PEN ISSN 2185 - 3231 Public Engagement with Nanobased Emerging Technologies N E W S L E T T E R January 2012 Volume 2, Number 10 PEN January 2012 1 Table of Contents 特別寄稿 「食料自給率」 の謎………………………………………………… 3 特別寄稿 中国のナノテクノロジー研究開発の今……………………………… 6 連載 生物規範工学 第五回 物質文明からの離陸、 そして生命文明の創出へ……………………… 10 海外動向………………………………………………………………………… 19 速報 急成長する蘇州工業園区におけるバイオミメティックス研究の現状……… 26 国内動向………………………………………………………………………… 29 速報 第 2 期および第 3 期科学技術基本計画における ナノテクノロジー ・ 材料分野への研究開発投資の統計…………………… 34 Cutting-Edge Technologies プレスリリースより…………………………………………………………… 36 豊蔵レポートより…………………………………………………………… 44 台湾 ITRI レポートより……………………………………………………… 54 韓国 NNPC より…………………………………………………………… 58 MEMS 関連情報より……………………………………………………… 61 バイオミメティックス研究会より…………………………………………… 63 イベント案内……………………………………………………………………… 65 編集室より 「破壊的創造」 から 100 年、 大きな困難を前に………………… 71 編集後記………………………………………………………………………… 72 Column 雑木林の戦闘機、 スミナガシ…………………………………………………………………………… 18 Column 成人を祝う………………………………………………………………………………………………… 33 Cover:皆既月食 2011 年 12 月 10 日、10 年ぶりの皆既月食の当日は、西日本の一部を除き雲ひとつない絶好の 気象条件となり、最初から最後まで赤く染まる満月を観察することができました。月と地球の 距離が近いため、皆既月食は皆既日食とは異なり、日本のどこからでも観察することができます。 次回の皆既月食は 3 年後の 2014 年 10 月です。 2 PEN January 2012 特別寄稿 「食料自給率」の謎 東洋大学大学院 学際・融合科学研究科 教授 和田恭雄 日本の食料自給率がカロリーベースで 40%を切ったとい カロリーベースに算入される農産物は、たとえば米、小麦、 うことが話題になっている。これを 50%にしようという 大豆、トウモロコシが代表的なものであるが、この 30 年 方針を自民党政府が打ち出したら、何と民主党政府もこれ ほどの世界の標準価格は、リーマンショック前のバブル期 を継続するという。ところで、食料自給率は確かにカロ を除くと、いずれも 1 kg当たり、米が 20 ~ 50 円、小 リーベースでは 40%であるが、実は価格ベースでは 70% 麦が 10 ~ 20 円、大豆が 20 ~ 30 円、トウモロコシは となっていることを大部分の日本人は知らないであろう。 実に 10 円程度である。一方国内価格は米が 1 kg当たり すなわち、日本の農家は賢いので、価格の安いとうもろこ 200 ~ 500 円程度、小麦が 50 ~ 80 円程度と、国際価格 しや大豆などの穀物を作らずに、米や野菜などの価格の高 に比較し実に 5 倍~ 10 倍ということになる。これがカロ いものを選んで作っているというのが実態である。逆に言 リーベースで自給率 40%、価格ベースで自給率 70%の実 うと、日本人は平均で世界標準価格の倍以上する農産物を 態である。このような状態では国内の農業は太刀打ちでき 買わされていることになる。 「円高還元セール」などをスー るはずはない。また、農業従事者一人あたりの年間収入は パーがやれば、輸入された、国内の半分以下の価格の野菜 1995 年現在で 300 万円であるが、これでは新規労働力を や肉が売り出されているのを見ても実態が良く分かるであ 引きつける魅力には程遠く、老齢化、耕作地の放棄が進む ろう。それ以上に驚くべきことは、日本の田んぼの総面積 のも当たり前である。 は約 25000 平方キロであるが、そのうち現在耕されてい ない休耕田が 8500 平方キロと約 1/3 あり、休耕田を止 何故作物価格が世界標準の 5 ~ 10 倍であるのに収入がこ めさえすれば食料自給率は自動的に 60%になることであ れほど低いのであろうか。その理由は単純明快である。図 る。しかし日本の食料自給率の問題点の本質はこんなとこ 1 は 1995 年の各国の農業人口と穀物生産量の関係を示し ろにあるのではない。 たものである。日本の農業従事者数は約 300 万人で、 韓国、 PEN January 2012 3 農業人口(人) 中国 インド 1億 農業 インドネシア 生産 1 性: トン /人 ブラジル エジプト メキシコ 千万 ロシア アメリカ 日本 ドイツ イタリア 韓国 フランス 百万 アルゼンチン カナダ イギリス 1000 2 生 農業 4 産性 :1 ト 00 10000 2 ン/ 人 4 穀物生産量(万トン) 図 1:各国の農業人口と穀物生産量の関係。斜目の波線は農業従事者一人当たりの生産量を示す。 カナダ、米国は一人当たり年間 100 トン近く生産するが、日本は 3 トン程度である。収入を同 じにするためには価格を 30 倍にする必要がある。 米国とほぼ同じである。ところが、生産量は韓国の倍、米 1 トン以下程度である。すなわち、カナダ、米国と農業収 国の 1/20 ということになる。中国は従事者が 6 億人近く 入を同じにするためには日本では価格を 25 倍にする必要 と日本の 200 倍であるが、生産量は 20 倍程度となって があるが、実際には 5 ~ 10 倍であるから、収入は 1/3 ~ いる。斜めの波線は農業従事者一人当たりの生産量を示す。 1/5 程度になることは当然である。事実、米国の農業従事 カナダ、米国は一人当たり年間 100 トン近く生産するが、 者一人あたりの収入は 1000 万円を優に超える。 日本は 4 トン程度、中国、インド、インドネシアなどは 生産性(トン/人) 200 カナダ 100 アメリカ フランス イギリス 40 ドイツ 20 アルゼンチン イタリア 10 ロシア 日本 4 ブラジル エジプト 韓国 2 メキシコ インドネシア 1 中国 0.1 インド 1 10 100 一人当たり耕地面積(ha/人) 図 2:農業従事者一人当たりの生産量と耕地面積の国際比較。斜めの線は単位耕地面積当りに 生産される生産量が同一である線を示し、これより上にあれば生産性が高く、下にあれば低い ことを示す。たとえば米国、カナダなど「粗放式農業」の典型と考えられている国の生産性が 意外と高く、「集約型農業」の代表と考えられている日本がイギリス、ドイツ、フランスなどよ り低い事が分かる。 4 PEN January 2012 このような格差のある原因はなんであろうか。皆さんが小 ば、農産物価格が半分になっても一人当たりの年収が優に 学校時代に習ったように、日本は「集約型農業」で、農家 1000 万円を超えるため、十分に魅力ある職業として日本 が勤勉だから農地単位面積当たりの収量は高いはずだ。一 国内で農業が存立し得るし、また、農産物価格的にも世界 方、米国などは「粗放式農業」で、単位面積あたりの収量 に太刀打ちできる水準に近づく可能性のあることを示して は少ないのではなかっただろうか。本当だろうか? いる。統計を冷静に分析することが日本の将来への道を選 択するためには必須である。 図 2 は農業従事者一人当たりの生産量と一人当たりの耕地 面積の関係を示したものである。斜めの線は一人の農業従 事者が単位面積当たりに同じ量の生産を上げるいわば「等 生産性線」で、これよりも上にあれば単位面積からより効 率良く収穫することを示しており、下にあれば何らかの理 由で収量が少ないことを示している。日本は線よりも少し 上にあるが、 「集約型農業」と威張れるほど高いであろうか。 却って、イギリス、フランス、ドイツなどのヨーロッパ諸 国の方が高い水準にある。 「粗放式農業」 の代表である米国、 カナダはどうだろうか。おやおや、日本と余り変わらない ことが分かる。ロシア、ブラジル、メキシコ、アルゼンチ ンなどに比較すると相当勝ってはいるが、結局、図 2 は「粗 放式農業」でも、「集約型農業」でも単位面積当たりの収 量にそれほど大きな差はなく、農業経営の大規模化が農家 の収入を多くし、ひいては農産物価格を下げる唯一の解で あることを示していることになる。 10 年程前に筆者は米国ミシガン湖畔のシカゴからメキシ コ湾岸のヒューストンまで、約 2000 kmを飛んだ事があ る(無論飛行機で) 。2000 kmというと実に北海道から 九州までの距離に匹敵する。離陸直後から眼下には小麦、 トウモロコシ、大豆の畑がヒューストンに着陸するまで 2000km 延々と続いた。無論、飛行機からはどこに小麦が 植えてあるなどということは分らないが、それ以前に丁度 この空路の下にあるイリノイ州立大学シャンペイン校やイ ンディアナ州ラフィエットにあるパデュー大学を訪れたこ とがあり、その時、空港から大学までの道の両側が何マイ ルにも渡って全て大豆とトウモロコシと小麦畑だったばか りでなく、大学で一番高い建物に上って 360 度の地平線 を眺め、そこが全て大豆とトウモロコシと小麦畑だったこ とを知っていたからである。それにしても地平線まで延々 と続く畑の向こうから上がる日の出と地平線に沈む日没の 美しさは忘れられない。その時の経験が、日本の農業が生 き残るために何が必要かを考えるきっかけになった。平均 で高々 2ha 程度の田を耕してもこのような広大な耕地を 持つ農家に勝つのは不可能である。 現在、日本の農業は収入があまりに低いが、これは耕地面 積が世界標準に比較してあまりにも狭小なことに起因す る。このため、農業は若者には全く魅力ない職業になって いるが、上記の解析は経営規模を現在の 10 倍以上にすれ PEN January 2012 5 特別寄稿 中国のナノテクノロジー研究開発の今 “CHI Nano 2011” Conference & Expo - The Premier Nanotech Business Event in China (独)科学技術振興機構研究戦略センター 上席フェロー 産総研 特別顧問 田中一宜 1. "CHI Nano 2011" Conference & Expo - 会議概要と開催 International Nanovation Summit 2011(INS 2011)につ の背景 いては後述する。 観光都市「蘇州」は、中国がシンガポールの資本と共同し 中国全体としては、北京が基礎科学、大学の起業モデルな て、ナノテクノロジーやバイオテクノロジーの起業を国 ど全体戦略の中心。中国科学院の国立ナノ科学技術セン 際的に推し進める中国最大のナノテクノロジー産業都市、 ター(NCSNT)がナノテクノロジー研究開発のシンボルで ハイテク都市に変貌しつつある。17 年前にスタートした 日本の理研の性格。そして清華大学や北京大学が知の中心。 Suzhou Industrial Park(蘇州工業団地、SIP)の建設は拡 一方、蘇州や隣の上海は技術開発や国際的な企業拠点の中 大を続け、蘇州 600 万都市の中で 50 ~ 100 万人の工業 心であり、ポスドクや企業からのビジターを含め現在 800 団地に成長、大学や中国科学院傘下の研究所も招致して文 名の規模の中国科学院の SINANO はそのシンボル的な研究 教地区もインフラとして整備されている。この数年は、特 所で、性格は産総研に近い。蘇州は、東に上海、西に無錫 に、Nanopolis、Biobay を中心に急速に拡大している。そ (ウーシー)、南京と続く科学技術の東西ベルト上に位置し の中心に Suzhou Institute of Nano-Tech and Nano-Bionics ている。 (SINANO、サイナノと発音)という中国科学院(CAS)の 研究所があり、Suzhou Nanotech Co. Ltd がある。これら SIP は、つくば研究学園都市を一桁上回る規模である。巨 産学連携工業団地の構想は、1980 年代の中国の最高指導 大な近代ビル群は中華思想を想起させるが、エネルギッ 者鄧小平とシンガポールの初代首相リー・クアン・ユーと シュな急成長の一方で、やがて来る反動の予感も禁じえな の合意からスタートしたもので、1994 年に建設が始まっ い。以下、カンファレンスと EXPO 展示会の若干の詳細と ている。 感想を記す。 2011 年 10 月 27 ~ 29 日に江蘇省蘇州で開催された "CHI Nano 2011" Conference & Expo - The Premier Nanotech 2. CHI Nano 2011:カンファレンスと 4 つのパラレルミー Business Event in China -(CHI Nano 2011) は、 中 国 ティング 科学技術部(MOST) 、CAS、江蘇省人民政府の共催であ 6 り、中央政府の肝いりであることが明確。これは上記の歴 初日の 10 月 27 日には Plenary Meeting として 史的経緯 によるものと思われる。展示会と、お互いに独 ★ Opening Ceremony 立したワークショップやシンポジウムが同時に開催され ★ International Nanovation Summit(INS-2011) (Suzhou ているという点で、日本の ”nanotech Japan” と形式的に EXPO Center の大ホールを会場に、10 月 27 日の午前に 9 は極めて類似しているが規模は日本の方がはるかに大き カ国からの代表が講演)を開催。一方、以下の 4 つのセッ い。CHI Nano 2011 と同時開催され、筆者が招待された ションは、Jinji Lake Shilla Hotel の 4 会議場を使用して PEN January 2012 10 月 27 日午後と 10 月 28 日に同時並行で開催。 の私の友人 Geld Bachmann の名前を言うと、 「実は彼と一 ★ INS-2011 - Investing in Sustainable Technology(10 緒に仕事をしている」とのこと。冗談の好きな面白い人物 月 28 日のみ) である。ドイツの Action Plan(2011 - 2015)では 4 項 ★ MEMS International Conference 目を重視。Innovation, Safety & Sustainability, Potential of ★ Chinese Printed Electronics Symposium Education & Research, Solving Global Challenges。そして ★ China-UK Nano Materials Workshop 何よりも Full development of nanosystems により企業化 を目指す。ドイツでは 1000 以上のナノテクノロジー企業 オープニングセレモニー があり、1985 年以後に設立されたナノテクノロジー企業 初日の巨大会場(Expo センター)で行われたオープニン が 70%である。ナノテクノロジー産業の成長の鍵は、新 グセレモニーには、Nanopolis や SIP に関わった江蘇省幹 しい value chain を発見することにつきる。そのためにも 部、中央政府の科学技術部や中国科学院の幹部(朱星)ら 国際レベルでの密なコミュニケーションが必要で、そのよ が数 10 人、全体では学生も含めると 1000 人くらいの出 うな中から予想もしなかった value chain を見出すことが 席。Chinano(チナノと発音)というシンボル的名前でこ できると主張。 のイベントを引っ張る。オープニングセレモニーでは、蘇 州工業団地の関係者が表彰され、また、その様子や会場の フ ィ ン ラ ン ド 代 表 の Makku Lamsa は 筆 者 と 同 様、 多数の参列者をいくつかのテレビカメラが追った。明るい Funding Agency(Tekes という)に勤務。以前にも何回か 照明の中で、受賞者に降りかかる金紙や銀紙の紙吹雪がキ 会っている。フィンランドは人口 540 万人でシンガポー ラキラと光を反射して舞い、これ以上ないというくらい派 ルと同じ程度で、中国蘇州の人口よりも少ない。ICT と 手な演出であった。傑作なのはそのあとで、オープニング 森林産業でもっている国であるから Nokia の衰退は国の セレモニー終了とともに、聴衆は一気に半分以下になった GDP に大きな影響を与える。また、森林産業は紙の需要が こと。お偉方が参列するので動員されていたのであろう。 減少すると大きなダメージを受ける。インターネットで総 ての情報が取れるようになると紙の需要は減る。このよう International Nanovation Summit 2011(INS-2011) な深刻な問題を抱えている。 オープニングセレモニー終了後、そのままメイン会場にて 国家投資は次の二つに向けられる。 スタートした。9 カ国の代表がナノテクノロジーの産業化 における政府の役割について、それぞれ基調講演。 中国科学技術部基礎研究局の局長 Xianen Zhang 氏が流暢 (1)"New knowledge and Innovations from Research" projects, (2)"Young Innovative Enterprise" focuses on global な英語で中国の科学技術の進展ぶりを、統計数字を示しな growth. がら講演。例によって論文については統計で中国の急進を 新しい value chain を見つけて起業投資をするのが最も重 語ったが、引用の多いナノ論文については日本がトップで 要な課題。フィンランドにおける昨年の job increase の あるとも紹介。ナノの標準にも話が及び、長時間を使った 90%は中小企業の成長によるものであった。 為、以後のスピーカーの時間から質疑応答が削られた。 イ ス ラ エ ル の 代 表 は Yuhuda Yarmut 氏。 イ ス ラ エ ル の 筆者の講演では、本論に入る前にスライド 1 枚を使って東 ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー は、Israel National Nanotechnology 日本大震災への各国からの支援に対するお礼のメッセージ Initiative(INNI)により産学連携を通してイスラエルの成 を伝えた。本論は、ナノのシステムへの進化、科学と技術 功産業の新しい波を作り出すこと。6 つの世界的レベルの を集積して課題解決に対応するための機能設計(Functions 研究機関、325 の研究グループ、700 人の研究者、80 の Design)と工学(Engineering)の重要性、それを支持し ナノテクノロジー会社(特にバイオナノテクノロジー)が incentive を与える科学技術政策の重要性を指摘し、8 月に 活動している。日本からは Kodak がイスラエルに拠点を 内閣承認のおりた第 4 期科技計画の基本方針を紹介した。 持っている(www.nanoisrael.org)。国の法律により、知 財管理はきびしく、原則、外には出さないと言っていた。 ドイツ代表の連邦教育研究省ナノ・新材料部門副部長 Yarmut 氏は、南洋工科大学のイノベーション事業オフィ Ingo Hollein 氏は、会場で私の隣に座っていたが、私に ス(NIEO)に籍(事業・技術開発部長)を置き、その活 「考え方についてお前と本質的に重なる部分が多い」と一 動の舞台はほとんどシンガポールだとのことである。 言。ドイツは、科学技術レベルや産業技術の国際的地位が 日本に類似しているせいか彼の話は自然に耳に入った。彼 米国代表は全米科学財団(NSF)の Barbara Karn 氏。米国 は私の顔をどこかの会議で何度か見て覚えていた。ドイツ のナノテクノロジーの環境・健康・安全(EHS)のプログ PEN January 2012 7 ラムディレクター。米国の NNI は 2011 ~ 2015 年にお 他、多くの地元関係者が挨拶に立ち、大きな中華用の丸 いて(1)世界的研究、 (2)産業化ステージへシフト、 (3) テーブルを囲んで各界代表が話し合うという賑やかな夕食 教育、(4)責任ある開発、を目標。EHS に対する基本姿 会であった。蘇州工業区の重鎮たちも多く顔をそろえてい 勢は(1)reactive to existing problem、 (2)pro-active to た。料理は私の好みではなかったが、気候がよかったので prevent future problem で、①環境問題を解決する技術の Banquet が終わった後、韓国代表の Hak-Min Kim 氏と夜 開発、 ② EHS 上問題のないナノ製品の製造を目指している。 道を 40 分歩いて Shilla Hotel に帰った。 中 国 代 表 は 北 京 大 学 の Assistant President で あ る Xing INS 2011 – Investing in Sustainable Technology(10 月 28 Zhu 氏で、 ナショナルセンター (NCNST) の副主任でもある。 日) 頭の回転が速く、英語も流暢。2 カ月前にも一度会ってい Angel Investment 代 表 の Qing Liang 氏 は、 ナ ノ は 分 る。彼は標準化の担当で、 MOST、 MOE 両方に関与している。 子レベルで自由にものを設計できることが革命的であ 2011 年は、MOST だけで総額 1 億ドル、計 20 プロジェ り、 今 後 の 進 展 大 い に 期 待 し て い る。 し か し、 ナ ノ テ クトの投資。北京の NCNST は研究だけでなく user facility クノロジーへの投資は全工業化過程を含むので困難が としての機能も持つ。100 以上の大学にナノテクノロジー 伴 う。 氏 の 指 摘 す る 困 難 は、(1)long-term R&D、 (2) 研究所があり、CAS の各研究所にも設置。つい最近までの Substantial investment(Venture capital プラス Industrial MOST のナノテクノロジー研究は、全くの自由研究であっ investment)、(3)high risk and competition。Angel たが、2011 年からは、エネルギー・環境他にいくつかの Investment として投資は 200 万ドル以下にして長期間 領域を指定した。 サポートをし続ける。産業への投資は国、地方などの公 共体の援助と装置会社の援助が必要である。その他に、 ラウンドテーブルなど、セッションを離れての議論 Michelle Bellanca 氏(3M、日本滞在経験あり)、松重和 このあと、Jinji-Lake Shilla Hotel に場所を移して、ランチ 美 氏( 京 大 )、Y.C.Choi 氏( 韓 )、Tony Chao 氏(Applied を食しながらの円卓会議が行われた。Shilla Hotel は韓国 Ventures、米)、Linsen Chen 氏(SVG Optronics)らが発 サムスンの資本で経営しているので、従業員に韓国人が 表。Linsen Chen 氏 の “Flexible Nano Manufacturing and 多い。司会は Nanovation Summit の主催者の一人である Industrial Applications” は大変すぐれた発表で、ロールツー NanoGlobe の Lerwen Liu 氏。 ロール製法、三次元像表示、三次元印刷など創意に溢れて いた。 蘇州 Nanopolis(工業団地 4 つの核の 1 つ)における企 業活動の中心人物で Suzhou nanotech Co.Ltd 社長の Xijun フィンランド国家ナノテク・クラスタープログラムの Zhang が全体の詳細説明。Nanopolis は色々な機能を持つ Eeva Viinikka 氏は、欧州連合(EU)の第 7 次研究枠組み ナノテクノロジーコミュニティであり、米国オハイオ大学 計画(FP7(2007 ~ 2013 年))で、研究と産業をつなぐ や北京大学などのナノテクノロジー研究所も設置されてい 要因についてアンケート(Nano Com)調査を実施。EU の る。また、Lamsa(Tekes)は「フィンランドは SIP と強 250 のナノテクノロジー企業(50% が従業員数 1 ~ 49 人) い関係を結んだヨーロッパ初の国であり、280 のフィンラ に成功の要因を聴いた。要因としては 4 つ、①市場と戦略、 ンドの会社が中国で事業を行っている」と報告した。江蘇 ②消費者との早期の交流、③ IPR の管理、④サービス、で 省と蘇州は、産業化の最優先対象にナノテクノロジーを選 ある。特に、サービスは全ての段階で重要と認識されてい んだことを宣言した省であり、都市である。都市の起業の た。ヨーロッパではリスクの対応も重要要因のひとつ。多 ためのあらゆるサービスを効率的に行う機能が SIP には備 くの顧客企業と交流し相手のニーズを知り、ナノテクノロ わっている。米国在住の中国人が起業したり、中国の大学 ジーの付加価値を発見すべきであると説いた。40 才前後 の起業が多いという。 の長身の女性で、蘇州旧市街を観ての別れ際、 「あなたと は名刺を交換していなかった。会えてよかった。」と名刺 その日の Banquet は少し離れた場所にあるホテルで行われ 交換。上品な笑顔の外交官ぶりである。 た。最初に、米国から招待されていたシカゴのナノテクノ 8 ロジー関連の会社代表が、現在米国で最も活躍しているナ 中国上海の I. P. Considerations の Esther Lim 氏は、原稿 ノテクノロジーの研究者としてノースウエスタン大学教授 なしで数枚のスライドを使い、常に聴衆に顔を向けてゆっ で、かつ米国 PCAST メンバーで、しかも NANO INK 発明 くり歩きながら話す。素晴らしい講演者であった。海外に 者である Chad Mirkin 氏について、“NANO PROFESSOR” 出ると、Lim 氏のような女性の活躍ぶりにいつも驚かされ プログラムの話など、スライドを使って紹介した。その るが、ひるがえって日本の男女共同参画の実態について PEN January 2012 は反省せざるを得ない点が多々あるだろう。IP について、 建物であった。EXPO センターも例に漏れず巨大建造物で 1975 年のナノテクノロジーベンチャーの資産は 83%が あり、建物全体を写真に収めるのが難しいくらいである。 有形資産、しかし、2009 年には 19%に減り、ほとんど 中華思想の押しつけのようにも見える。しかし、EXPO セ が無形資産(81%) 、つまり知の集積としてのノウハウ ンターのナノテクノロジー展示会へ足を運んで気づいたの や IP 関連が資産になっている。清華大学はカーボンナノ は、それほど多くの見学者がいないことであった。むしろ チューブ(CNT)を使ったタッチパネルを発明、 それを使っ 閑散としている印象さえあった。SIP は現在も膨張を続け て FOXCONN は大量生産を始めるとの報告があった。 ていて、土地が足りなくなっているとの説明を受けたが、 大きな成長エネルギーがいまだ衰えていないという一方、 一部で報道されているように地方政府の過剰投資という一 3. 蘇州工業団地の見学など 面も疑われ、今後の SIP に多少の不安も感じた。 最初に記したように、SIP は鄧小平とリー・クアン・ユー 私は 1984 年、初めて中国科学院の招待で中国を訪れた。 の合意の下で 1994 年に建設が始まり、現在は 50 万人を 上海、北京で、午前中に 3 時間の講演をする毎日であっ はるかに超えるニュータウンが現出している。しかし、も たが、その間に蘇州の寒山寺に連れていってもらった。 ともと蘇州は水の都として昔から有名で、工業団地も Jinji 1995 年南京大学に招待された時にも、蘇州を訪れた。今 湖周辺など水辺を中心とした美しいハイテク都市の拡がり 回は、その姿を全く変えた蘇州を経験した。それでも旧い の中に位置している。湖畔の大観覧車や遊園地に隣接して、 蘇州の街が保護されている地区を訪ね、弦と謡によるライ Nanopolis、中国ナノテクノロジー大学科技圏、ナノテク ブで、張継の有名な詩「楓橋夜泊」を聴いた。七言絶句の ノロジーインキュベーション基地などが集積されている。 第三行目は「姑蘇城外寒山寺」である。しかし、同行の中 つくば研究学園都市に類似した雰囲気があり、ただそれよ 国人はこの詩を知らなかった。昔の運河がそのまま残る旧 りも新しく美しく、そして規模については人口から推察す 市街の細い道を全電化されたバイクが音もなく行き交い、 ると一桁大きいのではないだろうか。北京大学や南京大学 水辺では日本の若者と変わらぬ服装の若い男女が夜遅くま のナノテクノロジーセンターも設置されていて、中国科学 で徘徊していた。 院の SINANO(ナノデバイスとナノバイオの蘇州ナノテク ノロジー研究所)が中心になって研究と起業家のリエゾン を務める。 "CHI Nano 2011" Conference & Expo - The Premier SINANO は 2006 年に設置され、2008 年に蘇州に移った。 http://www.chinanoconf.com/ Nanotech Business Event in China 公式ウェブサイト 地方政府と中国科学院が共同建設で現在 500 人の研究者、 250 人の学生、50 人のポスドクがいて、今後、増加の方向。 環境、エネルギー、バイオ(DNA チップなど) 、テラヘル ツデバイス、ナノ技術、など広くカバー、集光型多接合太 陽電池(Ⅲ - Ⅴ族結晶)で効率 42%を達成した。かつて の電子技術総合研究所と規模や分野がよく似ている。 SIP を国際的な産学連携都市としてつくばと比較すると、 SIP には当初からインターナショナル・スクールが設置さ れているという特徴があり、海外の研究者の子女を受け入 やすい環境がかなり以前から整っている。国際戦略に長け たシンガポールのノウハウが反映されているのであろう。 一方、つくば研究学園都市では、設立から 30 年以上経つ のに海外子女のための教育インフラが大いに不足、一部の 篤志家に頼らざるを得ない状況が今も続いている。 この地区の建物は実に巨大である。SIP の全貌が模型やパ ネルを使って展示されている記念館も、内部に映画館その 他のエンタティメント施設を含んでいて内部空間が巨大な PEN January 2012 9 連載 生物規範工学 第五回 物質文明からの離陸、そして生命文明の創出へ 東北大学大学院環境科学研究科 石田秀輝、古川柳蔵、須藤祐子 1. 東日本大震災から学ばねばならないこと 円に達するという [1]。漁業生産においては金額ベースで 全国シェア 15%、漁獲量ベースで同 20%、水産加工業で 2011 年 3 月 11 日 14 時 46 分、 日 本 観 測 史 上 最 大 の も事業所数で 14%、被害漁船の漁船隻数に対する割合は, M9.0 の地震が東北地方を襲った。 震源は三陸沖、北緯 宮城県 87%、福島県 71%と壊滅的な被害を受け、水産業 38.1 度、東経 142.9 度、深さ約 24㎞、断層が破壊した震 の被害額は 1.07 兆円となっており、農林水産関係被害額 源域は岩手県沖から茨城県沖までの南北約 500km、東西 の 38%を占める [2]。しかし、食料自給率 39% の我が国 約 200km に及び、発生した津波は、三陸海岸を中心に沿 にとっては、極めて深刻な被害であるにもかかわらず、将 岸域を壊滅的に破壊し、2 万人を超える死者・行方不明者 来にわたる議論が希薄なのはなぜか?それは、あらゆるも (2011 年 12 月現在 ) を出した。さらにはエネルギー行政 のを経済価値でしか測らないところにあるように感じる。 の目玉でもあった福島第 1 原子力発電所を破壊し、今後半 日本の GDP に占める 1 次産業比率は 1.5% にも満たない、 永久的に対応が求められる被害を生み出してしまった。 しかしながら、第 1 次産業は人間の生命にかかわるもので あり、それが壊滅すれば、2 次産業も 3 次産業も存在でき 津 波 は、 場 所 に よ っ て は 波 高 10m 以 上 に お よ び、2 万 ないのである。1961 年に施行された農業基本法がその発 2000 隻以上の船と 300 以上の漁港を破壊し、農地 2 万 端ではあるのだろうが、今一度その価値を測るあたらしい 3600ha を壊滅させた。被害総額は 16 兆 ~ 25 兆円(阪 物差しが必要である。 神淡路大震災の 2 ~ 3 倍)で、これは福島・宮城・岩手 県の県民経済計算 20 兆 7130 億円 (2007 年 ) とほぼ同額 我々は、2030 年頃地球環境に関わるリスクが限界に達し、 である。 自らの手で文明崩壊の引き金を引く恐れさえあることを述 べてきた [3]。これらエネルギーシステムの壊滅、インフ この震災によって、ガス、ガソリン、石油、電気などのエ ラの寸断、食料供給の甚大な被害はまさに、2030 年を現 ネルギー供給システムは壊滅し、東北電力管内への電力供 実に見ている想いでいる。20 年早く 2030 年を見てしまっ 給は 12 月現在でもやっと震災前の 6 割までに復帰したと たともいえる。したがって、この震災を越える術そのもの ころである。インフラである交通網、通信、上下水道は寸 が 2030 年の地球環境問題に正対することであり、知を結 断され、下水道はまだ復帰の目処さえ立っていないところ 集してこの問題を解決しなければならない。 が多く残されている。 また、日本最大の豊かな食料供給地域は甚大な被害をこう 2.テクノロジーの役割とは何か むった。日本には 5 つの食料自給率 100% 以上の道県が 10 あるが、そのうちの 4 県は東北地域にある。岩手、宮城、 東日本大震災で進歩していると信じていた文明はガラガラ 福島の耕地面積は 440,100ha( 日本の耕地面積の 9.6%) で と音を立てて崩れていった。しかしそのなかにもきらきら 日本の米の 13.1%、野菜の 5.1%、畜産の 9.2% を供給し 光るものを見つけることが出来た。それは、絶望のなかに ている。これが大きな被害を受け、その被害額は 1.77 兆 も笑顔を絶やさず、1 日にたった一つのおにぎりの配給に PEN January 2012 も有難うと言える人たちであり、その人たちが持っている 活動の最も小さな単位がライフスタイルだとすれば、今こ 生きるための技や道具であった。 そテクノロジーがライフスタイルに責任を持つあたらしい 時代を迎えなくてはならないともいえる。 東日本大震災は我々にあらためて問いかけているのであ る。それは、地球環境問題に正対するということはどうい テクノロジーに関しては、もう一つ考えなくてはならない うことなのか? 心豊かに生きるということはどういうこ 面がある。例えば、今回の震災で、釜石市の防波堤が壊滅 となのか? そしてこれら 2 つに対して、テクノロジーは 的に破壊された。30 年の歳月と 1200 億円をかけて 2 年 どのように貢献が出来るのか?と云うことである。 前に完成し、深さ 60m 以上の海底から立ち上げた世界で も類を見ないほどの巨大な防波堤で、2010 年には「世界 そもそも地球環境問題とは何か、それは地球温暖化やエネ 最大水深の防波堤」としてギネスブックに登録された。湾 ルギーの枯渇ではない。すでに、 議論してきた [3,4] ように、 口防波堤として地震や津波に対する被害を防いで、市民の 社会科学的な問題を除き、我々は 7 つのリスクを抱えてい 命を守るという崇高な目的を持っていたはずであるが、現 る。それは資源・エネルギーの枯渇リスクであり、生物多 実には、その役割を果たすことはできなかった。巨大堤防 様性の劣化リスクであり、水や食糧の分配リスク、急激に は浸水を 6 分遅らせ沿岸部の津波高を推定 13m から実測 増加する人口、地球温暖化に代表される気候変動のリスク 7 ~ 9m に低減させたともいわれていることを否定するも である。これらのリスクは、各々極めて重要であるものの、 のではないが、一方では、全く何も被害を受けなかったか 100 年前に人類の存在を脅かしていたのだろうか?もちろ のように海岸沿いに整然と残っている松並木もある。焚火 んノーである。この 100 年、いやこの 50 年で急激に大き の火は消せても、コンビナートの火は消せても、原子力発 なリスクとなって人類の存在を脅かしはじめたリスクなの 電所の暴走を止めることはできなかった。原子力の火を消 である。では、地球環境問題とは何か、それは本来リスク すことはできなかったのである。18 世紀のイギリスでの ではなかったこれらの 7 つをリスクにしたもの、そして、 産業革命以来、多くのテクノロジーが自然と対峙する形を それは間違いなく人間活動の肥大化なのである。地球環境 取ってきた。そもそも、イギリスでの産業革命の成功は自 問題とは、人間活動の肥大化であり、この肥大化を如何に 然との決別を原理としたものであれば、これも当然のこと 停止・縮小出来るかを問われているのである。さらに、停 ではある。しかし、今回の震災は、現在のテクノロジーで 止・縮小だけが目的であれば、テクノロジーの役割はない。 は力任せに自然をねじ伏せることなど到底できないことを 教育も企業も不要である。あらゆるものを配給にすればよ 改めて認識させた。 いのだから。重要なことは、心豊かに生きることを前提と して、人間活動の肥大化を停止・縮小出来るか否かが問わ 自然と対峙するのではなく、自然を生かし、自然を往なす、 れているのである。 自然観を持った、あたらしいテクノロジーのかたちが今こ そ求められているのである。 人間は悲しくなると命を絶つ生き物である、その結果年間 3 万人を超える人たちがこの豊かだと言われる社会で自ら 命を絶っているのである。心豊かに生きることを担保しな 3.自然観を失わなかった日本の産業革命 がら、人間活動の肥大化を如何に停止縮小出来るのか、す なわち、地球のこと(循環型社会)と人のこと(生活価値 自然との決別を原理としたイギリスの産業革命が世界を席 の不可逆性 : 人間の欲のかたち [3] を同時に肯定させるこ 巻する中で、自然観を持ち続けた日本人、そしてその自然 とだけが解であり、それこそが持続可能な社会の創出条件 観を基盤に江戸時代に完成した勤勉革命、この両者の融合 でもある。そこにこそ、テクノロジーのそして企業の役割 が、意気の概念を創り上げ、イギリスより 100 年近く早 があるのである。 く日本の産業革命を推し進めたのではなかろうか。そして 自然観を持ったテクノロジーの創出とは、この意気の概念 では、現在のテクノロジーはその責を全うしているのだろ をテクノロジーに写すことなのだろうと思う。そもそも、 うか?例えば、革新的なエコテクノロジーが市場に大量に この国は自足の国であった、もちろん人口も増え多くのも 投入され、生活者の環境意識が極めて高いレベルにあるに のが変化してきたことは事実である。それを前提にしても もかかわらず、日本では環境劣化が加速している(エコ・ いつからこの国は無資源、無エネルギー、無食料国になっ ジレンマ [5])。そこには、テクノロジーが人のためにでは たのか、次世代への責任としてこれに解を示すことも我々 なく、テクノロジーのために進化し、それを必死に人間が の大きな責任である。 サポートするという滑稽とも思える形が見えてくる。人間 PEN January 2012 11 我々の DNA に組み込まれている自然支配の思想が、産業 命を繋げていることを知っている。我々は自然を支配する 革命を契機に、地下資源文明を創り、結果として現在の地 などとは程遠い概念を自然に対して持っているのである。 球環境問題を起こしてしまった。では、我々は、この自然 支配の思想から逃れられないのだろうか? どうやら、ア テクノロジーが自然支配の思想の基に、現代の環境問題を ジア地域にはその解があるらしい。とりわけ、日本という 誘発したのであれば、現在の環境問題へのアプローチは、 特異な環境の中で培われた日本人独特の自然観が、あたら テクノロジーにおける自然観の再認識であり、自然と人間 しい可能性を示してくれることになりそうである。 との関わりをあらためて考えることであり、これを基盤と したテクノロジー創出にあるのではないかと思う。そして 稲作農業と養蚕を生産の基礎とするユーラシア大陸東方文 そのような解を創出できるのは極めて高い自然観を持つ日 明はヨーロッパ近代哲学の人間中心思想、自然支配の思想 本人なのではないかと思うのである。 が希薄であったらしい。安田嘉憲は西方文明を創った民を 畑作牧畜民、東方文明の民を稲作漁労民と呼び、その決定 歴史学者 J. トインビーは、16 ~ 20 世紀のすべての文明 的な違いは、水の確保にあると言う [6,7]。稲作には、水 が科学技術の前に全面降伏してしまったが、世界を征服し が必要であり、水を蓄える森が必要であり、結果として、 たのは物質原理だけであり、世界を統一する原理に大きな 森の神の殺害などは起こらないのである。畑作牧畜民で 空白があることを看破した [8]。今、われわれはテクノロ あった古代メソポタミアの王ギルガメッシュの物語である ジーを否定するのではなく、この環境制約を満足できるあ ギルガメッシュ叙事詩では、王が最初に行ったのは森の神 たらしいテクノロジーの創出が望まれているのである。そ フンババの殺害であるとしている。そして、6 世紀に大乗 れは、自然を支配することによる際限のない欲望の拡大の 仏教が入り平安時代の終わりに最澄、空海の思想が結びつ 結果生まれた物欲から、自然と和合し欲の拡大を内なるも くことにより、日本型仏教として確立し、鎌倉時代に完全 のに求める精神欲の創出をすすめるテクノロジーなのであ に日本化したが、その共通の思想は 「天台本覚論」 であり、 る。 その思想の中心は「山川草木国土悉皆成仏」 、すなわち山 も川も草木も土もすべてが物性を持っているという悉有仏 この日本人の自然観こそが、あたらしいテクノロジー創出 性の概念が流れている。ここには、人間優位の思想はもち の力となり、生命文明を支える日本発世界標準テクノロ ろん、動物優位の思想も無い、人間を含めあらゆるものが、 ジーと新しいライフスタイルを創り上げることができるの 同じように生きているという概念である。このような考え である。 は、日本の縄文時代以来の土着の信仰、すなわち生きとし 生けるものは全て平等で共通の命を持っているというもの 日本には自然を理解する独特の概念がある。それは、神道 と同じ思想であり、仏教そのものが日本の土着信仰に変質 における「八百万の神」であり、仏教の「山川草木国土悉 し、日本型仏教として確立するのである。同時に、本地垂 皆成仏」で表現される自然観である [9]。それは、人間を 迹を初めとする神仏習合のさまざまな形態が展開されるこ 含むすべてのものが同価であらゆるものに仏性や神の心を とになる。 宿していることを示している。そのような自然に畏敬の念 を抱きながら生きることを楽しむ、言い換えれば、自然と このような自然に対する観念を日本という独特の自然環 和合し、地球に負荷をかけることなく精一杯生きることを 境がさらに強めたのではないかと思う。日本は地面が揺 楽しむことである。それが、具体的な生活文化としての形 れる国である、そして緑は人を襲ってくる。抜いても抜い を成したのが、江戸の「意気」 (いき)な文化なのではな ても生えてくる草、それがまさに日本の緑であり、国土の かろうか。 67%を森林が占める力なのである。ヨーロッパでは 12 世 12 紀の森の大開墾を経て、英国では 90%、ドイツ 70%、ス 日本が第一次鎖国令を出したのは 1633 年家光の時であっ イス 90%の森が失われた。それほど日本の緑は強く逞し た。ただ、その後もオランダ、中国、朝鮮との交易を続け、 いのである。欧米では神聖な場所、例えば教会の敷地には、 すべてのものを国内調達で賄うことが出来るようになった 緑の芝生が敷き詰められる。一方、日本の神聖な場所は、 のは 1800 年頃で、その頃やっと鎖国が完成したことにな その緑を排除し、結界をつくるかのように、神社であれ、 る。3 千万人を超える人口を国内調達だけで維持するため 仏閣であれ玉石が敷かれる。日本の緑は圧倒的に強いので には大変な努力が必要で、この成功は勤勉革命とも言われ ある。川も然り、龍神の住む川は一旦、大雨が降ると怒り、 ている [10,11]。それは、資本の節約のために労働力を集 あらゆるものを飲み込んでしまう。日本人にとって、自然 約し、土地の生産性を上げることによる生産革命でもあっ は畏怖されるべき存在であり、一方ではそのお陰で我々は た。これは、イギリスの産業革命と対照的である。イギリ PEN January 2012 スの産業革命は、工業を主導として資本を集約し、機械を 単に捨てる訳には行かず、一生大事に使いたくなってしま 徹底的に導入することによる労働節約 ( 資本集約 ) で、大 う、これが日本のものつくりの原点なのである。 量のものつくりに繋がったのである。 そのような、自然と和す暮らし革命から、江戸期には多く 勤勉革命の成功は、ものを粗末にせず、結果としてそれが のテクノロジーが生まれ、日本の産業革命を創出したので 資本の節約につながった。そのためには、馬や牛を減らし、 はないかと考えている。 その代わりを人間がやるという、極めて過酷な労働を強い られる道を選んだとも言える。では、それが我慢や不健康 江戸時代は、高度に醸成された日本人の持つ自然観がテク で心が荒むような文化に繋がらなかったのは何故か? そ ノロジーと融合し、庶民のものとなった、恐らく世界でも れは、あらゆるものに神が宿るという日本人の自然観の成 極めて特殊な形態を生み出したのである。そこでは、遊び 果だと思う。あらゆるものに心を写すことが出来る日本人、 の中に生まれた無意識の技、人に喜ばれる技に価値が認め 物に感情が宿ることを躊躇うことなく信じられる日本人、 られ、自然に鍛えられた精神文化が、生きることを楽しむ それが牛を減らして、その代わりに人間が働くことさえ厭 ために物欲ではなく、精神欲を煽るエンターティメントの わない勤勉革命を成功させ、同時に後述する圧倒的な審美 ほうを選んだといえる。まさに、ここに「文化を纏ったテ 観を育てたのだと思う。 クノロジー」が生まれたのであり、自然観を維持したまま の産業革命が起ったのではなかろうか。 江戸期は、265 年間、世界でも例を見ない戦争が無いとい う特殊な時間の中で、文化が発達し、テクノロジーが戦争 そして今もそれは日本人の中に熱く流れているはずであ のためにではなく庶民のものとなり、世界ではじめて庶民 る。少なくとも東日本大震災震災後、多くの人達の中で金 の中で発達した、極めてまれな時代である。 融資本主義という化粧がはがれる中で、間違いなくそれは 確かに息づいていた。化粧がまた塗りたくられる前に、そ 自然の「もの」を自分たちと同化とみなし、共感できる存 の素顔の美しさを何とか取り戻さねばならない。 在としてそれを通して自身の心、風情を表現することを可 能にしたのである。欧米では、 人間と対立構造にあるロボッ イギリスでの産業革命とそれよりも 100 年以上早く起こっ トに対しても、日本では愛称をつけて呼び、工場の作業用 た日本の産業革命の違いをもう一度考えて見よう。イギリ ロボットは磨き上げられ担当者はそのロボットと話も出来 スでは、産業革命により大量にものが生産できるようにな る ・・・ ひな壇に飾られている人形は「御雛様」と呼ばれ、 り、また広範囲に物を運ぶことができ、同時に人の移動を 人形に「御」と「様」までつけて擬人化してしまう。車は も可能にし、社会構造は大きく変化した。では、日本はど いつもピカピカに磨き上げ、正月には御飾りをつけて走る うだったのか?すでに述べたように、多くの精緻 ・ 精密な ことに全く違和感を持たないのは、人の心を「もの」に移 テクノロジーが生まれたが、その多くはエンターティメン すだけでなく、すべての「もの」に神が宿ることが意識せ ト、あるいは、遊びの域を出なかった。では、イギリスの ずとも私たちに染み込んでいるからだと思う。 産業革命は革新的で、日本のそれは遅れていたのか。どう もそれは違うように思う。テクノロジーを使って長距離を そういう意味では、日本にとっての「もの」とは、西洋人 移動することも、大量に食糧を生産することにも、きっと の言ういわゆる物質的なものではない。 「もの」は、自然 あまり興味を持たなかったのではないか?もちろん、生き と人間の橋渡し役のようなものなのである。これは、キリ てゆくという上では日本が豊かであったことは前提である スト教の場合のように神が橋渡しとなって人間と人間がつ が、生活が維持できれば、それ以上の金を求めず、いかに ながるという概念とは大きく異なる。欧米の思想では、物 楽しく遊ぶかを最優先に考えていたようである。まさに、 質は地にあり、精神的なものは天にあるが、日本では物質 勤勉革命を基盤としたものつくりのかたちである。そして 的なものも精神的なものも一体となって地上に存在するの その中で、テクノロジーは文化的な遊びの中に生まれた無 である。 意識の技、人に喜ばれる技に価値が認められ、自然に鍛え られた精神文化が、生きることを楽み、物欲ではなく、精 ロボットでも、箸一膳にでも、あるいは、はらはらと落ち 神欲を煽るかたちで醸成されたのである。 てゆく枯葉にもすべてのものに神が宿り、そして私たちは それに心を移すことができるのである。だからこそ、日本 織物、塗り物、細工等、あらゆるテクノロジーが芸術の粋 の「ものつくり」は、心をこめ、丁寧に命を注ぎ込むこと まで高められ、その手工業的な技が現在の日本の技術の根 を良しとしたのであり、こうやってつくられたものを、簡 底となる基盤を創り上げたと言っても過言では無いと思 PEN January 2012 13 う。それほどまでに、江戸の社会は成熟し、その中でテク 間がサポートしているという滑稽な姿も見えてくる。テク ノロジーは醸成されたのである。遊びが社会の本流となり、 ノロジーも学問も、いつの間にか人を豊かにするという役 大量生産では無く、高度な文化創りに貢献して行ったので 割を忘れてしまった。 ある。 そして今、日本を含むすべての先進国は物質文明の頂点に 多くの日本を訪れた外国人がこぞって驚いたのは、日本の いる。そして、このままでは今の文明さえ維持できないこ 清潔さであり、貧しい暮らしをしている人たちが使ってい とも十分に分かっているはずである。それなのに、いまだ る生活用品さえ芸術品に見えたことであった。柳宗悦はそ に物質に頼り、量に頼るものつくりが唯一の解であるかの れを、日常生活品は無銘であり、だからこそ自由である。 ように夢を追い、その結果今までよりもっと早い期間で商 その自由から真に実用的で美しいものが生まれ、無銘であ 材のモデルチェンジを繰り返し、世界中がこぞって従来型 るがゆえに無欲であり、名を求めないゆえに無心である、 のビジネスが何とか通用する途上国になだれ込んでいる。 これこそが匠の心、と言った [12]。これこそが日本人の遊 いったいどこへ向かえば良いのか、それとも戻るのか… びの心の原点なのだと思う。それは一瞬の快楽を追う「遊 無論、生活価値の不可逆性がある以上、如何に循環型社会 び」とは全く次元の異なるものである。川勝平太は「富国 に近かったからと云って、江戸時代の生活に戻ることはで 有徳論」の中で徳川日本の世界観を西洋型の 「戦争と平和 きない。 」 ではなく、「華と蛮」すなわち「文明と野蛮」と特徴づ けている [13]。遊びを「道」の世界まで昇華させた日本の 今、我々が向かわねばならない方向は、知の積層による物 心の原点はそこにあるのかもしれないと思う。 質文明と決別し、自然観を基盤にした、知の再編と統合に よる生命文明の創出ではないかと思う。細分化された学問 を縦糸とするなら、それを横断する横糸の学問やテクノロ ブラックボックスが無くなり、簡にして明であれば、テク ジーを創出しなければならない。それには、テクノロジー ノロジーは身近なものになる。そして、そのテクノロジー ありきではなく、心豊かなライフスタイルを創出し、それ が、コミュニケーションを生み出し、その繰り返しが愛着 に必要なテクノロジーを自然の中に探し出すというあたら に繋がる。そんなテクノロジーが、今求められているので しいアプローチ、あたらしいテクノロジー創出システムが ある。 求められているのである。それこそが自足の国の価値観を 持ったあたらしいテクノロジーのかたちなのである。 間違ってはならない。ブラックボックスの多さが、テクノ ロジーの複雑さが他社との差別化を生み出し、利益に繋が るのだという、もはや崩壊した神話を(求めてはならない) … 今求められているもの、それは誰にでもわかるテクノ ロジーなのである、そしてその前提は、厳しい環境制約の 中でも、心豊かな暮らしをつくるライフスタイルの提案な のである。あたらしい時代の差別化は、この「ライフスタ イルの提案力」に基づいた、自然観を基盤とした「ものつ くり力」なのである。 4.生命文明の創出 イギリスでの産業革命は間違いなく物質文明の創出を加速 させた、そして人類の存続にも関わる地球環境問題を生み 出した。その過程で、学問は超細分化され、それを利用す るテクノロジーはテクノロジーのための進化を続け、豊か でなければ人間らしく生きられないという、人間の生存条 件ではなく、生産条件優位の思想を創り、マネー資本主義、 市場原理主義を生み出した [14]。テクノロジーが人のため ではなく、テクノロジーのために進化し、それを必死で人 14 PEN January 2012 Fig.1 ネイチャー・テクノロジー創出システム ネイチャーテクノロジーは 4 つのステップで生み出される。それは、1)厳しい環境制約の中で心豊かに暮らすあ たらしいライフスタイルを描き、2)ライフスタイルに必要なテクノロジーをその絵の中から絞り出す。(まずテク ノロジーありきでは、エコ・ジレンマを起こしてしう、まずライフスタイルありきなのである)、そして、3)必要 なテクノロジーを自然の中に捜しだし、4)模倣ではなく、持続可能というフィルターを通して環境負荷の低いテ クノロジーにリ・デザインするのである。 5.あたらしいテクノロジーのかたちと暮らし方のかたち そのようなものつくりのかたちを、ネイチャー・テクノロ -ネイチャー・テクノロジー- ジーと定義した (Fig.1)。ネイチャー ・ テクノロジーは従 来型のテクノロジーのシーズを自然の中に捜すものではな 自然はまさに計り知れない知恵とアイデアを与えてくれる い。まず、2030 年の厳しい環境制約の中でも存在できる 宝庫である。自然のメカニズムを学びそれを賢く活かすバ 心豊かなライフスタイルをバックキャスト思考で描く、そ イオミメティックスの活動は今後さらに進めなければなら のライフスタイルに必要なテクノロジーをその絵の中から ない。特に、日本は自然にあふれ、この活動の主導的立場 抽出するのである。従来型の、まずテクノロジーありきで を取らなければならないとは思うものの、暮らしの中にあ はない、まずライフスタイルありきである。そして必要な まりにも自然観が入り込んでしまった結果か、あるいは、 テクノロジーを自然の中に捜すのである。 たとえば生態とテクノロジーという従来の学会運営には似 つかわしくない構造のせいか、個々の研究はあるもののそ れが一つになって大きなうねりを創りだすには至っていな たとえば、快適な生活を維持するためにはエアコンは不可 い。 欠である。その効率を高めるためヒートポンプの改良は限 界に近づき、生活者の動きを感知して局所空調が始まり、 今、あらゆるテクノロジーは地球環境問題を基盤にしなけ 効率を下げないように自動クリーニング機構が装着され、 ればならない時代に突入したが、それは直接的にあるいは 省エネ化はほぼ限界に近づいてきた。次は、ザトウクジラ 間接的に、地下資源文明の象徴ともいえる物欲から精神欲 のコブのメカニズムを利用して、あるいは風に乗って舞い を煽るあたらしいライフスタイルへの移行に貢献するもの 降りるプラタナスの種子の形状を真似してエアコンのファ でなければならない。それは、 「もの」から「こと」の淘 ンの形状を工夫すればより効率的なエアコンが生まれるか 汰を誘発しなければならないテクノロジーの革新を伴うの もしれない。ただ、どれほど効率的になっても、やはり電 である。 気は使い、装置を造るための資源やエネルギーが必要なの PEN January 2012 15 である。これでは本質的なライフスタイルは変わらない イフスタイルを提供できるネイチャー ・ テクノロジーの一 のだと思う。エアコンの機能は、室内の温度湿度をはじ 例である。 めとする空気質を制御する「こと」である。ならばエア コンという 「もの」 に頼らなくても良いはずである。自 ネイチャー ・ テクノロジーは、自然に学び ( バイオミメ 然のドアをノックするとシロアリの巣が見えてくる、こ ティックス )、コミュニケーションを誘発し、愛着を呼び の巣をつくっている 「土」 には 10 億分の数メートル ( ナ 起こす、簡にして明なるテクノロジーなのである。 ノメートル ) の孔が無数に開いていて、これが温度や湿度 を調整してくれる。どのような 「土」 でもこの孔を持っ カタツムリの殻をリ ・ デザインして生まれた、汚れがつき ており、この土の構造を壊さないように固めることで無 難く取れやすい表面はキッチンやビル外壁で使われ始め 電源のエアコンが生まれた。床や壁がエアコンの代わり た。泡を使った水の要らないお風呂は入浴の概念を変える となるのである。無論、機械式のエアコンより 2 ~ 3 割 かもしれない。凸凹のトンボの羽は弱い風を見事に捕らえ は性能が劣る。ところが、不思議なもので、面白い現象 ることもわかってきた、そよ風専用の風力発電機が見えて がはじまった。この材料が土でできていることは誰にで くるかもしれない。ブラックボックスのないテクノロジー も明らかである ( 簡明 )、だからこそ子供たちまでもが参 達である。「お母さんゲームやってもいい ?」「いいけど、 加して、この能力の不足分をどう補おうかと家族で大会 自分で使う電気は自分で作っておいでょ!」そんな会話が 議が始まる ( コミュニケーション )、夏は家の中に水をま 当たり前のように聞こえてくる家庭では、トンボの発電機 く、これを家水(うちみず)と呼ぼう。冬は 1 枚たくさ は子供たちの羨望の眼になるかもしれない。居間の壁から ん着込むことにしよう ・・・ こんなことを繰り返している レタス、引き出しからキャベツ、納戸からはバジルという と、不思議と愛着が芽生えとても大事にしてくれるよう 家庭農場も見えてきた、もっとも小さな循環のかたちであ になる。我慢ではなく、心豊かに暮らせるあたらしいラ る。(Fig.2) Fig.2 自然のすごさを賢く活かすネイチャー・テクノロジー 土のナノ細孔に学ぶ無電源エアコン、いつもピカピカしているカタツムリに学ぶ汚れがつきにくく取れやすい表面、 熱を運び、弾けるときには超音波を発生して汚れを取る泡に学ぶ水のいらないお風呂、超低速で滑空可能なトンボ の翅に学んだマイクロ風力発電機、微生物の多様性を活かした家庭農場 16 PEN January 2012 今後少子高齢化が進み、環境問題もさらに厳しくなること 我々の役割なのだと思う。残念ながら復興の扉は既に閉ま は必至である、産業構造も 1-2-3 次産業の融合と地産地消 り始めた、残された時間はあまりない、今こそ叡智の結集 型に移行することは当然の帰結となろう。そんな世界もネ を願いたいと心から思っている。 イチャー・テクノロジーからは垣間見えるのである。 今こそ、倫理観を持ったテクノロジーが望まれ、それを創 テクノロジーは今後ますますライフスタイルに責任を持た り上げることが我々の責任であり、次世代への役目なので なければならない、テクノロジーを通してライフスタイル ある。 が見えるか ・・・、それこそが文化と文明の関係なのである。 もう一つ付け加えたい、快適性や利便性を求めるだけでは 充実感や達成感、満足感は得られない。少しの我慢を楽し みに工夫することが大切だと思う、シェアする概念、共有 参考文献 する概念、今後ライフスタイル創出の中では主流となる概 [1] 一瀬裕一郎「東日本大震災による農業被害と課題」、農 念である。まさにものつくりと使い方のあたらしい多様性 林金融 42-54 (2011) である。これもテクノロジーの役割であり、その倫理観を [2] 出村雅晴「東日本大震災による水産業被害と復興に向 失ってはならないと思う。そして、それを世界に発信でき けた課題」、農林金融 489-503 (2011) るのは、自然観をいまだにしっかりと持ち続けている日本 [3] 石 田 秀 輝「 自 然 に 学 ぶ 粋 な テ ク ノ ロ ジ ―」2009 人だけではないのかとも思っている。 Dojin 選書 化学同人 [4] 石田秀輝、新しい暮らしとテクノロジーを考える委員 会「地球が教える奇跡の技術」2010 祥伝社 6.あたらしい世代のために [5] 石田秀輝、古川柳蔵、コクヨ㈱ RDI センター「未来の 働き方をデザインしよう」2011 日刊工業新聞社 あらためて考えてみたい。我々は自然とどう向き合おうと [6] 安田喜憲「気候変動の文明史」2004 NTT 出版 していたのか? 電力供給は厳しい状況が続き、25% 以上 [7] 安田喜憲「縄文文明の環境」1997 吉川弘文館 の消費電力の削減が叫ばれている。一方では、アメリカか [8] Arnold J. Toynbee, “A Study of History, abridgement of ら大量のガスタービン発電機が輸入投入され、また、電力 volumes I-VI ”1985 Oxford University Press 不足を補うための自然エネルギーへの期待が国家を上げて 膨らんでいる。 (トインビー、長谷川松治(訳)、 「歴史の研究(1 - 3 巻) 」 1988 社会思想社) [9] 梅原猛、「日本文化論」2006 講談社学術文庫 我々は本当に震災前の電力が必要だったのだろうか?震災 [10] 速水融、「歴史人口学で見た日本」2001 文芸春秋 前の 70% の電力で心豊かに暮らすことは出来ないのだろ [11] 速水融編、「歴史の中の江戸時代」2011 藤原書店 うか? [12] 柳宗悦、「柳宗悦全集 11. 手仕事の日本」1981 筑 摩書房 震災後、多くの有識者が震災をバネに復興すべきであるこ [13] 川勝平太、「富国有徳論」2000 中央文庫 とを声高らかに宣言主張していた。しかしながら現実は、 [14] 内橋克人、宇沢弘文「始まっている未来、新しい経済 残念ながら如何にエネルギーも経済も元のかたちに戻すこ 学は可能か」2009 岩波書店 とばかりが優先されているように見えて仕方ない。震災を バネに復興するということはどういう事なのか?バネは一 度縮まないと伸びることは出来ないし、伸びることができ なければバネの役目を果たさない。縮まるという事は制約 を受けるという事である。現在の限られた予算、限られた エネルギーや資源、それらの厳しい制約の中で如何に知恵 を結集して心豊かな暮らしのかたちをつくるか、今がチャ ンスであり、それこそが復興なのである。暮らし方とテク ノロジーのパラダイムシフトを興す絶好の機会なのであ り、それを達成することが多くの亡くなった方や行方不明 の方、そして現在も被災者として苦労をしている方々への PEN January 2012 17 Column 雑木林の戦闘機、スミナガシ スミナガシの名前の由来は翅の模様です。漢字では「墨流し」 、墨汁を水に垂らして紙に色を移す染色技 法の一種で、 この技法で作られる模様の事もそう呼びます。大きさは 3 ~ 4 センチメートルとアゲハチョ ウ程度です。花の蜜を吸うことはなく、樹液、果実、動物の糞などの水分を吸います。オスの成虫は木 の枝や岩の上にとまり、なわばりを守ります。他のオスや、同じ植物を主食とするチョウのアオバセセ リが近づくと、威嚇して追い払います。2 頭のオスがなわばりを争う姿は、さながら戦闘機の空中戦の ようです。かなりのスピードが出ているようで、チョウというよりはハチのような勢いで飛びまわり、 近くにいるとブーンというチョウらしからぬ羽音が聞こえます。 スミナガシの翅を逆光のなかでみると光に透ける白い部分に黒く流れる模様がはっきりとみえます。ま た、スミナガシの翅は光の当たり具合によって金属光沢の緑色に輝く構造色をもっています。墨も良く 練られたものはきれいな緑色に輝くのでぴったりの名前だといえます。風流な和名に対して、英語では アジアのお巡りさん(Asian Constable Butterfly)と呼ばれています。 スミナガシは、台湾諸島からヒマラヤ山脈の麓までかなり広い範囲に分布しています。日本では北海道 を除く広い範囲に生息していますが、生活の場である雑木林が減少してきたことからその数が少なくな り、多くの自治体が絶滅危惧種に指定しています。このスミナガシは筑波山で見かけました。 18 PEN January 2012 【投資、ナノエレクトロニクス】 韓国政府、サムスン電子の NAND 型 メモリの中国投資を許可(2012.1.4) 韓国知識経済部は 1 月 4 日、サムス ン電子による中国内半導体工場の設 立のための 10 ナノ級 NAND 型フラッ シュメモリに対する国家核心技術輸 出申告の件を検討し、最終受理した。 サムスン電子はスマート機器の普及 等による NAND 型フラッシュメモリ の需要増加や、中国市場の急成長に よる現地経営の必要性からと投資背 景を説明した。同社は 2013 年新規 ラインの稼働を目標として敷地選定、 海外動向 中国内認可許可等を進める計画。生 産品目は携帯音楽プレーヤー、SSD、 携帯電話等に内蔵されるメモリカー ド 用 NAND 素 子 で あ る 12 イ ン チ ウェハーで、月生産規模は 10 万枚程 度。市場調査会社ガートナーによる と、NAND 型 メ モ リ の 2012 年 世 界 市 場 規 模(2011 年 9 月 予 想 値 ) は 約 285 億ドルであり、そのうち中国 市場の割合は 50% に達する見込み。 http://www.mke.go.kr/news/coverage/bodoView.jsp? seq=71544&pageNo=2&srchType=1&srchWord=&pC tx=1 【化学物質管理、EHS、リスク管理】 EPA、効果的なナノ材料管理の実施 が必要と指摘される(2012.1.3) 米国環境保護庁(EPA)の監察総監 室(OIG) は レ ポ ー ト「 EPA Needs to Manage Nanomaterial Risks More Effectively」 を 公 開 し た。OIG は、 EPA に は 健 康 や 環 境 を 保 護 す る と いう目標を達成するための十分な情 報も適切な手段も備えていないと指 摘する。プログラムオフィスのコー ディネート力の欠如やステークホー ルダーとのコミュニケーションの不 足などの構造的な欠陥は EPA が所管 する既存の法律を利用して、ナノ材 料の報告を義務化したとしても残る と い う。OIG は Chemical Safety and PEN January 2012 19 Pollution Prevention を担当する責任者に、プログラムを 際にはアジアやアフリカの途上国の中小規模の企業による 横断する効果的なコミュニケーションとコーディネートの ナノテクノロジー製品の開発とおおらかなナノ材料の取り プロセスを立案するよう提言している。EPA は 2012 年 1 扱いによる環境や健康へ影響を及ぼすリスクのほうが高い 月 31 日までにプロセス案を策定することが求められてる。 可能性があるとの指摘。 http://nanotech.lawbc.com/2012/01/articles/united-states/federal/epa-oig- http://cientifica.eu/blog/2011/12/the-nanotech-threat-from-the-developing-world/ concludes-epa-needs-to-manage-nanomaterials-more-effectively/ 【コミュニケーション、エネルギー開発】 ナノテクノロジーによるクリーンエネルギー開発、現実的 な見込みとハイプが混在(2012.1.2) 革新的なエネルギー生産技術に大きな貢献をすることが期 待されるナノテクノロジーの研究開発、実用化の現状、リ スク、エネルギー生産技術とナノテクノロジー、政策等に ついて研究者や環境保護団体の代表にインタビュー。環 【政策、ELSI】 UAE 政府高官、ナノテクノロジーの倫理的課題への取り組 みの重要性強調(2011.12.28) アラブ首長国連邦(UAE)の高等教育科学研究担当大臣 が、UAE 大 学 で 開 催 さ れ た International Conference on Nanotechnology のオープニングセッションで、ナノテク ノロジー研究開発に関わる倫理的課題にも早期に取り組む べきだと述べた。 境保護団体の Ian Illuminato 氏は、研究開発の現実を理解 http://gulfnews.com/news/gulf/uae/education/scientists-warned-to-consider-ethics- することでリスクとベネフィットの判断が可能になる。政 of-research-1.939217 府はナノテクノロジーに何ができて、何ができないのか きちんと説明すべきだと述べた。エール大学の Chinedum Osuji 氏は「2000 年代の初めはナノとプロジェクトにつ 【化学物質管理、規制策、政策】 けないと研究助成が受けられなかった。ハイプとマーケ EPA、CNT に新規重要利用規則の適用を提案(2011.12.28) ティングの悪い影響のせいだ」と振り返り、珍しいことで 米国の環境保護庁(EPA)は、カーボンナノチューブに新 はないとも指摘した。 規重要利用規則(SNUR)を適用する予定でいる。EPA は http://www.newhavenindependent.org/index.php/archives/entry/nano-energy_ 2011 年 12 月 28 日 付 の 官 報 で 17 物 質 に SNUR を適用 hope_hype_or_both/ し、上市前届出(PMN)の対象とすると発表した。17 物 質のうち、7 物質にカーボンナノチューブ(CNT)の記載 【食品、リスク管理】 NGO、ナノテクノロジーの食品応用を管理するためのガイ ドライン作成(2011.12.30) NGO の As You Sow は、食品と食品包装に含まれるナノ 材料への暴露とリスクを食品と食品包装事業者が評価する ためのガイドラインを作成した。ガイドラインは大手食品 メーカー、研究機関、投資家などのレビューを受けて作成 された。ガイドラインは事業者が踏むべき手順と材料供給 のあることが確認されている。CNT の定義が確定してい ないことを理由に、有害物質管理法(TSCA)の化学物質 インベントリにおける CNT とは、CNT、単層 CNT、多層 CNT、2 層 CNT、などを含む「一般的な名称」とされてい る。EPA は、PMN データを活用して各材料の構造特性の 明確化を図る予定。本提案は 2012 年 1 月 27 日までパブ リックコメントにかけられる。 http://nanotech.lawbc.com/2011/12/articles/united-states/federal/epa-publishesproposed-snurs-for-cnts/ メーカーなどから入手すべき情報についてアドバイスを 行っている。 http://nanotech.lawbc.com/2011/12/articles/united-states/ngo-publishesframework-for-food-and-food-packaging-products-containing-nanomaterials/ http://www.asyousow.org/health_safety/nanoframework.shtml 【規制策】 フランス、EC の定義を取り入れたナノ材料申告制度最終 版の草案を公開(2011.12.23) フランス政府はナノ材料の申告制度を定めた法案を採択し 【研究開発、途上国支援】 思わぬ形のナノ材料のリスクの可能性(2011.12.30) 消費者団体や環境保護団体は、欧州や米国の大手企業によ るナノテクノロジーを利用した製品開発を健康や環境への リスクを高めるものと懸念している。政府や研究機関も適 切なナノ材料の取り扱いに頭を悩ましている。しかし、実 20 PEN January 2012 た。これによりフランス国内でナノ材料の製造、輸入、販 売に関わる事業者は付属書に定める申告事項について年 1 回の報告が義務づけられることになる。本制度で用いられ ているナノ材料の定義は、欧州委員会(EC)によるナノ材 料の定義を反映しており、本制度は EC のナノ材料の定義 を用いる第一号の規制法となる。法案は 12 月 1 日にパブ リックコメントに付され、12 月 23 日に採択された。現 トが予定されている。 在最終版となった法案のフランス語版が公開されている。 http://www.nanowerk.com/news/newsid=23819.php 発効は 2013 年 1 月 1 日。 また、フランス政府は EU 指令に基づき、EC に 12 月 29 日付で通告を行った。 http://www.developpement-durable.gouv.fr/Projet-d-arrete-relatif-au-contenu.html Notification Number : 2011/673/F 【リスク管理、政策】 ドイツ連邦下院、ナノテクノロジーの安全性確保を要請 (2011.12.21) http://ec.europa.eu/enterprise/tris/pisa/app/search/index.cfm?fuseaction=pisa_ ドイツの連邦下院にナノテクノロジー分野の安全性確保を notif_overview&iYear=2011&inum=673&lang=EN&sNLang=EN 要請する議案が提出された。安全性を確保する手段とし *本情報はキヤノン株式会社鈴木寿一様よりご提供いただ きました。 て、欧州市場で流通するナノテクノロジー製品の登録の実 施や、ドイツ国内で 2013 年までに製品登録を実施するこ となどを求めている。 http://www.innovationsgesellschaft.ch/index.php?section=news&cmd=details&news 【リスク管理、製品登録、政策】 id=564&teaserId=4&setLang=2 消費者団体、FDA の不作為を訴える(2011.12.22) 米国の複数の消費者団体が共同で米国食品医薬品局(FDA) を訴えたことが明らかになった。原告となった消費者団体 は、FDA が 2006 年に出された日焼け止めなどの化粧品 中のナノ材料の規制を求める申し立てに応えていないとし て連邦裁判所カリフォルニア州支部に出訴した。これはナ ノテクノロジーに関するリスクを扱う米国で初めての裁判 となる。原告団の中心となっているのは国際技術評価セン ター(CTA)で、ほかに Frinds of the Eearth などが参加 している。CTA の弁護士は裁判の目的を政府に責任をもっ て科学的な不確かさと取り組んでもらうことだと述べた。 http://www.newhavenindependent.org/index.php/archives/entry/advocacy_ groups_sue_to_force_fd/ http://www.commondreams.org/newswire/2011/12/21-7 【医療応用、研究開発】 ナノ粒子と細胞の相互作用メカニズムの解明で新しい薬物 送達システムの開発にはずみ(2011.12.19) ダブリン大学の研究グループは、ヒト肺のがん細胞をポリ スチレンナノ粒子に曝露させ、蛍光マーカーでナノ粒子の 移動を観察した。その結果、ナノ粒子は細胞分裂の際に容 易に細胞間を移動すること、細胞に取り込まれナノ粒子の 数は一定ではないことを明らかにした。研究グループの Anna Salvati 氏は、ナノ粒子が細胞に入り込むメカニズム を明らかにできれば新しい薬物送達システムをデザインす ることもできるとの期待を述べた。 http://www.nanowerk.com/news/newsid=23777.php *本情報はシャープ株式会社山根秀信様よりご提供いただ きました。 【食品応用、リスク管理、コミュニケーション】 【標準化】 NIST、単層 CNT の標準物質を公開(2011.12.22) 米国国立標準研究所(NIST)は、世界で初めてとなる単 層カーボンナノチューブ(CNT)の標準物質 SRM2468 を 公開した。SRM2468 は、比較の対象として使用されるこ とから、配布 1 ユニット 250mg 中に含まれる様々な金属 不純物も質量分析もされている。 http://www.nist.gov/mml/polymers/cnt-122011.cfm ナノテクノロジーの食品応用が遺伝子組み換え技術の応用 から学ぶべきこと(2011.12.14) 英国の食品行政に関わる専門家はナノテクノロジーの食品 応用には適切な規制が必要であるし、もっと議論を深める べきだと述べている。企業が必要以上に情報公開に後ろ向 きで、消費者との間に十分な議論が行わなければ、ナノテ クノロジーの食品応用は遺伝子組み換え技術の食品応用が 辿ったのと同じ運命を辿ることになると警告する。 http://www.foodnavigator.com/Science-Nutrition/Use-of-nano-materials-infoods-must-be-openly-debated-warn-experts?utm_source=copyright&utm_ medium=OnSite&utm_campaign=copyright 【政策、LCA】 OECD、各国のナノテクノロジーのライフサイクルアセス メントの実施状況を公表(2011.12.21) 経済協力開発機構(OECD)は、各国のナノテクノロジー のライフサイクルアセスメント研究の動向についてまとめ たレポートを公開した。今後も定期的な情報のアップデー PEN January 2012 21 【リスク認識、意識調査】 【EHS、化学物質管理、リスク評価】 ナノ材料に対する懸念はそれほど高くないことが意識調査 EC、銀ナノ粒子の健康環境影響評価のためのデータ収集を で明らかに(2011.12.13) 要請(2011.12.12) 米国のジョージメイソン大学、ネバダ大学、サウスカロラ 欧州委員会(EC)は、新興および新たに特定された健康リ イナ大学の共同研究チームが、サウスカロライナ州の住民 スクに関する科学委員会(SCENIHR)に対して抗菌剤に利 を対象にナノテクノロジーに関するパネル調査を実施し 用される銀ナノ粒子に関する科学的意見を求めた。EC は、 た。パネルの参加者 76 名のうち 67%はナノテクノロジー 銀ナノ粒子の直接的な健康影響を否定する研究はあるもの を肯定的にとらえ、医療など生活の質の向上に貢献すると の、抗菌剤として使用することによる間接的なリスクを評 考えていると回答。調査では、リスクや様々な情報源に対 価には情報が不十分であるとしている。EC は、銀ナノ粒 する信頼などについても調査した。その結果、ナノ材料に 子の医療製品での使用はリスクを高めることになるか、ま 対する懸念がそれほど高くないことが明らかにされた。主 た、細菌に使用することは菌の耐性を生むことになるかの たるリスクについて、37%は意図しない結果と副作用と 2 点について1年程度で分析するように SCENIHR に求め 答え、13%が兵器への利用、9%が環境汚染と答えた。 ている。 http://www.safenano.org/KnowledgeBase/CurrentAwareness/ArticleView/ http://nanotech.lawbc.com/2011/12/articles/international/ec-requests-scenihr-for- tabid/168/ArticleId/158/Study-of-South-Carolina-Panel-Reveals-Few-Concerns-with- scientific-opinion-on-nanosilver/ Nanotechnology.aspx 【投資】 企 業 コ ン ソ ー シ ア ム、 ニ ュ ー ヨ ー ク 州 に 新 た な 投 資 (2011.12.13) 米国ニューヨーク州知事は、米国内外の半導体関連企業に よるニューヨーク州内への投資計画を開票した。投資は総 額 44 億ドルで 5 年間の予定。対象となるのは州北部のオー ルバニー市など。研究施設の建設などが予定されている。 これにより州内での継続的な雇用機会が確保されるだけで なく、新たな雇用機会の創出も見込まれている。州政府も 4 億ドル規模の支援策を予定している。 http://www.nanolawreport.com/2011/10/articles/nanotech-brings-new-investmentto-upstate-new-york/#axzz1gIHgdeoG 【EHS】 タンパク結合を利用した CNT と細胞の相互作用への干渉 技術(2011.12.12) 中国科学院と米国のコロンビア大学の共同研究チームが、 血中の競争タンパク結合によりタンパク質に覆われたカー ボンナノチューブ(CNT)は、タンパク質に覆われていな い CNT とは異なる吸着力を示すので、細胞との相互作用 も変化することを明らかにした。研究チームは、今後、生 体適合性の高い材料開発に向けて CNT 以外のナノ材料で も研究を進める予定。 【リスク管理、EHS、政策】 デンマーク環境保護庁、新しいナノ材料のリスク管理ツー ルを提案(2011.12.8) デンマーク環境保護庁は新しいナノ材料のリスク管理 ツール NanoRiskCat(NRC)開発プロジェクトを支援す ることを発表。事業を受託するのは Technical University of Denmark と National Research Centre for the Working Environment の 2 者。2 者はすでに製品に含有されている ナノ材料の曝露評価と有害性を評価するための誰にでも利 用できるスクリーニングツール NRC を共同で開発中であ る。 http://www.nanowerk.com/news/newsid=23677.php 【化粧品、研究開発、ナノ材料、EHS】 インドの大手化粧品メーカー、ナノテクノロジーの化粧品 での利用を当面差し控えると表明(2011.12.8) インドの大手化粧品メーカー Hindustan Unilever(HUL) と ITC は、適切なガイドラインがないことなどを理由に当 面ナノ材料をインド国内向けの化粧品などのスキンケア用 品に用いることを差し控えるとインタビューに回答した。 HUL の副代表の Vilas P Sinkar 氏は、スキンケア用品は電 子機器などと異なり肌に直接触れるものであり、安全性は 重要な問題であると述べ、適切なガイドラインがない状態 http://www.safenano.org/KnowledgeBase/CurrentAwareness/ArticleView/ では企業は安心して商品開発に専念できないと指摘する。 tabid/168/ArticleId/156/Detoxifying-carbon-nanotubes.aspx http://www.mydigitalfc.com/news/hul-itc-put-nano-tech-based-skincareproducts-737 22 PEN January 2012 【EHS】 ナノ粒子がアレルギー症状を悪化させる可能性を指摘 (2011.12.8) 【EHS、管理策】 EPA、 条 件 付 き で 銀 ナ ノ 粒 子 含 有 の 農 薬 の 登 録 を 開 始 (2011.12.1) 中国科学院の研究者グループが、金属酸化物ナノ粒子を対 米 国 の 環 境 保 護 庁(EPA) は、 登 録 申 請 中 の 製 品 HeiQ 象に調査を行い、金属酸化物ナノ粒子の吸入により肺に小 AGS-20 が人体や環境へ有害な影響がないとのデータを提 胞様のエキソソームの形成がされることを観察した。研究 出することを条件としてナノサイズの銀を含む殺虫剤の登 グループは、既往のアレルギー症状をもつ人がナノ粒子に 録を認める方針を示した。EPA は、殺虫剤中の銀ナノ材料 暴露すると症状が悪化する可能性があると指摘している。 を新規の有効成分として登録を認めるとのこと。今回、登 http://www.materialsviews.com/details/news/1409907/Trojan_Horse_Causes_ 録が明らかにされた製品はスイス製のナノサイズの銀とシ Nanoparticle_Allergy.html リカを抗菌材として用いる繊維用の防腐剤である。ナノ材 料で提案中の登録と同様の手続きが踏まれるのではないか 【EHS】 NIOSH、ナノ材料取扱いの際の呼吸器系の保護についてコ メント(2011.12.7) 米国国立労働衛生研究所(NIOSH)は公式ブログで「工業 との見方がなされている。 http://nanotech.lawbc.com/2011/12/articles/united-states/federal/epaconditionally-registers-pesticide-product-containing-nanosilver-as-a-new-activeingredient/ http://www.innovationsgesellschaft.ch/index.php?section=news&cmd=details&news id=558&teaserId=4&setLang=2 ナノ粒子を扱う作業者の呼吸器保護について」と題して、 NIOSH が推奨する呼吸器保護具の解説と最新のデータを 公開した。現在、NIOSH が勧める保護具のテストは研究 【EHS】 室で行われたものであるため、より正確なデータを得るた ObservatoryNANO プロジェクト、EHS に関するレポート めフィールドテストを実施する予定でいる。 を公開(2011.11.30) http://nanotech.lawbc.com/2011/12/articles/united-states/federal/niosh-science- 欧 州 第 7 次 研 究 枠 組 み(FP7) で 実 施 さ れ て い る blog-posts-entry-regarding-respiratory-protection-for-workers-handling-engineered- ObservatoryNANO は、ナノテクノロジーと環境、健康、 nanoparticles/ 安全(EHS)に関するレポートを公開した。FP7 は、欧州 連合の政策立案を支援するため各種データの科学的、経済 【リスク管理、政策、EHS】 EU 理事会、欧州議会とバイオサイドの規制策で仮合意 (2011.12.3) 欧州連合(EU)理事会は、欧州委員会(EC)提案のバイ 的な分析を行っている。レポートは、世界各国の EHS 関 連の研究を実施している主要な研究機関とその研究内容の 最新情報をまとめたもの。 http://nanotech.lawbc.com/2011/11/articles/international/observatorynano-postsreport-on-nanotechnology-ehs-landscape/ オサイド製品規制に関する文書に仮合意した。既存のバイ オサイドに関する EU 指令 98/8/EC は本合意に置き換えら れる。本規制策は殺虫・防虫などの防疫製品を対象として おり、農業用の殺虫剤は別途 EU 規則 1107/2009(植物 防疫製品)で規制されるため本規制の対象とされていない。 【管理策、EHS】 スイス、繊維製品向けナノ材料取扱いイドラインを作成 (2011.11.21) 仮合意書は、ナノ材料について、安全性に科学的な不確か スイス連邦材料技術研究所(EMPA)とスイステキスタイ さが残っていると指摘、また消費者保護と企業のリスク管 ル連盟(TVS)は共同で繊維製品中のナノ材料の安全な 理のためにも早急にナノ材料の定義を定めるべきであると 取扱いのためのガイドラインを発行した。 「Nano Textiles: 述べている。仮合意は 2012 年 1 月に議会の投票にかけら Foundations and guiding principles for the efficient れる。 sustainable development nanotextiles」は、繊維製品の製 http://www.nanotechia.co.uk/global-news/nanomaterial-containing-biocidal- 造事業者がナノ材料を安全に取り扱うための実際的な情報 products---european-parliament-and-council-reach-a-provisional-agreement-onbiocides-regulation を提供するもので、研究者や消費者など繊維や服飾関連の 事業者以外にも有用な内容となっている。 http://www.nanotechia.co.uk/global-news/swiss-federation-issues-nanomaterialssafety-guide-for-textiles PEN January 2012 23 【政策、コミュニケーション】 【産業化】 フランス首相府戦略的分析センター、市民参加プロセスに ロシアの RUSNANO と欧州の航空防衛産業グループ EADS ついての分析レポート公開(2011.11.20) が連携(2011.11.16) フランス首相府の戦略的分析センター(CSA)はナノテク モスクワで欧州の航空防衛産業グループ EADS とロシアの ノロジー研究開発への市民参加に関する分析レポートを公 RUSNANO はナノテクノロジー研究開発での連携に合意し 開。CAS は、パブリックディベートは社会がナノテクノロ た。ロシア企業での活用の可能性のある EADS の保有する ジー研究開発をどのように見ているかを計る指標であり、 知財を選び出す予定。ロシア側が期待するナノテクノロ 市民参加プロセスの重要な要素とすべき指摘する。CAS は、 ジー応用分野はエネルギー、新材料、ライフサイエンス、 市民参加型のナノテクノロジー研究開発のため参加プロセ セキュリティなどの分野である。 スの決定、公開の原則、ディベートの結論の扱い方、責任 http://www.nanotechia.co.uk/global-news/cooperation-agreement-between- ある研究開発の促進からなる 4 つのステップを提案した。 european-aerospace-defense-group-eads-and-russias-nanotech-corporation-rusnano http://www.nanotechia.co.uk/global-news/public-participation-for-a-responsibledevelopment-of-nanotechnology-as-outlined-by-frances-center-for-strategic-analysis 【政策、研究開発】 フ ィ リ ピ ン、 ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー 研 究 開 発 を 本 格 化 【労働衛生、リスク管理】 米 国、 労 働 者 保 護 と ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー 研 究 開 発 (2011.11.20) (2011.11.13) フィリピン政府は、ナノテクノロジーとゲノム研究を重点 的に進めるとする新しい科学技術ロードマップを公開し 米国の労働組合は組合員数の斬減や政治力の衰退などのた た。 め経済的な重要性を失いつつある。このことがナノ材料に http://www.nanotechia.co.uk/global-news/the-philippines-to-bolster-their-genomics- 曝露する可能性のある労働者の適切な保護に影響してい and-nanotechnology-sectors る。ナノテクノロジーと労働者の問題は、優先順位が低く、 十分に議論が尽くされていない。関心が低い理由は、国立 労働衛生研究所(NIOSH)が提供する労働衛生ガイドライ ンが拘束力のある規制になる可能性は低いこと、作業環境 におけるナノ材料の情報が少なく労働者のリスクが見過ご されていることなどが考えられるという。 http://www.nanotechia.co.uk/global-news/will-labor-unions-respond-to-nanotech 【政策】 メ キ シ コ、 ナ ノ テ ク ノ ロ ジ ー 研 究 予 算 を 大 幅 減 額 (2011.11.12) メキシコ政府は科学技術関連の予算削減を予定しており、 National Council of Science and Technology の実施する科 学技術プログラムへの影響は避けられず、ナノテクノロ ジー研究開発にも相当な影響があると専門家は見ている。 【政策、リスク管理】 http://www.nanotechia.co.uk/global-news/mexicos-budget-cuts-may-affectnanotechnology FDA の研究諮問委員会で継続中のナノテクノロジーと試験 機関に関する審議、最新状況(2011.11.17) 米国の食品医薬品局(FDA)の研究諮問委員会は、11 月 8 〜 9 日に委員会を開催し、ナノテクノロジー研究開発と ナノテクノロジー製品モニタリングのための中核施設につ 【政策、研究開発】 アフリカ諸国はナノテクノロジー研究を本格化すべき (2011.11.11) いてまとめたレポートの内容を審議。委員会は、2012 年 2011 年 10 月に南アフリカで開催された Tech4Africa 会 中も継続して定期的に開催の予定。 議でナイジェリア Babcock University 大学教授であり、ア http://www.nanotechia.co.uk/global-news/us-fda-advisory-meeting--committee- フリカ初のチップデザイン企業の設立者である Ndubuisi votes-on-report-reviewing-nanotechnology-core-facility-in-support-of-nanotechscientific-studies-and-methods-development-for-monitoring-nanotech-based- Ekekwe 氏は、イノベーションの欠如がデジタルデバイド products を招いたと分析し、ナノテクノロジーで同じことを繰り返 さないよう、アフリカ諸国は技術の消費者から技術の創造 者へと変革すべきだと述べた。 http://www.nanotechia.co.uk/global-news/africa-should-expand-beyond-it-andinto-nanotechnology-says-nigerian-university-engineering-professor-at-tech4africaconference 24 PEN January 2012 【管理策、EHS】 ECHA、多層 CNT 等のデータ提供を要請(2011.11.9) 欧州化学品庁(ECHA)は動物試験の削減のための試験提 案を実施すると告知した。今回の告知の対象物質リストに は多層 CNT も挙げられている。対象物質の製造事業者と 輸入業者は、REACH 付属書 IX と X で要求されるデータを ECHA に提供することが求められる。なお、情報提供の期 限は 2011 年 12 月 19 日であった。 http://www.nanotechia.co.uk/global-news/echa-requests-information-on-multi-wallcarbon-nanotubes-for-testing-proposal-involving-vertebrate-animals 【EHS】 無機ナノ材料の生体液中での挙動を解明(2011.11.8) カタルーニャナノテクノロジーセンターとザルツブルク大 学の共同研究チームが、表面改質した 7 〜 20nm の金属 および金属酸化物ナノ粒子を用いて生体液中でのライフサ イクルを追い、その挙動を明らかにした。試験に用いたす べての材料の粒子表面に無機材料と生体との相互作用の証 であるタンパク質コロナの形成を確認した。 http://www.nanowerk.com/news/newsid=23668.php 【計測、リスク管理、労働衛生】 環境中ナノ粒子のレーザー計測装置の評価書公開 (2011.10.5) ナノ粒子追跡分析(NTA)はレーザーによりリアルタイム で液中のナノ粒子の分析を可能にする比較的新しい分析手 法。米国環境保護庁は銀とポリスチレンのナノ粒子をもち いて NTA の有用性を評価し、結果をまとめたレポートを 公開した。NTA は in situ、試験溶液中どちらでも分析が可 能なスタンドアローンの装置。粒子サイズが 20 〜 40nm かそれ以上でもっとも性能を発揮する。20nm 以下になる とデータの信頼性は低下する。NTA の利点は溶液中のナノ 粒子の映像化が SEM や TEM に比べて短時間で可能なこと。 http://cfpub.epa.gov/si/si_public_record_report.cfm?dirEntryId=238319 PEN January 2012 25 速報 急成長する蘇州工業園区におけるバイオミメティックス研究の現状 The 5th Workshop on Manufacturing Technologies for a Sustainable Society に参加して 2011 年 12 月 16 日 に 中 国 江 蘇 省 蘇 州 市 で 開 催 さ れ た SIP は金鴻湖と独墅湖の周辺に位置している。湖周辺の土 バイオミメティックスに関するワークショップ The 5th 地を埋め立てて区画整理した広大な敷地には、国内外のナ workshop on manufacturing technologies for a sustainable ノテクノロジー関連企業、政府研究機関、大学等の高等教 society に参加し、工業園区内の研究機関や企業を訪問す 育機関等が多数入居する。SIP は中央政府と省政府双方の る機会を得た。世界遺産にも登録されている運河と庭園が 強力な支援を受けている。SIP の南部の独墅湖の湖岸に広 美しい古都蘇州の旧市街の郊外に、大学や研究機関、企業 がるアカデミックエリアには 29 もの大学が入っている。 等が集積された蘇州工業園区が急ピッチで展開しつつあ ただし、敷地のほとんどがまだ手つかずの芦原が残ってい る。 る蘇州大学など、まだ施設全体が完成していないとおぼし き大学もある。 上海市から西へ江蘇省の蘇州、無錫、南京と、中国の科学 技術のシンボル的な拠点都市が点在している。蘇州工業 園区(SIP)には大学やナノバイオをはじめとする国の研 究機関が建設され、一大研究拠点を形成しつつある。また SIP の開発にはシンガポール政府の投資が深く関わってお り、開発地域の北部エリアの一角には広大な「中国 - シン ガポール工業園区」という区画が作られている。混雑がな ければ、風雅な旧市街の中心部からタクシーに乗り 10 分 ほどで、銀色に輝く巨大な半円形のモニュメントの SIP の 入り口に到着する。 独墅湖を渡る橋につながる「学院路」の両側には、はるかかなたの 消失点まで大学の校舎や施設が続く ワークショップは SIP 南部エリアにある Nanopolis の会 議室で行われた。シンガポールに拠点を置く NanoGlobe が主催し、Nanopolis が運営を担った。第 5 回目となる Manufacturing Technologies for a Sustainable Society の 今 回 の テ ー マ は、「Bio-inspired Nanostructures, Systems, and Manufacturing」であった。バイオインスパイアード は PEN の連載「生物規範工学」で使用しているバイオミ メティックスに相当する用語で、本ワークショプでは両方 の用語が使用されていた。ワークショップは Nanopolis の Jacky Wu 氏による歓迎の辞と Nanopolis ならびに SIP の 独墅湖の湖岸に広がる建築中の企業向けの高層ビル群 26 PEN January 2012 概要の紹介で幕を開けた。Nanopolis は、ナノテクノロジー ワークショップ後に SIP にある中国科学院の研究拠点であ る Suzhou Institute of Nano-Technology and Nano-Bionics (SINANO)を訪問した。その際に案内して頂いた研究者 の Jian Jin 氏によると、現在、隣接する敷地で研究施設の 拡張工事が急ピッチで進められており、施設の完成の暁に は研究者数が現在の 700 名から 2000 名に増える予定と のことであった。このときの Jin 氏の話を筆頭に SIP では 敷地の広さだけでなく、研究開発に向けるエネルギーやス ピード感あふれる勢いに、何度も圧倒されるような思いを した。 によるイノベーションと産業化を支援するための組織で SIP 発展の中核をなしている。中国科学院の Lei Jiang 氏は、 生物にヒントを得たスマートマテリアルの研究について紹 介。産総研のナノテクノロジー戦略室からは、ナノテクノ ロジー研究開発の社会との関わりからテクノロジーガバナ ンスのあり方を学び、それを今後のバイオミメティックス の研究開発にどう活かすのか、という視点で発表を行った [1]。マレーシア国民大学の Ille Gebeshuber 氏は持続可能 な発展のために新しいアプローチでの研究開発を提案。短 い休憩をはさんで SVG Optronics 社の Linsen Chen 氏によ る同社の環境に優しいプリント技術の研究と製品の紹介が 行われた。シンガポールの材料研究・工学研究所で Hong Yee Low 氏が行っている生物を模倣したナノプリンティン グの研究を NanoGlobe の代表 Lerwen Liu 氏が出席できな くなった Low 氏に代わって紹介。その後、昼食をとりな がら講演者だけでなくすべてのワークショップ出席者が参 加して、今後の研究の方向性や将来の課題などについてラ ウンドテーブルの議論を続けた。 ワークショップ後に SIP に入居する地元企業の訪問が組み 込まれており、ワークショプで発表を行った地元のメー カー SVG Optronics 社を訪れた。同社の主要な製品は ID カードや製品ラベル向けの 3D オプティカルプリントやプ リント基板の作製である。中国国内のニッチなニーズを しっかりと拾い上げて市場展開しているようであった。こ のメーカーの製品を日本にもってきたとしても販路は限ら れてしまうだろうが、中国の国内市場の要求するレベルは 十分にクリアしており、また国内市場の規模もこのような サイズの企業が採算をとるに十分見合うものだという。イ ランからのワークショップ参加者が低価格でかなり高品質 Suzhou Institute of Nano-Technology and Nano-Bionics(SINANO) の 3D オプティカルプリントが可能ということで今にも商 *上掲の 3 枚の SINANO の写真は、SINANO のウェブサイトからお 談に入りそうな勢いで熱心に質問を投げていた。 借りしました。 PEN January 2012 27 今回ワークショップのために訪れた区画は SIP の中でも比 較的新しく開発が始められた区画のようで、完成した建物 の間に未完成の建物がいくつも散らばっていた。そのため もあってか、敷地の広さに比して働いている人が少ない ようで、自転車と歩行者が横に広がって進んでも問題の なさそうな立派な幅の歩道が整備されているのにも関わら ず、早朝や昼前後など歩行者をほとんど見かけなかった。 ワークショップの事務局として様々な手配を担当していた Nanopolis の方によると SIP の公式オープンは 2012 年と のことなので、一部の閑散とした印象はそのせいもあった ようである。 旧市街中心部を行き交う人々が走らせているのは、ほとんどが電動 スクーター [1] Toward the comprehensive Technology Governance in Emerging Biomimetics Field – Lessons from Nanotechnology –“ by Masafumi ATA, Mizuki Sekiya and Soonhwa AN, Office of R&D Strategy, Nanosystem Research Institute, AIST 朝の SIP に人影はまばら 蘇州工業園区の案内 ワークショップの発表を聞く限りでは、バイオミメティッ クス研究とその応用そのものは、日本、台湾、韓国、欧州、 米国などの先進的な諸国に比べれば、手を付けたばかりで キャッチアップを急いでいるとの印象をうけた。しかし、 研究機関や企業だけでなく、行政もバイオミメティックス 研究には人材や資金を投入する価値が十分にあると認識し ており、今後しっかりとした研究開発支援を行うと約束し ているという。研究機関や研究者と行政との間ではコミュ ニケーションも良く取れている。研究や製品などで、目を 見張る様な成果が出てくる日もそれほど遠くないと感じ た。 28 PEN January 2012 http://www.sipac.gov.cn/japanese/ SINANO http://english.sinano.cas.cn/ SVG Optronics 社 http://www.holomaker.com/en/ ナノテクノロジー戦略室 関谷瑞木、安順花、阿多誠文 総合科学技術会議が機能停止に 1 月 9 日付新聞各紙は、野田首相 を議長とする内閣府総合科学技術 会議が本会議を開けない機能停止 状態に陥っていることを報じた。 総合科学技術会議は関係閣僚と有 識者の合わせて 14 人以内を議員 として構成され、そのうち有識者 は半分以上でなければならないと 内閣措置法で定められている。問 題は、これまで 7 人いた有識者 議員のうち、5 日付で 3 人の任期 が切れたが、後任の人事案が臨時 国会で審議できず国会の承認が得 られていないことから起きた。総 合科学技術会議の下に設置されて いる専門調査会も開催できない状 況に陥っている。 日本の第 4 期科学技術基本計画 は、大震災のあと特にエネルギー 国内動向 基本計画に関して大きく見直さ れ、8 月に施行された。野田政権 はその直後の昨年9月2日に発 足し、内閣発足と同時に野田首相 は日本の科学技術政策のトップ として総合科学技術会議の議長に PEN January 2012 29 就任した。以降 4 カ月以上が経過したが、事実だけ見る 「ナノ物質の管理に関する検討会」発足 なら 11 月 24 日の 9:30 ~ 10:00 の 30 分間と、12 月 経済産業省は、新たに「ナノ物質の管理に関する検討会」 15 日の 9:20 ~ 9:45 の 25 分間の 2 回、都合 55 分間、 を発足させ、2011 年 12 月 2 日に第 1 回検討会を開催し、 総合科学技術本会議が開催されている。 資料を公開した。第一回の議題は、ナノ物質の管理に関す る検討会の開催について、ナノ物質に係る現状等について、 NEDO「ナノ粒子特性評価手法の研究開発」プロジェクト 科 学 技 術 情 報 を 活 用 し た 調 査・ 分 析 手 法 を 発 信 す る の成果について、ナノ物質に係る検討課題について、など。 J-GLOBAL foresight を開設 http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/k_7.html#nanomaterial_kanri 科学技術振興機構は、平成 23 年 12 月 21 日(水)より、 ○議事要旨 科学技術情報を活用した調査、分析手法を発信するサイト http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seisan/nanomaterial_kanri/001_giji. J-GLOBAL foresight を開設した。 論文情報や特許情報な html どの科学技術情報を活用した調査・分析により、科学技術 イノベーションのための政策立案や企業の戦略立案に有益 な情報を見いだすためには、世界の論文数や国際共同研究 ○配付資料 http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seisan/nanomaterial_kanri/001_haifu. html における各国間の関係などを分析・可視化して、その現状 や将来の動向を「俯瞰的に」把握することが必要であり、 世界的にもさまざまな研究が行われている。J-GLOBAL foresight は、JST が 50 年以上にわたって蓄積したおよそ 5600 万件もの科学技術文献情報に、トムソン・ロイター 社の文献情報 3500 万件、特許情報 1700 万ファミリーも 加え、科学技術イノベーションの世界的動向を俯瞰できる 調査・分析手法を提供、発信していくためのサイト。 http://www.jst.go.jp/pr/info/info853/index.html 京都産業大学 益川塾 第 2 回シンポジウム「科学と社会」 開催 京都産業大学に開設されている益川塾が、1 月 7 日に第 2 回のシンポジウム「科学と社会」を開催した。京都大学教 授山中伸弥氏が対談のゲストに登場し、益川敏英氏と基礎 研究の意義などについて語り合った。 http://www.kyoto-su.ac.jp/project/mt/news/20120107_sympo.html http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20120107-OYT1T00727.htm 「ナノレボリューション」、全 3 回を一挙再放送 「ナノレボリューション」は、NHK 衛星放送で 2012 年 1 月 1 日~ 3 日に放送された NHK と、カナダ、フランスの 制作会社の共同製作による番組。ナノテクノロジーが身近 にある近未来をアニメーションやシミュレーションドラマ で描写、各回にゲストとして研究者が登場し、解説を加え ている。1 月 22 日に全 3 回をまとめて再放送する。 http://www.nhk.or.jp/co-pro/recent/20120101.html 研究成果展開事業(戦略的イノベーション創出推進プログ ラム(S - イノベ))採択課題の決定 科学技術振興機構(JST)は、戦略的イノベーション創出 推進プログラム(S - イノベ)における研究課題を決定し た。プログラムでは、JST 戦略的創造研究推進事業(CREST、 ERATO、さきがけ、SORST)などの成果から産業創出の礎 となる研究開発テーマを設定し、当該テーマのもとで公募 選定された産学連携による複数の研究開発チームが長期一 貫(最長 10 年度、1 課題あたりの研究開発費年間 7000 震災の影響により仙台での学会開催減少 東日本大震災の影響で仙台市内での国際会議、学会の開催 万円程度)した研究開発を進める。 http://www.jst.go.jp/pr/info/info852/index.html が減少した。 (財) 仙台観光コンベンション協会の調査。 (財) 仙台観光コンベンション協会は参加者向けに安心して参加 できるようにと避難所マップを作成ウェブサイトで公開し ている。 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111225-OYT1T00635.htm (財)仙台観光コンベンション協会 http://www.stcb.or.jp/ 科学コミュニケーション連携推進事業「機関活動支援(テー マ設定型)~科学と芸術の集い~」採択企画の決定 科学技術振興機構は、科学コミュニケーション連携推進事 業において、 「機関活動支援(テーマ設定型)~科学と芸 術の集い~」) の採択企画を決定した。採択企画および実 施機関は、 (1) 「ロボティクス演劇祭」 (大阪大学) (2) 、 「観 星会「自然と文化を語るつどい-星と音楽の夕べ-」」(茨 城大学)の 2 件。今回の選考では、応募のあった 25 件に 30 PEN January 2012 ついて、外部有識者から構成される委員会により、 (1)科 する予定である。 学と芸術を効果的に組み合わせ調和させた科学コミュニ http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/nankai_trough/7/index.html ケーション活動として、広く一般の方々に向けて魅力があ るか、 (2)科学への興味・関心の薄い層の科学への関心と 理解を深めることができる科学コミュニケーション手法の ICT を活用し釧路湿原周辺部のタンチョウ保全を支援 新たな切り口として効果的かつ典型例となり得るか、など 富士通 ( 株 ) は、公益財団法人日本野鳥の会が北海道鶴居 の観点から選考を行い、2 件を採択企画として決定したも 村で実施している越冬期のタンチョウ保全調査において、 の。 同社が開発したマルチセンシング・ネットワークを用いた http://www.jst.go.jp/pr/info/info851/index.html 支援を行う。これは日本野鳥の会が整備したタンチョウの 自然採食地にマルチセンシング・ユニットを設置し、遠隔 地からタンチョウの様子をモニタリングし、画像データを 環境省、福島に環境再生事務所を開設 収集することでより精度高く効率的な保全調査に貢献する 1 月 4 日、環境省は東京電力福島第一原子力発電所から放 もの。「富士通グループ生物多様性行動指針」に掲げた「生 出された放射性物質による環境の汚染への対処として、福 物多様性保全への ICT の活用」事業の一環として取り組む。 島県等における除染の推進を目的に福島環境再生事務所を タンチョウは国の特別天然記念物および国内希少野生動植 開設した。これは 1 月 1 日に福島第1原発事故で放出さ 物種。日本野鳥の会では、餌の少ない冬期でもタンチョウ れた放射性物質を国の責任で除去することなどを定めた が給餌に頼らず生息できる環境を構築するため、北海道鶴 「放射性物質汚染対処特別措置法」が施行されたことを受 居村にて 2008 年より自然採食地を 8 カ所整備し、月に 2 けたもの。これに先立ち、環境省は汚染状況重点調査地域 回の頻度で調査員によるタンチョウの実態調査を実施して 内における環境の汚染の状況の調査測定方法のガイドライ きた。調査員がタンチョウの利用時間を避け積雪の多い現 ン、除染等の措置に係るガイドライン、除去土壌の収集・ 地に立ち入り、調査するのは困難で、より正確な調査のた 運搬に係るガイドライン、除去土壌の保管に係るガイドラ めに現地調査の頻度を上げることが課題であった。 イン等を公表した。 http://pr.fujitsu.com/jp/news/2011/12/15.html http://tohoku.env.go.jp/fukushima/ http://www.env.go.jp/jishin/rmp/attach/josen-gl00_ver1.pdf http://www.env.go.jp/jishin/rmp/attach/josen-gl01_ver1.pdf http://www.env.go.jp/jishin/rmp/attach/josen-gl02_ver1.pdf http://www.env.go.jp/jishin/rmp/attach/josen-gl03_ver1.pdf http://www.env.go.jp/jishin/rmp/attach/josen-gl04_ver1.pdf 4 省の生命科学系データベース合同ポータルサイト integbio.jp を開設 科学技術振興機構(JST)、医薬基盤研究所(NIBIO)、農 業生物資源研究所(NIAS)、産業技術総合研究所(AIST)は、 南海トラフの巨大地震モデル検討会 12 月 27 日、内閣府において第 7 回南海トラフの巨大地 震モデル検討会が開催された。2003 年にまとめられた中 央防災会議(中防災)モデルでは過去数百年間に発生した 地震の記録の再現を念頭に置いて地震・津波を想定してい たが、今回の案では「科学的知見に基づく、あらゆる可能 性を考慮した最大クラスの巨大な地震・津波を想定」と想 定の対象が変更されている。また対象範囲も、中防災モデ ルでは対象としていなかったプレート深さ約 30km よりや や深い部分まで拡大するとともに、東側の領域端をトラフ 軸から富士川河口断層帯の北端まで拡大、南西側の領域端 は日向灘よりもさらに南西方向に拡大されている。これに より暫定的にマグニチュード 9 の巨大地震の震源域はおお よそ 2 倍に広がった。今後さらに検討を重ね、南海トラフ の巨大地震による最大クラスの震度分布・津波高等の推計 結果を今年 3 ~ 4 月に検討会最終とりまとめとして報告 内閣府総合科学技術会議の議論を受けて平成 23 年 12 月 12 日(月)に文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経 済産業省が取り組む生命科学系データベースの統合化の方 針や成果を紹介する合同ポータルサイト「integbio.jp」 (イ ンテグバイオ)を共同で開設した。生命科学におけるデー タベースは、例えば iPS 細胞作製の成功には遺伝子データ ベースの情報が不可欠であったように、研究のインフラと して世界中で活発に開発、利用されている。その結果、現 在では多数のデータベースが乱立しており、それを使いや すくするための統合化が重要な課題となっていた。日本で も、生命科学に関係した各省で統合化に向けた取り組みが 平成 18 年頃から始まり、当初は各省で独自に進めていた データベースの統合化をオールジャパンの体制で進めるた めに、内閣府の主導のもと各省の協力体制を構築して、平 成 23 年度からは 4 つのステップ(カタログ、横断検索、 アー カイブ、再構築)に沿って進めている。合同ポータルサイ トでは、4 省が協調・連携して取り組んでいる「カタログ」 、 PEN January 2012 31 「横断検索」、「アーカイブ」の方針と成果についてまとめ ヒッグス粒子は実在するか ている。また、データベースの統合化に関するシンポジウ 12 月 13 日、欧州素粒子原子核研究所(CERN)の大型ハ ムや講習会、展示会の情報を発信して、この取り組みに対 ドロン衝突型加速器(Large Hadron Collider、LHC)実験 する研究コミュニティーの関心や理解が深まるよう努めて の最新結果に関するセミナーおよび会見が CERN で行わ いく。これにより、 今まで 4 省で独自に進められてきたデー れた。それに合わせ、日本では東京大学大学院理学系研 タベースへの取り組みが一つにまとまり促進されると期待 究科および東京大学素粒子物理国際研究センターにて記者 される。 会見が行われた。発表によると、素粒子標準理論のヒッグ http://www.jst.go.jp/pr/announce/20111212/index.html ス粒子が存在するとすれば、その質量は ATLAS 実験では 116GeV か ら 130GeV、CMS 実 験 で は 115 か ら 127GeV 人工多能性幹細胞関連の新展開 12 月 17 日付朝日新聞は、 医薬基盤研究所とバイオベン チャーリプロセルが、ヒト iPS 細胞からつくった肝臓細胞 を製品化したと報じた。4 月に販売開始する予定。これま でに心筋や神経細胞は製品化されているが、肝臓細胞は初 の領域になる。LHC の二大実験である ATLAS と CMS の両 方の実験から、この質量領域に「非常に興味深い示唆」が 見られたが、確定的なことが言えるのは十分なデータ量が 得られる 2012 年とのこと。 http://www.u-tokyo.ac.jp/ja/todai-research/ut-top-ja/lhc-announcement/ http://webcast.web.cern.ch/webcast/ めてとのこと。 また、京都大学再生医科学研究所のグルー プが人の脂肪の細胞から 10 日間で iPS 細胞をつくる技術 を開発したことを報じた。 http://www.asahi.com/science/update/1215/OSK201112150042.html?ref=reca 福島第一原子力発電所1~4号機の廃止措置等に向けた中 長期ロードマップ 12 月 22 日、原子力委員会 第 10 回新大綱策定会議にお いて、東京電力(株)福島第一原子力発電所1~4号機の 厚生労働省、体外受精児の健康・発育状況の追跡調査開始 厚生労働省は、体外受精が子どもの成長に及ぼす影響を検 証するため、生まれてから 6 歳になるまでの健康状態や発 育状況を把握する初めての追跡調査に本年度から乗り出す ことを決めた。体外受精は晩婚化に伴う高齢出産や不妊夫 婦の増加で年々普及。2004 年には国内で約 1 万 8000 人 が生まれた。同省は約 8000 人の調査対象者確保を目標に、 体外受精で生まれた子の親に協力を求める。 http://medical-today.seesaa.net/article/42547878.html 廃止措置等に向けた中長期ロードマップ(概要版)が公表 された。これは 11 月 9 日における枝野経済産業大臣及び 細野原発事故収束・再発防止担当大臣からの指示を受け、 東京電力、資源エネルギー庁、原子力安全・保安院にてと りまとめ、政府・東京電力中長期対策会議において決定し たものである。 使用済燃料プール内の燃料取り出しが開始されるまでの期 間を 2 年以内と想定、これを第 1 期としている。第 2 期 は燃料デブリ取り出しが開始されるまでの期間で 10 年以 内とし、第 3 期は廃止措置終了までの期間でこれは 30 ~ 40 年後としている。 サイエンス誌の 2011 年、科学 10 大発見 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/tyoki/sakutei/siryo/sakutei10/index.htm サイエンス誌は 12 月 23 日号で、2011 年の科学 10 大発 見を発表した。1 位はエイズウイルス(HIV)予防薬の臨 床試験で、 2 位には日本の小惑星探査機「はやぶさ」のミッ ション成功が挙げられている。以下、3 位;化石の遺伝情 報で人類起源に新知見、4 位;光合成に関与するたんぱく 質構造解明、5 位;宇宙創成期の組成を示す水素ガス雲、 6 位;ヒト腸内微生物の生息条件解明、7 位;有望なマラ リアのワクチンの開発、8 位;太陽系の常識を超える天体 の発見、9 位;ゼオライトの製造技術進歩、10 位;老化 細胞を除く抗加齢研究、となっている。 インジウムなど 3 種類を規制対象に 12 月 21 日、厚生労働省は、「化学物質による労働者の健 康障害防止措置に係る検討会」がまとめた平成 23 年度「化 学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会」報 告書を公表した。有害性評価とばく露評価によってリスク が高いと判断された(1)インジウムとその化合物、(2) コバルトとその化合物、 (3)エチルベンゼンのいずれにつ いても規制などが必要とし、リスクの程度に応じて製造・ 使用者に対して必要な措置を講じることを義務付けるよ う、報告書に取りまとめた。厚生労働省では、本報告書を 受けて関係政省令の整備を予定している。 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001ypxy.html 32 PEN January 2012 乳児用食品は 50 ベクレル 臣等に各省の行政から中立な立場で科学技術イノベーショ 12 月 27 日、厚生労働省は、食品に含まれる放射性セシ ンに関する助言を行う科学技術イノベーション顧問を設置 ウムの新たな規制値案をまとめて公表した。牛乳および乳 することが望ましい、④そのうちの 1 名を「首席科学技術 児用食品に関しては一般食品の基準値の半分 50 ベクレル イノベーション顧問(仮称) 」とすべき、⑤支援体制とし /kg となっている。 ては、日本学術会議等の学界及び産業界等との定期的な意 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001z9vp-att/2r9852000001z9zg. 見交換の場の整備及び事務局における調査分析機能の強化 pdf http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2011/12/21/20111221ddm00104 が必要、としている。 0010000c.html http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihu101/haihu-si101.html 総合科学技術会議の組織改編 12 月 15 日、第 101 回総合科学技術会議が開催され、平 成 24 年度アクションプラン対象施策の概算要求内容の精 査結果等が議論された。また当日配布の資料 4 として、吉 川弘之座長を中心に進められてきた科学技術イノベーショ ン政策推進のための有識者研究会による報告書素案が報告 された。報告書素案のポイントは、①「司令塔」として、 内閣府に「科学技術イノベーション戦略本部(仮称) 」を 設置することが望ましい、②「司令塔」は、様々な関係者 のニーズ把握及び科学技術イノベーション関係施策全体の 俯瞰に基づき総合戦略を策定するとともに、適切な予算配 分の方針を示し、その実現に取り組むべき、③内閣総理大 Column 成人を祝う 今年のハッピーマンデーは 1 月9日である。この日全国で 122 万人が新しく成人となった。今年の新成人は、総人口 の 1% を下回る 0.96%、第一次ベビーブームがピークに達した 1970 年の新成人 246 万人の半数を下まわった。 福島第一原子力発電所の事故で警戒区域、計画的避難区域、旧緊急時避難準備区域に指定され、避難を余儀なくされた 新成人は 2700 人に上る。本来居るべきところに戻る見通しが立たない厳しい状況のなかで 2700 人が成人を迎えた。 今年は居るべきところを提供する成人式も企画された。性的マイノリティを対象にした LGBT 成人式が、15 日に世田 谷の成城ホールで開かれる。地域や文化に関係なく、性的マイノリティは約 5% 程度存在するという。 今年の新成人 122 万人は、バブル経済の崩壊の年に生まれ、失われた 20 年と呼ばれる経済の停滞のなかで育ち、大震 災の惨禍が癒えないなかで新しい門出を迎えた。122 万人の新成人の皆さんの明るい未来を願う。 http://www.geocities.jp/lgbtseijinshiki/index.html PEN January 2012 33 速報 第 2 期および第 3 期科学技術基本計画における ナノテクノロジー・材料分野への研究開発投資の統計 2011 年 12 月 14 日、総務省統計局より、 「平成 23 年度 (2)第 2 期および第 3 期科学技術基本計画で戦略的な優 科学技術研究調査」が公表された。この統計で、2010 年 先分野に指定され、ナノテクノロジー・材料研究開発分野 度の資本金 1 億円以上の企業等の産業・特定目的別社内使 の投資は大学、公的研究機関、民間を問わず 2008 年まで 用研究費、非営利団体・公的機関等における組織・学問・ は順調な伸びを示した。 特定目的別内部使用研究費、大学における組織・大学等の (3)2008 年 9 月 15 日の Lehman Shock をはじめとする 種類・学問・特定目的別内部使用研究費等が明らかとなっ 世界的な金融危機は、翌 2009 年のナノテクノロジー・材 た。これで第 2 期および第 3 期科学技術基本計画の 10 年 料分野の研究開発投資、とりわけ民間企業の研究開発投資 間にわたる企業、非営利団体・公的機関、大学におけるナ を大きく冷え込ませる要因となった。しかし、100 年に一 ノテクノロジーおよび物質・材料分野の研究開発資金の使 度の世界同時大不況とまで言われたものの、2010 年度に 用状況、ナノテクノロジー・材料分野全般の研究開発投資 はすでに研究開発投資に回復傾向がみられる。 の推移等がすべて出揃ったので、改めて第 2 期および第 3 (4)昨年 8 月に施行された第 4 期科学技術基本計画は課 期科学技術基本計画の 10 年間における研究開発投資状況 題解決型の科学技術・イノベーション政策となり、研究開 をまとめておく。 発分野の括りが見えにくくなったものの、現在日本のナノ テクノロジー・材料分野に対する研究開発投資は、官民合 この統計の可視化から以下の点が明らかである。 わせて年間おおよそ1兆円規模に達してると思われる。 (1)ナノテクノロジー分野への投資の 3 倍以上の資金が 物質・材料分野の研究開発に投資されている。また、ナノ http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL02100104.do?tocd=00200543 テクノロジー分野、物質材料分野を問わず、民間の研究開 発投資が全体のおおよそ 7 割を占めている。 (1)2001 ~ 2010 年度のナノテクノロジー分野への研究開発投資(百万円) 34 PEN January 2012 (2)2001 ~ 2010 年度の物質・材料分野への研究開発投資(百万円)。比較のために、上に示したナノ テクノロジー分野への投資額と同じ縦軸で表した。 (3)2001 ~ 2010 年度のナノテクノロジー・材料分野への研究開発投資総額(百万円) ナノテクノロジー戦略室 阿多誠文、安順花、関谷瑞木 PEN January 2012 35 【ソフトマター動きのダイナミクス】 生体中での分子の運動性の解明へ期 待 核共鳴散乱法による両親媒性液 晶の小角および広角準弾性散乱測定 (2012.1.11) 京都大学、高輝度光科学研究センター (JASRI)、科学技術振興機構(JST) 京大の研究グループは、高輝度放射 CUTTING-EDGE TECHNOLOGIES 光で共鳴励起した原子核から散乱さ れたガンマ(γ)線のユニークな特 性 を 利 用 し て、 ソ フ ト マ タ ー 中 で 1000 万分の1秒程度の時間で起こる 分子レベルの運動を測定可能にする 方法を新たに開発した。この方法を プレスリリースより 用いて液晶中の分子の運動状態(ダ イナミクス)を調べ、分子間の結び 付きの状態(会合状態)を世界で初 めて明らかにした。 http://www.jst.go.jp/pr/announce/20120111/index. html 【炭素繊維】 フランスにおける炭素繊維製造販売 子会社の 100%株式取得(2012.1.11) 東レ(株) 東レは同社が 70% 出資するフランス の炭素繊維製造販売子会社「Société des Fibres de Carbone S.A.」の全株式 を 取 得 し、100% 子 会 社 化 し た。 フ ランス側のパートナーで、SOFICAR 株 式 の 30% を 保 有 す る Arkema 社 との間で、株式譲渡の合意に至った もの。また、100% 子会社化に伴い、 SOFICAR の 社 名 を「Toray Carbon Fibers Europe S.A.」に変更する。 http://www.toray.co.jp/news/carbon/nr120110.html 36 PEN January 2012 【氷の表面液体相】 る。また、ナノ粒子のアジュバントとしての特性に関する 氷の新しい融け方を発見 2種類の異なる表面液体相の 技術研究をさらに進め、次世代アジュバントの実用化・産 生成 表面液体相が関わる幅広い現象の機構解明に期待 業化に向けた研究を実施していく。 (2012.1.10) http://www.takeda.co.jp/press/article_48463.html 北海道大学、科学技術振興機構(JST) JST 戦略的創造研究推進事業個人型研究(さきがけ) 「光 の利用と物質材料・生命機能」研究領域における研究課題 【低温硬化ポジ型感光性ポリイミド】 「不凍タンパク質作用発現機構の解明を目指したその場光 次世代半導体保護膜向け「低温硬化型ポジ型感光性ポリイ 観察」の一環として、北海道大学の研究グループは融点以 ミド」を開発 残留応力を半減、170℃で硬化できるポジ 下の温度で氷の結晶表面上に、形状が全く異なる 2 種類の 型感光性ポリイミドの開発に世界で初めて成功(2012.1.6) 表面液体相が生成することを発見した。スケートの滑りや 東レ(株) すさや雪結晶の形の変化、食品や臓器の低温(冷凍)保存、 同社は、新たな分子設計技術と架橋技術により、高い耐 雷雲での電気の発生など、表面液体相が重要な役割を果た 薬品性や耐熱性を実現しながら 170℃の低温硬化がで す幅広い現象の機構解明に役立つと期待される。 き、かつ残留応力が従来の低温硬化型材料の約半分となる http://www.jst.go.jp/pr/announce/20120110-2/index.html 13MPa 以下のポジ型感光性ポリイミドの開発に世界で初 めて成功した。本材料は、ポジ型の優れた解像性を有する 【脳情報伝達経路】 とともに、汎用のアルカリ水溶液による現像が可能。 http://www.toray.co.jp/news/rd/nr120106.html 脳の低酸素状態の防御機構に生体ガス分子が関係 脳梗塞 など脳虚血病態の制御法開発へ道(2012.1.10) 慶応大学、科学技術振興機構(JST) JST 課題達成型基礎研究の一環として、慶應義塾大学 医学 部の研究グループは、マウスの脳内で生成されている一酸 化炭素(CO)が、脳梗塞などの低酸素時の脳血管拡張反 応と脳のエネルギー代謝の維持に重要な働きをしているこ とを発見した。「O2 濃度が低下すると CO 濃度が低下し、 さらに H2S 濃度が増加して、血管が拡張する」という情報 伝達経路の発見は、低酸素時のリスクマネジメントを複数 のガス分子が代謝システムを精妙に制御することによって 実行している証明となる。さらにこの発見は、脳梗塞など の病態の制御や、治療の開発へとつながると期待される。 http://www.jst.go.jp/pr/announce/20120110/index.html 【水、ヒ素除去】 世界の飲み水を救うために 飲料水に含まれる有毒ヒ素の 容易かつ迅速な除去材を開発(2012.1.5) 物質・材料研究機構(NIMS) NIMS は、東南アジアだけでも 6000 万人もの人がその汚 染地域に住んでいると警告されているヒ素を、飲料水から 簡単に検出し除去することのできる材料を開発した。本技 術は、高秩序メゾポーラス構造(HOM)と呼ばれる多孔 質物質の内壁にヒ素を感知し、優先的に捕獲する官能基を びっしりと敷き詰めたものであり、水中に微量のヒ素が存 在すると、それを速やかに吸着・除去するとともに、吸着 した段階で色を変えて知らせることもできるため、検出・ 除去の確認が容易に行える特徴がある。 【ワクチン実用化、共同研究講座】 http://www.nims.go.jp/news/press/2012/01/p201201060.html 武田薬品-大阪大学による共同研究講座の設置、ナノ粒 子ワクチンの実用化・産業化に向けた応用基盤の構築 (2012.1.6) 武田薬品工業(株) 、大阪大学 両者は、疎水化ポリ(γ - グルタミン酸) (γ -PGA)ナノ 粒子をアジュバントとしたワクチンの実用化・産業化に向 けた応用基盤の構築を目的とする 3 年間の共同研究講座を 設置することに合意した。共同研究講座では、大阪大学で 開発されたナノ粒子の基盤技術をもとに、武田薬品が有す るワクチン抗原、研究開発基盤、製剤技術、品質管理・規 格化、特許管理等のノウハウを融合させることで、ナノ粒 子ワクチンの実用化・産業化に向けた橋渡し研究を実施す 【がん治療薬 HF10】 がん治療薬 HF10 の臨床研究開始(2012.1.5) タカラバイオ(株)、三重大学 両者は共同で、がん治療薬 HF10 の臨床研究を行うに際し、 12 月 22 日付で契約を締結した。本臨床研究は、タカラ バイオ社が遺伝子治療の臨床開発の推進を目的に三重大学 医学部に設置している遺伝子・免疫細胞治療学講座が中心 となって実施される。HF10 には、ウイルスによる直接的 ながん細胞の殺傷効果に加え、腫瘍免疫(がんに対する免 疫力)を向上させることによる、投与部位以外のがん病変 への効果が期待されるが、このような効果に関する基礎的 PEN January 2012 37 な知見を得ることを目的に、免疫応答に関する評価も行う 【地中熱採熱システム】 計画となっている。 グループ初、地中熱採熱システムを長野工場に導入 自然 http://www.takara-bio.co.jp/news/2012/01/05.htm エネルギーの有効活用により燃料使用量、CO2 排出量を削 減(2012.1.4) 富士通(株) 【酸化ガリウムトランジスタ】 酸化ガリウム(Ga2O3)トランジスタを世界で初めて実現 (2012.1.5) 同社は、地中熱を採熱するシステムを富士通グループで初 めて諏訪市の長野工場に導入し、1 月上旬より運用を開始 する。本システムは、工場敷地内の地中に採熱管を埋め込 情報通信研究機構、( 株 ) タムラ製作所、( 株 ) 光波 み、そこで得た地中熱を熱源として 24 時間稼働している 3 者は共同で、新しいワイドギャップ半導体材料である酸 クリーンルームなどの空調用温水設備への供給に活用す 化ガリウム (Ga2O3) 単結晶基板を用いた電界効果型トラ る。安定性、コスト性に優れた地中熱を利用することで、 ンジスタ(FET)を開発し、その世界初の動作実証に成功 従来の設備と比較し、燃料使用量を原油換算で年間約 47 した。 酸化ガリウムは、そのワイドギャップに代表され キロリットル、CO2 排出量を年間約 120 トン削減すると る材料物性から、高耐圧・低損失なパワーデバイス用途の 見込んでいる。 新しい半導体材料として非常に有望。また酸化ガリウムは、 http://pr.fujitsu.com/jp/news/2012/01/4.html?nw=pr シリコンカーバイド(SiC) 、窒化ガリウム(GaN)といっ た既存のワイドギャップ半導体では不可能な融液成長法に よる単結晶基板の作製が可能であることから、製造に必要 【熱電材料評価】 なエネルギーやコストの大幅な削減が見込まれる。今回開 試料 1 個で熱電材料の性能を最適化することに成功 高性 発したトランジスタに代表される酸化ガリウムパワーデバ 能な熱電材料探索を加速(2011.12.28) イスは、現代の省エネルギー問題に直接貢献することがで 科学技術振興機構(JST)、名古屋大学 きる新しい半導体デバイス研究開発分野であると同時に、 JST 課題達成型基礎研究の一環として、名古屋大学大学院 近い将来の半導体産業の更なる発展に一翼を担う分野にな 工学研究科の太田裕道准教授らの研究グループは、電界効 ると期待される。 果を利用して1つの試料で熱電材料の性能を最適化する画 http://www.nict.go.jp/press/05-1.html 期的な評価手法の開発に成功した。高性能な熱電材料探索 の加速につながる成果。 http://www.jst.go.jp/pr/announce/20111228/index.html 【光により離脱着するゲル】 光照射で材料の接着・解離をスイッチ 着く、離れる、相 手を替える、まるで意思を持ったゲル(2012.1.4) 大阪大学、科学技術振興機構 大阪大学は、光照射により分子の形が変わる「ゲスト分子」 と、そのゲスト分子と結合する「ホスト分子」をそれぞれ 固定した別々のゲルに導入して、これらのゲルがホスト- ゲスト相互作用の強さに応じて特異的に接着し、紫外線を 照射すると離れ、可視光線を照射すると再接着する材料集 積システムを開発した。光照射でゲルの集積を On/Off ス イッチ制御できるシステムを構築するとともに、さらにホ スト分子が光照射によって変化したゲスト分子の構造を認 識して、相互作用のより強いホストとゲストの関係にある 組み合わせに切り替わる(スイッチ)挙動を初めてマクロ スケールで観察することに成功。分子認識に基づくマクロ スケールでの自己組織化が光でスイッチできる方法を世界 で初めて開発した。 http://www.jst.go.jp/pr/announce/20120104/index.html 38 PEN January 2012 【超伝導、フラーレンナノウィスカー】 フラーレンナノウィスカーの超伝導化に成功 軽量でフレ キシブルな超伝導素材の誕生に大きく前進(2011.12.27) 物質・材料研究機構(NIMS) NIMS は、フラーレンナノウィスカーの超伝導化に成功し た。フラーレンナノウィスカーは、ナノサイズのカーボン 素材で、軽くて細長いファイバー形状をしている。従来の 超伝導物質は、超伝導転移温度の比較的高いものは主とし て金属間化合物やセラミックスであり、それらは重量が大 きく硬い材料が多かった。今回の研究により、糸状や布状 のしなやかで軽い超伝導体という、超伝導の新たな素材開 発が可能になる。 http://www.nims.go.jp/news/press/2011/12/p201112270.html 【嗅覚受容体遺伝子】 の時間変化を追跡した。この吸収スペクトルを解析するこ nanoCAGE 法でマウスの嗅覚受容体遺伝子のプロモーター とにより、元の状態(RuII − OH2)の三電子酸化種(RuV=O) 領域を解析 多様な嗅覚受容体が選択的にできるメカニズ を含む5つの中間体が存在することが明らかになった。ま ム解明に貢献(2011.12.26) た、密度汎関数法という手法を用いて求めた三電子酸化種 理化学研究所 のある種の電子密度の分布を、吸収スペクトルの時間変化 理研は、独自に開発した nanoCAGE 法をマウスに適用し、 と比較検討することにより、酸素の発生には三電子酸化種 サンプル量が微量なため RNA 発現解析が困難だった嗅覚 RuV=O が関与しているという結論が得られた。今回明ら 受容体遺伝子のプロモーター領域を網羅的に解析した。そ かにされた新しいメカニズムを触媒分子設計へとフィード の結果、ゲノム上の全ての臭覚受容体遺伝子の 87.5%に バックし、より高活性・高機能の触媒分子の開発へと結び ついて、転写開始点の位置を同定することに成功した。こ 付けることで、人工光合成を可能にする触媒の開発へとつ れは、理研オミックス基盤研究領域ゲノム機能研究チーム ながることが期待される。 と、イタリアの SISSA 神経生物学部門をはじめとする、ノ http://www.ims.ac.jp/topics/2011/111222.html ルウェー、アメリカ、イギリス、ドイツなどの研究者らと の共同研究による成果。 http://www.riken.jp/r-world/research/results/2011/111228/index.html 【テラヘルツ光】 1 兆分の 1 秒間の強電場パルス照射により、半導体の自由 電子数を 1 千倍に増幅 超高速トランジスタや高効率の太 【色素増感太陽電池用ルテニウム錯体色素】 陽電池の開発に期待(2011.12.21) 色素増感型太陽電池で高変換効率を持つルテニウム錯体色 京都大学 素を提供(2011.12.26) 京都大学の研究グループは、ごくわずかな時間にエネル TANAKA ホールディングス(株) ギーが圧縮されたフェムト秒レーザーとニオブ酸リチウム 同社は、田中貴金属グループの製造事業を展開する田中貴 の結晶をもちいて 1MV/cm という世界最高電場強度のテ 金属工業(株)が、色素増感型の太陽電池で世界最高レベ ラヘルツ光を発生させることに成功した。さらに、このテ ルとなる 11.4%以上の変換効率を持つルテニウム錯体色 ラヘルツ光を半導体に 1 兆分の 1 秒という短い時間照射 素を、独占的に提供開始する。本製品を使用した色素増感 するだけで、半導体の中の電気伝導を担う自由電子の数を 型太陽電池は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する 約 1000 倍に増幅することに成功した。実験にもちいた半 効率が 11.4%以上であり、色素増感型太陽電池としては 導体試料は広島大学との共同研究により作製したもの。こ 世界最高レベルの変換効率となる。このルテニウム錯体色 れにより、例えば、超高速動作の光検出器やそれを制御す 素は、台湾国立中央大学の呉春桂教授と陳家原研究員が開 る超高速トランジスタなど、テラヘルツ領域で動作する新 発したもので、変換効率は色素増感型太陽電池の世界的権 しい超高速半導体デバイスの展開が期待される。さらに、 威者であるスイス連邦工科大学のマイケル・グレッツェル キャリア増幅が高速高倍率であることから、高効率な太陽 教授のチームによって測定された。田中貴金属グループは、 電池・発光素子の開発などにも、新たな指針を与えるもの このルテニウム錯体色素の販売ライセンスを台湾国立中央 と期待される。 大学より単独で取得し、独占的に製造販売する。 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2011/111221_1.htm http://release.nikkei.co.jp/attach_file/0299845_01.pdf 【高分子ナノワイヤー作製技術】 【人工光合成】 パルスレーザー照射による世界初の機能性高分子ナノワイ 金属錯体触媒による新規な酸素発生反応のメカニズムを解 ヤー作製技術を開発 分子デバイス開発に飛躍的な促進の 明 人工光合成実現に向けた基礎的知見(2011.12.24) 可能性(2011.12.21) 分子科学研究所、九州大学 物質・材料研究機構(NIMS) 研究グループは、水から酸素を発生させるルテニウム単核 NIMS は、パルスレーザーを照射するだけでその領域にの 錯体触媒が、なぜルテニウム 1 つでも酸素を発生させるこ み選択的に高分子ナノワイヤーを成長させ、さらにそのナ とができるのかを解明し、人工光合成を実現させるための ノワイヤーに各種ナノ材料をドーピングさせて様々な機能 基礎的な知見を得た。触媒として用いているルテニウム錯 性を持たせることに世界で初めて成功した。今回、開発さ 体の水溶液と水の酸化剤である硝酸セリウム(IV)アンモ れた機能性高分子ナノワイヤーの作製手法は、必要とする ニウムの水溶液を高速で混合し、紫外可視吸収スペクトル 任意の機能性ナノ材料と様々な高分子材料へ適用可能であ PEN January 2012 39 るため、この方法で得られる機能性高分子材料は、今後、 シウムを吸着することに成功した。この吸着能は海水中で ますます発展が期待されるスマートフォンのフレキシブル も同様の効果が期待できると考えられる。また、プルシア 基板の配線、小型化が求められている携帯機器アンテナに ンブルーは金属置換によってセシウム吸着能をさらに向上 おけるフレキシブルな高透磁率材料としての実用化が期待 するため、現在、本手法の Co-Fe ブルー類似体などへの適 される。 用を試みている。今後、これら材料の吸着材としての試験 http://www.nims.go.jp/news/press/2011/12/p201112210.html を進め、プロセスを簡略にすることで、量産化への対応を はじめ、実用に近付く展開が期待される。 http://www.jst.go.jp/pr/announce/20111219/index.html 【家庭用燃料電池システム】 家庭用燃料電池(PEFC)の新製品発売(2011.12.20) 大阪ガス(株)、東芝燃料電池システム(株) 、 (株)長府 【蛍光 X 線ナノ膜厚計】 製作所 高性能蛍光 X 線膜厚計「SFT9500X シリーズ」を発売 極微 3 社は、家庭用固体高分子形燃料電池エネファームの新製 小部の金属薄膜の厚さを高精度に測定(2011.12.19) 品を共同で開発した。新製品は、東芝 FCP が燃料電池発 エスアイアイ・ナノテクノロジー(株) 電ユニット、長府が排熱利用給湯暖房ユニットを製造し、 セイコーインスツル(株)の 100%子会社で計測分析装置 大阪ガスが平成 24 年 4 月 2 日(月)より販売を開始する。 の製造販売を行っている SII ナノテク社は、めっき・蒸着 http://www.osakagas.co.jp/company/press/pr_2011/1195483_4332.html 等の極微小部のナノオーダー膜厚を高精度に測定する蛍光 X 線膜厚計「SFT9500X シリーズ」を 12 月 19 日に発売 した。 【電池用 X 線異物検査装置】 http://www.siint.com/news/news_2011_12_19_B.html リチウムイオン電池・燃料電池用 X 線異物検査装置「SEAHybrid」を発売 電池の容量確保、発熱発火の防止、歩留 まり改善等に貢献(2011.12.19) 【分子自己集積】 エスアイアイ・ナノテクノロジー(株) テープ状構造とチューブ状構造、金属錯体を自在に並べる セイコーインスツル(株)の 100%子会社で計測分析装 新規手法を開発(2011.12.19) 置の製造販売を行っている SII ナノテク社は、リチウムイ 分子科学研究所 オン二次電池や燃料電池の電極中に混入する可能性のある 分子研と崇城大学の研究グループは、生体膜の構築原理 20µm 級の微小な金属異物を高速検出、元素同定する検査 に着想を得た、分子間にはたらく弱い相互作用を利用し 装置の製品化を完了し、SEA-Hybrid として発売した。 て、金属錯体を自在に並べる手法の開発に成功した。研究 http://www.siint.com/news/news_2011_12_19_A.html グループは、生体膜などの自然界のナノ構造体で用いられ ている水と油がはじき合う弱い相互作用に着想を得て、本 来相互作用を示さないルテニウム二核錯体に、対イオンと 【セシウム吸着剤】 新たな高機能性材料メソポーラス・プルシアンブルーの合 た。その結果、水になじみやすいルテニウム二核錯体を有 成に成功 表面積の増大によるセシウム吸着性能の向上 機溶媒の中で自己集積させることに世界で初めて成功し、 (2011.12.19) 40 して水にも油にもなじむ性質をもつ脂質陰イオンを導入し 2 種のルテニウム錯体が脂質陰イオンによって規則的に配 物質・材料研究機構(NIMS) 、科学技術振興機構(JST) 列させられた超分子ナノ構造体が構築できた。このナノ構 NIMS は、エッチングを使った新合成法を用いて、プルシ 造体は、ごく簡単な操作により、溶液中でテープ状構造と アンブルーのナノ粒子を分散させた溶液に水溶性高分子を チューブ状構造とを可逆的に変化することができ、また、 加え、酸性条件で攪拌することにより、自発的に無数のナ 分子の規則的な配列によって見かけ上色が薄くなる「淡色 ノ細孔を粒子中に形成させることに成功した。その結果、 効果」を、本来相互作用しない金属錯体において初めて発 表面積は 1g あたり 330m2 以上の高い値を示し、今まで 現させることができた。今回の成果は、高機能の金属錯体 に報告されているすべてのプルシアンブルーの中で最も大 を用いて、自発的に組織化したナノ構造体を構築すること きい表面積を達成した。これは、市販のプルシアンブルー を可能にしたもの。この手法をさらに発展させることで、 粒子と比較すると 10 倍以上の表面積である。そのメソポー ナノサイズの次世代半導体や分子機械を開発するための新 ラス・プルシアンブルーを用いて、セシウム吸着実験を行っ しい設計指針を提供できることが期待される。 たところ、市販のプルシアンブルーに比べて 8 倍以上のセ http://www.ims.ac.jp/topics/2011/111216.html PEN January 2012 【セパレータ】 リチウムイオン二次電池用の高耐熱セパレータを開発 (2011.12.16) パク質の塊が蓄積し、これにより神経細胞を死に至らしめ る。その過程において神経細胞の中でカルシウムの増加が 生じることは知られていたが、本研究では、カルシウム増 三菱樹脂(株) 加に反応して活性化するカルパインが、アミロイド蓄積に 同社は、需要の拡大が見込まれる自動車用リチウムイオン 伴う神経細胞の傷害を促進するのみならず、アミロイド蓄 二次電池市場をターゲットに、コスト競争力のある高耐熱 積そのものも加速することを明らかにしたもの。さらに今 セパレータを開発した。同社は、リチウムイオン二次電池 回はカルパイン活性を制御した際のアミロイド蓄積と神経 用部材の製造・販売を手がける三菱化学と連携しながら、 炎症の変化を、ポジトロン断層撮影(PET)により生体を 独自の乾式法のリチウムイオン二次電池用セパレータのセ 傷つけることなく捉えることに成功し、こうしたイメージ パレントを 2009 年に開発した。セパレントは、同社が長 ング技術によりヒトでカルパイン阻害治療の効果を評価で 年培ってきた材料設計技術とフィルム製膜技術等を駆使し きることが示された。 て開発した高機能セパレータで、乾式法でありながら、孔 http://www.nirs.go.jp/information/press/2011/12_14.shtml の高次構造コントロールにより湿式法に近い孔構造を有 し、低温出力、サイクル寿命等の諸電池特性を併せ持つこ とが特徴。2011 年から国内外数社への本格販売を開始し、 今後さらなる需要が見込めることから、現在、新たな生産 ラインを増設中。今後、自動車用リチウムイオン二次電池 メーカーによる品質評価を経て、2012 年に発売し、2013 年度から本格量産化を行う予定。 http://www.mpi.co.jp/news/201112160300.html 【LiB 正極材料】 中国にリチウムイオン電池正極材の製造・販売拠点を新設 (2011.12.15) 旭硝子(株) 同社は、モバイル機器や電気自動車に用いられるリチウム イオン電池部材事業への取組み強化の一環として、リチ ウムイオン二次電池(LiB)正極の製造・販売拠点を中国 に新設する。当社子会社の AGC セイミケミカル(株)が、 【廃熱発電】 廃熱から電気を生み出す粒子の簡便な製造法を開発 エ ネルギーの無駄を激減させる廃熱発電が低コストで実現 (2011.12.16) 中国の LiB 正極材メーカーを子会社化し、2012 年 4 月頃 に生産を開始する予定。これにより、同社グループにおけ る当該製品の生産能力は倍増となる。 http://www.agc.com/news/2011/1215.pdf 物質・材料研究機構(NIMS) 、 (株)ミツバ NIMS 電池材料ユニットとミツバは、自動車エンジン、工 場の炉から排出される大量の熱を有効に利用して電気を作 り出す廃熱発電。これをおこなう粒子を簡便で安価に製造 する方法を開発した。今回成功した製造法では Mg 塊と Si 粉末をカーボンボードに入れ、電気炉中で Mg だけが溶け る温度で加熱するだけで Mg2Si 化合物粒子を簡便に合成で きる。大型設備を必要とせず、粉砕工程も必要ないために 従来法での問題点をすべて解消でき、製造コストを大幅に 下げることが出来る。また、合成する粒子の大きさも、原 料の Si 粉末粒径を変えるだけで、自在に調整できる。 http://www.nims.go.jp/news/press/2011/12/p201112160.html 【2 型糖尿病発症遺伝子領域】 東アジア人の 2 型糖尿病発症に関わる遺伝子領域を 8 つ 発見 糖尿病の正確な予測と積極的な予防対策へ貢献 (2011.12.15) 理化学研究所 理研は、ヒトゲノム全体に分布する約 250 万個の一塩基 多型(SNP)について、東アジア人を対象とした大規模な 解析を行い、欧米人を対象とした解析では見つからなかっ た 8 つの新しい 2 型糖尿病に関連する遺伝子領域を発見 した。欧米人 47,117 人を対象にこの 8 領域を調べたとこ ろ、3 つは関連があったが、5 つははっきりした関連が認 められず、これらは東アジア人に特有の領域と考えられた。 【アルツハイマー発症メカニズム】 アルツハイマー病の新たな発症メカニズムを解明 治療薬 開発とその評価法にも新手段を提唱(2011.12.15) 放射線医学総合研究所、理化学研究所 両者はアルツハイマー病のアミロイド蓄積と神経細胞死 に、カルパインという酵素が密接に関与することを明らか にした。アルツハイマー病ではアミロイドと呼ばれるタン 東アジア人は、欧米人に比べ肥満の程度が軽くても 2 型糖 尿病になることが知られており、遺伝的に 2 型糖尿病を発 症しやすい体質を持っているのではないかと考えられてい る。今回の成果は、日本人をはじめとした東アジア人 2 型 糖尿病の発症の仕組みの解明につながるとともに、新たな 治療薬開発にも結びつくものと期待できる。 http://www.riken.jp/r-world/research/results/2011/111215/index.html PEN January 2012 41 【細胞外マトリックス】 【ナノドメイン構造圧電体薄膜】 幹細胞の分化を制御するマトリックス材料を開発 再生 ナノドメイン構造を有する圧電体薄膜の超高速応答を実証 医療で目的の臓器へ誘導制御するメカニズム解明に貢献 高速制御による高性能製品の開発に期待(2011.12.13) (2011.12.15) 高輝度光科学研究センター、東京工業大学、物質・材料研 物質・材料研究機構(NIMS) 究機構、京都大学 NIMS は、再生医療で重要な役割を果たす幹細胞の分化・ 共同研究チームは、動作の切り替え(スイッチング)の更 誘導を制御できるマトリックス材料の開発に成功した。本 なる高速化を可能にすると期待されている、“ ナノドメイ 研究成果は再生医療において万能性を持つ iPS 細胞や ES ン ” と呼ばれる微小領域を有する新しい圧電体薄膜が 200 細胞、幹細胞を目的の組織に分化させる際に、細胞外マト ナノ秒 (1 千万分の 2 秒 ) という超高速でスイッチング可 リックスが果たす役割を解明する研究において重要な役割 能であることを世界で初めて確認した。圧電体薄膜を 1 を果たすと期待される。また本材料は、骨分化と脂肪分化 千万分の 2 秒というナノ秒オーダーで制御できる可能性を のバランス不全によって引き起こされる骨粗しょう症の疾 示した今回の成果は、圧電体薄膜を用いた MEMS の高速 患メカニズム解明にも有用と考えられる。 化を通じて高性能製品の開発に大きく貢献するもの。例え http://www.nims.go.jp/news/press/2011/12/p201112150.html ば、インクジェットプリンタでは、インクの塗布を制御す る MEMS の処理速度が速くなれば、従来よりも少ないイ ンク量で微細な印刷が可能になるし、自動車用エンジンで 【LiB 負極ハードカーボン】 は、燃料の使用効率を制御するセラミックス部品にナノド リチウムイオン二次電池向けハードカーボンに関する共同 メイン構造を適用することで、燃費向上や排ガス抑制に貢 開発・事業化(2011.12.14 ) 献することが期待できる。 (株)クレハ http://www.nims.go.jp/news/press/2011/12/p201112130.html クレハと(株)クラレは、リチウムイオン二次電池(LiB) の負極材「ハードカーボン」の新規品の共同開発を進め て来たが、このほど植物由来原料の新規開発品「バイオ 【光通信、量子ドット】 カーボトロン」の共同事業化に向けて合意した。来春を目 ナノテクノロジーで高精度かつ波長可変特性を持つ “ 光 処にクレハと伊藤忠商事の合弁による電池材料事業会社で 源 ” を開発 新しい周波数帯を利用した超高速・大容量光 ある株式会社クレハ・バッテリー・マテリアルズ・ジャパ 通信への道を拓く(2011.12.13) ン(KBMJ)にクラレが資本参加・人材投入するとともに、 情報通信研究機構(NICT) KBMJ とクラレグループのクラレケミカル株式会社の生産 NICT は、ナノレベル構造の半導体量子ドットを活用し、 合弁会社を新設し、2013 年には年産 1 千トンレベルで量 現在、光情報通信で利用されていない波長を含む帯域にお 産・供給体制を構築することで基本合意した。 いて、多くの波長の光を高精度に生成する光源の開発に世 http://www.kureha.co.jp/topics/news_s/news_details.php?id=898 界で初めて成功した。さらに、この光源とフォトニック結 晶ファイバーを利用した光伝送実験に成功し、光情報通信 における新たな波長帯域利用の可能性を世界に先駆けて実 【非対称細胞分裂】 核を非対称にする新たなメカニズム(2011.12.13) 現在の光通信波長帯の約 10 倍の光周波数資源(約 70 テ 理化学研究所 ラヘルツ)を確保でき、効率良く帯域を利用することが可 理研は、線虫 C.elegans の非対称分裂をモデルにした研究 能になる。また、量子ドットやフォトニック結晶ファイバー で、微小管の非対称性が核内因子の非対称性を導き、娘細 はナノレベルの構造を持つため、ナノテクノロジー活用に 胞の運命決定に寄与していることを明らかにした。この研 よる光情報通信の技術革新が期待される。 究成果は Cell 誌の 9 月号に掲載されている。 http://www.nict.go.jp/press/2011/12/13-1.html http://www.cdb.riken.go.jp/jp/04_news/articles/11/111214_spindlemechanism. html 42 証した。今回開発した「量子ドット光源技術」によって、 PEN January 2012 【蛍光マウス】 ライブイメージングに適した新たな蛍光マウスを開発 リコン起立型チャネル(フィンチャネル)の加工を高精度 に行うと、オン電流ばらつきが低減すると予測された。さ (2011.12.12) らにばらつき低減に有効なフィンチャネルの加工法を提 理化学研究所 案した。14 nm 世代以降の SRAM(Static Random Access 理研は、核や細胞膜など7種類の細胞内小器官を条件特異 Memory)をはじめとする集積回路では、許容量を超えて 的に蛍光標識できる 12 系統のマウスを開発した。ライブ オン電流がばらついたトランジスタが回路動作の不具合を イメージングに適した十分な蛍光シグナルが得られ、また、 引き起こし、これによって素子の歩留まりが低下すること 二重標識も可能であることが確認された。既に汎用され が最大の課題となっていたが、今回の成果はこの課題の解 ている Cre-loxP システムを発現制御系に用いているため、 決に貢献するものと期待される。 容易に発現部位を限定できる。この研究成果は GENESIS http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20111208/pr20111208.html 誌の 7 月号に掲載され、これらのマウスの配布を開始して いる。 http://www.cdb.riken.go.jp/jp/04_news/articles/11/111212_liveimagingmice.html 【炭素繊維、軽量部材】 世界初の熱可塑性 CFRP 量産技術を量産型自動車へ 量産 型自動車向け CFRP 製品の共同開発(2011.12.9) 帝人(株) ゼネラルモーターズ(GM)社と帝人は、帝人が世界に先 駆けて開発した、1 分以内のタクトタイムで、熱可塑性樹 脂を使用した炭素繊維複合材料(CFRP)によるコンポジッ ト製品を量産する技術を活用することにより、今後GMが 世界で市場展開する乗用車、トラック、クロスオーバー などの量産車に向けて共同で熱可塑性 CFRP の製品開発を 行うことを合意し、12 月 8 日に契約を締結した。この共 同開発により、GM は、主力車種に熱可塑性 CFRP による コンポジット製品を導入するポテンシャルを持つことにな る。一方、帝人は、これまで一部の高級車などに限られて きた CFRP の用途を量産車へと拡大することができ、これ まで成し得なかった CFRP 製コンポジット製品による量産 車の大幅な軽量化の実現、および構造骨格材としての採用 の加速に向けて大きく前進することになる。 http://www.teijin.co.jp/news/2011/jbd111209.html 【オン電流ばらつきの主要因解明】 14 nm 世代立体型トランジスタの特性ばらつきの主要因を 解明(2011.12.9) 産総研 産総研は、14 nm 世代立体型トランジスタ(フィン FET) のオン電流ばらつきの主要因を解明した。トランジスタの オン電流ばらつきの要因は、しきい値電圧ばらつき、寄生 抵抗ばらつき、相互コンダクタンスばらつきである。今 回、各要因の寄与を詳細に解析することで、14 nm 世代 のフィン FET では相互コンダクタンスばらつきがオン電 流ばらつきの主要因となることを明らかにした。また、シ PEN January 2012 43 2011 年に注目を集めたトピックス、 2012 年への展望 EE Times の 2012 年の注目技術:ト ピックス 20 件、MEMS、Internet of Things、Plastic electronics 他 EE Times' 20 hot technologies for 2012 http://www.eetimes.com/electronicsnews/4231126/EE-Times--20-hot-technologiesfor-2012 GTM の 2011 年の記事リスト:グリー 豊蔵レポートより ン テ ッ ク メ デ ィ ア(GTM) 、トップ 10、Solyndra 社の破綻(第 5 位)他 Top Ten GTM Articles of 2011 http://www.greentechmedia.com/articles/read/topten-gtm-articles-of-2011/ 変換効率トップ 10:多結晶シリコン 太陽光発電モジュール、Solarplaza (ソーラー電力産業に関するプラット フォーム) Top 10 polysilicon solar PV modules http://www.electroiq.com/articles/pvw/2011/12/ top-10-polysilicon-solar-pv-modules.html GTM が選ぶ 2011 年トピックス:数 字で示すグリーンテクノロジー 7 Best Greentech Media Stats of 2011 http://www.greentechmedia.com/articles/read/7favorite-gtm-stats-of-2011/ 44 PEN January 2012 インテルが選ぶ 2011 年トピックス:10 大ニュース、イン 12 月の注目記事 テル(米 Intel Corp. の日本法人) インテルが 10 大ニュースを発表、震災後の事業継続やつ イ ン ク ジ ェ ッ ト 印 刷 素 子:CNT 薄 膜 ト ラ ン ジ ス タ、 有 くばプロジェクトなど 機 EL ディスプレイ、低コスト、スケーラブル、Aneeve http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20111220/202844/ Nanotechnologies 社(UCLA のスタートアップ企業) Ink-jet printing for nanotube transistor circuits http://www.universityofcalifornia.edu/news/article/26745 2012 年のビジネス展望:半導体デバイス、KPMG、経営 層への意識調査 Survey: Chip execs sour on 2012 industry growth 地震の科学:摩擦、ナノスケール実験、frictional aging、 http://www.electroiq.com/articles/sst/2011/12/survey-chip-execs-sour-on-2012- 接触変形、量と質の増加 industry-growth.html Researchers demonstrate earthquake friction effect at the nanoscale 太陽光発電関連産業の 2011 年トピックス:PV-Tech 製品 http://www.sciencedaily.com/releases/2011/11/111130141849.htm トップ 10 Top 10 PV-Tech Product Reviews of 2011 http://www.pv-tech.org/news/top_10_pv_tech_product_reviews_of_2011 ナノメディシン:ナノ粒子、薬剤耐性菌、細胞壁・細胞膜 を切断、世界を変えるアイデア、IBN 研究所、IBM アルマ デン研究センター PV-Tech が選ぶ 2011 年トピックス:PV-Tech 記事トップ 10 Nanomedicine breakthrough by IBN and IBM named top 10 world changing ideas by Scientific American http://www.nanowerk.com/news/newsid=23570.php Top 10 PV-Tech News stories of 2011 http://www.pv-tech.org/news/top_10_pv_tech_news_stories_of_2011 ナノリスク:ナノ毒物学、専門家不足、ナノ製品の安全性、 太陽光発電関連の 2011 年トピックス:太陽光発電関連の 出来事、greentechsolar プロジェクト概要、DECHEMA、VCI、EASAC A decade of research on nanotechnology risks http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=43976 Solar Power Year in Review 2011 http://www.greentechmedia.com/articles/read/Solar-Power-Year-in-Review-2011/ 研究開発政策:欧州委員会(EC)、研究助成新ルール、提案、 Nanotechweb.org が選ぶ 2011 年トピックス:ナノテク ノロジー関連記事トップ 5 Nanotechweb.org: best of 2011 http://nanotechweb.org/cws/article/tech/48208 コメント(保護主義政策、オープンプログラム、ルールの 簡素化、制限される商業化) Europe Proposes New Conditions on Research and Development http://www.nytimes.com/2011/12/01/business/global/europe-proposes-newconditions-on-research-and-development.html?_r=1&ref=technology 米サイエンス誌が選ぶ 2011 年トピックス:科学 10 大発 見 中国の対米政策:太陽光発電企業(7 社) 、米国際貿易委 Science’s Breakthrough of the Year: HIV Treatment as 員会、米商務省、反ダンピング調査、反補助金調査 Prevention 中国太陽光発電企業、米国の調査に積極対応 http://www.aaas.org/news/releases/2011/1222sp_boy.shtml http://japanese.cri.cn/881/2011/11/30/142s183646.htm PEN January 2012 45 結晶 Si 型太陽電池:IMEC 他、シリコン太陽電池産業提携 ナノテクノロジー軍事技術:上院承認、国防総省、ナノテ プログラム、FZ シリコン基板、櫛歯型バックコンタクト、 クノロジー研究開発センター、ニューヨーク州立大学アル Si 表面加工(ピラミッド型ランダム凹凸) 、電力変換効率 バニー校、ナノスケール科学工学カレッジ 23.3%、2x2 cm2 Senate approves $50 million for nanotechnology R+D at imec's interdigitated back contact solar cells reach 23.3% UAlbany efficiency http://www.nanowerk.com/news/newsid=23612.php http://www.electroiq.com/articles/pvw/2011/12/imec-interdigitated-back-contactsolar-cells-23-3-efficiency.html 中小企業支援連邦研究プログラム:中小企業イノベーショ ン研究(SBIR) 、中小企業技術移転(STTR) 、上院承認、 グラフェン:エネルギー応用、太陽電池、透明導電性電極、 論争経緯 リチウムイオン二次電池、燃料電池、スーパーキャパシタ Senate Okays Changes to Program for High-Tech Start-Ups Graphene for Energy http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2011/12/senate-okays-changes-to- http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=43992 核融合研究:ITER、超大型国際プロジェクト、資金調達、 欧州連合(ホスト、45%負担) 、コスト超過(推定コスト 約 3 倍) 、農業補助金の転用 Europe Finds €1.3 Billion Needed for ITER Overruns http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2011/12/europe-finds-13-billionneeded.html?ref=hp program-.html?ref=hp リ サ イ ク ル: 硬 質 プ ラ ス チ ッ ク ボ ト ル リ サ イ ク ル 率 (27.5%) 、リサイクル材の革新的な使用方法(道路、橋、 鉄道枕木など)、プラスチックポリマー、ラトガーズ大学 Hard Plastic Bottles, Reborn as a Bridge http://green.blogs.nytimes.com/2011/12/02/plastic-bottles-reborn-as-abridge/?ref=energy-environment 21 世紀の社会科学:NSF 報告書「モザイクの再構築」 、行 書籍:宇宙太陽光発電所 動科学・社会学・経済学の貢献、脳と行動、創造性と革新、 エネルギー問題解決へ、宇宙に目を向けよう 危機と防災 / 管理、教育と学習、ソーシャルネットワーク ダイナミクス 「宇宙太陽光発電所」(松本紘著) http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20111202/202135/ "Mosaic Report" Outlines Strategies and Priorities for Future Social, Behavioral and Economic Sciences http://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=122464&org=NSF&from=news 集光型太陽熱発電:メタマテリアル、単結晶タングステン にナノスケール円筒状孔、等間隔微細孔配列、2 次元配列、 リサイクル:バッテリー、水銀、鉛、カドミウム、ニッ ケ ル、 亜 鉛、 マ ン ガ ン、 溶 媒 抽 出 工 程( 酸 extraxtant Cyanex923 を使用) Nanotechnology could make battery recycling 熱変換効率 78%(予測値)、MIT Research may yield thermo PVs sans mirror arrays http://www.eetimes.com/electronics-news/4231077/Research-may-yield-thermoPVs-sans-mirror-arrays http://www.nanoscalereslett.com/content/6/1/549 economically attractive http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=23592.php ヘテロ接合太陽電池:Roth & Rau 社(独)、セル電力変換 効率 21%、フラウンホーファー研究所認定、6 インチ単 光チップ間相互接続:オンチップ光インターコネクショ ン、シリコンナノフォトニクスデバイス、エクサスケール スーパーコンピュータ、国際固体素子回路学会(ISSCC) 、 IBM、Intel、NEC IBM, Intel, Partners ,Optical Chip-to-Chip Interconnects http://www.xbitlabs.com/news/other/display/20111130213022_IBM_and_Intel_ to_Talk_About_Mainstream_Optical_Chip_to_Chip_Communication.html 46 PEN January 2012 結晶ウエハ、コスト 15%減 Roth & Rau achieve 21% efficiency on 156mm wafer http://www.pv-tech.org/news/roth_rau_achieve_21_efficiency_on_156mm_wafer 有機太陽電池:Heliatek GmbH、セル電力変換効率 9.8%、 学 会 ト ピ ッ ク ス: IEDM、3D 22-nm Tri-Gate transistor、 フラウンホーファー研究所認定、タンデムセル、低温成膜 III - V ナノワイヤー、チャネル長サブ 10 nm トランジスタ プロセス IEEE Meeting Plays Host to the Nanomaterials that Aim to Heliatek achieves 9.8 percent organic solar cell efficiency Displace Silicon http://www.eetimes.com/electronics-news/4231100/Heliatek-achieves-9-8-percent- http://spectrum.ieee.org/nanoclast/semiconductors/nanotechnology/ieee-meeting- organic-solar-cell-efficiency plays-host-to-the-nanomaterials-that-aim-to-displace-silicon 国 際 会 議 予 告: International Conference on Advanced Materials、Science and Engineering、ICAMSE-12(2012 年 7 月 1 ~ 4 日) 、ナノテクノロジー、材料開発と応用、 電子機器、エネルギー、バイオテクノロジーと環境 International Conference in Nanotechnology IEDM 報告:IBM、レーストラックメモリ、グラフェン高 周波デバイス、CNT トランジスタ(チャネル長 10nm 以下) IBM demos racetrack memory and nanotech chips http://www.electronicsnews.com.au/news/ibm-demos-racetrack-memory-andnanotech-chips http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=44005 有機薄膜太陽電池:ドイツ Heliatek 社、タンデム構造、 薄膜 Si 太陽電池:Oerlikon Solar 社(スイス) 、モジュー セル変換効率 9.8%、曲線因子値改善、公式認証値 ル製造コスト(2014 年、0.35 ユーロ /W) 、低価格化競争 Heliatek 社が有機薄膜太陽電池で効率 9.8%,認証有りで 加速、発電コスト(イタリア南部、0.10 ユーロ /kWh) は世界最高 薄膜 Si 太陽電池の製造コスト、Oerlikon 社が「2014 年に http://techon.nikkeibp.co.jp/PV/ 0.35 ユーロ /W」と宣言 http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20111205/202233/?ST=PV Ge MOSFET:GeOx ゲート絶縁膜(等価酸化膜厚 0.98nm) 、 高キャリア移動度、nMOS(937cm2/Vs)、pMOS(526cm2/ IMEC の ア ク テ ィ ビ テ ィ:IEEE 国 際 電 子 デ バ イ ス 会 議 (IEDM、12 月 5 日 ~ 7 日 ) 、 発 表 論 文 17 件、resistive- Vs)、高品質 MOS 界面 Ge MOSFET のゲート絶縁膜のスケーリングに道、東大が RAM cell(RRAM) 、パワーデバイスや CMOS デバイスの 1nm を切る EOT と高移動度を両立 信頼性、次世代型 CMOS(20 ~ 14nm)他 http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20111125/201930/?rt=nocnt Imec presents 17 papers at IEDM 2011 http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=44013 透明薄膜トランジスタ:低温液相プロセス、SnO2 チャネル、 学会報告:IDTechEx、Photovoltaics USA 2011、プリンテッ ドエレクトロニクス Printed Electronics 2011: Chips, inks, tissue boxes, and apps in between ZrO2 ゲート絶縁膜、電子移動度(100cm2/Vs)、オン / オ フ比(105)、カリフォルニア大学バークリー校 高性能な透明トランジスタを液相プロセスで実現へ、期待 の無機材料が登場 http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20111207/202294/ http://www.electroiq.com/articles/sst/2011/12/printed-electronics-2011-chipsinks-tissue-boxes-and-apps-in-between.html スーパーキャパシタ:多孔質スポンジ構造、簡単な製法、 世界最小電子回路:配線幅最小寸法(15nm) 、量子的現象 (クーロン・ドラッグ)の検証、マギル大学(カナダ) 、米 Sandia National Laboratories(SNL) Researchers Develop One of the World’s Smallest CNT コーティング、MnO2- CNT スポンジスーパーキャパ シタ Carbon nanotube-coated sponge makes an excellent supercapacitor http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=23649.php Electronic 2011-12-world-smallest-electronic-circuits PEN January 2012 47 次世代不揮発性メモリ:ReRAM、世界最小面積(10x10nm2 PV セル高効率化技術:ハイブリッド有機 ・無機材料、電 未 満 ) 、10-nm cell、Hf/HfOx resistive element stack、 子の誘導とチャネリング、ボトムアップ製法、ポリマー被 IMEC、CMOS プ ロ グ ラ ム( INTEL, Micron, Panasonic, 覆ナノワイヤーの整列配列、ZnO ナノワイヤー、ポリチオ Samsung, TSMC, Elpida, Hynix, Fujitsu and Sony) フェン誘導体側面付着、コアシェル構造ナノワイヤー、共 Imec presents the world's smallest, fully-functional HfO2- 役ポリマー、リオトロピック相 based Resistive RAM cell Yale engineers making solar power more efficient http://www.nanowerk.com/news/newsid=23675.php http://www.nanowerk.com/news/newsid=23686.php IEDM 概要:EE Times による IEDM 関連記事まとめ(18 件) マイクロマシンハーベスタ:振動エネルギー、圧電材(窒 IEDM compendium 化アルミニウム) 、6 インチウエハレベル真空パッケージ http://www.eetimes.com/electronics-news/4231211/IEDM-compendium 技術、出力電力(489µW)、Imec 、Holst Centre、2011 年 IEDM Imec presents MEMS energy harvester suitable for shock- 米国 R&D 資金:歴史的な財政赤字、連邦予算カット、基 induced energy harvesting in car tires 礎科学の国民認識、政策立案者へのアウトリーチ、科学者 http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=44037 の説明責任 Scientists Need to Be More Visible to Public and Lawmakers to Avoid Deep Funding Cuts, Policy Experts Say http://www.aaas.org/news/releases/2011/1207leadership_seminar.shtml 中国の太陽電池業界:約半分が生産停止、慢性的供給過剰、 大規模な価格下落、広州日報 Report claims 50% of Chinese solar firms have ceased production http://www.pv-tech.org/news/report_claims_50_of_chinese_solar_firms_have_ グラフェン:フレキシブルエレクトロニクス、インクジェッ ceased_production ト印刷、ドロップオンデマンドインクジェット印刷、酸化 亜鉛ナノ粒子インキ、CNT インキ、薄膜トランジスタ、ケ ンブリッジ大学 Ink-jet prints graphene electronics http://nanotechweb.org/cws/article/tech/48067 放射能海洋汚染:福島原子力発電所、放射性漏れ、意図的、 非意図的海洋流出、海洋堆積物に蓄積、海洋生物への影響 を懸念、NSF 助成金 Scientists Assess Radioactivity in the Ocean from Japan Nuclear Power Facility 技術移転:DOE、パイロットイニシアチブ、国研・産連携、 http://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=122542&org=NSF&from=news 商業化障壁、民間投資 Energy Department Announces New Initiative to Remove Barriers for Industry to Work with National Labs, Commercialize Technology http://energy.gov/articles/energy-department-announces-new-initiative-removebarriers-industry-work-national-labs 水分解:水素発生反応、触媒、白金表面、ニッケル水酸化 金属錯体クラスター、制御配列、アルゴンヌ国立研究所 Argonne team develops new two-step process that greatly enhances activity of hydrogen evolution in water-splitting http://www.greencarcongress.com/2011/12/anl-20111209.html http://www.sciencemag.org/content/334/6060/1256 ナノリスク評価:デンマーク環境保護庁、プロジェクト、 NanoRiskCat、ナノ材料の危険性評価、スクリーニングツー ルの開発 Danish EPA funds NanoRiskCat - a conceptual decision support tool for nanomaterials http://www.nanowerk.com/news/newsid=23677.php 48 PEN January 2012 米国競争力奪回助成:SUNPATH プログラム、十年後のコ 市場予測:金属ナノ粒子およびナノ構造(ナノワイヤー、 スト目標(75%減) 、22 地域チーム採択(Rooftop Solar ナノロッド、nanospeheres、等)IT、エレクトロニクス、 Challenge 助成金) 、PV モジュール、太陽電池、PV 基板、 センサー、太陽電池、エネルギー貯蔵、環境保全技術、 モジュール部品の工業規模実証試験 NanoMarkets Reining In the ‘Soft Costs’ of Solar NanoMarkets Announces New Upcoming Report http://green.blogs.nytimes.com/2011/12/09/reining-in-the-soft-costs-of- "Nanometals in Electronics and Energy Markets -2012 solar/?ref=energy-environment and Beyond" Set for Release on December 21, 2011 http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=44074 EU プロジェクト:EU ROCOURSE プロジェクト、がん登 録リンク、データベース Linking up cancer registries: EU-funded project on track ナノ材料市場:BCC リサーチ、ナノ複合材料、ナノ粒子、 http://cordis.europa.eu/fetch?CALLER=EN_NEWS&ACTION=D&SESSION=&R ナノ粘土、ナノチューブ、5 年間予測 CN=34121 Global Market for Nanocomposites, Nanoparticles, Nanoclays, and Nanotubes http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=44126 市場調査:PV インストール、2011 年(23.8GW、前年度 比 34%増) 、2011 年順位(伊、独、米国、中国、日本、仏)、 ポリシリコン価格下落、競争激化、IHS 調査会社 PV installations to hit 23.8GW, a 34% increase over 2010, according to IHS 市場調査:太陽電池モジュール、世界出荷量予測(2015 年 に 約 2 倍 )、2011 年(22.7GW)、2015 年(43.8GW) 、 市場の中心欧州からアジア太平洋地域へ、IDC 調査 http://www.pv-tech.org/news/pv_installations_to_hit_23.8gw_a_34_increase_ Solar PV module shipments doubling by 2015 over_2010_according_to_ihs http://www.electroiq.com/articles/pvw/2011/12/idc-solar-pv-module-shipmentsdoubling-by-2015.html 発電コスト予測:エネルギー・環境会議(コスト等検証委 員会) 、2030 年発電コスト試算結果公表、原発(火力発電 並み、従来の 5 割高、8.9 円) 、住宅用太陽光発電(最低 9.9 円 /kWh) 、陸上風力発電(8.8 円 /kWh) 原発の発電コスト火力並み / 従来の 5 割高、8.9 円 http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00213468.html 熱伝導率の制御:ホウ素ナノリボン、ファンデルワールス 力、ナノリボンペア、インタフェース、バンダービルト大 学 New Method for Enhancing Thermal Conductivity Could Cool Computer Chips, Lasers and Other Devices http://www.sciencedaily.com/releases/2011/12/111214125901.htm 政府投資効果:助成金、2009 年米国再生・再投資法 (ARRA)、 国立衛生研究所(NIH) 、雇用促進 NIH's Stimulus Money Created at Least 21,000 Jobs 米国ナノテクノロジー予算:FDA、毒性研究、国家ナノテ クノロジー調整局、メトリクス開発、NNI http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2011/12/nihs-stimulus-money-created- U.S. Lead in Nanotechnology Depends on Growth of FDA at.html?ref=hp and Gov’t Initiatives http://www.genengnews.com/insight-and-intelligence/u-s-lead-in-nanotechnologydepends-on-growth-of-fda-and-gov-t-initiatives/77899511/ 産学協力:提携(CEA-Leti、カリフォルニア工科大学)、 分析ピクセル(APIX) 、ガスクロマトグラフィー、ナノエ レクトロメカニカルシステム(NEMS)センサー CEA-Leti and Caltech Alliance for Nanosystems VLSI announce first startup http://www.nanowerk.com/news/newsid=23731.php センサー:特定対象化学物質検出オープン足場、金属 - 有 機構造体(Metal-Organic Framework: MOF)、蛍光分子、 多孔性金属錯体、スポンジ状構造、MIT New Detectors Developed at MIT Could Provide Easy Visual Identification of Toxins or Pathogens http://www.labmanager.com/?articles.view/articleNo/6490/article/New-DetectorsDeveloped-at-MIT-Could-Provide-Easy-Visual-Identification-of-Toxins-or-Pathogens PEN January 2012 49 3 次元構造太陽電池: Si 太陽電池セル、変換効率 25%、 米国の太陽エネルギー市場:SEIA-GTM Research レポート、 米 Solar3D, Inc. 設 置 2011 年 見 通 し(1.7GW)、2010 年 実 績(887MW) 、 A breakthrough 3-dimensional solar cell technology 2009 年実績(435MW) http://www.solar3d.com/ U.S. Solar Energy Industry Sets Record for Installations, Achieves 140 Percent Annual Growth in Best Quarter Ever http://www.seia.org/cs/news_detail?pressrelease.id=1793 インタビュー:ディック・スワンソン氏(米 SunPower 共 同創業者)、太陽電池市場、低価格化競争、発電・蓄電装 置との連携 リチウムイオン電池:Liotech 社、工場竣工、投資額(13.5 PV 市場は成長が続くが業界内の統合も進む、米 SunPower 億ルーブル) 、世界最大規模、ナノ構造陽極材料、リン酸 共同創業者 鉄リチウム(LiFePO4) http://techon.nikkeibp.co.jp/article/INTERVIEW/20111213/202520/ World's Largest Li-Ion Battery Factory Launched in Novosibirsk Oblast http://www.nanowerk.com/news/newsid=23755.php 光触媒(可視光) :N- 酸化チタン薄膜、 ロードヨウ化銀粒子、 コーティング、可視光誘起、セルフクリーニング、低熱抵 抗 プラスチック半導体太陽電池:太陽エネルギー変換メカニ Cotton fabric cleans itself when exposed to ordinary ズム、量子ドット、ホットエレクトロン、多励起子生成、 sunlight 分子設計・合成、テキサス大学オースティン校 http://www.nanowerk.com/news/newsid=23741.php Observing the Multiexciton State in Singlet Fission and Ensuing Ultrafast Multielectron Transfer http://www.sciencemag.org/content/334/6062/1541.full?rss=1 基礎物理:ヒッグス粒子、ヒッグスボソン、大型ハドロン 衝突型加速器、ATLAS 、CMS Possible Hints of Higgs Boson Remain in Latest Analyses, 国際協力:インドとロシア、協力プログラム、ナノテクノ Physicists Say ロジー、バイオテクノロジー、科学技術センター設立 http://www.sciencedaily.com/releases/2011/12/111213114954.htm India, Russia keen to intensify cooperation in nanotechnology and biotechnology http://www.stpetersburgnews.net/story/201870108 企業戦略:TSMC、大型投資(約 260 億ドル) 、450 mm ウエハ対応工場構築準備、台湾中部サイエンスパーク(土 地 50ha) EU エ ネ ル ギ ー 政 策:2050 年 エ ネ ル ギ ー ロ ー ド マ ッ Report: TSMC reserves land for $26 billion fab プ、EC、機会を逸したとの非難、脱炭素シナリオ(High http://www.eetimes.com/electronics-news/4233169/Report-TSMC-land-for-fab Energy Efficiency、Diversified Supply Technologies、 High Renewable Energy Sources、Delayed CCS) EU energy roadmap for 2050 seen as a ‘missed 集光型太陽電池セル:Semprius 社、GaAs、トリプル接合 opportunity’ セル、効率 41%、国立再生可能エネルギー研究所(NREL) http://www.euractiv.com/energy/eu-energy-roadmap-2050-seen-missed- NREL validates 41% efficiency for Semprius’ tiny triple- opportunity-news-509750 junction cells http://www.pv-tech.org/news/nrel_validates_41_efficiency_for_semprius_tiny_ triple_junction_cells http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=44101 安全な原子力発電:米国 DOE 副長官、原子力の平和利用、 核兵器の拡散を防止、米国と日本の貢献、米日パートナー シップ、日本の経験からの学習 Deputy Secretary Poneman Delivers Remarks on Nuclear Power at Tokyo American Center in Japan http://energy.gov/articles/deputy-secretary-poneman-delivers-remarks-nuclearpower-tokyo-american-center-japan 50 PEN January 2012 太陽電池技術開発の今後(インタビュー) :Swanson 氏(米 エネルギー計画目標(中国):第 12 次 5 カ年計画(12 月 SunPower 社共同創業者) 、結晶 Si 型太陽電池、コスト削 15 日公布) 、中国国家エネルギー局、5 年間の非化石エネ 減手段 ルギー開発総量(4.8 億トン標準石炭)、2015 年の太陽 結 晶 Si 型 太 陽 電 池 は こ れ か ら も 主 流 で あ り 続 け る、 光発電国内導入目標(設置量 1,500 万 kW、年間発電電力 SunPower 社の Swanson 氏 量 200 億 kWh) http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20111216/202694/?ST=PV 中国、今後 4 年間のエネルギー計画目標を公表 http://japanese.cri.cn/881/2011/12/16/162s184340.htm 人材育成:放射線技術大学(インディアナ州サウスベンド)、 ナノメディシン修士学位プログラム、医学物理とナノテク 分析技術:不純物偏析、結晶粒界、ナノワイヤーのナノス ノロジーの組み合わせ ケール断面、高分解能電子顕微鏡、トモグラフィー再構成、 Radiological Technologies University plans first Master's ノースウェスタン大学、ローレンスバークレー国立研究所、 of Science in Nanomedicine degree program アルゴンヌ国立研究所 http://www.nanowerk.com/news/newsid=23762.php Grain boundaries concentrate metal impurities http://nanotechweb.org/cws/article/tech/48136 計測技術:IMEC、高度計測ソリューションセンター開設、 走査型広がり抵抗顕微鏡(SSRM) 、 原子間力顕微鏡(AFM) 集光アンテナ:自己組織化、両親媒性モノマー、ナノテー Imec launches Center for Advanced Metrology Solutions プ、ナノチューブ、超分子ナノチューブ http://www.nanowerk.com/news/newsid=23768.php Soft Nanotubes Acting as a Light-Harvesting Antenna System http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/cm2030526 ナノテクノロジー国際協力:ロシア・韓国・シンガポール、 契約締結 Ru s s i a , S . Ko r e a , S i n g a p o r e s i g n n a n o t e c h n o l o g y cooperation deal http://english.people.com.cn/90001/90781/90876/7412831.html 人工光合成:水の電気分解、光触媒、ナノ・バイオ、ヘマ タイト(α - Fe2O3)、タンパク質、フィコシアニン、光電 気化学電池(PEC)電極 Towards artificial photosynthesis for solar hydrogen generation 扇 島 メ ガ ソ ー ラ ー: 川 崎 市、 東 京 電 力、 最 大 出 力 http://www.nanowerk.com/news/newsid=23783.php (20000KW) 、国内最大級 川崎の湾岸にメガソーラー 国内最大級、市と東電が開設 http://sankei.jp.msn.com/economy/news/111219/biz11121916360010-n1.htm IZO 薄膜トランジスタ:インジウム - 亜鉛酸化薄膜トラン ジスター、バックチャネルエッチング構造、S/ D 電極(モ リブデン / アルミニウム / モリブデン積層構造)、ウェッ 風力発電:米国の課題、 生産税控除(PTC) 、 エネルギー貯蔵、 オフショアの風、公正な知的財産環境、米国の政策(温室 効果ガス、気候変動) Dear Santa: The Wind Industry Christmas Wish List トエッチング High performance indium-zinc-oxide thin-film transistors fabricated with a back-channel-etch-technique http://apl.aip.org/resource/1/applab/v99/i25/p253501_s1 http://www.greentechmedia.com/articles/read/dear-santa/ スピントロニクスの熱電効果:ナノスケール構造の熱管理、 熱マグノン(スピン波量子) 、マグノン - 熱電対列、強磁 性ワイヤペア、電子マグノン相互作用 Magnon-drag thermopile http://www.nature.com/nmat/journal/vaop/ncurrent/full/nmat3201.html PEN January 2012 51 コンテンツ保護技術:5 社(パナソニック、サムスン電子、 燃料電池:触媒、貴金属ナノ粒子、原子層堆積(ALD)法、 サンディスク、ソニー、東芝)共同、次世代セキュアメモ アノード被覆、安価な製造方法、アアルト大学(フィンラ リーイニシアティブ、コンテンツ保護技術の普及、セキュ ンド) アメモリー技術ライセンス Researchers discover a way to significantly reduce the Five announce flash memory security initiative production costs of fuel cells http://www.eetimes.com/electronics-news/4233409/Five-announce-flash-memory- http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=44137 security-initiative 自己修復:回路内電気的障害、配線亀裂、自己修復性高分 低設置コスト:JA Solar Holdings、量産レベル、変換効率 (18.5%)、多結晶 Si 技術、メープル技術、ハイパワーモ 子材料、マイクロカプセル、マイクロカプセル、液体金属、 イリノイ大学 ジュール Self-healing electronics. Microcapsules full of liquid metal JA Solar hits 18.5% efficiencies in volume production with sit atop a gold circuit. When the circuit is broken, the Maple solar cell technology microcapsules rupture, filling in the crack and restoring http://www.pv-tech.org/news/ja_solar_hits_18.5_efficiencies_in_volume_ the circuit. production_with_maple_solar_cell リチウムイオン電池:Liotech 社、ロシア、世界最大のリ チウム電池工場、LiFePO4 電池、ナノ構造正極材料 World's largest lithium-ion battery plant starts up in Russia http://green.autoblog.com/2011/12/20/worlds-largest-lithium-ion-battery-plantstarts-up-in-russia/ http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=44139 光 RAM:100 Gbps 光 RAM チ ッ プ 開 発、 シ リ コ ン ベ ー ス、SOI 技術、超高速コンピューティングアーキテクチャ、 RAMPLAS コンソーシアム、EU-FP7 New EU-funded project targets irst 100GHz optical RAM silicon chips http://cordis.europa.eu/fetch?CALLER=EN_NEWS&ACTION=D&SESSION=&R CN=34158 量子ドット太陽電池:多重励起子生成(MEG) 、PbSe 量 子ドット、内部量子効率(約 130%) 、外部量子効率(約 114%) 、脱ショックレー・クワイサー限界 NREL が量子ドット太陽電池で MEG を確認、光子 1 個か ら 1.14 個の電子を取り出し http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20111220/202818/?ST=PV 学 会 予 告:PVSC 、38th IEEE Photovoltaics Specialists Conference(2012 年 6 月 3~8 日)、論文受付中 IEEE PV Specialists Conference issues call for papers for 2012 event http://www.pv-tech.org/news/ieee_pv_specialists_conference_issues_call_for_ papers_for_2012_event スマートシティ:世界のスマートシティ・プロジェクト分 析、日経 BP クリーンテック研究所 3D 太陽電池:三次元構造フラットパネル、発電能力アッ 世界 400 カ所のスマートシティ・プロジェクトを分析し プ(平面設置パネルの 3.8 倍) 、マサチューセッツ工科大 て見えたこと 学 http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20111213/202519/?ST=energytech How 3-D Photovoltaics Could Revolutionize Solar Power http://www.technologyreview.com/blog/arxiv/27420/ 特許ライセンス契約:NREL 、Natcore Technology Inc.、 ブラックシリコン製法、Nanocatalytic 湿式化学エッチン グ、低ウエハ反射率(2%未満) 、CRADA NREL Licenses Technology to Increase Solar Cell Efficiency http://www.nrel.gov/news/press/2011/1671.html 52 PEN January 2012 材料戦略:DOE 報告書、2011 年重要材料戦略、クリーン ナノテクノロジーが米国経済に与える影響:2012 年、グ エネルギー技術、供給リスク、代替品、リサイクル、再利 ローバル化、商業化、パートナーシップ、安全性への影響、 用、効率的利用 ナノテロ、IndustryWeek Department of Energy Releases its 2011 Critical Materials Six Nanotechnology News Stories to Watch in 2012: Strategy Nanofilm CEO Forecasts Risks and Opportunities http://energy.gov/articles/department-energy-releases-its-2011-critical-materials- http://www.sfgate.com/cgi-bin/article.cgi?f=/g/a/2011/12/25/prweb9063588.DTL strategy ソーラペイント:低コスト太陽電池塗料、半導体ナノ粒子、 セレン化カドミウム、硫化カドミウム、二酸化チタン粒子、 ペースト、変換効率(~ 1%)に課題 2011 年トピックス:厳しい太陽電池市場、日経 BP 太陽電池、この一年 ---- 価格競争の激化で米国企業が相次 いで破産 http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20111226/203051/?ST=PV Researchers Produce Low-Cost Solar Paint Using Semiconducting Nanoparticles http://www.azonano.com/news.aspx?newsID=24011 光 ア イ ソ レ ー タ: 中 国 科 学 院 研 究 所、 米 Purdue University、光のダイオード、SiO2 基板上に Si 導光路(幅 約 500nm)、CMOS との互換性 ク リ ー ン エ ネ ル ギ ー 関 連 投 資: 米 Google 社、9400 万 New device could bring optical information processing ド ル 投 資、 カ リ フ ォ ル ニ ア 州 太 陽 電 池 プ ロ ジ ェ ク ト、 http://www.purdue.edu/newsroom/research/2011/111222QiDiode.html Kohlberg Kravis Roberts & Co. 社(KKR 社 ) 、Recurrent Energy 社プロジェクト Google、米国の大型太陽電池プロジェクトに 9400 万米ド ルを投資 スマートガラス:エネルギーの高効率住宅、二酸化バナジ ウム(VO2)ゾル - ゲル法、ポリマーアシスト蒸着法、ナ http://www.renewableenergyworld.com/rea/news/article/2011/12/googles-solar- ノ多孔性サーモクロミック VO2 薄膜、赤外線透過率変更 flair-94-million-investment-in-pv-projects Porosity of nanocoating improves 'smart' window performance http://www.nanowerk.com/spotlight/spotid=23840.php 圧電体薄膜:ナノドメイン構造変化観測(SPring – 8) 、 200 ナノ秒、高速スイッチング素子 Demonstration of ultra-high speed piezoelectric thin film with nanodomain structure http://www.nanowerk.com/news/newsid=23825.php エッチング:GaAs、ウェットエッチング、金属アシスト 化学エッチング(MacEtch) 、パターン化配列、高アスペ クト比 New technique makes it easier to etch semiconductors http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=44164 地域連携:ELAT 地域(アイントホーフェン - ルーベン - アー ヘン) 、IMEC、Solliance 薄膜太陽電池 Imec is collaborating with Flamac on novel PV materials http://www.eetimes.com/electronics-news/4233521/Imec-is-collaborating-withFlamac-on-novel-PV-materials PEN January 2012 53 ナノ材料 1. ドイツのキール大学の研究グルー プ、昆虫の足裏を真似て粘着テープ を作製 http://www.physorg.com/news/2011-11-biologicallytape-nature.html 2. 米国のバッファロー大学の研究グ ループ、ブラシ状の分子を用いたナ ノ材料を精製する新しい手法を開発 http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_ id=44015 台湾 ITRI レポートより 3. オ ー ス ト ラ リ ア の マ ー ド ッ ク 大 学の研究グループ、ユーカリの自浄 と撥水機能を活かしたナノテクノロ ジー応用を提案 http://media.murdoch.edu.au/researchers-revealeucalypt%E2%80%99s-nano-properties 4. 米国ミシガン大学の研究グループ、 CNT を塗布することで光学的に不可 視にすることに成功 http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_ id=43950 5. 英国ノッティンガム大学の研究グ ループ、扁平なダイヤモンドの形状 の分子でランダムなパターンを形成 することに成功 http://www.nottingham.ac.uk/news/ pressreleases/2011/november/controlleddisorderscientists-find-way-to-form-randommolecular-patterns.aspx 6. フランスのリモージュ大学の研究 チーム、シリコンフィルム上に短時 間でシリコンナノドットを成長させ ることに成功 http://www.physorg.com/news/2011-12-instantnanodots-silicon-array.html 54 PEN January 2012 7. スペインのカタルーニャナノテクノロジーセンターの研 6. スウェーデンのヨーテボリ大学の研究グループ、インプ 究グループ、複雑な中空構造のナノ粒子を作製する新手法 ラント表面に塗布された金属ナノ粒子が拒否反応を抑える を開発 メカニズムを解明 http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=44056 http://www.physorg.com/news/2011-11-cobblestones-innate-immunity.html 8. 英国ケンブリッジ大学の研究グループ、多孔質のナノ粒 ナノエレクトロニクス 子を作製するシンプルな新手法を開発 http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=43958 1. オランダのフローニンゲン大学とスイス連邦材料研究所 (Empa)の研究グループ、分子モーターの車輪に相当する 分子の作製に成功 9. 米国の CNST とアリゾナ州立大学の研究グループ、CNT http://www.empa.ch/plugin/template/empa/3/114116/---/l=2/changeLang=true/ やナノ炭素繊維の触媒として Au/SiO2、Ni/SiO2、Au-Ni/ lartid=114116/orga=/type=/theme=/bestellbar=/new_abt=/uacc= SiO2 のナノ粒子を検討 http://www.physorg.com/news/2011-10-gold-doping-nickel-catalyst-carbon.html 2. 英国のロンドンナノテクノロジーセンターの研究チー ム、グラフェンシート表面でストライプ状の電荷密度波を ナノバイオ・アグリ 観察 http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=43967 1. リーハイ大学の研究グループ、細胞のメカノセンシング 機構を利用した薬物送達システムを研究 http://www.physorg.com/news/2011-10-molecular-team.html 3. ミュンヘン工科大学の研究チーム、テトラフェニルポル フィリンリング内に単一陽子を配置させた分子スイッチの 作製に成功 2. 米国ライス大学の研究チーム、大量の金ナノロッドを http://www.sciencedaily.com/releases/2011/12/111212132634.htm たった一つのがん細胞内に送り込むことに成功 http://www.physorg.com/news/2011-11-chemists-cram-million-nanorods-cancer. html 4. ケンブリッジ大学の研究者、分子診断の実現に向けた第 一歩となるナノサイズの分子を捉えるための籠の作製に成 功 3. 奈良県立医科大学の研究グループ、動物試験でゼラチン ベースのナノ粒子を利用し効果的に血腫を破壊できること http://www.enterprise.cam.ac.uk/news/2011/11/using-sub-nanometre-cagesidentify-molecules/ を確認 http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=43876 5. スウェーデンのチャルマース工科大学の研究チーム、 CNT を用いて 2 個のチップのビア接続の技術を開発 4. ミュンヘン工科大学とユーリッヒ研究センターの研究グ http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=44058 ループ、生体の電気信号の記録が可能なグラフェンベース のトランジスタアレイの作製に成功 http://www.physorg.com/news/2011-11-biocompatible-graphene-transistor-arraycellular.html 6. ピッツバーク大学の研究者ら、単分子電子スイッチを開 発 http://www.physorg.com/news/2011-12-electronics.html 5. ポーランドの研究グループ、ドーパミン欠乏を判断する 簡易かつ安価な手法を開発 http://www.physorg.com/news/2011-11-parkinson-carbon-nanoparticles.html PEN January 2012 55 7. シンガポール国立大学と A*STAR の研究グループ、シリ ナノ計測 コンナノワイヤで回路廃熱を利用する発電装置の開発に成 功 1. カリフォルニア工科大学とミュンヘン工科大学の共同研 http://www.physorg.com/news/2011-11-tiny-silicon-nanowire-harnesses-energy. 究チーム、分子装置をコントロールするための分子時計の html 作製に成功 http://www.foresight.org/nanodot/?p=4839 8. オランダのデルフト工科大学の研究グループ、1 個の光 子で 3 個以上の電子を生成することに成功 http://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/nl202915p 2. Imec とホルストセンター、高性能な微小発電装置の作 製に成功 http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=44037 9. スイス連邦工科大学ローザンヌ校の研究チーム、シリコ ンチップに比べ小型化に向くモリブデンでチップを作製 3. ボストン大学の研究チーム、プラズマ化学気相成長法に http://www.physorg.com/news/2011-12-molybdenite-microchip.html よる CNT 作製の初期プロセスの観察に成功 http://www.physorg.com/news/2011-10-early-stages-carbon-nanotube-growth.html エネルギー・環境 4. イリノイ州立大学大学アーバナ・シャンペーン校の研究 1. 米国の パシフィックノースウェスト国立研究所とプリ チーム、欠陥がグラフェンセンサーの性能向上に寄与する ンストン大学の研究グループ、内部が中空のグラフェン構 ことを解明 造体で高効率で安価なリチウム空気電池を作製 http://www.physorg.com/news/2011-11-imperfections-graphene-sensors.html http://www.physorg.com/news/2011-11-energy-storage-lithium-air-batteries.html 5. 米国国立標準研究所の研究チーム、バイオセンサーとし 2. イリノイ大学の研究者ら、高効率な太陽電池向けナノワ て金ナノ粒子が特徴的な光の周波数を吸収する力を利用す イヤの作製に成功 ることに成功 http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=43825 http://www.foresight.org/nanodot/?p=4856 3. ノースウェスタン大学の研究チーム、長寿命、短時間充 電の可能なバッテリーの実現に向けた第一歩となる Li イ オン電池向け電極を作製 http://www.materialstoday.com/view/21789/new-age-battery/ 6. シンガポールの A*STAR の研究チーム、単層 CNT が微 小スケールでの摩擦、潤滑、摩耗を測るためのプローブに 向くことを証明 http://www.physorg.com/news/2011-11-single-walled-carbon-nanotubes-idealprobing.html 4. イランの Iran University of Science and Technology の 研究者、金属をドープした光触媒で水中の有機汚染物質の 低減に成功 http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=43913 ナノリスク 1. 米国インディアナ大学とパデュー大学の研究グループ、 CNT の生細胞への影響を調査 5. ノースウェスタン大学工学研究科の研究チーム、広波長 http://www.physorg.com/news/2011-09-carbon-nanoparticles-barriers-good.html で発電可能な太陽電池用材料を作製 http://www.materialstoday.com/view/21788/wide-wavelength-solar-cells/ 2. タイの NANOTEC、国連機関 UNITAR と連携し人材育成 などを行うナノ安全性プロジェクトを実施 http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=43597 56 PEN January 2012 3. 英国サザンプトン大学の研究グループ、ディーゼル排気 中のナノ粒子とミツバチの巣の崩壊の関連を調査 http://www.nano.org.uk/news/1711/ 国際動向 1. イランの Nanotechnology Initiative Council、ナノテク ノロジーの普及促進・教育プログラムを助成 http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=43925 2. イラン、国内のナノテクノロジー研究機関が一同に会す るネットワーク会議開催 http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=43910 3. インド、州政府主催のイベントでナノテクノロジー研究 開発と実用化の両立の重要性を再確認 http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=43999 4. ナノ材料の実用化、ベネフィットとリスク http://www.guardian.co.uk/nanotechnolog y-world/bring-on-thebenefits?newsfeed=true 5. 米国下院議員 Mike Honda 氏、ナノテクノロジーによる 米国企業の競争力強化のための法案「NANO Act」を議会 に提出 http://www.nanotech-now.com/news.cgi?story_id=43914 6. タイの NANOTEC、nano tech 2012 で自然災害の軽減技 術に関するパートナーシップ構築の機会とする予定 http://www.nanowerk.com/news/newsid=23645.php PEN January 2012 57 【Market Report】 イオン液体- 2 次電池と太陽電池の 応用から見た動向と展望 イオン液体は 2 次電池、太陽電池等 の電解質として活用でき、ナノ粒子 との高い親和性を利用してナノ複合 体の合成のための清浄媒体、サイズ 調節剤等で活用されている。このよ うな特徴からイオン液体は「未来の 電解質」 、 「未来の清浄溶媒」等の応 用が期待されている。 現在リチウムイオン電池や色素増感 型太陽電池に用いられる電解質素材 韓国 NNPC より 韓国 National Nanotechnology Policy Center(NNPC) が発行する Nano Weekly と各国動向レポート Global Nano Trends より、韓国の最新動向を中心に関連情報 をお届けします。 は揮発性が高く、発火・爆発の危険 性を持つカーボネート系あるいはア セトニトリル系等の有機溶媒に主に 依存している。 電解質・ナノ融合素材であるイオン 液体の応用分野は幅広くて、主要分 野でありながら実現に近づいている 2 次電池用電解液と色素増感型太陽 電池用電解液市場を見ることにより、 イオン液体の潜在的な成長性が予測 できる。2 次電池世界市場は、2008 年 36 兆ウォンから年平均約 15.41% の成長を続け、2015 年には約 98 兆 ウォン規模に至る見込み。特に中大 型市場の場合、2008 年 3600 億ウォ ンから 2015 年約 23 兆 6000 億ウォ ン へ 年 平 均 82% の 急 増 が 予 想 さ れ る。その中、電解液は原価割合を考 慮すると、全体市場の約 10% を占め るため、2008 年 3 兆 6000 億ウォン、 2015 年までに平均 15% ずつ成長し、 9 兆 8000 億ウォン規模に達すると 見込まれる。 一方、電解質が用いられる色素増感 型太陽電池の世界市場規模は 2011 年 約 2862 億 ウ ォ ン、2015 年 約 2 兆ウォンと予想される。電解液は色 素増感型太陽電池の製造単価の約 40% と推計し、これに基づき換算す ると、2011 年の約 1145 億ウォンか 58 PEN January 2012 ら 2015 年には約 8000 億ウォンとなる見通し。 「韓中教育長官両者会談」に相次いで出席し、両国の教育・ 科学技術分野での協力増進方策を議論した。韓中長官レベ 2 次電池電解液素材市場と色素増感型太陽電池電解液素材 ル科学技術共同委員会では、両国間の共同研究および人材 市場を、イオン液体素材の潜在市場として推計すると、イ 交流の発展方策が議論された。両国はまず、2009 年から オン液体市場の世界市場の規模は 2011 年の約 5 兆 6000 毎年共同で新規課題を採択している「韓中共同研究プログ 億ウォンから 2015 年まで年平均約 17.1% ずつ伸び、約 ラム」の 2011 年新規課題(IT、衛星活用、航空宇宙科学、 10 兆 6000 億ウォンの市場となる見通し。 核融合エネルギー)に関する合意を得て、2012 年に新規 課題に選定する重点協力分野として、新素材・ナノ素材、 イオン液体を電解質として使用する 2 次電池に関する研 新再生エネルギー・スマートグリッド、生物技術を決めた。 究は、日本、ドイツ、中国で盛んでいる。イオン液体を 開発している海外企業としては、Merck、BASF、Solvent Innovation、旭硝子等。国内のイオン液体基盤の電解質研 究は、2000 年代初めから研究所・大学を中心で進められ 【Weekly Focus】 教育科学技術部、「2011 フロンティア」研究成果を開催 てきた。しかし既存有機溶媒基盤の電解質に比べ、低いサ イクルの特性、充放電の効率によって、イオン液体単独で 教育科学技術部は、12 月 9 日「2011 フロンティア研究 使用するより電解質の添加剤としての研究が主流であっ 成果大展」を開催した。同行事は優秀研究成果を共有と拡 た。 散をはかり、技術需要企業とのビジネスチャンスを提供す るために 2008 年から開催されている。21 世紀フロンティ イ オ ン 液 体 を 開 発 し て い る 国 内 企 業 と し て は、C-TRI、 ア研究開発事業は、ナノテクノロジー(NT) 、バイオ・生 SOOYANG chemtec、DAELIM chemical、PRO-POWER、 命技術(BT) 、エネルギー・環境(ET)分野等の戦略技術 NESSCAP、 DONGJIN Semichem、 EAGON Window&Door 等。 を選択、資本を集中し、2010 年代初めまでに世界トップ このなかで、C-TRI と SOOYANG chemtec はイオン液体素 レベルの技術力を確保し、高付加価値の新産業基盤を創出 材、DAELIM chemical と PRO-POWER は 2 次電池用ナノ するため、1999 年に発足され、合計 16 の事業団を選定、 複合電解質や分離膜の合成研究に注力している。NESSCAP 研究を進めてきた。このなかでナノテクノロジー関連事業 はイオン液体電解質および分離膜を活用し大容量のリチ 団は、テラレベルナノデバイス開発事業団、ナノメカトロ ウム 2 次電池システムを開発中。DONGJIN Semichem と ニクス技術開発事業団、ナノ素材技術開発事業団の 3 つで EAGON Window&Door は、イオン液体電解質を活用した あり、テラレベルナノデバイス開発事業団は 2010 年度に 色素増感型太陽電池やその応用製品を開発中。 終了した。 2 次電池と太陽電池は韓国グリーン成長委員会選定の 27 大重点グリーンテクノロジーである。これによってイオン 【Market Report】 液体の基本素材に関する研究開発が活発に進行中であり、 染料・顔料の化学素材-中小企業中心の技術開発の現状と 今後商用化研究に基づき、イオン液体系電解質を通じた 2 ニーズ分析 次電池の大型化や色素増感型太陽電池のフレキシブル化等 が現実化される見通し。大型リチウムイオン電池と色素増 世界染料・顔料市場は、2010 年基準 210 億ドル程度で、 感型太陽電池分野の場合、韓国の潜在的な国際競争力は高 年平均 3% の成長率を見せている。韓国市場は 8% 以上の い。完成品製造企業の大企業と部品素材企業の中小企業は、 成長率を見せ、持続的な成長の見込み。 イオン液体電解質の開発を通じた源泉技術の確保に注目す べきである。 染料・顔料産業は今後、ナノサイズのコア技術及び先端技 術基盤の物質開発等を通した高付加価値化と、技術の融合 化を図りながら持続的な成長が予想されている。韓国の染 【国内動向】 料・顔料産業も世界的な流れに合わせ、大量生産による単 韓中、教育科学技術分野での協力強化に合意- 2012 年ナ 純な汎用型製品の生産、輸入原材料や中間財の単純配合に ノ素材など重点協力分野を決定 よる製品生産から、ナノサイズの高機能、高い付加価値を 持つ製品の生産へ変わりつつある。 韓国教育科学技術部は、11 月 23~24 日に中国北京で開催 された「第 11 次韓中長官レベル科学技術共同委員会」と 世界の染料市場は、DyStar、Ciba、Clariant の 3 社が世界 PEN January 2012 59 市場の 40% 以上を握っている。このような技術先進企業 では、コア先端技術基盤となる新物質の開発を通じた知的 財産権の確保に注力している。一方で、開発途上国では汎 用型の製品中心の完成製品あるいは中間財の一部を供給す る垂直的分業関係となっている。 顔料市場は、日本と欧州を中心で環境に優しい顔料、高耐 久性顔料など、高い機能性を付与する技術開発が活発であ る。一方で、中国、インド等のアジア企業は従来型の一般 顔料分野での市場占有率を増やしつつあり、技術的面でも 先進国レベルに近づいている。国内顔料市場は、Ukseung Chemical Co., Ltd. が全体市場の 30 ~ 40% を占めている。 国内の染料市場は海外企業が約 30% の売上を握っている な か、 京 仁 洋 行(KISCO) 、Ohyoung Industrial Co.Ltd.、 RIFA Co., Ltd、MDOHMEN Korea が、残りの売上の 95% を占めている。 これまで韓国は繊維産業の活発な成長に支えられ、染料・ 顔料産業が発展した。現在でも世界的な流れに合わせ、新 物質、新製品の研究開発に乗り出す企業は増えているが、 依然として中小企業を中心とした汎用製品の製造が主流と なっており、国際競争力の確保に苦しんでいる。また中国、 インド等には価格競争力で、高付加価値製品では欧州・日 本等に技術力で後れを取っている。 したがって、韓国の染料・顔料産業の国際競争力を強化す るためには、高機能性、新機能素材の開発を基礎として、 グリーン素材、デジタルプリント、超臨系染色のような新 技術に適用可能な素材、バイオテクノロジー・ナノテクノ ロジー等、様々な分野にまたがる融合・複合型素材などの 開発が中小企業の競争力の強化に役立つと見られる。 60 PEN January 2012 シンポジウム等のご案内 1. FIRST サイエンスフォーラム 2 ~ 若者よ トップ科学者と語れ!科学の 未来と日本~ 日時:2012 年 2 月 5 日(日) 14:00 ~ 17:00 場所:東北大学片平さくらホール 仙台市青葉区片平二丁目 1-1 東北大学片平キャンパス内 主催:(独)科学技術振興機構 概要:本フォーラムでは、総合科学 技術会議が推進する最先端研究開発 支援プログラム(FIRST プログラム) MEMS 関連情報 東北大学原子分子材料科学高等研究機構教授江刺正喜 氏の MEMS 関連情報をお届けします。 に選ばれたトップ科学者が、世界を リードする研究の最前線の様子など を広く紹介します。さらに、フォー ラム会場の高校生・高専生などの参 加者とトップ科学者との双方向のコ ミュニケーションを通じて、 「科学の 未来と日本」について語り合います。 参加申込と合わせて、科学者への質 問を募集します。ぜひ、この機会に 素朴な疑問や提案などを科学者に投 げかけてみてください。twitter でも 情報を発信しているほか、ニコニコ 動画でのライブ中継を予定していま す。 主に高校生や高専生を対象とし ますが、一般からの参加も受け付け ます。 PEN January 2012 61 申込について:ホームページにて事前登録が必要です。受 3. MEMS Engineer Forum 2012 付期間は 2011 年 12 月 13 日 (火) 〜 2012 年 1 月 27 日(金) 日時:2012 年 3 月 12 日 ( 月 )、13 日 ( 火 ) です。参加費は無料です。 場所:都市センターホテル(東京都千代田区平河町) PC:http://first-pg.jp、携帯電話:http://first-pg.jp/k 主 催:MEMS パ ー ク コ ン ソ ー シ ア ム、MEMS Engineer お問い合わせ:FIRST サイエンスフォーラム事務局 Forum 実行委員会 (平日 10:00 〜 17:00) 詳細:http://www.memsengineerforum.com/2012/index.html Tel:03-3481-9245 *出展申込および参加をお待ちしております。 Email:[email protected] 講演予定: 「異なる技術の融合で、集積回路の高付加価値化をめざす」 : 4. Smart Systems Integration 江刺正喜(東北大学マイクロシステム融合研究開発セン 日時:2012 年 3 月 21 日 ( 水 )、22 日 ( 木 ) ター/センター長(宮城県仙台第一高等学校出身) ) 場 所:The World Trade Center Zurich、 ス イ ス(http:// 「細胞で組織・臓器を作る!日本発世界初の本格的再生医 www.wtc-zurich.ch/) 療普及への挑戦」:岡野光夫(東京女子医科大学 先端生 主催:Mesago Messe Frankfurt GmbH 命医科学研究所/所長・教授(海城高等学校出身) ) 詳細:http://www.mesago.de/en/SSI/home.htm 「量子情報処理の可能性を探る」 :山本喜久(国立情報学研 究所、スタンフォード大学/教授(東京都立戸山高等学校 出身) ) 書籍のご案内 1.「検証 東北大学江刺研究室・最強の秘密」 2. 2nd International Symposium on Integrated 著者:江刺正喜、本間孝治、出川通 Microsystems(ISIM2012) (彩流社、2009 年 6 月 30 日、1600 円) 第 2 回 集積化マイクロシステム国際シンポジウム 日時: 2.「はじめての MEMS」 2012 年 2 月 13 日(月) 著者:江刺正喜 シンポジウム 9:30 ~ 17:40 (森北出版、2011 年 3 月 28 日、2500 円) 交流会 18:00 ~ 20:00 14 日(火)見学会 10:00 ~ 12:00 場所:2 月 13 日(月)つくば国際会議場(エポカルつくば) (シンポジウム) 2 月 14 日(火)産総研つくばセンター / つくば東(見学会) 主催: 東北大学マイクロシステム融合研究開発センター(μ SIC) 産総研集積マイクロシステム研究センター(UMEMSME) 参加費:無料 (ポスターセッションと意見交換会は 3,000 円程度の会費) プログラム詳細:http://unit.aist.go.jp/umemsme/files/ISIM2012.html 問合先:東北大学マイクロシステム融合研究開発センター 蛸島武尚 Tel:022-795-6936 Fax:022-795-6935 E-mail:[email protected] * 前 回 の 1st International Symposium on Integrated Microsystems(ISIM2011) の Proceedings は、 μ SIC の HP からダウンロードできます。 http://www.mu-sic.tohoku.ac.jp/saisentan/archive/ISIM2011/index.html 62 PEN January 2012 バイオミメティックス研究会 バイオミメティックス研究会より、研究会等イベント のご案内、関連書籍のご案内、注目トピックなどをお 届けします。 シンポジウム等のご案内 高分子学会講演会 生物に学ぶものづくり ‐ ネオ・バイ オミメティックス ‐ 会期:2012 年 2 月 10 日(金) 10:20 ~ 17:20 会 場: 東 工 大 蔵 前 会 館 ロ イ ア ル ブ ルーホール (東京都目黒区大岡山 2-12-1) 主催:高分子学会 行事委員会 共催:バイオミメティクス研究会、 他 定員:100 名 参加費:①企業 10,500 円、②大学・ 官 公 庁 5,250 円、 ③ 学 生 1,050 円、 ④名誉・終身・フェロー・ゴールド 会員・シルバー会員 2,100 円 http://www.spsj.or.jp/entry/annaidetail. asp?kaisaino=717 PEN January 2012 63 書籍のご案内 1.「次世代バイオミメティクス研究の最前線―生物多様性 2.「自然にまなぶ! ネイチャー・テクノロジー : 暮らし に学ぶ」 (バイオテクノロジーシリーズ) をかえる新素材・新技術 」 監修:下村正嗣、編集:バイオミメティックス研究会 監修:石田秀輝、下村正嗣 (シーエムシー出版 、2011 年 9 月、65100 円) (学研パブリッシング 、2011 年 9 月 9 日、1600 円) PEN 購読のご案内 PEN の継続的な購読をご希望の方は、 ・お名前 ・ご所属 ・メールアドレス をご記入の上、[email protected] までご連絡ください。なお、PEN への登録・配信 は無料です。 PEN は原則月 1 回配信します。これまでに発行した PEN と、 【AIST-TOKYO ナノテク情報】 (PEN の前身)は、産総研ナノシステム研究部門ホームページにて公開しています。 http://unit.aist.go.jp/nri/nano-plan/index.html PEN は皆さまとの情報共有を目的としています。お持ちの情報で共有すべきものがあれば、 [email protected] までお寄せ下さい。 *いただいた個人情報は産総研 個人情報保護方針(プライバシーポリシー)に基づき大切に管理し、情報誌 PEN の運営と私達のイベントのご案内のみに使用させていただきます。 64 PEN January 2012 イベント案内 イベント案内への掲載を希望される方は [email protected] までご連絡ください。 ナノ材料の安全性・社会受容に関するシンポジウム~ ナ ナノ材料の安全性確保に向けた国内外における取組みの最 ノ材料の安全利用を目指す研究の最新動向 ~ 新動向を紹介す るとともに、グローバルな視点から今後 の展開について議論いたします。多数のご参加をお待ちし 日時:2012 年 1 月 24 日(火)13:30~16:50 (※受付開始 12:45 ~) 場所:京都リサーチパーク 1 号館 サイエンスホール http://www.krp.co.jp/access/index.html 主催:文部科学省地域イノベーション戦略支援プログラム (グローバル型) 、京都環境ナノクラスター(中核機関(財) ております。詳細なプログラムについては下記公式ウェブ サイトをご覧ください。 http://www.astem.or.jp/kyo-nano/news/120124.htm 申込方法:参加費は無料です。定員は 100 名です。事前 の申し込みをお願いします。申込書に必要事項をご記入の 上、メールまたはファックスでお申し込みください。 京都高度技術研究所) 申込書ダウンロード: 開催趣旨:文部科学省地域イノベーション戦略支援プログ http://www.astem.or.jp/kyo-nano/wp-content/uploads/2011/12/nanosafety_form. ラム(グローバル型)京都環境ナノクラスター(中核機 pdf 関(財)京都高度技術研究所)では、ナノ材料の安全性や 規制について広く情報を提供する活動に取り組んでおり、 ナノ材料の安全性評価方法に関する研究を 行っています。 本シンポジウムでは、関連分野で活躍中の方々をお招きし、 申込先: e-mail:envinano[at]t.kyoto-u.ac.jp ([at] を @ に置き換えてください。) Fax:075-383-3078 プログラム 13:30 - 13:35 開会挨拶 京都環境ナノクラスター 事業総括 市原達朗 13:35 - 13:40 はじめに 京都環境ナノクラスター 広域 ・ 国際連携プログラム ディレクター 松重和美 13:40 - 14:20 「ナノテクノロジーの社会的影響に対する海外の取り組み」 (独)物質・材料研究機構調査分析室 室長 竹村 誠洋 14:20 - 15:00 「ナノ粒子暴露防止のためのエアフィルタの性能評価」 金沢大学理工学域自然システム学類 学類長 ・ 教授 大谷吉生 15:00 - 15:15 休憩 15:15 - 15:55 「ナノ材料の医療応用、体内動態」 岐阜薬科大学薬物送達学大講座製剤学研究室 教授 竹内洋文 15:55 - 16:35 「粒子サイズによる細胞応答性の差異」 京都大学大学院生命科学研究科高次生命科学専攻 講師 高原和彦 16:35 - 16:50 閉会の辞 京都環境ナノクラスター 研究統括 西本清一 PEN January 2012 65 第 11 回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議(nano tech 2012) 日時:2012 年 2 月 15 日(水)~ 17 日(金) 場所:東京ビッグサイト 東 3・4・5・6 ホール、会議棟 nano tech 2012 公式ウェブサイト:http://www.nanotechexpo.jp/ 産総研 展示ブースのご案内 第 11 回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議が、2012 化社会へシフトする」、 「レアメタル問題に立ち向かう」 、 「高 年 2 月 15 日(水)~ 17 日(金)にわたり東京ビッグサ 齢化社会を手助けする」のテーマのもとで 26 研究課題の イトで開催されます。産業技術総合研究所ナノテクノロ 展示コーナーを設け、産総研独自の最新技術を紹介します。 ジー・材料・製造分野は、本年度も大々的に展示を行います。 また、これに合わせ 2 月 15 日(水)にシンポジウム「ナ 今回、産総研ブースでは「まもる、つくる、はかるナノテ ノ炭素材料革命への挑戦」 (詳細は次ページのご案内をご クノロジー」と題して、 「震災に立ち向かうナノテクノロ 覧ください)を開催いたします。 ジー」、「安全・安心な社会を実感する」 、 「省エネ・低炭素 66 情報共有のためのラウンドテーブル Round Tabel for Global Information Exchange 日時:2012 年 2 月 15 日 (nano tech 2012 に併設して開催) Time and Date: February 15th, 2012 場所:東京ビッグサイトホール棟 東 3 セミナー会場 Venue: Seminar Space, East Hall 3, Tokyo Big Sight 主催:産総研ナノシステム研究部門ナノテクノロジー戦略 Organizer: Office of Nanotechnology Strategy, Nanosystem 室 Research Institute, AIST 概要:産総研ナノシステム研究部門では、2010 年 4 月よ Round Table Theme: Nanosystem Research Institute of りナノテクノロジーを基盤とする様々な技術の最新の研究 AIST has been published online magazine PEN since 開発動向、科学技術・イノベーション政策動向、管理策や April 2010. PEN covers variety of topics such as trend in 規制に関する国際動向、国際標準化動向、コミュニケーショ cutting edge technologies, science and technology policy, ン活動などの動向を包括的に体系化し、社会と共有するこ chemical management, standardization, communication とを目的に、情報誌 PEN を配信してきた。この活動を更 issues and activities with analytical views. PEN already にグローバルに展開することを目的に、情報共有のための have several international collaboration partners. We オープンなラウンドテーブルを展開し、今後の情報共有の hold a round table meeting in this year’s nano tech 2012 進め方、その意義や効果、言葉をはじめとする課題等につ and plan to deepen existing partnership and explore new いて様々な機関・組織との議論を行う。 collaboration through constructive discussion. 問合先:[email protected] Contact: [email protected] *会場案内図 * Floor map http://www.nanotechexpo.jp/pdf/floormap2012_j.pdf http://www.nanotechexpo.jp/pdf/floormap2012_e.pdf PEN January 2012 ナノ炭素材料革命への挑戦 日時:2012 年 2 月 15 日(水)13:10 ~ 17:30(nano tech 2012 に併設して開催) 場所:東京ビッグサイト 会議棟 7 階 703 会議室 主催:産総研ナノテクノロジー・材料・製造分野研究企画 室 開催趣旨: これまで数千年以上におよぶ長い歴史の中で、 人は炭素原子の結合状態、炭素構造体の次元性、形態、サ イズを精密に制御することで炭素材料を着実に進化させ、 社会や産業のイノベーションを果たしてきました。しか し、カーボンナノチューブ(CNT)やグラフェンなどの新 たなナノ炭素構造体が未来の低炭素社会を支える最先端素 材や材料として実用に供されるためには多くの技術的課題 や社会的課題の解決が不可欠となってきます。本シンポジ ウムでは、革新的なナノ炭素材料としてナノ炭素構造体が 21 世紀の課題解決に貢献するためにに解決すべき課題や 現状、未来を議論したい。 申込方法:参加費は無料です。定員 120 名です。オンラ インでの事前登録をお願いします。締め切りは 1 月 27 日 (金)。 http://www.aist.go.jp/aist_j/event/ev2012/ev20120215_2/ev20120215_2.html プログラム *座長:飯田康夫 13:10-13:15 「開会の挨拶」 一村信吾(産総研 理事/ナノテクノロジー・材料・製造分野研究統括) 13:15-13:25 「ナノ炭素材料開発とナノテクノロジー・材料・製造分野」 清水敏美(ナノテクノロジー・材料・製造分野副研究統括) 13:25-14:05 「ナノカーボン材料の科学と応用」 (基調講演) 飯島澄男(ナノチューブ応用研究センター) 14:05-14:30 「実用化真近!スーパーグロース単層 CNT の研究開発の現状と未来展望」 畠賢治(ナノチューブ応用研究センター) 14:30-14:55 「カーボンナノチューブの最新分離技術」 片浦弘道(ナノシステム研究部門) 14:55-15:20 「ナノ炭素材料のためのリスク評価」 岸本充生(安全科学研究部門) 15:20-15:40 (休憩) *座長:池上敬一 15:40-16:05 「グラフェンシートの革新技術」 長谷川雅考(ナノチューブ応用研究センター) 16:05-16:30 「つくばナノテク拠点(TIA)における CNT 事業」 湯村守雄(ナノチューブ応用研究センター) 16:30-16:55 「ダイヤモンドウェハーの大面積化とパワーデバイスへの応用」 鹿田真一(ダイヤモンド研究ラボ) 16:55-17:20 「炭素繊維プラスチック材料の信頼性向上」 堀田裕司(先進製造プロセス研究部門) 17:20-17:30 「ナノ炭素材料開発の分野戦略」 松原一郎(ナノテクノロジー・材料・製造分野研究企画室長) PEN January 2012 67 NRI ワークショップ 日時:nano tech 2012 に併設して開催 2012 年 2 月 16 日(木)10:00 ~ 16:40 頃 場所:東京ビッグサイト東 3 ホール 特設会場(出入りは 自由ですが、受付にてお名刺を頂戴できれば幸いです。) 開催にあたって 2011 年(平成 23 年)は 3 月 11 日の東日本大震災とそ なる研究開発を行ってきました。その成果の一端を、特に の後の福島原子力発電所の事故が大きく日本の社会と経済 若手が中心となって挙げた成果を中心に据えて皆様にご報 を揺るがしました。一方で、小笠原諸島と平泉が世界遺産 告申し上げたく、nano tech 2012 展示会場内の特設会場 に登録され、日本の自然と文化が世界に認められ、また、 をお借りしてワークショップを開催させていただくことと 九州新幹線が開通し本州と九州が高速鉄道網でつながりま いたしました。なお、本ワークショップは、出入り自由と した。このような状況の中、今や世界第 3 位となった日本 いう形式にいたしました。展示会場内での開催であること の経済と産業を震災と原発事故から復旧・復興させ、更に も相まって、皆様それぞれのご興味・ご関心に応じて、展 飛躍させるための研究開発は一刻も止めるわけにはいきま 示の見学と効率よく組み合わせていただけるのではないか せん。2010 年 4 月に発足した産総研・ナノシステム研究 と思っております。皆様のご来場を心よりお待ち申し上げ 部門においても、今年度を「再出発」の年と位置付け、震 ます。 災の影響で従来通りの活動が困難な中においても、ブレイ 産総研ナノシステム研究部門 部門長 八瀬清志 ンストーミングを含め、将来の科学技術および産業の種と プログラム 10:00 「コレステリックブルー相液晶セルのシミュレーション」 福田順一(ソフトマターモデリンググループ) 10:18 「リポソームの分子シミュレーション」 篠田渉(分子シミュレーショングループ) 10:36 「金属錯体分子自己組織化膜の導電性と光応答性:高効率光電変換デバイスへの展開」 石田敬雄(ナノ構造アクティブデバイスグループ) 10:54 「ペロブスカイト型金属酸化物ナノ結晶と分散型無機 EL」 伯田幸也(ナノケミカルプロセスグループ) 11:12 「重水素標識材料:有機 EL 素子の寿命向上」 宮沢哲、川西祐司(ソフトデバイスグループ)、下位幸弘(ナノ理論グループ) 11:30 「高分子有機 EL の作製技術の開発」 水谷亘(ナノシステム研究部門主幹研究員) 11:48 「磁性を有するプルシアンブルー Cs 吸着材の開発」 髙橋顕、田中寿、川本徹(グリーンテクノロジー研究グループ) 12:06 「高密着性エッチングレス無電解めっきの開発」 堀内伸(ナノシステム計測グループ) 12:24 (休憩) 13:00 「吸引型局所プラズマ加工装置によるナノレベル加工」 清水哲夫(ナノ光電子応用研究グループ) 13:18 「マイクロ-ナノ階層構造構築によるナノ構造のシステム化」 越崎直人(フィジカルナノプロセスグループ) 13:36 「マイクロ流路を利用した効率的気液反応プロセスの開発」 竹林良浩(ナノケミカルプロセスグループ) 13:54 「グラフェンの電気伝導シミュレーション<バレー・フィルタ・デバイスの提案>」 中西毅(エレクトロニクス材料シミュレーショングループ) 14:12 「自己組織化膜の構造形成シミュレーション」 三浦俊明(ナノ理論グループ) 14:30 「光制御 CNT 分散剤」 松澤洋子、吉田勝(スマートマテリアルグループ) 14:48 「ゲルを用いて単一構造のカーボンナノチューブを分離」 田中丈士、片浦弘道(ナノ炭素材料研究グループ) 15:06 「やわらかいロボットの実現を目指した高分子アクチュエータの創製」 原雄介(ソフトメカニクスグループ) 15:24 「微粒子 / 液晶複合系を基盤とする光機能性スマートソフトコンポジット」 山本貴広(スマートマテリアルグループ) 15:42 「交流電場下におけるコロイド粒子配列と生体分子操作への応用」 西村聡・井上貴仁(ソフトデバイスグループ) 16:00 「走査プローブ顕微鏡で観るペロブスカイト酸化物表面」 久保利隆(ナノシステム計測グループ) 16:18 「高機能近接場光学顕微鏡の開発とナノ材料評価への利用」 時崎高志、重藤知夫(ナノ光電子応用研究グループ) 68 PEN January 2012 第 3 回 CMSI 産官学連続研究会 プログラム: 電子材料分野における計算シミュレーションの産業応用の 13:00 挨拶と研究部門紹介 現状と今後 13:10 セシウム吸着材としてのプルシアンブルーを 利用した除染システム 日時:2012 年 2 月 10 日(金)13:00 ~ 17:30 場所:秋葉原ダイビル 5 階 カンファレンスフロア 5B 13:35 グラフェンプロジェクト:透明電極用グラフェン 概要:講演者は IMEC の Pourtois Geoffrey 氏、富士通研 製造技術の開発 究所の金田千穂子氏、産総研の秋永広幸氏、他 1 名を予定 14:00 期待のナノ材料、CNT の分離研究 - 金属型・半導体型分離から単一構造分離まで - しています。詳細は CMSI のホームページに掲載の予定で す。 14:25 光で CNT の分散状態を制御する新技術 CMSI ホームページ 14:50 休 憩 http://www.cms-initiative.jp/ja 15:05 ペロブスカイト型金属酸化物ナノ結晶と 第 4 回産総研ナノシステム連携促進フォーラム ~先端ナノテク材料を広範な産業に活用するために~ 日時:2012 年 2 月 2 日(木)13:00 ~ 18:30(ポスター 発表は、17:10 ~ 18:30) 会場:秋葉原・コンベンションホール(秋葉原駅前ダイビ ル 2 階) 交通案内:http://www.akibahall.jp/data/access.html 参加費:無料 主催:産総研ナノシステム研究部門 協賛: (社)新化学技術推進協会(JACI) 分散型無機 EL 15:30 重水素標識材料:有機 EL 素子の寿命向上 15:55 酸化チタン球状粒子の作製と 光散乱薄膜としての応用 16:20 ミクロンサイズの共振器を用いた 極微センシング技術 16:45 共同研究コンソーシアム「ゴム・エラストマーに おける理論・シミュレーション基礎研究会」 の概要 *プログラムおよびポスター発表の詳細・参加申込は下記 URL をご覧下さい。 http://unit.aist.go.jp/nri/event/4-renkeisokushin/index.html 書籍のご案内 「PEN〈2010 年度版〉ナノテクノロジーの社 会受容のために」 産総研 (白日社、2011 年 11 月 25 日、5040 円) http://www.amazon.co.jp/PEN%E3%80%882010%E5%B9%B4%E5%BA%A6%E7% 89%88%E3%80%89%E3%83%8A%E3%83%8E%E3%83%86%E3%82%AF%E3%8 3%8E%E3%83%AD%E3%82%B8%E3%83%BC%E3%81%AE%E7%A4%BE%E4%BC %9A%E5%8F%97%E5%AE%B9%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81% AB-%E7%94%A3%E6%A5%AD%E6%8A%80%E8%A1%93%E7%B7%8F%E5%90% 88%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80/dp/4891731311/ref=sr_1_16?s=books &ie=UTF8&qid=1325812154&sr=1-16 PEN January 2012 69 大阪大学「ナノテク社会人教育プログラム」 平成 24 年度生募集のご案内 本プログラムは、産業界において材料・プロセス・デバ 平成 23 年度は 73 名の履修生を迎えて、非常に活性化し イスに係わりをお持ちの研究 者や技術者に、大学が最新 た夜間講義や実習・討論 を行っております。また、年に のナノテクノロジーに関する基礎科学の学習や実習の場 5回開催しましたナノテク情報交流会やセミナーにも 企 を 提供する事により、履修生が幅広く学際的にナノテク 業から毎回 100 名程度の参加者があり、有意義な産学・ 分野の高度な知識と経験を積 み、将来の新しい材料・デ 産産連携を進めて参りま した。大阪大学では、企業の皆 バイス産業を自ら切り開く能力を身につける事を目的と 様にとりまして更に効果的な「ナノテク社会人教育プ ロ し ています。 グラム」を目指して今後とも努力を続けて参る所存でご ざいますので、一層のご支援を賜りますようどうぞ宜し プログラム内容は、4つの領域(計算科学、エレクトロ くお願い申し上げます。 ニクス・材料、超分子化 学・バイオ・フォトニクス、構造・ 機能計測解析)に体系化されたナノテク教育コー スから 上記ご案内の詳細につきましては、下記のホームページ 1つのコースを選択し、1年間を通して毎週1回夜間(午 にも記載しています。ご参照 戴けましたら幸いに存じま 後 6 時~ 9 時) に開 講される講義 (1 回 3 時間で年間 30 回) す。 と、9 月または 2 月に学内で実施の短期集 中実習(3 日 ~ 5 日間)を履修します。講義は、大阪市内の大阪大学 中之島センターで実施しますが、全国 10 数箇所(東 京、 京阪奈、四日市など)のサテライト教室へのライブ配信 「ナノテク社会人教育プログラム」: http://www.sigma.es.osaka-u.ac.jp/pub/nano/ 「ナノ理工学人材育成産学コンソーシアム」: による遠隔授業でも受講 できます。また、この「講義の http://www.nanoscience.or.jp/ 遠隔配信」に関しまして、 「自社内に受講場所や TV 会議 ご質問などございましたら、大阪大学ナノサイエンスデ システムをご準備戴き、そこに阪大が講義を配信し、自 ザイン教育研究センター・小川 久仁までお願い致します。 社関係者だけが履修す る」という方法も採用しています。 TEL:06-6850-6397 E-mail:[email protected] 所定の教育レベルに達した方には、大阪大学ナノサイエ ンスデザイン教育センター より総長およびセンター長連 * 2 月3日(金)18 時より大阪大学中之島センターにお 名の履修認定証を授与し、大学院博士前期課程の正規単 きまして、平成 24 年度「阪大・ナノテク社会人教育プロ 位 9 単位を付与します。現在までに(H 16 年度からH グラム」募集説明会を行います。ぜひご参加ください。 23 年度までの 8 年間で)約 700 名が履修し、その内の 約 80%が修了されました。本プログラムは履修生だけ で なくその直属上司や技術トップの方々からも高い評価を 戴いております。 また、上記の「阪大・ナノテク社会人教育プログラム」 を支援し、ナノ理工学分野 の最先端科学技術を支える高 度な人材の育成を産学が一体となって推し進めるための 「大阪大学ナノ理工学人材育成産学コンソーシアム」を設 立しています。 コンソーシアムでは、教育だけでなく、会員企業が実施 する日常のナノテクノロジー に関する研究開発について の技術相談、情報交流会やセミナーを開催し、産学連携 や 産産連携の推進も行っています。 70 PEN January 2012 編集室より 「創造的破壊」から 100 年、大きな困難を前に 「不断のイノベーションこそが資本主義の原動力である」 、 一方で、今日我々の社会には地域や職業により大きな経済 シュンペータが動態理論の基本的な考えを示したのは、今 的非平衡の状態、いわゆる社会格差が顕在化している。社 からちょうど 100 年前の 1912 年のことである。市場競 会格差を作り出しその格差をさらに押し広げる役割を果た 争の本質はイノベーションに基づく競争であるとし、「創 しているのが、格差のなかで自己増殖だけを目的に巨大化 造的破壊」という考えが示された [1]。日本では明治から する「マネー」である。もはやモノを生産する実業に投資 大正へ元号がかわり、中国では清朝が倒され共和制の中華 される資金などではない。中低所得者向け住宅ローンまで 民国が誕生した年のことである。 食い尽くした事実が示すとおり、マネーゲームという虚業 に投機されるマネーでしかない。倫理観などなく暴走する それから 30 年後の 1942 年、シュンペータは資本主義の マネーと、その暴走が引き起こしている様々なクライシス 衰退・崩壊のプロセスについて述べている。資本主義は経 が、今日の我々の社会を覆う閉塞感の大きな一因になって 済的な失敗が原因ではなく、むしろその成功が経済的停滞 いるように思えてならない。 を招くことで衰退・崩壊していく、という視点がこの著書 で示された [2]。経済の成功が企業を巨大化させ、官僚化 そのような状況のなかで、昨年 3.11 大震災が起きた。更 することで経営のダイナミズムが失われ、ビジネスの寡占 なる経済の発展を最優先すべきなのか、これまでとは異な 化が進むことで市場の競争力を失う、そういったことだろ る社会システムの創出が大事なのか、大震災と福島第一原 うか。前著 [1] では経済の発展の原動力として不断の非平 発の事故からの復興に向けた処方箋は簡単ではない。科学 衡が重要であるとしたが、成功すればするほど発展の原動 技術に何ができるのか何をしなければならないか、復興に 力を損なうような平衡状況に陥るとしたのが後著 [2] であ 向けて科学技術と社会はどう協働すべきなのか、その答え る。シュンペータの創造的破壊は、平衡からは利益が得ら も容易には出せない。創造的破壊の提唱から 100 年、大 れないことをも逆説的に指摘しているのである。 きな困難を前に、今改めて求められる復興・再生へ向けた プロセスとその過程で必要とされるイノベーションはどう 創造的破壊から 100 年、今我々の社会は閉塞感に覆われ あるべきか、できるだけ多くの利害関係者の枠組みででき ている。では今日の我々の社会を覆う閉塞感の主な要因 るだけ早く議論を始める必要がある。ただしその議論はプ を、単に社会が平衡状況に陥っている事実だけに求められ ラグマティックに進めるべきで、机上の空論は避けたい。 るのだろうか。ベルリンの壁の崩壊に象徴されるような社 会主義国家という反面教師を失って以降、資本主義の先進 [1] Theorie der wirtschaftlichen Entwicklung (1912) 国は膠着したデフレ型経済に陥っている。シュンペータが [2] Capitalism, socialism, and democracy (1942) 1942 年に予測したような事態に陥らないような政策が進 められ、創造的破壊ということの重要性も繰り返し強調さ れてきたが、依然経済は活性化しない。この事実だけ見る と、確かに平衡に陥っているのかもしれない。 ナノテクノロジー戦略室 阿多誠文、関谷瑞木、安順花 PEN January 2012 71 PEN 編集室 編集長 関谷瑞木 編集委員 安順花 外部編集委員 安宅龍明 伊藤正 Endo, Charles-Anica 亀井信一 下村政嗣 李精一 宋清潭 豊蔵信夫 編集後記 ウェブ担当 木村美紀 Ireneusz Laszczyk 発行責任者 阿多誠文 混沌とした政治が科学技術政策にも影響を与えはじめている。科学 技術が大震災や原発事故の対応といった大きな社会ニーズにどうこ たえていかなければならないのか、あきらめず立ち止まらずに議論 を重ね、よりよい方策をさぐる骨の折れるプロセスを実行していく しかない。2012 年を新生日本の元年に、その思いで PEN は社会と かかわっていく。 PEN 編集室 一同 2012 年 1 月 12 日 (独)産業技術総合研究所 ナノシステム研究部門 ナノテクノロジー戦略室 〒 305-8565 つくば市東 1-1-1 産総研つくばセンター中央第 5 1 号館 3106 室 Email:[email protected] Tel:029-860-5108 http://unit.aist.go.jp/nri/nano-plan/index.html 72 PEN January 2012
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