位相制御型E 級dc/dcコンバータの実験的考察 Exparimental

社団法人 電子情報通信学会
THE INSTITUTE OF ELECTRONICS,
INFORMATION AND COMMUNICATION ENGINEERS
信学技報
TECHNICAL REPORT OF IEICE.
位相制御型 E2 級 dc/dc コンバータの実験的考察
浅野
努†
長谷 宏之†
関屋 大雄†
呂
建明†
谷萩
隆嗣†
† 千葉大学大学院自然科学研究科 〒 263–8522 千葉県千葉市稲毛区弥生町 1–33
E-mail: †[email protected]
あらまし 本研究では位相制御型 E 級インバータ及び E 級整流器から構成される位相制御型 E2 級 dc/dc コンバータ
の設計を行う. さらに, コンバータにおいて回路面積増大の要因となる入力インダクタおよび共振回路のインダクタを
結合することを提案する. インダクタのコア数を削減することで回路の小型化を図る. 回路実験により, コア数を削減
したときの特性の変化を考察する. 回路実験において入力インダクタ及び共振回路のインダクタをそれぞれ結合した
場合, 動作周波数 1MHz において出力電力 6.2W で電力変換効率 82 % 以上を達成する.
キーワード
E 級インバータ, コア数の削減, 位相制御型 E2 級 dc/dc コンバータ
Exparimental Invetigation of Phase Controlled Class E2 dc/dc Converter
Tsutomu ASANO† , Hiroyuki HASE† , Hiroo SEKIYA† , Jianming LU† , and Takashi YAHAGI†
† Graduate School of Science and Technology , Chiba University
1-33, Yayoi-cho, Inage-ku, Chiba, 263–8522 Japan
E-mail: †[email protected]
Abstract Phase controlled class E2 dc/dc converter composed of phase controlled class E inverter and class E rectifier is designed in this research. In addition, to miniaturize the circuit, we propose to couple the input inductance
and the inductor in the resonant circuit, respectively. The change in the characteristic when the number of cores
is reduced is considered by the circuit experiment. When the input inductor and the coil in the resonant circuit
are coupled respectively, the measured efficiency is over 82% with 6.2W output power at an operating frequency of
0.99MHz.
Key words class E inverter, reducing the number of core, class E2 phase controlled dc/dc converter
1. ま え が き
コア数を削減することが可能であることが報告されている.
本研究では位相制御型 E 級インバータと E 級整流器で構成
E 級 [1]- [12] は電力増幅器の動作クラスの一つである. E 級
される位相制御型 E2 級 dc/dc コンバータを提案する. 位相制
動作条件と呼ばれるスイッチング条件を満足することにより, ス
御型 E2 級 dc/dc コンバータは E 級インバータの駆動電圧の位
イッチにおける電力消費を最小化し, MHz 単位の高い動作周波
相差を変化させることで出力電圧を制御することが可能である.
数下において高電力変換効率が可能である. E 級動作条件を満
さらに, コンバータにおいて, 回路面積増大の要因となる入力イ
足するスイッチングを E 級スイッチングと呼ぶ. E 級インバー
ンダクタおよび共振回路のインダクタをそれぞれ結合すること
タ [1]- [6] は, E 級スイッチングを満足する増幅器であり, 高動
を提案する. コイルのコア数を削減することで回路のさらなる
作周波数条件下において高効率動作を実現する.
小型化を図ることが可能である. 回路実験により, コア数を削
位相制御型 E 級インバータ [4]- [6] は二つの E 級インバータ
を並列に接続し, 双方の E 級インバータの駆動電圧の位相差を
変化させることで出力電力を制御することが可能なインバータ
減したときの特性の変化を考察する.
2. 回 路 構 成
である. 位相制御型 E 級インバータは通常, 入力インダクタ, 共
2. 1 位相制御型 E2 級 dc/dc コンバータ
振回路のインダクタとして各二つづつ, 計四つのインダクタが
位相制御型 E2 級 dc/dc コンバータの回路構成を図 1 に示す.
用いられ, それが回路面積増大の要因となっている. 文献 [6] で
位相制御型 E2 級 dc/dc コンバータは位相制御型 E 級インバー
は位相制御型 E 級インバータにおいて二つの入力インダクタを
タ [4]- [6] と E 級整流器 [11], [12] で構成される.
結合することで位相制御型 E 級インバータの入力インダクタの
E 級インバータは E 級動作条件を満足するため, 最適状態に
—1—
Class E Rectifier
Phase Controlled Class E Inverter
L01
LC1
ic1
VI
S1
vs1
C01
Lf
i
icd
vd
i01
CS1
D CD
VI
vf
Cf
R
ic1
ic2
Dr1
Dr1
Dr2
ic2 S2
LC2
vs2
CS2
i02
L02
図1
Dr2
vs1
vs2
C02
位相制御型 E2 級 dc/dc コンバータ
i01
おいては高動作周波数下で高効率動作が可能である. 負荷抵抗
や入力電圧に変動が生じたときでも出力電圧を制御することで
i02
一定の電圧を得ることができる. しかし, 制御状態においては
E 級動作条件を満たさなくなるため効率が低下してしまう. そ
vd
のため E 級インバータは高動作周波数下で高電力変換効率を維
持しつつ出力電力を制御することが困難であるため, 制御方式
vf
として位相制御方式が提案されており, E 級インバータに位相
制御方式を用いた位相制御型 E 級インバータを用いることで固
定動作周波数の下に, 負荷変動, 入力変動などに対して連続的
に制御する事が可能である. 本研究では, インバータの出力を
図 2 位相制御型
E2
級 dc/dc コンバータにおける φ = 0◦ のと
整流器の入力とすることで dc/dc コンバータ [7]- [10] を実現す
きの動作波形 (VI = 10V , Vo = 8V , R = 10Ω, Vertical :
る. 提案する位相制御型 E2 級 dc/dc コンバータにおいても固
VI = 10V/div, ic1 = ic2 = 1A/div, Dr1 = Dr2 = 10V/div,
vs1 = vs2 = 50V/div, i01 = i02 = 1A/div, vd = 50V/div,
定動作周波数の下に, 負荷変動, 入力変動などに対して連続的に
vf = 5V/div; Horizontal:400ns/div)
制御する事が可能である.
位相制御型 E 級インバータは入力直流電源 VI , 入力インダク
タ LCj , スイッチとして働く MOSFET Sj , シャントキャパシ
タ Csj , 共振回路 L0j − C0j で構成される (j = 1, 2). 図 2 に位
L01
2
相制御型 E 級 dc/dc コンバータの最適動作における動作波形
を示す. MOSFET がオンの間, MOSFET にかかるドレイン・
S1
ic1
LC1
ic2
LC2
ソース間電圧 vSj は零となる. また, MOSFET がオフの間,
MOSFET に流れる電流は零となり, シャントキャパシタに電流
C01
Lf
i
vd
i01
CS1
D CD
vf
Cf
R
Dr2
S2
で表されるため, オン, オフいずれの状態においても MOSFET
間のスイッチ電圧とその傾きを零とするような E 級動作条件を
vs1
VI Dr1
が流れ, スイッチ電圧 vSj を作り出す. 電力は電流と電圧の積
上で消費電力は発生しない. MOSFET がオンへ切り替わる瞬
Class E Rectifier
Phase Controlled Class E Inverter
vs2
CS2
i02
L02
C02
図 3 入力インダクタ LC1 , LC2 を結合した位相制御型 E2 級 dc/dc
コンバータ
満たすことで MOSFET のオンへの切り替え時の電力損失は零
となるため, E 級インバータは高動作周波数下で高効率動作を
イオードにかかる電圧 vd はダイオードの閾値電圧と等しいた
達成する [1]- [3]. それぞれのインバータのスイッチ S1 , S2 の
めダイオードにおける電力損失はほぼ零となる. ダイオードが
駆動電圧 Dr1 , Dr2 の位相差を変化させることで固定動作周波
オフとなる瞬間においては, シャントキャパシタ CD に流れる
数の下に連続的に制御する事が可能である [4], [6].
電流が零となるためダイオードにかかる電圧の傾き dvd /dt も
E 級整流器はダイオード D , シャントキャパシタ CD , ロー
零となる. これも E 級動作条件の一つである. E 級整流器はス
パスフィルタ Lf − Cf , 負荷抵抗 R で構成される. E 級整流
イッチの切り替え時の電力損失と雑音を低減でき, 高動作周波
器にインバータから出力される交流電流 i = i01 + i02 が入力さ
数下において高い電力変換効率を達成する [11], [12]. 以上の様
れることにより直流電流が出力される. ダイオード D がオフの
に, 位相制御型 E 級インバータと E 級整流器は最適動作におい
とき, シャントキャパシタ CD に電流 icd = CD · dvd /dt が流
て, 共に E 級動作条件を満足することで高動作周波数下におい
れ, ダイオード D の電圧が閾値電圧 vth を越えるとダイオード
て高い電力変換効率を達成する [7] - [10]. そのため, 位相制御型
D はオンとなる. この間, ダイオードに流れる電流は無視でき
E2 級 dc/dc コンバータは高動作周波数下において高効率動作
るためダイオード D で生じる損失はほぼ零となる. ダイオー
を達成できる.
ド D がオンのとき, 電流がダイオードに流れる. このとき, ダ
—2—
C01
S1
ic1
LC1
ic2
LC2
vs1
vd
CS1
VI Dr1
L01
i01
L02
i02
D CD
ic1
vf
Cf
R
S1
C01
Lf
i
vd
i01
CS1
D CD
vf
Cf
R
S2
CS2
ic2 RS1 vs2
vs2
CS2
i02
LC2
C02
図4
vs1
RS1
VI
Dr2
S2
L01
LC1
Lf
i
Class E Rectifier
Phase Controlled Class E Inverter
Class E Rectifier
Phase Controlled Class E Inverter
L02
C02
(a)
入力インダクタ LC1 , LC2 および共振回路のコイル L01 , L02 を
Sj
結合した位相制御型 E 2 級 dc/dc コンバータ
Sj
RSj
rS
rSD
2
2. 2 コア数を削減した位相制御型 E 級 dc/dc コンバータ
本研究では回路の小型化のために位相制御型 E2 級 dc/dc コ
(b)
ンバータに用いられるインダクタのコアを結合することを提案
する. 具体的に以下の二つの回路構成を検討する.
図5
位相制御型 E2 級 dc/dc コンバータの等価回路 (a) 等価回路の
構成 (b) 抵抗 RSj の表現
2. 2. 1 入力インダクタを削減した位相制御型 E2 級 dc/dc
コンバータ
入力インダクタ LC1 , LC2 を結合することでコア数を削減し
2
た位相制御型 E 級 dc/dc コンバータの回路構成を図 3 に示す.
入力インダクタはチョークコイルとして働くだけのインダクタ
次に, 以下の仮定を行う.
( i ) 能動素子 S1 , S2 , D の切り替わり時間は零とし, オフ抵
抗は無限大, オン抵抗はそれぞれ rS1 , rS2 , RD とする
ンスを得られればよい. 結合するコイルの巻き数を削減しても
(i i) 全ての受動素子は理想動作 (線形動作) をする
コイルを巻く方向を同じ向きとすることで相互インダクタンス
(iii) シャントキャパシタ CS1 , CS2 は MOSFET の寄生容
により [6], チョークコイルとして働くインダクタンスを得るこ
とができる.
2. 2. 2 入力インダクタと共振回路のインダクタを削減した
位相制御型 E2 級 dc/dc コンバータ
入 力 イ ン ダ ク タ LC1 , LC2 お よ び 共 振 回 路 の イ ン ダ ク タ
L01 , L02 をそれぞれ結合することでコア数を削減した位相
制御型 E2 級 dc/dc コンバータの回路構成を図 4 に示す. 共振
回路のインダクタを結合する際, それぞれのコイルのインダク
タンスを設計値の 1/2 とすることでもう一方のコイルとの相互
インダクタンスにより, 最適状態において設計値と等しいイン
ダクタンスを得ることができる.
3. 設 計 方 法
3. 1 仮定及び回路パラメータの定義
まず, 回路のパラメータを以下の様に定義する.
( 1 ) ω = 2πf : 動作角周波数
p
( 2 ) ω0j = 2πf0j = 1/ L0j C0j : 共振角周波数
( 3 ) Aj = f0j /f : 共振周波数と動作周波数の比
( 4 ) Bj = C0j /Csj : 共振回路のキャパシタとシャントキャ
パシタの容量の比
( 5 ) Hj = L0j /LCj : 共振回路のインダクタと入力インダ
量を含む
3. 2 回路方程式
位相制御型 E2 級 dc/dc コンバータの等価回路を図 5 に示す.
このときの回路方程式は以下の様になる.
8
>
>
>
>
>
>
>
>
>
>
>
>
>
>
>
>
>
>
>
>
>
>
>
>
>
>
>
<
„
«
dvsj
vsj
= A2j Bj Kj R icj − ij −
dθ
RSj
dicj
Hj
=
(VI − vsj − rLC j iCj )
dθ
Kj R
dij
1
=
(vsj − vj − vD − rL0 j ij )
dθ
Kj R
dvj
= A2j Kj Rij
(1)
dθ
>
>
!
>
2
>
X
>
dvD
vD
>
>
>
ik −
− if
= A2j Jj Kj R
>
> dθ
RD
>
k=1
>
>
>
>
`
´
> dif
1
>
>
v D − v f − rL f i f
=
>
>
dθ
2πf
L
>
f
>
>
>
“
>
vf ”
1
dvf
>
>
:
if −
=
(j = 1, 2)
dθ
2πf Cf
R
ここで, j はインバータの番号であり, θ = ωt とする. また,
RSj はスイッチとして用いる MOSFET のドレイン・ソース間
の抵抗であり, 以下のように表現できる.
クタのインダクタンスの比
( 6 ) J = C01 /CD : インバータ 1 の共振回路のキャパシタ
とダイオードのシャントキャパシタの容量の比
( 7 ) Kj = ωL0j /R : L0 と R の関係
RSj
8
>
rs
>
>
<
= rSD
>
>
>
:
∞
Sj is in on state.
Sj is in on state and vSj < 0
(2)
Sj is in off state and vSj >
= 0.
( 8 ) D : スイッチの時比率. スイッチ S1 , S2 の時比率は等
しいとする.
一方, RD はダイオード D の抵抗であり, ダイオードの閾値電
—3—
表 1 回路素子の設計値
Calculated Measured Difference
LC1
2.39mH
2.65mH
10.4%
L01
23.9µH
24.0µ H
0.4%
Cs1
2.25nF
2.25nF
0.0%
C01
1.36nF
1.36nF
0.0%
LC2
2.39mH
2.51mH
7.3%
L02
23.9µH
23.6µ H
0.0%
Cs2
2.25nF
2.25nF
0.0%
C02
1.36nF
1.36nF
0.0%
CD
4.24nF
4.23nF
-0.2%
Lf
2.39mH
2.29mH
-2.14%
Cf
0.47µF
0.47µF
0.0%
R
10.0Ω
10.0Ω
0.0%
rs
0.16Ω
0.16Ω
0.0%
rD
0.5Ω
0.5Ω
0.0%
-1.0%
VI
ic1
ic2
Dr1
Dr2
vs1
vs2
i01
i02
vd
vf
f
1.0MHz
0.99MHz
VI
10.0V
10.0V
0.0%
図 7 回路実験で得られた位相制御状態における入力インダクタの
Vo
8.00V
7.84V
-2.0%
コアを結合した位相制御型 E 2 級 dc/dc コンバータの動作波
形 (φ = 25◦ , VI = 10V , Vo = 8V , R = 10Ω):Vertical :
VI = 10V/div, ic1 = ic2 = 1A/div, Dr1 = Dr2 = 10V/div,
vs1 = vs2 = 50V/div, i01 = i02 = 1A/div, vd = 50V/div,
VI
ic1
ic2
Dr1
Dr2
vs1
vs2
vf = 10V/div; Horizontal:400ns/div)
VI
ic1
ic2
Dr1
Dr2
vs1
vs2
i01
i02
vd
i01
i02
vf
図 6 回路実験で得られた位相制御状態における位相制御型 E 2 級 dc/dc
vd
コンバータの動作波形 (φ = 25◦ , VI = 10V , Vo = 8V , R =
10Ω):Vertical : VI = 10V/div, ic1 = ic2 = 1A/div, Dr1 =
vf
Dr2 = 10V/div, vs1 = vs2 = 50V/div, i01 = i02 = 1A/div,
vd = 50V/div, vf = 10V/div; Horizontal:400ns/div)
図 8 回路実験で得られた位相制御状態における入力インダクタに加
え, 共振回路のコイルのコアも結合した位相制御型 E 2 級 dc/dc
圧 vth を用いて以下の様に表現できる.
8
<rD for vd < vth
=
RD =
:∞ for v > v
d
th
コンバータの動作波形 (φ = 25◦ , VI = 10V , Vo = 8V , R =
10Ω):Vertical : VI = 10V/div, ic1 = ic2 = 1A/div, Dr1 =
Dr2 = 10V/div, vs1 = vs2 = 50V/div, i01 = i02 = 1A/div,
(3)
(1)-(3) 及び, 文献 [3], [10] の手法を用いることで回路の設計
値を導出することができる.
4. 回 路 実 験
vd = 50V/div, vf = 10V/div; Horizontal:400ns/div)
D = 0.5, H = 0.01, K = 15, Lf = 2.387mH, Cf = 470µH,
スイッチとして IRF530 MOSFET, ダイオード D にショット
キーバリアダイオード 11DQ04 を用いるため, vth = 0.0 V,
rs = 0.16Ω, rSD = 0.5Ω, rD = 0.5Ω となる. このとき設計
位相制御型 E2 級 dc/dc コンバータの設計仕様を以下の様
パラメータ A, B, J は A1 = A2 = 0.884, B1 = B2 = 0.604,
に与える. 動作周波数 f = 1.0MHz, 入力電圧 VI = 10.0V,
J = 0.321 と求められる [3], [10]. よって, その他の素子値は表
出力電圧 Vo = 8.0V, 出力抵抗 R = 10Ω, スイッチの時比率
—4—
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
2 choke coils and 2 resonant coils
1 choke coil and 2 resonant coils
1 choke coil and 1 resonant coil
0.2
0.1
0
8
ic1 + ic2
>
>
< Xc1 = L
ic1
>
ic1 + ic2
>
: Xc2 = L
ic2
1
Efficiency ǯ/ǯnom
Output voltage Vo/Vonom
1
0
25
50
75
100
125
150
0.9
0.8
0.7
0.6
となる. 同様に, 共振回路のインダクタを結合したときの共振
0.5
0.4
回路のインダクタのインダクタンス X0j は, 共振回路のインダ
0.3
0.1
0
クタ間の相互インダクタンスを M0 として以下のように表現で
2 choke coils and 2 resonant coils
1 choke coil and 2 resonant coils
1 choke coil and 1 resonant coil
0.2
175
0
25
50
75
100
きる.
125
150
175
Phase shift Ǿ [degree]
(b)
Phase shift Ǿ [degree]
(a)
8
i02
>
>
< X01 = L01 + M0
i01
>
i
>
: X02 = L02 + M0 01
i02
図 9 位相差に対する特性 (a) 位相差に対する出力電圧 V o/Vonom の
特性 (b) 位相差に対する電力変換効率 η/ηnom の特性
1
80
Efficiency ǯ/ǯnom
Phase shift Ǿ [degree]
90
70
60
50
40
30
2 choke coils and 2 resonant coils
1 choke coil and 2 resonant coils
1 choke coil and 1 resonant coil
20
10
0
1
1.2
1.4
1.6
1.8
2
2.2
2.4
2.6
2.8
3
Load resistance R/Rnom
(a)
(6)
(7)
特に, 結合したコイルが密結合の時は M0 = L01 = L02 となり,
0.9
M0 = L01 = L02 = L とすると
0.8
8
i01 + i02
>
>
< X01 = L
i01
>
i01 + i02
>
: X02 = L
i02
0.7
0.6
2 choke coils and 2 resonant coils
1 choke coil and 2 resonant coils
1 choke coil and 1 resonant coil
0.5
0.4
1
1.2
1.4
1.6
1.8
2
2.2
2.4
2.6
2.8
3
Load resistance R/Rnom
(b)
(8)
となる.
最適状態においては, i01 = i02 となり, (6), (8) において
X01 = X02 = 2L となるため, 設計値の 1/2 のインダクタンス
図 10
負荷変動特性 (a) 出力電圧 Vo = Vonom を得るための位相差
の特性 (b) 出力電圧 Vo = Vonom を得るための電力変換効率
を持つインダクタを結合することで設計値通りのインダクタン
スが得られる. しかし, それぞれのインバータの駆動電圧の位
の特性
相差 φ が変化したときは i01 = i02 となるためコイルを結合す
るとインダクタンスが変化する.
1 のように決定される.
自己インダクタンス L を持つ二つのインダクタを結合すると
き, コイルの結合係数を k とするとその相互インダクタンス M
4. 1 実 験 結 果
表 1 に回路素子の設計値, および回路実験で用いた回路素子
の測定値を示す.
は
√
M =k L·L
最適状態においてインダクタを結合しない位相制御型 E2 級
(4)
となる. ここで, 結合が密結合, つまり, k = 1 と仮定すると
M = L となる. 入力インダクタはチョークコイルとして働く
だけのインダクタンスを得らるようにインダクタを結合すれば
よい. 一方, 共振回路のインダクタは入力インダクタと比較し
てその値が厳密である. そのため, 共振回路のインダクタを結
合する際, それぞれのインダクタが設計値の 1/2 のインダクタ
ンスを持つように結合する必要がある.
ここで, 入力インダクタを結合した際の入力インダクタのイ
ンダクタンス Xcj は, 入力インダクタ間の相互インダクタンス
を Mc として以下のように表現できる.
8
ic2
>
>
< Xc1 = Lc1 + Mc
ic1
>
i
>
: Xc2 = Lc2 + Mc c1
ic2
% , 入力インダクタのみを結合したコンバータの出力電力及び
電力変換効率は 5.6W,84.9 %, 入力インダクタおよび共振回路
のコイルを結合したコンバータの出力電力及び電力変換効率は
6.2W, 82.1 % をそれぞれ達成する. φ = 0◦ において, それぞ
れのインバータの出力電流が同相となるため最大の出力電力が
得られる. インダクタを結合しても位相差 φ = 0◦ においては図
2 のインダクタを結合しないときとほぼ同等の波形が得られる.
図 6 にインダクタを結合しない位相制御型 E2 級 dc/dc コン
バータの φ = 25◦ の制御状態における動作波形を示す. また,
図 7 に入力インダクタを結合したコンバータの φ = 25◦ の制
御状態における動作波形, 図 8 に入力インダクタに加え, 共振
回路のインダクタも結合したコンバータの φ = 25◦ の制御状態
における動作波形を示す. φ = 25◦ の制御状態においては E 級
(5)
特に, 結合したコイルが密結合の時は Mc = Lc1 = Lc2 となり,
Mc = Lc1 = Lc2 = L とすると
dc/dc コンバータの出力電力及び電力変換効率は 6.1W, 89.1
動作条件を満足しない. また, 共振回路のインダクタを結合し
たときは, 共振回路のインダクタンスが小さくなることで共振
回路の共振周波数が大きくなるため, 共振回路の出力電流に高
周波成分が含まれる.
—5—
4. 2 位相差に対する特性
2
周波数 1MHz において出力電力 6.2W で電力変換効率 82 % 以
位相制御型 E 級 dc/dc コンバータは 2 つのインバータの駆
上を達成した. また, 回路面積を削減しつつ, 固定動作周波数下
動電圧の位相差を変化させることで出力電圧を制御する. 図 9
において出力電圧, 負荷変動に対して連続的に制御可能である
に最適状態における位相差に対する出力電圧及び電力変換効率
ことを明らかにした.
謝辞
の特性を示す.
インダクタを結合しない位相制御型 E2 級 dc/dc コンバータ
本研究は双葉電子記念財団研究助成, 日本学術振興会科研費若
は位相差を 0◦ から 135◦ まで変化させることで電力変換効率
手研究 (B) No. 17760296 の助成により行われたものである.
50% 以上を維持しつつ出力電圧を 100% から 23% まで制御す
ここに深謝の意を表する.
ることが可能である. 一方, 入力インダクタを結合したコンバー
◦
◦
タは位相差を 0 から 92 まで変化させることで電力効率 50
% 以上を維持しつつ出力電圧を 100%から 51% まで制御する
ことが可能である. 入力インダクタに加え共振回路のインダク
タも結合したコンバータは位相差を 0◦ から 81◦ まで変化させ
ることで, 電力効率 50 % 以上を維持しつつ出力電圧を 100 %
から 58% まで制御することが可能である.
以上より, 位相制御型 E2 級 dc/dc コンバータは高電力変換
効率を維持しつつ出力電圧を連続的に制御できることがわかる.
また, インダクタを結合した位相制御型 E2 級 dc/dc コンバー
タにおいては, 同じ電力変換効率を達成しようとすると, 制御で
きる範囲は狭いがインダクタを結合することで回路の小型化が
可能である.
4. 3 負荷変動特性
図 10 に負荷抵抗 R が変動した場合に出力電圧 Vo = Vonom
を得るための位相差, 及びその時の効率の変化を示す. インダ
クタを結合しない位相制御型 E2 級 dc/dc コンバータは電力変
換効率 53 % を維持ししつつ 300% の負荷変動に対して制御可
能である. 一方, 入力インダクタのみを結合したときの位相制
御型 E2 級 dc/dc コンバータは電力変換効率 49 % を維持しつ
つ 250 % の負荷変動に対して制御可能である. さらに, 入力イ
ンダクタに加え共振回路のコイルも結合したときの位相制御型
E2 級 dc/dc コンバータは, 電力変換効率 50 % を維持しつつ
200 % の負荷変動に対して制御可能である.
入力インダクタを結合した場合の動作波形は, 入力インダク
タを結合しないときの動作波形と一致する. 一方, 共振回路の
インダクタを結合した場合, 位相制御状態においてインダクタ
ンスが小さくなることで, 共振回路の共振周波数が大きくなる.
そのため, 共振回路の出力電流に高周波成分が含まれる. また,
スイッチ電圧波形が E 級動作条件を満たさなくなるため電力変
換効率が低下する. しかし, 提案したコア数を削減した位相制
御型 E2 級 dc/dc コンバータは回路を小型化しつつ固定動作周
波数の下, 出力電圧を連続的に制御することが可能であり, 負荷
文
献
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変動に対しても連続的に制御することが可能である.
5. ま と め
本研究では位相制御型 E 級インバータ及び E 級整流器から
構成される位相制御型 E2 級 dc/dc コンバータの設計を行った.
回路を小型化するために入力インダクタ及び共振回路のインダ
クタを結合することでコイルのコア数の削減を図り, その時の
特性の変化を実験的に考察した. 回路実験において入力インダ
クタ及び共振回路のインダクタをそれぞれ結合した場合, 動作
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