新春紙上写真展 川口 仁人さん シリーズ⑰「あの人この店」アンティーク

朝霧のなかに姿を現す毛馬内富士 “青垣山をめぐらせる天さかる鹿角の国”と詠んだ石川啄木も目にしたでしょうか
(馬の背=上沼放牧場より 撮影/奈良 学さん)
シリーズ 「街おこし」
㈳十和田八幡平観光物産協会 会長 千葉 潤一 さん
新春紙上写真展 川口 仁人 さん
シリーズ⑰「あの人この店」アンティーク もみじ 阿部 好子 さん
㈱シーティーイー鹿角事業部
シリーズ⑩﹁街おこし﹂
混迷の時代に
求められるもの
│視点と発想の転換点│
識していなくてはなりません。
地は県内・近隣客が約 %、首都圏の観
供の仕方や見せ方が通用しなくなってき
は普遍的であると思いますが、従前の提
ていると感じています。支払った対価と
光客の占める割合は約 %です。近隣と
確実に違う数字を見たとき﹁さすが鹿角
して、どれだけ、どのような満足を与え
しばらく混迷の時代が続くことを考える
域なのですが、昨年の秋にアウトレット
井上 私の住んでいる仙台市泉区は、県
立宮城県図書館があり大学がある文教地
直さなくてはならなくなっています。
られるか、観光地のあり方・考え方を見
は観光地だ﹂と実感しました。
反面、このような経済の厳しいご時勢
には、遠方のお客様の足が遠のきますの
と、北東北三県・近隣のお客様に攻勢を
モール︵ブランド品の旧モデルや余剰品
で 大 変 影 響 が 出 る こ と が 予 想 さ れ ま す。
かける必要性は強く感じます。
成してからは他県から買い物客が殺到し
を低価格で提供する小売店の集合︶が完
そういう意味では井上さんがおっしゃ
ったように、仙台はリピート︵再訪︶の
井上 前号の﹃グリーンメール鹿角﹄で
も紹介させていただきましたが、私が住
大変賑わっています。付随してスーパー
やドラックストアができ、あとはスポー
確率の高い魅力的な近隣圏といえます。
もつ老舗旅館の社長としての両方の視点
の文化祭で鹿角物産展を企画しましたら
んでいる仙台・高森地区の市民センター
ツセンターができれば更に便利で魅力的
からお話を伺いたいと思います。
井上 鹿角を売りこむ場合は単体ではな
く、例えば宮城県の志津川と一緒に〝山
嬉しいことに大変好評でした。次回へつ
な地域になることでしょう。
千葉さん 平成 年は鳥インフルエン
ザ、2度の震災と誘客の厳しい状況が続
と海〟をセットにするような企画はどう
ながる声も上がっています。仙台は鹿角
心地よい〝変わらないもの〟が一番大切
きましたが、いつまでもそれを言い訳に
だと私は近頃特に思っています。
ですか。そうやって毎月鹿角物産を出し
ていくのではないでしょうか。
千葉さん 得てして自分の会社の利益中
にとって、地理的にも営業の攻勢に出る
千葉さん 勾当台では定期的に物産展が
開かれていて、私たち観光物産協会も出
心に経営を考えてしまいますが、儲けだ
はできません。私たちの基本的な考え方
店していますが、仙台は日帰りもできる
くてはなりませんね。混迷の時期にどう
しかし、こうしたことと並立して地域
の魅力とは、やはり〝自然環境〟にある、
し1泊してもお得感がありますね。
井上 東北六県の窓口ですからね、こん
な時代だからこそ、もっと努力して、汗
い う 舵 取 り を し た ら い い か 悩 み ま す が、
最終的には何を乗り切るにも〝人〟だと
全体の再生の必要性に結びついていかな
けではなく地域をいかにつくるか、地域
を流さなくてはダメですよ。
いう意見が出ます。トップ自身が自分を
続ければ、やがてお客さんの心に根付い
の社会科見学で行き来していたことによ
千葉さん そうですね、商品を提供する
側の私たちが、改めて消費者の目線から
育てることを忘れていれば、いいスタッ
には魅力的だと思うのですが如何ですか。
昨年〝食の安全〟に対する信頼が崩れ
たこともありまして観光地では﹃安心・
る〝縁〟だったようです。このように多
自分たちの商品を吟味しなくてはならな
フも集まらない、居つかないでしょうか
としては、物産においても宿泊施設にお
安全﹄が大前提とされていますが、自分
方面からの縁やデータを生かして定期的
いのだと思います。観光地に対して美し
いても〝本物〟でなくてはならないとい
の商品にいかに磨きをかけ努力をするか、
に継続する努力は必要でしょう。
37
きん出ています。秋田県内のほかの観光
ら、自戒の念も込めて自分を高めていか
近くのスーパーで山形県長井市と提携
して、毎月物産販売をしているんですが、
らいの小さな市なのですが、きっかけは
さらに他の地域ではどのようなものを提
高森と長井市の中学校同士がリサイクル
供しているかというアンテナを常に立て
ていないと、自己満足の世界で完結した
ものを世の中に出してしまう危険性を認
いものや安らぎを求めるお客様のニーズ
うことを思っております。そしてどのよ
井上 今日は㈳十和田八幡平観光物産協
会会長としてのお立場と、 年の歴史を
10 60
初回目には市長さんも見えて大々的にセ
(龍門亭千葉旅館代表取締役社長)
うな媒体を利用して情報を発信すると効
千葉 潤一さん
レモニーをしていました。人口2万人く
㈳十和田八幡平観光物産協会会長
果的かということが協会の大きな役割で
140
千葉さん 客層のデータで見ると、鹿角
は関東圏のお客様が全体の %前後と抜
もあると考えています。
20
2
情報と出会うにもタイミングというのは
ことが必要になりますね。いい人・いい
異 業 種からもいろいろなものを引き出す
よね。即決が求められる時代には会長も
ップダウンでなくては間に合わないです
育てるには、このような危機の時にはト
をどう考えるかですが、経営者も部下を
井上 そのように観光と物産と地域の生
産者が一体となるためのリーダーシップ
臣 認 定 に よ る 特 例 措 置 が あ り ま す の で、
実施計画を作成して申請をした場合、大
申請を考えているようです。観光圏整備
果的なのですが、なぜか青森は単独での
ら秋田・岩手を含めた広域圏にすると効
田や八幡平は含まれていません。本来な
やはりあると思いますね。
年やるという考えがあってもいいので
はありませんか、老害は困りますが。千
大きなイベントがありましたが。
は﹃十和田八幡平黄金歴史街道﹄という
さて、会長としては、今後どのような
展開を考えていらっしゃいますか。昨年
域圏を考えて努力していきます。
千葉さん そうですね、いい意味での広
的な立場でこれから頑張ってください。
意味では十和田八幡平観光物産協会が公
井上 中国でも以前は次から次へお皿を
並べることが〝もてなし〟で、皿の上に
皿が出るといった感じでした。その中国
中国も変わってきているのです。
扱う﹃観光庁﹄が設置されて、国策とし
ての観光が動き始めているのです。
千 葉 さ ん 発 想 を 切 り 替 え る と い え ば、
全国から申請された の﹃観光圏整備
われわれ旅館・ホテル業界も安心・安全
実施計画認定対象地区﹄があり、そのう
は地元の手打ち南部そばの切田屋さんの
いう感覚がありませんでしたが、当館で
す。従来はコスト中心で生産者と組むと
との協力もひとつの転換になっていま
から抜けているのです。いま十和田・八
ていないために、ぽっかりと補助の対象
岩手の北東北三県からはなぜか申請が出
件とされているのですが、秋田・青森・
ちの 地域はすでに平成 年度の補助案
な食材を取り入れるために地元の生産者
そばをメニューに取り入れたり、地域同
16
戸を中心に協議会をつくり申請の動きが
14
20
〝私心を捨て公に尽す〟
ということ
︵からし大根︶
赤穂 浪士の指導者大石蔵之助の辞
世は﹁あら楽や 思いははるる 身は
捨つる 浮世の月に かかる雲なし﹂
である。なんと清々しい境地ではない
だろうか。
こんな情報があった。日本、世界は
かつてない変革の時代にあると。特に
日本は﹁明治維新﹂
﹁太平洋戦争敗戦﹂
に匹敵する一大変化の渦の中にあると。
しかしその渦中にある私たちは何か
実感がなかったようだ。しかし、この
半年の情勢の変化はその情報、指摘が
まさに正しかったことを示している。
そして多くの政治経済評論家は口に
する﹁百年に一度の∼﹂と。まさにそ
れは〝忍び寄る資本主義の危機〟であ
る。しからば私たち日本に、政治指導
者たちにその対処策は用意されている
のだろうか。ある人が駄洒落でこんな
〝狂歌〟を詠んだ。
﹁坊ちゃん育ちの苦
労知らずの二世議員∼その馬鹿ぶりの
首相が三代続き∼当然日本は六でもな
い 国 に な る は 当 た り 前 ﹂ 2 ×3 =6
倍も救いようのない国に堕落したのを
痛烈に批判したもののようだ。
黒沢明監督﹃赤ひげ﹄の中でこんな
台 詞 が あ る。
﹁一般庶民のこの貧乏と
無知をなんとかしようとした為政者が
いただろうか!﹂まさに今こそ私たち
には大石蔵之助の生きざまの如く﹁私
心を捨てて公に尽す人﹂が必要だ。
鹿角は春選挙の季節を迎える。
47
な く て は な ら な い と。 そ う い う 意 味 で、
井上 文化文明というものはそういうも
のでしょう。触発され、新しいものが生
まれる。やはり外へ出ないとだめですね。
葉さんはいま何歳ですか。
急な課題と捉えています。
協議会を立ち上げて手を上げることが早
基盤を作るメリットが生じます。
ですから鹿角・小坂・田沢・乳頭・角
館など秋田県側の知名度の高いエリアで
ホテルでいうと、料理が飽食すぎます
ね。いまはバイキングが流行ですが、私
千葉さん ちょうど 歳になりました。
井上 これから 年、十和田八幡平観光
物産協会の会長を務める心意気で、どん
井上 誰がイニシアティブを取るか、ト
ー タ ル な デ ィ レ ク シ ョ ン が 必 要 で す ね。
千葉さん これからの一番の案件として
は﹃観光圏﹄への立候補が上げられます。
自分だけがという立場でなく。そういう
で も3 年 位 前 か ら 持 ち 帰 り が 出 て き て
平成 年 月に国土交通省の中に観光を
ただけない現状が一方にあります。
〝もったいない〟文化が生まれています。
目が満足する〝量〟がないと納得してい
たちの年齢には品数が多すぎます。発想
を転換して欲しいものです。
どん改革してください。
50
千葉さん しかし未だに地元のお客様は
10
士の結びつきに本当の意味で目覚めてき
右ページ/日本画家・寺岡多佳氏の作『龍門』
6代目の現社長が目を描き入れた(千葉旅館にて)
10
あります。しかしそれには秋田県の十和
井上=弊社特別相談役(左)
20
たような気がします。
3
10
川口 仁人
Kawaguchi Masato
写真展
新年のお慶びを申しあげます
『グリーンメール鹿角』Vol.6_2006年7月号と Vol.12_2007年秋号の表紙を飾っていただいた川口さん
黄金色に輝く薄野の写真に惹かれた読者から「ほかの写真も見たい」とのお声を頂きました
そこで新春紙上写真展として川口仁人さんの世界をお届けします
写真上/『静岡県御殿場にて』 下/『青森県鯵ヶ沢にて』
4
『青森県鯵ヶ沢にて』 悪天候を選んで撮影に行く。冬の日本海の暗い
空と凍てつく寒さの中、真冬も漁に休みはない。
『秋田県鹿角市 八幡平 谷内にて』 春彼岸行事「オジナオバナ」は大 湯 宮 野 平、
八幡平小 豆沢、八幡平谷内の3地区で行われ
るが“火振り”は谷内地区の行事。
『秋田県鹿角市花輪にて』 りんごの里に突然の大雪。水分を含んだ雪で
枝が大きくたわみ、じっと重さに耐えている。
写真家
川口 仁人(かわぐち まさと)さん
㈳日本写真協会会員。鹿角市花輪在
住。20世紀を代表する高名な写真家・
故 木村伊兵衛に師事し写真の基礎を
学ぶ。二科展本展2回入選、東北二科
展入選、秋田県展入賞・入選などの実
績があり、国内外で個展開催。
プロ活動の傍ら、鹿角市で写真愛好
家の会『写団かづの』を主宰し、市内
の生涯学習の啓蒙にも努めている。
5
ど﹂という方から頂くことも多いんですよ。
な い し ⋮﹂
﹁捨てようと思っているんだけ
編集部 この店内はすべて手作り品?
阿 部 さ ん そ う、 全 部。
﹁おばあちゃんの
着物や帯が捨てられない。自分では着られ
くらい、加工する幅が広いです。
たり、捨てるところがないといってもいい
したり、バッグ・タペストリー・行灯にし
帯揚げ⋮リフォームはもちろん、染め替え
のならなんでも扱います。帯・襦袢・半襟・
なお客さんも多いですよ。着物に関するも
阿部さん 私が作業しているのを見て﹁和
裁ってそうやって縫うんだね﹂と興味深げ
番をしてという感じでしょうか。
そして阿部さん自身が縫い物をしながら店
編集部 このお店は古い着物地をあらゆ
る も の に 加 工・ 再 利 用 し て い る ん で す ね、
するより自分でやってみようかな、と。
けだし、子どももまだ小さいので、お勤め
阿部さん ちょっと女の城みたい⋮。昭和
の匂いがして温もりがあって居心地がいい
しが広がって飽きないでしょうね。
編集部 女の人がここに来て阿部さんか
らいろんな再利用の方法を聞いていたら話
仕事に通じますが、古いものを大事にする
語が出るようになってきました。私のこの
が、3年経って最近は会話にも少し専門用
れば絶対に選ばなかった﹂と怒っていたの
うで﹁お母さんがこんな仕事をしていなけ
をしているのですが、最初は大変だったよ
阿部さん 信用は簡単に手に入りません
からね。息子がいま京都でシミ抜きの修業
このお店の土台になっているわけですね。
編集部 仕立てや着物の知識、実家の呉服
屋 さ ん の 縁・ 信 用 と い っ た も の が す べ て、
アンティークの味わいが増しますから。
です。でも、シミがあっても大事に扱えば
手間隙かけているところは少ないのだそう
お知らせ
新春のお慶びを申し上げます
鹿角市八幡平字歌内 1-1
娘で、実家が一時営業を休むと決めたとき
㈱シーティーイー︵代表取締役社長 藤
田陽司 東京都文京区水道︶鹿角事業部は
秋田県と鹿角市の誘致企業として本年で創
部5年目を迎えます。一般書籍や雑誌のD
TP業務をメインに、春には新卒4名の採
用を予定して企業努力を重ねておりますの
で、今後とも宜しくお願い申しあげます。
◎ ㈱シーティーイーのホームページは
http://www.web-cte.co.jp/
鹿角事業部の紹介は
㈱シーティーイー鹿角事業部
次号は春号︵4 月予定︶です。
http://www.web-cte.co.jp/work/kaduno.html
CTEが手がける
出版物の一例
﹃ GREENMAIL
鹿角﹄デザイン/SAORI・I
今号の表紙は、奈良 学さんが
HPにアップしていたもので、解
像度が低いからと渋るところを
毛 馬 内︵ け ま な い ︶ 富 士 を 上 か
ら撮影した写真は珍しいと思い、
無理をいってお借りしました。
毛 馬 内 富 士 の 正 式 名 称 は﹁ 茂
谷︵もや︶山﹂ですが、裾野に広
がる集落と背後に連綿と連なる
山 々 の 光 景 に、 鹿 角 は 山 の 神 様
に四方を守られているんだな∼
美しいな∼と改めて感動︵N︶
編集後記
編集部 花輪の長年寺の山門に通じる曲
がり角にある和風の商品を扱う可愛いお店
開店されたのは何年ですか。
それらが生まれ変わると皆さん心から喜ん
そうで、皆さんゆったりしていきます。
に生活が一変しましたね。
の店舗を借りたんです。東京で和裁の勉強
-
ですが、以前はおもちゃ屋さんでしたよね。
阿部さん 平成 年に開店しました。私は
道を挟んで1軒隣の﹃佐藤隆呉服店﹄の末
でくれます。昔の着物地は、色の深みも違
商売はこの先無くならないと思います。
うし柄も味があるし飽きないですね。古い
編集部 年齢を言って申し訳ありません
歳台まで和裁一筋だったのに、 代
たお客さんもいましたよ。楽しいでしょ。
阿部さん そう、人生の転換期って本当に
あるんですね。私自身は家庭があって大湯
が、
編集部 いろんな人の想いがこもっている
んですね、商品の1個1個に。
日もすべて自由にしている半面、自分自身
帯を洗って染色して、最後にスカートにし
阿部さん 最近は〝花輪ばやし〟の見物に
来て立ち寄った観光客の方とか人形作家の
が資本なので、体を大事にしなくてはなら
に、自分で手作りの店をやろうと考えてこ
をしてきて実家の2階で仕立てを手伝って
方 と か 首 都 圏 か ら の リ ピ ー タ ー が 増 え て、
-
から通ってきているので、営業時間も定休
いたので、人前に出る仕事とは縁がなくて、
17
-
﹃グリーンメール鹿角﹄VOL. 二〇〇九年冬発行 CTE編集部 〒 018 5141 秋田県鹿角市八幡平字歌内 1 1 電話 0186 30 5605 FAX 0186 32 2296
-
ないと自覚しています。古いものを大事に
リサイクル加工 きものなんでも相談店
客層が広がっています。生地を洗ってアイ
50
営業時間 10時頃∼ 5時頃
定休日 不定休
さん
もみじ 阿 部 好 子
アンティーク
☎ 0186-23-6631
こ
よし
べ
あ
鹿角市花輪字上花輪 103
古いものを大事にしたら人生がいい感じ
このままひっそりと縫い物をして終わると
タラコくちびるの女の子がお出迎え
したら人生がいい感じになってきました。
40
17
ロンがけして、染め直したり、そういった
あの人この店
思っていました。でもお給料がなくなるわ
シリーズ⑰
-
-
6