AlCl3とNH3の 気相反応 によるAlN微 粉末 の合成 - 新潟大学

206 日 本 セ ラ ミ ッ ク ス 協 会 学 術 論 文 誌 96
AlCl3とNH3の
木 村
[2]
206-10
(1988)
気 相 反 応 に よ るAlN微
勇 雄 ・堀
田 憲
康 ・温 井 秀 樹
・齋
粉 末 の合 成
藤 夏 風
・安
川 三 郎
(新潟大学工学部化学工学科, 950-21新 潟市五十嵐2の 町8050)
Synthesis
of
Fine
AlN
Powder
by
Vapor
Phase
Reaction
of
AlCl3
and
NH3
Isao KIMURA, Noriyasu HOTTA, Hideki NUKUI, Natsukaze SAITO and Saburo YASUKAWA
Department
(8050,
Fine
AlN
separately
point
17cm
high
reaction
powder
was
in
regions
apart
at
from
product,
NH4Cl
AlN
end
from
and
of
which
was
the
by
the
vapor
reactor.
consisted
or
1190•Ž
the
crystalline
there
in
at
high
of
total
particles
were
2.2g•Eh-1
with
and
phase
of Engineering,
reaction
of AlCl3
deposited
and
powder
one
phase
AlN.
The
particle
rate
of NH3
and
N2 .
within
a narrow
tube,
amorphous
yield
AlN,
in
range
was
of crystalline
range
Fine
AlN,
AlCl3,
1.
NH3,
緒
窒 化 ア ル ミニ ウ ム (AlN)
Vapor
phase
University
0 .1
reaction,
Fine
)
,
言
. Most
end
of
distribution
with
the
to 3.0ƒÊm.
,
amorphous
AlN
the
its
powder
which
eliminated
and
720•‹-1190•Ž
and
deposited
easily
at
between
size
from
AlN
NH3
the
median
In
heating
AlN
was
August
of
the
at
the powder
AlCl3-feeding
became
range
fine
and
heating
500•Ž.
The
79%
.
27,
1987;
and
20
at
October
and
33cm
By
rate
22,
at
was
1400•Ž.
formation
Accepted
the
uniform
of 0.16ƒÊm
between
on
deposited
tube
diameter
crystallized
by
[Received
Key-words:
Niigata
950-21
The
amorphous
the total
Faculty
Niigata-shi
flow
AlCl3-feeding
coexisted
Engineering,
2-no-cho,
synthesized
temperature
synthesized
apart
two
of Chemical
Ikarashi
of
1987]
powder
(AlCl3)
とNH3を
使用 す る気相 反応 につ いて研究 を
焼 結 体 は 耐 食 性, 耐 熱 性 に
行 っ て き て お り, そ の 概 略 は既 に報 告 し た7). 本 報 にお
優 れ, 高 い熱 伝 導 性 と電 気 絶 縁 性 を有 す る ため, 半 導 体
い て は, 生 成 領 域 に よ る生 成 粉 末 の 性 状 の 差 異 につ いて
放 熱 基 板 や 化 合 物 半 導 体 製 造 用 るつ ぼ に実 用 化 され て い
述 べ る と と もに, 反 応 条 件 が粒 度 に及 ぼす 影 響 につ いて
る. AlN粉
も更 に詳 し く検 討 した.
末 の 製 造 は 従 来 金 属 ア ル ミニ ウ ム (Al)
直接 窒 化 法 や ア ル ミナ (Al2O3)
の
の還 元 窒 化 法 等 に よ っ
て行 わ れ て き た が, こ れ らの 方 法 で 製 造 したAlN粉
末
2.
原
実
験
は比 較 的 粒 径 が 大 き く, 粒 度 分 布 幅 が 広 い た め, ち密 な
2.1
焼 結 体 を 得 る こ と は 難 しか っ た1). しか し, 最 近 報 告 さ
出発 原 料 と して は市 販 のAlCl3
料
(純度98.0%,
和光純
れ た改 良 法 に よ って 合 成 した粉 末 は, 焼結 助 剤 を用 い な
薬 工 業 製) 及 びNH3ガ
くて も ち密 化 す る2),3).そ れ は, これ らの 粒径 が 小 さ く,
を 用 い た, キ ャ リ ア ガ ス と して は窒 素 (N2) ガ ス (純 度
か つ 揃 って い たた め で あ った. す な わ ち, 焼結 用 原 料 粉
99.999%,
末 は これ らの 条 件 を満 た して い る こ とが必 要 で あ り, し
2.2
か も そ の 粒 径 は取 り扱 い の 容 易 さか ら0.1∼1μmの
範
ス (純 度99.9%,
テ イ サ ン製) を用 い た.
気相反応
反 応 は 流 通 法 で行 っ た. 実 験 装 置 の概 略 を 図1に
す. 反応 管 (d) と して は内 径35mm,
囲 内 にあ る こ とが 望 ま しい4).
気 相 反 応 を応 用 した粉 末 製 造 法 は, 凝集 の 少 な い微 細
製 鉄 化 学 製)
ラ イ ト管 を 使 用 し た. 原 料 のAlCl3は
長 さ600mmの
示
ム
耐熱 ガ ラス容器
な 粉 末 が得 られ る こ と を一 般 的 な 特 徴 と して お り5), セ
(a) に 充 填 し, 外 部 か ら マ ン トル ヒ ー ター (b) に よ り
ラ ミッ クス 用原 料 粉 末 の製 造 法 と して有 望 で あ る. と こ
180°∼200℃ に 加 熱 して 昇 華 させ*1, こ こに 導入 す るN2
ろ が, 気 相 反 応 法 に よ るAlNの
合 成 に つ い て の報 告 は,
ガ ス を キ ャ リア ガ ス と して反 応 管 の 中央 部 ま で送 り込 ん
薄 膜 の生 成 や コー テ ィ ン グに 関 す る も の が ほ と ん ど で あ
だ. そ の導 入 管 に は ム ラ イ ト管 を用 い, 耐 熱 ガ ラ ス容 器
り, 粉 末 に関 す る例 は, 有 機Al化
径0.04μm以
合 物 とNH3か
らの粒
下 の超 微 粉 体 の 合 成 が報 告 され て い る6)だ
けで, 粒 径0.1μm以
上 の粉 末 合 成 に 関 す る報 告 は見 当
た らな い. 著 者 らは, そ の よ う な粉 末 を合 成 す る こ と を
目 的 と し て, 原 料 に い ず れ も安 価 な 塩 化 ア ル ミニ ウ ム
か ら反 応 管 ま で の 間 を外 部 か ら リボ ン ヒー タ ー (c) で保
温 し て, AlCl3が 反 応 前 に析 出 しな い よ う に した. NH3
は 別 の ガ ラス管 を通 じて反 応 管 内 に導 入 した. 反 応 管 内
に 導 入 さ たAlCl3とNH3が
*1
AlCl
3の 昇 華 点 は178℃8).
接 触 す る 温 度 はAlCl3供
給
AlCl3とNH3の
気相 反応 に よ るAlN微
粉 末 の合 成 207
Fig. 1.
Schema of reactor
assembly .
a: Glass vessel, b: Mantle heater , c: Ribbon heater,
d: Reactor,
e: Electric furnace, f: CA thermocouple
口 上 部 に 固 定 した ク ロ メ ル-ア ル メ ル熱 電 対 (f) に よ っ
相 か ら な る こ と が わ か っ た. 一 方, 低 温 領 域 に沈 積 し た
て 測定 し, これ を反 応 温 度 と した. 反 応 管 内の 温 度 分 布
粉 末 は 非 晶 質AlNと
は 別 の熱 電 対 を用 い て測 定 した. 気 相 反 応 は以 下 の条 件
る こと が確 認 さ れ た が, こ の粉 末 に関 して は3.4節
下 で行 っ た.
詳 述 す る.
図2に 反 応 温 度870℃,
ス流 量180cm3・min-1,
720° ∼1190℃
0.28g・min-1
N2ガ ス 流 量150cm3・min-1の
133-667cm3・min-1
末 のSEM写
67∼333cm3・min-1
に沈 積 した粉 末 で あ る. わず か な 凝 集 が 一 部 に 観 察 され
給速度
ス流 量
ス流 量
未 反 応 のAlCl3や
末 に つ い て は,
る こ と に よ り,
2.3
評
副 生 成 物 のNH4Cl*2が
NH3-N2気
光分析 法
混 入 した 粉
流 中 に て500℃,
6h加
(IR)
真 を 示 す. (a) は400℃
る もの の, ほ と ん どの 粒 子 は球 状 の1次 粒 子 の ま まで 得
ら れ た. そ の 粒 径 は1μm以
下 と微 細 で あ り, しか も比
給 口 か ら3cm以
に よ り 同 定 し た.
(SEM)
晶 が 粒 子 中 心 か ら放 射 状 に 伸 びた 形 状 をな して お り, そ
粒 子 の 形 状 は走 査 型
の 粒 径 は 不 均 一 で あ っ た. こ の よ う な 形 状 の 粒 子 は
(XRD)
に よ り 観 察 し た.
粒 度 分 布 は 遠心
窒素量は
に よ り 求 め, 酸 素 量 は 酸 素 量 測 定 装 置 (Leco,
AlCl3供 給 口付 近 で の み 観 察 さ れ, そ の生 成 量 は微 量 で
あ っ た. この こ と か ら, こ れ ら の柱 状 結 晶 は生 成 した
AlN粉
末 の 粒 子 表 面 上 で の 不 均 一核 生 成 に よ っ て生 じ
た もの と考 え られ る.
3.2
3.
粒度分布に及ぼす反応温度の影響
図2 (a) に 示 した と こ ろ の, 高 温 領 域 でAlNの
結 果 と考 察
生成粉末の形状
成 粉 末 が 沈 積 し た 領 域 は 反 応 温 度870℃
の 場 合,
生
AlCl3
し,反 応 温 度 が 粒 度 分 布 に及 ぼ す 影 響 につ い て 検 討 し た.
反 応 温 度720°, 930°及 び1190℃,
NH3ガ
供 給 口 と そ こ か ら ガ ス 排 出 口 へ 向 か っ て お よ そ17cm
cm3・min-1, N2ガ ス流 量150cm3・min-1の
の 間,
し た粉 末 の 粒 度 分 布 を 図3に
す な わ ち400℃
か ら20∼33cmの
ま で の 高 温 領 域 と,
間,
す な わ ち350° ∼70℃
AlCl3供
給 口
の低 温 領 域
生成 粉 末 の 一 部 は排 出 され る ガ ス に伴 っ て反
応 管 外 に 輸 送 さ れ た が,
ガ ス 排 出 口 に 接 続 し た トラ ッ プ
これ は低 温領 域 に沈 積 した粉 末 と 同一 の
も の で あ る こ と を 確 認 し た.
17∼20cmの
間 に は何 も沈
積 し な か っ た の で,
両 領 域 の粉 末 は容 易 に分 離 して 回収
す る こ と が で き た.
この傾 向 は他 の反 応 温 度 に お い て も
*3
よ り, 高 温 領 域 に 沈 積 し た 粉 末 はAlNの
示 す. 反 応 温 度720℃
末 は粒 度 分 布 幅 が0.3∼30μmの
で
広い
範 囲 に一 様 に分 布 して い た. 反 応 温 度 を高 くす るに つ れ
て, 粒 度 分 布 幅 は狭 く な り, 1190℃ で 合成 し たAlN粉
末 は0.1∼3.0μmの
径0.13μmを
範 囲 に分 布 した.
しか も, モ ー ド
中 心 と し た0.1∼3.0μmの
狭 い範 囲 内 に
そ の 大部 分 が集 中 して お り, 粒 度 が極 め て よ く揃 って い
た.
単一
の 関 係 を 図4に
示 す. 反 応 温 度720℃
粉 末 の メ ジ ア ン径 は1.45μmで
AlCl
3(g)+4NH3(g)→AlN(s)+3NH4Cl(g)
分 散 媒 に は エ タ ノー ル を使 用 した
合 成 し たAlN粉
ス 流 量180
条件下 で合成
これ らの粒 度 分 布 か ら求 め た メ ジア ン径 と反応 温 度 と
同 様 で あ っ た.
XRDに
単一
相 と して 生 成 した 微 細 な 粉 末 に つ い て 粒 度 分 布 を測 定
生 成 し た 粉 末 は そ の 大 部 分 が 反 応 管 内 に 沈 積 し た.
に て 捕 集 し た.
内の
及 び赤 外 分
回折法
を 用 い て 求 め た.
で あ っ た.
以 下 の高温領 域
領 域 に沈 積 し た粉 末 で あ る. 個 々 の 粒 子 は多 数 の 柱 状結
沈 降 式 粒 度 分 布 測 定 装 置*3を 用 い て 測 定 し た.
136)
条 件 下 で 得 られ た 生 成 粉
較 的 揃 っ て い た. (b) はAlCl3供
価
電子顕 微鏡
Kjeldahl法
熱 す
こ れ ら を 除 去 し た.
得 ら れ た 粉 末 は 粉 末X線
*2
にて
AlCl3供
N2ガ
3.1
NH3ガ
の混合物で あ
反応温度
NH3ガ
TC
副 生 成 物 のNH4Clと
.
温 度1190℃
で合 成 したAlN
あ る の に 対 して, 反 応
で 合 成 し た も の は0.16μmと
約10分
の1
208 木村 勇雄 ほ か
Fig.
3.
Particle
thesized
at
NH3
N2
Fig.
2.
sized
NH3
N2
SEM
at
photographs
of
the
AlN
powder
flow
flow
(a)
rate:
rate:
size
720•‹,
distribution
(b)
930•‹
of
and
the
powders
(c)
1190•Ž.
syn
180cm3•Emin-1,
150cm3•Emin-1
synthe
870•Ž.
flow
flow
rate:
rate:
180cm3•Emin-1;
150cm3•Emin-1.
(a)
Deposited
in
higher
(b)
Deposited
near
the
(c)
Deposited
in
lower
Bar=1ƒÊm
temperature
end
region,
of the
AlCl3-feeding
temperature
region
tube,
に小 さ くな り, 反応 温 度 を高 くす る こ と に よ り, 微 細 な
Fig.
AlN粉
perature.
末 を合 成 で き る こ と が わ か っ た. こ れ は 反 応 温
NH3
4.
度 の 上 昇 に 伴 って 均 一 核 生 成 速度 が 増 大 し, 多数 の核 が
Change
flow
N2
flow
rate:
rate:
of
median
diameter
with
reaction
tem
180cm3•Emin-1,
150cm3•Emin-1
生 成 したた め と考 え られ る.
3.3
NH3ガ
AlN粉
粒 度 分 布 に及 ぼ す ガ ス 総 流 量 の 影 響
ス とNZガ
ス の 総 流 量 が 高 温 領 域 で 生 成 した
末 の 粒 度 分 布 に 及 ぼ す 影 響 を 検 討 した. NH3と
N2の
200,
体 積 比 を2:1と
500及
し, 反 応 温 度870℃,
び1000cm3・min-1の
ガス総流量
条 件 下 で 合 成 し たAlN
粉 末 に つ い て 求 め た 粒 度 分 布 を 図5に
示 す.
ガ ス総 流 量
AlCl3とNH3の
200cm3・min-1で
10μmと
合 成 し た 粉 末 は,
広 く,
分 布 し て お り,
な か っ た.
主 に0.15∼1.0μmの
気 相 反 応 に よ るAlN微
粒 度 分 布 幅 が0.15∼
粉 末 の 合成 が 認 め ら れ,
範囲 にほぼ一様 に
粒 度 が 特 に 集 中 して い る 部 分 は認 め られ
209
1000cm3・min-1で
ド径0.24μmを
合 成 し た 粉 末 は,
中 心 と す る0.15∼0.3μmの
モ ー
部 分 に特 に
集 中 し て 分 布 し て い た.
これ らの粒 度 分布 か ら求 め た生 成 粉 末 の メ ジ ア ン径 と
ガ ス 総 流 量 を 増 す と, 粒 径 が 均 一 化 す る 傾 向
ガス総 流 量 と の 関係 を図6に 示 す. ガ ス総 流 量 を増 加 さ
せ る こ とに よ り生成 粉 末 の粒 径 は 減 少 す る傾 向 が認 め ら
れ た. AlCl3の 昇 華 速 度 はマ ン トル ヒ ー タ ーの 温 度 を制
御 す る こと で 一 定 に 保 た れ るの で, ガ ス総 流量 を増 加 さ
せ る と反 応 管 内 のAlCl3濃
ためAlNの
度 は相 対 的 に 減 少 す る. こ の
粒 成 長 は 遅 くな る の で, 微 細 なAlN粉
末が
得 られ た もの と考 え られ る.
3.4
非 晶 質粉 末
350°∼70℃
XRDで
の低 温 領 域 に沈 積 した粉 末 につ いて は
は副 生 成 物 で あ るNH4Clの
回 折線 しか検 出 で き
な か っ た. この 粉 末 をNH3-N2気
流 中 に て500℃,
6h
加 熱 す る と 回 折 線 は すべ て 消失 し, 更 に, NH3-N2気
中 で1400℃,
2h加 熱 す る とAlNの
流
回折 線 の み が 現 れ
た. 以 上 の こ と か ら, 低 温 領 域 に 沈 積 し た 粉 末 は,
NH4Clを
含 むAlNの
非 晶 質 粉 末 で あ り, ま た, 180℃
以 下 の 部 分 に は未 反 応AlCl3も
混 入 して い た もの と思 わ
れ る. これ ら のNH4ClとAlCl3は500℃
での加熱 中に
昇 華 して*4散 逸 し, 残 っ た非 晶 質 粉 末 は1400℃
中 に結 晶 化 して, そ の 結 果, 結 晶 質AlNの
の加 熱
単 一 相 が得
られ た もの と予 測 し た.
Fig.
5.
Particle
synthesized
NH3
at
and
N2:
size
870•Ž
(a)
distribution
by
200,
changing
(b)
500
of
the
total
and
powders
flow
(c)
rate
of
1000cm3•E
min-1.
NH3:N2=2:1
in
volume
ratio
Fig.
7.
(a)
(b)
IR
spectra
AlN
to
by-product,
eliminate
Crystalline
amorphous
(c)
Fig.
6.
rate
of
Reaction
Change
NH3
and
of
median
N2 (2:1
temperature:
diameter
in
870•Ž
volume
with
total
flow
of AlN.
Amorphous
powder
AlN
AlN
Crystalline
AlN
temperature
region
powder
at
NH
4Clの
heating
at
500•Ž
obtained
by
heating
1400•Ž,
powder
ratio).
*4
after
NH4Cl,
昇 華 点 は340℃9).
deposited
in
higher
210 木 村 勇雄 ほ か
非 晶 質 粉 末 のIRス
ペ ク トル を図7に 示 す. そ れ ぞ れ
行 い, 生 成 粉 末 の生 成 領 域 の違 い に よ る性 状 の差 異 と,
500℃ で 加 熱 した粉 末 (a), 1400℃ で加 熱 した粉 末 (b),
反 応 条 件 が粒 度 に及 ぼ す影 響 につ い て検 討 した. 得 られ
高 温 領 域 に 沈 積 したAlN粉
た結 果 を以 下 に示 す.
末 (c) のIRス
ペ ク トル で
あ る. い ず れ の ス ペ ク トル に お い て も吸 収 が 現 れ る波 数
は 互 い に ほ ぼ 一 致 し た.
AlNで
し た が っ て, 非 晶 質 粉 末 は
あ る もの と判 断 した.
6h加 熱 処 理 を行 い, NH4Clを
非 晶 質AlN粉
流中
除去 し た後 の
末 で あ る. 主 に球 状 の 粒 子 か らな り, そ
の 粒 径 は0.1∼6μmと
生 成 粉 末 は反 応 管 内 の 二 つ の 領 域 に 分 離 して沈
積 した. 高 温 領 域 に は 単 一 相 のAlN粉
温 領 域 に は副 生 成 物 のNH4Clを
図2 (c) は低 温 領 域 に沈 積 した粉 末 をNH3-N2気
で500℃,
(1)
不 均 一 で あ っ た. これ を1400℃
末 が 沈 積 し, 低
含 む非 晶 質粉 末 が沈 積
した.
(2)
反 応 条 件 を制 御 す る こ とに よ り, 粒 度 を制 御 し
てAlN粉
末 を合 成 す る こ と が で き た. す な わ ち, 反 応
温 度 を高 くす る に つ れ て, ま たNH3とN2の
ガ ス総 流 量
で結 晶化 した粉 末 に つ い て は, 粒 径 や形 状 に は変 化 は認
を大 き くす る につ れ て 生 成粉 末 の粒 径 は 小 さ くな り, 粒
め られ な か っ た.
度 分 布 幅 は狭 くな り, 更 に粒 度 は均 一 に な っ た.
3.5
生成粉末の純度
(3)
図2 (a) に示 し た と こ ろ の, 高 温 領 域 でAINの
単一
相 と して生 成 した粉 末 につ い て窒 素 量 及 び酸 素 量 を測 定
した と こ ろ, そ れ ぞ れ28.20wt%及
び8.4wt%の
結果
を得 た. 酸 素 量 が 比 較 的 多 か っ たが, それ は恐 ら く原 料
のNH3ガ
ス に不 純 物 と してO2やH2Oが
反 応 管 内 の 低 温 領 域 に 生 成 す る粉 末 は 非 晶 質
AlNで
あ っ た. こ れ を1400℃
結 晶 質AlN粉
で加 熱 す る こ と に よ り,
末 が得 られ た.
ま た, 本 法 は直 接 窒 化 法 や 炭素 還 元 法 に比 べ て以 下 に
示 す よ うな 利 点 を持 つ こ とが わ か っ た.
含 まれ ていた
(ⅰ)
短 時 間 でAlN粉
た め で あ る と考 え られ る. 今 後, その 精 製 を行 う こ とに
(ⅱ)
連続 生 産 へ の 展 開 の 可能 性 が 大 き い.
(ⅲ)
反 応 温 度 が低 い の で, 特 殊 な熱 源 を必 要 と せ ず,
よ り, 純 度 の 高 い粉 末 が 得 られ る もの と思 わ れ る.
3.6
エ ネ ル ギ ー 的 に も有利 で あ る.
生 成 量 と収 率
90minの
間 に259のAlCl3を
領 域 に は3.3gのAlNが
供 給 した と こ ろ,高 温
沈 積 し た. ま た, 低 温 領 域 に
沈 積 した 非 晶 質 粉 末 を 結 晶 化 す る こと に よ り, 2.8gの
AlNが
得 られ た. 供 給 し たAlCl3が
す べ てAINに
す る もの と 仮 定 す る と, この 場 合7.7gのAlNが
す る こ と に な る. し たが っ て, 収 率 は79%と
転化
求 め られ
上 記 の 生成 量 を生 成 速 度 に換 算 す る と, 高 温 領 域 に は
文
末 を 合 成 で き た こ とが わ か っ た. 反 応 管 の径 を
大 き くす れ ば, AlCl3の 供 給 速 度 も大 き くで き るの で,
倉 本 信 行,
セ ラ ミ ッ ク ス,
2)
堀 田 憲 康,
木 村 勇 雄,
窯 業 協 会 昭 和62年
3)
N.
Kuramoto
471-74
4)
生 成 量 を さ らに 高 め る こ とが
加 藤 昭 夫,
6)
竹 下 幸 俊
I.
8)
4.
総
9)
括
気 相 反 応 に よ るAlN微
粉 末の合成 を
潔
塚 本 健 次,
1109.
J. Mater.
Sci. Lett.,
3,
年 会 講 演 予 稿 集,
N.
J.
Mater. Sci.
日 本 化 学 会 編,
p. I-158.
478-83
(1984).
昭 ・加 藤 昭 夫 ・窯 業 協 会 昭
2G04.
Hotta, H.
(1973)
化 学 総 説No.
p. 181.
19,
・山 根
常 用 化 学 便 覧 編 集 委 員 会 編,
(1984)
(1987).
齋 藤 夏 風,
学 と 応 用,
(1985)
セ ラ ミ ッ ク ス,
誠 文 堂 新 光 社
AlCl3とNH3の
Taniguchi,
“超 微 粒 子-科
・槌 田
Kimura,
Yasukawa,
可 能 で あ る もの と予 測 され る.
H.
東 京 大 学 出 版 会
5)
7)
29-34
一 箭 健 治,
年 会 講 演 予 稿 集,
and
日 本 化 学 会 編,
48”,
22,
(1984).
和62年
単 位 時 間 あ た りのAlNの
献
1)
沈 積 した こ と に な り, 従 来 の 直 接
窒 化 法 や 炭 素 還 元 法 に 比 べ て, 極 め て 短 時 間 の う ち に
AlN粉
謝
辞 粒 度分布 及 びIRの 測定 には高橋 眞一氏, 横 田優
治氏, 久保 田順 一氏 (新潟県工 業技術 セ ンター) の御協力 を,
純 度の分析 に は多田清志 氏 (昭和アル ミニ ウム) の御協 力 を賜
りま した. こ こに厚 く御礼 申 し上 げます.
生成
た.
毎 時2.2gのAlNが
末 が合 成 で き る.
Nukui,
Lett. ,印
N.
Saito
and
S.
刷 中.
“常 用 化 学 便 覧
第5版
”,
p. 6.
“化 学 便 覧
改 定3版,
基 礎 編I”,
丸 善