老朽 朽化した鋼 鋼矢板水 水路の補修 修・補強 強工法の 開発

老朽
朽化した鋼
鋼矢板水
水路の補修
修・補強
強工法の 開発
○藤村ヒュ
○
ュ ー ム管株式
式会社
1
技術営業部
技
部主任
佐藤
藤弘輝
はじめに
に
河川等の水
水利施設で供
供用されている鋼矢板
板護岸は,長期
期供用により鋼材の腐食
食に伴う断面欠損が
生じて機能低
生
低下が進行 している事例が報告さ れている(写
写真-1)。こ
こうした施設
設は,高度経済成長期
に集中的に整
に
整備された結
結果,そのほ
ほとんどにお
おいて耐用年
年数を迎えつ
つつあり,施
施設の維持更
更新が急
務な課題とな
務
なっている。
。そのため既
既存施設の 長寿命化を 図る効率的
的な補修およ
よび補強が行
行える工法
の技術開発が
の
が求められ ている。本報では,老朽
朽化した鋼矢
矢板護岸を施
施工性や長期
期耐久性に優れた軽
量プレキャス
量
ストパネル と充填コンクリートの
の複合材で補
補修および補
補強を行う「
「ストパネ工
工法」(以下
ストパネ工法
ス
法) の概要と
と,試験施工
工および力学
学特性を検証
証した結果に
について報告
告する。
2
開発の 目的
鋼矢板は,,鋼材の腐食
食反応により
り断面欠損が
が生じる。鋼
鋼矢板水路で
では,腐食後
後も構造安全
全性が確保
できるように
で
に,一般環境
境において表
表裏あわせて
て 2 ㎜の腐食
食代が設定されている
1)
。腐食は,
,特に水面
付近で急激に
付
に進行し 100 年から 40 年の既設鋼
年
矢板排水路
路の調査では
は,供用開始後
後 20 年で腐
腐食が顕在
化した事例
化
も報告され ている 2)。このような 状況下にお
おいて既存施
施設を効率的
的に維持管理
理し,長寿
命化を図る技
命
技術の開発 と普及が急務な技術的
的課題となっ
っている。従
従来の保護工
工法には,腐
腐食した鋼
さびや付着物
矢板表面の
矢
物をブラスト除去した
た後,防錆剤
剤を塗布しウレタン樹脂
脂などで被覆
覆する表面
被覆工法が多
被
多用されて きた。しかし,こうした
た保護工法施
施工後の施設
設において, 被覆層の剥
剥離や紫外
り,筆者らは
線による再劣
線
劣化が発生 した事例も見られる(写
写真-2)。以上の背景よ
以
は施工性と LCC(Life
Cycle
C
Cost) の観点か ら優位と考えられるコ ンクリート を用いた表
表面被覆工法
法としてスト
トパネ工法
を開発した。
を
。本工法は,腐食代を有
有する既設鋼
鋼矢板を対象
象として,コンクリート
ト被覆による
る鋼矢板の
腐食の進行を
腐
を抑制する効
効果と鋼矢板-コンクリ
リート複合材
材による補強
強効果を目的
的としている。
写真-1
既設矢板 材の腐食と断面欠損
写真-2
再劣化した
た鋼矢板水路
路
3
ストパネ
ネ工法
3.1
工法
法概要
ストパネ工
工法の構造 を図-1 に示
示す。本工法
法は,基礎処 理を行った後に既設鋼
鋼矢板の前面
面に専用の接
接
続金具を溶接
続
接してプレ キャストパネルを配置
置し,内部にコ
コンクリートを充填す るというものである。下
地処理が容易
地
易でかつ従来
来の保護工法にない無
無機系材料の
のコンクリー
ートで被覆す
するため,ア
アルカリ性に
に
よる腐食の進
よ
進行の抑制効
効果を期待でき,従来の
の表面被覆工
工法と比較しても,防食
食性は同等以
以上と考えら
ら
れる。また,
れ
,コンクリー
ートは材料安
安定性に優れ
れているので
で従来工法と比較して耐
耐用年数の向上による
LCC
L の低減が
が期待でき, 材料として
ても汎用性が
があるので地
地域制約が無
無く全国普及
及を図ることができる 。
一方,施工面
一
面では特殊作
作業を必要と
としないため
め,施工が容
容易で尚且つ
つ環境に左右
右されない安
安定した品質
質
での補修お
で
よび補強が 可能となる。
3.2
使用
用材料
プレキャス
ストパネル は,耐アルカ
カリ性ガラス
ス繊維補強モ
モルタルを用
用い,ステン レス鋼メッシュによ
り補強した板
板状製品で ある。高品質かつ高強
強度で,構造的
的にも鋼矢板
板との複合部
部材となるため安定
となる。ま た,寸法は 500
した構造体
し
5
mm×5000 mm×30 mm
m,製品質量 16.9 kg/枚
枚とコンパク
クトで軽量
化が図られて
化
ているので,,人力施工が
が可能で施工
工重機が進入
入できないよ
ような都市部
部の狭隘な河川でも
施工性を確保
施
保できる。接
接続には,メ
メッキ処理を
を施した金具
具を使用して
ており,パネ
ネル配置後に
に水路内面
に露出しない
に
いようにパネ
ネルの裏でボルトによ り接続する
る構造となっ
っている(写真
真-3)。
3.3
施工
工事例
試験施工は
は,新潟県 内の西蒲原地区に位置
置する猿ケ瀬
瀬排水路で行
行った。試験
験施設は水路
路幅 2.65
m,水路高さ
m
さ 1.5mで,軽量鋼矢板
板(3D 型 L==6 m 設計板厚
厚 6 ㎜)を
を使用した農
農業用排水路
路である。
3.4
施工
工手順
図-2 に施
施工フローを
を示す。施工
工手順は,高
高圧洗浄機 (洗浄圧 14.7 MPa)を使
使用して,既設鋼矢
板表面を洗浄
板
浄し,基礎砕
砕石および均しコンク リートで基
基礎処理を行
行った後,鋼
鋼矢板面に専
専用の接続
金具を溶接
金
してプレキ ャストパネルを設置す
する作業を繰
繰り返し,内
内部にコンク
クリートを充
充填する
というもので
と
である。
図--1
ストパネ
ネ工法構造概
概念図
写真-3
写
金具
具接続状況
(1)
(2)
(3)
(4)
(5))
(6)
(7)
洗
床 基
パ
接
充 打
養
完
浄
均 礎
ネ
続
填 設
生
了
工
し 工
ル
金
コ
配
具
ン
置
溶
ク
接
リ
(2)基礎工
(1)洗浄工
ー
(3)パネル配置
ト
(5)充
充填コンクリート打設
(4
4)接続金具溶接
接
表 -1
モデル
ル試験条件
施工
工フロー
既設鋼
鋼矢板
既設鋼矢板
板
700
700
実験ケ ー ス
Case 1
Case 2
125
試験条件
既設鋼矢板
板
(軽量鋼矢
矢板,t=4.2~6.1 ㎜)
既設鋼矢板
板
(軽量鋼矢
矢板,t=4.2~6.1 ㎜)+コン
クリート
270
図-2
現場
場打ちコンクリート
コン
ンクリートパネ
ネル
Case 1
図-3
4
Case 2
各ケース検討
各
討断面
力学的特
特性
クリート複 合材の力学
ストパネ工
工法の開発 に当り, 鋼矢板-コンク
鋼
学的特性を把
把握するため
め, 公益財団
団
法人にいがた
法
た産業創造機
機構が実施する助成事
事業を活用し
し,新潟大学
学自然科学系
系(農学部)と産学共同
同
研究を行った
研
た。各ケー スの試験条件を表‐1, 各ケース検
検討断面を図
図-3,室内試験
験の状況を写真-4 に示
示
の Case 1 および施工と
す。試験は,
す
, 猿ケ瀬排水
水路で採取した既設鋼
鋼矢板を 2 枚 1 組とし,鋼
鋼矢板のみの
お
と
同じ手順で
同
コンクリー ト被覆を施した Case 2 について実
実施した。載
載荷荷重は,既設鋼矢板
板を採取した
た
水路の設計モ
水
モーメント を Chang の式により算
算出し,この
のモーメント
トの 1.5 倍で
である 27 kN
N・m を基準と
と
した。
し
試験の結果
果,コンクリ ート被覆に
による変位量
量の抑制効果
果を確認する
ることができ
きた。その結
結果を図-4
に示す。基
および図-5
お
基準モーメン
ント 27 kN・ m において Case 1 の最
最大変位 34..3 mm に対して Case 2
の最大変位は
の
は 7.3 mm であった。一
で
一方残留変位
位は,同モー
ーメントで Case 1 が 3. 1 mm であっ
ったのに対し
し
て Case 2 で
では 0.9 mm であった。両
で
両ケースの 比は最大変
変位量で Case 2 が Case 1 に対して
て 21%,残留変
変
位量で
位
28%で
であった。一
一般的に自立
立式鋼矢板の
の許容変位 量は,土地改良事業計
計画設計基準
準・設計「水
水
路工」におい
路
いて,護岸高
高さ 4.0 m 以下では護岸
以
岸高さの 1/
/40 と設定さ
されている
11)
。本検討断
断面の許容値
値
は 37.5 mm となる。本試
試験結果は,基準モー
ーメントの試
試験荷重にお
おいて,いず
ずれのケース
スも最大変位
位
量は許容値を
量
を下回って いた。しかし Case 1 に
に対して Cas
se 2 の変位量
量の低減率が
が大きく,鋼矢板-コン
ン
クリート複合
ク
合材では,載
載荷過程において曲げ
げ変形量を抑
抑制する効果
果が働いたも
ものと推察さ
される。
5
今後の課
課題
技術的課題
題としては,,施工後に内
内部の鋼矢板
板材
の腐食状況が
の
が直接目視 できなくなるという点
点が
挙げられる。
挙
。これにつ いては現在,電位計測
測によ
りマクロセル
ル腐食の可能
能性を定量的に評価す
する取
組みを進めて
組
ている。
6
おわりに
に
本報では,
,筆者らが 開発した既設鋼矢板護
護岸の
補修および補
補
補強を行う 工法「ストパネ工法」 につ
写真-4
いて報告した
い
た。試験施 工により施工性の確認
認と,室
室内試験状
状況
変位量(mm)
内曲げ試験に
内
によりコン クリート被覆の補強効
効果を 最大変
50.0
とができた。
確認するこ
確
。このことから,今後
後,水
利施設として
利
て供用され ている鋼矢板護岸の長
長寿命
40.0
化を試みる際
化
際にストパネ
ネ工法の有効性は高い
いもの
と考えられる
と
る。
30.0
7
20.0
謝辞
本研究を進
進めるにあ たり,新潟大
大学自然科学
学系
最大
大変位 34.3mm
最大
大変位 7.3mm
m
10.0
(農学部)鈴
鈴木准教授 から,丁寧か
かつ熱心なご
ご指
した。ここ に感謝の意を表します
導を賜りま
導
す。
0.0
18.0
引用文献
引
図-4
22.0
27.0
31. 0
35.0 39.0 43.0
作用モーメ
メント(kN・m)
最大モーメン
ントと最大変
変位の関係
1)
1 農林水産
産省農村振興
興局整備部設
設計課:土地
地改良
事業計画
画設計基準・
・設計「水路
路工」技術書
書,
残留
留変位量(mm)
8.0
0
(社)農
農業農村工学
学会,pp. 357-374,20
3
001.
7.0
0
2)
2 鈴木哲也
也,森井俊広
広,原斉,羽
羽田卓也:地
地域
6.0
0
資産の有
有効活用に資
資する鋼矢板
板リサイクル
ル工法 5.00
の開発, 農業農村工
工学会誌,8
80(10),
4.0
pp. 21‐ 24,2012.100
3.0
0
残留変位 3.1mm
残留
留変位 0.9mm
2.0
1.0
0.0
18.0
22.0
図-5
最大モーメン
最
ントと残留変
変位の関係
27.0
331.0 35.0 39.0 43.00
作用モーメント(kN・mm)