III-A080 砂質土の物性値と液状化強度特性 (協)関西土質研究センター ⃝ 中 山 義 久 関 西 大 学 工 学 部 西 田 一 彦 関 西 大 学 工 学 部 西 形 達 明 (協)関西土質研究センター 井 上 啓 司 1.はじめに 砂質土の液状化強度と物性値に関して数々の研究例が発表されてきた.それらの研究例のなかで,粒度と くに細粒分含有率だけで液状化強度を一義的に表せないことも明らかとなってきた 1),2) .この原因の一つに細 粒分のコンシステンシー特性が考慮されていないことが考えらる.そこで,筆者らはまさ土のコンシステン シー特性を表す物性値として流動限界を取り上げ,細粒分含有率と流動限界の相関性および,同一間隙比状 3) 態であれば流動限界の増加に従って液状化強度も大きくなることを明らかにした .今回はこれらの結果を もとに,一般の沖積砂質土の物性値,とくにコンシステンシー特性と液状化強度の関係を調べた. 2.実験に用いた試料の特徴 液状化検討の対象となる土層の粒度試験を 実施するとその多くが砂質土に分類される. そこで,今回実験に用いた試料は関西地区以 西の砂質土を選んだ.それらの採取地および 物性値を表−1に示す.それぞれの試料につ 表−1 試料名 Sand 1 Sand 2 Sand 3 Sand 4 Sand 5 採取地 神戸市 寝屋川市 米子市 福岡市 広島市 各試料の物性値 Fc(%) D50(mm) 32.5 0.190 25.6 0.350 23.0 0.275 28.2 0.370 19.8 0.290 ρs(g/cm3) 2.663 2.645 2.650 2.678 2.646 W fl(%) 20.8 25.9 41.3 22.8 16.4 いて少し詳しくみると,sand1試料はやや細 粒の砂質土であることがわかる.Sand 2∼4 試料の細粒分含有 率と平均粒径 D5 0 が比較的似通っている.とくに sand 3 試料は 暗黒灰色を呈し,流動限界が他に比べ,大きいのが特徴的であ る.Sand 5 試料の細粒分含有率と平均粒径 D 50 はほかの試料に くらべてそれぞれ小さめである.これらの試料の粒度曲線は図 100 80 通過質量百分率 (%) 粒分含有率が大きく,平均粒径 D 50 も比較的小さいことから細 40 準・同解説 5) 4) Sand 1 Sand 2 Sand 3 Sand 4 Sand 5 液状化の可能性あり 20 −1 に示され,その統一土質分類名はすべて砂質土に分類され る.また,道路橋示方書・同解説 特に液状化の可能性あり 60 0 0.0001 ,港湾の施設の技術上の基 0.001 などの液状化判定の対象とすべき土層に当てはま 0.01 図−1 るものでとなっている. 0.1 粒 径 (mm) 1 10 100 粒径加積曲線 4 Sand1 Wfl=20.8% つぎに,試料のコンシステンシー特性について述べる.一般 界試験から求められる.し か し ,今回用いた試料のほとんどは, 液性限界試験を実施することができなかった.そこで,文献 3) で示した小型のスランプコーンを用いて,試料の流動曲線を求 め,スランプ高さ 1.5cm 時の含水比をもって流動限界とした. その試験結果を図−2 に示す.流動曲線がグラフの右側に位置 スランプ高さ(cm) に土のコンシステンシーは JIS で規定されている液性・塑性限 Sand2 Wfl=25.9% 3 Sand3 Wfl=41.3% Sand4 Wfl=22.8% Sand5 Wfl=16.4% 2 スランプ1.5cm 1 0 し,曲線の勾配がゆるやかなものほど試料中の細粒分の性質が 0 10 20 30 含水比(%) 図−2 40 50 各試料の流動曲線 液状化強度,コンシステンシー,砂質土,間隙比 大阪府摂津市東別府1丁目3−3,TEL 06-6827-8833,FAX 06-6829-2256 -160- 土木学会第56回年次学術講演会(平成13年10月) III-A080 高塑性であることが明らかとなっている 3) ことから,sand 0.5 これらの試料について,地盤工学会規準で最小・最大 密度を求め,その値を参考にして,乾燥密度を 3∼4 種類 に 変 化 さ せ て 供 試 体 を 作 製 し た . 圧 密 圧 力 σ c ’= 98kPa, 非排水条件,0.1Hz, サ イ ン 波 形 の 荷 重 制 御 で 液 状 化 試 験 を行った.液状化強度は載荷回数と繰返し応力比の関係 繰返し応力比 (σd/2σc') sand 1 e=0.740 Wfl=20.8% 3 試料の細粒分は高塑性であることが推定される. sand 2 e=0.738 Wfl=25.9% 0.4 sand 3 e=0.818 Wfl=41.3% sand 4 e=0.797 Wfl=22.8% 0.3 sand 5 e=0.755 Wfl=16.4% 0.2 0.1 より,載荷回数 20 回時の繰返し応力比と定義した. 0 1 図−3 は実施した液状化試験において,各試料の中か 10 100 1000 載荷回数 (N) ら比較的圧密後の間隙比の近いものの試験結果を選んだ. 液状化強度曲線の比較 図−3 この図より,液状化強度曲線は流動限界の大きいものほ 0.5 sand1 sand2 sand3 sand4 sand5 ど上方に位置することがわかる.これより,流動限界が 図−4 は液状化強度と平均粒径 D50 との関係をプロッ トしたものである.今回使用した試料に対しては液状化 液状化強度比 ことが考えられる. 0.818 0.4 砂質土の液状化強度に対しても強く影響を及ぼしている 強度と平均粒径 D 50 との相関関係を見いだすことは困難 0.977 0.3 0.2 0.577 0.654 数字は圧密後 間隙比 0 0.000 図−5 は液状化強度と細粒分含有率 Fc との関係を調べ 0.787 0.594 0.1 である. 0.501 0.500 0.100 0.988 0.738 0.671 1.323 0.755 0.740 1.086 0.832 0.200 0.300 平均粒径 D50(mm) たものである.試験数量が少ないこともあり,図−4 と 同様にこの実験からは明確な相関を見いだせない. 1.141 0.400 0.500 図−4 平均粒径と液状化強度の関係 図−6 は文献 3)において求められたまさ土の流動限界 0.5 と液状化強度の関係に今回,実施した結果を重ねてプロ 比べ,明らかな相関関係が見いだすことが可能であり, 流動限界と間隙比から液状化強度の推定が可能になるこ とがわかる.これは流動限界が細粒分含有率,平均粒径 0.4 液状化強度比 ットしたものである.図−5 ,図−6 で 求 め ら れ た 関 係 に sand1 sand2 sand3 sand4 sand5 0.818 0.977 0.3 0.500 0.787 0.594 1.141 0.755 数字は圧密後間隙比 の鉱物組成などの複合的な性質を表しているからである 0.738 0.988 1.323 0.832 1.086 0.671 0.1 などの粒度特性のみならず,粒子の形状,および細粒分 0.501 0.2 0.577 0.654 0.740 0 0.0 と考えられる.最後に,実験に用いた試料数に限りがあ り,今後さらに試験数を増やし,この結果をより確実な 10.0 20.0 30.0 細粒分含有率 F C(%) 40.0 細粒分含有率と液状化強度の関係 図−5 ものにしていく必要がある. 参考文献 0.5 e=0.5 1)足立雅樹,安原一哉,島袋淳:塑性のない細粒分を含む砂質 /Ⅲ-43,pp.29 ∼38,1998. 2)永瀬英生,廣岡明彦,柳畑亨,井 上孝則:液状化したコンシステンシーの異なる緩い粘土混じり 砂の流動特性試験,第 32 回地盤工学研究発表会講演集,pp.761 ∼762 ,1997. 3)中山義久,西田一彦,西形達明,井上啓司:ま さ土の物性と液状化特性,土木学会論文集,No.638,pp.207∼ 215,1999 .4)運輸省港湾局監修:港湾の施設の設計上の基準・ 同解説,日本港湾協会,上巻 ,pp.204∼209,1997. 5)道路橋示方 書・同解説:(社)日本道路協会,耐震設計編,pp.83 ∼97,1996. -161- 0.73 e=0.7 0.6 0.818 0.5 0.4 液状化強度比 土の液状化とそれに伴う体積変化,土木学会論文集,No.596 e=0.6 0.58 e=0.8 0.4 8 0.977 0.3 0.53 e=1.0 0.59 0.500 0.2 0.6 0.69 0.5 0.65 0.1 0.594 0.5 0.671 0.6 0.67 0.501 0.740 1.086 0.9 0.8 0.6 0.8 0 . 70.74 8 7 0.60.78▽ 0.6 0.6 0.70.77 0.7 0.577 0.9 0.6 0.8 2 0.9 0.7 1.0 0.6 0.7 0.82 0.8 1.16 0.83 ▽ 0.8 0.988 0.654 0.7 0.8 1.0 0.8 0.8 0.8 0.8 9 e=1.1 1.08 1.13 1.41 1.1 1.141 1.323 0 . 7 3▽ 8 ▽ 0.832 B1 B2 B3 W1 W2 W3 Y1 Y2 Y3 RA RB AW TK TB TC SH SL ▽ KH Sand1 Sand2 Sand3 Sand4 Sand5 0 10 20 図−6 30 流動限界 wf l (%) 40 50 流動限界と液状化強度の関係 土木学会第56回年次学術講演会(平成13年10月)
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