Title Author(s) Journal URL Dose-Dependent Remifentanil Decreases Oral Tissue Blood Flow During Sevoflurane and Propofol Anesthesia in Rabbits 小鹿, 恭太郎 歯科学報, 112(2): 206-207 http://hdl.handle.net/10130/2791 Right Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/ 206 歯科学報 氏 名(本 Vol.112,No.2(2012) こ しか 籍) 小 鹿 士(歯 きょう た ろう 恭 太 郎 学 位 の 種 類 博 学 位 記 番 号 第 1884 号(甲第1135号) (茨城県) 学) 学 位 授 与 の 日 付 平成23年3月31日 学 位 授 与 の 要 件 学位規則第4条第1項該当 学 Dose-Dependent Remifentanil Decreases Oral Tissue Blood 位 論 文 題 目 Flow During Sevoflurane and Propofol Anesthesia in Rabbits 掲 載 雑 誌 名 Journal of oral and maxillofacial surgery 第69巻 8号 2128∼2134頁 2011年8月 論 文 審 査 委 員 (主査) 一戸 達也教授 (副査) 金子 譲教授 柴原 孝彦教授 川口 充教授 田 雅和教授 論 1.研 究 目 文 内 容 の 要 旨 的 全身麻酔下にレミフェンタニルを持続投与すると,舌粘膜と下顎骨骨髄の血流量が減少することが報告され ている。そこで本研究では,全身麻酔下にレミフェンタニルの投与速度を5段階に変化させ,レミフェンタニ ルがウサギの口腔組織(舌粘膜,下顎骨骨髄,咬筋,上下顎歯槽粘膜下組織) 血流量に及ぼす影響とその量依存 性について検討した。 2.研 究 方 法 日本白色種系雄性家兎16羽を用いてイソフルランで麻酔導入後,気管切開して挿管し,プロポフォール(p 群,n=8) ま た は セ ボ フ ル ラ ン(S群,n=8) で 麻 酔 を 維 持 し た。レ ミ フ ェ ン タ ニ ル の 投 与 速 度 は 0. 1,0. 2,0. 4,0. 8,1. 6μg/kg/min の順で変化させた。観察項目は,各口腔組織血流量と,循環の指標とし て心拍数,血圧(収縮期圧,平均動脈圧,拡張期圧) ,および総頸動脈血流量とした。口腔組織血流量はレー ザードップラー血流計または水素クリアランス式組織血流計を用いて測定した。 3.研究成績および考察 口腔組織血流量は,P群,S群ともにレミフェンタニルの量依存性に減少した。レミフェンタニルの投与速 度が1. 6μg/kg/min の時,舌粘膜血流量が約30%,その他の口腔組織血流量が約50%減少した。一方,心拍 数,平均動脈圧,総頸動脈血流量は最大で20%程度の減少であった。口腔組織血流量の減少率と比べて総頸動 脈血流量の減少率が小さかったことから,総頸動脈支配領域の組織血流が再分布していることが示唆された。 また,上下顎歯槽粘膜下組織血流量の対照値はP群の方がS群と比べて多い結果であった。このことから,口 腔組織血流量の制御のためにはレミフェンタニルと併用する全身麻酔薬の選択も重要であることが示唆され た。本研究の結果によると,平均動脈圧の減少が10%程度で口腔組織血流量が有意に減少するのはレミフェン タニルの投与速度が 0. 2μg/kg/min であった。このことから,臨床的には,心拍数や血圧を大きく低下させず に口腔組織血流量を減少させるために適切なレミフェンタニルの投与速度は0. 2μg/kg/min 程度であると考え られた。 4.結 論 レミフェンタニルは血圧を大きく低下させることなく,口腔組織血流量を量依存性に減少させることから, ―130― 歯科学報 Vol.112,No.2(2012) 207 口腔外科手術において有用な薬物であることが示唆された。 論 文 審 査 の 要 旨 本研究は,日本白色種系雄性家兎を用いて,プロポフォールまたはセボフルランによる全身麻酔下にレミ 1,0. 2,0. 4,0. 8,1. 6μg/kg/min) に変化させ,レミフェンタニルがウ フェンタニルの投与速度を5段階(0. サギの口腔組織血流量に及ぼす影響とその量依存性について検討した。観察項目は,心拍数,収縮期圧,平均 動脈圧,拡張期圧,総頸動脈血流量,舌粘膜血流量,下顎骨骨髄血流量,咬筋血流量,上顎歯槽粘膜下組織血 流量,下顎歯槽粘膜下組織血流量とした。その結果,レミフェンタニルは量依存性に舌粘膜血流量,下顎骨骨 髄血流量,咬筋血流量,上下顎歯槽粘膜下組織血流量を30∼50目減少させることが示された。一方,平均動脈 圧や総頸動脈血流量は10∼20%の減少であった。これらの結果から,プロポフォールおよびセボフルラン麻酔 下にレミフェンタニルを併用することは,平均動脈圧を大きく低下させることなく,口腔組織血流量を減少さ せることが示唆された。また本研究では,平均動脈圧の低下と口腔組織血流量の減少を考慮すると,レミフェ ンタニルの投与速度は0. 2μg/kg/min が適切であると考えられた。 本審査委員会では,1)レミフェンタニルの投与速度を1. 6μg/kg/min までにした理由,2)レミフェンタ ニルの投与速度が 0. 2μg/kg/min を適切と判断した根拠,3)人でレミフェンタニルを用いた場合の出血量へ の影響,4)組織血流量減少のメカニズムなどについての質問があった。これらの質問に対する回答とし て,1)予備実験でレミフェンタニルの投与速度を1. 6μg/kg/min よりも増加させると循環が安定しなくな り,データの信頼性がなくなるため。2)0. 3μg/kg/min 以上では著しい血圧低下や痛覚過敏などの副作用が 報告されているため。3)人でのデータをレトロスペクティブに検討した結果,レミフェンタニル使用時に出 血量が少なかった結果を得たため,今後臨床研究でさらに検討する予定である。4)詳細なメカニズムは明ら かではないが,口腔組織と脳組織で血流の再分布が起こった可能性が示唆される。と説明された。その他に, 用語の表現や,図の表題に対する指摘があり,訂正が行われた。また,口腔組織の観察部位を増加して欲しい 旨の要望があり,今後の検討課題とした。 本研究で得られた結果は,今後の歯学の進歩,発展に寄与すること大であり,学位授与に値するものと判定 された。 ―131―
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