レーザ製品の安全基準(JIS C 6802) の解釈について 概要

【質問】
レーザ製品の安全基準(JIS C 6802) の解釈について
概要
レーザ製品の安全基準(JIS C 6802)に関して、クラス3B(出力 7mW)の走査型ビーム系を
クラス1として使用するための条件を明確にしたい。
【使用条件】
・レンズで集光させたクラス3B(波長550~650nm 出力7mW)の投光ビームを 25mm の幅で走査し、
鏡面(ミラー)で反射させる。反射光は遮蔽板等により再び反射しないこととする。(添付図参照)
①この投光ビームを投光側の任意の点Aから10秒間観察する。
②この投光ビームを投光側の任意の点Aから10秒間以上観察する。
③この投光ビームを投受光方向と直交した任意の点Bから10秒間観察する。
④この投光ビームを投受光方向と直交した任意の点Bから10秒以上間観察する。
※点A,点B共に拡散面と角膜との最短距離は13cm以上とします。
この場合に「安全な観察条件」となる条件が①~④のうちに存在しますか?
「正反射」であるため「拡散反射」には該当しないような気がします。
また点A、点Bの位置の選択によって「安全な観察条件」となる場合があれば、ご教授願います。
(例:投光側から投光角に対して20°以上の角度から13cm離れて観察した場合)
【回答】
ご関心事項は、クラス1としてクラス3のレーザを走査条件で用いる製品を設計することと考えます。
クラス1の用語の定義は以下のようになっています。
3.17 クラス 1 レーザ製品(Class 1 laser product) 該当する波長及び放出持続時間[8.4 e)参照]に対
するクラス 1 の被ばく放出限界を超えるレーザ放射を,人体に被ばくさせることのないすべて
のレーザ製品[8.2 参照]。
クラス分けの条件は以下に記載されています。
8. クラス分け
8.1 序文 レーザビームは,波長,エネルギー,パルス特性に対して考え得る範囲が広いため,その
使用により生じる危険性は幅広く変化する。したがって,レーザを共通の安全限界が適用できる単一
のグループとしてみなすことは不可能である。
8.2 レーザクラスの解説
クラス 1:合理的に予見可能な運転条件下で安全であるレーザ。この条件には,ビーム内観察用の光
学器具の使用を含む。
クラス分けの時間基準は 8.4 e)によれば以下の記述から、100s、又は 30000s見ても安全な MPE を
超えないレベルに入る事になっています。
e)
時間基準 この規格では,次の時間基準をクラス分けに使用する。
1) 波長範囲が 400 nm~700 nm のクラス 2,クラス 2M 及びクラス 3R のレーザ放射に対しては,
0.25 秒
2) 1)及び 3)の場合を除く,400 nm を超える波長のレーザ放射に対しては,100 秒
3) 400 nm 以下の波長のレーザ放射,及びレーザ製品の設計上又は機能上から長時間にわたる
意図的な観察が見込まれる 400 nm を超える波長のレーザ放射に対しては,30 000 秒
備考 製品のクラス分けを決定する際には,時間基準内で取り得るすべての放出持続時間を
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考慮しなければならない。例えば,単一パルスの放射量は,そのパルスの時間幅に適
用可能な AEL と比較しなければならない。クラス分けの時間基準に対応する継続時間
内で単に放射量の平均をとるだけでは十分でない。
波長 550nm から 650nm のレーザ出力7mW のビームを 25mmの幅で走査する(この場合ミラー面で
の軌跡幅?)場合の被ばくを問題にして、これがクラス1に入る条件を知りたいことになると思われま
す。
レーザの安全規格で人体の被ばく状態は JIS3.36 に、定義され
3.36 人体の被ばく状態(human access)
a) 開口部から放出される危険なレーザ放射に人体の一部が被ばくする可能性,又はクラス 2,2M
又は 3R のレーザ放射を直径 12 mm 長さ 80 mm までのまっすぐな(人の指を模した)プローブ
が遮る可能性,又は
b) きょう体内のレーザ放射レベルが,a)で規定する限界を超える場合,その保護きょう体のすき
間を通して,意図せぬ原因で製品の内部に存在する単一の平らな表面によって直接反射される,
危険なレーザ放射に人体の一部が被ばくする可能性。
と規定されています。もし、貴社の装置構成が直径12mm、長さ 80mmの物体を差し込んで、レ
ーザビームに触れる場合は被ばくと見なされるので、注意を払ってビームに接近しないとしても、
プローブがビームに接近できる状態は可能性があるとして人体の被ばく状態となりますのでクラス
分けには、この状態での被ばくが含まれることになります。
このプローブの先にミラーが取り付けられ、そこから反射すれば、目に入ることも可能になるこ
とも想定されます。
したがって、
① この投光ビームを投光側の任意の点Aから10秒間観察する。
このこと自体は鏡面、又は光路の途中からビームが観察者に向かわなければ直に危険状態には
ならないでしょうが、装置構成として、プローブがビームに接近できる場合は、装置としてクラス1には
分類できなくなります。
②この投光ビームを投光側の任意の点Aから10秒間以上観察する。
ビームは空間を走行するのでどこからどこを観察するかで大幅にことなります、環境も空気中の塵
などがあって反射する場合など前方散乱、後方散乱などの散乱形態でことなります。したがって、観
察する場所で 10s以上観察する場合、装置が合理的に予知できる単一故障条件でも被ばくがクラス1
の AEL の条件を超えないで、また上記プローブが挿入されることがない状態であればクラス1と見な
せるでしょう。図示の状態だけからは、プローブの挿入も予想できるし、鏡面の向きや遮光板からの反
射光もどれほどの危険なビームが戻るか不明ですのでクラス1とは断言できないでしょう。
クラス1の装置で、レーザ光を観察することを意図した装置であれば、時間基準は 30000s観察して
も安全なレベルに規制することがクラス1の時間基準の条件となっています。
③この投光ビームを投受光方向と直交した任意の点Bから10秒間観察する。
④この投光ビームを投受光方向と直交した任意の点Bから10秒以上間観察する。
③、④の観察角度を変えても上記同様な扱いとなります。
クラス1の条件は肉眼で観察しても、光学器具(ルーペ、双眼鏡などでビームを集光しても)を利用し
て、ビームが目に入っても安全なレベルのレーザ装置であることが条件であるから、装置において観察
角度、プローブテストで危険となる装置構成であれば、クラス1の使用条件とはなりません。装置をクラ
ス1にしたい場合は、エンジニアリング的手段で、例えば保護囲いを用いてビームが人体に被ばく状態
とならないようにする必要があります。
※ 点A,点B共に拡散面と角膜との最短距離は13cm以上とします。
この条件は理解できません。図では鏡面と表示されているので拡散面を見出せません。
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装置のクラス分けとは別にクラス3B の観察条件で、JIS の12.5.2の備考の拡散面の安全な観
察条件は最短距離13cm、最大観察時間 10sと記載されていますが、拡散が完全拡散の条件を満た
す場合の距離13cmでの被ばく露光量が MPE の値になることをいっているだけで、拡散性能が悪い
場合は当てはまらないので、危険となる場合もあります。
ご質問の意図が理解できかねますが、クラス3B のビームが出ている空間で保護めがねも着用しな
いで、特定の場所から覗き込むのは、傷害事故の発生に繋がることが大きいので十分な安全管理や
要求されます。
JIS 規格以外では厚生労働省の通達により、クラス3B については、多くの安全管理項目が設定さ
れていて、レーザ機器管理者の管理下での使用となります。詳細は通達大 0325002 号(H17 /3/25)
を参照ください。
走査レーザに関しては、走査中に被ばくするパワーを評価して、クラス分けを行います、走査機構が
故障してビームが静止状態のままパワーを放出する場合は静止状態の方が危険となるでしょう。走査
中はクラス分けの限界開口を横切る場合の開口通過パワーを繰り返しパルス列として、クラス分けを各
クラス毎の AEL 値との比較で下記 8.4f)の条件を用いて評価します。この場合も、合理的に予知でき
る単一故障条件で最大パワーの条件を求めてクラス分けすることになります。提起された図面からはビ
ームにプローブテストでクラス3B のレベルに接近できるので、クラス1の条件を検討する場合は保護囲
いなどの具体的設計条件が定まらないと評価できません。開放状態でのビームでは少なくともクラス3
B となるでしょう。
f) 繰返しパルスレーザ及び変調レーザ 繰返しパルス放出に適用する AEL を決定するために,次
の方法を用いなければならない。400 nm から 106 nm の波長に対する AEL は,要求事項 1),2)及
び 3)の中で最も厳しいものを用いて適切に決定する。他の波長に対する AEL は,要求事項 1)及び
2)のうちより厳しいものを用いて決定する。要求事項 3)は,光化学的限界ではなく熱的限界にだけ
適用する。
1) パルス列内のどの単一パルスからの露光も,単一パルスに対する AEL を超えてはならない。
2) 放出持続時間 T のパルス列の平均パワーは,放出持続時間 T の単一パルスに対して,それぞ
れ表 1~4 に規定した AEL に対応するパワーを超えてはならない。
3) パルス列内のパルスの平均パルスエネルギーは,単一パルスの AEL に補正係数 C5 を乗じた値
を超えてはならない。振幅が変化する繰返しパルスが使用される場合には,それぞれの振幅を
もつパルスごと,及びパルス列全体に対しての評価を行う。
AELtrain = AELsingle×C5
ここに,
AELtrain は,パルス列中の任意の単一パルスに対する AEL
AELsingle は,単一パルスに対する AEL
C5 = N − 0.25
N は,次の表に基づく持続時間内のパルス列中に含まれるパルス数である。
波長
400 nm~1 400 nm
> 1 400 nm
N を決定する持続時間
T2(表 1~4 に対する備考の 2.参照)又は適用する時間基
準のうちどちらか短い方
10 秒
C5 は,個々のパルスの持続時間が 0.25 秒よりも短い場合だけに適用する。
以上
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