエンスカフェ」との連携発表も行なわれた。 主催者が期待したような数の参加者が得られなかった ■宿舎 が,日本人学生も含めた多国籍学生の研究発表・討論 大学の国際交流会館(インターナショナルレジデン の機会となった。主催するには時間的にも経済的にも ス山手)が新築され,今年度の入学者の多くが宿舎に 負担が大きいこのような学会の,今後のよりよい発展 ついてこれまでより恵まれた環境を享受することがで を見守りたい。 きた。名古屋大学生協が留学生を対象とした引っ越し ICANU(名古屋大学イスラム文化会)とは,オー 相談会を2月に初めて行ない,相談室も協力した。所 プンフォーラムやアラビア語講座で協力した。金曜集 属生たちは引っ越しの必要がなかったため利用しな 会については,今年度からは国際交流会館インターナ かったが,他学部の学生たちが複数利用した。大学生 ショナルレジデンス東山の会議室が1カ月ごとに予約 協の取り組みとしての検討に,今後協力できることは できるようになったが,日々の礼拝場所の確保は未だ していきたい。民間宿舎問題についても大きな問題が 難しく,課題となっている。また,大学が特定の宗教 -84- 教育交流部門・留学生相談室 グループに対して場所を提供することについて,学内 の法務室に相談する機会を得た。基本になる考え方は 4.学部・大学院教育:授業 国立大学法人としての政教分離および日本社会の信仰 ワークショップの項で記したように,留学生セン の自由の保障であり,両方が尊重され守られるような ター相談室が継続して企画運営してきた日本の伝統文 環境を整えていくことが必要である。人々の生活の根 化に関するワークショップを,今年度は一部学部1年 源を成す信仰について,常に敬意を抱きながら環境整 生の基礎セミナーとして開講した。(本年報の「異文 備を進めていきたい。 化交流実践を授業にフィードバック」報告を参照)ま た,田中は教養科目「留学生と日本」の浮葉准教授を ■交流・研修 代表とする教員チームに例年通り参加した。 パートナーシップ,ワークショップ等の参加登録な 大学院国際言語文化研究科の「異文化コミュニケー どで相談室を訪れる学生たちは多い。その機会に,交 ション論」の授業は8年目となり,田中が担当して 流や進路についての相談を受けることもある。「英語 多文化学生チームで授業を進めた。昨年度の受講生 のネイティブ話者と友だちになりたい」という希望は たちが中心となって,全学同窓会の助成金を得て,異 多く,その理由としてネイティブ話者でなければ正し 文化コミュニケーションの事例検討論集を編纂,印 い英語が話せないとか,ネイティブ英語を学ばなけれ 刷した。 (Tasting Japanese Culture: Through Diverse ばいけないというような思い込みがあるようである。 Interpretations, Edited by Yasmine S. Mostafa, Nagoya ネイティブ話者が学内には非常に少ないこと,ネイ University, 2011) ティブ話者でなくても英語を使いこなして生活してい る学生たちが多くいること,ネイティブ英語にこだわ らず外国語を積極的に使って活動していけることなど 5.チューター調整・指導 を伝えて,様々なプログラムを紹介し,参加を呼びか 留学生センター所属の学生たちのチューター支援に けている。 ついて,調整・指導を担当し,チュター募集,組み合わ せ,オリエンテーション,書類請求などの業務を行っ ■その他 た。留学生センターでのチューター制度実施は5年目 指導教員に向けた『名古屋大学教員のための留学生 となり,在学生たちへの認知度も高くなって能力の高 受け入れハンドブック』 (高等教育研究センター,2011 いチューターが集ってくるようになった。 年3月発行)編纂チームに,田中は7月から加わった。 留学生センター所属生のうち,他大学進学予定者, かねてから学内有志で活動していた「留学生研究会」 教員研修生,日本語・日本文化研修生の渡日時の空港 に,産休に入る留学生相談室の髙木准教授から引き継 出迎えに関しては,出迎え希望があった学生にのみ, いで参加したものである。これまで留学生たちから受 チューター支援の一環として,在籍生が出迎え支援し けた相談や,教員たちを対象に行われたアンケートを た。 参考にしながら,指導教員にとっての課題や工夫点を 昼食時間の懇談会は今年度は行わなかったが,教育 検討した。12月16日に「教員として留学生にどう接す 学研究科の留学生専門教育教員である渡部留美講師が るか‐授業や研究指導を通して」という題で研修会を 中心に作成した『名古屋大学チューターハンドブック』 行い(留学生研究会,高等教育センター,留学生セン (名古屋大学国際交流協力推進本部,2010年11月発行) ター協同主催),その後ハンドブックを編集・印刷し 編纂チームに田中が加わり,これまでのチューター活 た。このハンドブックの活用によって,昨年度の年報 動から明らかにされた課題や工夫を,チューター全体 にも記した「一般的なケースについて多くの教員たち で共有できるようにした。懇談会を開催しても多くの と情報共有」 (『紀要』名古屋大学留学生センター,2010, チューターが同じ時間に集まるのが困難だったが,こ p. 91-92)する体制が実現できつつあると言える。なお のハンドブックによって知識や経験の共有が可能に 「留学生研究会」は,今後も活動を続けることになって なった。 いる。 -85- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 柴垣がとりまとめ役となって,学内関係者と協力し 6.地域連携講演・文化交流 ながら行なった。 名古屋大学が位置する千種区の警察署には,従来 ・国際交流グループ報告書作成とりまとめ:学生ボラ 様々な形で学生たちへの安全指導に協力してもらっ ンティアグループが昨年度から作成している報告書 ており,今年度も昨年度に続いて防犯についてのセ 作成のとりまとめを,今年度は髙木准教授から引き ミナーを行なった。特に新入生が,日本の安全神話を 継いで柴垣が中心に行なった。 過度に信じることがないよう,これまでの経験も参考 にしながら指導している。また学生集会などが,他人 によって思わぬ方向に利用されることなく行なえるよ 8.学内委員会 う,学生グループとも協力している。2009年1月から 名古屋大学が運営する「こすもす保育園」の運営協 田中は委員として警察協議会に出席し,地域・市民安 議会議長の任期を終え,今年度は田中は一委員となっ 全の視点から警察に意見を伝えている。 た。留学生の子どもの保育についてかねてから課題に 伝統ある地域行事において,参加した留学生が主催 なっているため,男女共同参画推進専門委員の立場か 者の指示とは別の行動をとったことで,受け入れ側の ら関わっていくことになった。ハラスメント防止対策 人々にご迷惑をかけるということがあった。学生から 関係の委員としても,留学生相談業務で培った知識や 事情を聞いて,関係者に詫び状を提出することになっ 経験を活かすように努めた。 た。学生が行事の趣旨などを十分に理解していなかっ たことや,コミュニケーションの中で誤解も生じてい たことなどがわかり,学生はたいへん反省していた 9.おわりに が,相談員にとっても学ぶところが大きいできごとで 2008年度に日本政府により打ち出された「留学生30 あった。 万人計画」進行最中の今年度3月に東日本大震災が起 天白生涯学習センターの,偏見や差別をなくすため こった。亡くなった人々の冥福を祈ると共に,被災者・ の講座に,田中は留学生と共に協力した。学生の日本 被災地域の復興を願う日々である。 での経験やそれについての意見に,異文化コミュニ 地震後,元留学生たちからいち早く,安否確認や見 ケーションや多文化理解の視点を入れて解釈するとい 舞い,協力申し出の連絡があった。その中には10年, う有意義な講義を,共同で組み立てることができた。 20年前に留学した学生たちも含まれている。留学経験 が長期にわたって彼らに影響を与えていることを実感 した。 7.センター内委員会 現在日本に留学している学生たちからも「今すぐ被 ・安全防災部会:今年度も総長裁量経費を受け,環境 災地に行きたいが,自分の日本語力で役に立てるだろ 学研究科および国際交流協力推進本部の教員と共同 うか」「物資を送るにはどうしたらよいか」などの問 で,留学生のための研修開発プロジェクトに取り組 い合わせが相次いだ。ICANU(名古屋大学イスラム文 んだ。学期に一回行う防災セミナーを継続すると共 化会)も,震災後すぐの金曜礼拝時に募金を行い,貴 に,昨年度作成した名古屋市港防災センターの見学 重な義捐金を大学経由で被災地に届けた。家族がどう ガイドと音声ガイドを利用して,同センターでの研 しても心配するので一時帰国したものの,反対を押し 修を2回行った(本年報「事業報告」を参照)。 切って再び日本に戻った学生たちもいた。留学してい また,施錠等の見回りのアルバイト学生の指導・連 ることで,日本や人々への信頼が強く心に刻まれてい 絡は,これまで PC 管理委員会の仕事として行って る様子がよくわかった。 きたが,今年度からは安全防災委員会の担当にな 個人的な経験の中でも,田中は1985年のメキシコ大 り,引き続き相談室で担当した。アルバイト学生と 地震の時に被災地に暮らしており。多くの建物が倒壊 連絡をとりながら,夜10時まで使用されている建物 した中,市民が協力してボランティア活動する様子を と PC 室の安全と環境整備に努めた。 目の当たりにした。自分も微力ながら復興の活動に参 ・留学生ハンドブック改訂:今年度の改訂は,田中・ 加し,国や人々への思いはより強いものになった。 -86- 教育交流部門・留学生相談室 現在日本で勉強している留学生たちにとっても,留 が戦後の復興と発展によって世界から注目されたよう 学先で「未曾有」とも言われるできごとを経験してい に,今回の震災やそこから派生する様々な問題も,国 ることは,後々まで大きな意味を持つであろう。日本 際的な協力体制の中で解決の方向に向かい,その復興 添付資料 1 -87- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 の力が後世に受け継がれていくよう願っている。教育 交流の任務の中でも,できることを進めていきたいと 思う。 添付資料 2 -88- 教育交流部門・留学生相談室 海外留学室 岩 城 奈 巳 ・ 熊 坂 佳代子 内 容:名古屋大学における留学と海外留学室につい はじめに て 平成22年度は,海外留学室担当教員の岩城,プログ 講 師:岩城 ラムマネージャーの熊坂,両担当者の着任2年目の年 であった。昨年度の1年間の経験を経て望んだ今年度 ◆ CIEE 国際ボランティアプログラム説明会 は,具体的に,交換留学生の増加,学生の語学力向上 日 時:4月14日 12:05-12:45 支援,さまざまな留学に関する説明会の充実化,そし 場 所:留学生センター201号室 て昨年立ち上がった留学を支援する有志団体,「留学 講 師:CIEE 星川朗氏 のとびら」の強化,という目標を掲げ,海外留学室の 機能の拡充を目指した。 ◆モナシュ大学夏期英語研修説明会 以下に,海外留学室における平成22年度の活動を 日 時:4月14日 13:00-14:00 「情報提供」,「個人相談」,「派遣学生に対する支援」, 場 所:CALE フォーラム 「交換留学に関する情報提供」,「海外の協定校に関す 講 師:モナシュ大学 櫻木真由美氏 る情報収集」, 「新たな取り組みと活動」,の6つのセク ションに分けて紹介し,最後に来年度に向けての課題 ◆ノースカロライナ州立大学語学研修説明会 を提示したい。 日 時:4月15日 12:10-13:00 場 所:留学生センター201号室 講 師:岩城,熊坂 1.情報提供 海外留学室における情報提供活動は,さまざまな留 ◆工学部留学説明会 学関連の説明会及びセミナー,ホームページに掲載す 日 時:4月16日 17:00-18:30 る情報,そして図書資料の閲覧を通して行っている。 場 所:IB 電子情報館012教室 また,2年前に作成した「名大生のための海外留学ハ 講 師:工学研究科留学生担当教員古谷礼子氏,岩城 ンドブック」を新しい情報のものに,リニューアルし ◆アデレード大学説明会 た。 日 時:5月20日 12:15-12:45 〈セミナー・説明会〉 場 所:CALE フォーラム 昨年度同様,学期中は留学に興味を持つ学生を対象 講 師:アデレード大学 Liz Pryzibilla 氏 とした「海外留学入門セミナー」を毎週水曜日に開催 し,その他も様々な情報提供セミナー及び説明会を ◆第二回名古屋大学留学フェア * 行った。以下は今年度行われたセミナー,説明会であ 日 時:5月23日 16:30-17:30 る。対象は記述が無い限り学内の全学生及び職員であ 場 所:留学生センター1階ラウンジ及び る(* のあるものについては別途詳細説明,参加者数等 CALE フォーラム の詳細は表1を参照)。 講 師:交換留学経験学生,岩城,熊坂 ◆新入生学生生活ガイダンス ◆ IELTS 説明会 日 時:4月8日 9:36-9:44/14:06-14:14 日 時:6月24日 12:15-12:45 -89- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 場 所:留学生センター201号室 参加者:約20名 講 師:日本英語検定協会 後藤崇志氏 講 師:岩城,熊坂 ◆メンタルヘルスセミナー ◆アメリカ大学院留学シンポジウム * 日 時:7月2日 16:30-18:00 日 時:12月22日 13:00-17:00 場 所:留学生センター2階 CALE 場 所:CALE フォーラム 講 師:留学生相談室 坂野尚美氏 講 師:大倉有馬氏,神谷哲央氏,古川範英氏, 橋本道尚氏 ◆平成23年度派遣大学間交換留学(全学間協定) 募集説明会 ◆アメリカ大学院留学個別相談会 日 時:8月9日 10:30-12:00 日 時:12月24日 10:00-12:00 場 所:留学生センター207号室 場 所:CALE フォーラム 講 師:岩城,熊坂 講 師:古川範英氏 ◆春期モナシュ大学英語研修説明会 ◆交換留学シンポジウム * 日 時:11月5日 12:10-12:50 日 時:1月21日 15:00-18:00 場 所:留学生センター201号室 場 所:CALE フォーラム 講 師:モナシュ大学 櫻木真由美氏 講 師:留学決定学生,留学経験学生,岩城 ◆初心者向け TOEFL セミナー ◆ルノー財団担当者による留学説明会 日 時:11月5日 16:30-18:00 日 時:2月1日 12:00-13:00 場 所:留学生センター301号室 場 所:留学生センター201号室 講 師:CIEE 星川朗氏 講 師:ルノー財団 Helene Mairesse 氏 ◆フライブルグ大学夏休みドイツ語コース説明会 ◆異文化コミュニケーションワークショップ 日 時:11月15日 12:15-13:00 日 時:3月28日 10:00-12:30 場 所:留学生センター201号室 場 所:CALE フォーラム 講 師:フライブルグ大学 Christian Tischer 氏 参加者:交換留学決定者 講 師:立命館大学 堀江未来氏 ◆ TOEFL-iBT スキルアップセミナー 日 時:11月16日 16:30-18:30 ◆協定校での夏の短期特別プログラム募集説明会 場 所:全学教育棟2階 CALL 教室 日 時:3月29日 講 師:早稲田大学 澤木泰代氏 場 所:CALE フォーラム 講 師:短期プログラム経験者の学生,岩城,熊坂 ◆留学を考えている人のための就職活動セミナー 日 時:11月17日 13:00-14:15 ◆海外留学入門セミナー 場 所:CALE フォーラム 日 時:学期中の毎週水曜日 12:15-12:50 講 師:就職支援室 船津静代氏 場 所:留学生センター201号室 講 師:熊坂 ◆平成23年度派遣大学間交換留学(全学間協定) 二次募集説明会 〈説明会・各種セミナー〉 日 時:12月16日 12:10-12:50 平成21年度に行われた説明会・セミナー等の数が14 場 所:留学生センター201号室 だったのに対し,平成22年度は23へと増加させた。海 -90- 教育交流部門・留学生相談室 外協定校や提携機関からの訪問者によるプログラム説 できる道を作って行きたい。 明会を開催できただけでなく,留学にも大きく関わる メンタルヘルス,就職活動,異文化コミュニケーショ 〈交換留学シンポジウム〉 ンも取り入れ,より包括的な情報提供を目指した。ま 名古屋大学での交換留学制度を紹介するイベントと た,海外留学入門セミナーの参加者数が昨年の98名か して海外留学室主導が企画したもので,60名以上の来 ら約2倍の177名へと飛躍的に上昇したことも大きな 場者を迎えた。3時間に渡るこのイベントでは,第一 成果である。 部で岩城が交換留学制度の紹介と実現に向けたアドバ イスを,第二部では平成23年度の交換留学が決定し渡 〈第二回海外留学フェア〉 航を控えた学生による期待と意気込み,そして第三部 「前」留学のとびらスタッフが中心となって(「新」 では留学帰国生による体験談を語ってもらった。これ 留学のとびらについては, 「新しい取り組み」にて別途 までのイベントでは教員と帰国留学生のみがスピー 説明),留学の経験をもとに名大留学を紹介する「留学 カーであったため,これから渡航する学生が話す機会 フェア」を開催した。第1部は5名の留学経験者がパ を得たのは初の試みであった。来場数のほぼ半数の学 ネルディスカッション形式で司会者からの質問に答え 生が提出したアンケート結果では,満足度指数を1 ることでそれぞれの留学経験を紹介した。第2部では (役に立たなかった)~5(役に立った)で測ったとこ 19名のスタッフが各ブースに分かれ,来場者からの質 ろ,平均指数が4.48もしくはそれ以上であった。また, 問に答えた。2時間の開催で来場者は約60名となり, 参加後の留学意思も1(弱くなった)~5(強くなっ 記入してもらったアンケートでも「経験者の話が直接 た)で測ったところ,平均が4.47となり,学生にとって 聞けた」, 「進行がスムーズだった」, 「内容が濃かった」 非常に意味のあるイベントとなったことが判明した。 などの高い評価を得られた。 〈ホームページ・メールマガジン〉 〈アメリカ大学院留学シンポジウム〉 平成22年度は,海外留学室が提供するサービスを利 名古屋大学国際化拠点整備事業海外留学促進イベン 用する学生数が飛躍的に増えたが,その大きな一因が トとして,開催されたこのシンポジウムでは,現役大 メーリングリストの作成であると思われる。7月に作 学院生で,アメリカに留学中の元名大生と博士号を取 成以来,年度末までの登録者数は約300人となった。毎 得し国際機関で活躍する研究者を招聘し,「アメリカ 月平均し3通ほどのメールマガジンを発行しており, 留学」の基本情報やその後の就職情報等についての発 情報のほとんどは海外留学室のホームページ上で入手 表及び説明がおこなわれた。当日は,留学に興味を持 できるものであるが,緊急性や重要性の高いものを抜 つ本学学生,他大学学生,教職員など約60名の参加が 粋して案内している。また, 「名古屋大学ポータル」の あり,スピーカーから,留学の動機,大学の探し方, 「国際活動」タブにリンクされていた「海外留学情報」 日米における大学院教育・システムの違い,入学審査, であるが,このリンク先が海外留学室ホームページ上 語学能力試験攻略方法など,入学に至った経緯から, の「新着情報」にリンクされていたため,トップページ 合格まで,さらに,ティーチング/リサーチアシスタ へのリンクに変更した。これにより,海外留学室が提 ントのポジション獲得法,講義の受け方など,入学後 供している状況を一目で分かるように工夫を行った。 の生活についての紹介があった。それぞれのスピー 海外留学を考え始めた学生が訪れる重要な場所でもあ カーを囲んでの質問会もおこなわれ,留学前にすべき るので,今後もより見やすく使いやすいものにしてい こと,語学習得法といった渡米前の準備段階での質問 きたい。 から,研究環境,寮生活など実際の学生生活について, そして,卒業後の進路,日米における就職活動の違い 〈留学関連資料整備〉 など,質問や相談をする姿が見られた。予想をはるか 昨年度に引き続き,語学関連の図書の充実につとめ に超える学生からの参加があり,このような企画の重 た。一番の需要のある TOEFL 関連の図書で貸し出し 要性,そして必要性を感じた。今後も留学関連の同様 の多い本は数部揃えた。また,IELTS の需要も伸びて な企画を定期的に開催し,学生が外に目を向ける事の おり,IELTS 関連の本も増やした。さらに,海外大 -91- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 学院を目指す学生からも情報提供の希望が多々あり, 受給した学生3名,更にグローバル30枠の奨学金が5 GRE 関連の本も購入した。今後も,学生の需要に答え 名,追加割当による(1月から3月の3ヶ月のみ)追加 ることができるよう,図書の充実を目指していきたい。 枠が4名の,計12名が奨学金を受給した。また,派遣 学生支援として,総長裁量経費による学生へのサポー トとして,JASSO を受給できなかった学生へ渡航費と 2.個人相談 して18万円を給付した。なお,これら学生への手続き 今年度も,学期中は週2日,計8時間の相談時間を や連絡は国際部国際学生交流課と連携して対応した。 設け,岩城・熊坂の相談件数は261件であった(表3)。 ・平成23年度派遣について 相談時間以外に予約をして面談に訪れる学生も非常に 来年度派遣分の交換留学生(全学間協定に基づくも 多く,また,数には入れていないメールによる相談も の)については,8月9日の説明会より応募開始とし 多数ある。これら総合すると,週あたりの実質的な相 た。今回募集した受入れ協定校は資料1の通りであ 談時間は,10時間から15時間に上ると思われる。学生 る。10月22日をもって学内応募を締切りにしたとこ からの相談内容は,昨年度と特に変わった傾向は見ら ろ,63件(33名)の応募があった。そのうち,3名は れず,留学全般について,交換留学への出願準備につ 語学力不足(TOEFL 点数不足)の理由で書類選考に いて,語学力(英語)について,などである。留学全般 て不合格とした。11月8日から12日にて交換留学実施 の相談の場合は,留学自体について考えがまとまって 委員会で構成される選考部会において個別面接をおこ いない学生が多く,学期中,毎週行われる海外留学入 ない,その結果,26名の交換留学候補者を選出した。 門セミナーに出席してから個別相談するよう,義務づ 面接後,3名の辞退者が出たこと,さらに,1名が規 けている。交換留学を考えている学生からの相談は, 定の TOEFL スコアに届かなかったことから,22名が 語学力(英語)を伸ばすための勉強方法,希望大学の 第一次募集の候補生となった。その後,更に枠が空い 相談,帰国後の就職活動について,などが多くを占め ている協定校について2次募集を行ったところ,12名 る。昨年度も感じた事だが,学生は,名大生として利 の応募があり,審査の結果8名が候補生として選出さ 用できる留学制度を知らないことが多い。今年度も, れたが,1名がとりやめた為,結果,29名の学生が候 ある研究科の院生が,偶然留学生センターの前を通り 補生となった。交換留学候補の所属部局,学年(応募 かかり, 「留学シンポジウム」のポスターを目にしたの 時),及び性別は,表4(右半分)の通りである。候 で参加し,海外留学室の存在を初めて知った,という 補者決定通知の翌月には,留学決定者に,早い段階か ケースがあった。どのように効率良く認知度を高める ら「留学をする」という自覚を促し,自立心をもって か,海外留学室の最大の課題であると再認識した。 準備に取り組むための最初のオリエンテーションをお こなった。 3.派遣学生に対する支援 〈名古屋大学長期留学支援プログラム〉 今年度,名古屋大学が紹介する様々なプログラムで 下記の学生の支援が終了する今年度,それぞれの学 留学する学生に対し,それぞれ以下のような教育支援 生の帰国に合わせ,報告会を実施した。なお,スタン 活動をおこなった。 フォード大学の学生は,修士課程修了後,博士課程に 進学し,支援を引き続き受けている。 〈全学間協定協定に基づく交換留学〉 ・カナダ・トロント大学工学専攻博士課程 ・平成22年度派遣について ➢報告会:12月27日 10:30~ 全学間協定に基づく交換留学によって今年度派遣さ れる予定の学生に対し,出願から出発までの支援と指 ・ベルギー・リュージュ大学社会学専攻博士課程 導を行った。派遣学生の一覧は表4の通りである。サ ➢報告会:9月24日 10:30~ ンパウロ大学,カリフォルニア大学ロサンゼルス校へ の全学間協定に基づく交換留学は今回がはじめての派 ・スタンフォード大学工学専攻修士課程 遣となった。JASSO による短期留学推進制度奨学金を ➢報告会:12月22日 13:00~ -92- CALE フォーラム 国際開発研究科第3講義室 教育交流部門・留学生相談室 CALE フォーラム も多かったようである。名大生は授業料が免除され, ・マレーシア・マレーシア国民大学教育学部 2名の参加となった。(参加学生:工学部1年,教育学 ➢報告会:2月14日 10:30~ 部2年) CALE フォーラム 今年度は,3名の学生より同プログラムへの応募が 〈梨花女子大学サマースクール〉 あった。本学より全員推薦したが,残念ながら,3名 梨花女子大学でのサマースクールは,セッション1 とも書類選考の段階で不採用となった。 とセッション2にわけられており,多様な文化関連の 講義・体験・各施設訪問・韓国語クラスを通じ,韓国 〈ノースカロライナ州立大学夏期英語研修〉 に関する理解が高めることが目的である。協定校であ 7月初旬から5週間にわたって行われる夏期英語研 る名大生は,登録料と受講料が免除され,セッション 修であり,5名分の授業料全額(または10名分の授業 II に関しては1名あたり交換留学生1/5としてカウン 料半額)が同大学 Japan Center によって提供されて トされる。平成22年度はセッション II へ3名が参加し いる。平成22年度は職員1名と,同大学へ交換留学が た。(参加学生:農学部2年,経済学部2年,文学部3 決まった学生3名を含め,合計9名からの申請があっ 年) た。面接の結果,職員は奨学金授与の対象外とし,2 名が授業料全額免除,8名が授業料半額免除となっ 〈モナシュ夏期語学研修〉 た。参加した学生の所属部局は以下の通りである。 (参 モナシュ大学語学センターが一年を通じて独自に 加学生:法学部2年,法学部3年,文学部4年,工学 行っている英語プログラムへ,平成22年度より名大生 部4年,環境学研究科 M1の2名,国際開発研究科 D1, を団体派遣することとなった。1つのタームが5週間 医学系研究科 D2) のコースとなるが,名古屋大学で一般授業を履修する 学生にとって5週間全て参加するのが難しいため,4 〈慶熙大学 Global Collaborative Summer Program〉 週間からでも参加できるように取り計らった。なお, 「Global Governance & East Asia Civilization」とい 6名の参加となり,授業料は団体割引を受けることが うテーマに基づいた講義を英語で受けられる国際プロ できた。 (参加学生:経済学部4年の2名,文学部4年, グラムである。7月5日~30日までの3週間程度のプ 経済学部2年,環境学研究科 M1,工学研究科 M1) ログラムであり,名古屋大学から2名までは授業料と 寮費が免除という枠が与えられた。名古屋大学での授 〈モナシュ春期語学研修〉 業開講期間中であったが,このプログラムが開始する 今年で3年目の紹介となるモナシュ大学での春期語 前に交換留学を終えた学生2名が参加することができ 学研修は平成21年度が6名の参加だったが,平成22年 た。(参加学生:教育学部4年の2名) 度は20名へと飛躍的に増加した。日本から参加する他 の6大学でも同様に,参加者数が全体的に増加したよ 〈慶熙大学夏期短期プログラム韓国語コース〉 うである。参加者が増えた理由として,プログラム説 8月2日~20日まで開催された韓国語を学ぶための 明会の広報に力を入れたこと,過去の参加学生からの コースで,これまで韓国語を学んできた学生1名が参 口コミ,メーリングリストでの紹介などが考えられ 加した。名大生への特典は授業料が30% 割引となり, る。また,現地での文化体験が多く,サポート体制も 文化体験費など一部の費用が現地大学負担となった。 しっかりしていることから,「初めて海外に行く学生 (参加学生:文学部4年) 対象」という切り口で宣伝を行ったせいもあってか, 参加者のほとんどが1・2年生であった。 〈香港中文大学 International Summer School 中国語コース〉 平成22年より全学間協定が結ばれた香港中文大学で 4.語学強化の取り組み の3週間(8月3日~24日)のプログラムである。香 今年度も,前期・後期に,「特別英語セミナー」を開 港という場所柄,中国語だけでなく英語を使える機会 講した。この授業は,TOEFL-iBT 対策に焦点を当てた -93- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 もので,留学を目指す学生が主な対象である。英語圏 度であり,平成23年度の前期に留学イベントを行うた のみならず,留学を目指す学生にとって語学試験は必 めに活動を続けている。課題を挙げると,メンバーの ず必要になってくるので,留学準備の一部として学生 ほとんどが平成23年度に留学してしまうことと,メン に積極的に活用してもらいたい。ただし,受講するた バーの参加度に偏りがあることである。良かった点と めには申請時に TOEFL-ITP 527以上,TOEIC 663以 しては,同じ留学仲間として横のつながりが強化され 上,英検準一級等,条件を満たしていなければならな たことと,学生の視点を取り入れたイベントが企画で い。それら基準に満たさない学生,他講義でこの時間 きたことである。参加メンバーの動機として,思いの に受講することができない学生を対象に, 「TOEFL 勉 ほかキャリア育成にはあまり関心がない学生もいたも 強会」を開催した。TOEFL 勉強会の活動報告は, 「新 のの,自主的に参加していく経験を留学前に得られる たな試み」のセクションにておこなう。 ことは留学の準備教育としても,就職活動をする上で も有意義だと思われ,彼らの今後に活かされることを 期待している。 5.海外の協定校に関する情報収集 海外留学に関する情報収集活動としては,海外の協 〈TOEFL 勉強会〉 定校から名古屋大学への来訪者との会合,また海外の 留学を喚起するイベントがいくら効果的であって 協定校を来訪した件として,以下のとおりまとめる。 も,交換留学の実現には協定校の定める語学条件をク 高等教育関係者の集まる会合にも出席し,名古屋大学 リアすることが必須条件となり,これは名大生にとっ の協定校関係者と会う機会を設け,交換留学に関する て大きな壁となっている。そのため,交換留学を目指 協議を行った。 すもののスコアが伸び悩む学生を対象に, 「TOEFL 勉 ・5/20 アデレード大学関係者来訪 強会」を毎週開催することとした。担当した熊坂は英 ・5/30-6/4 NAFSA 年次総会出席 語の教師ではないものの,海外大学院で経験した学習 (米国カンザスシティー) 方法をもとに,TOEFL の問題形式や学術英語の形式 ・6/26 ノースカロライナ州立大学関係者来訪 を紹介し,実際に問題を解きながら解答のコツを教え ・7/5 ケンタッキー大学関係者来訪 た。前期・夏休み・後期に3回開催し,合計50名程の ・7/26 ロンドン大学関係者来訪 学生が参加した。良かった点は,この中から5名が平 ・9/1 パリ第7大学関係者来訪 成23年度の交換留学が決定したこと(うち1名は学部 ・11/15 フライブルグ大学関係者来訪 間留学)と,回が進むにつれて勉強会の中身もグルー ・12/3 南オーストラリア大学関係者来訪 プの雰囲気も向上していった点である。改善点である ・2/1 ルノー財団関係者来訪 が,重要な情報を細かな点まで補ったレジュメやスラ ・3/8-3/11 APAIE 年次総会出席(台湾台北) イドを作成し,配布し,こちらから提供してしまうこ とで,かえって学生が自ら率先的に情報を補い,学ぼ うとする姿勢を育成できなかったことだと感じてい 6.新たな取り組みと活動 る。そのため,平成23年度は参加者に自主学習や宿題 〈留学のとびら〉 を課すことを前提に,この勉強会で他の参加者と協働 平成21年度に発足した学生による留学支援団体が 「留学のとびら」であるが,主要メンバーの多くが卒 できる機会をより有効に活用できる実践の場とするつ もりである。 業や進学により継続が困難になったため,海外留学室 が主導し,コンセプトを少し変え,新しいメンバー を募集することにした。新しい「留学のとびら」で おわりに:今年度の総括と来年度への課題 は,実社会で重要となる「ファシリテーション」を学 今年度の成果として,まず,短期プログラムへの参 べることと,プロジェクトのマネージメント経験を得 加者が飛躍的に伸びたことが挙げられる。昨年度は11 られるため,就職に役立つ経験になることをアピール 名,その前年は12名だったのに対し,今年度は45名の した。結果的にメンバーとして登録した学生は15名程 参加者があった。各国で有数の協定大学が提供する語 -94- 教育交流部門・留学生相談室 学研修プログラムは,内容と質が高く,短期(夏休 コアを目指すことは重要である。引き続き,来年度も み・春休み)で飛躍的に語学力を伸ばすことが可能で 短期参加の学生の支援をしていきたい。 昨年度課題 ある。また,語学研修ではなく,教養講義や専門講義 と指摘した3点のうち,2)帰国留学生の交流,につ が受講可能な様々なプログラムもあり,単位取得や学 いては,新「留学のとびら」が立ち上がったのを機に, 位取得を目指している学生の留学のための,基礎学力 このプロジェクトに帰国留学生が参加するよう,取り と必要な語学運用力を体験させることが可能である。 組んでいきたい。また,3)海外留学室の周知,につ これらプログラムに参加し,交換留学や長期留学を行 いては,1年生を対象とした基礎ゼミ,そして,200名 う前提条件を現地で調査したり,協定校の学生と話し ほどの1年生が参加する全学教育科目にて,海外留学 たりすることも,留学の動機付けとなり,その後の効 室と留学の魅力について90分の講義をおこなった。そ 果が期待される。交換留学や長期留学を希望している の後,相談に訪れる1年生が急増したので,手応えを 学生でも,多くは語学水準が留学の条件に達さないこ 感じている。来年度も同様の形で海外留学室の宣伝を とによって,断念するケースが少なくない。事前にこ おこなっていきたい。最後に,1)部局との連携につ のようなプログラムに参加し,語学力を上げることも いては,依然課題が残る。委員会等を通じ,部局との 当然ながら,体験し,モチベーションを高め,目標ス 連携をはかって海外留学室の周知をしていきたい。 -95- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 〈表1〉平成21年度 セミナー・説明会・オリエンテーション等開催記録 月日 時 間 テーマ 場 所 1 毎週水曜 12:15-12:45 海外留学入門セミナー 国際ボランティア 2 4月14日 12:05-12:45 プログラム説明会 モナシュ大学夏期 3 4月14日 13:00-14:00 英語研修説明会 ノースカロライナ州立 4 4月15日 12:15-12:45 大学夏期英語研修説明会 対象者 参加者数 備 考 留セ201教室 全学の希望者 177 学期中のみ開催(全23回) 留セ201教室 全学の希望者 10 講師:星川朗氏(CIEE) CALE フォーラム 全学の希望者 7 講師:櫻木真由美氏(MUELC) 留セ201教室 全学の希望者 7 IB 館012教 室 工学部の学生 50 CALE フォーラム 全学の希望者 6 第二回名古屋大学留学 CALE 7 6月23日 15:30-17:30 フェア フォーラム ( 「留学のとびら」主催) 全学の希望者 59 留セ201教室 全学の希望者 12 講師:後藤崇志氏 (日本英語検定協会) 30 講師:坂野尚美氏 (留学生相談室) 5 4月16日 17:00-18:30 工学部留学説明会 6 12:15-12:45 アデレード大学留学 説明会 8 6月24日 12:15-12:45 IELTS 説明会 9 7月2日 10 8月9日 11 11月5日 12 11月5日 13 11月15日 14 11月16日 15 11月17日 16 12月13日 17 12月16日 よりよい留学にするため に 必 要 な セ ル フ ケ ア: 16:30-18:00 知ったら得するメンタル ヘルスセミナー 平成23年度派遣 大学間 10:30-12:00 交換留学 募集説明会 春期モナシュ大学英語 12:10-12:50 研修説明会 初心者向け TOEFL 16:30-18:00 セミナー フライブルク大学夏休み 12:15-12:45 ドイツ語コース説明会 TOEFL-iBT スキルアップ 16:30-18:00 セミナー 留学を考えている人の 13:00-14:15 ための就職活動セミナー 内閣府国際交流事業 12:15-12:45 説明会 (愛知県 IYEO 共催) 平成23年度大学間協定校 12:10-12:50 交換(派遣)留学 二次募集説明会 留セ207教室 全学の希望者 47 留セ201教室 全学の希望者 52 講師:昨年度プログラム参加学生, 櫻木真由美氏(MUELC) 留セ302教室 全学の希望者 7 講師:星川朗氏(CIEE) 留セ201教室 全学の希望者 10 CALL 教室 全学の希望者 27 CALE フォーラム 全学の希望者 20 留セ201教室 全学の希望者 7 留セ201教室 全学の希望者 20 18 12月22日 13:00-17:00 アメリカ大学院留学 シンポジウム CALE フォーラム 19 12月24日 10:00-12:00 アメリカ留学 個別相談会 CALE フォーラム CALE フォーラム 20 1月21日 15:00-18:00 交換留学シンポジウム ルノー財団プログラム 説明会 交換留学決定者のための 22 3月28日 10:00-12:30 異文化コミュニケーション 特別ワークショップ 協定校での夏の短期プロ 23 3月29日 10:00-12:00 グラム説明会 21 2月1日 12:10-12:50 今後留学予定のある 学生ならびにメンタ ルヘルスセルフケア に興味のある職員 CALE フォーラム 講師:Liz Pryzibilla 氏 (Centre for Professional and Continuing Education) 講師:Christian Tischer 氏 (フライブルク大学) 講師:澤木泰代先生 (早稲田大学) 講師:船津静代先生 (就職支援室) 講師:吉田恵氏(愛知県 IEYO) 講師: 大倉有麻氏(スタンフォード大学), 神谷哲央氏(カリフォルニア大学), 古川範英氏(インディアナ大学), 橋本道尚氏(マサチューセッツ工科大学) 講師:古川範英氏 (インディアナ大学) 全学の希望者 60 全学の希望者 5 全学の希望者 68 留セ201教室 全学の希望者 3 CALE フォーラム 平成23年度交換派 遣留学決定学生 25 CALE フォーラム 全学の希望者 50 講師:Helene Mairesse (ルノー財団) 講師:堀江未来氏(立命館大学) 〈表2〉平成22年度 海外留学入門セミナー月別出席者数 月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 参加者数 56 20 14 12 休 休 10月 11月 12月 29 13 11 1月 2月 3月 年間合計 16 6 休 177 1月 2月 3月 合計 21 26 15 261 〈表3〉平成22年度 海外留学個人相談月別利用件数 月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 面談件数 33 29 33 17 10 12 10月 11月 12月 34 15 -96- 16 教育交流部門・留学生相談室 〈表4〉全学間交流協定に基づく交換留学生 平成22年度派遣交換留学生 全体数 アメリカ ニューヨーク大学 ノースカロライナ州立大学 イリノイ大学 南イリノイ大学 シンシナティ大学 セント・オラフ大学 21名 10名 法学部 文学部 工学部 文学部 文学部 文学部 農学部 文学部 2年 4年 4年 2年 4年 2年 4年 1年 女子 女子 男子 男子 男子 女子 女子 女子 工学部 3名 国際言語文化研究科 文学部 文学部 2名 4年 男子 M1 2年 2年 女子 女子 女子 ケンタッキー大学 カリフォルニア大学ロサンゼルス校 フランス ストラスブールコンソーシアム グルノーブルコンソーシアム リヨン第3大学 中国 上海交通大学 南京大学 復旦大学 北京大学 韓国 漢陽大学校 イギリス ブリストル大学 ウォリック大学 オーストラリア アデレード大学 南オーストラリア大学 ドイツ フライブルグ大学 ブラウンシュバイク工科大学 ケムニッツ工科大学 デンマーク コペンハーゲン大学 カナダ トロント大学 ブラジル サンパウロ大学 インドネシア ガジャマダ大学 タイ 文学部 経済学部 0名 2名 国際言語文化研究科 法学部 0名 1名 文学部 1名 理学部 1名 国際開発研究科 1名 国際開発研究科 0名 2年 3年 M1 2年 女子 男子 女子 男子 男子 教育学部 工学部 法学部 教育学部 国際言語文化研究科 経済学部 1名 法学部 2年 3年 3年 3年 D1 2年 男子 男子 女子 女子 男子 男子 4年 男子 4名 経済学部 経済学部 経済学部 4年 3年 2年 男子 男子 女子 2年 男子 2年 女子 D1 1年 女子 女子 3年 M1 D1 2年 男子 女子 女子 女子 3年 女子 2年 女子 3年 M1 女子 男子 1年 D3 男子 男子 男子 女子 1名 法学部 1名 女子 男子 2年 女子 2年 男子 D1 女子 D1 女子 法学部 2名 医学系研究科 経済学部 4名 文学部 国際開発研究科 国際言語文化研究科 文学部 1名 教育学部 0名 0名 1名 経済学部 2名 情報文化学部 国際開発研究科 2名 工学部 文学研究科 0名 チュラロンコン大学 台湾 平成23年度派遣交換留学生 29名 11名 工学部 1年 文学部 1年 情報文化学部 2年 理学部 3年 工学部 1年 0名 国立台湾大学 -97- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 〈表5〉平成22年度 派遣留学プログラム参加者 プログラム名 参加者 ノースカロライナ州立大学夏期英語研修 9名 モナシュ大学春期英語研修 20名 モナシュ大学夏期英語研修 6名 梨花女子大学 International Summer College 3名 慶熙大学校 Global Collaborative プログラム 2名 慶熙大学校 韓国語コース 1名 香港中文大学 International Summer School 2名 名古屋大学長期留学支援プログラム 1名 備 考 うち1名は職員 -98- -99- タシケント国立法科大学 ソウル国立大学 ウズベキ タシケント スタン ソウル ソウル ソウル ソウル ソウル ソウル,水原 ソウル,水原 韓国 韓国 韓国 韓国 韓国 韓国 韓国 成均館大学校 慶熙大学校 梨花女子大学校 高麗大学校 漢陽大学校 延世大学校 バンドン工科大学 インド バンドン ネシア スラバヤ国立大学 タタ基礎科学研究所 インド スラバヤ ネシア ムンバイ インド 大学名 インド科学大学大学院 ガジャマダ大学 バンガロール インド インド ジョグジャカル ネシア タ 所在地 国名 大学/プログラム情報等 備 考 http://www.unesa.ac.id/ http://oia.ugm.ac.id/interface/ http://univ.tifr.res.in GPA 3.0以上(4.5スケール中) 韓国語研修,韓国語及び http://www.skku.edu/eng/ 9月,翌3月 韓国語による授業履修の場合,韓国 英語による一般授業履修 語能力の証明書 Sungkyunkwan University 春学期出願締切10月31日。 大学院生の受入に条件あり。 春学期出願締切11月30日 韓国語研修,韓国語及び http://intl.khu.ac.kr/admissions.html 英語による一般授業履修 http://intl.khu.ac.kr/inter_programs.html#con08 9月,翌3月 特になし Kyung Hee University GPA 2.5以上が望ましい 3月,9月 高麗大学支給の奨学金制度あり。 2011年3月からの渡航可。 女子大だが男子も留学可。 Ewha Womans University 韓国語研修,韓国語及び http://www.ewha.ac.kr/english/ 英語による一般授業履修 9月,翌3月 GPA 2.5以上 韓国語研修,韓国語及び http://www.korea.edu/m03/m03_02.php 英語による一般授業履修 春学期出願締切11月末 韓国語研修,韓国語及び http://www.hanyang.ac.kr/english/Exchanges/ 英語による一般授業履修 indexE3.html Korea University Hanyang University (3月) 9月 翌3月 ページ上部の「Programs」をクリック。 春学期出願締切10月30日 GPA 2.5以上。 韓国語での授業履修の場合,KLPT level 4相当の能力。英語での授業履 韓国語および英語による http://oia.yonsei.ac.kr/ 9月,翌3月 修の場合,TOFLE iBT 79もしくは 一般授業履修 IELTS 6.0。 学内応募時に2年次以上であること。 Yonsei University 韓国語研修費は現地大学が(一部)負担 ウズベキスタン政府指定の語学試験を事前に 受験すること? GPA 3.0以上 韓国語及び英語による一 http://oia.snu.ac.kr/index.html 9月,翌3月 韓国史専攻に応募の場合,韓国語能 般授業履修 力 http://www.ceebd.co.uk/ceeed/un/uz/uz005.htm Seoul National University ? 9月? Tashkent State Institute of Law ? 8月? Institut Teknologi Bandung 左 URL ページの下部にある「Overseas Student Admission」をクリック 大学 HP インドネシア語のみ http://www.ugm.ac.id/en/?q=info/procedurestudy-universitas-gadjah-mada ↑ こ の ペ ー ジ は Degree seeking 用 か short term か不明 韓国語研修,韓国語及び英語による一般授業履 修 http://www.iisc.ernet.in/ HP 上で International Students → Short-term http://www.irc.iisc.ernet.in/internationalstudentsstudents shortterm.html 渡航時3年次以上? インドネシア語及び英語 http://www.itb.ac.id/usm-itb/ 現地での履修分野は名大での専攻と による一般授業履修? 同じものに限られる? インドネシア語及び英語? 一般授業履修等? 8月? Universitas Negeri Surabaya 研究,活動が行えるだけの十分な英 ? 語力 一般授業履修等 履修形態 ? ? Tata Insitute of Fundamental Research 英語能力 応募条件 Universitas Gadjah 8月,翌2月 インドネシア語及び英語 Mada 随時 Indian Institute of Science 留学開始時期 ※以下のリストは、平成23年度(2011年度)の交換留学先として応募できる協定校の情報を概略化したものです。応募する大学の情報に「?」の箇所がある場合、海外留学室までご連絡下さ い。また、応募条件を含む詳細については、各協定校の HP で最新情報をご確認下さい。 ※ 「応募条件」は、受入れ大学が要求する条件を記述していますが、受入れ学科/専攻によって異なる場合がありますのでご注意下さい。 ※一部、2011年2月または3月からの渡航が可能な協定校もありますが、この時期での渡航を希望する場合、海外留学室まで早急に申し出てください。また、この場合は JASSO 奨学金の対象と なりませんのでご注意ください。 〈資料1〉平成23年度大学間協定による交換留学協定校リスト(2010年8月6日現在) 教育交流部門・留学生相談室 交換留学生向けの英語ページ見当たらず 新竹 台北 台北 台湾 台湾 台湾 タイ語による一般授業履 学部留学生 http://www.inter.chula.ac.th/inter/ TOEFL iBT 79-80以上(学科・専攻 修または英語による留学 向けは8月, exchangestudent/ExchangeAll.htm による)またはタイ語能力? 生プログラム履修 翌1月 Chulalongkorn University -100- 安徽省合肥市 中国科学技術大学 吉林 杭州 香港 香港 上海 上海 上海 西安 中国 中国 中国 中国 中国 中国 中国 中国 中国 西安交通大学 復旦大学 同済大学 上海交通大学 香港中文大学 香港大学 浙江大学 吉林大学 ハルビン市 中国 哈爾濱工業大学 国立台湾大学 国立政治大学 国立清華大学 チュラロンコン大学 バンコク タイ 9月,翌2月 National Taiwan University 春学期出願締切10月30日 中国語研修および中国 http://www.oia.ntu.edu.tw/oia/index.php/doc/ 語・英語による一般授業 view/sn/210/block/84 履修 2月,9月 3月,8月, 65歳以下 翌3月? Xian Jiaotong University 2月 8月? Fudan University Tongji University Long-term Chinese Language Program が留学 生向けプログラム? 2011年2月からの渡航可(1月15日締切) 2011年2月からの渡航可 2011年3月からの渡航可(出願締切1月31日) 中国語研修または一般授 http://www.fso.fudan.edu.cn/en/index.htm 業履修 http://www.fso.fudan.edu.cn/en/nondegree.htm 中国語研修または一般授 http://www.xjtu.edu.cn/en/ 業履修 交換留学生用のページにアクセスできず 中国語研修または一般授 http://www.istju.com/enindex.asp 業履修 中国語研修または一般授 http://www.sjtu.edu.cn/english/index/index.htm 業履修 9月,翌2月 Shanghai Jiaotong (語学研修の ? University み)? 英語による一般授業履 修,広東語または北京語 http://www3.hku.hk/oise/eng/intro.php 研修 英語または中国語による 一般授業履修,広東語ま http://www.cuhk.edu.hk/oal/ たは北京語研修 9月,翌1月 TOFLE iBT 80または IELTS 7.0 The University of Hong Kong 中国語研修または中国語 http://iczu.zju.edu.cn/Eg_index_show. (一部英語)による一般授 php?cate=2&xcate=14 業履修 中国語研修または一般授 http://en.jlu.edu.cn/University/subPage/ 業履修 prospectiveStudents/admissions.jsp 中国語研修または一般授 http://www.ustc.edu.cn/en/ 業履修? 事前中国語研修あり 2011年2月からの渡航可 (12月中旬締切)。 優秀な学生には現地大学での奨学金授与の可 能性あり。 春学期出願締切10月30日 中国語(一部英語)によ http://oic.nccu.edu.tw/english/admission/ る一般授業履修または中 incoming.php 国語研修 The Chinese University of Hong 9月,翌1月 TOFLE iBT 71,GPA 3.0 Kong 2月,9月, 中国語基礎能力,英語能力 翌2月 Zhejiang University 中国語プログラム:56歳以下 ? 8月,翌1月 3月,9月 (随時?) 春学期出願締切11月1日 http://www.cgi.ac.th/Home.aspx 中国語による一般授業も しくは英語による授業履 http://oia.nthu.edu.tw/index.php?lang=en# 修 ? 学部生:35歳以下 大学院生:45歳以 中国語研修または一般授 http://www.hit.edu.cn/ 下 HSK レベル6以上? 業履修 GPA 2.5以上 英語または中国語能力推奨 Jilin University University of Science and Technology of China 9月, 翌2月? 9月,翌2月 National Chengchi University Harbin Institute of Technology 9月,翌2月 National Tsing Hua University TOEFL iBT 61,IELTS 5.0 ? Chulabhorn Research Institute タイ語 ・ 英語研修及びタ http://www.ku.ac.th/eng2008/ イ語または英語による一 http://www.interprogram.ku.ac.th/KUSEP/ index.html#sec03 般授業履修 チュラポーン研究所・ チュラポーン大学院大学 バンコク タイ 5月,8月, 翌1月? 英語またはタイ語 バンコク タイ Kasetsart University クメール語による一般授 http://www.rupp.edu.kh/index.php 業履修 韓国語研修,韓国語によ http://www.mokpo.ac.kr/eng/main/main.jsp る一般授業履修 カセサート大学 3月,8月? 韓国語能力 Mokpo National University 春学期出願締切11月下旬 現地で奨学金応募可能。 韓国語研修,韓国語およ び英語による一般授業履 http://eng.gnu.ac.kr/sub/03_03.jsp 修 クメール語の読み書き能力 9月,翌3月 GPA 2.0以上 Gyeongsang National University Royal University of 11月 Phnom Penh 木浦大学校 王立プノンペン大学 木浦 韓国 慶尚大学校 カンボ プノンペン ジア 慶尚南道・ 晋州市 韓国 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 http://www2.warwick.ac.uk/services/ international/prospective/ http://www.shef.ac.uk/studyabroad/overseas/ prospective http://www.bris.ac.uk/international/ studyabroad/ ? 9月 ? TOEFL iBT 80~105,又は IETLTS 一般授業履修 10月,翌1月 6.5~7.5(専攻によって異なる) GPA 3.0,TOEFL iBT 80,又は IELTS 6.0(受入れ学部によって異なる。ス 9月,翌2月 コアが達していない場合については, (full year は http://www.shef.ac.uk/studyabroad/ 一般授業履修 overseas/prospective/entry.html 9月のみ) ページから「English Language Fact sheet」をダウンロードの上,参照) GPA 3.2(科学・工学系学部は3.5)。 TOEFL iBT 100-114, 又 は IELTS 6.5-7.5(学部によって異なる)。 7月~8月に STABLE を履修する場 一般授業履修 10月,翌1月 合は TOEFL iBT 79,又は IELTS 5.5 以上(英文学,法学,経済は TOEFL iBT 90, 又 は IELTS 5.5 Writing 以 上)。 GPA 3.0以上 IELTS 7.0(各セクション7.0以上), TOEFL iBT 105(各セクション26以 一般授業履修 上)。 ス コ ア が 達 し て い な い 場 合,Presessional コースを修了すれば入学可 能。 ? 9月 8月 翌1月? 9月,翌2月 中級以上のフランス語能力 Hanoi University of Science and Technology The Mongolian University of Science and Technology National University of Mongolia National University of Laos University of Warwick University of Sheffield University of Bristol University of London SOAS Universita di Catania Université de Genève モンゴル ウランバートル モンゴル科学技術大学 モンゴル ウランバートル モンゴル国立大学 イギリス シェフィールド シェフィールド大学 ブリストル大学 ロンドン大学 SOAS イギリス ブリストル イギリス ロンドン ハノイ工科大学 東北大学 北京大学 清華大学 -101- シチリア島 カターニア ジュネーブ イタリア スイス ジュネーブ大学 カターニア大学 ウォリック大学 ヴィエンチャン ラオス国立大学 市 イギリス コベントリー ラオス ベトナム ハノイ 瀋陽 9月 翌3月 Northeastern University 中国 中国語研修または一般授 http://english.pku.edu.cn/Admission/ 業履修 InternationalStudents/HowtoApply/ 9月 翌2月? Peking University 北京 中国 中国語研修または一般授 http://intlstudent.cic.tsinghua.edu.cn/EN/index. 業履修 html 2月,9月? 2年次以上 Tsinghua University 北京 中国 中国語研修または一般授 http://english.hust.edu.cn/ 業履修 華中科技大学 Exchange Scholars 以降の欄参照 2011年2月からの渡航可(出願締切12月30日) CILS レベル2相当のイタリア語力? ? ? ? ? http://www.must.edu.mn/must_en/index.php http://www.hut.edu.vn/web/hut/home http://www.soas.ac.uk/admissions/international/ ise/ ? フランス語(大学院は英 語も)による一般授業履 http://www.unige.ch/international/index_en.html 修 イタリア語研修および一 http://www.unict.it/Pagina/Portale/Relazioni_ 般授業履修? Internazionali_1.aspx ? モンゴル語研修および一 http://web.num.edu.mn/Default.aspx?alias=web. 般授業(モンゴル語)履修 num.edu.mn/eng ? ? HP イタリア語のみ 有料英語研修有。 夏の語学研修コース STABLE は有料(英語レ ベルにより,英語研修の期間と専門科目の履 修開始ができる時期を5つのオプションから 選択可) (http://www.bris.ac.uk/international/ studyabroad/stabel.html) HP 機能せず 2011年3月から渡航希望の場合,要事前相談 一般授業履修の場合 HSK レベル6以 中国語研修または一般授 http://www.sie.neu.edu.cn/Pages/En/Index.aspx (12月10日締切) 上 業履修 ? 9月 翌2月? Huazhong University of Science and technology 武漢 中国 中国語研修または一般授 http://hwxy.nju.edu.cn/English/Default.aspx 業履修 南京大学 Nanjing University 2月,9月 南京 中国 教育交流部門・留学生相談室 4月,10月 Albert-LudwigsUniversitat Freiburg フライブルク大学 ブラウンシュバイク工科 大学 フライブルグ ブラウンシュ バイク ミュンヘン ドイツ ドイツ ドイツ http://www.ub.edu/web/ub/en/estudis/ カタラン語およびスペイ estudiar_UB/estudiants_estrangers/estudiants_ ン語による一般授業履修 estrangers.html -102- 英語およびドイツ語によ http://www.studium.uni-freiburg.de/ る一般授業履修 international-en/incoming-en/austausch-en ドイツ語(一部英語)に http://www.tu-chemnitz.de/verwaltung/inter_ よる一般授業履修,ドイ stud/exchange/exchange.html ツ語研修 Council of Europe レベルで A2~ B1 一般授業履修 以上のフランス語能力 9月,翌1月 (GUEST Program は 9月のみ) パリ第7−ドニーディド ロー大学 パリ東大学 フランス パリ フランス パリ ? 9月 Universite de Strasbourg フランス グルノーブル Université ParisEst ? Université Pierre Mendes ピエール・マンデス=フ ランス大学(グルノーブ ル第二大学):社会科学 フランス グルノーブル 9月 翌2月? ? スタンダール大学(グル Université ノーブル第三大学):文 学・言語学・コミュニケー Stendhal ション フランス グルノーブル Universite Paris7Denis Diderot 一般授業履修 9月,翌1月 ジョセフ・フリエ大学(グ Université Joseph (GUEST 中級以上のフランス語能力 ルノーブル第一大学) :科 Program は Fourier 学,技術,医学 9月のみ) ? ? 一般授業履修 http://www.univ-paris-est.fr/fr/ http://www.univ-paris-diderot.fr/ フランス語(一部英語)に よる授業履修およびフラ http://www.unistra.fr/index.php?id=homepage ンス語研修 大学院生のみ?詳細なし ? CUEF による有料フランス語研修(http://w3.ugrenoble3.fr/cuef/accueil.php3)。 http://www.upmf-grenoble.fr/00702729/0/ fiche___pagelibre/&RH=1263814708928 http://webu2.upmf-grenoble.fr/docs/livret_2010_ bdf.pdf 3年次以上の学部生? フランス語中級以上 夜間有料フランス語コースも有? CUEF(http://w3.u-grenoble3.fr/cuef/accueil. php3) http://www.u-grenoble3.fr/87659270/0/fiche___ pagelibre/ 一般授業履修 フランス語能力(DALF)? 現地アリアンスフランセーズによる無料フラ ンス語コース履修可能 http://www.grenobleinp.fr/1175687912603/0/fiche___article/ 事前(9月)ドイツ語研修あり(有料) ドイツ語補習あり http://www.sz.tu-bs.de/en/ 事前有料ドイツ語コース(8月,9月)あり。 http://www.sli.uni-freiburg.de/index_html-en/ view?set_language=en 現地奨学金への応募可 有料のドイツ語コースあり(http://www.tuchemnitz.de/sprachenzentrum/kurse/daf/ kursangebot.php)。 現地で奨学金に応募可能。 事前(3週間)・学期中デンマーク語研修あり 応募は学部生のみ対象。 学期中のカタラン語およびスペイン語コース あり(有料)。 学期中のスウェーデン語研修あり http://www.ujf-grenoble.fr/07883930/1/fiche___ pagelibre/ CUEF による有料フランス語研修(http://w3.uhttp://www.ujf-grenoble.fr/servlet/com.univ.utils. grenoble3.fr/cuef/accueil.php3)。 LectureFichierJoint?CODE=1274177847630&LA NGUE=0 http://www.grenoble-inp.fr/international/ study-at-grenoble-inp-239262.kjsp?RH=INPG_ INTERNA ? ? 一般授業履修 Institut National グルノーブル理工科大学 Polytechnique de (グルノーブル第四大学) Grenoble フランス グルノーブル フランス語(一部英語)に http://www.grenoble-univ.fr/jsp/fiche_pagelibre. よる一般授業履修とフラ jsp?CODE=41754716&LANGUE=1 ンス語研修 中級以上のフランス語能力 9月,翌1月 (GUEST Program は 9月のみ) L'Université de Grenoble ドイツ語および英語によ http://portal.mytum.de/international/index_html る一般授業履修 中級以上のドイツ語能力,英語能力 10月,翌4月 Technischen Universitat Munchen 2年次以上(多くは3年次以上),中級 ドイツ語および英語によ http://www.tu-braunschweig.de/international以上のドイツ語能力,英語能力? る一般授業履修 students 中級以上のドイツ語能力,英語能力 中級以上のドイツ語能力 グルノーブル大学群 フランス ストラスブール ストラスブール大学 http://www.inter.uadm.uu.se/ http://www.uu.se/en/node179 3年 次 以 上,TOEFL iBT 80, 又 は 英語およびデンマーク語 http://www.ku.dk/international/english/ IELTS 6.0 による一般授業履修 カタラン語かスペイン語能力 名大での専攻と同様の科目履修 英語およびスウェーデン 語による一般授業履修 フランス グルノーブル ミュンヘン工科大学 Technische Universität Carolo4月,10月 Wilhelmina zu Braunschweig 4月,10月 Technische Universität chemnitz ケムニッツ工科大学 ケムニッツ ドイツ 9月,翌2月 9月,翌2月 Universitat de Barcelona 8月,翌1月 英語能力 University of Copenhagen バルセロナ大学 スペイン バルセロナ Uppsala Universitet デン コペンハーゲン コペンハーゲン大学 マーク ウプサラ大学 スウェー ウプサラ デン 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 -103- ビルケント大学 トルコ サンパウロ大学 ブラジリア連邦大学 ブラジル サンパウロ ブラジル ブラジリア アンカラ モナシュ大学 南オーストラリア大学 オースト アデレード ラリア オースト メルボルン ラリア フリンダース大学 オースト アデレード ラリア シドニー大学 アデレード大学 オースト アデレード ラリア オースト シドニー ラリア ワルシャワ大学 ポーラ ワルシャワ ンド オーストラリア国立大学 リヨン第3大学 フランス リヨン オースト キャンベラ ラリア ポンゼショセ工科大学 フランス パリ http://info.anu.edu.au/studyat/International_ Office/exchange/incomingindex http://www.usyd.edu.au/future_students/study_ abroad/ GPA 3.0 TOEFL iBT 90( 各 科 目20), 又 は 一般授業履修 IELTS 6.5(各科目6.0)。法学専攻の 場合は TOEFL iBT 100(各科目22) GPA 3.0 TOFLE iBT 90(Writing 21),又は 一般授業履修 IELTS 6.5(各科目6.0) 3月? http://www.bilkent.edu.tr/index.html ポルトガル語による一般 http://www.usp.br/internacional/home. 授業履修 php?idioma=en 英語による一般授業履修 基 礎 的 な ポ ル ト ガ ル 語 及 び 英 語 能 ポルトガル語研修,一般 http://www.unb.br/ 力? 授業履修? 8月,翌2月 ポルトガル語能力 University of São Paulo Universidade de Brasilia 9月,翌2月 英語能力 Bilkent University http://www.monash.edu/international/ studyabroad/exchange.html http://www.unisa.edu.au/studyabroad/default. asp http://www.unisa.edu.au/studyabroad/ studyabroad09.pdf http://www.i-studentadvisor.com/flinders/sa/ english/index.html http://www.flinders.edu.au/internationalstudents/ TOFLE iBT 79,又は IELTS 6.0(学 科・選考によりスコアが異なる可能性 一般授業履修 あり) TOFLE iBT 80(Writing・Speaking 20) ,又は IELTS 6.0 (Writing・Speaking 一般授業履修 6.0)。学科・専攻により上記より高い スコア要求。 http://www.international.adelaide.edu.au/study/ sa-ex/apply.html ポーランド語および英語 による授業履修,ポーラ http://www.uw.edu.pl/en/ ンド語研修 GPA 3.0。TOFLE iBT 80(Writing・ Speaking 20,Reading・Listning 18), 又 は IELTS 6.0(Writing・Speaking 6.0 Reading・Listening 5.5)。法学専 一般授業履修 攻の場合は上記より高いスコア設定。 スコアが満たない場合,PEP(備考参 照)修了により入学が考慮されうる TOEFL 87-109 (学部によって異なる) GPA 3.0以上 学部生:TOFLE iBT 90(Writing 22 その他20)又は IELTS 6.5(Reading・ Listening 6.5 その他6.0)。 一般授業履修 Monash University 7月,翌2月 院生のスコアは専攻によって異なる (http://www.monash.edu/ international/studyabroad/ applications/english.html) 7月,翌3月 7月,翌2月 University of South Australia University of Sydney 7月,翌3月 Flinders University 7月,翌2月 7月,翌2月 University of Adelaide Australian National University 10月, 翌2月 Uniwersytet Warszawski http://www.univ-lyon3.fr/en/programmes/ フランス語中級以上(DELF A2以上 英語およびフランス語に exchange-students/studying-at-lyon-3-in-an9月,翌1月 推奨)または TOFLE iBT 80点相当 よる授業履修,フランス international-program-336345.kjsp?RH=INS語研修 の英語力 ACCUEIL_EN http://www.enpc.fr/english/int_index.htm Université JeanMoulin Lyon 3 大学院生レベル相当,フランス語能 一般授業履修 力,英語能力 8月 Ecole Nationale des Ponts et Chaussees HP ポルトガル語のみ。 プログラム開始月は国内事情により変更する ことがある。開始が4月(平成24年度)となる 場合,JASSO 奨学金受給対象とならないので 注意。 学期中のポルトガル語研修有り 2月期出願締切10月5日 春学期出願締切11月15日 2月期出願締切11月15日 政府奨学金受給の可能性あり http://www.monash.edu/international/ studyabroad/fees/scholarships.html インターンシッププログラム希望者は3年次以 上。 事前語学研修可能(有料) 2月期出願締切11月1日 インターンシッププログラム希望者は3年次 以上 2月期出願締切11月15日 3月期出願締切9月30日 有料の事前語学研修あり(http://www.adelaide. edu.au/elc/courses/pep/)。 交換留学生に奨学金の可能性あり。 2月期出願締切12月1日 事前フランス語研修有 教育交流部門・留学生相談室 -104- ヨーク大学 カナダ トロント York University University of Toronto トロント大学 カナダ トロント 9月,翌1月 5月,9月, 翌1月? http://www.utoronto.ca/student.exchange/ utprofile/index.html http://international.yorku.ca/exchange/ incoming/incoming.htm TOFLE iBT 100,Writing 22(専攻 によって異なる。裁量スコアとして, 学部生で TOEFL iBT 89-99 Writing 一般授業履修 19-21,大学院生で TOEFL iBT 9399, Writing 22の裁量スコアが設けら れている)。IELTS 6.5,各6.0。 GPA 2.0(学部によって異なる)。 TOFLE iBT 83~103(学科により異 一般授業履修 なる),IELTS 6.5~7.0 http://www.ucla.edu/ 学 部:TOFLE iBT 83,IELTS 7.0 9月,翌1月, 大学院:TOFLE iBT 87(各セクショ 一般授業履修 3月? ンによる点数基準は異なる) TOFLE iBT 71,又は IELTS 6.0。 http://admissions.tc.umn.edu/admissioninfo/intl. html http://www.isss.umn.edu/exchange/ http://www.stolaf.edu/ http://www.uky.edu/ UCLA 一般授業履修 GPA 2.5 TOEFL iBT 79,又は IELTS 6.5(専 一般授業履修 攻により異なる) TOEFL iBT 80,又は IELTS 6.0 一般授業履修 カリフォルニア大学ロサ ンゼルス校 アメリカ レキシントン アメリカ ロサンゼルス ミネソタ大学 アメリカ ミネソタ州 8月,翌1月 セント・オラフ大学 アメリカ ミネソタ州 一般授業履修 http://www.ncsu.edu/studyabroad/intl/index. html 8月,翌1月 学 部 生:TOFLE iBT 70 又は IELTS 6.5 大学院生:TOFLE iBT 80又は IELTS 6.5 MBA:TOFLE iBT 100 North Carolina State University 9月 University of Kentucky ノースカロライナ州立大 学 ノースカロラ アメリカ イナ州 http://www.nyu.edu/admissions/undergraduateadmissions/applying-for-admission/specialadmission.html GPA 3.0 TOEFL iBT 100,IELTS 7.0( 法 科 大学院,MA program in Humanities 一般授業履修 and Social Thought は iBT 105 相 当)? New York University ケンタッキー大学 ニューヨーク大学 ニューヨーク アメリカ 州 https://internationalaffairs.uchicago.edu/ students/prospective/ TOFLE iBT 104( 各 26 ?),IELTS 一般授業履修 7.0(各7.0),専攻によって異なる 9月? The University of Chicago 9月,翌1月 シカゴ大学 アメリカ シカゴ http://admissions.uc.edu/international/ requirements/requirements-transfer.html TOFLE iBT 66,又は IELTS 5.5。選 考により異なる(http://admissions. 一般授業履修 uc.edu/international/requirements/ requirements-transfer.html を参照)。 6月,9月 翌1月,3月 University of Cincinnati University of Minnesota, Twin Cities シンシナティ大学 アメリカ オハイオ州 http://www.ips.siu.edu/PS/ Southern Illinois University Carbondale 8月 南イリノイ大学カーボン デール校 アメリカ イリノイ州 8月(2学期 滞在の学生 は8月のみ 受付) 翌1月 http://admissions.illinois.edu/apply/index.html 学部生:TOFLE iBT 68 大学院生:学部生3年~4年次の GPA 2.7,院の GPA 3.0。Ph.D. は院の GPA 一般授業履修 3.25。TOFLE iBT 80 又は IELTS 6.0 (専攻により異なる) 8月,翌1月 St. Olaf College イリノイ大学アーバナ・ シャンペーン校 アメリカ イリノイ州 https://www.studyabroad.illinois.edu/index. cfm?FuseAction=Abroad.ViewDocument&File_I D=060F76487B017102047206701A0B73067914037 C720A1C72710203727571700502730506017770 GPA 2.7~3.2以上。 TOEFL iBT 79。 IELTS 7.0(各科目6.0以上),もしく 一般授業履修 は6.5(各科目6.0以上)かつ現地での プレイスメントテスト受講。各学部 により異なる。 Univesity of Illinois at UrbanaChampaign 学 期 中 の 英 語 サ ポ ー ト コ ー ス あ り(http:// international.yorku.ca/exchange/incoming/ info.htm#12)。夏の英語プログラム(有料)あ り(http://www.yueli.yorku.ca/programs/slp. php)。 http://www.ieo.ucla.edu/ExchangePrograms/ nagoyaincoming.htm の 情 報 と http://www. admissions.ucla.edu/prospect/intl.htm の 情 報 異なるため確認中 学期中英語研修履修可能。 CESL(http://www.uky.edu/AS/English/ cesl/) 交換留学生は主に学部レベル対象。 任意の有料英語研修あり(2ヶ月前までに申し 込み)http://www.cce.umn.edu/esl/ * 場 合 に よ り 1 学 期 間 の Global Training Initiative コース(GTI)への参加も可能。ただ し,GTI 参加こ関しては,要相談。コースの詳 細は http://www.ncsu.edu/gti 有料語学研修受講可能? 事前語学研修(有料)あり http://www.iei.uiuc. edu/ 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 〈資料2〉 マサチュー セッツ州 アメリカ ? ハーバード・イェンチン 研究所 ラグナ州 フィリ ピン Harvard-Yenching Institute Southeast Asian Regional Center 東南アジア地域農業教育 for Graduate Study ? 研究センター(SEARCA) and Research in Agriculture (SEARCA) 上海 中国 8月 The Shanghai Institute of ? Organic Chemistry 7月 Oberlin College University of Pune 留学開始時期 中国科学院上海有機化学 研究所 大学名 オバーリン大学 マハラシュトラ プネー大学 州・プネー 所在地 アメリカ オハイオ州 インド 国名 授業料が有料となる大学等 応募条件 履修形態 大学/プログラム情報等 ? ? 大学院生のみ TOEFL iBT 100 ? ? ? 一般授業履修 http://www.harvard-yenching.org/ http://web.searca.org/web/ http://www.sioc.ac.cn/esioc/1.htm http://www.oberlin.edu/ 英語能力を有する者 (現地での能力 テストで要件を満たさない場合有料 英語コース履修が義務)http://www. 英語研修および一般授業 http://www.unipuneintcent.in/ unipuneintcent.in/international_ 履修 centre_html_files/spoken_english. htm 授 業 料 有 料 現 地 学 生 の5倍 http://www. unipuneintcent.in/international_centre_html_ files/adm_instruction.htm 備 考 教育交流部門・留学生相談室 -105- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 -106- 教育交流部門・留学生相談室 -107- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 異文化交流実践を授業へフィードバック 浮 葉 正 親 ・ 田 中 京 子 8 June 10 Ⅰ. 基礎セミナーA(前期)「 英語で学ぶ日本… 文化 」(田中京子)〈新規開講〉 9 June 17 10 June 24 11 July 1 1.授業のねらい 日本文化について学び,伝統文化に実際に触れるこ 12 July 2 とによって,自分なりの見解を持ちそれを英語を使用 13 July 15 して説明できるようにする。 14 July 22 日本文化といってもその捉え方は様々であるが,こ 15 July 29 Kimono: Introduction Kimono: Practice (Open seminar) Sho-do: Intoduction Prof. Kato Katsuko Sho-do: Practice Prof. Fujii Naomi Presentation (Open Students seminar about Origami) Presentation (Open Students seminar about Shodo) Presentation (Open seminar) Summary の授業では特に,日本の伝統文化として語られること が多い華道,書道,舞踊,着物,折り紙などをとりあ 4.評価 げる。その姿や心を学び,専門家の協力を得ながら実 4-1 ワークショップの授業化 際に体験し,理解する。英語を使用しながら,日本文 1990年代より行ってきた留学生センターのワーク 化について自分なりに説明できるようになることをめ ショップの内容を授業化することはかねてからの課題 ざす。 であった。今年度,日本文化に関するワークショップ の授業化が実現した。これまでボランティアとして協 2.受講者及び講師 力してきた専門講師たちにも継続して担当していただ 受講生は文系・理系6学部の1年生12名,留学生, き,教養教育院からわずかではあるが講師謝金を支出 日本人学生,外国で育った日本人学生などであった。 した。日本人も含めた学部生たちが,新入の留学生と TA は学部時代に留学を経験している生命農学研究科 共に実習を経験する,という,理想的な環境を持つこ 1年の家田真理子さんに,また留学生センター相談室 とができた。 スタッフ柴垣さんにも毎回参加してもらった。 4-2 英語による授業環境 3.授業内容・スケジュール 最初に“World Englishes”の考え方を紹介し,学生 以下の通りである。 たちには,持てる言語運用力を駆使して,場の状況に Kiso Seminar 2010 Japanese Culture in English 合わせてコミュニケーションすることを促した。授業 Date and Time: Every Thursday 16:30–18:00 From 中は,一人の教師対学生という関係でなく,スタッフ April 15 to July 22 & Saturday, May 29, Except June 3 3名も多様な英語で多様な考え方を分かち合うように (NU Festival) Place: ECIS 201(To be announced later for open seminars) No. Date 2 April 22 Content What is the Japanese Culture? Origami: Introduction 3 May 6 Origami: Practice 4 May 13 Ka-do: Introduction 5 May 20 Ka-do: Practice 1 April 15 6 May 27 Buyo: Introduction May 29 Buyo: Practice 7 (Saturday) (Open seminar) し,学生たちが間違いを恐れず発言できる環境作りを 工夫した。TA の家田さんも,海外から見た日本を紹 介しつつ,積極的に発言し,学生たちのロールモデル Special Lecturer となってくれた。学生たちの英語習得レベルは,ほと んどが入学試験対策レベルであったが,それをコミュ ニケーションの中で活用する場を提供できたと考えて Prof. Ikei Keiko いる。 Prof. Okada Kakei Prof. Zuiho Toyoe 4-3 公開発表 最後の発表は,学生たちが日本の伝統文化について -108- 教育交流部門・留学生相談室 調べ,考察したことを,英語で紹介した。公開発表会と 7/1 発表準備 し,留学生たちの参加を得て,質問や話し合いも行わ 7/8 発表準備 れた。学部生にとって,大学院レベルの留学生たちを 7/15 韓国に関して調べたことを発表する ⑴ 前に発表することは挑戦度が高かったと思われるが, 7/22 韓国に関して調べたことを発表する ⑵ 最後には留学生から「とても役にたったので発表原稿 まとめ を入手したい」という希望も出され,成果を実感する 3-2 グループ発表のテーマ ことができた。 グループ1:韓国社会の特徴 Ⅱ. 基礎セミナーA(前期)「 韓流ドラマから 『パッチギ』までー日韓比較文化論のすすめ 」 (浮葉正親)〈新規開講〉 グループ2:韓国の教育 グループ3:韓国の家族 グループ4:韓国の学校 1.授業のねらい 4.評価 日本人にとって,韓国は「似ている」ようでどこか 日本人学生を主な対象として,韓国や在日コリアン が「違う」,ちょっと気になる国である。この授業で をテーマにした授業をするのは,これが初めての経験 は,日本人が韓国の社会や文化のどこに違和感を抱く であった。そのため,1時間ずつ学生の反応を確認し のかを吟味し,韓国という<鏡>に映った日本人の自 ながら授業を進めざるを得なかった。韓流の影響で特 画像を議論していく。また,日本と韓国(朝鮮半島) 定の俳優や歌手,ドラマに対する知識はあるものの, との歴史的な深い関係についても理解を深め,日本を 隣国の人々の日常生活についてはほとんど何も知らな 東アジア漢文化圏のなかに位置付ける,広い視野を獲 い。そんな学生たちの関心を引きつけるためにさまざ 得するのがこの授業のねらいである。 まなビデオを見せながら授業を進めたので,どちらか と言えば講義形式の授業が多くなってしまった。終了 2.受講者及び講師 時のアンケートに「みんなと話す時間がもっとあれば 受講生は文系・理系6学部の1年生12名であり,そ よかった」と言う意見があり,次年度の改善点とした のうち3名が韓国人留学生であった。TA には,国際 い。 言語文化研究科 D3の鄭在恩さんにお願いした。講師 また,この授業のもう一つのねらいは在日コリアン は浮葉正親,留学生相談室の松浦まち子教授が数回授 に対する関心を持ってもらうことであったが,充分な 業に参加した。 時間が取れず,グループ発表でもこのテーマが選ばれ ることがなかった。次年度は講師を招くなど,学生た 3.授業内容・スケジュール ちの在日コリアンに対する関心を深める工夫をしてい 3-1 スケジュール きたい。 4/15 オリエンテーション 4/22 日本人と韓国人,どこが違うの? Ⅲ.教養科目「留学生と日本-異文化を通しての 5/6 日本人の韓国体験記を読む 日本理解-」(代表:浮葉正親) 5/13 激しい受験競争と母の祈り 5/20 子どもと向き合う韓国の父親 1.授業のねらい 5/27 現代に生きる儒教精神-韓国に嫁いだ日本 外国人留学生と日本人学生が討論や協同作業を通じ て,両者の日本に対する理解と相互の理解を深めるこ 人花嫁の葛藤 6/10 占いと巫俗(シャーマニズム)信仰 とを目的とする。名古屋大学内およびこの地域で異な 6/17 在日コリアンと日本社会-映画「パッチギ」 る文化を持つ人々が共に学び生きることの意味を考え とその背景 直し,多文化共生のあり方を模索する。 〈発表グループ分け〉 6/24 発表準備 -109- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 2.受講者及び講師 4.評価 学部生は17名(名大生14,他大学生3)。受講者(名 昨年に引き続き,グループ活動に対する評価を重視 大生)の学部別内訳は,文学部2,法学部2,経済学 し,全体の40%(発表30%+自己評価10%)とした。 部5,農学部4,医学部保健学科1であり,そのうち その他は,レポート30%,出席15%,クラス討論への 1名が留学生(韓国)であった。他大学生は,名城大 参加度15%(10%は自己評価とした)である。グルー 学2,愛知学院大学1,計3名。これに10月に渡日し プ発表に対する評価は,五つの評価項目を作り,4名 た日本語・日本文化研修生9名(韓国2,ウズベキス の教員による評価を15%,他の学生による評価を15% タン2,中国1,カンボジア1,スウェーデン1,ハ とした。結果的には,どのグループも積極的に発表に ンガリー1,スペイン1),日韓共同理工系留学生7 取り組み,24~29%を獲得した。発表のなかにはイン 名,短期交換留学生5名(台湾3,中国1,タイ1) タビューやアンケートによる調査の結果をパワーポイ を加え,日本人学生16/留学生22,計38名が受講した。 ントにまとめたグループも多く,全体に工夫が感じら 平成22(2010)年度は,浮葉正親(代表),田中京 れた。レポートについては,レポートの採点基準や採 子,松浦まち子,坂野尚美の4名がこの科目を担当し 点方法について再検討しなければならないと感じてい た。また,岩城奈巳が1コマを担当した。授業内容と る。 担当は以下のとおりである。 以下は,最終日に学生たちが提出したアンケートの 自由記述の抜粋である。 3.授業内容 ★ 留学生と関わることがほとんどなかったので,す 3-1 スケジュール及び担当者 ごく新鮮な感じでした。この講義を通して,海外と 10/4 オリエンテーション ⑴(全員) 日本の文化の違いや共通点などを自分で考える機会 10/18 オリエンテーション ⑵(全員) を得ました。今まで話したくても留学生と話すのを 10/25 異文化との出逢い(田中) 少し怖がっていてなかなかできませんでしたが,こ 11/1 留学生と日本社会(松浦) れからは自分からたくさん話しかけていければと思 11/8 グループ活動について(浮葉) います。 11/15 グループ発表準備(全員)* ★ 私は短期留学をしたいのでこの授業を選択した。 11/22 グループ発表準備(全員) 日本人として外国に行くのだから,日本って何なん 11/29 グループ発表と討論(全員) だということを少しでも明らかにしておきたかった 12/6 グループ発表と討論(全員) からだ。外国と日本の「違い」を見つけるために参 12/13 グループ発表と討論(全員) 加したのだが,いつの間にか外国と日本の「同じと 12/20 グループ活動から学ぶ(坂野), ころ」ばかりに目がつき,さらに「違い」とは個人 レポート提出について(浮葉) 差を含んでいることを発見した。何事も一概に決め 1/17 留学経験から日本を考える(岩城) つけることはできないと感じた。今後,自分が留学 1/24 まとめ した時もここで学んだ考え方やものの見方を大切に *1コマ分(90分)グループによる自主学習を課した していきたいと思う。 ★ この授業は授業の名前の通り,留学生と日本を接 3-2 グループ発表のテーマ 続するための大切な授業だと思いました。私には日 グループ1:迷信,信じますか? 本の社会,文化,習慣などを理解するために役立ち グループ2:日本人はなぜ飲ませたがるのか ました。この授業に参加して面白いと思ったのは, グループ3:なぜ日本ではお菓子を沢山食べるのか 授業で使われた方法です。例えば,絵を描いたり グループ4:日本人の遊び方 ゲームをしたりなど,このような方法で勉強するの グループ5:数字の縁起の由来 は面白くて楽しかったです。(留学生) グループ6:手塚治虫と日本のマンガ・アニメ 今年度は,海外留学担当の岩城准教授に依頼し, グループ7:ゴミの分別 韓国,アメリカ,スウェーデンに短期留学した学部 生3名をゲストに迎え,それぞれの留学体験を話し -110- 教育交流部門・留学生相談室 てもらった。これから留学を考えている学生たちに たり,授業の一部の進行役を担ったりした。積極性の 刺激を与えたようである。来年度も授業に取り入れ ある TA の補助は,授業に活気を与え,非常に有難 ていきたい。 かった。 Ⅳ.大学院授業「異文化コミュニケーション論 a/b」 : 国際言語文化研究科 多元文化専攻メディア プロフェッショナルコース(担当教員:田中京子) 4.授業内容 【前期】 ⑴ 異文化間コミュニケーションに関する疑似体験 学習と振り返り 2003年度に国際言語文化研究科の授業科目として開 ⑵ 異文化接触の事例とその考察 講した「異文化接触とコミュニケーション」は,今年 ⑶ 異文化コミュニケーション理論(文献購読:宿題) 度8年目となった。前期と後期とを分けての開講は3 ⑷ 文献についてのレポート(宿題,英語で執筆) 年目である。異文化コミュニケーションの理論と実践 ⑸ 文献についての討論 を核として少人数セミナー形式の授業を進めた。 ⑹ 期末レポート(事例解釈) 1.授業のねらい 【後期】 母語や背景となる文化が異なる人たちが,意思疎通 ⑴ 異文化コミュニケーション理論まとめ をはかりながら共に生活しようとする時,どんな創造 ⑵ 異文化接触の事例とその考察 や衝突があるか,文献購読や経験学習,討論を通して ⑶ 事例作成,発表,討論 考え学ぶ。 ⑷ 事例解釈のレポート(宿題,英語で執筆) コースの中では,共通言語として主に英語を使用し ⑸ 事例検討論文 て話し合いや実習を行うことによって,言語能力が 様々な人たちの間のコミュニケーションの特徴を実体 英語が使いたいという希望が主な動機で授業を受講 験し,積極的で公平なコミュニケーションについて考 した学生複数が,宿題の購読や討議準備に十分な時間 察する。 がとれず,中途辞退した。授業の目的や趣旨をシラバ スに明記すると共に,最初の授業でさらに周知し注意 2.参加者 を促すことが必要である。 前期,後期ともに,国際言語文化研究科・国際開発研 究科の大学院生,研究生,聴講生と,国際言語文化研 5.課題 究科の TA, 担当教員の約10名で毎回進め,必要に応 教員はこれまで行ってきた国際交流関連業務や留学 じて学内外の学習支援者の協力を得た。年齢50歳代か 生相談の中で培った異文化コミュニケーションに関す ら20歳代までの男女,出身は,スリランカ,台湾,中 る経験や知識を,個別教育(相談)だけでなく授業の 国,マレーシア,ブラジル,パキスタン,日本と様々 中でも生かすべくとり組み,また同時に,この授業を で,英語と日本語の運用能力も様々,他の協力者がい 個別教育に還元して相談活動を発展させることも意識 る時にはさらに多様なメンバーとなった。 している。個別教育と集団教育,教育と研究の接点と して,それぞれにさらに深みを持たせるため,このセ 3.TA:国際言語文化研究科 D2 Kanduboda A. P. B さん ミナー式授業を大切に考えている。 しかし現在までに発表されている文献の多くは,西 TA は異文化コミュニケーション学に以前から興味 欧から見た異文化コミュニケーションを扱うものであ を持ち,関連の研修を受け,国際キャンプの指導者な る。今後,さらに多文化からの視点をいかに学術的に どを行ってきた大学院生が担当した。毎週授業に参加 取り入れるか,また文化を本質主義的に捉えがちな傾 し,授業後に教員と反省と準備の時間を持ち,レポー 向を,現実のダイナミックな文化といかに擦り合わせ ト添削を補助すると共に,配布資料を提案して作成し ていくかを,課題として考えている。 -111- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 ~名古屋大学留学生相談室(740号室)活動報告~ 髙 木 ひ と み 後期は「自己紹介ビンゴ」, 「おにぎりアワー」, 「年賀状 はじめに 作り」などのテーマで行われた。他に6月には,他の 2010年度は,後期から産前産後休業・育児休業に入 国際交流グループと共同で「インターナショナル・フ るにあたり,これまで行ってきた活動がよりよい形で リーマーケット」を開催し,各グループの活動の幅を 継続されていくよう引き継ぎにつとめた。多くの教職 広げるための活動資金を得た。9月下旬には,2日間 員や学生の協力により,後期も活動が発展していき, にわたり,コーヒーアワー合宿(日帰り合宿)を開催 名古屋大学のキャンパスにおいて必要とされる国際教 し,コーヒーアワーの学生グループがさらに学生の主 育交流の場や予防教育の場を生み出すことが可能と 体性を活かしながら活動していける団体となるよう, なった。本報告では,2010年度の活動を「国際教育プ コーヒーアワーのミッションの確認,組織運営,活動 ログラム」,「相談活動」,「セミナー・地域連携・その 記録のテンプレート化,活動計画等の話し合いを行っ 他」の3つに分けて報告する。 た。この合宿により,学生スタッフたちが,組織運営 を意識しながら,コーヒーアワーのグループについて 考えられるようになり,より主体的にコーヒーアワー Ⅰ.国際教育プログラム の活動に取り組めるようになった。 ◆多文化間ディスカッショングループ 後期のコーヒーアワーの開催とコーヒーアワー学生 2010年度前期は,2グループ(日本語グループ,英 スタッフの教育的支援は,留学生相談室事務室の白石 語グループ)開催した。日本語グループは,参加者11 氏が担当した。白石氏と学生スタッフの協力により, 名(留学生7名,一般学生4名)とファシリテーター1 後期もキャンパスにとって必要な交流とコミュニケー 名,英語グループは,参加者11名(留学生6名,一般 ションの場であるコーヒーアワーを開催することが可 学生5名)とファシリテーター2名で行われた。両グ 能となった。 ループとも参加学生が活発にコミュニケーションを取 り,様々なテーマについて語り合うことができた。特 ◆グローバル・リーダー育成プログラム に英語グループにおいては,言語能力の違いなどによ 本年度のグローバル・リーダー育成プログラムの, りディスカッション方法の工夫が必要とされたが,少 第一回目は,2010年9月に「自分の強みを発見して世 人数グループでディスカッションしてから全体で話す 界に羽ばたこう!」をテーマに開催した。今回のプロ 形式を取り入れ,英語を用いて積極的に関われる環境 グラムは,学生たちが自分の強みを発見し,今後の学 を作っていった。多文化間ディスカッショングループ 生生活において何かにチャレンジする際(例えば,海 は,グループ運営の際に,高度なグループ・ファシリ 外へ行く,留学生活を充実させる,リエントリー<異 テーション能力が求められ,ファシリテーターのスー 文化再適応>を経験する,就職活動に取組む,社会人 パービジョン(助言・指導)が必要とされるため,代 になる等)に,役立つ力を強化することを目的に行わ 替教員が配置されない2010年度後期は,休止すること れた。九州産業大学の平井達也氏を講師として招き, とした。 24名の学生(留学生5名)が参加した。平井氏は,ポ ジティブ心理学を用いた活動を通して,自分自身の生 ◆スモールワールド・コーヒーアワー 活を丁寧に振り返り,自分の「強み」や「レジリエン 2010年度は6回開催し,参加者は約400人であった。 ス(困難な状況においても,それに上手く対処し,乗 前期は「自己紹介ビンゴゲーム」, 「日本の Kids 体験 り越えることのできる能力)」を発見する機会を提供し &ミニコンサート」,「グループ対抗ワールドクイズ」, た。参加学生たちは,自分自身を発見するだけではな -112- 教育交流部門・留学生相談室 く,グループワークを通して,他の人の「強み」も発 バーが集い,家庭や生活などの近況報告,研究の進捗 見する機会に恵まれ,日常生活において応用できる力 状況などを共有し,次月の博士論文研究の計画を立 を身につけることができた。 て,発表しあった。参加学生たちにとっては,研究を 第二回目は,国際交流協力推進本部の虎岩氏と渡部 進める上で良いペースメーカーになっているとの声が 氏が引き継ぎ,学生による実行委員と共に,2010年 聞かれた。2010年度後期からは,このグループは休止 12月に名古屋大学国際学生フォーラム(International するが,またより学生のニーズに合わせたグループと Forum at Nagoya University: IF@N)を開催した。 して再開できたらと考えている。 これまで筆者は,名古屋大学における国際交流活動 を教育的にサポートしてきたが,学生が主体的に活動 ◆ Nagoya University Global Network している国際交流のレベルを上げ,さらに幅を広げる 昨年度から始めた名古屋大学内における国際交流 ために,本フォーラムのようなプログラムを開催でき や異文化理解を促進することに関わる学生グルー たらと考えてきた。本フォーラムは,神戸大学の「留 プ の ネ ッ ト ワ ー ク 活 動「Nagoya University Global 学生と日本人学生による国際学生交流シンポジウム」 Network」を留学生センターの田中氏,柴垣氏が引き や,静岡県留学生等交流推進協議会の「話っ,輪っ, 継ぎ,今年度も本ネットワークの活動報告書「名古屋 和っ!」日本学生支援機構東海支部の「地球家族セミ 大学国際交流グループ 2010年度活動報告書」を発行 ナー」などの取組みを参考にし,留学生や一般学生が することが可能となった。本年度より, 「スモールワー 共に「学生」という同じ立場を分かちあいながら,自 ルド・コーヒーアワー」,「ヘルプデスク」,「ランゲー 由活発に討議し,国際理解や相互理解を深め,国際的 ジシャワー」,「留学のとびら」,「ACE」,「NUFSA」 に活躍できる人材を育成することを目的とした。教員 に加えて, 「IF@N」が参加し,報告書を作成した。今 コーディネーターをつとめた虎岩氏と渡部氏は,一般 後も,名古屋大学における学生主体の国際教育交流活 学生や留学生11名による学生の実行委員会をつくり, 動が活発に発展していくよう各グループをサポートす 教育的に支援した。フォーラムは2010年12月12日に開 る教職員の支援のもと,このような報告書が発行され 催され,参加者は24名(留学生15名)であった。分科 ていくことを願っている。 会は, 「教育」, 「コミュニケーション」, 「ジェンダー」, 「就職」,「人間関係」のテーマが設定され,活発に意 見交換や発表などが行われた。フォーラムの内容に関 Ⅱ.アドバイジング・カウンセリング する詳しい報告は実行委員によって作成された「IF@ 2010年度は,6~7コマの相談時間を設け,日本語 N 第一回・名古屋大学国際学生フォーラム報告書」を と英語による個別相談(情報提供,アドバイジング, 参照していただきたい。 カウンセリング)を行った。名古屋大学に在籍する留 本フォーラムは,名古屋大学において初めての取組 学生からの相談に限らず,在学生,教職員,地域から みであり,参加者だけでなく,教員コーディネーター の相談などにも対応した。相談は,学業,対人関係, の虎岩氏,渡部氏,そして実行委員の学生たちにとっ 身体健康,精神保健,家庭・家族,生活適応,異文化 ても,学びと成長をもたらす貴重な機会となった様子 適応,学生生活,国際交流,進路・就職などの内容の である。今後も名古屋大学において,このような学生 ものがあり,必要に応じて,学内外の構成員と連携し のアカデミックな交流,そして個々人の対話を促すこ ながら対応していった。 とのできる教育プログラムが開催されていくことを 願っている。 Ⅲ.セミナー・地域連携・その他 【セミナー・地域連携】 ◆ 博士論文サポートグループ 2010年度前期は月に1回,博士論文サポートグルー 1.JAFSA(国際教育交流協議会) プを開催した。孤立しやすい博士課程の留学生たち, 2010年8月26日~27日「初任者研修:国際教育交流 家庭と学業との両立に悩みながらも博士論文研究を進 概論(留学生アドバイジング)」 める留学生たちなどが参加した。毎回,ほぼ同じメン -113- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 【SD・FD 活動】 家である高等教育研究センターの教員,部局の留学生 1.留学生相談室スタディーグループ 担当教員,留学生センターや留学生相談室の教員など 2008年度から始めた「留学生相談室スタディーグ が,チームとして議論し協力して進めたことにより, ループ」の運営を国際交流教育推進本部の渡部氏が引 広い知見が集まり,ハンドブックを作成することがで き継ぎ,毎月1回,教職員の相互学習の勉強会の場が きたのではないかと考えている。詳しくは,高等教育 開催された。毎回,主に文献の講読と,ディスカッショ 研究センターが発行した「名古屋大学教員のための留 ンという形式を取っているが,多くの教職員にとっ 学生受け入れハンドブック」を参照されたい。 て,新しい知識を学び,普段の業務を振り返り,語り 合える場は貴重な機会になっているようである。今後 も渡部氏をはじめ,他の教職員のサポートによりこの おわりに 筆者は,本報告を執筆の間,初めて自分自身が子ど 勉強会が継続されていくことを願っている。 もを育てながら,自治体等による「母親支援」, 「子育て 2.留学生研究会 支援」などのサービスを受ける機会を得ており, 「支援 高等教育研究センターが名古屋大学の教員有志によ を受ける側」を体験した。留学生相談室において,留 る「留学生研究会」を立ち上げ,筆者自身も研究会メ 学生教育や国際教育交流活動に取組んでいる際には, ンバーとして,「教員のための留学生受け入れハンド 常に「支援を提供する側」であったため,反対側の立 ブック」の発行を目指して,研究会活動に参加した。留 場を経験することが非常に新鮮である。また,同時に 学生支援を進めるにあたり,受け入れ側の「教員」に 「支援を受ける側」の気持ちやニーズなど,学ぶことが 焦点を当て,教員がより留学生を受け入れやすくなる 多く,さらに自分自身のこれまでの仕事を振り返る機 よう,また指導しやすくなるよう,アンケート調査を 会になっている.育児休業中に養われる感性を大事に 実施し,ハンドブックを完成させた。高等教育の専門 しながら,さらに仕事に取組んでいきたいと思う。 -114- 教育交流部門・留学生相談室 名古屋大学留学生相談室 メンタルヘルス担当教員の活動報告 坂 野 尚 美 学内の保健管理室の医師から診断された留学生の病 はじめに 名では,適応障害,気分障害,不安障害,境界性人格障 大学の国際化のためのネットワーク推進事業におけ 害,人格障害,双極性障害,統合失調症の順で多かった。 る留学生のメンタルヘルス担当教員として,それぞれ 上記の表からは,留学生の日本到着後,1~2カ月 の部局の留学生担当教員,精神科医の医師たちや各部 程経った頃から相談件数が増加していることが分か 局の教職員などと連携をしながら,留学生を支援し る。従って,留学生の支援を積極的に行うのに適して た。2010年1月~12月の相談件数を紹介する。 いる時期は,入学月の月末~翌々月の中旬までが最適 まごころ また教職員研修「真心×時間=支援力~教員が変わ であることが分かる。 る 名古屋大学が変わる~」と留学生 その他の多くは,来室した留学生に関わる教職員で のファシリテーター研修,ピア・サポーター研修につ ある。留学生相談室を訪れる留学生と教職員との比率 いては,活動報告書を発行した。 はおおよそ3:1であり,一人の留学生を支えるため 本報告書では「相談件数と内容」,「教職員研修」, に,2人以上の教職員が訪れることがあった。一人の 「ファシリテーター研修およびピア・サポーター研修」 留学生を支えるためには,多くの教職員たちが必要で 学生が変わる の3つに分けて報告する。 あり,教職員のメンタルヘルスの早期支援が必要であ ることが分かる。こうしたことから,学内において教 職員間の連携が大切であり,また教職員が留学生のメ Ⅰ.相談件数と内容 ンタルヘルス早期支援の知識をもつことは,非常に重 この1年間の相談件数と内容は,下記の表の通りで 要な事柄である。 ある。留学生の心の病,異文化不適応や,さまざまな 問題を抱えている留学生の心のケアを行った。 留学生相談室 メンタルヘルスに関する相談件数 相談項目 1月 指導教員・研究室・進路 2月 3月 (2010年1月~12月) 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 合計 10 18 18 17 12 13 17 9 4 6 5 5 134 日本語・学業 9 13 12 12 11 17 15 9 4 7 7 5 121 入国・在留関係 1 2 8 5 4 3 6 2 2 5 3 1 42 宿舎 2 2 11 6 4 3 5 2 1 6 2 1 45 1 3 7 5 1 3 6 1 1 4 1 1 34 生活・適応 奨学金・授業料 11 16 9 6 12 25 20 8 5 6 24 18 162 家庭・家族 0 1 9 3 5 18 13 5 4 6 7 3 74 人生観 1 2 7 9 9 14 13 5 1 4 12 13 90 2 16 6 7 8 16 7 2 1 0 0 2 67 精神保健 恋愛 19 16 11 9 15 27 20 9 4 40 43 25 238 身体健康 0 0 1 0 2 4 3 4 1 1 5 6 27 国際交流 0 0 0 1 1 3 1 0 2 12 7 3 30 その他 合計 8 7 12 7 2 7 5 7 2 51 43 63 214 64 96 111 87 86 153 131 63 31 148 167 151 1278 -115- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 む」の活動についても,実際にご自身のお子さんが発 Ⅱ.教職員研修 達障害を抱えている2人のお母さんに来ていただき, まごころ 「真心×時間=支援力~教員が変わる 学生が変わ ご講演いただいた。このゲスト講師の研修では,支援 名古屋大学が変わる~」と題して,2010年5月~ 者や当事者の問題・課題を通じて,障がいや病をもつ 2011年1月に8回の研修を行った。8回の研修参加者 学生たちへの支援をする際に必要な事柄や,対応の際 の合計は,のべ144名となった。この教職員研修は,名 に注意しなければならないことを,彼女等の語りから 古屋大学全学同窓会支援事業費によって実施された。 学んだ。また作家であり精神科医であるなだいなだ氏 ここでは,全学を対象とする教職員に向けて,コ をお招きして,幅広い方々に,メンタルヘルスの早期 ミュニケーションとメンタルヘルスを主題とした研修 支援に役立てていただくための講演を開催した。 を行った。この研修では,教職員が行う学生のメンタ 最後の研修日は,これまでの研修内容を総括した。 る ルヘルスの早期支援をするために,アドバイジングや カウンセリングの基本姿勢を学び,こころの病を早期 に発見する方法や対処方法について学ぶこととした。 Ⅲ.ファシリテーター研修および… ピア・サポーター研修 本学の中期目標の1つとして,相談業務は,個別教育 としての学生支援であると位置づけられており,教職 学生が学生を支える仕組みの構築のためのファシリ 員の相談支援の基本的な知識と技術を身につけること テーター育成プログラムを2010年10月~12月に,また は,支援力を高めるのに必須のテーマである。そこで ピア・サポーター研修プログラムを2011年2月7日と この研修では,まず,相談支援の基本的な知識と技術 2月8日の2日間実施した。ファシリテーター育成プ を身につけるための研修を1回行った。名古屋大学保 ログラムは,11名が参加登録した。 健管理室の精神科医である津田均先生,小川豊昭先 ファシリテーター育成プログラムを受講した留学生 生,古橋忠晃先生には,それぞれ1回ずつの講義と質 1名は,ファシリテーターの実践の場として2010年後 疑応答の時間を取り,実践的な対応について話してい 期に開催した多文化遠足の会のファシリテーターに ただいた。また留学生センター教育交流部門海外留学 なった。多文化遠足の会は,遠足をテーマに,名古屋 室の岩城奈巳先生には,海外へ留学する名古屋大学の 大学周辺や愛知県内の観光スポットに遠足に行く計画 学生の動向や日本人学生が海外留学する際,周囲に求 を立て,実際に出かけてみる中で学ぶことを目的とし める支援について講義を1回行っていただいた。日本 ている。実践的にファシリテーターとして多文化遠足 人学生の海外留学の経験や,名古屋大学の留学生に, の会で活躍する参加者がいることで,他の参加者が実 カルチャー・ショックの経験について語ってもらい, 践的な初期ファシリテーター振り返り(報告),中期 学生たちの生の声に触れる機会とした。また学内の学 ファシリテーター振り返り(報告),そしてファシリ 生相談総合センター就職相談部門の船津静代先生の紹 テーター総括を聴くことは有益なことになった。 介で,就職活動を通じて学んだことを学生から直接聴 また,ピア・サポーター研修プログラム参加者は, く機会もあった。情緒障害や学習障害,引きこもりな ファシリテーター育成プログラムに参加したことを条 どの問題を抱えている子どもの親の会「じゃんぐるじ 件とした。参加者は,8名となり,聴講したい留学生 1名を含め,9名の参加となった。上記のプログラム はともに,名古屋大学留学生支援事業費によって実施 された。 留学生にとっての大きな課題のひとつは異文化適応 である。留学生自身の異文化に適応する努力が必要な ことはもちろんだが,それと同時に,さまざまな教職 員や先輩方の支援のもと,留学生は異文化に適応する プロセスがある。この生きた支援は,留学生の心に響 き,いきいきと学業を行う原動力につながっている。 なだいなだ氏の講演 これまでに,この生きた支援を受けた留学生が自らの -116- 教育交流部門・留学生相談室 きた。 また別の取り組みとして,2010年ファシリテーター 育成プログラム,2011年のピア・サポーター研修プロ グラムを,名古屋大学留学生相談室(2011年4月1日 に留学生センターアドバイジングカウンセリング部門 に改組した)として初めて実施した。そのうち3名は, 学生総合相談センターピア・サポーター養成講座も受 講した。留学生のピア・サポーター誕生は,受講した 彼らのエネルギーに支えられた。そして彼らはピア・ サポーターとして,2011年4月からデビューした。ま たファシリテーター育成プログラムを生かして,日本 経験を生かして他の留学生を支える“ピア・サポート 人学生と留学生が,異文化交流をするためにグループ システム”を構築するのを目的とし,その第一歩とし 活動を行う計画である。ファシリテーター育成プログ てこの2つの研修プログラムを実施した。 ラムと,ピア・サポーター研修プログラムの留学生た ちは,知識や技術を学ぶごとに,明るく元気になって いった。また「名古屋大学に留学してよかった」と留学 Ⅳ.おわりに 生のサービスの充実を実感する言葉をよく耳にした。 留学生数が増加するに従い,心のケアが重要とな ピア・サポーター研修の内容は,今後名古屋大学での る。専門家における医療サービスや,カウンセリング 留学生のピア・サポーターの活動を踏まえながら,さ やアドバイジングも大切となる。 また,心の病にな らに充実させたい。 らないための予防や,またすでに基礎疾患として精神 疾患を抱えている留学生が病状を悪化させないように サポートする必要がある。 1つの方法として,教職員研修を実施する。2010年 (一部,「平成22年度教職員のための学生のメンタルヘルスの 早期支援に役立てる研修 わる 学生が変わる まごころ 真 心×時間=支援力~教員が変 名古屋大学が変わる~」報告書,名古 屋大学留学生支援事業の「平成22年度学生が学生を支える仕 度は,教職員研修では心のケアに関する知識や技術を 組みの構築のためのファシリテーター・ピア・サポータート よりよく身につけ,よりよい支援につなげることがで レーニングプログラム報告書」から引用) -117- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 平成22(2010)年度 地域社会と留学生との交流(教育交流部門による地域への連携・貢献活動) No. 行事年月日 行事名 依頼団体 派遣 留学生数 備考 1 2010/4/29 家庭訪問のご招待 国際ソロプチミスト 名古屋 8 中国6,インドネシア2 2 5/23 多文化を楽しむ会 NPO 法人揚輝荘の会 - 催行者へ直接応募 3 7/11 御洒落名匠狂言会 狂言共同社 1 中国 4 8/3~15 Global Workids & Global English Experience 運営:LBE Japan 共催:中部国際空港, ㈱ JTB 中部, ECC留学センター - 催行者へ直接応募 5 8/28 能楽鑑賞会「船弁慶」 愛知県モラロジー 女性クラブ 4 中国3,韓国1 6 7/26・8/3・ 8/6 名古屋大学附属高校 - 催行者へ直接応募 7 10/6 国際交流授業 愛知県高浜市立 高浜小学校 6 中国,韓国,マレーシア,インドネシア, バングラデシュ,イラン 8 10/24 多文化を楽しむ会 NPO 法人揚輝荘の会 - 催行者へ直接応募 9 10/28 名古屋分散学習 江南市立宮田中学校 3 中国3 10 10/28 名古屋分散学習 江南市立北部中学校 3 中国2,ベトナム1 11 11/13 留学生交流見学ツアー 名古屋を明るくする会 15 中国13,ベトナム1,ミャンマー1 12 12/18 異文化交流会 愛知県立千種高校 - 催行者へ直接応募 13 2011/1/22 新春懇親会 名古屋を明るくする会 5 中国5 14 2/5・2/12 市民講座「外国を知る」 大府市長草公民館 1 インドネシア 15 2/16・2/21・ 国際交流授業 2/23・2/25 名古屋市立正木小学校 6 中国,韓国,インドネシア,カンボジア, ウズベキスタン,アメリカ 「多文化コミュニケーショ ン学」レポート作成のため のインタビュー 計 行事数:15,依頼団体数:14,派遣留学生数:延べ51名(催行者への直接応募を除く),参加者の出身国:11ヵ国 -118- -119- その他 合 計 民間下宿・アパート ( )内はホームステイで内数 公団住宅 1 143 (0) 0 186 (0) (0) (0) 0 98 0 民間企業の社員寮 0 133 0 留学生用宿舎 (民間団体等設置) 2 7 2 ㈶国際留学生会館 0 7 28 15 0 借り上げ宿舎 公営及び住宅・都市整備 1 35 (0) 30 0 (0) 26 0 0 0 0 0 0 4 0 0 0 0 0 0 2 (0) 17 0 (0) 15 女 男 男 女 政府派遣 国 費 本校設置の一般学生用宿舎 本校設置の留学生用宿舎 宿 舎 区 分 留学生の宿舎状況 (1) 524 7 (1) 321 36 10 23 5 42 21 59 男 12 (1) 960 88 10 48 32 87 54 210 計 (0) (1) 601 1501 4 (0) 367 30 0 25 23 45 25 82 女 私 費 政府派遣 私 費 (0) 279 1 (0) 204 2 0 0 3 0 8 61 (0) 33 0 (0) 19 12 0 0 1 0 0 1 (0) 17 0 (0) 8 8 0 0 0 0 0 1 (0) 43 0 (0) 39 0 0 0 0 0 0 4 (0) 0 0 (0) 0 0 0 0 0 0 0 0 6 (1) 629 14 10 48 28 86 46 135 (0) (1) 4 1002 0 (0) 2 0 0 0 0 0 0 2 (0) 56 1 (0) 34 18 0 0 0 1 0 2 (0) 服部留学生会館18名,NGK 留学生宿舎28名, 共立国際1名他 12 (1) 960 88 (1) 名古屋市営57名,愛知県営18名, UR 賃貸住宅5名他 トヨタ自動車5名,山田商会2名, 10 ノリタケカンパニーリミテッド1名, 中部電力1名,勝又病院寮1名 48 32 87 備 考 留学生会館27名,レジデンス東山72名, レジデンス山手102名,猪高町宿舎9名 54 国際嚶鳴館54名 210 計 67 1501 4 (0) 25 34 0 0 0 0 0 4 単身 夫婦 家族 単身 夫婦 家族 単身 夫婦 家族 国 費 留学生の入居者数 平成22年5月1日現在 教育交流部門・留学生相談室 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 奨学金採択一覧表(平成21年9月~平成22年8月 実績) 〈大学推薦応募〉 奨 学 団 体 名 愛知県・愛知留学生 秋元国際奨学財団(新規) 旭硝子奨学会 アジア国際交流奨学財団 味の素奨学会 イオンスカラシップ 市原国際奨学財団 イノアック国際教育振興財団(初年度) イノアック国際教育振興財団(2年目) エプソン国際奨学財団 共立国際交流奨学財団 共立メンテナンス奨学基金 公益信託井深大記念奨学基金 公益信託川嶋章司記念スカラシップ奨学基金 公益信託にっとくアジア留学生奨学基金 国際コミュニケーション基金 国際ソロプチミスト名古屋 国際日本文化研究交流財団 国際文化教育交流財団 SEIHO 小林国際奨学財団 小林国際奨学財団(特別研究支援金) 佐川留学生奨学会 サトー国際奨学財団 日揮・実吉奨学会 日揮・実吉奨学会(第三種)新規 神内留学生奨学金(JEES) 大幸財団(育英・学部) 大幸財団(学芸・院) タカセ国際奨学財団(秋) タカセ国際奨学財団(春) 朝鮮奨学会(学部) 朝鮮奨学会(MC) 朝鮮奨学会(DC) TIS 留学生奨学金 電通育英会 徳洲会国際奨学財団 豊田通商 豊秋奨学金(旧西秋奨学会) 名古屋Iゾンタクラブ NGK留学生基金(学部) NGK留学生基金(大学院) 橋谷奨学会 服部海外留学生育英会 服部国際奨学財団(H22春入学対象) 服部国際奨学財団(H21秋入学対象) 坂文種報徳会 ヒロセ国際奨学財団(一般) ヒロセ国際奨学財団(酒井メモリアル) 藤井国際奨学財団 学部 藤井国際奨学財団 院 船井情報科学振興財団(学部) 船井情報科学振興財団(大学院) 平和中島財団(学部) 平和中島財団(大学院) 平和中島財団(招致) 双日(日商岩井)国際交流財団(学部 / 院) 日本国際教育支援協会一般奨学金 日本国際教育支援協会「三菱商事外国人留学生奨学金」(JEES) 日本語専攻留学生奨学金(JEES) 日本語教育能力検定試験合格者奨学金 日本国際教育支援協会「ドコモ留学生奨学金」(JEES) 日本国際教育支援協会「伊藤忠奨学金」(JEES) 日本国際教育支援協会「KANSAI PAINT」(JEES) 日本国際教育支援協会「レオパレス21留学生奨学金」(JEES) 日本国際教育支援協会「レオパレス21留学生奨学金」(JEES) 日本国際教育支援協会「JTアジア奨学金」(JEES) 日本国際教育支援協会「ソーシャル・イノベーション奨学 (奨励)金」(JEES) BPW 東海クラブ ベターホーム協会 牧田国際育英会 みずほ国際交流奨学財団 三菱 UFJ 信託奨学財団(旧三菱信託山室) 村田海外留学奨学会 奨学期間 2年6ヶ月 2年 2年 1年 2年 2年 1年 1年 1年 2年 2年 1年 最短年限 1年 最短年限 1年 1年 3年 2年 2年 最短年限 2年 2年 1年 最短年限 2年 1年 1年 1年 1年 1年(継続有) 1年(継続有) 1年(継続有) 1年 最長2年間 1年 1年 1年 1年 2年 2年 最短年限 1年(継続有) 2年 2年 最短年限 2年 最短年限 最短年限 1年 1年 2年 2年 2年 2年 1年 1年 2年 2年 2年 2年 2年 6ヶ月 1年 2年 1年 1年 1年 2年 2年 最短年限 1年 -120- 金 額(円) 100,000 150,000 100,000 60,000 150,000 120,000 50,000 40,000 50,000 100,000 100,000 60,000 150,000 100,000 100,000 150,000 80,000 120,000 50,000 100,000 200,000 100,000 180,000 20,833 180,000 100,000 33,333 33,333 100,000 100,000 25,000 40,000 70,000 70,000 100,000 70,000 70,000 50,000 30,000 120,000 120,000 100,000 50,000 100,000 100,000 70,000 150,000 200,000 30,000 50,000 100,000 100,000 100,000 120,000 200,000 70,000/100,000 30,000 100,000 50,000 50,000 120,000 125,000 100,000 10,000 30,000 150,000 80,000/16,666 100,000 60,000 100,000 120,000 100,000 25,000 応 募 1 4 2 3 3 5 8 1 2 1 1 4 1 1 1 3 1 3 4 2 3 8 1 1 1 1 3 0 1 1 7 1 0 2 2 3 1 2 1 1 1 3 2 2 6 3 1 3 1 2 2 1 8 採 択 1 1 0 1 3 4 1 1 0 0 1 0 0 0 1 2 0 0 4 0 1 4 1 1 1 0 1 0 1 1 6 0 0 0 2 2 0 1 1 0 0 1 1 2 1 1 0 3 1 0 0 1 8 継 続 2 2 2 0 0 2 0 0 0 0 0 0 0 0 1 2 2 1 0 0 1 0 0 0 0 0 0 1 0 1 0 0 0 1 0 1 0 0 3 1 0 0 0 0 0 0 0 1 2 1 1 0 0 0 0 1 3 0 合 計 3 2 3 0 1 5 4 1 0 1 0 0 0 0 1 0 0 0 2 4 2 1 0 4 1 0 1 4 1 1 1 0 2 0 1 0 0 1 0 1 7 0 1 0 2 5 1 0 0 1 0 1 0 0 0 1 1 3 0 0 3 2 1 3 1 0 0 0 0 1 0 4 8 教育交流部門・留学生相談室 奨 学 団 体 名 奨学期間 名鉄国際育英会 2年 安田奨学財団 最短年限 ユアサ国際教育学術交流財団 1年 吉田育英会(招聘) 最短年限 ロータリー米山記念奨学会(学部) 2年 ロータリー米山記念奨学会(院) 2年 ロッテ国際奨学財団(新規) 2年 綿貫国際奨学財団(院レベル) 1年(継続有) 学習奨励費 大学院レベル22AD 1年 学習奨励費 学部レベル22AG・RG(予約含) 1年 学習奨励費 大学院レベル21TD(追加) 6ヶ月 学習奨励費 学部レベル21G(追加) 6ヶ月 学習奨励費 大学院レベル21WD 3ヶ月 学習奨励費 学部レベル21WG 3ヶ月 名古屋国際センター(支援金)21 1年 合 計 ※名古屋国際センター支援金 :13名は受給資格失効による下半期のみの受給者 私費留学生1124人(平成22年5月1日) ( )内は外数で継続者 金 額(円) 80,000 100,000 100,000 150,000 100,000 140,000 180,000 150,000 65,000 48,000 65,000 48,000 65,000 48,000 10,000 応 募 5 1 1 1 2 16 2 0 110 38 39 4 59 404 採 択 1 0 0 1 0 9 1 0 110 38 39 4 30+13※ 継 続 1 0 0 1 0 1 1 1 0 0 0 0 0 合 計 2 0 0 2 0 10 2 1 110 38 39 4 0 0 43 345 奨学期間 1年 最短年限 最短年限 2年 1年 2年 2年 ? 2年 1年 1年/件 1年 1~5年 1年 / 件 1年 1年 1年/件 1年/件 最短年限 1年 最長2年 1年 金 額(円) 100,000 50,000 70,000 180,000 150,000 120,000 175,000 ? 160,000 150,000 1,000,000 1,000,000 150,000/200,000 1,000,000 70,000 100,000 1,000,000 1,250,000 120,000 125,000 100,000 100,000 応 募 採 択 継 続 合 計 ? ? 2 1 2 1 ? ? 13 ? ? ? ? ? ? 13 1 4 ? ? ? ? ? ? ? ? 2 1 1 0 0 ? 1 2 1 1 0 0 1 40 奨学期間 最短年限 金 額(円) 40,000 応 募 ? 採 択 ? 〈個人直接応募〉 奨 学 団 体 名 アサヒビール芸術文化財団 青峰奨学財団(学部) 青峰奨学財団(大学院) 伊藤国際教育交流財団 岩谷直治記念財団 岩國育英財団 交流協会 公益信託 斉藤稜兒イスラム研究助成金 とうきゅう外来留学生奨学財団 日本生命財団 日本文化芸術財団 似鳥国際奨学財団 本庄国際奨学財団 富士ゼロックス小林節太郎記念基金 朴龍九育英会 マブチ国際育英財団 盛田国際教育振興財団 大塚敏美育英奨学財団 ウシオ育英文化財団 NEC C&C 財団 ヤマハスポーツ奨学金 徳洲会国際奨学財団 合 計 〈学生総合支援課募集の奨学金〉 奨 学 団 体 名 中村積善会 合 計 -121- 継 続 合 計 1 1 短期留学部門 ●名古屋大学短期交換留学受入れプログラム(2010年度報告) ………………………………………………………………………… 野水 勉 124 ● NUPACE 2010~2011: Ending with a Bump ………………………………………………………………… Claudia Ishikawa 137 ●東日本大震災にともなう交換留学生への対応 ………………………………………………………………………… 北山 夕華 151 ●短期留学生アンケート調査から,短期留学プログラムの 拡充を考える………………………………………………………… 亀井 千里 156 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 名古屋大学短期交換留学受入れプログラム (Nagoya University Program for Academic Exchange - NUPACE) 2010年度報告 留学生センター・短期留学部門 (兼担)工学研究科マテリアル理工学専攻 野 水 勉 本 学 の 短 期 留 学 受 入 れ プ ロ グ ラ ム は, 平 成8年 間の継続滞在の予定であったが,大学の帰国要請や本 (1996年)発足以来15年が経過し,2010(平成22)年度 人の判断等によって,14名が計画を中断して3月末~ の年間受入れ人数は,これまでの最大数85名(平成21 4月に帰国することとなった。また,平成23年4月の 年度)をさらに越えて89名に達した。プログラム開始 新規受入れでは,3月上旬の時点で,47名の受入れを 以来の受入れ累積は平成22年度中に922名に達してお 予定していたが,17名の留学キャンセルと8名の9月 り,平成23年4月受入れの22名に加えて,平成23年9 末への延期希望の申し出があり,22名の受入数に激減 月末には,80数名前後の受入れが予定されており,年間 した。震災が無ければ,4月時点で計95名が NUPACE 受入数100名の突破,累積1,000名への到達もほぼ間違 に在籍している予定であったが,残念ながら56名に半 いないであろう。年間受入れ数,累積数ともに,国立 減した形になった。 大学の短期留学プログラムの中で随一の実績を誇る。 平成23年度の状況は来年度に詳細を報告するが,平 しかし,平成23年3月11日の東日本大震災とその後 成22年度までは宿舎の優先入居枠の制限から,協定大 の福島原子力発電所の事故によって,東北や関東の地 学あたりの受入れ人数を,原則として4月受入れ1 域ほどの落ち込みではないものの,平成23年度の受入 名,9月末受入れ2名までとしていたが,留学生宿舎 れは大きな影響を受けることとなった。平成22年9月 が増強されてきたため,平成23年度からの受入れを, 末(秋学期)に受入れた61名の学生のうち,48名が1年 4月2名,9月末3名に拡大した。この効果も加わっ 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 応募者数 奨学金割当数 受入れ人数 自費留学生受入れ数 106 103 55 45 67 56 50 48 70 H14 78 60 85 *69 60 44 41 42 32 27 21 19 10 74 89 48 *40 38 *37 *43 16 6 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 図1.短期留学プログラムの応募者数、奨学金割当、受入れ人数、自費参加学生数の推移 (平成14年度以降)(*平成14年度3名、15年度4名の追加配分。20年度以降は、交流協会(台湾)および JENESYS(韓国)奨学 金割当数を加算。) -124- 短期留学部門 て,平成23年度の4月受入れ並びに9月受入れへの応 募数が増えることとなった。震災・原発の影響があっ の実績に応じて各大学へ割り当てられていた「一般枠」 (新制度では「大学推薦枠」)の割当は大きく減少して て4月の実際の受入れは半減したものの,それでも22 いる。 名の受入れとなり,平成23年9月末受入れは,7月上 図1の通り,本学は「短期留学推進制度(受入れ)」 旬時点で81名を予定しており,これからも一部のキャ のもとで,平成15-19年度は減りつつも40名以上の奨 ンセルが出てくると思われるが,4月と合わせた年間 学金割当を維持していたが,表1の通り,平成20年度 受入れ実績が100名を越えることは間違いない。 以降は,大学推薦枠割当数の大幅な減少によって,平 平成21年度の文部科学省「留学交流支援制度(短期 成20年度36名,そして平成21年度当初は24名と急激に 受入れ)」奨学金割当は,グローバル30特別枠が設け 減少した。しかし,幸いなことに,平成21年7月に本学 られたことや,補正予算による追加奨学金の割当があ がグローバル30に採択されたことによって,特別枠10 り,異例の年となったが,平成22年度は従来の流れに 名が新たに割り当てられたため,合わせて全体では34 ほぼ戻り,他の奨学金を含めた奨学金支援者は41名で 名が確保され,前年度からの微減にとどまった。さら あった。その結果,89名の受入れ全体の半分以上は自 に平成21年度は,麻生政権下の補正予算により,奨学 費参加者である。 金割当24名分が追加されたため,最終的には58名分も 文部科学省は,平成23年度の新しい政策として, 「留 の奨学金が提供された。続く平成22年度は,21年度の 学交流支援制度(ショートステイ・ショートビジッ 補正予算割当分を除いた34名分と全く同じ割当数(プ ト)」を策定し,3ヶ月未満の短期留学受入れ(ショー ログラム枠15名,大学推薦枠9名,G30枠10名)とな トステイ)および派遣(ショートビジット)の支援 り,10年間で最も少ない割当数となってしまった。 を打ち出した。短期留学部門としての業務の中心は, しかし,NUPACE への応募者の8割以上が,応募 基本的に1学期~1年の短期留学受入れプログラム の際に”奨学金の採択がなかった場合でも自費で参加 (NUPACE)の運営であるが,短期留学受入れ(ショー する”希望を表明しているため,奨学金に推薦されな トステイ)および派遣(ショートビジット)は,これ かった応募者に参加を確認すると,ほとんどが参加し までの短期留学(交換留学)の下支えになりうるため, てくる状況である。むしろ,協定大学の方からは,奨 この企画に深く関わることとなった。 学金はあてにせず,自費で参加したい学生がまだまだ 以下,平成22(2010)年度の短期留学プログラムを いるので,受け入れてほしい,という要請が押し寄せ 中心とした短期留学部門の活動を報告する。 ているほどである。大学宿舎の収容能力の限界から, この2年間は1協定大学あたりの受入れ学生を4月受 1.「留学交流支援制度(短期受入れ)」とその他 の奨学金 入れ1名,9月受入れ2名に制限せざるを得ず,それ でも年間受入れ人数を毎年更新し続け,半分以上が自 費参加学生となっている。 1. 1 平成22年度「留学交流支援制度(短期受入れ)」 奨学金 平成23年度に向けて,奨学金割当を少しでも多く確 保する対策として,特別研究学生としての受入れが増 NUPACE に対する奨学金支援制度の中心となって えてきていたため,従来の学部生を中心とした短期留 いる「留学交流支援制度(短期受入れ)」は,平成7年 学プログラムの申請枠とは別に,「大学院先端研究・ 度に創設された「短期留学推進制度(受入れ)」を引き 短期交換留学受入れプログラム」の枠を「プログラム 継いで,平成20-21年度に一部制度変更されたものであ 枠」に申請したところ,幸いに3名の奨学金割当が確 る。従来の英語による短期留学プログラムが主だった 保できた。平成23年度は,大学推薦枠割当が前年度の 特別枠が, 「プログラム枠」として拡大されたが,単位 9名から2名増加して11名に増えたため,合わせると 互換プログラム,大学院プログラム,ダブル・ディグ NUPACE 全体として39名の割当となり,前年度の34 リーなど,新しく企画された特色ある短期留学プログ 名から5名増という結果となった。 ラムに対して,1プログラム最大15名として,一大学 尚,「留学交流支援制度(短期受入れ)」奨学金の あたり4プログラムまでを申請できる制度となってい 「プログラム枠」には,平成21年度から環境学研究科が る。一方で,「特別枠」以外に,短期留学(交換留学) 「国際環境人材育成プログラム(短期)」を申請し,そ -125- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 表1.短期留学プログラム関係奨学金の割当実績 奨学金 種別 H20 1期 H21 2期 1期 36 留学交流 支援制度 (短期受入れ) NUPACE 関係 一般枠 1期 24+10+24 (24) (8) 国際環境人材 育成プログラム 交流協会(台湾) JENESYS(韓国) (12) H22 2期 24+10 (16) (11) (+34) 7 1 1 1 1 1 部品素材枠 H23 2期 1期 (23) 0 NUPACE 受入対応 26+10+ 3 (13)→ (26)→ * (6) (33)* 対象 4 対象外 4 1 2期 1 ? ? 対象 1 1 1 対象 4 4 3 対象 注1.第1期:4月受入れ,第2期9月末受入れ 注2.留学交流支援制度は年間割当数が通知され,( )内は本学での交換留学実施委員会の決定に基づく割当配分。 の奨学金枠は同プログラムが独自に活用することとし 本学生支援機構からの斡旋で奨学金を申請し採択され て,NUPACE の取扱い対象外となっている。 た(財)タカセ国際奨学財団1名を加えて,41名が奨 平成23年度から始まる「留学交流支援制度(ショー 学金受給者で,残りの48名が自費参加者であった。89 トステイ・ショートビジット)」については後述する。 名のうち,国別では,中国16名,米国15名,韓国15名 が上位3国である。図2と図3を比較すると,アジア 1. 2 その他の奨学金 地域がほぼ半分を占める点で同様であるが,ヨーロッ 短期留学プログラムを支援する奨学金として,平成 パ地域は平成21年度27%,22年度28% と近年高い割合 20年度から1)外務省補助金事業「21世紀東アジア青 となっている。オセアニアも6% とこれまでの平均を 少年大交流計画」(JENESYS Programme) (韓国)と 2%上回ったため,北米が17% と相対的に下がった。 2)(財)交流協会(台湾) ・短期留学生奨学金が加わっ 協定大学をほぼ公平に扱い,協定大学と受入れ人数が ており,表1に平成20~23年度の割当実績をまとめ 拡大している中で,欧米豪地域とアジア地域からの受 た。これらの奨学金制度発足の背景については,2008 入れがほぼ釣り合っている状況を維持している。平成 年度年報で紹介している。H23年度の JENESYS(韓 22年度は,韓国・延世大学,韓国・成均館大学,香港 国)奨学金の部品素材枠が残念ながら1減となってい 中文大学,インドネシア大学,カザフスタン人文・法 る。交流協会(台湾)奨学金は,学生本人が同協会へ 科大学,オーストラリア・フリンダース大学から初め 直接申請するため,大学への事前割当はなく,同協会 ての学生を受け入れた。 からのの通知によって最終的に判明する。 過去5年間 NUPACE に受け入れた短期留学生の中 で,2010年 Times 社と QS 社の大学ランキング上位50 位,100位および200位以内の大学からの割合を図4に 2.短期留学生受入れの現状 示す。2009年までの Times ランキングは,QS 社に委 過去3年間の各受入れ時期における大学別受入れ実 託して行われていたが,2010年に Reuters 社に委託が 績を表2に示す。図2には,プログラム開始以来,平 代わって評価指標が大きく変更されたため,本学を含 成23年度4月受入れを含めた944名全体の大学所在国 めて大学によっては大きく変動している。QS 社は,引 および地域別の内訳を,図3には平成22年度分の a)大 き続き独自のランキング結果を公表しているので,今 学所在国および地域別,b)受入れ部局別,c)学生身 回は両方を図4に掲げた(本学も QS2010では91位で 分別の割合を円グラフで示す。 あるが,Times(Reuters)2010では200位以下とラン 平成22年度は,15ヵ国・地域,59協定大学より計89 キングを大きく下げている)。 名の短期留学生を受入れた。「留学交流支援制度(短期 NUPACE に派遣してきている協定大学で,Times 受入れ)」奨学金34名(短期留学プログラム特別枠+ (Reuters)2010でランキングが下がってしまった大学 大学推薦枠計24名+グローバル30特別枠10名),交流 が少なくなかったため,相対的に数値は低くなってい 協会(台湾)1名,JENESYS(韓国)5名,そして日 るが,NUPACE で受入れた学生の15% が,Times ラ -126- 短期留学部門 表2.名古屋大学短期留学受入れプログラム受入れ実績(平成20年4月~平成23年4月) 受入れ時期 平成20年度 第1期 (4月渡日) 小計 平成20年度 第2期 (9月末渡日) 小計 平成21年度 第1期 (4月渡日) 小計 平成21年度 第2期 (9月末渡日) 大学所在国 大学名 協定締結 と種類 学生数 自費 *1 参加 中国 〃 韓国 〃 〃 〃 〃 台湾 インドネシア 米国 〃 〃 〃 〃 〃 〃 ドイツ ポーランド ウズベキスタン オーストラリア 〃 華東師範大 上海交通大 高麗大学 梨花女子大学 忠南大学 漢陽大学 慶尚大学 国立台湾大学 ディアネボロ大学 ノースカロライナ州立大学 ニューヨーク大学 ミシガン大学 シンシナティ大学 セントオラフ大学 ケンタッキー大学 イリノイ大学アーバナシャンペーン校 ブラウンシュバイク工科大学 ワルシャワ工科大学 世界経済貿易大学 オーストラリア国立大学 モナシュ大学 部局(育) 全学協定 全学協定 全学協定 部局(経) 全学協定 全学協定 全学協定 部局(育) 全学協定 全学協定 部局(工) 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 部局(工) 部局(法) 全学協定 全学協定 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 中国 〃 〃 〃 〃 韓国 〃 〃 〃 〃 台湾 〃 タイ インドネシア 〃 ウズベキスタン 〃 米国 〃 〃 〃 〃 〃 カナダ 英国 〃 〃 フランス 〃 ドイツ 〃 オーストリア 北京工業大学 吉林大学 南京大学 華中科技大学 浙江大学 高麗大学 梨花女子大学 ソウル国立大学 木浦大学 慶尚大学 国立台湾大学 国立政治大学 チュラロンコン大学 ガジャマダ大学 パジャジャラン大学 世界経済貿易大学 タシケント国立法科大学 ノースカロライナ州立大学 イリノイ大学アーバナシャンペーン校 セントオラフ大学 南イリノイ大学 ケンタッキー大学 ミネソタ大学 トロント大学 シェフィールド大学 マンチェスター大学 ウォーリック大学 グルノーブル第3スタンダール大学 リヨン第3ジーンモリン大学 ミュンヘン工科大学 フライブルグ大学 ウィーン医科大学 部局(工) 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 部局(文) 部局(法) 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 部局(理) 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 部局(医) 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 中国 〃 〃 韓国 〃 〃 〃 〃 〃 台湾 インドネシア タイ カナダ 米国 〃 〃 〃 〃 ドイツ 〃 オーストラリア 〃 北京大学 上海交通大 清華大学 梨花女子大学 高麗大学 慶煕大学 漢陽大学 慶尚大学 ソウル市立大学 国立清華大学 ガジャマダ大学 チュラロンコン大学 ヨーク大学 ミシガン大学 セントオラフ大学 ケンタッキー大学 イリノイ大学アーバナシャンペーン校 グリーン・マウンテン大学 ブラウンシュバイク工科大学 ケムニッツ工科大学 オーストラリア国立大学 モナシュ大学 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 部局(法) 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 部局(法) 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 中国 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 〃 韓国 〃 〃 〃 〃 〃 台湾 〃 インドネシア ウズベキスタン 米国 〃 〃 〃 〃 〃 米国 北京大学 清華大学 北京工業大学 復旦大学 吉林大学 南京大学 浙江大学 西安交通大学 華東政法大学 南京航空航天大学 ソウル国立大学 高麗大学 梨花女子大学 木浦大学 慶尚大学 忠南大学 国立台湾大学 国立政治大学 ガジャマダ大学 世界経済貿易大学 ノースカロライナ州立大学 イリノイ大学アーバナシャンペーン校 セントオラフ大学 シンシナティ大学 ケンタッキー大学 グリーン・マウンテン大学 ミネソタ大学 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 部局(法) 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 部局(経) 全学協定 全学協定 全学協定 部局(法) 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 部局(法) 全学協定 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 1 1 1 1 1★5 2 1 2 1 2 1 2 1 1 1 1 1 1 1 1 2 1 1 1 2 1 2 1 2 2 1 1 1 1 1 1 1 29 17 3 2 2 2 2 1 1*4 1 1 1 1 1 3★6 1 2 1 3 2 2 2 2 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 1 2 1 1 1 2 1 2 1 1 1 1 1 2 1 1 2 1 49 24 1 1 1 1 1 1 1★5 1 1 1 1 1★5 1 1 1※7 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 22 11 1 1 1 1 1 2 2 2 2 2 1 2★6 1 1 2 2★6 2★6 2※7 1 2 2 1 1 2 1 2 1 1 1 2 学部別内訳 文 育 法 経 情 理 医 工 農 国 情 多 国 環 留 文 開 科 元 言 境 セ 1 1 1 1 1 2 1 1 1 1 1 1 1 1 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 3 2 3 5 0 2 0 9 0 1 0 0 2 0 2 3 2 1 1 1 1 1 1 2 1 1 1 2 1 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 1 2 2 学生身分内訳 *2 *3 学部生 大学院生 1 1 1 2 2 1 2 1 1 1 2 1 2 1 2 1 1 1 1 22 3 2 1 1 1 7 1 1 1 3 2 3 1 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 2 1 1 2 2 1 1 1 1 1 1 1 1 8 4 5 1 1 1 2 7 0 4 4 6 0 1 1 0 1 0 7 40 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 5 0 3 1 2 0 1 0 6 1 0 0 0 0 1 1 0 4 1 1 1 1 1 2 1 1 1 1 1 1 19 1 1 1 1 1 1 1 2 3 2 1 1 2 2 1 2 1 1 1 1 1 1 2 1 2 2 2 2 2 2 1 1 1 1 2 9 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 2 1 1 2 1 2 1 1 1 1 1 1 1 1 2 1 2 1 1 1 2 次ページに続く -127- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 表2.(つづき) 受入れ時期 大学所在国 英国 〃 〃 フランス 〃 〃 ドイツ 〃 〃 オーストリア スウェーデン オーストラリア ブラジル 大学名 シェフィールド大学 ロンドン大学(SOAS) ウォーリック大学 グルノーブル第3スタンダール大学 リヨン第3ジーンモリン大学 リヨン師範大学 ミュンヘン工科大学 フライブルグ大学 ケムニッツ工科大学 ウィーン医科大学 ルンド大学 モナシュ大学 サンパウロ大学 協定締結 と種類 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 全学協定 部局(医) 部局(法) 全学協定 全学協定 学生 数 自費 *1 参加 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 有 学部別内訳 文 育 法 経 情 理 医 工 農 国 情 多 国 環 留 文 開 科 元 言 境 セ 1 2 1 2 1 1 2 1 1 1 1 1 1 2 2 1 1 9 1 11 10 1 0 4 7 0 4 2 0 5 0 9 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 6 1 8 0 1 1 1 7 0 0 0 0 1 0 2 1 1 1 学生身分内訳 学部生 *1 大学院生 *2 1 1 2 2 1 1 2 2 2*4 1 2 2 2 2 2 2 1 1 1 2 1 1 2 2 2 2 1 1 1 1 1 小計 63 7 42 21 平成22年度 中国 北京大学 全学協定 有 1 1 第1期 〃 同済大学 全学協定 有 1 1 1 (4月渡日) 〃 上海交通大学 全学協定 有 1 1 〃 華東政法大学 部局(法) 有 1 1 1 〃 中国科技大学 全学協定 有 1 1 1 韓国 高麗大学 全学協定 有 1★5 1 〃 梨花女子大学 全学協定 有 2 1 2 〃 成均館大学 全学協定 有 1 1 1 〃 慶煕大学 全学協定 有 1 1 〃 漢陽大学 全学協定 有 1 1 1 〃 慶尚大学 全学協定 有 1★5 1 〃 ソウル市立大学 部局(法) 有 1 1 1 〃 延世大学 全学協定 有 1 1 1 台湾 国立清華大学 全学協定 有 1 1 1 タイ チュラロンコン大学 全学協定 有 1 1 モンゴル モンゴル国立大学 全学協定 有 1 1 米国 ミシガン大学 部局(工) 有 1 1 1 〃 ニューヨーク大学 全学協定 有 1 1 1 〃 シンシナティ大学 全学協定 有 1 1 1 〃 イリノイ大学アーバナシャンペーン校 全学協定 有 1 1 〃 グリーン・マウンテン大学 部局(法) 有 1 1 ドイツ フライブルグ大学 全学協定 有 1 1 1 全学協定 有 1 1 〃 ケムニッツ工科大学 ポーランド ワルシャワ工科大学 全学協定 有 1 1 オーストラリア オーストラリア国立大学 全学協定 有 1 1 1 〃 フリンダース大学 全学協定 有 1 1 1 〃 アデレード大学 全学協定 有 1 1 小計 28 15 23 5 平成22年度 中国 北京工業大学 部局(工) 有 1 1 1 第2期 〃 華中科技大学 全学協定 有 2 1 1 1 (9月末渡日) 〃 吉林大学 全学協定 有 1 0 1 〃 南京大学 全学協定 有 1 0 1 〃 同済大学 全学協定 有 1 0 1 1 1 〃 浙江大学 全学協定 有 2 1 2 2 〃 中国政法大学 部局(法) 有 1 1 1 1 〃 華東政法大学 部局(法) 有 2 1 2 2 香港 香港中文大学 全学協定 有 1 1 1 1 韓国 ソウル国立大学 全学協定 有 1 0 1 1 〃 高麗大学 全学協定 有 1 0 1 1 〃 慶尚大学 全学協定 有 1 0 1 1 〃 忠南大学 部局(経) 有 2 1 2 2 台湾 国立台湾大学 全学協定 有 2 2 1 1 1 1 〃 国立政治大学 全学協定 有 2 2 1 1 1 1 〃 国立清華大学 全学協定 有 1 1 1 1 インドネシア インドネシア大学 部局(工) 有 1 0 1 1 〃 ガジャマダ大学 全学協定 有 1 0 1 1 タイ チュラロンコン大学 全学協定 有 2 1 1 1 1 1 カザフスタン カザフスタン人文・法科大学 部局(法) 有 1 0 1 1 米国 ノースカロライナ州立大学 全学協定 有 1 1 1 1 全学協定 有 1 0 1 1 〃 ニューヨーク大学 〃 セントオラフ大学 全学協定 有 2 1 1 1 2 〃 シンシナティ大学 全学協定 有 1 1 1 1 〃 ケンタッキー大学 全学協定 有 1 0 1 1 〃 グリーン・マウンテン大学 部局(法) 有 2 1 2 2 〃 ミネソタ大学 全学協定 有 2 2 1 1 2 英国 シェフィールド大学 全学協定 有 2 2 1 1 2 〃 ロンドン大学(SOAS) 全学協定 有 2 1 1 1 2 〃 マンチェスター大学 部局(理) 有 2 1 2 2 フランス グルノーブル第1ジョセフフーリエ大学 全学協定 有 1 1 1 1 〃 グルノーブル第2ピエールマンデス大学 全学協定 有 1 1 1 1 〃 リヨン第3ジーンモリン大学 全学協定 有 2 1 1 1 2 〃 ストラスブール大学 全学協定 有 2 1 1 1 2 〃 パリ第7ディドロ大学 全学協定 有 2 1 1 1 2 ドイツ ミュンヘン工科大学 全学協定 有 1 1 1 1 〃 フライブルグ大学 全学協定 有 1 1 1 1 〃 ブラウンシュバイク工科大学 全学協定 有 2 1 1 1 1 1 〃 ケムニッツ工科大学 全学協定 有 2 1 1 1 2 ルンド大学 部局(法) 有 2 2 2 2 スウェーデン オーストラリア モナシュ大学 全学協定 有 1 0 1 1 〃 シドニー大学 全学協定 有 1 1 1 1 小計 61 35 12 1 11 10 0 2 0 10 0 1 0 0 3 3 8 49 12 1 平成23年度 中国 華中科技大学 全学協定 有 1 1 1 1 第1期 〃 南京大学 全学協定 有 1 1 1 1 (4月渡日) 〃 同済大学 全学協定 有 2 1 1 2 0 韓国 高麗大学 全学協定 有 1 1 1 1 〃 慶尚大学 全学協定 有 2 1 1 2 1 〃 忠南大学 部局(経) 有 2 2 2 1 〃 梨花女子大学 全学協定 有 1 1 1 0 インドネシア ガジャマダ大学 全学協定 有 1 1 1 1 米国 ニューヨーク大学 全学協定 有 1 1 1 1 〃 セントオラフ大学 全学協定 有 1 1 1 1 〃 シンシナティ大学 全学協定 有 1 1 1 2 〃 イリノイ大学アーバナシャンペーン校 全学協定 有 3 1 2 3 1 ドイツ ミュンヘン工科大学 全学協定 有 1 1 1 0 スイス ジュネーブ大学 全学協定 有 1 1 1 1 オーストラリア オーストラリア国立大学 全学協定 有 1 1 1 0 〃 モナシュ大学 全学協定 有 1 1 1 1 〃 アデレード大学 全学協定 有 1 1 1 14 22 5 7 2 4 0 1 0 3 0 0 0 0 0 0 0 21 1 *1:自費参加(JASSO 及び「21世紀東アジア青少年大交流計画奨学金(JENESYS)(韓国)」以外、*2:特別聴講学生+日本語研修生、 *3:大学院特別聴講学生+特別研究学生、*4:1名自費参加→ JASSO 推薦奨学財団奨学金受給、★5:「21世紀東アジア青少年大交流計画奨学金(JENESYS)(韓 国)」、★6:1 名 JASSO+1 名 JENESYS 、※7:1名台湾(交流協会)奨学金 -128- 短期留学部門 ブラジル カナダ ベルギー オーストリア スウェーデン デンマーク ロシア ウズベキスタン 人数 2 4 3 5 7 1 4 14 割合 0.2% 0.5% 0.4% 0.6% 0.8% 0.1% 0.5% 1.7% フィリピン インド ベトナム モンゴル カンボジア ポーランド 3.0% ドイツ 4.7% 人数 13 2 2 2 1 割合 1.5% 0.3% 0.3% 0.2% 0.1% 中国 18.0% フランス 香港 7.0% 0.1% 英国 ヨーロッパ 5.7% カナダ 2 4% 0.4% アジア 52% 北米 韓国 18.3% 21% オセアニア アメリカ合衆国 3% 20.9% 台湾 2.1% タイ 4.6% インドネシア オーストラリア 5.2% 3.7% ウズベキスタン 1.5% 図2 名古屋大学短期留学生の在籍大学所在国の内訳(1996年2月-2011年4月 , 944名 ) スウェーデン, 2 ポーランド, 1 ドイツ, 8 中国, 16 香港, 1 フランス, 8 ヨーロッパ 28% 英国, 6 アジア 49% 台湾, 6 北米 17% オセアニア 6% 韓国, 14 米国, 15 モンゴル, 1 タイ, 3 オーストラリア, 5 インドネシア, 2 カザフスタン, 1 a)在籍大学所在国・地域別内訳 留センター 15% 環境 4% 国言 5% 国際 1% 大学院特別 聴講学生 20% 文 20% 工 19% 大学院特別 研究学生 10% 育 2% 法 21% 学部生 81% 医 理 1% 4% 情文 経 1% 11% b)受入れ部局別内訳 c)受入れ学生身分別内訳 図3.平成18年度短期留学生の内訳(2010年4月-2011年3月:全89名) -129- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 1- 200位以内 1- 100位以内 1- 50位以内 45% 45% 40% 40% 35% 35% 30% 30% 25% 25% 20% 20% 15% 15% 10% 10% 5% 5% 0% 0% H18 H19 H20 H21 H22 H18 a)Times 2010ランキング H19 H20 H21 H22 b)QS 2010ランキング b)QS2010ランキング a)Times2010ランキング 図4.2010大学ランキング上位大学からの受入れの割合 ンキング100位以内,30% 以上が200位以内の大学から 環境学研究科が,英語による講義の開講を積極的に推 の受け入れである(従来の QS 社ランキングの QS 2010 進し,さらに平成21年度から英語による大学院プログ では,100位以内が20% 以上,200位以内は35% 以上で ラム「国際環境人材育成プログラム」を創設し,18科 ある)。前報でも指摘したように,大学ランキングはそ 目もの科目を NUPACE 学生へ積極的に開放していた の評価指標によって大きく異なり,上記両者は規模が だいている。また,他の部局でも少しずつ,英語の講 大きく,総合大学が有利になるため,あくまでも参考 義開講が増えてきている。 であり,そのランキングに一喜一憂する必要はない。 本年(平成23(2011)年度)秋より,国際化拠点整 この2- 3年,NUPACE は基本的に1協定大学の受入 備事業(グローバル30)として,英語講義によって学 れ数を原則4月期1名,9月期2名までに制限し,上 位が取得できる,学部生向けの自動車工学,物理系, 記の有力大学を優先して受け入れることはしておら 化学系,生物系,そして国際社会科学の5プログラム, ず,より多くの協定大学からの受入れを進めてきた結 および大学院生向けの物理系(博士前期・後期),化 果,平成21年度は50大学から85名,平成22年度は59も 学系(博士前期・後期),生物系(博士前期・後期), の大学から89名の受入れを実現している。このような 医学系(博士後期),経済・経営系(博士前期),国際 中でも有力大学からの学生受入れの割合を維持してい 言語文化系(博士前期)の各プログラムが開始される ることは,継続して有力大学からの支持を得ていると 予定である。これらによって英語講義が大幅に増強さ ともに,新たな有力大学が新しく加わっていることを れ,短期留学生の受講も奨励される予定のため,さら 示しているものと思われる。 に専門分野の英語プログラムの充実につながることを 大いに期待している。 3.教育カリキュラム 図5に,2011年秋学期 -2012年春学期の NUPACE 4.国際交流関係の活動 科目構成を示す。この構成以外に,国際開発研究科 4. 1 国際企画室と学術交流協定 および法学研究科が,正規カリキュラムとして英語 本学の活発な国際交流を反映して,平成22年度も全 による専門科目を多数開講しており,多くの科目を 学間あるいは部局間の学術交流協定の締結が進めら NUPACE 学生にも開放している。平成18年度からは れ,平成22年度末時点で298大学・機関との学術交流協 -130- 短期留学部門 日本語研修コース 標準コース(1-5単位): 日本語初級Ⅰ~日本語上級(7レベル) 集中コース(2-10単位): 日本語初級Ⅰ~日本語中級Ⅱ(6レベル) 日本語による概論講義 各科目2単位 各科目2単位 地球社会Ⅰ,Ⅱ(秋・春) 日本言語文化入門Ⅰ,Ⅱ(秋・春) 日本語学入門Ⅰ,Ⅱ(秋・春) 日本文化論Ⅰ,Ⅱ(秋・春) 言語学入門Ⅰ,Ⅱ(秋・春) 日本研究・国際理解研究 現代日本社会(春) 日本政治学入門(春) 日本社会の現代的課題(秋) 日本の科学と技術(秋) 専門科目 留学生センター 国際社会法政:日本におけるイミグレーション(春) 教育の社会学(秋) 日本のコミュニティーにおける教育実践〈G Ⅰ S〉(秋・春)> 文学部・文学研究科 英語意味論と記号論(秋・春) 教育学部・教育発達科学研究科 日本の教育(春) 文化的教育面のディズニー(春) 法学部・法学研究科 日本の政治と法(秋) 経済学部・経済学研究科 開発経済(春) 所得理論と応用(秋) 価格理論と応用(春) 法律と経済 ワークショップ(春-秋・通年) 理学部・理学研究科 先端量子化学(秋) 先端化学特別講義(集中講義) 医学部・医学研究科 臨床実習(秋・春) 基礎医学研究 (秋・春) 公衆衛生研究 (秋・春) 工学部・工学研究科 化学・生物産業概論(春) 物理・材料・エネルギー先端科学(春) 電気・電子・情報先端工学(秋) 生産工学概論(春) 社会環境工学概論(秋) 土木工学・途上開発特論(秋) 科学技術英語(秋) 農学部・生命農学研究科 生命農学概論(秋) 国際開発研究科 アジア法(秋) 人間の安全保障と法(秋) 国際協力法(春) 国際開発入門(春) 社会調査法特論(日本の開発経験)(秋) 開発法学(春) 参加型農村振興論(秋) 国際言語文化研究科 地理学と神秘主義:ヨガ(春) 地図と文化(秋) 社会言語学入門(秋) 環境学研究科 生物資源管理政策論(秋) 生物資源管理プロジェクト論(秋) 気候変動政策論(秋) 環境コミュニケーション(春) 環境産業システム論(秋) 環境社会システム工学(春) 環境フィールドセミナー(春) 生物多様性保全政策概論(春) 低炭素都市学(春) 歴史環境デザイン実習(秋)<G> 生物資源管理実習(秋) 降水気候学セミナー A(秋) 建築デザイン実習(秋)<G> 持続可能性と環境学(秋) 国際環境:政治外交文化論(秋)<G> 環境資源論(春) 水・廃棄物工学(秋) 水・廃棄物政策論(春) 多元数理研究科 応用数学方法論(秋) エコトピア科学研究所 生物学におけるモーター制御と情報処理(秋) <G> その他 国際開発研究科と法学研究科の一部の科目 個人勉学(研究)指導(Guided Independent Study-GIS) *J= 講義言語:日本語 <G>= 大学院生のみ開放 秋 = 秋学期開講 春 = 春学期開講 図5.2011-2012 名古屋大学短期留学生プログラム(NUPACE)の全体構成 -131- 担当部局 (留セ) (留セ) (留セ) (文) (留セ) (留セ) (留セ) (留セ) (留セ) (留セ) (工) 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 定締結(全学間93,部局間205大学・機関)そして,185 大学,韓国・高麗大学の全学間学生交流協定の更新交 大学との授業料相互不徴収協定を含む学生交流協定 渉に携わった(これらはいずれも,短期留学部門が最 (全学間84,部局間101大学・機関)が締結されている。 初の協定締結交渉に携わったためである)。 筆者は,平成21年3月末で国際企画室長の任務を終 図6の通り,NUPACE への学生受入れが大学間協 えているが,交換留学を中心とした学生交流協定に関 定や授業料相互不徴収協定の締結に大きく貢献して して,直接の相談を数多く受けている。昨年度の年報 いる。NUPACE を開始した15年前には授業料相互不 で詳細を報告したが,,短期留学部門と海外留学室の 徴収協定は6大学だけだったものが,平成23年3月 関係者が,平成22年1- 3月にグローバル30予算に基 時点で178大学に達し,そのうち109大学から学生を づき,交換留学の拡大を目的に2グループに分かれ NUPACE に受け入れたことになる。平成22年度だけ て,シンガポール・香港,そしてヨーロッパ地域の有 に絞っても,そのうちの59大学から学生を受け入れて 力大学を訪問し,帰国後協定交渉を進めた結果,多数 おり,本学の幅広い国際交流に大いに貢献しており, の有力大学の協定締結が実現した。 その実績がまた協定大学を増やし,国際交流を発展さ 1月に訪問した香港大学,香港中文大学,香港科技 せる駆動力となっている。 大学は,22年度早々に協定調印となった(前2大学は, 学生交流協定を含む全学間協定,香港科技大学は工学 4. 2 英語による工学研究科「自動車工学」サマープ ログラム 部・工学研究科部局間協定(学生交流協定含む))。2 -3月に訪問した,スウェーデン・ウプサラ大学,ス (http://www.engg.nagoya-u.ac.jp/en/nusip/index. イス・ジュネーブ大学,ポーランド・ワルシャワ大学, html) スペイン・バルセロナ大学は,平成22年度内に学生交 本サマープログラムは,NUPACE を含めて長年の 流協定を含む全学間協定締結を完了した。イタリア・ 相互の学生交流を継続している米国・ミシガン大学工 ボローニャ大学は,同大学内の承認手続きに時間を要 学部から本学工学研究科へ,派遣学生をより拡大する したが,平成23年6月末に,学生交流協定を含む協定 ため,サマー・プログラムやインターンシップを強く 締結が実現した。イタリア・ボローニャ大学は,ヨー 要望していたことがきっかけとなっている。筆者が工 ロッパ最古の総合大学で,1088年に創立されたとさ 学研究科に関係していることもあり,当短期留学部門 れ,世界の大学の象徴的存在の大学である。また,ウ が準備段階から立ち上げに向けて深く関わり,平成20 プサラ大学(創立1477年),ジュネーブ大学(同1559 年度からプログラムを開始した。 年),バルセロナ大学(同1450年),ワルシャワ大学(同 教育プログラムの内容は,石田幸男工学研究科教 1816年)も200~500年の歴史をもつ名門大学である。 授(専門分野:電子機械工学)(平成19年4月~平成 学生交流を含めた大学間交流協定を相次いで締結でき 23年3月の間,当留学生センター長)が講義構成を企 たことは,名古屋大学の国際的評価が高まっているこ 画し,自動車並びに関連会社の技術者・研究者と名古 とと,NUPACE によってすぐにも交換留学を開始で 屋大学教授の共同授業の形式をとり,工場・研究所見 き,大学間交流を具体化できる点で,国際交流関係者 学も数多く組み入れている。日本語研修も含まれてお がすぐに反応してくれたものと推察する。早速,香港 り,航空運賃と食費は別として,プログラム参加費用 中文大学から昨年9月に1名,ジュネーブ大学から本 は1,800 US ドルに設定されている。 年4月に1名の学生を受入れ,本年秋には3名の学生 この自動車工学サマープログラムの設立経緯,3年 受入れを予定している。またウプサラ大学からも本年 間の実践,そして産学連携のあり方について,東工大・ 秋に3名の学生受入れを予定している。 佐藤由利子らとの共同研究・科学研究費報告書 この他,国際交流課からの依頼を受けて,米国・ (http://www.ryu.titech.ac.jp/~yusato/honbun.pdf ノースカロライナ大学チャペルヒル校(学生交流協定 pp.231-238)に,別途報告しているので,参考にして 含まず)),スウェーデン・王立工科大学との全学間協 いただきたい。 定の交渉を担当し,締結に漕ぎ着けた。さらに,フラ 表3に,平成20~23年度自動車工学サマープログラ ンス・パリ第7大学,フランス・ストラスブール大学, ム参加者の大学別人数を示す。 初年度は米国から計 オーストラリア国立大学,オーストラリア・シドニー 12名が参加したが,平成21年度はフランス,英国の学 -132- 短期留学部門 協定大学・機関数 授業料不徴収協定数 NUPACE受入れ協定大学数(累積) 350 350 300 300 250 250 200 200 150 150 100 100 50 50 0 0 H7 H8 H9 H10 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 図6.名古屋大学の学術交流協定・授業料不徴収協定の締結数の推移と NUPACE で受入れた協定大学数(累積) 表3.自動車工学サマープログラムへの海外学生参加者 大学所在国 2008 2009 2010 2011 ミシガン大学 参加大学 米国 6 13 12 7 ノースカロライナ州立大学 米国 4 カリフォルニア大学ロサンゼルス校 米国 1 9 1 ケンタッキー大学 米国 1 1 2 南イリノイ大学 米国 2 2 2 イリノイ大学アーバナシャンペーン校 米国 5 1 ストラスブルグ大学 4 1 フランス 2 ウォーリック大学 英国 3 香港科技大 香港 3 同済大 中国 1 国立台湾大学 台湾 3 台湾 3 トルコ 1 台湾清華大学 イスタンブール工科大学 計 12 30 30 18 生も加わって上限と考えている30名に達し,平成22年 日の東日本大震災と原発事故の影響により,13名の辞 度も香港,中国が加わって同様に30名であった。平成 退者が出たことにより減少したが,やむを得ない事態 22年度のプログラムでは,豊田章一郎トヨタ自動車名 であった。尚,平成22年度までは協定大学以外の受入 誉会長が授業の参観と参加学生との懇談を行い,プロ れを断っていたが,平成23年度からは協定大学以外の ジェクト研究発表会にはトヨタ USA 社のスタッフも 希望者も最大5名までを受け入れる方針とした。 聴講に訪れ,時間外に同社への就職情報提供が行われ 海外有力大学の国際交流関係者と学術交流を議論す た。 る際に,NUPACE とともに,この自動車工学サマー 平成23年度の参加者は計18名となっているが,2月 プログラムへの関心も高く,同プログラムへ学生を参 末の締切時点の応募者数は40名を越え,3月上旬の時 加させたい,として学術交流協定の申し入れがあるほ 点で31名までに受け入れを絞り,10名近くは断る旨を どである。自動車工学だけでなく,サマープログラム 協定大学に通知した。ところが,残念なことに3月11 があれば,是非学生を派遣したいという協定大学は少 -133- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 なくない。半年または1年の留学に躊躇するが,夏 ログラムの関係者会合の世話人代表を担当してきてい の2ヶ月ほどならば留学したいとの学生のニーズがあ るが,受入れプログラムの交流とともに,海外留学を り,学生交流に関わる大学関係者も,より多くの学生に めざす学生が少なくなっていることに大きな危機感を 海外留学を経験させたいとの動機があるためである。 抱いている関係者が多く,このことも文部科学省や日 本学の自動車工学サマープログラムは,工学部・ 本学生支援機構の関係者に伝えていたところ,前述の 工学研究科だけでなく全学的プログラムとして位置 「留学交流支援制度(ショートステイ・ショートビジッ づけられ,総長裁量経費の支援を受けて,財政基盤 ト)」に3ヶ月未満の受入れだけでなく,海外留学を支 が成り立っている。他の海外大学のサマープログラム 援する制度も組み込まれる形で,平成23年度政府概算 の場合,大学の夏季休業期間の大学寮・宿舎を活用で 要求に盛り込まれた。 きるために宿舎費を抑えているが,日本では学期中で 短期留学部門は,1学期ないし1年間の交換留 あるために大学宿舎を活用できず,民間宿舎等の利用 学生を協定大学から受入れるためのプログラム によって費用負担が大きくなる。本学の自動車工学サ (NUPACE)の運営が主たる任務であるが,協定大学の マープログラムを実例にして,文部科学省の関係者や 方からよりサマープログラム等3ヶ月未満の短期間の 学会等で,これらサマープログラムや3ヶ月未満の超 学生交流を推進したいとの要望が増えており,一方本 短期留学受入れプログラムのニーズ,そして宿舎費等 学の海外留学の数も伸び悩んでいる状態であるため, の支援要請を訴えてきたところ,平成23年度政府概算 海外留学室と連携し,留学交流支援制度(ショートス 要求に「留学交流支援制度(ショートステイ・ショー テイ・ショートビジット)の申請を積極的に支援する トビジット)」が盛り込まれた。 取り組みを行っている。 具体的には,NUPACE の受入れ選考や全学間協定 の派遣留学の選考を行っている交換留学実施委員会に 5.「留学交流支援制度(ショートステイ・ショー て,短期留学部門と海外留学室が主導する形で,各部 トビジット)」 局から申請が行いやすい工夫を行いながら,似通った 筆者は平成21-22年度にわたり,全国の短期留学プ プログラムを統合するなど,調整役を果たした。 表4. 「留学交流支援制度 ( ショートステイ・ショートビジット )」に採択された名古屋大学の申請プログラムと採択された奨学 金支援人月数 SS SV (採択人月)(採択人月) プログラム名 実施責任部局 工学研究科/環境学研究科 (留学生センター調整担当) SSSV-1 名古屋大学先進共同研究大学院生交換プログラム 12人月 12人月 SSSV-2 韓大学生・大学院生相互学術文化交流研修 20人月 10人月 文学研究科 SSSV-3 看護臨床実習交流プログラム 6人月 6人月 医学研究科 SSSV-4 名古屋大学-延世大学間学術研究交流プログラム 5人月 25人月 医学研究科 SSSV-5 国際農学研修 12人月 36人月 生命農学研究科 名古屋大学国際環境人材育成プログラム「グローバル研究 SSSV-6 インターンシップ/短期フィールド・リサーチの相互支援」 3人月 18人月 環境学研究科 SSSV-7 名古屋大学大学院環境学研究科/パリ・ヴァル・ドゥ・セー ヌ国立高等建築学校合同建築・都市設計ワークショップ 0人月 10人月 環境学研究科 SV-1 協定大学における語学研修および文化教養・専門研修プ ログラム - 171人月 経済学研究科/海外留学室/上海 事務所(留学生センター調整担当) SV-2 航空宇宙工学 海外研究インターンシップ - 4人月 工学研究科 SV-3 国際開発研究科・海外実地研修プログラム - 24人月 国際開発研究科 SV-4 名古屋大学国際環境人材育成プログラム「海外合宿研修」 - 3人月 環境学研究科 SS:ショートステイ(3ヶ月未満の受入れ) SV:ショートビジット(3ヶ月未満の派遣) SSSV:SS と SV の双方向が計画されたプログラム -134- 短期留学部門 平成23年4月上旬募集開始,5月9日応募締め切り で,平成22年4月以前は留学生宿舎単身室が200室前 という厳しい日程であったが,本学から,表4のよう 後であったものが,平成24年春には全体で約500室 に,7件のショートステイ・ショートビジット(SS・ と大幅に増強されることがその大きな理由であるが, SV 双方向)と4件のショートビジット(SV)を申請 協定大学から自費で参加する学生が半分以上という し,SV の1件が部分採択であったものの,それ以外 NUPACE の実績も高く評価していただき,総長部局 は申請が100% 採択される結果となった。割当奨学金 をはじめ,全学の関係者の NUPACE に対する配慮に の人数×月数で言えば,388人月を申請し,377人月が 深く感謝申し上げたい。 採択される結果となった。自動車工学サマープログラ この決定を受けて,平成21-22年度の NUPACE 受 ムは,当然支援されるべきプログラムであったが,初 入れ,協定大学あたり4月受入れ1名,9月末受入れ 年度の募集時期の遅れのために,7月以降にプログラ 2名に制限していたが,23年度からは協定大学あたり ムが開始することが条件となり,6月から開始する自 4月受入れ2名,9月末受入れ3名に拡大することと 動車工学サマープログラムは,申請できなかった。 なった。 グローバル30において,交換留学も拡大していく計 画であり,平成25年には年間受入数110名,平成32年は 6.その他の課題 150名を目標としているが,宿舎環境が大きく改善さ 6. 1 宿舎 れたことによって,大きな制約条件が取り払われた。 本学のグローバル30に向けた環境整備の取り組みの ただし,協定大学数もどんどんと増えているため,協 結果,宿舎問題は平成22年度そして平成23年度と大 定大学あたりの受入れ数の制限は,ある程度維持せざ きな変貌を遂げようとしている。昨年度の年報では, るを得ないと思われる。 NUPACE の宿舎優先枠60名に対して,平成21年9月 末に春学期からの継続学生を含めた NUPACE の受入 6. 2 短期留学部門の体制 れ数が75名となり,優先枠60名を15名上回る事態と 平成21年度は,短期留学部門体制の体制強化が図ら なったため,民間宿舎を大学が借り上げることで対応 れたが,平成22年度は交換留学担当専任職員と事務補 した経緯を報告した。学生それぞれに対して,民間宿 佐を担当していた事務職員の交代が相次いだ。短期留 舎を斡旋することに比べれば,借り上げ対応によって 学室に平成21年度に新しく設けられた交換留学担当専 負担が軽減はされるが,15名に及ぶ外部の宿舎管理は 任職員に採用した牧原弘昌氏が残念ながら1年で退職 容易ではない。 し,後任に亀井千里氏が着任した。牧原氏は5年以上 その経験を背景にして,平成22年4月に, 「インター の米国やフランスでの留学経験があり,学生の履修管 ナショナル・レジデンス山手」と名づけられた留学生 理,宿舎管理,各種相談に大変活躍していただいたが, 用宿舎100室が新たに供用されることになったため, 国際的キャリアをより生かせる環境に移られたようで 「交換留学実施委員会」から留学生関係宿舎を管轄する ある。しかし,亀井氏も4年以上の海外経験の中で, 「国際関係施設委員会」へ,平成22年2月に NUPACE 協定大学のブリストル大学大学院に留学していた経験 の宿舎優先枠の拡大を申し入れたところ,20名増の80 も持ち,昨年9月1日着任以来,すぐにも即戦力とし 名の収容枠が認められた。 て活躍していただいている。また,4年半にわたり事 さらに,石田記念財団から名古屋大学に上記施設近 務補佐をしていた方が,牧原氏と同時期に,出産によ 傍の土地が寄付され,「石田記念・レジデンス妙見」と る退職となり,さらに今春は8年間継続して事務補佐 名づけられた留学生宿舎約100室が,平成23年度秋か を担当していた方の家庭事情による退職があり,後任 ら供用される予定となった。そこで,平成23年1月に の方に引き継いでいただいた。 NUPACE 優先枠をさらに100名までに増やすことを上 国際学生交流課では,学生交流掛が3名体制で 記「委員会」へ申し入れたところ,100名の優先枠が認 NUPACE の事務支援を行っている。平成23年4月に められただけでなく,基本的に NUPACE に対する優 掛長の交代があったが,国際企画課から国際業務経験 先枠の上限を定めない,との画期的な決定が下された。 の豊かな方が後任として着任し,引き続き強力な体制 平成24年春にはさらに100室が増強される見込み を維持している。 -135- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 6. 3 安否情報と緊急時対応 NUPACE の場合は,協定大学の関係者からの心配 3月11日(金)14時46分に東日本大震災が発生した する連絡が寄せられたため,個別に対応する前に,50 時点で,筆者は東京での夕方の会議のために名古屋駅 名全員の安否確認を急いだ。一日遅れではあったが, で予定時刻の新幹線に乗車しようと待っていた数分前 海外の協定大学の関係者に届いたメッセージは,どん から新幹線が止まり,その後約2時間ほど新幹線の運 なに安心させただろうかと想像する。 転再開を待っていたが,見通しが立たず,東京での会 このような緊急事態は,休日,平日に関係なく生じ 議も開催できない,との連絡を受けて,帰宅の途につ うるものであり,高い確率で想定されている東海・東 いた。 南海地震が起これば,迅速な対応が求められる。本学 残念ながら,本学では身近な大災害と認識されず, としては,これを大きな反省材料として,留学生に対 大学から緊急連絡も入って来ず,筆者自身もその日 する安否確認と緊急対応について,さらに整備を進め に NUPACE 学生の安否確認をすることに思い至らな ていきたい。 かった。しかし,その夜に,海外の協定大学の国際交 流関係者から短期留学室関係者と本学に派遣している 学生の安否を確認をするメールが届き始めていたた 7.最後に め,翌日土曜の午前中から大学に出勤して在籍する 本年秋から「グローバル30」プロジェクトで要請さ NUPACE 学生50名に一斉に安否確認のためのメール れていた英語による学部プログラムや大学院プログラ を送り,返事の来ない学生には携帯電話で連絡をとり ムが開始される。英語授業のメニューが拡がる点で, 始めた。午後には亀井専門職員が応援にかけつけてく NUPACE にとって期待するものは大きい。 れ,さらに連絡を受けた NUPACE の一部学生が,短 しかし,英語能力を前提として受け入れ,日本語能 期留学室から直接連絡のとれなかった学生に携帯等で 力が十分でない学部生を受け入れるプログラムは全く さらに連絡してもらうことなどを行った。春休み期間 初めての経験であり,履修管理から様々な相談に対す であったため,一部の学生は海外に出ている状況もあ る英語対応など,体制が十分に用意されているかとい り,平成22年度からようやく全学で運用開始となった うと,心許ないところである。これから数年は様々な 海外渡航データベースを検索して,一部の学生は届け 試練が待ち構えていると思われるが,それもまた大学 出が出ていることを確認できた。 の国際化の産みの苦しみであるかと思われる。是非成 このように,連絡のとりにくい春休み期間であった 功させていただきたいところである。 ものの,様々な手段を駆使して,土曜夕の19時頃には NUPACE の成功によって,海外有力大学との協定 全部の安否確認が完了できた。この情報に基づき,そ 締結が進んでおり,それらの大学から新たに学生を受 の夜から石川クラウディア准教授が,自宅から協定大 け入れ始めている。しかしながら,本学から海外に送 学の学生派遣担当者に本学および学生の無事を連絡 り出すことのできる学生が少ないのはとても残念なこ し,協定大学の関係者から感謝のメッセージを受け とである。海外留学室岩城准教授や熊坂プログラム 取った。 マネージャーが年間を通して PR 活動に努力している 残念なことに,本学の他の留学生の安否確認は,休 が,この数年,交換留学で派遣している学生数が30名 日が明けてから,部局毎に行われており,対応が後手 前後から伸びていかない。「留学交流支援制度(ショー に回った感は否めなかった。名古屋大学では,メール トステイ・ショートビジット)」のショートビジット や携帯電話を使った安否情報確認システムを作り上げ は,留学の前提となる語学力向上とお試し留学として ていたが,休日中に動くことはなく,週明けになって 活用できる新しい支援制度である。有力大学への交換 からであった。 留学を実現する呼び水になってほしいところである。 -136- 短期留学部門 NUPACE1 2010~2011: Ending with a Bump Claudia Ishikawa Nagoya University Programme for Academic Exchange (NUPACE) A. Introduction B. Government-related Scholarships Despite an untroubled start and projections for an un- Japan’s Student Exchange Support Program <SESP>, precedented intake of exchange students, for NUPACE the MEXT co-ordinated/JASSO administered short- the academic year 2010~2011 ended with a resounding term exchange scholarship programme, continues to bump, …literally. Nagoya University may be located 550 comprise the main source of governmental funding for kilometres from the epicentre of the Great East Japan short-term exchange students in this country, includ- Earthquake,2 and 450 kilometres from the affected ing those at Nagoya University. In addition to SESP, Fukushima nuclear power plants (Japan, after all, is a the JENESYS Programme (Japan – East Asia Network long archipelago), but the events of March 11, 2011 left of Exchange for Students and Youths)4 has entered its NUPACE licking its wounds. fifth year, and Nagoya University continues to receive steady, if limited, scholarship support from this project. This report is divided into four parts. Section B deals Hitherto, recipients have been restricted to applicants with scholarship (in particular JASSO3) policy develop- from partner institutions in Korea (ROK). As mentioned ments and statistics for FY 2011, Section C briefly out- in last year’s report,5 as of FY 2009, the awarding of lines current trends in NUPACE student composition JENESYS scholarships has become tactical; scholarship and the academic programme over the last academic allocation has become slanted towards fields considered year, and Section D, the conclusion, interprets some strategically important to both countries, e.g., in the case developments affecting NUPACE that have taken place of Nagoya University, biological engineering in FY 2009, over the last year, especially featuring the impact of 3/11 and particle/materials engineering in both FY 2010 and on NUPACE. FY 2011. Finally, in keeping with JASSO’s relinquishment of policy-making powers to MEXT, as of FY 2008, due to the absence of formal diplomatic relations with 1 NUPACE is the acronym for the Nagoya University Program for Academic Exchange, Nagoya University’s short-term student exchange programme for incoming students established in February 1996. Students enrolled in degree programmes at institutions with which Nagoya University has concluded academic exchange agreements are eligible to apply for the programme. Courses that constitute the NUPACE programme are principally taught in English; Japanese language proficiency is not a prerequisite, although students proficient in Japanese may enrol in regular university courses. 2 Originally known as the Tohoku-Pacific Ocean Earthquake. 3 JASSO (Japan Student Services Organisation <日本学生支援機構>) is a public corporation with a strong affiliation to the Ministry of Education (MEXT). The organisation administers, although no longer determines policy as pertains to short-term student exchange scholarships. 4 JENESYS, the result of the East Asia Summit of January 2007 and under the control of the Ministry of Foreign Affairs <MOFA>, comprises a five-year project, worth approximately ¥35 billion, that aims to bring 6,000 students and youths to Japan per annum from Asia. Short-term student exchange scholarships constitute part of the package, with recipients benefiting from the slightly superior provisions to those offered by SESP. Administration of the programme has been entrusted to JASSO. 5 Claudia Ishikawa, NUPACE: A Bumper Year and the Return to Normalcy, Journal of the Education Center for International Students (ECIS), Volume 8, pp. 155~168. -137- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 Taiwan, applicants with Taiwanese citizenship are no As is evident from the Table, since FY 2001 a variety longer eligible to apply for SESP scholarships. Instead, of scholarship categories reflecting policy priorities such applicants are being directed to apply for similar, have been incorporated into the framework of the Stu- albeit time-restricted (a maximum six-month stipend) dent Exchange Support Program (SESP). Participating scholarships offered by the Interchange Association institutions apply for and are allocated scholarships Japan (IAJ).6 according to this set of classifications. Commencing in FY 2008, with the transfer of jurisdiction for short-term 1. Student Exchange Support Program <SESP> Provisions and Categories: General Trends student exchange scholarships to MEXT, in addition to ‘general category’ (ippan) scholarships, a specified Utilising graphs and tables, this section of the report number of scholarships have come to be reserved for aims to illustrate the major trends in the allocation of 1) institutions having established programmes taught in short-term student exchange scholarships. English,8 2) institutions participating in credit transfer,9 and 3) institutions having devised “Other” programmes, Table 1 depicts short-term exchange scholarship cat- a category which gives priority allocation to short-term egories and provisions as allocated by the Ministry of programmes with ‘distinctive features’. Two examples Education <MEXT> (formerly JASSO, and prior to that, of such ‘distinctive features’ comprise 1) advanced pro- the AIEJ) since the establishment of the scholarship grammes at the graduate level and 2) consortium ex- programme in 1995. Despite the ‘national strategy’ em- changes; this ‘Other’ category can be understood to be phasis that has recently been given to foreign student flexible and discretionary. (Refer to Table 2, Pie Chart admission, in FY 2011, SESP scholarships registered 1, and Graph 1). at 1,460, a decrease of 14% from the previous year. And, notwithstanding the boost in scholarship numbers Graph 1 provides a comparison of the overall scholar- provided by additional SESP-equivalent scholarships ship allocation according to classification since FY 2001, earmarked for “Global 30” institutions, the accumulative when the categorisation of scholarships commenced. figure of 1,590 is the third worst on record. The numeri- The figures are revealing in that, as of FY 2011, they cal decline of SESP scholarships is further evidenced by denote a new ambivalence in MEXT policy. “Special a simultaneous downgrading of scholarship provisions. category” scholarships, the so-called strategic element As of FY 2011 the ¥80,000 one-time settling-in allow- of short-term exchange scholarship policy, have unac- ance has been slashed. It appears that MEXT is shifting countably declined by 30% in the space of one year, its expectations to the newly inaugurated “Short Stay/ the drop in number being particularly conspicuous in Short Visit Program (SS-SV)”7 in its quest to satisfy the the categories of “English-language Programme” and numerical target set by the “Plan to Accept 300,000 For- “Credit Transfer”, down by 40% and 38%, respectively. eign Students”. In contrast, “general” scholarships, which as the name suggests, are not project-oriented, and awardable to 6 財団法人交流協会. 7 This programme, in operation as of FY2011 has set itself the objective of admitting 7,000 international students per annum, for a study period of up to three months. The monthly stipend for SS-SV scholarship recipients is equivalent to SESP. 8 It was a Ministry of Education prod, urging the establishment at Japanese universities of programmes taught in English that initially resulted in the establishment of Short-term Student Exchange Promotion Program (Inbound) scholarships. The percentage of scholarships allocated to this particular category now comprises 36% of the total. 9 The ‘credit transfer’ scholarship category was formerly referred to as the UMAP category. It now not only encompasses UCTS (UMAP Credit Transfer Scheme) but also ECTS (European Credit Transfer Scheme). Scholarships can only be allocated to institutions where the utilisation of the above credit transfer schemes has been incorporated into student exchange agreements with partner institutions. -138- 短期留学部門 Table 1. AIEJ/JASSO/MEXT Student Exchange Support Program <SESP> Provisions for Incoming Students: April 1995 ~ March 2012 Year Scholarships Category 1995~96 1,000 No Categorisation 1996~97 1,750 P&F* 1,100 S-t* 1997~98 1,900 P&F 1,120 S-t 1998~99 1,500 1999~00 1,803 2000~01 1,732 2001~02 1,761 2002~03 1,618 2003~04 1,950 2004~05 2,000 2005~06 1,800 2006~07 1,600 General (ippan); English-language prog.; UMAP 1. ¥80,000 monthly stipend (3~12 months) 2. ¥150,000 one-time ‘study abroad preparation allowance’ 2007~08 1,723 General (ippan); English-Language Prog.; UMAP 1. ¥80,000 monthly stipend (3~12 months) 2. ¥150,000 one-time ‘study abroad preparation allowance’ 1,829 General (ippan); English-Language Prog.; Credit Transfer; Other (Distinctive Prog.). 1. ¥80,000 monthly stipend (3~12 months) 2. ¥150,000 one-time ‘study abroad preparation allowance’ 2008~09 1,680 2009~10 130 1,694 2010~11 130 1,460 2011~12 130 Provisions 650 1. ¥100,000 monthly stipend (6~12 months) 2. Economy class round-trip air ticket 3. ¥50,000 settling-in allowance P&F 1, 2 & 3 as for 1995~96 S-t 1. ¥80,000 monthly stipend, 2 & 3 as for 1995~96 780 No Categorisation 1. ¥80,000 monthly stipend (6~12 months) 2. Economy class round-trip air ticket 3. ¥25,000 settling-in allowance 1, 2 & 3 as for 1998~99 Short-term; Intensive Short-term; Bridging Scholar. General (ippan); English-Language Prog.; UMAP*; Consortium; Internship. Short-term: 1, 2 & 3 as for 1998~99 Intensive Short-term: ¥80,000 monthly stipend (3~5 months) Bridging Scholar: ¥40,000 monthly stipend (3~12 months) 1, 2 & 3 as for 1998~99 ¥80,000 monthly stipend (3~12 months) 2 & 3 as for 1998~99 General (ippan); English-Language Prog.; Credit Transfer; Other (Distinctive Prog.). 1. ¥80,000 monthly stipend (3~12 months) 2. ¥80,000 one-time ‘study abroad preparation allowance’ Global 30 Project Initiative 1. ¥80,000 monthly stipend (3~12 months) 2. ¥80,000 one-time ‘study abroad preparation allowance’ General (ippan); English-Language Prog.; Credit Transfer; Other (Distinctive Prog.). 1. ¥80,000 monthly stipend (3~12 months) 2. ¥80,000 one-time ‘study abroad preparation allowance’ Global 30 Project Initiative 1. ¥80,000 monthly stipend (3~12 months) 2. ¥80,000 one-time ‘study abroad preparation allowance’ General (ippan); 1. ¥80,000 monthly stipend (3~12 months) English-Language Prog.; One-time ‘study abroad preparation allowance’ abolished Credit Transfer; Other (Distinctive Prog.). Global 30 Project Initiative 1. ¥80,000 monthly stipend (3~12 months) One-time ‘study abroad preparation allowance’ abolished *P&F = Peace & Friendship Scholarship *S-t = Short-term Scholarship *UMAP Credit Transfer Scheme -139- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 any exchange student from a partner institution, have plexed as to the direction of the concept of targeting witnessed a 3% increase. The author is somewhat per- foreign students as part of a ‘national strategy’. Table 2. Student Exchange Support Program <SESP> Scholarship Classification – Overall Total (1): April 2011 ~ March 2012 Scholarship Category Total No. of Scholarships 1,460 (1,694) Special Category General 851 (824) EnglishLanguage Prog. Credit Transfer 368 (610) 75 (120 ) (Distinctive Prog.) Total No./Special Category Scholarships 166 (140) 609 (870) Other *( ) = Scholarship Allocations for 2010~2011 Pie Chart 1. Student Exchange Support Program <SESP> Scholarship Classification – Overall Total (2). Scholarships According to Classification: April 2011 ~ March 2012 (Total: 1,460 Scholarships) Graph 1. Trends in Student Exchange Support Program <SESP> Scholarship Allocation According to Scholarship Category. An Annual Comparison: April 2001 ~ March 2012 -140- 短期留学部門 Table 3. Student Exchange Support Program <SESP> Scholarship Allocation “Special Category”: Recipient Institutions by Rank (April 2011 ~ March 2012) English-Language Programmes* (Total 368 Scholarships) Credit Transfer Programmes (Total 75 Scholarships) Other <Distinctive Programmes> (Total 166 Scholarships) Hitotsubashi U. (15) NEW 1 Osaka U. <3 progs.> (42) < ↓1> 1 Tsukuba U. (15) ⇔ 1 2 Tohoku U. <2 progs.> (30) 1 Waseda U. (15) ⇔ 1 Keio U. <2 progs.> (15) <↑2> 3 Tokyo Inst. of Tech. progs.> (20) <↓4> 3 Tohoku U. (13) <↓1> 1 Osaka U. (15) ⇔ 4 Hokkaido U. (15)⇔ 4 U. of Electro-Communications <2 progs.> (10) <↑2> 4 Tsukuba U. <2 progs.> (13) <↓7> 4 U.of Tokyo (15) <↑2> 5 Keio U. (9) <↓6> 4 Waseda U. <2 progs.> (13) <↑1> 4 Tokyo U. of Foreign Studies (15) <↑7> 6 Hiroshima U. <2 progs.> (7) <↓2> 4 Ehime U. <2 progs.> (13) NEW 4 Nagoya U. <NUPACE> (15) ⇔ 7 Akita International U. (2) ⇔ 7 Tohoku U. (12) <↓3> 4 Hiroshima U. (15) <↑2> 7 Yokohama National U. (2) <↓5> 8 Tokyo Inst. of Technology (10) ⇔ 4 Keio U. (15)⇔ 9 Niigata U. (1) NEW 9 Kumamoto U. (9) <↑4> 4 Waseda U. (15) ⇔ 9 Kyoto Inst. of Technology (1) <↓1> 10 Kanazawa U. <2 progs.> (8) <↑5> 11 Akita U. (12) ⇔ 9 Kyoto Notre Dame U. (1) ⇔ 11 Okayama U. <2 progs.> (8) <↓2> 11 Tsukuba U. (12) <↑4> 12 Nagoya U. <2 progs.> (7) <↑3> 11 U. of Electro-Communications (12) <↓3> 13 Gunma U. <2 progs.> (6) <↓2> 11 Kanazawa U. (12) <↓10> 14 Hiroshima U. (4) NEW 11 Kyoto U. (12) <↓3> 15 Chiba U. (3) <↓1> 11 Kwansei Gakuin U. (12) <↓1> 15 Kyushu U. (3) <↓1> 17 Otaru U. of Commerce (9) <↓2> 17 Niigata U. (2) <↓2> 17 Akita International U. (9) <↓2> 17 Tokyo Medical and Dental U. (2) <↓1> 17 Fukui U. (9) <↓2> 17 Hyogo U. of Education (2) <↑1> 17 Hosei U. (9) <↓2> 17 Tokushima U. (2) <↓1> 17 Kyushu U. (9) <↓4> 17 U. of Miyazaki (2) <↑1> 17 Kumamoto U. (9) <↓2> 22 Tokyo U. of Science (2) <↑1> 23 Saitama U. (6) <↓2> Miyagi U. of Education <2 progs.> (2) 24 Hirosaki U. (3) <↓8> Tokyo U. of Agriculture & Tech. (1) 24 Chiba U. (3) <↓8> Kagoshima U. (1) 24 Niigata U. (3) <↓8> 24 Tokyo International U. (3) <↓5> 24 J.F. Oberlin U. (3) <↓5> 24 Senshu U. (3) <↓10> 24 Nihon U. (3) <↓8> 24 Meiji Gakuin U. (3) <↓9> 24 Rikkyo U. (3) <↓10> 24 Osaka Gakuin U. (3) <↓8> 24 Kansai Gaidai U. (3) <↓5> 24 Saga U. (3) <↓5> 24 Oita U. (3) <↓8> *Numbers in ( ) indicate scholarship allocation/**Numbers in < > indicate increase/decrease from last year/***Italics denote private institutions -141- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 Table 3 presents, in order of rank, Japanese universi- more striking atrophy from twenty to eleven occurred.11 ties that have been successful in their application for Second, MEXT’s publicly-announced policy of dividing SESP “special category” scholarships,10 with figures scholarships more equitably between public and private covering not only national/public university corpora- institutions has manifestly collapsed. In FY 2011, private tions, but also private universities. Table 3, Graph 2 universities received only 21% of SESP “special cat- and Pie Chart 3 demonstrate that two themes dominate egory” scholarships; in 2010, the corresponding figure scholarship allocation in FY 2011. First, the number of was 33%. institutions receiving SESP “special category” scholarships has decreased markedly over a one-year span. In addition to the above, readily deducible from Table As concerns English-language programmes, recipient 3, is that in FY 2011, Nagoya University’s performance institutions registered a drop from fifty-two to thirty- in the SESP scholarship allocation league was fairer six. With regard to credit-transfer programmes, an even than in FY 2010, but not stellar. Even if one includes the Pie Chart 2. Student Exchange Support Program <SESP> Scholarship Allocation (“Special Category”) According to Type of Institution (April 2011 ~ March 2012) Graph 2. Student Exchange Support Program <SESP> Scholarship Allocation (“Special Category”) According to Type of Institution 10 Data on SESP ‘general category’ scholarship allocation has not been made public since FY 2009. 11 The special category labelled “Other” was left immune to this trend. In FY 2011, exactly the same number of institutions received scholarships as in FY 2010. -142- 短期留学部門 Table 4. Top 14 University Ranking Determined by Total Number of “Special Category” and “Global 30" Scholarships” Allocated (April 2011 ~ March 2012) Rank Institution Total No. of Special Category Scholarships Global 30 Scholarships Total 67 1 Osaka U. 57 (58)↓ 10 (10) 2 Tohoku U. 55 (58)↓ 10 (10) 65 3 Waseda U. 43 (42)↑ 10 (10) 53 4 Tsukuba U. 40 (43)↓ 10 (10) 50 5 Keio U. 39 (43)↓ 10 (10) 49 6 Nagoya U. 22 (19)↑ 10 (10) 32 7 Tokyo Inst. of Technology 30 (34)↓ – 30 8 Hiroshima U. 26 (22)↑ – 26 9 U. of Tokyo 15 (13)↑ 10 (10) 25 10 Kyushu U. 12 (24)↓ 10 (10) 22 10 Kyoto U. 12 (15)↓ 10 (10) 22 10 U. of ElectroCommunications 22 (24)↓ – 22 13 Kanazawa U. 20 (25)↓ – 20 14 Kumamoto U. 18 (16)↑ – 18 ( ) Rank/Special Category Scholarship Allocations for 2010~2011 “Global 30” bonus of ten scholarships and eleven “gen2. NUPACE’s Student Exchange Scholarships (In- eral” category scholarships, it received a mere forty- bound) for 2011 - 2012: A Breakdown three scholarship-assisted places, thirty-nine of these reserved for NUPACE. With the exception of JENESYS and IAJ scholarships, which are country-specific, NUPACE has devised a for- As Table 4 reveals, in FY 2011, the winners of Govern- mula for dividing scholarships amongst regions, and this ment largesse were Osaka, Tohoku, Waseda, Tsukuba, has been effective as of 2006.12 For the purpose of divid- and Keio, although scholarship losses heavily outnum- ing scholarships equitably, applications from Australia bered gains. More disconcertingly, as “special category” have, as of FY 2008, been integrated with Europe and, as scholarships, the allegedly strategic component of the of FY 2009, those from South America with North Amer- SESP budget, have been cut so drastically, it is probably ica. Table 5 depicts the number of scholarships made an unproductive exercise to deliberate on successful available specifically to NUPACE for FY 2011, divided tactics vis-à-vis the acquisition of Government funding. Table 5. Short-term Student Exchange Scholarships (Incoming) for April 2011 ~ March 2012: NUPACE Scholarships Awarded Breakdown MEXT (SESP) MEXT (Global 30) MOFA (JENESYS) IAJ 10 (8) 3 (3) 3 (2) 0 (0) Apr Sep Total 19 (16) 7 (7) 1 (4) 1 (1) 29 (24) 10 (10) 4 (6) 1 (1) ( ) = Figures for 2010~2011 12 NUPACE Formula for Calculating Regional Scholarship Allocations: 1. The number of scholarships, as received over the past three years for the respective admission period, and divided according to region, is totalled and the average calculated. The percentage of scholarships allocated to each region is thus deduced. 2. The number of valid applications, as received for the respective admission period, and divided according to region (Asia, Europe, North America, Oceania), is totalled. The percentage of valid applications from each region is thus deduced. 3. The results of ‘1’ and ‘2’ are added together and divided by two, with the consequent ratio between Asia, Europe, North America, and Oceania determining regional scholarship allocations for the upcoming academic year. 13 Due to the ramifications of 3/11, some of the scholarships allocated to the April entry period were either cancelled or deferred. Please refer to Section D for more details -143- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 Pie Chart 3. Student Exchange Support Program <SESP>, “Global 30”, JENESYS, and IAJ Scholarship Breakdown by Region: April 2011 ~ March 2012 (Total: 42 Scholarships) into April and September admission periods.13 These nia's portion of the pie increased by 3%, that of Europe figures include stipends received through the JENESYS by 2%, whilst the NUPACE student population of Asia and IAJ projects. and the Americas dwindled by 3%, respectively. Pie Chart 3 shows scholarship allocation for FY 2011 as The regional composition of incoming students over divided by region. It reflects the effect of 3/11; thus far NUPACE’s fifteen-year lifespan is depicted in Graph two scholarships have been unavoidably cancelled. 3. Whilst the total annual intake of students has, during this period, increased by 65%, the reader will note significant regional trends. Strong growth in the student C. NUPACE: Incoming Exchange Student intake from Asia is expected to continue, and Europe Composition and North America, too, although periodically fluctuat- Now moving onto actual exchange student admission to ing, are registering a steady increase. Conversely, it is Nagoya University, this section of the report illustrates obvious that Nagoya University needs to spend more NUPACE student composition, commencing with the resources on nurturing the South American student regional breakdown of students who came to Japan to market. participate in NUPACE in FY 2010. Table 6 summarises FY 2010 data on the ratio of NUA comparison with last year’s figures demonstrates that PACE students supported financially either directly or the number of NUPACE participants rose by 5%, from indirectly by the Japanese Government (i.e., the MEXT/ eighty-five-eight to eighty-nine. Compositionally, Ocea- JASSO-controlled Student Exchange Support Program Pie-chart 4. NUPACE Students by Region of Home Institution: April 2010 ~ March 2011 (Total: 89 Students) -144- 短期留学部門 <SESP>, as well as the JENESYS, and Interchange Asso- For the record, in FY 2010, of the eighty-nine exchange ciation Japan <IAJ> projects) in relation to independent- students admitted to NUPACE, 47% benefited from ly-financed14 students.15 The precipitous drop in public SESP, “Global 30”, JENESYS, or IAJ, budget funding, a support from the previous year can be explained by the steep decline from the 79% of beneficiaries in FY 2009. fact that NUPACE received a supplementary scholarship allocation of twenty-four places in FY 2009, government As concerns the trend in the number of applications largesse which was not repeated in FY 2010. received, FY 2011 witnessed an abrupt surge. Two prob- Graph 3. Students by Region of Home Institution: February 1996 ~ March 2011 (Total: 922 Students) Table 6. NUPACE Students by Source of Funding: April 2010 ~ March 2011 (Total: 89 Students) September 2010Admission16 April 2010 Admission Region SESP17 (JASSO)/ JENESYS G30 IAJ Selffinanced SESP (JASSO)/ G30 Supplementary Budget JENESYS IAJ Regional Sub-Total Selffinanced SESP (JASSO)/ SelfG30/ financed JENESYS/ IAJ Asia 6 (5) 2 (2) 0 (1) 9 (4) 11 (10) – (13) 4 (3) 1 (1) 11 (4) 24 (35) 20 (8) Europe 2 (1) (–) (–) 1 (1) 7 (8) – (8) (–) (–) 15 (4) 9 (17) 16 (5) N. America 2 (2) (–) (–) 3 (4) 4 (7) – (3) (–) (–) 6 (0) 6 (12) 9 (4) S. America 0 (0) (–) (–) 0 (0) 0 (0) – (0) (–) (–) 0 (1) 0 (0) 0 (1) Oceania 1 (2) (–) (–) 2 (0) 2 (1) – (0) (–) (–) 0 (0) 3 (3) 2 (0) 11 (10) 2 (2) 0 (1) 15 (9) 24 (26) 0 (24) 4 (3) 1 (1) 32 (23) 42 (67) 47 (18) Total ( ) = Figures for 2009~2010; total: 85 students 14 Not all independently-financed students are entirely self-supported. A certain number receive some form of financial assistance from their home institutions or other organisations, although NUPACE is not aware of the extent of this assistance. 15 The vast majority of NUPACE students are enrolled at institutions with which Nagoya University, or a School of Nagoya University, has concluded a tuition-waiver agreement. Hence, independently-financed students do not, in principle, pay tuition fees to this university. They are responsible for bearing the cost of maintenance only. 16 追加予算 17 Two students, one from Asia and one from Oceania, received supplementary SESP scholarships from the third term (January to March) of their one-year exchange at Nagoya University. In Table 6, these students are counted as having received scholarships. -145- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 Graph 4. NUPACE Applications in Relation to Student Exchange Support Program (SESP) and “Global 30”18 Scholarships: February 1996 ~ March 2012 Data for ‘NUPACE Applications Received’ does not include applications which were withdrawn voluntarily prior to the convening of the respective Nagoya University Student Exchange Committee. able factors lie behind this development. First, in its from Nagoya University's selection as a “Global 30” hub. quest to raise exchange student numbers in accordance Nevertheless, it would be overly optimistic to pretend with Nagoya University's medium-term plan to admit that MEXT/JASSO largesse will continue unabated. As is 3,000 international students, NUPACE has increased the obvious from the data presented above, Short-term Ex- maximum permissible intake per partner institution to change Support Programme (SESP) scholarships have two in the spring admission period, and three in autumn, met with the axe, and certain universities with an illus- where this does not contravene the provisions laid down trious student exchange history have ceased to receive in student exchange memoranda. Second, in January to them altogether. Not as though this is necessarily an is- February 2010, NUPACE engaged in an aggressive drive sue any longer. As application data amply demonstrates, to conclude student exchange agreements with leading as far as NUPACE is concerned, over 90% of applicants universities in Asia and Europe, a drive which paid off. are prepared to participate in this short-term exchange experience in the absence of MEXT/JASSO support. As highlighted in Graph 4, in FY 2011, NUPACE re- And, as the NUPACE quota for university housing will ceived 158 applications relative to a pool of thirty-nine be completely abolished as of September 2011 entry, SESP and “Global 30” scholarships. Just 25% of NU- all exchange students are now guaranteed access to PACE applicants have the potential to benefit from such reasonably-priced accommodation, fitting news indeed an award. on the occasion of NUPACE’s 15th Anniversary. In spite of this upbeat note, one should not underesti- D. Concluding Observations mate the ramifications of 3/11. The Great East Japan By most indicators, the condition of NUPACE remained Earthquake proved damaging for NUPACE, most obvi- stable in FY 2010. Student numbers rose, albeit by a ously in the short term, as manifested both by an unprec- somewhat disappointing 5% overall, and the programme edented number of cancellations and deferrals (both continued to benefit from bonus scholarships resulting voluntary and home-university mandated) (see Tables 18 The twenty-four scholarships accrued to NUPACE in FY 2009 as a result of the MEXT supplementary budget comprise an exceptional and unforeseeable phenomenon, and are not included in Graph 4. JENESYS and IAJ scholarships are also excluded due to 1) the term-limited nature of the JENESYS project and, 2) the unpredictability of allocation vis-a-vis IAJ funding. -146- 短期留学部門 Table 7. Effect of 3/11 on NUPACE Student Numbers According to Country of Home Institution: September 2010 & April 2011 Entry Combined (95 → 56 Students) Table 8. Effect of 3/11 on NUPACE Student Numbers According to Region of Home Institution: September 2010 & April 2011 Entry Combined (95 → 56 Students) Asia 50 40 30 20 10 Oceania 0 Europe Pre 3/11 Post 3/11 N. America 7, and 8 for data), and by the consequent somewhat as being trustworthy, reliable and safe, also serves as a strained correspondence with a few partner institutions. magnet. These latter attributes have come to be called Attempting to balance the right to self-determination of into question. Yes, the earthquake has physically sapped students on the one hand, and the legal responsibility of the vitality of this country, and full recovery will take certain universities as concerns the well-being of these decades. But more devastating has been the inept han- same students, on the other, proved to be a delicate dling and dissemination, on the part of the Government matter. and TEPCO, of information surrounding the meltdown that occurred at the Fukushima nuclear power plants. But, the latent damage incurred is possibly of greater 3/11 may well prove to be a catalyst in the history of this portent. Japan’s attractiveness to the outside is based country; to what extent it will impact international stu- not only on its unrivalled ownership of a heady combi- dent movement to this country, and more importantly nation of the traditional and modern, of aesthetics and “internationalisation” in general, will comprise a subject pop culture. To a certain extent, the perception of Japan of scrutiny.19 19 Feedback to this article should be addressed to the author at [email protected]. -147- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 Appendix 1. NUPACE Students by Region of Home Institution: February 1996~March 2011 (Total: 922 Students) Appendix 2. NUPACE Students by Country of Home Institution: February 1996 ~ March 2011 (Total: 922 Students) 191 167 54 USA Uzbekistan 14 2 Vietnam 20 UK 9 Taiwan 4 Thailand 13 Philippines Mongolia Kazakhstan Canada 2 1 Korea (ROK) Cambodia 2 India Brazil 1 Indonesia Austria Belgium 1 Hong Kong 4 France 1 Germany 2 Denmark 3 China (PRC) 5 43 28 Russia 48 43 32 Sweden 66 Poland 166 Australia 200 180 160 140 120 100 80 60 40 20 0 Appendix 3. Institutions Sending Exchange Students to NUPACE: February 1996 ~ March 2011 Region Country Institution Agreement with Asia 480 Students; 52% of Total Cambodia China (PRC) Royal University of Phnom Penh Beijing 2nd Foreign Language Institute Beijing University of Technology Central South University of Technology China University of Political Science and Law East China Normal University East China University of Political Science and Law Fudan University Harbin Institute of Technology Huazhong University of Science & Technology Jilin University Nanjing University Nanjing University of Aeronautics and Astronautics Northeastern University Peking University Shanghai Jiaotong University Tongji University Tsinghua University University of Science and Technology of China Xi’an Jiatong University Zhejiang University *Law *Languages & Cultures *Engineering *Engineering *Law *Education *Law *University-wide *University-wide *University-wide *University-wide *University-wide *Engineering *University-wide *University-wide *University-wide *University-wide *University-wide *University-wide *University-wide *University-wide -148- No. Admitted 1 9 20 7 8 8 7 12 1 8 16 14 1 7 8 5 5 10 2 3 15 短期留学部門 Region Country Institution Agreement with Hong Kong India Indonesia Chinese University of Hong Kong University of Poona Bandung Institute of Technology Diponegoro University Gadjah Mada University Padjadjaran University Surabaya University University of Indonesia Kazakh Humanitarian Law University Chungnam National University Ewha Women’s University Gyeongsang National University Hanyang University Korea Maritime University Korea University Kyung Hee University Mokpo National University Seoul National University Sungkyunkwan University University of Seoul Yonsei University National University of Mongolia University of the Philippines, Los Banos National Chengchi University National Taiwan University National Tsing Hua University Chulalongkorn University Kasetsart University Tashkent State Institute of Law University of World Economy & Diplomacy Hanoi University of Technology *University-wide University-wide *University-wide *Education *University-wide *Letters *University-wide *Engineering *Law *Economics *University-wide *University-wide *University-wide *Engineering *University-wide *University-wide *University-wide *University-wide *University-wide *Law *University-wide *University-wide *GSID *University-wide *University-wide *University-wide *University-wide *University-wide *University-wide *Law *Information Science 1 2 5 1 28 6 7 1 1 21 18 57 8 2 26 2 21 8 1 2 1 2 13 8 9 3 32 11 9 5 2 Johannes Kepler University of Linz Medical School of Vienna Institut Supérieur de Traducteurs et Interprètes, Brussels University of Copenhagen École Nationale des Ponts et Chausées (ENPC) École Normale Superiéure de Lyon (ENS Lyon) Université de Grenoble Université Lyon III – Jean Moulin Université Paris IV –Sorbonne Université Paris VII – Denis Diderot Université de Strasbourg Technische Universität Braunschweig Technische Universität Chemnitz Technische Universität München University of Freiburg Warsaw University of Technology University of Gdansk Moscow State Institute of Engineering Physics Moscow State University Russian Academy of Science, Siberian Division Lund University University of Bristol University of London – SOAS University of Manchester University of Sheffield University of Warwick *Law *Medicine *Languages and Cultures *University-wide *University-wide Science/*Information Science *University-wide/*Letters *University-wide *Letters *University-wide *University-wide *University-wide *University-wide *University-wide *University-wide *Engineering *Medicine *Engineering *Information Science *Agricultural Sciences *Law *University-wide *University-wide *Science *University-wide *University-wide 1 4 3 1 7 2 21 16 1 3 16 6 14 10 13 17 11 2 1 1 9 3 4 13 21 13 Toronto University York University Green Mountain College Harvard University Johns Hopkins University North Carolina State University New York University St. Olaf College Southern Illinois University at Carbondale University of California, Los Angeles University of Cincinnati University of Illinois (Urbana-Champaign) University of Kentucky University of Michigan University of Minnesota University of Pennsylvania *University-wide *University-wide *Law Medicine *Medicine *University-wide *University-wide *University-wide *University-wide Education *University-wide *University-wide *University-wide *Engineering *University-wide *Medicine 3 1 5 3 1 66 17 19 5 1 20 15 9 20 5 5 Kazakhstan Korea (ROK) Mongolia Philippines Taiwan Thailand Uzbekistan Vietnam Europe 213 Students; 23% of Total Austria Belgium Denmark France Germany Poland Russia Sweden United Kingdom N. America 195 Students; 21% of Total Canada USA No. Admitted Oceania 32 Students; 4% of Total Australia Australian National University Flinders University Macquarie University Monash University University of Adelaide University of South Australia University of Sydney *University-wide *University-wide *GSID *University-wide *University-wide *University-wide *University-wide 3 1 5 6 4 2 11 S. America 2 Students Brazil University of Brasilia University of São Paulo *University-wide *University-wide 1 1 5 Regions 26 Countries 103 Institutions (* denotes tuition waiver) -149- 922 Students 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 Appendix 4. NUPACE Academic Programme 2011~2012: An Overview Japanese Language Programme Standard Course (1~5 credits): Intensive Course (2~10 credits): Other Courses (1 credit): Elementary Japanese I ~ Advanced Japanese (7 levels) Elementary Japanese I ~ Intermediate Japanese II (6 levels) Kanji 1000/2000 Business Japanese I/II/III Introductory Courses Taught in Japanese 2 credits each Global Society I, II <J> (A/S) Introduction to Japanese Language and Culture I, II <J> (A/S) Introduction to Japanese Linguistics I, II <J> (A/S) Introduction to Japanese Society and Culture I, II <J> (A/S) Introduction to Linguistics I, II <J> (A/S) Japan Area & Intercultural Studies 2 credits each Contemporary Japanese Society (S) Introduction to Japanese Politics (S) Japanese Society and Contemporary Issues (A) Science and Technology in Japan (A) Courses in the Student’s Major Generally, 2 credits each EcoTopia Science Institute Education Ctr. for Int’l Students Motor Control and Information Processing in the Biological System <G> (A) Immigration in Japan: A Socio-legal Perspective (S) Sociology of Education: Equity, Citizenship, and Inclusion (A) Teaching Practice in the Japanese Community <GIS> (A/S) Agricultural Sciences Introduction to Bioagricultural Sciences (A) Economics Development Economics (S) Financial Accounting A (S) Income Theory and Applications (A) Law and Economics Workshop (S~A) Price Theory and Applications (S) Education Education in Japan (S) Intercultural Education: Disney as Cultural Teacher (S) Engineering Academic, Scientific, and Technical English (A) Civil Engineering and Policies for Developing Countries I (A) Introduction to Applied Physics, Materials and Energy Engineering (S) Introduction to Chemical and Biological Industries (S) Introduction to Civil Engineering and Architecture (A) Introduction to Production Engineering (S) Overview of Adv. Elec., Electronic, and Information Engineering (A) Environmental Studies Biological Resource Management Policies (A) Biological Resource Management Projects (A) Climate Change Policies (A) English Communication in Environmental Issues (S) Environmental Industry Systems (A) Environmental Systems Analysis and Planning (S) Field Seminar on Environmental Studies (S) Introduction to Biodiversity Conservation Projects (S) Low Carbon Cities Studies (S) Planning and Design Studio for Historical Environment <G> (A) Politics and Diplomacy in the International Environment <G> (A) Practice in Biological Resource Management (A) Seminar on Precipitation Climatology A (A) Studio Workshop of Architecture Design <G> (A) Sustainability and Environmental Studies (A) Theory of Environmental Resources Management (S) Water and Waste Engineering (A) Water and Waste Management Policies (S) International Development Comparative Asian Legal Systems (A) Human Security and Law (A) International Co-operation Law (S) Introduction to International Development (S) Japan’s Development Experience (A) Law and Development Studies (S) Participatory Rural Industry Promotion (A) Languages & Cultures Introduction to Sociolinguistics a/b (A/S) Introductory Studies in International Culture b: Map Appreciation (A) Seminar in the Geography of Religion: Raja Yoga (S) Law Politics and Law in Japan (A) Selected Graduate School of Law courses (A/S) Letters Iconicity in Language and Literature (A/S) Mathematics Perspectives in Mathematical Sciences I, II (A/S) Medicine Clinical Practice (Clerkships) (A/S) Basic Research Laboratory Experience (A/S) Public Health Research Laboratory Experience (A/S) Science Advanced Quantum Chemistry (A) Special Lecture on Advanced Chemistry 9 (S~A <Intensive Lectures>) Others Guided Independent Study (GIS) Regular courses available to all degree-seeking students <J> <J> = Taught in Japanese <G> = Graduate Students Only (A) = Autumn Semester (S) = Spring Semester -150- 短期留学部門 東日本大震災にともなう交換留学生への対応 短期留学部門 北 山 夕 華 には渡日前情報を送信し,在留資格認定証明書と入学 1.はじめに 許可証の送付を完了していた。3月8日には寮の部屋 2011年3月11日午後2時46分,東北地方太平洋沖地 割りと来日時の緊急連絡先をEメールで送り,ボラン 震が発生した。この地震とそれに伴う津波は東北地方 ティア学生との打ち合わせも重ね,4月の受け入れに に甚大という言葉では足りないほどの被害をもたら 向けて着々と準備を進めている最中であった。また, し,さらに福島第一原子力発電所では深刻な事故を引 9月受入れの応募書類も届き始めており,提出書類に き起こした。名古屋では地震による直接の影響はほと 不備のある応募者への連絡や質問への対応などに追わ んどなかったが,短期留学の受け入れ業務においては れている矢先であった。 数々のイレギュラーな対応を迫られることとなった。 在籍学生については,2月上旬に授業が終わり,秋 地震多発地帯に位置する日本では,東海地震はもとよ 学期で留学を終了した学生はほぼ帰国していた。在籍 り,他地域で再び大地震が起こる可能性は十分に考え していたのは春学期も留学を継続する48名と,3月中 られ,地震以外の自然災害や何らかの大事故も起こら 旬に帰国を控えた数名であった。大学は既に春休みに ないとは限らない。以下では地震発生から約一か月間 入っていたため,交換留学生の半数は国内外への旅行 の業務をまとめているが,今回の震災に伴う一連の対 や一時帰国のために名古屋を離れている者も多くいた。 応を記録しておくことで,今後の備えに向けた一助と なればと思う次第である。短期留学受入れの業務につ いては三名の教員と三名の事務職員(非常勤を含む。 3.在学生への対応 一名は4月末に退職)で分担しているが,ここでは主 在学生への情報提供 に学生への対応を担当している筆者の業務を中心に記 地震当時,名古屋では大きな揺れは感じられず,大 述する。そのため,これを以て短期留学部門の業務を きな混乱はなかった。その時名古屋にいた多くの人々 俯瞰できる訳ではないが,非常時の学生対応の一記録 にとって,大震災が起こったという実感はなかったの として今後何らかの参考となれば幸いである。 ではないだろうか。しかし,メディアを通じて被害の 大きさが徐徐に明らかとなり,3月11日(金)深夜(12 日午前0時55分)に在籍学生宛に一斉メールで連絡を 2.当時の状況 行った。内容は,地震および津波の発生についての報 短期留学交換留学受入れプログラムである NUPACE 告と,余震や津波への注意喚起に加え,学生がテレビ は一年に4月と9月の二回の入学機会があり,応募締 やラジオから情報を得にくい可能性を考慮し,災害の 切はそれぞれ12月1日と3月15日である。今回地震の 情報を得られるウェブサイトへのリンクを加えた。翌 起こった3月は,4月入学者の受入れに向けた諸準備 12日(土)朝には野水教授から安否確認のメールが送 と9月入学者の応募願書の取りまとめや問い合わせへ られ,12日午後7時40分には専任職員の協力のもと全 の対応が重なるため,1年間で最も忙しい時期であっ 員の安全が確認された。表1は,震災に関連し,学生 た。 全員宛てに送信したメールの一覧である。 2011年4月受入れの学生に関しては,1月31日の交 日本語のできない学生からは,どうすれば震災につ 換留学実施委員会で受入れ候補者が承認され,2月に いての情報が得られるのかという問い合わせもあっ 入り各部局からの受入れ可の回答のあと応募者に選考 た。特に地震発生当初に更新が早かった情報源とし 結果の通知を行なった。プログラム参加を決めた学生 て,地震と津波に関する情報が日・英の二言語でほぼ -151- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 表1:在学生に向けたメール連絡 送信日 内容 3/11(金) 深夜(3/12未明)余震・津波についての注意喚起と情報提供 3/12(土) 1.津波警報についての注意喚起 2.野水教授から安否確認(在籍学生48名+帰国前の学生2名) 3/14(月) 余震・津波への注意喚起と情報提供 3/15(火) 東京を含む東日本への旅行自粛の要請,情報提供 3/16(木) 春学期のスケジュールと海外渡航の手続き,帰国を検討する学生への連絡,情報提供 3/18(金) 海外渡航の手続き,留学予定の変更について 3/29(火) 現在の所在地と春学期の継続意思の確認 ※これらに加え,3/17,3/22,4/3に米国領事館からの安全情報のメールが野水教授から学生に転送 されている 同時に更新される気象庁のウェブサイト1や,地震直 地震発生後,春学期も継続して留学する予定だった 後から NHK(二言語放送)と TBS(日本語のみ)が放 48名のうち14名が予定を変更して留学を中止し帰国し 2 送を配信した動画共有サービスサイトの Ustream を 3 た。一名は家庭の事情が理由であったが,その他は原 学生に紹介した 。国内の報道から得られる情報は膨 発事故とそれに伴う放射能汚染を危惧したものであ 大である一方,その時点ごとの個々の様子を伝えるい る。表2では14名の帰国時の状況と,主に退去手続き わば「点」の情報が大量に飛び交っており,また,原 を行なった者を表示している。 発事故に関しては危険性を強調しすぎないよう慎重な こうした中には,海外旅行中に留学を中止し日本に 報道となる傾向がみられた。当時の状況を鑑みると致 戻らないことを決め,退去の手続きや部屋の清掃,荷 し方ない所もあるが,留学生は日本の地震や原発の状 物の郵送などの作業を大学関係者に求める者も現れ 況についてより客観的視点から「面」的に理解できる た。だが,業務が多忙を極め,また何人帰国するかも分 情報を必要としており,結果的にこうした情報が日々 からない状況で,そうした要求に答えるのは現実的で 更新されていた BBC や New York Times といった欧 はない上に公平な対応とも言えなかった。そのため, 米メディアを紹介することが多くなった。 原則的には学生が自分で退去の手続きを行なうよう指 導し,学生本人が名古屋に戻らない場合は友人等に代 在学生への対応 理を頼むよう促した。その結果,帰国した14人のうち 留学期間中に海外に渡航する学生は原則として届け 自分で退去を終えた者が7名,友人が代理で行ったの 出が必要であるが,学生からは「予定よりも海外での が3名,業者手配となったのが2名であった。なお, 滞在を延長したい」 「出国するが,帰国日を決めていな 国民健康保険と国民年金,大学生協の保険は代理人が い」「届け出をせずに既に出国した」等の相談が相次い 解約することができるが,第三者が返金を受け取る場 だ。中には通常は認められないケースも含まれていた 合には正式な委任状を作成する必要があった。これら が,当時の事情を勘案し,こうした件に関してはでき は学生の在留期間や保険の加入期間が過ぎれば消滅す るだけ柔軟な対応を行なった。留学継続については多 るものであるが,それまで国民健康保険と国民年金は くの協定大学が学生に判断を委ねたが,米国やフラン 保険料の納付書の送付が継続されてしまうため,一部 スの大学の中には留学プログラムの中止を決めたり, の学生については事務補佐員と協力し返金以外の解約 留学の可否を検討するために推薦状等の提出を求めた 手続きを代理で行った。なお,学生個人の契約の中に りする大学もあった。特にフランスの大学では留学継 は携帯電話のように第三者による解約が難しいものも 続をめぐり派遣元大学の決定に学生が納得せず,石川 ある。外国人登録に関しては,再入国許可を取って出 准教授も間に入りやりとりが重ねられた。 国した場合は再入国許可の期限が過ぎるまで抹消され 1 気象庁ウェブサイト http://www.jma.go.jp/jma/index.html 2 http://www.ustream.tv/ 3 なお,NHK の Ustream での番組配信は3月24日,TBS は同18日に終了した。 -152- 短期留学部門 表2: 留学中断者と退去の状況 国籍 退去手続き 帰国時の状況 1 アメリカ 業者 東南アジア旅行のまま日本に戻らず。 2 アメリカ 業者 東南アジア旅行のまま日本に戻らず。 3 アメリカ 友人 一時帰国のまま戻らず。 4 フランス 本人 タイ旅行の後,退去手続きのため再来日。 5 フランス 友人 一時帰国のまま戻らず。 6 フランス 友人 一時帰国のまま戻らず。派遣元大学によるプログラム中止。 7 台湾 本人 一時帰国の後,退去手続きのため再来日。 一時帰国の後,退去手続きのため再来日。 8 台湾 本人 9 台湾 本人 一時帰国の後,退去手続きのため再来日。震災の他に足の怪我の懸念もあり。 10 スウェーデン 友人 東南アジア旅行のまま日本に戻らず。 11 スウェーデン 12 中国 本人 13 中国 本人 名古屋滞在中。新学期開始後に家庭の事情により留学を中断。 14 ドイツ 本人 一時帰国の後,退去手続きのため再来日。 友人+寮職員 東南アジア旅行のまま日本に戻らず。荷物の郵送は管理人が対応。 名古屋滞在中。 ないとのことであった。 カ人学生二名に関しては,引っ越し業者が清掃作業を 寮からの退去においては,光熱費等の清算や部屋の 拒否したために寮の管理人が清掃業者の手配や電化製 チェックのため通常は最低でも退去の一週間前までに 品の処分を行なわなくてはならなかった。しかし,他 は退寮日を通知する必要があるが,今回は実際の退去 の学生については,おおむね大きなトラブルなく退去 の直前に日程が決まるケースも多く発生した。その都 を終えることができた。 度国際学生交流課や学生支援課,寮の管理人に対処し てもらい,電気・ガス会社との日程調整が間に合わな い場合は光熱費の清算のみ友人が代理で行う等の対応 4.新規受入れ学生への対応 策を取ることで,退去の手続きを済ませることができ 上述のように,4月受入れ学生に対しては寮の部屋 た。一方,寮費は日割で支払うことができず,また寮 も決まり着々と受入れ準備を進めていたところであっ によって寮費支払いへの対応が異なった。4月上旬に たが,震災の影響のため非常にイレギュラーな対応を 退去した学生の中で,国際嚶鳴館の学生に対しては寮 せざるを得なくなった。当初47名の学生が新規に来日 費が請求されず,インターナショナル・レジデンス東 する予定であったが,留学辞退が17名,秋学期への延 山の学生には一カ月分の家賃全額が発生するという事 期が8名(当初11名が延期を希望していたが,4月以 例が生じ,一部の学生の不満を招くこととなった。ま 降になり3名が辞退を表明)あり,4月に実際に来日 た,両親が民間業者に引っ越し作業を依頼したアメリ したのは22名となった。 表3:新規受入れ学生へのメール連絡 送信日 内容 3/11(金)~14(月) 問い合わせのあった学生に対して個別に対応 3/15(火) 春学期の予定と入学の延期について 3/18(金) 1.多く寄せられる質問への回答:入学予定者の学籍や寮の部屋の予約の状況,留 学の延期,寮の耐震性 2.名古屋大学からのメッセージへのリンク 3/22(火) 春学期の予定,延期・辞退の申し出の期限(3/25),在留資格の返却,放射能等に ついての情報提供 3/23(水) 到着日程の連絡と到着後のスケジュール,在留資格の返送について 3/30(水) (留学延期の学生のみ) ビザの措置について 4/1 (金) (入学予定の学生のみ) 緊急連絡先,来日時のボランティア学生について 4/12(火) (留学延期の学生のみ) 延期後の留学希望期間の確認 -153- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 原発事故が収束しない中で,学生からは多くの問い 合わせが寄せられた。関東の大学の多くが5月の連休 5.まとめ 明けまで春学期の開始を遅らせたこともあってか,入 今回の震災が起こったのは短期留学部門が一年間で 学時期の延期に関する問い合わせが多くみられた。他 最も忙しい時期だったこともあり,地震発生後の一週 大学では短期プログラムの留学開始を5月9日まで認 間は本当に目の回るような毎日であった。在学生に めるという方針が出されていたが,NUPACE は4月 とっては大きな不安を感じる一週間であったと思わ 4・5日の入寮や6日~8日のオリエンテーションな れ,現状報告と不安の解消を兼ねて全員に対して頻繁 どの予定は変更されなかった。学生の中には原発の状 に連絡を取るよう心がけた。地震直後は名大のウェブ 況の改善を見越し来日を4月末に延期したいとの問い サイトの更新がなく,その後も提供される情報が少な 合わせも数件あった。しかし,授業が予定通り開始さ かったこともあり,交換留学生への情報通知の手段と れるため遅れての来日は原則として認められず,こう して頼ることは難しかった。そのため,全員に連絡す した学生たちはいずれも留学を辞退することとなった。 る際には,連絡事項以外にも必要と思われる情報を収 また,本人が留学を希望していても,派遣元の大学 集し毎回のメールにリンク集を加えるようにしていた が日本での留学プログラムを中止あるいは中止を検討 が,情報の収集作業には思いのほか労力を費やした。 しているために,留学の可否が決まらないという事態 一方,原発事故をめぐる状況が流動的であったために も生じた。イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校で 受入れの方針が定まらず,4月受入れの細かな対応や は日本への留学プログラムが中止となったために学生 新学期のスケジュールについては,時期によって学生 の寮の予約も一旦全てキャンセルとなり,学生やその に提供する情報に若干の誤差が生じた。当時の状況を 保護者たちから留学を認めてほしいとの声が寄せられ 考えると最初から一貫した方針を打ち出すことは極め た。結局,渡日指定日の数日前に米国政府による渡航 て困難であり,学生の方からもこうした変更に関して 延期勧告地域から愛知が除外されたことから留学が可 は特に不満の声は出なかった。また,学生の母国や在 能となり,当初入学を予定していた3名全員が急きょ 籍大学によって留学プログラムの実施に対する判断が 来日することとなった。幸い寮に空きがあったため3 異なったため,イレギュラーな対応を個別にかつ丁寧 名とも寮の部屋が確保でき,夜間の便で到着した学生 に行う必要があった。これは容易なことではなかった には同じ寮に入居する留学生の協力を得て入寮するこ が,何とか一人一人の学生の状況に応じた対応ができ とができた。 たのではと考えている。 4月入学予定の学生には在留資格認定証明書が送付 こうした対応に追われる中,従来の願書のチェック 済みであったため既にビザを取得していた学生もいた 体制が機能せず,秋学期の応募書類の確認作業に遅れ が,取得後3カ月以内に入国しなければビザが無効と が生じた。本来は応募者や派遣元大学がきちんと書類 なることから,秋に留学を延期した学生については在 を揃えた上で提出するべきではあるが,現状として書 留資格を再申請する必要があった。しかし,名古屋に 類に不備のない応募者の方が少数派である以上,現実 限らず3月に訪日予定だった外国人の多くが来日を見 的に避けて通れない重要な作業である。本来は語学試 合わせる中,8月末までの入国であれば在留資格認定 験のスコアなどの重要な書類の提出締切は交換留学実 4 証明書を有効とする特例措置が取られた 。さらに, 施委員会前としていたが,今回は応募者への連絡が遅 この期限も延長される可能性があるとのことから,秋 れたことから委員会後まで提出を待ったため,語学能 学期に留学を延期した学生にはその旨と在留資格認定 力証明のない一部の応募者も9月受入れ候補者名簿に 証明書を保管するよう通知したが,結局延長はされな 含めることとなった。今回はこのような対応となった かった。そのため,学生に在留資格認定証明書を返送 が,多忙の際にも書類の確認作業が事務職員との協力 してもらった上で入国管理局に返納し,新しい在留資 のもとしかるべき形で行なわれることは,今後徹底す 格を申請することになった。 る必要があるだろう。なお,4月受入れの応募願書は 4 外務省「東日本大震災により在留資格認定証明書の有効期限切れ後に入国を希望される方へ」http://www.mofa.go.jp/mofaj/ saigai/pdfs/hounitikibou.pdf -154- 短期留学部門 それまでの不備の傾向を踏まえて更新を終えたところ 放出も続いている。 だったが,今回期せずしてその改善の効果を実感する 他方,この春入学を予定していた交換留学生のうち こととなった。これまでは大学院生の学部の成績表の 半数以上が留学を中止・延期する中で,来日した22名 未提出,日本在住の家族の情報の誤記入,来日歴の詳 の多くは高校時代の留学など過去に日本滞在の経験が 細情報の未記載など特定の不備が非常に多かったた ある者や,名大からの交換留学生と現地で知り合いに め,願書の更新の際には該当箇所への注意書きや下線 なっていた学生たちであった。また,NUPACE の修了 等を追加する対策を講じた。それが功を奏して2011年 生たちからは多くの見舞いのメッセージが寄せられ, 秋学期への応募者についてはこれらの不備・誤記入が 母国でチャリティ活動を立ち上げた者も多くいたこと 大きく減り,増大した業務に忙殺される中では大きな を知った。この震災は,留学が単なる異文化経験では 救いとなった。 なく,人と人とのつながりを作るものであり,またそ 今回の震災では名古屋への実質的な被害はなかった のつながりによって成り立つものだと改めて感じさせ とはいえ,特殊な状況での業務となった。地震以降の られた出来事でもあった。 一ヶ月間で送信したメールは500通を超え,受信した 今後30年以内に東海地震が起こる確率は87% と見積 分は正確には数え切れていないが,1800~2000通ほど もられており,日本のどこかで大地震が起こることは である。9月受入れの学生については,5月上旬に開 これからも十分想定しなければならない。受入れを決 かれた交換留学実施委員会で受入れ案が承認され,先 めた以上,大学側にできることは,その時最も正確で 日学生に合格通知を送付した。学生の来日は4カ月近 有用だと思われる情報を提供し,できる限り留学生を く先だが,やはり原発についての問い合わせが何件か サポートすることである。留学を決断した学生が名古 来ている。名古屋は福島第一原発から約440キロの距 屋で有意義な時間を過ごせるよう,そしてその中でさ 離があるとは言え,この原稿を執筆している5月末時 らに新しいつながりが生まれるために,今後も微力な 点で事故収束の目途は立たず,環境への放射性物質の がらサポート体制を充実させていきたいと考えている。 -155- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 短期留学生アンケート調査から,短期留学プログラムの拡充を考える 交換留学担当専任職員 亀 井 千 里 タは,プログラムを予定通り修了した学生25名,その他 1.はじめに 東北・関東大震災の影響でプログラム半ばにして止む 名古屋大学・短期交換留学受入れプログラム(Nagoya を得ず断念し帰国した学生14名を含むことになるが, University Program for Academic Exchange - 以下, 後者の留学生は混乱の中帰国したため,残念なことに NUPACE)は,1996年より受入れが開始され,本年 アンケート調査の回収に至っていない場合が多い。 で15周年を迎える。年間春・秋の2回,短期留学生を 本アンケート調査は,留学生の活発で率直な意見を 受け入れているが,初年度の1996年度の年間受入れ数 きくために匿名にしている。それ故,学部や,学生身 23名から,昨年度は89名までに拡大している。本年度 分(学部生/大学院生)などの条件毎に,傾向を把握 は特に3月11日の東北・関東大震災の影響をかなり受 したり特定化できないのが少々残念ではある。留学生 け,2011年春の受入れ予定47名が22名に半減したもの の満足度を評価する項目の他,記述方式の質問からな の,2011年秋の受入れは,84名を予定しており,うち り,表Ⅰは,短期留学生のプログラム全体の満足度を 49名は自費参加者である。文部科学省の「留学交流支 表したものである。満足度は7段階であり,(1:極め 援制度(短期受入れ)」による奨学金割当数があまり増 て不満足~ 7: 極めて満足)として評価してもらった。 加しない中で,NUPACE への参加を希望する留学生 渡日前 NUPACE 情報の取得度だが,他の評価項目 が年毎に増加しているのは明らかである。 に比べ,受入れ時期によって大きく変動がある。前 筆者は2010年9月に採用され,留学生センター短期 年と比較すると2010年秋は1ポイント以上上昇した。 留学室で交換留学担当専任職員として半年間教務関 渡日前情報の提供は何年も前から行われているので, 係及び短期留学室の最初の相談窓口として事務業務 2010年秋になぜ評価が急速に向上したかについては憶 を担ってきた。また,本職員に採用される前の2006- 測の域を越えないが,2010年秋受入れ時よりチュー 2007年に,英国ブリストル大学修士課程に留学して, ター学生による空港・駅出迎え支援をやめたため,自 同大での修士プログラムを経験している。従って,専 力で空港・駅から名古屋大学に到着するための情報の 任職員と元留学経験者の視点から,短期留学生アン 充実を図った。このことが結果的に,NUPACE 学生 ケート調査を考察する。海外の留学生にとってなぜ に渡日前情報を丁寧に読ませることになった可能性が NUPACE は魅力的なプログラムなのか,短期留学生 ある。毎年2月上旬に,協定大学に NUPACE パンフ アンケート調査の結果を通して報告したい。 レットを郵送し,Web 情報も随時更新しており,協定 大学に必要情報を送っているつもりだが,留学生の問 合せ数と質問内容をみる限り,学生に情報が十分に伝 2.短期留学生からの評価 わっていないことを痛感する。この点をどのように今 1997年春学期以降 NUPACE では,各学期,帰国者 後改善すべきかが課題である。2008年秋受入れと2009 に対してプログラム全体のアンケート調査を行ってい 年秋受入れの評価が低くなってしまっていることは, る。外部評価報告書(1998-2002)年版,及び(2003- 留学生との通信を担当された教員が,この情報提供の 2006)年版で,その詳細を確認できる。本稿では,上記 時期に交代せざるを得なかったことが影響しているか 報告書以降の2007年秋から2011年春帰国者を対象にし もしれない。 た短期留学生へのアンケート結果を基に,過去のアン コンピューター利用環境の満足度は,平均より高い ケート調査報告と比較しながら短期留学生からの評価 数値ではあるが,プリンターについては多くの苦情が を分析したものである。補足として,2010年秋のデー オフィスにも寄せられ,アンケートの回答にも多かっ -156- 短期留学部門 表Ⅰ 短期留学生による短期留学プログラム全体の満足度評価(数値比較項目) (ただし、*:項目6及び7は、満足度評価とは異なる) 質問項目 07 秋 08 春 08 秋 09 春 09 秋 10 春 10 秋 回答者数 15 45 19 36 17 32 24 1 渡日前 NUPACE 情報の取得度 4.8 4.1 3.4 4.1 3.8 4.6 5.7 4.4 2 短期留学プログラム全体の満足度 5.2 5.8 5.8 6.1 5.9 5.8 5.8 5.8 3 日本語授業の満足度 5.1 5.5 5.3 6.3 5.9 5.2 5.1 5.5 4 共通プログラムの満足度 4.3 5.0 5.3 5.1 4.7 5.0 5.5 5.0 5 専門プログラムの満足度 4.2 4.4 4.1 4.5 4.7 4.8 5.3 4.6 6 英語による授業の意義 * 4.7 5.0 5.9 4.7 5.1 5.2 5.3 5.1 7 日本語共通・専門科目の希望 * 5.2 4.2 4.4 4.5 4.6 4.7 4.5 4.6 8 大学の教室や教育機材の満足度 5.4 5.7 5.9 6.5 5.8 6.1 6.0 5.9 9 中央図書館・学部図書室の満足度 4.5 5.5 5.9 6.1 6.1 5.7 5.8 5.7 10 コンピューター利用環境の満足度 4.1 5.2 5.5 5.3 6.1 5.1 5.0 5.2 11 指導教員のサポートへの満足度 3.9 4.2 5.0 5.4 4.8 4.9 6.0 4.9 4.0 4.4 5.1 6.2 4.9 6.3 5.5 5.2 12-1 宿舎の満足度(レジデンス) 12-2 宿舎の満足度(国際嚶鳴館) 平均 – 5.8 6.3 5.9 6.0 6.1 5.6 6.0 13 短期留学室の対応への満足度 6.5 6.6 6.8 6.7 6.7 6.5 6.6 6.6 14 事務部門への対応の満足度 6.7 6.5 6.7 6.4 6.4 6.4 6.2 6.5 た。改善に大いに取り組むべきではあるが,留学生セ 義が多いことが大きな要因と考えられる。しかし,こ ンターのコンピューター環境を,名古屋大学の情報基 の数年に,国際開発分野,法学分野に加えて,環境科 盤センター/情報メディアセンターとは別個のシステ 学分野で英語による大学院講義が開放されるようにな ムとして構築していることが背景にある。最近になっ り,一部の専門講義の内容充実が図られている。また, て,情報基盤センター/情報メディアセンターの一部 日本語能力のある学生は,日本語による授業の受講を のサテライトラボが,日英両用の Windows XP OS に 認められ,専門分野を補っている。さらに,開講講義で 変更されてきたが,留学生センターでは5-6年前より, 満足できない NUPACE 学生に対して,交換留学実施委 ファイルサーバーによって,多言語版 Widows XP そ 員会で認めている個別勉学指導(Guided Independent して Window Vista の環境を構築しており,利便性は Study-GIS)制度によって,指導教員や周辺の教員の支 はるかに高い。しかし,ファイルサーバーを通したプ 援で個別に科目を設定し,個人指導し,単位化してい リンター管理のため,容量の大きなファイルの印刷時 る。これらの総合的な取り組みの結果として,専門科 に,問題が生じやすくなっている。根本的な改善には, 目の評価が大きく向上した可能性がある。 多額の費用がかかるため,留学生センターで独自にシ 指導教員のサポートへの満足度の平均値が,他の項 ステムを持つことの限界にきている可能性がある。ま 目に比べると若干低いが,この1年は大きく向上して た,システムの問題とは別に,プリンターにトラブル きている。指導教員に対する評価は,時により極端に があった時の対応及び復旧の体制に,改善すべき問題 良い評価と悪い評価に分かれてしまい,時期によって があるようである。 も大きく変動する。しかし,2010年秋の本アンケート 教育プログラムに関しては,2010年秋専門プログラ の自由記述項目には以下の通りのコメントがあった。 ムの満足度が前年と比較するとかなり高くなったも 「学部の指導教員は進路について一番悩み時に相 の,過去4年間を平均し,他の項目と比較すると満足 談していただき,とても助けられ,いつでもあり 度はまだ低い結果である。2003-2006年外部評価報告 がたいです。GIS 論文の指導教員はほかの授業の 書でも指摘しているように,ある専門分野に特化した 先生にし,親切に指導していただき,とても勉強 プログラムではなく,様々な分野の学生を受け入れ, になり,ありがとうございました」 受講できるように,分野を広くカバーした概論的な講 -157- (2010年秋 NUPACE アンケート調査 原文のまま引用) 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 このように,指導教員が NUPACE をサポートして下 にも,短期留学後の追跡調査をしたいと考えている。 さり,大きな成果をあげていることが感じられる。 NUPACE オフィスは,本学に戻ってきて長期留学を するための奨学金の問い合わせをよく受けるが,日本 の物価高を考えると自費による長期留学は極めて難し 3.今後の課題と抱負 く,正規留学を断念している短期留学生が多い。それ 本 ア ン ケ ー ト 調 査 は, 約14年 間 実 施 し て お り, でも,何らかの形で日本に戻ってくる留学生が1割近 NUPACE 全体の発展に大きく寄与してきた。その一 くいる。また,短期留学中に将来の伴侶と出逢い,家族 方で,時代の変遷とともに,アンケートの項目や内容 を連れて NUPACE を再訪問する短期留学修了者(同 を見直すべき段階にきたと考えられる。例えば,アン 窓生)を見ると,短期留学が人生にいかに大きく関係 ケート項目の一つ「共通プログラム」について定義が しているかと実感する。世界中に散らばるこの同窓生 曖昧であり,NUPACE シラバスにも共通科目として のネットワークは大変貴重であり,名古屋大学にとっ 明確に記載されていないため,留学生がアンケート項 ても,NUPACE 同窓生にとっても相互に活用できる 目の意図を認識せずに回答している可能性もある。専 ようなネットワークシステムの構築を目指したい。 門科目についても若干そのきらいがあり,NUPACE また,筆者の経験として,大学院留学中,比較的個人 教育プログラムにおける専門と解釈できるが,派遣元 で作業のできるレポートやプレゼンテーション等はま 大学での専門なのか,あるいは名古屋大学所属上の専 だましだったが,討論となると英国人や他の留学生に 門なのか,少々分かりにくいようだ。NUPACE は,英 圧倒され発言する機会をなかなか掴めずにいた。従っ 語講義を受講する学生の受入れを中心に発足し発展し て,各部局の留学を希望する日本人学生のために,異 てきているが,短期留学生のうち日本語能力検定試験 文化・言語を持つ留学生と交流し,名古屋大学在学中 1級保持者は,名古屋大学正規留学生を対象に開講さ から異文化の環境や雰囲気を体験させることが,留学 れている一般の授業を履修することが可能であり,日 への敷居を低くし,留学への準備に活用することがで 本語による科目を履修する学生が増加している。さら きると思われる。 に最近は,個別勉学指導(GIS)を取る留学生も増加し 現在,派遣学生と交換留学生との間の交流の機会と ており,専門科目としてひとくくりにすることに少し して,ヘルプデスク,ランゲージシャワー,コーヒー 無理が出てきている。大学院生の参加も増加している アワー,チューター制度,留学フェア,留学の扉等, ので,学部生とは区分した方がよいように思われる。 様々な取り組みが学内で行われている。留学生の派遣 アンケートとは別に,筆者の今後の抱負として,短 元大学に留学する日本人学生もいるので,お互いに積 期留学プログラムの目的と意義の一つである「長期 極的に研鑽し合い,相互に発展することを期待した 留学の動機づけ」となるように,短期留学生が再び い。 正規の留学生として名古屋大学に戻ってくれるため -158- Ⅲ 資 料 ●留学生センター沿革…………………………………………………………………… 160 ●平成22年度 留学生センター教職員… ……………………………………………… 163 ●歴代留学生センター長………………………………………………………………… 164 ●平成22年度 留学生センター各種委員会委員… …………………………………… 165 ●平成22年度 授業担当および学位論文審査… ……………………………………… 168 ●留学生センター主催研究会記録……………………………………………………… 170 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 留 学 生 セ ン タ ー 沿 革 日 本 語・日 本 文 化 教 育 部 門 1977 語学センターが非常勤講師による外国人 留学生のための日本語教育を開始 1978 専任講師着任,「全学向け日本語講座」 授業開始 1979 語学センターと教養外国語系列が総合さ れ,総合言語センター発足 総合言語センターの1部門として「日本 語学科」設置 「日本語研修コース」開講 1981 「日本語・日本文化研修コース」開講 1984 教養部在籍留学生対象一般教育外国語科 目「日本語」開講 1991 総合言語センターが言語文化部に改組。 それに伴い一般教育外国語科目「日本語」 は言語文化科目「日本語」として開講さ れる 1993. 4 教育交流部門/留学生相談室 短期留学部門 学内共同教育研究施設として,「留学生センター」設置 (「日本語・日本文化教育部門」・「指導相談部門」の2部門体制) 留学生センターとして,これまで通り「全 学向け日本語講座」「日本語研修コース」 「日本語・日本文化研修コース」言語文 化科目「日本語」を開講 1994. 4 留学生センター研修生規定が定められ, (1994.2),研修生の受け入れ開始 5 「短期留学調査検討委員会」設置 1995. 3 「短期留学受入れ実施に関する検討 委員会」設置 10 「短期留学受入れ実施に関する検討 委員会」最終報告書の学内合意を 得て,「短期交流留学受入れ実施委 員会」発足。「名古屋大学短期留学 受入れプログラム(NUPACE)」の 基本構成を構築 12 短期留学担当助手採用(石川) 1996. 2 4 8 10 11 短期留学生受入れ開始 短期留学生対象日本語授業開始 独立した「留学生相談室」確保 「短期留学部門」発足(留学生セン ター3部門体制となる) 短期留学担当教授着任(野水) 「短期留学受入れプログラム (NUPACE)」本格稼動。短期留学 担当助教授採用(太田) 新スタッフ3名揃う 「指導相談部門」から「教育交流 部門」へ名称変更 -160- 日本語・日本文化教育部門 1997. 5 日本語教育メディア・ システム開発部門 10 留学インフォメーション 室を留学生センター分室 に開設 「留学生パートナーシップ プログラム」開始 1998. 1 12 1999. 4 インターネットによる WebCMJ のオンライン開始 4 2 3 4 6 7 11 2005. 3 4 5 6 9 実務コーディネート担当 助教授転出(太田) 担当助手採用(白戸) 留学生センター新棟完成 「留学インフォメーション室」 を「海外留学室」に改名 12 2002. 4 8 3 4 5 1 「短期交流留学生受入れ実 施委員会」から「短期交換 留学生実施委員会」へ変更 「地球家族プログラム」開始 二人目の担当助教授着任 (大野) 6 2001. 3 4 2003. 2004. 短期留学部門 「日本語教育メディア・シ ステム開発部門」発足(留 学生センター4部門体制 となる) 担当助教授着任(ハリソン) 8 2000. 3 教育交流部門/ 名古屋大学留学生相談室 留学生相談主事の所属を 留学生センターに変更 教授1名退任(藤原) 講師1名採用(李) 担当助手配置換え(許斐) 担当助手採用(筆内) 助教授1名転任(ハリソン) 「名古屋大学留学生相談室」 新設,留学生相談主事が室 長を兼任(松浦) 助教授1名退任(神田) WebCMJ 多言語版開発 オンライン読解・作文コー ス開始 日本語プログラムの再編成 1)全 学 日 本 語 プ ロ グ ラ ム( 集 中 コ ー ス, 標 準 コ ー ス, 漢 字 コ ー ス, 入 門 講 義, オ ン ライン日本語コース) 2)特別日本語プログラム (初級日本語特別プロ グ ラ ム, 上 級 日 本 語 特 別 プ ロ グ ラ ム, 学 部留学生向け日本語 授 業, 日 韓 理 工 系 学 部留学生プログラム) 担当助手退任(白戸) 担当助手採用(許斐) 教授1名退任(三宅) 教授1名昇任(松浦) 助教授1名採用(堀江) 助教授1名採用(石崎) 助教授1名転任(大野) 教 授 1 名 日 本 語・ 日 本 文 化教育部門から配置換え (村上) オンライン漢字コース開 始 留学生センターホームページ改訂 講師1名採用(佐藤) 「名古屋大学留学生相談室」 講師1名着任(髙木) -161- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 日本語・日本文化教育部門 2006. 3 教授1名転任(尾崎) 4 助教授1名採用(衣川) 5 10 教授1名昇任(籾山) 4 2008. 6 7 9 3 4 10 11 12 2010. 2 短期留学部門 NUPACE 設立10周年記念 シ ン ポ ジ ウ ム・ 同 窓 会 開 催 現代日本語コース中級聴解 Web 課金開始 准 教 授 1 名 配 置 換 え( 岩 城) 准教授1名昇任(李) 助教1名退任(筆内) 助教1名着任(山田) JEMS オンライン日本語教 育ポータルサイト開発 2009. 2 3 現代日本語コース中級聴解 CD-ROM 開発 教育交流部門/ 名古屋大学留学生相談室 「名古屋大学留学生相談室」 ホームページ公開 現代日本語コース中級聴解 Web 開発 2007. 2 日本語教育メディア・ システム開発部門 助教1名転任(山田) 准教授1名転任(堀江) 准教授1名着任(岩城) 助教1名配置換え(北山: 国際交流協推進本部に移 動) 特任講師1名着任(北山: 国際交流協推進本部) 准教授1名昇任(石川) 特任准教授1名着任(初鹿 野:国際交流協推進本部) 特 任 准 教 授 1 名 着 任( 徳 弘:国際交流協推進本部) 留学生センター在籍者数 短期交換留学生数 日本語・日本文化研修生(※) 日本語研修生 前期 33 平成10年度 18 後期 30 前期 22 平成11年度 20 後期 37 前期 36 平成12年度 16 後期 42 前期 26 平成13年度 20 後期 50 前期 26(8) 平成14年度 17 後期 54(23) 前期 35(3) 平成15年度 20 後期 41(22) 前期 34(11) 平成16年度 21 後期 42(25) 前期 29 平成17年度 21 後期 20 前期 28 平成18年度 19 後期 20 前期 19 平成19年度 18 後期 18 前期 23 平成20年度 20 後期 16 前期 25 平成21年度 10 後期 20 前期 28 平成22年度 9 後期 14 ※日本語・日本文化研修生については,5月現在の在籍者数を示す ※( )内は他部局に所属し日本語研修を受講した人数(内数) -162- 研究生 計 3 100 (31) 97 (36) 2 72 1 68 年 度 平成7年度 〃 8 〃 〃 9 〃 〃 10 〃 〃 11 〃 〃 12 〃 〃 13 〃 〃 14 〃 〃 15 〃 〃 16 〃 〃 17 〃 〃 18 〃 〃 19 〃 〃 20 〃 〃 21 〃 55 1 60 1 56 1 52 〃 22 〃 人数 23 31 47 41 53 45 51 55 56 67 60 前期 53 後期 58 前期 68 後期 58 前期 67 後期 64 前期 65 後期 76 前期 28 後期 61 平成22年度 留学生センター教職員 センター長 短期留学部門 教 教 授 石 田 幸 男 授 野 水 勉 授 石 川 クラウディア 日本語・日本文化教育部門 特 任 講 師 北 山 夕 華 教 授 鹿 島 央 教 授 籾 山 洋 介 准 教 (国際交流協力推進本部 G30) 牧 原 弘 昌 准 教 授 浮 葉 正 親 交換留学専任職員 (契約職員) 准 教 授 衣 川 隆 生 2010年8月退任) 准 教 授 李 澤 熊 交換留学専任職員 亀井 千里 師 佐 藤 弘 毅 特任准教授 初鹿野 阿 れ 2010年9月着任) 事務補佐員 橋 田 る み 講 (国際交流協力推進本部 G30) 特任准教授 徳 弘 康 代 (国際交流協力推進本部 G30) 事務補佐員 (国際交流協力推進本部 G30, (国際交流協力推進本部 G30, (2011年4月退任) 澤田 美奈子 (2011年3月着任) 日本語メディアシステム開発部門 教 准 教 授 村 上 京 子 名古屋大学留学生相談室 授 石 崎 俊 子 特任准教授 髙 木 ひとみ 特任准教授 坂 野 尚 美 教育交流部門 教 授 松 浦 まち子 事務補佐員 (留学生相談主事/ 名古屋大留学生相談室長) 准 教 授 田 中 京 子 准 教 授 岩 城 奈 巳 海外留学派遣 プログラムマネージャー 熊 坂 佳世子 (国際交流協力推進本部 G30) 事務補佐員 柴 垣 史 事務補佐員 小 倉 みどり -163- (国際交流協力推進本部 G30) 白 石 慶 子 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 歴代留学生センター長 初 代 馬 越 徹 1993年4月~1995年3月 第二代 石 田 眞 1995年4月~1999年3月 第三代 塚 越 規 弘 1999年4月~2001年3月 第四代 末 松 良 一 2001年4月~2005年3月 第五代 江 崎 光 男 2005年4月~2007年3月 第六代 石 田 幸 男 2007年4月~2011年3月 -164- 平成22年度 留学生センター各種委員会委員 全学委員会委員 (平成22年4月1日現在) 委 員 会 名 委 員 任期 期 間 セ ン タ ー 協 議 会 セ ン タ ー 長 職指定 研 究・ 国 際 交 流 委 員 会 (基幹第7) セ ン タ ー 長 職指定 国際交流推進本部会議委員 セ ン タ ー 長 国 際 交 流 委 員 会 セ ン タ ー 長 衣 川 隆 生 松 浦 まち子 岩 城 奈 巳 職指定 2年 (留学生センター) 2年 (留学生相談室) (オブザーバ) 田 2年 ハ ラ ス メ ン ト 防 止 対 策 委 員 会 中 京 子 職指定 平成22年4月1日~平成24年3月31日 全学計画・評価担当者会議 鹿 島 央 松 浦 まち子 (留学生センター) (留学生相談室) 研 究 助 成 委 員 会 石 崎 俊 子 交換留学実施委員会 セ ン タ ー 長 松 浦 まち子 田 中 京 子 岩 城 奈 巳 野 水 勉 石川クラウディア 北 山 夕 華 衣 川 隆 生 職指定(委員長) (教育交流部門) 〃 〃 (短期留学部門) 〃 〃 (その他)平成19年4月~ 留学生教育交流実施委員会 松 浦 まち子 髙 木 ひとみ 田 中 京 子 岩 城 奈 巳 野 水 勉 石川クラウディア 北 山 夕 華 職指定(留学生相談室長)(委員長) 留学生相談室 (教育交流部門) 〃 (短期留学部門) 〃 〃 国際関係施設委員会 松 浦 まち子 2年 平成22年4月1日~平成24年3月31日 全学教育企画委員会 村 上 京 子 2年 平成22年4月1日~平成24年3月31日 教 養 教 育 院 統 括 部 言 語 文 化 科 目 部 会 浮 葉 正 親 1年 平成22年4月1日~平成23年3月31日 附属図書館商議委員会 (オブザーバー) 浮 葉 正 親 2年 平成22年4月1日~平成24年3月31日 総合保健体育科学センター 運 営 委 員 会 松 浦 まち子 2年 平成21年4月1日~平成23年3月31日 男 女 共 同 参 画 推 進 専 門 委 員 会 田 中 京 子 2年 平成22年4月1日~平成24年3月31日 情 報 セ キ ュ リ テ ィ 組 織 連 絡 協 議 会 佐 藤 弘 毅 情報メディア教育センター 言語教育専門委員会 石 崎 俊 子 2年 平成21年4月1日~平成23年3月31日 2年 -165- 平成22年4月1日~平成24年3月31日 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 委 員 会 名 委 員 任期 期 間 名古屋大学スペース・コ ラ ボ レ ー シ ョ ン・ シ ス テ ム 事 業 委 員 会 全 学 教育棟子局運営委員会 佐 藤 弘 毅 1年 平成22年4月1日~平成23年3月31日 N I C E 会 石 崎 俊 子 平成17年4月1日~(任期なし) 国際学術コンソーシアム 推 進 室 会 議 石 崎 俊 子 岩 城 奈 巳 平成20年4月1日~平成22年3月31日 平成21年5月1日~平成23年4月30日 災 害 対 策 室 会 議 田 中 京 子 任期なし 全 学 同 窓 会 幹 事 会 岩 城 奈 巳 任期なし 一 般 廃 棄 物 管 理 者 野 水 勉 平成14年5月8日~ 奨 学 金 等 採 択 均 等 計 算 ル ー ル WG 野 水 勉 国際交流委員会(年度更新) 国際交流委員会危機管理 マ ニ ュ ア ル 等 作 成 WG 松 浦 まち子 岩 城 奈 巳 学童保育所検討委員会 石川クラウディア 2年 平成21年7月3日~平成23年3月31日 こ す も す 保 育 園 運 営 協 議 会 田 中 京 子 2年 平成22年4月1日~平成24年3月31日 キ ャ ン パ ス マ ス タ ー プ ラ ン WG 野 水 勉 ハラスメント防止対策担当 (相談員) 田 中 京 子 ハ ラ ス メ ン ト 相 談 センター運営委員会 田 中 京 子 連 絡 (主査) 平成18年4月1日~ 2年 -166- 平成22年4月1日~平成24年3月31日 平成22年4月1日~平成24年3月31日 センター内委員会委員 委員会名 総 務 委 員 会 財務・施設委員会 計画・評価委員会 広 報 委 員 会 教 務 委 員 会 (平成22年4月1日現在) 下位部会・WG メンバー 将来計画 WG センター長・野水・鹿島・松浦・村上・ 国際学生交流課長 執行部会(連絡会議) センター長・各部門代表・事務 特昇 WG 衣川・岩城 経理・整備 WG 松浦・李・佐藤・石川 PC 室管理運営 WG 佐藤・衣川・野水・石崎・田中・北山・鹿島・ 岩城・李 安全・防災部会 田中・鹿島・北山・石崎 自己評価 WG 鹿島・松浦・野水・浮葉・佐藤 教育活動評価 WG 村上・石崎・野水・岩城・衣川 研究評価 WG 籾山・田中・岩城・李 年次計画・報告 WG 鹿島・野水・田中・籾山 広報部会 李・北山・浮葉・岩城 ホームページ部会 石崎・野水・石川・李・岩城・高木・ 国際学生交流課・全学技術支援センター 紀要部会 石川・松浦・衣川 日本語・日本文化論集編集部会 籾山・浮葉 日本語・JEMS 部会 (FD も含む) 部門メンバー 教育交流部会 部門メンバー 短期部会 部門メンバー 地域連携部会 浮葉・衣川 -167- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 平成22年度 授業担当および学位論文審査 Ⅰ.授業担当(大学院・学部・NUPACE) 2.学部 教養教育院 1.大学院 浮葉正親: 国際言語文化研究科 基礎セミナー A 鹿島 央:日本語音声学 a(前期1コマ 2単位) 「韓流ドラマから『パッチギ』まで―日韓比較文 日本語音声学 b(後期1コマ 2単位) 化論のすすめ」(前期1コマ 2単位) 籾山洋介:現代日本語学概論 a 田中京子: (前期1コマ 2単位) 基礎セミナー A 現代日本語学概論 b 「英語で学ぶ日本の文化」 (前期1コマ 2単位) (後期1コマ 2単位) 野水 勉: 李 澤熊:日本語文法論 a(前期1コマ 2単位) 基礎セミナー B 日本語文法論 b(後期1コマ 2単位) 「留学へのとびら」(後期1コマ 2単位) 村上京子:日本語教育評価論 a 浮葉正親(代表)・松浦まち子・田中京子・ (前期1コマ 2単位) 坂野尚美: 日本語教育評価論 b 全学教養科目 (後期1コマ 2単位) 「留学生と日本-異文化を通しての日本理解」 衣川隆生:日本語教育方法論概説 a (後期1コマ 2単位) (前期1コマ 2単位) 佐藤弘毅: 日本語教育方法論概説 b 全学教養科目 (後期1コマ 2単位) 「情報リテラシー (文系) 」 (前期1コマ 2単位) 石崎俊子:コンピューター支援日本語教育方法論 a 北山夕華: (前期1コマ 2単位) 全学教養科目 コンピューター支援日本語教育方法論 b 「教育社会学」(後期1コマ 2単位) (後期1コマ 2単位) 村上京子: 佐藤弘毅:日本語教育工学 a(前期1コマ 2単位) 全学基礎科目 日本語教育工学 b(後期1コマ 2単位) 「言語文化Ⅰ日本語1」(前期2コマ 3単位) 田中京子:異文化コミュニケーション論 a 村上京子: (前期1コマ 2単位) 全学基礎科目 異文化コミュニケーション論 b 「言語文化Ⅰ日本語2」(後期2コマ 3単位) (後期1コマ 2単位) 浮葉正親: 浮葉正親:日韓比較文化論 a(前期1コマ 2単位) 全学基礎科目 日韓比較文化論 b(後期1コマ 2単位) 「言語文化Ⅱ日本語1」(前期1コマ 2単位) 浮葉正規: 文学研究科 全学基礎科目 籾山洋介:理論言語学(通年1コマ 4単位) 「言語文化Ⅱ日本語2」(後期1コマ 2単位) 理論言語学 b(後期1コマ 2単位) 岩城奈巳: 全学基礎科目 「特別英語セミナー1」(前期1コマ 2単位) -168- 岩城奈巳: ◯村上京子(主査) 全学基礎科目 論文提出者:東会娟(国際言語文化研究科) 「特別英語セミナー2」(前期1コマ 2単位) 提 出 論 文:日 本 語 の 縮 約 形 に 関 す る 研 究 石川クラウディア: ―日本語能力における会話能力育成の 開放科目 観点から― 「国際社会法政-日本におけるイミグレーション」 (前期1コマ 2単位) ◯衣川隆生(副査) 野水 勉: 論文提出者:全鍾美 全学理系基礎科目(前期1コマ 2単位) 提 出 論 文:初 対面場面における自己開示の研究 野水 勉: ―韓国人日本語学習者を対象として― 全学教養科目 「現代世界と学生生活」(前期1回 2時間) ◯村上京子(副査) 3.名古屋大学短期交換留学プログラム(NUPACE) 論文提出者:サウェットアイヤラム テーウィット 提 出 論 文:日本語の受身に関する習得研究―タイ 野水 勉(コーディネーター+3回担当): 語を母語とする学習者の場合― 現代日本社会(前期1コマ 2単位) 石川クラウディア: ○李澤熊(副査) 国際社会法政-日本におけるイミグレーション 論文提出者:野田大志(国際言語文化研究科) (前期1コマ 2単位) 提 出 論 文 :現代日本語における複合語の意味形成 石川クラウディア: ―構文理論によるアプローチ― 日本地域における英語教育実践 (前期1コマ 2単位) ○石崎俊子(副査) 石川クラウディア: 論文提出者:東会娟(国際言語文化研究科) 日本地域における英語教育実践 提 出 論 文 :日本語の縮約形に関する研究―日本語 (後期1コマ 2単位) 能力における会話能力育成の観点か 北山夕華: ら― 教育社会学(後期1コマ 2単位) Ⅱ.学位(博士)論文審査 ○籾山洋介(主査) 論文提出者:堀川智也(国際言語文化研究科) 提 出 論 文:題目語の諸相 ○籾山洋介(主査) 論文提出者:野田大志(国際言語文化研究科) 提 出 論 文:現代日本語における複合語の意味形成 ―構文理論によるアプローチ― ◯村上京子(主査) 論文提出者:全鍾美 提 出 論 文:初 対面場面における自己開示の研究 ―韓国人日本語学習者を対象として― -169- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 留学生センター主催研究会記録 (2010年 4月~2011年 3月) ◆日 時:2010年5月14日(金)13:00-17:00 ◆日 時:2011年2月18日(金)10:00~12:00 場 所:文系総合館7階オープンホール 場 所:留学生センター201教室 内 容:教員のためのワークショップ 内 容:ムスリムの学生生活の現状と課題につ 「英語で教える」(英語で授業をするた めのコツやノウハウを習得するワーク いて 参 加 ショップ) 参 加 者:オープンフォーラム講師,ムスリム学 生3名,教職員3名 者:本学教員6名 ◆日 時:2011年3月28日(月)10:00-12:30 ◆日 時:2010年6月23日(水)15:30-17:30 場 所:CALE フォーラム 場 所:留学生センター201号室 内 容:異文化コミュニケーション特別ワーク 内 容:第二回名古屋大学留学フェア(名古屋 大学の留学制度についての紹介) ショップ 参 加 者:平成23年度派遣留学決定学生,約30名 ◆日 時:2010年12月16日(木)13:30-16:30 ※留学生センターが企画・運営等に関わった研究会 場 所:文系総合館7階カンファレンスホール ◆日 時:2011年3月4日(金)10:00~17:00 内 容:名古屋大学国際化拠点整備事業教授法 場 所:工学部 IB 電子情報館大講義室 内 容:留学生教育学会・短期留学プログラム 研修 「 教 員 と し て 留 学 生 に ど う 接 するか ―授業や研究指導を通して」 参 加 主 討議テーマ: 者:学内教員約20名 「短期留学プログラムと海外留学」 催:名古屋大学留学生研究会,高等教育研 話題提供者:山口 茂(文部科学省)・ 究センター,留学生センター 参 加 分科会第5回会合 秋保 聡(日本学生支援機構) 者:全学の希望者,約60名 発 表 者:石 渡圭子(横浜国立大),横井久美子 (静岡大),真水康樹(新潟大),恒松 ◆日 時:2010年12月24日(金)10:00-12:00 尚美(広島大),熊井知美(大阪学院 場 所:CALE フォーラム 大),佐藤由利子(東工大),中山英治 内 容:ア メ リ カ 大 学 院 留 学 シ ン ポ ジ ウ ム 他2名(早稲田大) (アメリカ大学院留学についての紹介) 参 加 参 者:全学の希望者,約70名 加 者:国公私立大学 短期留学プログラム担当 教員・事務担当職員,留学関係諸団体 の関係者等,約50名 ◆日 時:2011年2月17日(木)17:30~20:00 場 所:豊田講堂シンポジオン会議室・ホアイエ 内 容:留学生センターオープンフォーラム 「イスラームと日本人」講演と料理紹介 参 加 者:大学生,一般参加者 約100名 -170- 名古屋大学留学生センター紀要 「研究論文」及び「実践・調査報告」投稿規定 1.本紀要は名古屋大学において留学生と関わる教員の研究及び教育成果の発表の場とする。 2.本紀要の投稿資格は次の通りとする。 a.名古屋大学留学生センター専任教員 b.名古屋大学において留学生に関わる教員 c.名古屋大学留学生センター非常勤講師 d.その他,紀要委員会が投稿資格を認めた者(毎年12月1日までに投稿資格を紀要委員会に問い合わせること) 3.本紀要の編集は留学生センター運営委員会で選出された紀要委員会が担当する。 4.投稿された論文及び報告については,紀要委員会で投稿規定,執筆要項に合っているかどうかを判断する。そ の上で,「研究論文」に関しては,紀要委員会あるいは紀要委員会の委託する専門家に査読を依頼する。紀要委 員会は査読の結果に基づき,原稿の採否を決定する。なお,紀要委員会での検討及び査読の結果に基づき,執筆 者に内容の修正を求めることがある。 5.執筆要項は別途定める。 「研究論文」及び「実践・調査報告」執筆要項 1.投稿原稿は原則として日本語または英語とする。 2.「研究論文」は日本語の場合20,000字以内,英語の場合は10,000語以内とする。「実践・調査報告」は日本語の 場合12,000字以内,英語の場合は6,000語以内とする。図表等もこの制限範囲内に含むものとする。 3.原稿には,「研究論文」か「実践・調査報告」かを明記の上,タイトル,執筆者名,所属部局,400字(英語の 場合は200語)程度の要旨,キーワード(5語以内),目次の順で作成した表紙を添付する。 4.注は脚注とし,本文中に通し番号を付ける。 5.引用・参考文献は,原則として本文あるいは注で言及したものに限り,文末に文献目録を設ける。文献目録は 下記の要項で作成する。 5-1 文献の配列は和書(著者名の五十音順)と洋書(著者名のアルファベット順)に分けて記載すること。 5-2 文献の記載順は,著者姓・著者名(イニシャル可),刊行年,論文名,書誌名,巻号,出版社とする。 5-3 和漢書の論文名は「 」で,書誌名には『 』で表示する。欧文論文名は“ ”で,欧文書誌名はイタ リック体とする。 5-4 訳書を用いた場合は原書名などを( )内に併記する。 6.原稿を印刷したもの(A4版,一行40字(80スペース),30行)を正本とする。又,電子ファイルでの提出を求める。 7.校正は第二校までとし,校正段階での内容の変更は認めない。 「研究論文」査読ガイドライン 『「研究論文」及び「実践・調査報告」投稿規定』の4にある査読は次のガイドラインによって行う。 1.紀要委員会は投稿規定に合致すると判断された原稿1件につき,2名の査読者に対して匿名処理された原稿お よび研究論文投稿規定,執筆要項並びに査読ガイドラインを送付する。 2.査読者は,当該原稿が刊行するに値する研究論文であるかを総合判定し,「採用」,「不採用」,「補正の上採用」 のいずれかの評価を与え,その評価を紀要委員会宛,指定された日までに報告する。 3.査読者は「補正の上採用」の評価を下す場合には,補正が必要な内容を査読報告書に明記する。また, 「不採用」 の評価を下す場合にも,その理由を明記する。 4.2名の査読者の判定に不一致がある場合,紀要委員会は,協議の上,「採用」,「不採用」,「補正の上採用」の いずれかの決定を行う。 5.紀要委員会は,採否の決定を投稿者に通知する。不採用の場合には,その理由を付すものとする。「補正の上 採用」について,補正原稿が提出された場合には,これを再度査読手続きに付すものとする。 -171- 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 Guidelines for Authors Provisions for Submission of “Research Papers” and “Survey Reports” to the Journal of the Education Center for International Students, Nagoya University 1. This journal aims to enable faculty members involved in international student education at Nagoya University to present the results of their research and educational achievements. 2. Eligibility to submit a research paper or survey report is as follows: a. Faculty member affiliated to the Education Center for International Students, Nagoya University b. Faculty member of Nagoya University involved in international student education or administration c. Part-time instructor at the Education Center for International Students, Nagoya University d. Other; a person recognised by the Editorial Committee as being qualified to submit a manuscript (enquiries with respect to eligibility should be made to the Editorial Committee by December 1 each year) 3. The Editorial Committee (hereinafter “Committee”), as selected by the Education Center for International Students Steering Committee, shall be responsible for the editing of this journal. 4. The Committee shall determine whether research papers and survey reports meet the provisions for submission and writing set forth. In addition, with regard to research papers, the Committee shall referee, or entrust specialists to referee manuscripts. Based on the referees’ results, the Committee shall decide on the acceptance or rejection of a manuscript. Moreover, on the basis of its examination and the referees’ results, the Committee may require authors to revise the content of manuscripts. 5. Provisions with respect to the requisite writing format shall be set forth separately. Writing Format Guidelines for “Research Papers” and “Survey Reports 1. In principle, all manuscripts must be submitted in either Japanese or English. 2. “Research papers” must not exceed 20,000 characters (Japanese) or 10,000 words (English). “Survey reports” must not exceed 12,000 characters (Japanese) or 6,000 words (English). Diagrams, charts, etc., are to be included within this character or word limit. 3. Authors must specify whether they are submitting a “ research paper” or “survey report”, and attach a cover sheet containing, in the following order, title, author’s name, affiliation, abstract (approximately 400 character in Japanese or 200 words in English), keywords (maximum of five), and table of contents. 4. Notes must take the form of footnotes, with sequential numbers being incorporated into the main text of the manuscript. 5. In principle, citations and references should be confined to items mentioned in the manuscript’s main text or notes, and be attached as a bibliography at the end of the paper. Bibliographies must conform to the following conventions: a. References should be divided into Japanese (authors’ names listed in kana order) and foreign (authors’ names listed in alphabetical order) works. b. References should be written in the order of author’s surname, author’s given name (initial(s) acceptable), date of publication, title of article, title of book/journal, volume number, publisher. c. Theses and articles written in Japanese or Chinese characters should be indicated by「 」, and books by『 』. Theses and articles written in European scripts should be indicated by “ ”, and books by italic font. d. Where translated works have been used, the name of the original should be shown alongside in parentheses ( ). -172- 6. Manuscripts should be printed on A4-sized paper, using a format of 40 characters per line (80 spaces), and 30 lines per page. In addition to the submission of a hard copy, manuscripts must be submitted in electronic form. 7. Proofs may be read a maximum of two times. Changing the content of manuscripts during the proofreading stage is not permitted. Referee’s Guidelines (“Research Papers”) The refereeing of research papers as stipulated in 4. of the “Provisions for Submission” above shall conform to the following guidelines. 1. A manuscript that is deemed by the Committee to meet the submission provisions set forth shall have its author’s name withheld and be sent to two referees, together with the provisions for submission, writing format guidelines, and referee’s guidelines. 2. The referee shall make an overall judgment as to whether the research paper is of publishable value and, giving the manuscript an evaluation of “accepted”, “rejected”, or “accepted upon the condition of revision”, shall notify the Committee of this evaluation by the designated date. 3. Where the referee has evaluated the research paper as “accepted upon the condition of revision”, the content of the manuscript that requires revision shall be specified in a report. Where the research paper has been rejected, the referee shall specify the reasons for this decision. 4. In the event of a disparity between the evaluation of both referees, the Committee shall, upon deliberation, decide whether the manuscript be “accepted”, “rejected”, or “accepted upon the condition of revision”. 5. The Committee shall notify the author of the referees’ results. In the event that the manuscript has been rejected, the reasons for this decision shall be attached. With respect to manuscripts “accepted upon the condition of revision”, where the author subsequently submits a revised manuscript, the committee shall proceed to have it refereed again. -173- 編集後記 留学生センター紀要は今回で第9号を刊行するに至った。編集後記を書くためにバックナ ンバーを棚から取り出し,机の上に積み上げてみた。A4版200頁弱の紀要が8冊にもなる とかなりの厚さである。中身をめくると既に退職された方々のお名前も眼に入り,この紀要 にはこれまでセンターの活動に関わってきた多くの方の思いが詰まっていることが実感でき た。 過去9号,表紙の色を変えるだけでデザインは全く変えていない。来年度の10号刊行に向 けて,この紀要を今後どのように発展させていくのか。そもそも,これだけの厚みのある冊 子を印刷し,郵送することの意味はあるのか。しばらく開催されていない「拡大広報委員会」 の食事会を復活させ,議論を深めませんか。以上,業務連絡でした。 (M.U.) 名古屋大学留学生センター紀要 第9号 2011年 8 月24日 印刷・発行 〒464-8601 名古屋市千種区不老町 編集者 名古屋大学留学生センター 電 話〈052〉789-2198 FAX 789-5100 印刷所 株式会社 荒 川 印 刷 名古屋市中区千代田2-16-38 電話〈052〉262-1006 ISSN 1348-6616 Education Center for International Students (ECIS) Nagoya University 名古屋大学留学生センター Journal of the ISSN 1348-6616 名古屋大学留学生センター 紀要 第 紀要 Volume 9 号 9 Contents Foreword • Language and International Exchange∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ MACHIDA Ken 第9号 1 Survey Reports • Analysis of the Labor Market for International Students in Aichi Prefecture, based on the “2010 Field Survey for International Students’ Job-hunting Activities within the Prefecture” by Aichi Prefectural Government∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ DOI Yasuhiro 5 目 次 • Report on “Working in Aichi”, a Seminar for International and Japanese 巻頭言 Students Who Plan to Work in Japan∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙WATANABE Rumi/TORAIWA Tomoka 13 ・国際交流と言語……………………………………………………………… 町田 健 1 • Supporting Indonesian Foreign Students’ Children: The Establishment 実践・調査報告 and Development of the “Bhinneka” Children Study Group∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ MURNI RAMLI 19 ・愛知県における留学生労働市場の分析… ―愛知県の平成22年度「県内留学生就職活動実態調査」を基に―……… 土井 康裕 5 Annual Report No. 18 (April 2010 ~ March 2011) I. Projects and Events ・名古屋大学学生のための就職セミナーの成果と課題… ―『地元企業経営者から学ぶ… 「愛知の仕事」セミナー』の試み―… …………………… 渡部 留美・虎岩 朋加 13 • ECIS Community Project: “Training Course for Japanese Language Educators in the Community”∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ KINUGAWA Takao 27 ・インドネシア留学生の次世代支援… ―「ビネカ子ども勉強会」の成立と発展―………………………… ムルニ ラムリ 19 • Nagoya University Community Project: “Improvement of the Disaster Management Learning Environment for International Residents: Seminars at Minato Disaster Management Center”∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ TANAKA Kyoko 29 年報 No.18(2010年4月~2011年3月) • ECIS Open Forum: “Islam and the Japanese”∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ TANAKA Kyoko 31 • Career Education for International Students: “Juku on Japanese Business Organization” Ⅰ事業報告 ・地域貢献事業「地域日本語教育に携わる人材養成講座」… …………… 衣川 隆生 27 ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙MATSUURA Machiko 33 ・名古屋大学地域貢献事業… 「外国籍住民のための発展型防災セミナーの環境整備:… 港防災センターでの研修実践」 … ………………………………………… 田中 京子 29 • “Global Family Program” Report 2010∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙OGURA Midori/MATSUURA Machiko 36 II. Section Reports ・留学生センターオープンフォーラム「イスラームと日本人」 … ……… 田中 京子 31 • Japanese Language & Cultural Education∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 41 ・留学生のキャリア教育としての「日本組織なじみ塾」 … ……………… 松浦まち子 33 • Japanese Language Education Media and Systems Lab (JEMS)∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 65 ・2010年度 地球家族プログラム 報告…………………… 小倉みどり・松浦まち子 36 • Advising and Resource Services (ADRES)∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 73 III. Data∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙159 Guidelines for Authors∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙172 2011 2011 • Nagoya University Program for Academic Exchange (NUPACE)∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙123 Ⅱ部門報告 ・日本語・日本文化教育部門………………………………………………………………… 41 ・日本語教育メディア・システム開発部門…………………………………………………… 65 ・教育交流部門・留学生相談室……………………………………………………………… 73 ・短期留学部門………………………………………………………………………………… 123 Ⅲ資料……………………………………………………………………………………………… 159 投稿規定…………………………………………………………………………………………… 171
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