2 0 1 3 年 新 卒 者 向け 業界動向レポート 目 次 ■はじめに ■優良企業は CM やニュースで見る会社だけじゃない! ■業界研究って何を知ればいいのだろう? ■業界動向調査 ○ 銀行 ○ 証券 ○ 生命保険 ○ 損害保険 ○ 不動産 ○ 建設 ○ 住宅 ○ インターネット ○ IT 情報サービス○ 通信 ○ 鉄道 ○ 自動車 ○ 食品 ○ 百貨店 ○ 化粧品・トイレタリー ○ 製薬・医薬品 ○ 総合商社 ■ はじめに あなたが名前を知っている企業は何社ありますか?その企業が業界の中でどのような立ち位置にいるかを知ってい ますか? 志望する業界で今どんな動きがあって、なぜそのような動きが起こっているのか原因を知っていることは、就活を する上で大切なポイントになります。例えば、面接で「あなたが○○業界を志望する理由は何ですか?」 「○○業 界に関するニュースで、最近最も気になったことを教えてください」など、業界を志望する理由や興味を持ったきっ かけ、業界の動向に関する知識などを聞かれることが良くあるからです。このような質問に、あなたは明快に回答 することができますか? このレポートを通じて、いろんな業界、会社について知ってもらえればと思います。業界研究の第一歩にお役立て ください。 ■ 優良企業は CM やニュースで見る会社だけじゃない! TVコマーシャルやニュースに取り上げられる会社は、とても華やかで魅力的に感じます。しかしながら、日本の産 業の根幹を支えている優良企業はテレビでよく見る企業だけではありません。 CMを放送している企業の多くはコンシューマー(一般消費者)向けの事業で活躍している企業ですが、日本の多 くの企業は企業向けの事業を行っています。例えば、三菱商事や伊藤忠商事といった商社はめったにテレビCM を放送しませんが、この2社は日本企業の売上高ランキングベスト3に入っています。 そんな企業は数えだしたらきりがありません。これを機に隠れた優良企業を探してみましょう。 ■ 業界研究って何を知ればいいのだろう? 「業界研究」とは、業界についての知識を深め、先にも述べたように、企業の人事担当者や面接官からの質問に 回答できるように事前に準備することや、自分がその業界に適しているかを調べることです。 ○志望業界はどんな事業を行っているのか? ○業界の近年の動向はどうなっているのか? ○業界としての課題はどのようなものがあるのか? ○自分の長所や経験、学んできたことはその業界でどのように役立ちそうか? ○業界内ではどんな企業が強い(伸びている)のか? 上記 5点をしっかり整理しておくことで、今後のエントリーシートや志望動機、そしてその先にある面接での受け答 えが、自分の言葉で出てくるようになります。 「なんだか大変そう、難しそう」と考えてしまうかもしれませんが、身構えることはありません。このレポートは各 業界の売上やシェアなどをランキング形式で紹介しています。知っている社名も多く出てくると思いますので、まず はパラパラとめくってみましょう! p.2 業界動向レポート Copyright S-cubism. All rights reserved. ■銀行 メガバンク、低い収益力が課題 三菱 UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ 、三井住友フィナンシャ ルグループの 3 行をメガバンクと呼ばれています。日本のメガバンクは、総資産額で見れ ば欧米の銀行と比較しても遜色ありませんが、収益力の低さが目立ちます。例えば、アメ リカ最大の民間金融機関であるバンク・オブ・アメリカは 200 兆円の総資産に対し純利益 は 5650 億円、世界最大級の投資銀行であるゴールドマン・サックスは76 兆円の総資産 に対し純利益は1兆 2000 千億円ありますが、日本のメガバンクの純利益は 4千億円を下 回ります。収益が薄い理由は、貸出金利が極端に低いためです。不況で超低金利政策が 続く一方、預金金利も0%台を推移し、預貸の差也(価格差)がないのです。 ネットバンクなど、新たな形態の銀行は順調 これまでの業態の銀行は苦戦を強いられている中、窓口を持たないネットバンクを運営し ている企業は業績を伸ばしています。例えば楽天銀行は、親会社である楽天の主力事業 であるネットショップでの電子決済に利用できるため、幅広い世代に普及し好調です。ま た、小売り大手のセブン&アイ・ホールディングスの傘下に入るセブン銀行は、全国のコ ンビニ ATM の展開を主体とし、2008 年にジャスダックに上場しています。 銀行(メガバンク) 順位 企 業 名 総資産 純利益 (億円) (億円) 1 三菱 UFJ フィナンシャル・グループ 204 兆 1070 3890 2 ゆうちょ銀行 194 兆 6780 2970 3 みずほフィナンシャルグループ 156 兆 2530 2390 4 三井住友フィナンシャルグループ 123 兆 1590 2710 5 りそなホールディングス 40 兆 7430 1320 6 住友信託銀行 20 兆 5510 530 7 中央三井トラスト・ホールディングス 14 兆 9780 470 8 新生銀行 11 兆 3760 ▲ 1400 9 あおぞら銀行 5 兆 1570 80 ※すべてが最新の情報ではありません。 ※あくまで企業を知る上での“目安”ですので、詳細を知りたい場合は各企業発表の平成 23 年 3月決算の最新情報をご覧ください。 p.3 業界動向レポート Copyright S-cubism. All rights reserved. ■証券 リーマンショック後の赤字は解消、しかしギリシャ危機により不透明感続く 2009 年のリーマンショック、証券業界は減収減益で深刻な赤字に陥りました。しかし翌 年には大手証券会社を中心に黒字回復。世界景気が回復基調となり、新興国関連を中心 に投資信託の販売が伸びたこと、またメガバンクなど大手企業が自己資本強化のため大 型増資し、証券会社の引受手数料が増えたことが要因です。 しかし、2010 年に入ってからはギリシャを発端とする欧州財政危機などの影響により証券 市場の不透明感を払しょくできず、完全に回復基調とは言えない状況です。 金融危機後の大編成、成果が出るか 世界的な金融不安を受け、証券業界では国内外での再編が加速。野村ホールディングス は 2008 年 9月に経営破たんしたリーマン・ブラザーズ(米)の欧州・アジア部門を承継 し、海外での基盤強化を図っています。また、2009 年にはみずほ証券と新光証券が統合。 同年、三井住友フィナンシャルグループはシティグループから日興コーディアル証券と日興 シティグループ証券の事業を買収することに合意しました。さらに、三菱 UFJフィナンシャ ル・グループは三菱 UFJ 証券とモルガンスタンレー日本法人を統合する予定です。 野村、大和などの独立系と、みずほ、三菱 UFJなどのメガバンク系、それぞれのビジネス モデルや再編が今後どのような成果を生むか、注目されています。 証券 順位 企 業 名 営業収益 (億円) 特徴 1 野村ホールディングス 1 兆 3560 独立系 2 大和証券グループ本社 5380 独立系 3 三菱 UFJ 証券ホールディングス 3440 メガバンク系 4 みずほ証券 3120 メガバンク系 5 日興コーディアル証券 1900 メガバンク系 6 SMBC フレンド証券 670 7 岡三証券グループ 660 8 東海東京フィナンシャル・ホールディングス 580 9 みずほインベスターズ証券 510 10 丸三証券 170 ※すべてが最新の情報ではありません。 ※あくまで企業を知る上での“目安”ですので、詳細を知りたい場合は各企業発表の平成 23 年 3月決算の最新情報をご覧ください。 p.4 業界動向レポート Copyright S-cubism. All rights reserved. ■生命保険 少子高齢化によるマーケット縮小、販売職員の強化で新規開拓につなげる 現在の生保業界は少子高齢化の影響によるマーケット規模の縮小が続き、新規契約を中 心に各社苦戦を強いられています。インターネットが普及しているといっても、まだメイン の販売チャネルが営業職員である国内生保企業は、職員の販売スキルアップを図ってい ます。また、個人営業の場合は女性の販売員が多いため、在籍率向上も課題の一つです。 外資系生命保険を中心に再編が続く 2008 年のリーマン・AIGショックは落ち着いてきましたが、先行き不透明な金融状況を背 景に、生命保険業界の再編が続いています。2010 年 3月にアメリカ最大手のメットライフ がアリコの買収を発表。さらにアクサ生命がネット専業であるSBIアクサ生命を子会社化 した。またソニー生命が合併でソニーライフ・エイゴン生命を設立して、国民年金の分野 へ参入し、新たな再編の流れも出てきました。 生命保険 順位 企 業 名 保険料等収入 (億円) 1 かんぽ生命 7 兆 5050 2 日本生命 4 兆 8170 3 明治安田生命 3 兆 2820 4 住友生命 3 兆 0630 5 第一生命 2 兆 8370 6 アリコジャパン 1 兆 3170 7 アフラック 1 兆 2310 8 第一フロンディア生命 8630 9 大同生命 8610 10 太陽生命 7130 ※すべてが最新の情報ではありません。 ※あくまで企業を知る上での“目安”ですので、詳細を知りたい場合は各企 業発表の平成 23 年 3月決算の最新情報をご覧ください。 p.5 業界動向レポート Copyright S-cubism. All rights reserved. ■損害保険 昨今の自動車保険、火災保険、海上保険は低調に推移 損害保険会社のメイン商品は自動車保険、その次に火災保険が主力です。自動車保険の保険料は 新車販売台数に比例するため、昨今の若者の自動車離れや、エコカーブームによる軽自動車などの 比較的に低価格帯の車が売れることにより、保険料も伸び悩んでいます。火災保険も、新築住宅の 着工数の減少に連動し、好調とは言えない状況です。 こうした動向を受け、損害保険業界では大型再編が起こっています。2010 年 4月に三井住友海上グ ループホールディングスとあいおい損害保険、ニッセイ同和損害保険の 3 社が経営統合し、MS&イ ンシュアランスグループホールディングスが発足しました。同年10月にはあいおい損害保険とニッセ イ同和損害保険が合併し、あいおいニッセイ同和損害保険が誕生しました。 また、損害保険ジャパンと日本興亜損害保険が 2010 年 4月に統合し、NKSJホールディングスが 発足し、業界 3 位の大グループとなりました。 自然災害によって収益が大きく左右される 保険料は景気に左右されるだけでなく、自然災害にも大きく影響されます。例えば台風が例年以上に 日本に上陸する年だと、業績が下方修正されてしまいます。大手損害保険会社の場合は、自然災害 が発生した場合に支払う額を200 ~ 300 億円程度と見込んで対処していますが、災害の大きさによっ てはそれ以上の額となり、企業努力だけではどうしようもない事態になるのです。 損害保険 順位 企 業 名 保険料等収入 (億円) 1 東京海上日動火災 1 兆 7360 2 損保ジャパン 1 兆 2580 3 三井住友海上 1 兆 2030 4 あいおい損保 7940 5 日本興亜損保 6330 6 東京海上日動あんしん生命 4570 7 三井住友海上メットライフ生命 4510 8 ニッセイ同和損保 3120 9 富士火災 2700 10 損保ジャパンひまわり生命 2360 ※すべてが最新の情報ではありません。 ※あくまで企業を知る上での“目安”ですので、詳細を知りたい場合は各企 業発表の平成 23 年 3月決算の最新情報をご覧ください。 p.6 業界動向レポート Copyright S-cubism. All rights reserved. ■不動産 首都圏、地方ともにオフィスの空室率が目立つ 複合施設事業も低迷 不動産業界は 2008 年まで市場規模が増加傾向にあり、外資ファンドが積極的に物件を 購入するなど不動産ブームを背景に収益を伸ばしていました。東京ミッドタウンや丸の内 再開発など、オフィス施設と商業施設を一体化させた大型プロジェクトも活発な動きを 見せていました。しかし、世界的な金融危機を発端に、不動産ブームは終焉を迎えます。 東京都心のオフィス空室率が約10%に迫るなど、過去最悪の水準を記録しました。 今後の都心開発で巻き返せるか 不動産市場全体の冷え込みにより、資金繰りの悪化を理由とする中堅不動産会社の破綻 もありました。しかし、不動産建設はもともと長期プロジェクトであるため、業界全体とし ては都心開発に力を注いでいます。 不動産 順位 企 業 名 売上 (億円) 1 三井不動産 1 兆 3850 2 三菱地所 1 兆 0130 3 住友不動産 7190 4 東急不動産 5520 5 野村不動産ホールディングス 4340 6 東京建物 2620 7 森ビル 1770 8 NTT 都市開発 1490 9 森トラスト 1330 10 平和不動産 420 ※すべてが最新の情報ではありません。 ※あくまで企業を知る上での“目安”ですので、詳細を知りたい場合は各企 業発表の平成 23 年 3月決算の最新情報をご覧ください。 p.7 業界動向レポート Copyright S-cubism. All rights reserved. ■建設 公共事業の減少、国内建設市場の縮小により大ダメージ 建設業界は 2007 年までは市場が伸びていたものの、2008 年以降、売上や収益が急激に減少傾向 に転じ、大手建設会社でも赤字決算を計上しています。業界が低迷している要因は、国内のマンショ ン工事や商業施設建設などの民間需要縮小、建設資材の高騰、金融引き締めなどありますが、公共 事業の減少も大きく影響しています。旧政権が計画してきた公共工事が、 政権交代後に廃止されたり、 予算が大幅に削減されたりしたためです。 高度成長期に建設された有料道路や空港設備に補修が必要なため、今後は公共事業が増えていくの ではないかとの見込みもあります。 これまでの工事・建設だけに頼らない収益の改善が急務 工事や建設など、主力事業での収益改善があまり見込めないため、建設各社はこれまでのゼネコン の枠を超えた、新たな分野の開拓に取り組んでいます。例えばパソコンの半導体やテレビの液晶画 面の生産ラインに必要なクリーンルーム分野の開拓、交通シミュレーションシステムの開発、耐震性 の高いマンション建設、医療機器などの特殊エンジニアリング分野などです。 事業拡大をはじめたとはいえ、急激に建設需要が高まることはなく、市場の縮小は免れないため、 業界内での競争は激化するでしょう。大手ゼネコン、中堅企業を中心に、提携や合併の動きが予想 されています。 建設 順位 企 業 名 売上高 (億円) 1 鹿島 1 兆 6370 2 清水建設 1 兆 5890 3 大成建設 1 兆 4420 4 大林組 1 兆 3410 5 竹中工務店 1 兆 1760 6 戸田建設 4750 7 長谷工コーポレーション 4200 8 NIPPO 4080 9 西松建設 3970 10 三井住友建設 3360 ※すべてが最新の情報ではありません。 ※あくまで企業を知る上での“目安”ですので、詳細を知りたい場合は各企 業発表の平成 23 年 3月決算の最新情報をご覧ください。 p.8 業界動向レポート Copyright S-cubism. All rights reserved. ■住宅 新築着工が100 万戸の大台を割る低水準 2009 年の新設住宅着工戸数が 77 万戸。45 年ぶりに100 万戸の大台を割り込みました。 その要因は世界的な金融不安や建築基準法改正により消費者が家や土地の購入に踏み 切れないためです。政府も対応策として住宅ローン減税や贈与税の非課税枠の拡大、住 宅版エコポイントの導入など施策を続けていますが、2006 年ころまでの120 万戸という 水準までに回復するには程遠い状況です。 戸建て住宅市場は少子化の影響を直接受けるとも言われており、国内市場の縮小は避け られません。そこで大手各社は人口増で成長が見込まれる海外市場も視野に入れ動き出 しています。 省エネ、環境対策の需要を逃すまいと競争は激化 新築住宅のニーズは減少していますが、オール電化や耐震・耐火住宅、太陽光発電、省 エネなど住宅への高付加価値に対するニーズは高まっており、これまで取り組みが手薄 だった分野への取り組みが目立っています。エコ住宅の販売促進、リフォーム需要の開拓 など、今後の競争が予想されます。 住宅 順位 企 業 名 売上高 (億円) 1 大和ハウス工業 1 兆 6100 2 積水ハウス 1 兆 3530 3 住友林業 7240 4 積水化学工業 3980 5 旭化成ホームズ 3900 6 ミサワホーム 3540 7 パナホーム 2600 8 三井ホーム 2100 9 一建設 2010 10 一条工務店 1880 ※すべてが最新の情報ではありません。 ※あくまで企業を知る上での“目安”ですので、詳細を知りたい場合は各企 業発表の平成 23 年 3月決算の最新情報をご覧ください。 p.9 業界動向レポート Copyright S-cubism. All rights reserved. ■ イ ン タ ー ネット 検索サービスもネットショップも高成長 他業界が世界的な金融危機の影響で低迷するなか、インターネット業界は順調に業績を 伸ばしています。ポータルサイト、検索サイトの分野では費用対効果の高い検索連動広 告を中心に市場は拡大し続け、Eコマースの分野でも携帯電話やスマートフォンの普及が 後押しして高成長しています。 国内 2 強のヤフー、楽天は海外展開に本腰を入れる 国内企業ではヤフーと楽天の 2 強の構図であることがわかります。ヤフーは国内検索エン ジンで首位を誇り、ネットオークションサイトを運営するなどメディアパワーを武器にシェ アを広げてきました。楽天は中流通企業を集めたネットショッピングモールを持ち、ネット 販売の分野ではトップを独走しています。この2 社は海外展開にも本腰を入れ始めており、 楽天はアジアや欧州を中心に進出、ヤフーもアジア最大の通販サイトを運営するアリババ と提携しました。 海外勢では、インターネット書店を運営するアマゾンや、マイクロソフト、アップルなど巨 大企業が勢ぞろい。日本のインターネット業界は海外に比べまだ規模が小さく、市場その ものも未成熟な状態です。つまりまだまだ成長の余地があるということで、今後のさらな る発展が期待されます。 インターネット 順位 企 業 名 売上 (億円) 特徴 1 Amazon 2 兆 2050 E コマース 2 Google 2 兆 1280 検索 3 楽天 2980 E コマース 4 ヤフー 2790 検索 5 ニフティ 1020 検索 6 ソネットエンタテイメント 750 プロバイダ 7 ディー・エヌ・エー 480 携帯ゲーム 8 GMO インターネット 380 プロバイダ 9 ストリーム 270 E コマース 10 LDH 270 ポータル ※すべてが最新の情報ではありません。 ※あくまで企業を知る上での“目安”ですので、詳細を知りたい場合は各企業発表の平成 23 年 3月決算の最新情報をご覧ください。 p.10 業界動向レポート Copyright S-cubism. All rights reserved. ■ IT 情 報サービス 景気悪化によるIT 投資の減少が業界を圧迫する 世界的な金融危機による景気後退の影響で、企業の IT 投資が落ち込み新規受注が減り、 IT 情報サービス業界の売上は横ばいの状態が続いていました。既存システムの運用サー ビスが売り上げの7 割以上を占めるため、民間重要が低下したとしても即座に業績が崩れ ることはありませんが、運用ではなく新規の受託開発を売上の要とする中堅企業にとって は厳しい状況です。 成長が見込めるクラウド分野を経営戦略の中核に しかし、この不況のなかクラウド事業は大きな成長が見込まれています。クラウド技術を 使えば社内にサーバーや業務アプリケーションを持つ必要がなく、インターネットにつな がる環境であればどこでも仕事ができます。また、設備投資が不要となりコストを削減で きるため、クラウドを導入する企業が増えています。大手各社はクラウド事業を中長期成 長戦略に組み込み、企業成長の原動力にしようとしています。 IT 情報サービス 順位 企 業 名 売上高 (億円) 特徴 1 富士通 ※ 2 兆 5100 メーカー系 2 NEC ※ 2 兆 3300 メーカー系 3 日立製作所 ※ 1 兆 7050 メーカー系 4 NTT データ 1 兆 1430 その他 5 大塚商会 4300 独立系 6 野村総合研究所 3380 ユーザー系 7 IT ホールディングス 3140 独立系 8 伊藤忠テクノソリューションズ 2900 ユーザー系 9 日本ユニシス 2710 メーカー系 10 CSK ホールディングス 1700 独立系 ※すべてが最新の情報ではありません。 ※富士通、NEC、日立製作所の売上は IT 事業、システム事業を含む一部の売上です。 ※あくまで企業を知る上での“目安”ですので、詳細を知りたい場合は各企業発表の平成 23 年 3月決算の最新情報をご覧ください。 p.11 業界動向レポート Copyright S-cubism. All rights reserved. ■通信 携帯通信業界は高収益で安定的だが横ばい続き、 スマートフォン導入による競争激化 移動体通信業界では、携帯電話の普及率が高まり新規加入者の伸びが鈍化。価格争い により割安な料金プランが浸透し、顧客単価も減少傾向にありました。ただし、スマートフォ ンの台頭によりキャリアの乗り換えや機種の買い替えが起こり、業績を伸ばしています。 その傾向が顕著なのは、移動通信業界 3 位のソフトバンクモバイルです。これまで NTT ドコモ、KDDIが独占してきた携帯通信の牙城に踏み込もうとしています。しかし、ソフト バンクモバイルの成長をけん引してきたiPhoneを2011年からKDDIも発売。今後業界内 での競争が激化するでしょう。 ブロードバンドは契約者が増加するも、低採算にあえぐ 携帯電話に比べ、家庭や企業の固定回線は各社とも低採算に苦しんでいます。高速通信 回線、光サービスの普及により各社とも契約数は伸びるものの、利益の大半はNTTに支 払う設備利用料(電柱や通信ケーブル、ケーブルを通す管路の使用料)になっているから です。現在、この光ブローバンドを利用するための設備をNTTが独占的に保有している ため、NTTの組織を分割しようという案が出ています。この分割問題しだいで、各社の 営業利益が変わってくるため、通信業界各社の思惑が交差し議論が紛糾しています。 通信 順位 企 業 名 売上高 (億円) 特徴 1 NTT ドコモ 4 兆 1670 移動体通信 2 KDDI(移動通信事業) 2 兆 6500 移動体通信 3 NTT 東日本 1 兆 9280 ブロードバンド 4 NTT 西日本 1 兆 7800 ブロードバンド 5 ソフトバンク(ソフトバンクモバイル) 1 兆 7010 移動体通信 6 KDDI(固定通信事業) 8390 ブロードバンド 7 ジュピターテレコム 3340 ブロードバンド 8 ソフトバンク BB 2030 ブロードバンド 9 ケイ・オプティコム 1340 ブロードバンド 10 イー・モバイル 1130 移動体通信 ※すべてが最新の情報ではありません。 ※あくまで企業を知る上での“目安”ですので、詳細を知りたい場合は各企業発表の平成 23 年 3 月決算の最新情報をご覧ください。 p.12 業界動向レポート Copyright S-cubism. All rights reserved. ■鉄道 景気悪化、高速道路の料金値下げが響き営業利益減少 鉄道各社は鉄道部門だけでなく、流通や都市開発、レジャー開発を行っています。本業 である鉄道部門では、景気後退の影響によるレジャー需要の低迷や高速道路の値下げに より、鉄道を利用する人数が減少し低迷を続けています。 非鉄道部門でも業績は苦戦しており、流通部門の柱である百貨店やスーパーは消費不況 で売り上げを伸ばせない状況。ホテルや遊園地などのレジャー部門も不況により需要が 落ち込んでいます。 利用者に選ばれる沿線となるため、各社鉄道周辺事業を強化 少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少により、今後鉄道の利用者は下降線に向かいま す。本業である鉄道事業の伸び悩みを見越し、各社は利用者の取り込みに注力していま す。鉄道沿線には各社の不動産や百貨店、スーパー、商業施設があるため、沿線の利用 者が増えればこれら非鉄道事業が潤い、百貨店が注目を集めれば鉄道利用者が増えると いう相乗効果を期待できるためです。 鉄道 順位 企 業 名 売上 総営業距離 (億円) (km) 1 JR 東日本 2 兆 5730 7526 2 JR 東海 1 兆 4860 1970 3 東急電鉄 1 兆 2300 104 4 JR 西日本 1 兆 1900 5024 5 近畿日本鉄道 9600 508 6 阪急阪神ホールディングス 6530 195 7 東武鉄道 5790 463 8 小田急電鉄 5300 120 9 西武ホールディングス 4890 176 10 京王電鉄 4030 84 11 東京メトロ 3770 195 ※すべてが最新の情報ではありません。 ※あくまで企業を知る上での“目安”ですので、詳細を知りたい場合は各企業発表の平成 23 年 3月決算の最新情報をご覧ください。 p.13 業界動向レポート Copyright S-cubism. All rights reserved. ■自動車 世界同時不況の影響により自動車メーカー各社大幅赤字 自動車メーカー各社は、販売台数が減少し続ける国内よりもアメリカや新興国などの海外 を主要なマーケットと定め、事業を拡大してきました。しかし、2007 年から続く世界同時 不況の影響により、アメリカだけでなく中国やインドといった新興国での自動車販売台数 まで急落。自動車メーカー各社の業績は急速に悪化していきました。アメリカ経済の回復 で市場も持ち直してきましたが、自動車の小型化で収益の回復ペースは鈍っています。 GM 経営破綻をきっかけに、世界的な業界再編の動きが加速 2009 年に業界1位だったゼネラル・モーターズ (米)の経営破綻をきっかけに、各社メーカー は生き残りをかけて包括提携の動きを活発化させています。2009 年にはフォルクスワー ゲン(独)とスズキが包括提携。2010 年にはルノー(仏)と日産自動車がダイムラー(独) と提携。提携の狙いは新興国向けの安価な小型車や、環境に配慮したエコカーの開発 です。 自動車 順位 企 業 名 販売数 (万台) 特徴 1 トヨタ自動車 897 2 ゼネラルモーターズ 836 外資(米) 3 フォルクスワーゲン 623 外資(独) 4 フォード・モーター 540 外資(米) 5 現代(ヒュンダイ)自動車 415 外資(韓) 6 ホンダ 378 7 日産自動車 371 8 プジョー・シトロエン 326 外資(仏) 9 ルノー 238 外資(仏) 10 スズキ 236 ※ 2008 年新車販売実績です。 ※あくまで企業を知る上での“目安”ですので、詳細を知りたい場合は各企業発表の平成 23 年 3月決算の最新情報をご覧ください。 p.14 業界動向レポート Copyright S-cubism. All rights reserved. ■食品 内需依存型の成熟業界で消耗戦をどう戦い抜くか 今まで内需に依存してきた日本の食品メーカーは、国内の人口減少と少子高齢化で完全 に成熟産業となってきました。限られたパイをめぐって各社小売店のブランドで販売する PB(プライベートブランド)の争いが激しく、2008 年当初は製品競争力のない中小メー カーが中心でしたが、ここ最近では味の素など大手企業でも、本格参入が始まっています。 各社価格競争など消耗戦となり、業界全体的に疲弊してきている感があります。 海外市場への参入が各社課題 国内市場での需要は先細るだけに、大手企業などは積極的に海外市場の開拓を進めてい ます。キッコーマンや味の素は、業界に先駆けて09 年以降アジア市場へ参入し販路拡大 を目指しています。またキューピーもマレーシアに工場を竣工し、ハウス食品もベトナムで 食品企業を傘下に持つ現地企業へ出資するなど、海外進出のための足がかりを作ってい るところです。 食品 順位 企 業 名 売上 有名商品 (億円) 1 ネスレ(スイス) 8 兆 6090 コーヒー飲料 2 JT 6 兆 1340 たばこ 3 ユニリーバ(英) 4 兆 3800 インスタント食品 4 味の素 1 兆 1710 調味料 5 日本ハム 9530 ハム 6 山崎製パン 8850 パン 7 伊藤ハム 4520 ハム 8 キューピー 4520 マヨネーズ 9 日清製粉グループ本社 4430 小麦粉 10 明治製菓 4110 チョコレート ※すべてが最新の情報ではありません。 ※あくまで企業を知る上での“目安”ですので、詳細を知りたい場合は各企業発表の平成 23 年 3月 決算の最新情報をご覧ください。 p.15 業界動向レポート Copyright S-cubism. All rights reserved. ■ 化 粧 品 ・ト イ レ タ リ ー 国内化粧品業界は市場が成熟、大手メーカーも苦戦 売上高が増加を続けてきた化粧品業界ですが、国内での伸び率は頭打ち状態。2008 年 の原油価格高騰による原材料費の値上がり、そして世界同時不況の影響により売上高が 減少となりました。不況だからといってトイレットペーパーを使わなくなったり、化粧をし なくなったりするわけではありませんが、消費者の節約志向から高価格帯の商品を中心に 売上が伸び悩みました。 各社海外市場開拓に注力、中国などアジア市場への進出が急務 不況や少子高齢化の影響等で国内市場での成長に限りのある業界であるため、メーカー 各社は新たなパイを得るために海外進出を急務としています。特に成長著しい中国や東南 アジアなど、アジア圏でのシェアの獲得に力を注いでいる企業が多いようです。日系企業 の中では首位に立つ資生堂は、中国の富裕層や中産階級層に狙いを定め展開中です。 国内ではもともとの化粧品メーカーだけでなく、製薬や食品、酒造メーカーなどの異業種 もこの業界に参入してきています。今後は規模や業界の垣根を超えた争いが激化しそう です。 化粧品・トイレタリー 順位 企 業 名 売上高 (億円) 特徴 1 P&G 7 兆 1130 外資(米) 2 ユニリーバ 4 兆 3800 外資(英、蘭) 3 ロレアル 1 兆 9220 外資(仏) 4 花王 1 兆 1840 5 エスティーローダー・カンパニーズ 6590 6 資生堂 6440 7 ユニチャーム 3568 8 ライオン 3220 9 コーセー 1730 10 小林製薬 1290 外資(米) ※すべてが最新の情報ではありません。 ※あくまで企業を知る上での“目安”ですので、詳細を知りたい場合は各企業発表の平成 23 年 3月決算の最新情報をご覧ください。 p.16 業界動向レポート Copyright S-cubism. All rights reserved. ■ 製 薬・医 薬 品 日本市場自体は緩やかに拡大、製薬業界は再編、統合を繰り返す 日本の医療用薬品の売上は緩やかに上昇を続けています。国内の製薬メーカーは再編、統合を積 極的に行ってきました。2005 年には山之内製薬と藤沢薬品工業が合併し、アステラス製薬が誕生。 同年、大日本製薬と住友製薬が合併し大日本住友製薬が誕生。2007 年には三共と第一製薬が経 営統合し第一三共が誕生。同年、第一三共のグループ会社である第一三共ヘルスケアがゼファーマ を吸収合併しています。 特許切れと新薬開発の遅れに直面、ジェネリック医薬品による市場の浸食 こうした再編、統合は、海外企業への対抗策でもあります。世界にはファイザー(米)、サノフィ・ア ベンティス(仏)など売上が400 億ドル(4 兆円)を超える企業がいます。こうした巨大企業と戦う ためには、資金力を蓄える必要があるのです。 日本の大手製薬メーカーは、主な収益源である米国市場で主力薬品の特許が切れかけているという 問題に直面し、新薬の開発も難航して遅れをとっています。国内でも、2006 年の薬価引き下げの影 響により市場は激化。徐々にジェネリック医薬品(後発医薬品)も参戦し市場は侵略されています。 現在製薬業界の成長をけん引しているのは新興国での市場の高まりです。業界大手の第一三共はイ ンド最大の製薬会社ランバクシー・ラボラトリーズ社を買収、子会社化するなど、製薬大手はアジア での事業体制の整備に注力しています。 製薬・医薬品 順位 企 業 名 売上高 (億円) 1 武田薬品工業 1 兆 4660 2 アステラス製薬 9750 3 第一三共 9520 4 エーザイ 8030 5 大塚製薬 4660 6 中外製薬 4290 7 田辺三菱製薬 4050 8 大日本住友製薬 2960 9 塩野義製薬 2780 10 大正製薬 2580 ※すべてが最新の情報ではありません。 ※あくまで企業を知る上での“目安”ですので、詳細を知りたい場合は各企業 発表の平成 23 年 3月決算の最新情報をご覧ください。 p.17 業界動向レポート Copyright S-cubism. All rights reserved. ■総合商社 5 大商社の 2010 年度の連結純利益1兆円突破好業績に沸く総合商社 5大商社といわれる三菱商事、伊藤忠商事、三菱物産、丸紅、住友商事の 2010 年度の連結純利益 は合計で1兆円突破が確実になる見込み。07年に次ぐ過去2番目の高水準になる可能性が高いです。 総合商社はトレード業務(輸出入などの仲介販売)を生業にしてきましたが、日本企業自身の海外 進出などにより、各社はトレード中心から事業会社をグループに取り込む事業投資型ビジネスへとシ フト。国内外で製造から小売まで幅広い業種の企業をグループ内に取り込むことで、連結決算の収 益拡大につながっています。 資源分野とエネルギー分野が好調、非資源ビジネスにも期待 好業績の最大のけん引役は資源部門です。総合商社は海外で鉄鉱石などの金属資源や原油・天然 ガスなどのエネルギー資源の開発、生産プロジェクトに参画しています。近年の資源価格の上昇に より、資源やエネルギー関連の利益が膨らみ、業績アップに貢献しています。 資源部門が好調とはいえ、資源は市況変動の影響を受けやすく、資源そのものも枯渇していきます。 そこで総合商社各社は太陽光発電などの新エネルギー開発にも力を入れ、海外の太陽光発電事業 会社を買収しはじめています。また、新興国を中心に、人口増加による食料需要の高騰が見込まれ、 食料会社との包括提携を結ぶ動きも出ています。 総合商社 順位 企 業 名 売上高 強み (億円) 1 三菱商事 17 兆 1000 資源、機械、化学など 2 伊藤忠商事 10 兆 3070 アパレル、食品など 3 三井物産 9 兆 3580 原油、インフラなど 4 丸紅 7 兆 9650 穀物、紙パルプなど 5 住友商事 7 兆 7670 CATV、TV 通販など 6 豊田通商 5 兆 1020 食料品など 7 双日 3 兆 8440 自動車、航空機など 8 兼松 8610 IT、食料品など ※すべてが最新の情報ではありません。 ※あくまで企業を知る上での“目安”ですので、詳細を知りたい場合は各企業発表の平成 23 年 3月決算 の最新情報をご覧ください。 p.18 業界動向レポート Copyright S-cubism. All rights reserved. ■百貨店 リーマンショックから回復の基調を見せるも、消費低迷が響く 2007 年の世界金融危機、2008 年のリーマンショックの影響による消費低迷に苦戦を強 いられている百貨店業界。さらには若者の百貨店離れやショッピングモール、アウトレッ トの台頭により市場は縮小しています。採算の取れない店舗を閉鎖したり、大胆なリスト ラを実行するなど、なんとか利益を捻出できるようになってきましたが、本格的な回復と は言い難い状況です。 統合や提携、大型店舗開店など激しい動き 百貨店業界は生き残りをかけた再編により激動しています。2007 年 9月には松坂屋ホー ルディングスと大丸が統合し業界 2 位の J.フロントリテイリングが誕生、10月には阪急百 貨店と阪神百貨店が統合し業界 5 位のエイチ・ツー・オーリテイリングに。2008 年には 三越と伊勢丹が統合し、三越伊勢丹ホールディングスが誕生、業界1位となりました。 統合だけでなく、大型店舗の出店も目立ちます。銀座や大阪など、大消費地での新店開 店、リニューアルによる大型店への投資が盛んです。ただ、これらは攻めの姿勢というわ けではなく、金融危機以前からの出店が決まっていたこと。ここから活路を見いだせるかが、 今後の成長につながります。 百貨店 順位 企 業 名 売上高 (億円) 特徴 1 三越伊勢丹ホールディングス 1 兆 2900 2 J. フロントリテイリング 9830 3 高島屋 8780 4 セブン&アイ・ホールディングス 8470 そごう、西武など 5 エイチ・ツー・オーリテイリング 4700 阪急百貨店など 6 丸井グループ 4190 7 近鉄百貨店 3090 8 パルコ 2640 9 ルミネ 2590 10 東急百貨店 2420 大丸、松坂屋など JR 東日本子会社 ※すべてが最新の情報ではありません。 ※あくまで企業を知る上での“目安”ですので、詳細を知りたい場合は各企業発表の平成 23 年 3月 決算の最新情報をご覧ください。 p.19 業界動向レポート Copyright S-cubism. All rights reserved.
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