水の科学研究会 2010オータムセミナー 開会あいさつ 「電解水素水と活性

水の科学研究会
2010 オータムセミナー
(2010 年 10 月 15 日 於:大阪梅田ビジネスセンター)
開会あいさつ
水の科学研究会 会長 田澤賢次
活性酸素を抑制する活性水素、あるいは水素水が
よく話題にのぼっています。
水素原子は宇宙で最初に誕生した原子番号 1 の最も
基本的な元素で、その原子核は陽子のみでその周囲を
一個の電子が回っている構造ですがこの水素は生物を
作る遺伝子の本体、DNA に必要不可欠な元素でもあり、
生命の誕生に大きく関わっている物質です。われわれ
地球上の生命体は、病気の治癒機転にこの水素をうま
く活用することで命を永らえてきたと言っていいでし
ょう。
水素をうまく活用して健康を維持することは、われわれがこれから長く研究してゆくべ
きテーマですが、ここにきて、活性酸素を抑制する「水素」が認知症を抑制したり、うつ
の予防に役立つといった研究も目にするようになりました。
本日は、このミネラル還元水素水による健康づくりについて、一日いっしょに学んでい
きたいと思います。
講演①
「電解水素水と活性水素、及びミネラル成分」
講演■尾形 幹夫
水の科学研究会理事 工学博士
元通商産業省工業技術院物質工学工業技術研究所
■酸化還元電位(ORP)の低さと抗酸化力はイコールではない
最近、水素水の販売者の中で、水の酸化還元電位
の値をアピールの材料にする傾向があるようです。
ORPの値が低いほど、抗酸化力があるという主張
です。しかし、これは、正しい説ではありません。
そもそも水の ORP という用語は学術用語ではない
のです。酸素と水素を含む水について云えば、ORP
計の値は白金電極での酸素と水素の酸化還元反応の
兼ね合いで決まるので、電極表面が汚れたり酸化され
たり、溶液の流動状態が変化したりすれば例え温度が同じでもその測定値は変動します。
こ
れは正確には水の混成電位と云われるものなのです。真のORPは或る化学種の濃度と温
度が決まれば一定の値になるのです。
もし水に関してORPと云う用語を使いたいのであれば、ORP計で測定した水の電位と
でも云うべきでしょう。
但し水の酸化電位、又は水の還元電位と云う言葉は正しい用語です。
それでは上記の水の混成電位(巷で云われる水のORP)が低い値を示すということは
何を意味するのでしょうか。それは水中の水素(水に溶けている水素=溶存水素のことで
H2 という分子の形で溶けている)の濃度が大きいということです。水素を沢山溶かせば溶
かす程ORP計の値は低く(マイナスの大きな値)なります。
次に或る化学種のORPの大小と酸化力、還元力との関連ですが、通俗本にはORPが低
くなればその化学種の還元力(抗酸化力)が大きくなり、ORPが高くなればその化学種の
酸化力が大きくなるとあります。
しかしそれは一面では正しく一面では正しくありません。
それを正しく云えば、ORPが低いということはその化学種が大きな還元力(抗酸化力)を
もつ可能性(能力)があるということですが、実際の化学反応において大きな還元力を示す
とは限らないのです。確かにビタミンCなどはORPが低くて試験管の中で大きな還元力
を示しますが、溶存水素(水素分子 H2)ではORPは低いのですが常温では還元力を示し
ません。水素が還元力を示すのは800℃というような高温においてです。それでは溶存
水素はどのような条件で抗酸化力を示すのでしょうか。何故ORPが低いのに或るものは
常温で還元力を示し、或るものはそれを示さないのでしょうか。
それを一つの実例で示すと、
高い台の上に乗っているボール(大きい位置のエネルギーを持っている)を転がすとそれ
は下に落ち床の上で何らかの仕事をさせることができますが、台の周りに柵があるとボー
ルはそれが邪魔になり落下できません。しかしボールを激しく転がして柵を乗り越えるだ
けの運動のエネルギーを与えればボールは落下できます。即ちボールはバリアー(障壁)
を超えるだけのエネルギーをもらわないといくら高い位置のエネルギーを持っていてもそ
の能力を発揮できません。これと同じことが上記のビタミンCと水素分子につても云える
のです。一般にすべての化学反応が進むときには多かれ少なかれバリヤーを超えなければ
ならないのですが、ORPの低いビタミンCが相手を還元するとき(自らは酸化される)の
バリヤーは低いので常温でも容易にバリヤーを乗り越えられるのですが、同じくORPが
低い水素分子が相手を還元するときに乗り越えなければならないバリヤーは大変高いので
常温ではそれを乗り越えることができないのです。水素分子がそれを乗り越えることがで
きるのは800℃といような高温度なのです。高温になると水素分子(H2)はバリヤーを
乗り越えて水素原子(水素ラジカル)になることができるので還元力を発揮できるように
なるのです。それではどうすれば水素は常温で還元力(抗酸化力)を示すようになるので
しょうか。
■触媒によって水素分子は常温で活性水素になる
インターネットのウィキペディアで活性水素を調べると「活性水素という学術用語はな
い」と解説していますが、この筆者は化学を知らない人で、活性水素という用語は無機化
学の教科書にも載っている学術用語です。ここでいう活性水素とは水素原子又は水素ラジ
カルと同じ意味です。
では、この活性水素がどのようにして発生するのかについてお話しましょう。
水素分子は2個の水素原子が2個の電子を共有してしっかりと結びついているのです。
この水素分子が抗酸化力を示すためには水素分子の結合が切れてそれぞれ一個の電子を持
つ2個の水素原子(水素ラジカルとも云う)に乖離することが必要です。水素分子が2個
の水素原子に乖離するときに乗り越えねばならないバリヤーの高さ(これを活性化エネル
ギーと云う)は大変大きいので常温では水素分子がそのままで水素原子に乖離することは
ないのです。しかし高温ではそれが可能なのです。
ただ触媒というものが存在すると化学反応の活性化エネルギーを低くすることができる
のです。水素の場合は白金粉やパラジウムなどの貴金属が触媒になります。水素ガス2容
と酸素ガス1容をガラス容器の中に封じて常温に保っておきます。この状態を長時間放置
していても水素と酸素は変化しません。しかしこの容器の中に白金粉を入れると瞬時に水
素と酸素が反応して水が生じます。即ち触媒が存在すると触媒表面では水素分子が水素原
子(水素ラジカル)に乖離するための活性化エネルギーが減少するため常温でも水素原子
が生じ、水素と酸素が反応し水が生じたのです(酸素の方も触媒の影響を受けます)
。即ち
水素が常温で還元力を示すためには触媒が必要なのです。
一般に化学反応をスムー
ズに進めるためには多くの場合触媒が必要ですが、生体における化学反応を37℃という
温度でスムーズに進めるための触媒は酵素というたんぱく質です。人体では数多くの化学
反応が起こっていますが、その全ての化学反応を進めるためにそれぞれの反応に対応した
酵素が存在しています。ある種の細菌に存在するヒドロゲナーゼという酵素は水素分子を
水素原子に乖離する反応に拘わる酵素で、その細菌は水素分子の還元力を利用して生命活
動を行っています。ただし人間にはヒドロゲナーゼは存在しません。
■電解水中の活性水素
交流法(高周波3極電解法=早川式)ではグランド電極(マイナス極)から水素が発生
します。そのとき活性水素が全電流の数%の割合で発生していることが化学反応を利用す
ることで分かりました。従ってグランド電極の極周辺部には抗酸化力のある活性水素が発
生し続けています。しかしこの水素ラジカルは長時間存在し続けられないと考えられます
(水素ラジカル同士が結合して水素分子になる)
。
そこで電解終了後24時間経った電解水
をESR法(電子スピン共鳴吸収法)で調べたところ電解水中に水素ラジカルの存在する
ことが分かりました。またその他の実験から電解直後の水中には ppb オーダーの活性水素
が含まれていることが認められました。不安定と考えられる水素ラジカルが微量ではある
が長時間存在することができる理由は明らかではありませんが、コロイド状の白金粒子や
チタン粒子に結合して安定に存在しているのかも知れません。
■生体におけるミネラルの必要性
上に述べたように生体における化学反応に酵素が必要ですが、酵素の中にはミネラル
(金
属元素)が酵素の中に結合して活性中心として重要な役割を演じているものがあります。
その他ミネラルは生体において微量であっても重要な役割を担っているので、食物や飲料
水からそれらの成分を取り入れることは極めて重要です。ミネラルの欠乏で色々な障害が
現れますが、特に亜鉛の欠乏には注意が必要です。
■ヒドロキシラジカルと反応する水素分子
最近の医療現場では分子状の水素を含む水素水が生体において有効な作用をしていると
の報告がなされています。活性酸素であるヒドロキシラジカル(活性酸素の一種)と特異
的に反応して、それを消去するという報告もあります。上に述べたように水素分子は分子
の形では触媒(生体の場合は酵素)がなければ抗酸化力を示さないのですが、ヒドロキシラ
ジカルとは特異な反応をする可能性があるとの論文がアメリカの有力な学術誌にあります。
従って水素分子を活性化する何らかの作用機構が生体内に存在するのかどうかが大変興味
あるテーマになっています。
■活性水素の測定法
活性水素を測定する方法としては、
「①ESR(電子スピン共鳴吸収)法」
「②化学的方法(還
元力を調べる)
」
「③化学発光による方法」がありますが、ラジカルを確認する唯一の方法
は ESR 法でこれにより交流電解水中の水素ラジカルの存在が確認されました。
■水素水(溶存水素)の確認法
酸化還元指示薬である「メチレンブルー液」は通常酸化状態にあり、その溶液は青色で
あるがこれが還元されると無色になります。
溶存水素は触媒(白金やパラジウム粉)が存在すれば、常温で還元力を示すので、メチレ
ンブルーは還元されて無色の溶液になるので、これにより溶存水素の存在が確認されます。
しかし、これを放置しておくと還元されたメチレンブルーは空気中の酸素によって再び
酸化されるので青色に戻ってしまいます。一方最初から溶存水素と溶存酸素を含んでいる
水では上記の方法で無色にはなりません。
ミネラル還元水素水生成器の場合網電極を用いた機種では網の外側から摂取した水は酸
素の含有量が少ないので上記の方法で無色になることが確認されました。但し網電極がな
いものでも水を摂取する場所によっては酸素の含有量が少なく無色になることもあります。
イソジン(ヨウ素を溶かした水)溶液(茶褐色)を電解水に添加して無色になることか
ら活性水素の存在を示すという方法が行われていると聞きますが、イソジンはアルカリ性
になると化学反応が起こって無色になるのでその証明にはなりません。この場合は溶液を
中性や酸性にすると再び茶褐色に戻ってしまいます。しかしもし酸性や中性でも無色にな
るのであれば確かに活性水素があったことの証明になります。なお初めから水素(水素分
子)が含まれている場合には触媒が存在すればイソジン溶液は無色になります。
講演②
「ミネラル還元水素水飲用による健康効果の検証」
講演■田澤 賢次
水の科学研究会 会長 医学博士
富山医科薬科大学名誉教授(現富山大学)
■東京と富山で 35 名による検証を実施
ミネラル還元水素水のエビデンスを得るために、これまで血糖値が高めの方を対象にし
た調査などを行ってきましたが、今回は尿中の酸化ストレスの変化を中心に、血液生化学
検査、体調の変化、さらに飲み水としての印象まで、
さまざまな面からの検証を行いました。
検査は東京が 13 名、富山が 22 名の合計 35 名を
モニターとして選出し行いました。東京は、東京都
練馬区光が丘の「後町外科胃腸科クリニック」の協
力をいただきました。こちらの院長は私の古い友人
で、無理を言って協力をお願いしました。富山では
私の知り合いの「不二越病院」に協力をいただきま
した。血液検査の分析はともに「株式会社ビー・エム
・エル」という検査機関が行ったもので、恣意的な要素の加わりようのない検査であるこ
とを、あらかじめお断りしておきます。
検査のあらましを申し上げると、ミネラル還元水素水を 1 日 1.3 リットル以上飲用して
もらい、モニター前、1 カ月後、3 カ月後、6 カ月後の合計 4 回、
「血液検査」
「尿中の酸化
ストレス測定検査」の検査にご協力いただき、あわせて「体調のアンケート」のご協力を
いただきました。
モニターの方の年齢は 40~50 代を中心に、20 代~80 代までいらっしゃいます。性別は
男性が 19 名、女性が 16 名とほぼ近い割合です。
■「LPO キット」を使い、尿中酸化ストレスを測定
今回の検査で私どもが特に注目したのは、
「尿中の酸化ストレス測定検査」です。この検
査は「LPO キット」という検査キットを使って行うものです。
「LPO キット」は別名、活
性酸素測定キットと呼ばれるもので、体内で過剰発生した活性酸素によって生成される代
謝物「マロンジアルデヒド(MDA)」が測定できるキットです。MDA は脂肪が酸化されて
出てくる脂質過酸化生成物の一種で、その尿の発色程度を調べることで尿中の酸化ストレ
スが測定できます。
測定結果はレベル 1 から 4 まで区分され、
「レベル 1=良好な状態」
「レベル 2=適度な
結果」
「レベル 3=生活習慣改善をおすすめ」
「レベル 4=生活習慣の見直しが必要」とい
ったアドバイスがされます。
のちほど、全体の結果の中で、尿中酸化ストレスの変化を発表しますが、まずわれわれ
が注目したこの検査について、測定方法など詳しい内容をご説明しました。
■体調の変化についてのアンケート結果
体調の変化についてのアンケートは、お酒やタバコの量の増減から、めまいや下痢の頻
度まで、あらゆる項目で行われました。特に変化が見られない項目や、著しく改善した項
目などがありました。
これらの中で特出すべき項目は、
「⑰のむくみ」
、
「⑳トイレの回数」で、ミネラル還元水
素水が腸管の中で吸収されやすく、早く尿となって排泄されるために、むくみなどの症状
を緩和する効果があるのがわかりました。
「⑱疲れやすさ」や「⑲起きにくさ」など、日々
の生活での体調の不良も改善されることが見てとれます。
項目
アンケート結果
①通院の回数
通院者 10 名中 2 名が 3 カ月以降に疾病の改善が見られた
②服薬量
ほとんど変化なし
③タバコの本数
ほとんど変化なし
④酒の量
ほとんど変化なし
⑤食欲
食欲が出た人が 3 カ月後 7 名、6 カ月後 11 名と増加
⑥胃痛や胸やけ
1 カ月から 3 カ月で約 45%が改善した
⑦便秘
1 カ月から 6 カ月で約 50%が改善した
⑧下痢
1 カ月から 6 カ月で約 40%が改善した
⑨動悸・息切れ
ほとんど変化なし
⑩せきと痰
ほとんど変化なし
⑪のどの渇き
6 カ月後に約 50%が改善した
⑫発疹・じんましん
2 名の罹患者のうち 1 名が 6 カ月後に改善した
⑬肩こり
6 カ月後に約 30%が改善した
⑭耳鳴り
3 カ月後に約 40%が改善したが 6 カ月後には改善傾向なし
⑮めまい・立ちくらみ
3 カ月後に約 25%が改善したが 6 カ月後には改善傾向なし
⑯風邪
風邪を引きやすい人 4 名のうち 1 カ月後 2 名が改善
⑰手・足・顔のむくみ
1 カ月後に約 30%が改善した
⑱疲れやすさ
3 カ月後から約 30%が改善した
⑲起きにくさ
3 カ月後から約 30%がすぐに起きられるようになった
⑳トイレの回数
1 カ月後に約 60%が増加した
■飲んだ印象などのアンケート結果
6 カ月ご使用いただいた印象なども調査しました。
●還元する前の水と比べて
変わらない
おいしくなった
まろやかになった
違いがわからない
2
8
21
6
「おいしくなった」
「まろやかになった」が 78%と、味は好印象が圧倒的です。※重複回
答あり
●ミネラル還元水素水を使った、料理やお茶などの印象は?
良くなった
変わらない
その他
8
15
3
還元水を使用すると料理やお茶がおいしくなったと答えた人が 30%。
●操作性はいかがですか?
35 名中 31 名が使いやすいと答えています。
■尿中の酸化ストレスの測定結果
活性酸素によって受けた酸化ストレスを、ミネラル還元水素水がどの程度改善してくれ
るか、LPO キットを用いて調べた結果です。
レベル 1
レベル 2
レベル 3
レベル 4
無回答
0
2
9
13
2
0(0)
9(+7)
9(0)
8(-5)
0
3 月後
2(+2)
6(+4)
6(-3)
8(-5)
4
6 カ月後
1(+1)
7(+5)
8(-1)
7(-6)
3
飲用前
1 カ月後
※カッコ内は飲用前との比
(検査数 26 名)
以上の検査結果から判明したのは、
①LPO レベル 2(適度な結果)は 1 カ月後から 2 名が 9 名となり、レベル 4(生活習慣の
見直しが必要)は 13 名から 8 名に減少した。
②LPO レベル 2 以上が、3 カ月から 6 カ月後にも、飲用前の 2 名から 8 名に増加した。
ここから、LPO キットの各時期のレベルの有意差検定を見ると
①LPO レベルは飲用前と 1 カ月後では有意に改善した
②LPO レベルは飲用前と 3 カ月後では有意に改善した
③LPO レベルは飲用前と 6 カ月後では有意に改善した
という結果を得ることができました。
■血液生化学検査の結果
採血した血液による生化学検査では、とくに顕著な改善や異常は見られませんでした。
これは、糖尿病予備軍など特定の疾患があるモニターではなかったので、有意な改善が見
られないのはある意味、当然と考えられます。逆に異常な変化がなかったことから、ミネ
ラル還元水素水の安全性が見られました。
ゲスト講演
「冒険する心に水を !! ~エベレストへの挑戦~」
講演■三浦雄一郎
プロスキーヤー・登山家/クラーク記念国際高等学校校長
(本要旨では、ゲスト講演は割愛します。)
閉会あいさつ
水の科学研究会会長
田澤賢次
長時間にわたりご静聴くださり、ありがとうございました。尾形先生の学術的な発表か
ら、わたしの健康効果の検証、そして最後に三浦雄一郎さんの講演と、盛りだくさんの内
容でした。還元水素水はまだまだ多くの方にご理解のうえ、活用いただきたい水だと考え
ています。
ミネラル還元水素水の普及のためにこれからもいっそうのご助力をお願いして、
閉会のあいさつといたします。
本日はどうもありがとうございました。