特集 1 開発者インタビュー - マンダム

1
開発者インタビュー
特集
製品に込めた思い
2006年夏に発売した「ギャツビームービングラバー」は記録的なヒットとなり、マンダムを代表する
商品となりました。こうしたヒット商品が生まれる背景には、開発者たちのたゆまぬ努力と、環境や生
活者の安全性への配慮が常に存在しています。開発のトップである第一商品開発部部長の藤原と、
中央研究所所長の岡田にインタビューを行いました。
社員全員の協力で生まれたヒット商品
2006年8月に発売された「ギャツビームービングラバー」
だコミュニケーション、そして最前線である店頭での活動と、す
べてがバランスよく機能した結果でもあります。
しかし、成功の
影で実はこんな新しい試みを始めていました。
は、マンダムの長い歴史の中でも記録的な商品となりました。
「新商品を開発する場合、
まず我々開発メンバーが仮説を立
記録的というのは、売上金額はもちろんのこと、発売当初、通
て、検証の場面で生活者にグループインタビューを行います。
常の倍以上という大量の商品を出荷したこともあります。この
新商品出荷も、順風満帆に発売にこぎつけたわけでなく、直前
になってフタが少し固くて開けにくいという不具合が見つかっ
マンダム3R設計の概念図
生活者 発
生活者 着
お客様
マンダム
ご不満
ウォンツ
たのですが、生活者の視点に立ち、出荷を待つばかりとなって
いた商品の梱包をいったん解き、本社の社員を動員してすべ
ての商品でフタの締め直しを行いました。
この時のことを岡田はこう振り返ります。
「あれだけの短期
間で、あれだけの仕事ができたのは、マンダムだからこそ。
『ムービングラバーが成功したのは誰のおかげ?』
ともし聞かれ
お客様のウォンツの
商品化
コンセプト
商 品
開発・設計
3R設計の商品化
環境への配慮
たなら、おそらく社員全員が胸を張って手を挙げられるはずで
す。みんなの協力により危機を乗り越え、記録的な新商品の発
ご満足
売にこぎつけたことは、会社の一体感を醸成するのに役立ちま
した。改めてマンダムの底力を見た気がします。」
この「ムービングラバー」の成功は、
ワックス自体の機能性も
さることながら、パッケージのデザインとカラーの斬新さ、CM
やポスター・Webを使ったファッショナブルかつ話題性に富ん
05
お客様から
の評価
環境理念・
環境方針
マンダム 社会・環境コミュニケーションレポート 2007
これまでグループインタビューの立ち会いは、商品開発部門
ゾール製品は、男性は勢いよくシュッと出るのが好まれる一
のみで行う場合が多く、そこで得られた仮説を研究部門に伝え
方、女性はソフトに出る方が受けがいい。こんな風に両者に
て、
『 こういうことが求められているから、
こんな風に作ってほ
とってそれぞれ一番快適な出方を当社で評価し、決めるわけで
しい』
と頼んでいたわけです。これを研究所のメンバーもイン
す。さらにこの『評価』
というのも、マンダムと生活者が一緒に
タビューに参加するようにし、直接、生活者の声を聞くようにし
なって作っていくもの。時代や流行といったものも影響してく
ました。こうすることで、開発もずいぶんやりやすくなりまし
るでしょう。これらの評価技術から生まれたマンダムの商品は、
た。開発とは違った視点で、研究所の人間はコンセプトも知恵
ありがたいことに指名買いしてくださるお客様が大変多いと
も出してくれますから。また、スケジュールの短縮につながると
いう特徴があります。こういったお客様は敏感で、原料を少し
いうメリットもありました」藤原はこう語ります。
変えてもすぐにおわかりになるようです。売れ筋商品は変えず
さらに、岡田は続けます。
「直接、生活者の声を聞くことによ
に残していっており、1933年発売の『丹頂チック』などは好例
り、腑に落ちる開発ができるようになったと感じています。腑に
です。ブランドというのは、生活者が半分、メーカーが半分で
落ちないといい開発はできない。研究と開発のメンバーがひ
作っていくもの。変えてはいけないものは、絶対に変えないと
ざを突き合わせて、議論し考えるようになりました。研究と開
いう方針を貫いています」
と言います。
発、それぞれ違う視点で議論があっていいのです。
『いいもの
昨年から、マンダム独自のアルカンジオールを使った防腐剤
をつくる』、そのただ一つの目標に向かい、言いたいことを言
フリーの技術を開発、多くの商品に展開を進めています。今後
い合えばおのずといい商品は生まれるでしょう」
もさらに、
この快適性を軸とした評価技術と理論マーケティン
昨年秋に竣工したR&D棟に、研究と開発部門を集結させた
グをミックスした、生活者にご満足いただける商品の開発を進
ことで、さらに機能的かつ活発なコミュニケーションが図れる
めていきます。
ようになりました。
安全性の基本は「優しさ」
マンダムの持つ技術の強みとは
食品はもちろん、家電製品やガス器具など、安全性に関する
マンダムという会社の使命は、何が快適で、何が新しいの
問題が多発しています。生活者には、機能性が高く、手軽に使
か?̶それらを常に生活者の視点で『生活提案』
し続けること
えておしゃれな商品が求められますが、マンダムでは何よりも
です。快適と一言で言っても、快・不快の基準など個々人で違っ
安全性を一番に考えてものづくりを行っています。
て当然でしょう。この快適性を評価し、数値化・指標化する技術
数年前になりますが、女性向けのセルフのパーマ液を販売し
にいち早く取り組んでいるのがマンダムであり、
こういった研
ており、当時、その分野では市場でナンバーワンの人気商品で
究と技術力を持っているメーカーは多くありません。評価技術
した。ところが、あるお客様がこのパーマ液をカラーリング剤と
があることで、同じような商品でも他社との差別化が図れるわ
併用された上、パーマ液というのは1剤と2剤を使って固定さ
けです。
せるものですが、
1剤のみでやめてしまわれたため、切れ毛に
これについて岡田は、
「夏場によく出る『フェイシャルペー
つながり、精神的なダメージをお受けになったとの報告があり
パーアイスタイプ 』ですが、中味液の処方を工夫しているた
ました。これを受けて、緊急会議が開かれ経営ボード全員によ
め、他社のものに比べ快適なクール感が長時間保てるように
り、販売および製造中止を決断しました。どんなに注意書きと
なっています。また、男性はゴシゴシとしっかり拭きたいので、
して使用説明書に記しても、間違った使い方をされ、お客様に
不織布そのものにも工夫を加えています。これらは『生活者に
危害が及ぶ恐れがあるなら、マンダムではたとえ利益が上がる
とって何が快適か』を追求しているからこそできることです。」
商品でも作らないことを再確認しました。
と話します。
安全性に関して、開発の基本を岡田はこう話します。
「安全
さらに藤原は、
「スプレー缶に入ったエアゾール製品を自社
性の基本にあるのは、
“優しさ”
です。これは肌にも髪にも、
また
で生産している化粧品会社は、実は国内で当社ぐらい。エア
環境にも、社会にも
“優しい”
ということです。法律で安全性の
グッドデザイン賞を受賞したムービングラバー
防腐剤フリー処方採用製品
インタビューの様子
06
特集
1
製品に込めた思い
残ガス排出機構の
装着推進
オンリーワンを常に目指して
①引き抜く
②丸印を
合わせる ③差し込む
藤原は「マンダムの開発コンセプトに、
“Something new,
something different”
というものがあります。これをやさし
く言い換えると
『他でやれないことをやれ』
ということだと思う
のです。他でやれないこと、それこそがマンダムらしさであり、
オンリーワンなのだと。他でやっていないこととは、フォルム
なのか、中身のこだわりなのか? いずれにしろ、マンダムらしい
使用時 ガス抜き時
『こだわり』を持っていてほしい。それがいい商品につながる
基準をクリアしているから、
ということでなく、さらにマンダム
はず。昨年の『ムービングラバー』は、マンダムスピリットを思
として何ができるかを追求していきたい。利益を追求するよ
い出させてくれたいい機会でした。数多くの開発の陰で忘れ
り、生活者にご満足いただけることがすべての活動の基本です
がちですが、我々は生活者に感動を届けるんだという気概を
から」
忘れずにいてほしい」こんな言葉を後輩たちに伝えたいと言
さらに藤原は、
「開発姿勢として、やるんだったら先に早く
います。
やってしまおうということもあります。たとえば、エアゾール製
一方、岡田は「何のために我々は研究開発をしているのか?
品の残ガス排出機構なども、当社が一番早く対応したのです
それは『お客様のために』。ここを常に忘れてはいけない。技術
が、開発者からは『どうしてこんなに早くやらないといけないん
のマンダム、マーケティングのマンダム̶この両方があって初
だ』
とか『デザインにもっとこだわりたいのに』
といった声も出
めてオンリーワン・カンパニーとなれるのです。それに加え、開
ましたが、やはりお客様の安全を第一に考えることで、みんな
発者・技術者はいつも謙虚な姿勢でいることです。ときには『ど
納得したようです。開発を行う際、
『 マンダム商品開発8原則』
うしてこんなつらいことをしなければならないんだろう?』
と思
というものに基づいて行いますが、
コンプライアンスとともに、
うこともあるかもしれない。そんな時も常に思い出してもらい
環境保全、動物実験といったCSR的な観点もそれには含まれ
たいのが、生活者へのお役立ちという基本姿勢です。自分が会
ています。これらのバランスを取りながら、
トータルに考えるこ
社を担っているんだという自覚をみんながいつも持っていて
とが必要なんでしょう。常にこれに関しては、社内で議論をして
ほしい。そして、規模を追うのでなく、会社の存在意義を再認
いますが、折り合いをどうつけていくかは永遠の課題かもしれ
識してほしい」
と語ります。
ませんね」
と話します。
20年後の未来、さらに進化したオンリーワンカンパニーへ
今年は、創立80周年というマンダムにとって節目となる年
向けて、マンダムの挑戦は続きます。
でした。20年後、100周年を迎える時のマンダムはどんな会
社であってほしいか、二人の思いを聞いてみました。
07
執行役員
商品企画室、 中央研究所担当兼
中央研究所 所長
執行役員
お客さま相談室、
第一商品開発部担当兼
第一商品開発部 部長
岡田 和喜
藤原 徳雄
マンダム 社会・環境コミュニケーションレポート 2007
細やかな配慮と
優しい視点を製品に込めて
Reduce
(減量)
マンダムグループでは、常に「商品を通じたお役立ち」を念頭に
研究開発を行っています。その中でも環境への配慮は、
メーカー
Reuse
Recycle
である私たちにとって最も重要な企業責任であると認識し、製品
(再使用)
(再利用)
が関わるすべてのシーンにおいて環境保全の取り組みを進めて
います。また、最近では環境配慮だけにとどまらず、お客様のベネ
フィット向上につながる研究開発も積極的に推進しています。
お客様のベネフィット(利便性)
■ 動物実験に対する考え方
■ 日本人男性の腋臭の特徴を分析
マンダムは新規原料の安全性の確認等、法律上や
これまで十分に調査されていなかった日本人男性
むを得ない場合を除いて、動物実験を行わない方
の腋臭の実態調査を行い、結果を発表しました。ニ
研 究
針を掲げています。2005年、2006年の2年間の
オイの強さや種類が年代によって異なっているこ
開 発
実施件数は0件です。また動物実験代替法の開発
とや、体型とは直接的な因果関係がないことがわ
に取り組んでおり、その一環として2007年8月に
かりました。ただしニオイの発生メカニズムについ
「マンダム動物実験代替法国際研究助成金公募」
てはまだ不明な点が多く、今後も研究を進め成果
設 計
を発表しました。
を製品に活かしていきます。
■ 残ガス排出機構の装着
■ 詰め替え用製品
マンダムでは、2003年より製品廃棄時の面倒なガ
使用量の多い商材には、紙パック容器の詰め替え
ス抜きを簡単に行うことができる残ガス排出機構を
製品を採用しています。
採用しています。エアゾール工業会により2008年
本体の容器を再使用で
3月末までに残ガス排出機構への切り替え完了が
きることと、紙パックを
義務付けられていますが、
マンダムでは2007年4
使用することによりゴミ
月に対象製品への切り替えを完了しました。
の減量化を図ります。
■ 生産場面における環境配慮
生 産
福崎工場では生産時に使用するエネルギーの削減、排水の管理、廃棄物量の再資源化率向上に努めてき
ました。2000年にISO14001を認証取得し、2003年10月以降は廃棄物の再資源化率を99%以上
とするゼロエミッションを達成し、現在も継続しています。
■ 返品物流
(廃棄時)の環境対応
物 流
■ グリーン物流を推進
主要な外部物流拠点で返品集約し、近くの再資源
2006年5月より
「グリーン物流パートナーシップ会議」
化率の高い産業廃棄物処理業者へ委託し、CO2削
に参画し、積載効率の向上、モーダルシフト等により、輸
減と環境負荷低減に取り組んでいます。
送時に発生するCO2排出量20%削減を図っています。
■ ゴミを出さない販促用ディスプレイ
ゴミを出さない販促用ディスプレイ「エコデス®」を採用しています。
販 売
運送用のダンボール箱が不要になり、廃棄物の減量化が図れます。
「エコデス®」は大日本印刷株式会社の登録商標です。
「エコデス®」はDNPオリジナル環境対応型POPシリーズの1つです。
08