〈コラム〉心に残るまちなみ1

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心に残るまちなみ1
ストックホルムの
メラーレン北通り
イランの荒涼たる砂漠の中の日干し煉瓦の集落で、異様な警戒の目付きで我々を見
ていた母子の姿。山上都市アッシジの、700年以上も人々の足で磨かれて、カーペッ
トのようになった石畳の坂道をのぼる一人の僧。ヴェネチアのブラノ島の色とりどり
日本女子大学住居学科助教授
小谷部育子
の原色に塗られた運河に面した家並と、玄関先の椅子で道行く人を眺めているお年寄
りの姿。主要道路はほとんど並木道で、カフェのテラスで手紙を書き、読書をし、友
と語り合う旧西ベルリンの都心の夏。民主化間もないセントペテルスブルグの、帝国
時代の壮大な都市とは余りにも落差のある人々の暗い顔。等々。私の心に残っている
数々の街の思い出は、街の歴史と自然と人々の生活が織りなすそれぞれ世界で一枚し
かないゴブラン織りのようである。短時間の旅行者の目から長期滞在の準生活者の目
まで(それでもよそ者の目であるには違いないが)、ゴブラン織りの厚みは増していく。
1992年に1年間滞在したストックホルムは、数訪れた都市のなかでも数百の群島
を有し、特徴的な地形に恵まれて、自然と人工物が調和し、職・住・遊が共存している
美しい暮らし易い現代の街である。特に水辺や森は誰もが散策を楽しめる公共的スペ
ースであって、たとえ私有地であっても柵などはない。水上および水辺は市民の四季
折々の憩いの場として機能し、保全されている。王宮があり、17世紀、18世紀の街
並が奥歯生きている城塞のようなガムラスタン(古い街)の水辺の景観。19世紀末の
瀟洒な貴族のビラが建ち並び、夏は観光船や豪華なクルーザーで賑わうストレム通り。
20世紀初頭のアールヌーボー様式や1930年代の初期機能主義様式の集落住宅群と緑
が美しいメラーレン北通りの景観。自然公園化されている南二一デルマルムの水辺。
そして近年工場跡地が住宅地に再開発され、新たな景観と人々のアクティビティーを
取り戻した歪曲ンマルビハムネンの水辺。等々、歴史を重ねながら、自然の恵を最大
限に都市の共有財産として保全しつつ、時代のニーズにあわせて開発・整備がされて
いることがわかる。街路や水辺の都市空間を構成する自然及び建築的要素は、公私の
所属にかかわらず、地域の公共財であることの全市民的認識が育っている大人の街だ。
小谷部育子(こやべいく二)
建築家、日本女子大学家政学部住居学科助教授
1944年東京生まれ
1966年日本女子大学家政学部住居学科卒業、第一工房入所
1981年コーネル大学建築学円助手
1982年同大学院修了
1985年日本女子大学専任講師
1989年から現職
高年齢者問題や女性の就労などに対応ずる新しい居住形
態としてのコレクティブハウジング研究の第一人者
表紙写真撮影:筆者
目次
〈コラム〉心に残るまちなみ1 小谷部育子日本女子大学助教授
竜ケ崎ニュータウン龍ケ丘財団住宅祭 第1期、第2期…………………………………・・…・2
City&Cityおゆみ野財団住宅祭 第2期、第4期……………一・…………・・……・………4
ポエムノールひらかた北山共同分譲第1期、第2期…………・一・…………………………6
神戸リサーチパーク鹿の子台共同分譲 第2期、第3期……………一・・…一………・…・8
つくば吾妻共同分譲……………・…・…一…………・・……・………一・・…………一…・…・………10
City&Cityちはら台財団住宅祭 第5期………………・…・・……………・…………・・……12
グリーンタウンしもつけ住宅祭第7期…………・・…・………一一…・……………………14
いわきニュータウン財団住宅祭 第5期、第6期………………・一…………………………16
高須青葉台ボンエルフ住宅地財団住宅祭 第1期、第2期……・……一…………………・18
関西学研都市光台共同分譲 第3期…………・……・…一・…一……・…………………………20
レークピア大津仰木の里共同分譲 第2期・………………・・……………・…・・………………22
千葉ニュータウン共同分譲 第1期……・………・…・………………………………・・一………24
ビッグヒルズ飯能美杉台財団住宅祭 第7期・…・……………・………………………………26
西播磨テクノポリス共同分譲……………・…・………一…一・一…・…………・…・……………28
明石公園住宅展示場開設………一・……・……………………………・一…・……………一・・…30
住宅展示場来場者分析 大川 陸財団専務理事………………・……・・…………・…一・…32
まちづくり設計競技 結果概要
第Il回・平成5年度 入賞者一覧、課題、審査報告…………・・……・………………………37
特選 入賞作品講評、受賞者の言葉、入賞作品……………・…・…・…………・…・・……………39
準特選∼入選∼佳作 入賞作品、講評…………・一…・…………・……・・………………………42
第12回・平成6年度 入賞者一覧課題、審査報告…・……・………・………………………49
特選 入賞作品講評、受賞者の言葉、入賞作品………………・・……・…………・・…・…………51
「家とまちなみ」第32号
発行日:
平成7年10月30日
準特選∼入選∼佳作 入賞作品、講評……………・…・・……………………………・……・・……54
発行所;
第13回・平成7年度 まちづくり設計競技募集概要 ・………・………・・…………・……・・……63
(財)住宅生産振興財団
〒105 東京都港区虎ノ門
Ir目21番19号
秀和第2虎ノ門ビル7階
第7回街並みシンポジウム
Tel.(03)3580−8811
Fax.(03)3580−9422
「諏訪野」財団住宅祭まちづくりシンポジウム…………一…・・……………………・・………64
編集発行人:
大川 陸
編集:
第6回住宅月間協賛[街並みシンポジウム]住まいと暮らしの未来学
講演1 変わる暮らし、変わらない暮らし 山口昌伴………・……一・……………65
講演2 昭和の住宅・平成の住宅 藤森照信・…・……………・……………………………66
大滝広治
アートディレクション:
道吉 剛
デザイン:
パネルディスカッション「住まいのきのう、きょう・、あす」を考える
稲葉克彦
見城美枝子、宮脇 檀、藤森照信、山口昌伴…・……一……・……………68
平田恵美子
向井一貞
製作コーディネイト:
(株)バウ村上暢男
財団日誌…………・……・・………”…’”○…………….……………’……………’…’…71
印刷所:
日本写真印刷(株)
編集後記