東洋大学福祉社会開発研究センター ニュースレター Center for Development of Welfare Society –News Letter第2報 2008 年 6 月 プロジェクト 1 第一回シンポジウム 「地域における福祉支援の現状と課題」 目次 Ⅰ.プロジェクト 1 (P1P1-3) 1.シンポジウムを開催 2.第 6 回東洋大学・大邱大学校合同セミナ ー開催 3.研究報告 (プロジェクト 1 研究員 村尾祐美子) Ⅱ.プロジェクト 2 (P3P3-6) 1.山古志地域住民と地域産業研究チームと の合同九州視察 2.大学連携による地域づくりフォーラム 3.山古志村全世帯アンケート調査報告 Ⅲ.「福祉社会開発研究」 創刊( 創刊(P7P7-8) Ⅳ.今後の予定(P9 今後の予定(P9) P9) CDWS:News Letter 2 福祉社会開発研究センタープロジェクト 1 では、「地域における福祉支 援の現状と課題」をテーマに、第 1 回シンポジウムを開催した。 現代社会では、少子高齢化、地域社会の崩壊といった社会の変化に ともって、問題を抱えながら地域で孤立した生活をしている人々の問題な ど、さまざまな福祉課題が浮上している。本シンポジウムでは、このよう な課題に対する地域での福祉支援のあり方について、本研究センタープ ロジェクト 1 の統括者である小林良二をコーディネーターに据え、厚生労 働省社会・援護局地域福祉専門官の中村美安子氏、世田谷区介護予防 担当部地域福祉支援課長の木谷哲三氏、本研究センターの研究員であ る加山弾(本学社会学部専任講師)といった、政策立案者・自治体の実 務者、研究者のそれぞれの立場からこの問題に対して多角的・総合的な 討議を行った。 はじめに中村氏が地域社会の状況について、総合的な報告を行い、 地域福祉復興のために、既存の施策の再構築を行う必要性を提起した。 次に、木谷氏は勤務地である世田谷区における福祉課題について報 告し、市民・事業所・行政の連携とネットワークと活動する市民の事例を 発表した。 加山講師も同様に、現代社会のコミュニティの 崩壊の現状について確認した後、その問題と密 接に関係する社会的排除、ソーシャルインクル ージョン概念について報告を行い、そのソーシャ ルインクルージョンを実現するための具体的方 策を提起した。 当日は 58 名の参加があり、自治体関係者や 他大学の研究者・大学院生といった学外からの 参加者が目立った。3氏の報告の後の質疑応答 では、フロアからは多くの質問が出され、次回の 開催へつながるような意見が多く出された。 当日のシンポジウムの様子。フロアからは多くの質問が出された 第6回 第6回 東洋大学・大邱大学校合同セミナー開催 2008 年 3 月 25 日(火)14 時より、東洋大学・大邱大学校合同セミ ナー「地域における生活支援」が大邱大学校にて開催された。大邱 大学校と東洋大学は 2003 年度より交流協定を締結しており、本セ ミナーは第 6 回目のセミナーとなる。 当日は、本学の教員・大学院生の 14 名が大邱大学校を訪れ、大 邱大学校からは教員・大学院生・学部生約 35 名が参加し、総勢 50 名弱の盛大なセミナーとなった。 合同セミナーの様子 まず大邱大学校の金圭秀教授によって、「精神障害者の地域自立 生活における支援システム」をテーマに基調講演が行われた。金教 授は、韓国の精神障害者の自立生活がどのような理念枠組みに基 づいて進められているのかを丁寧に説明をした後、今後それを進め ていくための具体的なサービスプログラムについて報告をした。 これを受けて行われたシンポジウムでは、司会に大邱大学校・朴泰 英教授を据え、東洋大学院生で本センターのRAである後藤広史氏 より「東洋大学福祉社会開発研究センターの紹介と研究課題―地 域包括支援センターを中心に」、同じく東洋大学院生で本センター のRAである大村美保氏より「地域における知的障害者の自立支援 について―企業就労と所得保障との関係から」、そして大邱大学大 学院生である趙三在氏より「韓国の障害者福祉環境の変化によつ 自立生活方向の考察」という 3 つの報告が行われた。 RA 大村氏による発表 後藤氏は、本センターの概略を説明した後、プロジェクト 1 で行った A市の地域包括支援センター聞き取り調査の結果を報告した。 大村氏は、自身が行った知的障害者通勤寮調査の結果を報告し、 地域生活を可能にする所得保障のあり方について考察を加えた。 趙氏は、韓国の障害者を取り巻く制度の変化について述べた後、 今後目指すべき方向性について自身の見解を述べた。 報告後、東洋大学・小林良二教授と大邱大学校・曺漢鎭教授よりそ れぞれの報告に対して、コメントが加えられた。 シンポジウムの後懇親会が開催されたが、両国から多数の学生の 参加があり、教員間・学生間の活発な交流が行われた。 RA 後藤氏による発表 ペペペ 3 プロジェクト 1 研究報告 研究報告 帯広市・十勝地域における若年就業支援の研究について 村尾 祐美子 2008 年 3 月 26 日より 28 日まで、北海道帯広市において、プロジェクト 1-2 の責任者である大坪 省三研究員とともに、現地調査を行った。この調査は、地方都市における地域密着型の若年就業 支援に関する研究の一環として、実施されたものである。 本研究の問題意識は、以下のようなものである。戦後の若年労働者に対する労働行政のなかで は、地方の若者の失業を労働力配置のミスマッチの結果と見なし、労働力の地域間移動を促進す るかたちで若年失業を解消しようとする施策が多く採られてきた。 そしてこうした若年失業に対する考え方や施策は、日本の高度経済成長を支える一つの前提条 件として、重要な機能を果たしてきたといえる。しかし、「できれば地域間移動しないで地元で就業 したい」という意向を持つ若者は常に一定程度存在したし、近年では、大都市が地方出身者に提 供する就業機会が雇用契約等の面で相対的に劣化していることや、親子関係の変化なども相まっ て、若年者の地元就業志向はより強まっているとも言われている。だが、こうした若者の地元志向 に応える若年就業支援のありかたについては、あまり注目されてこなかった。 そこで本研究では、若年者の就業状況が厳しく、しかも若者の地元志向が強い地方都市におい て、地域内での若年就業の支援がどのように行われており、また、どのような若年就業支援の枠 組みが有効であるのかを、明らかにすることを目的としている。 今回は、第一回目の現地調査で、若年就業支援に関する部署の担当者に、専門家インタビューを 行った。 結果、当初持っていた仮説の通り、本調査地における若年就業の困難さが明らかになり、それに よる生活困難の顕在化していることがわかった。またそれに対する支援サービスが不足しており、 専門家が苦慮しながらこの問題に対処せざるをえない状況が明らかとなった。 第2回目の調査では、当事者へのインタビューを予定している 山古志地域住民と地域産業研究チームの合同九州視察 2月28日から3月2日に各産業のキーパーソンと長岡市地域復興支援センター職員をはじめとす る山古志地域住民と地域産業研究チームのメンバーが、九州地方の地域活性への取り組みが盛 んな場所を訪れ地域活性の現場を体験した。 初日は環境学習や「村丸ごと生活博物館」の取り組みを行っている水俣市を訪れた。 話を伺った NPO 水俣教育旅行プランニングでは昨今の環境保全活動や環境学習に対する意識 の高まりから、修学旅行などで水俣を訪れる学校も増えているということもあり、こうした学校の旅 行プランのコーディネートを行っている。 また、水俣市の頭石集落をはじめとする「村丸ごと生活博物館」の取り組みでは、地域住民にとっ ては当たり前のものが財産となることを気付かせ保存していくことの大切さを教えられた。 2日目は棚田保全、廃校利用、赤牛の自然放牧の現場を訪れた。 水俣市の棚田は石積みでつくられており山古志とは違った棚田風 景を目にした。棚田保全活動は久木野集落を中心に行われ、全 国からボランティアを募り住民とイベントを通じ交流を深めながら の活動を行っている。 廃校利用の事例として訪れた阿蘇市の波野では「入り口は楽しく、 伝える事はしっかり伝える」をキーワードに体験交流を行っている。 阿蘇市で赤牛の自然飼料を中心とした放牧飼育を取り組んでいる 方の話を伺った。現在の酪農の問題や牛肉の問題を受け止めなが ら今後の酪農のあり方と姿勢を教えられた。 水俣の棚田風景 3日目はグリーンツーリズムを行う現場2か所を訪れた。 1つ目は九州ツーリズム大学のある小国町で、グリーンツーリズ ムの取り組みや意味について伺った。住民の参加のプロセスや、 それを活かしたコミュニティビジネスなどソフトプランニングの重要 性について教えられた。 2つ目は黒木町の山村塾では都市農村交流を軸とした農林業体 験を行っておる。有機農法の稲作コースと里山保全の山林コース の2つのプログラムがあり、他にも里山・田園保全ワーキングホリ デーも行っている。 廃校利用の事例 最終日は農家民宿の取り組みが盛んな安心院町と集落共同営農を行う松本イモリ谷を訪れた。 安心院町は農家民宿の先駆けで地場農産物を使った料理や農作業体験などを体験できるアット ホームな雰囲気がある民宿が多い。人との交流の楽しさや苦労話など話好きなお母さんの人柄も 相まってリピーターが多いと話されていた。 最後に訪れた松本イモリ谷では集落共同営農の取り組 みについて伺った。山古志においても共同営農組合が組 織されたため、今後の農業活動の参考になる内容を伺 えた。 安心院の民宿風景 ペペペ 5 大学連携による地域づくりフォーラム開催 3月22日午後14時から16時まで山古 志会館にて、大学連携による地域づくり フォーラムが開催された。 当日は山古志住民や関係者など約70 名が参加し、本学からは内田雄造教授 が代表として研究報告を行った。 基調講演では前掛川市長の榛村純一氏 をお招きし、「郷土の誇りを育むふるさと づくり」についての講演をいただいた。 フォーラムの様子 榛村氏は講演のなかで、「人には人格があるように村 には村格があり、ふるさとづくりにはこの村格が重要 である」と仰っていた。また、「道徳のない経済は偽装 を生み、経済のない道徳は何も生み出さない」と、二 宮尊徳の教えにある「経済と道徳」の重要性について も話されていた。 「大学と連携した地域づくり事業」調査報告では、本 学の内田雄造教授が復興モデル住宅プラン策定から 現在に至るまでの経緯を発表し、昨年帰村を迎え地 域住民の生活がいよいよ本格化するなか、今後注目 されるであろう山古志の地域復興へ向けた可能性を いくつか提示した。 榛村氏の基調講演の様子 最後におこなわれたパネルディスカッションでは、榛村純一氏、(財)山の暮らし再生機構専務理 事渡辺斉氏、内田雄造教授とコーディネーターとして新潟まるごと応援隊の小野沢裕子さんの4名 が「新たな山古志文化の創生へ向けて」というテーマで意見を交わした。 そのなかで、これからの山古志のイメージを漢字一字で表現するというテーマがあり、内田教授 は「悠」、渡辺氏は「夢」、榛村氏は「特質の追求」と表現された。 パネルディスカッションの様子 山古志村全世帯アンケート調査報告 山古志村全世帯アンケート調査報告 3月17日から4月3日まで山古志支所ご協力のもと、山古志の移住した方を含めた全住民687世 帯にアンケート調査を行った。 主な内容は家族構成などの基礎資料をはじめ、各研究チームより募った設問を含めたもので、多 岐にわたるものであったが、多くの住民の回答を得る事が出来た。 回答率は山古志地域内が42.7%、山古志地域外が28.6%だった。 アンケート回答用紙 アンケート回答用紙 ペペペ 7 「福祉社会開発研究」創刊 2008 年 3 月に、センター初の報告書「福祉社会開発研究」が創刊された。収録コンテンツは以下 の通り プロジェクト1:自治体福祉・保健計画と地域における福祉社会の形成 1.地域生活システムのインターフェイス (プロジェクト 1 研究リーダー 小林 良二) 2.A市地域包括支援センターの現状と課題 ―A市全地域包括支援センターに対する聞き取り調査― (福祉社会開発研究センター RA 後藤 広史・プロジェクト 1 研究リーダー 小林 良二) 3 . NONPROFIT ORGANIZATION : NOT JUST AN INSTITUSION BUT A VISION FOR AN ALTERNATIVE SOCIETY (プロジェクト 1 研究員 須田 木綿子) 4.地域社会の変容と福祉社会実現に向けた課題に関する一考察 (プロジェクト 1 研究員 加山弾) 5.障害者相談支援事業所の実態―A 県障害者相談支援事業所実態調査から (福祉社会開発研究センター R A 相馬 大祐) 6.わが国地方都市・帯広市における生活および経営の困難状況と福祉社会化システム (プロジェクト 1 研究員 大坪省三) 7.帯広市圏における福祉社会システム―概況、外国籍者・国民年金制度について (プロジェクト 1 研究員 松本 誠一・大学院福祉社会デザイン研究科 市川 藤雄) 8.帯広市の概況と児童虐待対応体制について―予備調査報告として (プロジェクト 1 研究員 松本 誠一・大学院福祉社会デザイン研究科 田中 良幸) 9.家族意識からみた地域性:日韓中3カ国比較 (プロジェクト 1 研究員 西野 理子) 10.子どもの高校就学はなぜ大切なのか (プロジェクト1 研究員/松山東雲女子大学 宮武 正明・プロジェクト1 研究員 森田 明美) プロジェクト2 : 中山間地域の振興に関する調査研究-中越地震の被災地・長岡市山古志地区の復興計画の事 例に即して- 1.旧山古志村復興をモデルとする中山間地域振興の研究のねらいと主要課題 (プロジェクト2 リーダー 内田雄造) 2.震災被害の実態と復旧・復興の課題 プロジェクト2 リーダー 内田雄造) 3. 山古志の農業 (産業研究グループ 客員研究員・農業生物学研究室 明峯哲夫) 4. 旧山古志村復旧にみる産業の復興プロセスと新たな展開-農業及び畜産業従事者へのヒアリングからみえて くる今後の山古志の姿- 地域産業研究グループ 研究協力者・日本学術振興会特別研究員 古山周太郎) 5. 財団法人山の暮らし再生機構の取り組み 域産業研究グループ 研究協力者・財団法人山の暮らし再生機構研究員 佐々木康彦) 6. 山古志における養鯉業の実態と今後の課題 (地域産業研究グループ 福祉社会デザイン研究科博士前期課程青柳 聡) 7. 質的研究方法による山古志地区の高齢者の健康問題に関する分析-保健医療福祉関係専門職に対するイ ンタビュー内容の分析を通じて- (健康自立支援研究グループ 研究員 松尾順一、齊藤恭平、神野宏司、岩本紗由美) 8. ファシリテーターの可能性 -子ども参加の立場から- (次世代育成支援研究グループ 研究協力者・生活支援学科実習指導助手 若林ちひろ) 9. 農家型の確定と建築規制後の建築形態に関する研究 -旧山古志村の民家に関する考察- (住生活・住宅研究グループ 研究員 浅井賢治) 10. 小規模複合サービス拠点併設型高齢者住宅における入居者の生活実態 (生活自立支援研究グループ 研究員 神吉優美) 11. 十二山ノ神の信仰と祖霊観(上) (地域文化研究グループ 研究員 菊地章太) 12. 中山間地域における景観づくりに関する研究-学生の山古志地区でのまちあるき調査による景観の現状と課 題の把握- (景観計画研究グループ 研究員 小瀬博之) 13. 14. 15. 16. 地域産業研究グループ活動報告 健康自立支援研究グループ活動報告 住生活・住宅研究グループ活動報告 地域文化研究グループ活動報告 17. 山古志村復興・中山間地域振興のためのアンケート調査ご協力のお願い 18. 東洋大学山古志復興計画通信 Vol.1 19. 東洋大学山古志復興計画通信 Vol.2 20. 平成19年度 研究組織 購読希望者は福祉社会開発研究センターまでお問い合わせください 東洋大学福祉社会開発研究センター 〒112-8606 東京都文京区白山 5-28-20 [email protected] 03-3945-7504(FAX 兼用) ペペペ 9 「今後の予定 ・6月9日 (合) 第1回合同ワークショップ 10:00-12:00 東洋大学白山キャンパス2号館3階 第一会議室 ・6月26日 (Ⅰ) プロジェクト 1-2(大坪グループ) 研究報告会 13:00東洋大学白山キャンパス2号館3階 第一会議室 ・7月3日 (Ⅰ) ソーシャルポリシー研究会 東洋大学白山キャンパス2号館8階 20813 教室 園田恭一・西村昌記編「ソーシャルインクルージョンの社会福祉」 ・7月10日 (Ⅰ) プロジェクト 1 運営委員会 12:30-13:00 東洋大学白山キャンパス2号館8階 20813 教室 プロジェクト 1-1(小林グループ)研究報告会 13:00東洋大学白山キャンパス2号館3階 第一会議室(予定) 合=合同開催 Ⅰ=プロジェクト1主催 Ⅱ=プロジェクト 2 主催 2008 2008 年 6 月 日 月 火 水 木 金 土 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 2007 2007 年 7 月 日 月 火 水 木 金 土 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31
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