ホタテ貝殻粉末塗材のかび抵抗性試験 - 建材試験センター

試験報告
ホタテ貝殻粉末塗材のかび抵抗性試験
(受付第10A4172号)
この欄で掲載する報告書は依頼者の了解を得たものです。
注:文中の表,図,写真で太字以外は紙面の都合上掲載を省略しています。
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写真1
試験結果 試験体番号:1
写真3
試験結果 試験体番号:3
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試験は,溶解固化させた寒天培地の上に,ろ紙に塗布し
た方形の試料を置き,かびの混合胞子液を散布する方法で
行った。この方法は繊維製品塗料などに広く用いられてお
り,短期間にかびに対する初期性能を判断する有効な手法
である。試験条件詳細を以下に示す。
①試験に用いたかび:アスペルギルスニゲル 及び ペニ
シリウムシトリナム
②寒天培地の成分:水:1000ml
写真2
試験結果 試験体番号:2
硝酸アンモニウム:3.0n
リン酸2水素カリウム:1.0n
硫酸マグネシウム7水和物:0.5n
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塩化カリウム0.25n
硫酸鉄(Ⅱ)7水和物:0.002n
かびは高湿度(80%以上),適温(20∼35℃)の環境下
寒天:25n
で若干の栄養があると発生する。特に梅雨時や冬場の閉め
切った室内で発生し,健康障害を引起こすことがある。か
③培養温度,湿度,期間:28±2℃,95%以上で14週間
びの栄養となるものは主に食品のかけら,人間の皮膚,植
物繊維などの微粉である。このため室内で使われる壁材,
試験結果は,表面に発生したかびの発生面積を目視で
天井材は,少なからずかび抵抗性が要求される。
観察し結果判定することとなっている。判定基準を以
一般的にかび抵抗性を測定するには促進試験が行われて
下に示す。
おり,JIS Z 2911で工業製品や建築材料について試験方法が
・結果の表示0:菌糸の発育が認められない。
標準化されている。さらに,かび抵抗性が必要とされる建
・結果の表示1:菌糸の発育部分の面積は全面積の
築材料ではこの規格を基に個々に試験方法が規定されてい
る。今回の試料は主に壁に塗ることを想定しているため,
JIS A 6909の仕上塗材に準じて試験を行った。
1/3を超えない。
・結果の表示1:菌糸の発育部分の面積は全面積の
1/3を超える。
試料はホタテ貝殻に消石灰等を混合したものであり,廃
今回行った試験では3個ともかびが全く発生しなかった。
棄物の有効利用を図った材料である。カルシウム分は本来
このことにより試料はかびに対する十分な性能(抵抗性)
かびの栄養となり得る成分であるが,全体的にpHがアルカ
があることが証明された。
リ寄りであるため,かびに対する性能は良好であることが
(文責:材料グループ 大島 明)
予想された。
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