経営改善マニュアル - 全日本トラック協会

中小トラック運送事業者のための
中
小
ト
ラ
ッ
ク
運
送
事
業
者
の
た
め
の
経
営
改
善
マ
ニ
ュ
ア
ル
平
成
16
年
3
月
社
団
法
人
全
日
本
ト
ラ
ッ
ク
協
会
〒163-1519
東京都新宿区西新宿1-6-1 新宿エルタワー19F
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経営改善マニュアル
平成16年3月
は じ め に
トラック運送事業は、その優れた機動性と柔軟性によって、これまでのわが国の経済発展に
重要な役割を果たし、今日の高度な経済活動や豊かな社会生活を維持する上で不可欠な存在と
なっています。しかし、9割以上を占める中小トラック運送事業者の経営は、景気と輸送需要
の長期低迷によって疲弊し、かつて経験したことのない厳しい事態に直面しています。
そこで本書は、こうした中小トラック運送事業経営者が経営改善を図り、ふたたび活力を取
り戻すための手がかりとしていただくことを目的に作成されました。
本書のテーマである「経営改善・基盤強化」とは、単に経営管理(マネジメント)のしくみ
や方法の改善だけを指すものではありません。もちろんマネジメントは、人材、設備、資金
(ヒト、モノ、カネ)をコントロールする複雑なシステムであり、これらを円滑に運営してい
くことは簡単なことではなく、社会・経済の変動に対応して、常に最適化していく必要があり
ます。しかし、不況や荷主企業の海外移転など、国内の輸送需要が長く低迷するなかにあって、
わが国の物流構造や地域の輸送市場が劇的に変貌していくなかでは、単にマネジメントの改善
だけでは生き残っていくことはできません。そのうえディーゼル車排ガス規制をはじめとする
環境保全や安全対策のための負担の増加、少子・高齢社会の到来による労働力確保の不安など、
事業経営に投げかけられる影はいっそう濃さを増しています。このような局面にあって今後の
中小トラック運送事業の経営には、未開拓の輸送市場ヘの取組みや必要に応じて現在の業態・
業容を変革していくことをも見据えた大胆な経営ビジョンの確立と、それに基づくドラスティ
ックなマネジメントの見直しによって、経営の改善と基盤強化に取り組むことが不可欠と考え
ます。
以上から本書は、
◆ 経営ビジョンの確立
◆ 経営の計画化など経営管理の見直し
の2点が、中小事業者各社に共通する最優先の経営課題と考え、実輸送を中心に事業展開する
中小トラック運送事業者のみなさんを対象に、課題解決のためのマニュアルとして、また、経
営改善セミナーのテキストとしてまとめたものです。ひとくちにトラック運送事業といっても
その業態・業容は多様であり、本書の改善策提案がすべての経営課題を解決できるとはいえま
せんが、的確な経営マインドと効率的で力強い経営体制確立の取り組みに資することができれ
ば幸いです。
平成16年3月
社団法人 全日本トラック協会
目 次
はじめに
Ⅰ 生き残りと発展のための経営改善・基盤強化 ………………………………………… 1
―事例に基づく経営改善マニュアル
1.経営改善・基盤強化の取り組みにあたって ………………………………………………………
2
(1) 経営環境の変化と事業展開の方向 ………………………………………………………………
2
(2) 求められる経営資質 ………………………………………………………………………………
3
(3) 経営理念の策定から計画立案までのステップ …………………………………………………
8
2.経営理念をたてる ……………………………………………………………………………………
9
(1) 経営理念のあり方 …………………………………………………………………………………
9
Ⅰ
(2) 経営理念を見直す ………………………………………………………………………………… 12
(3) 新たに経営理念をたてる ………………………………………………………………………… 14
3.経営ビジョンを生み出す …………………………………………………………………………… 15
(1) 理念からビジョンへ ……………………………………………………………………………… 15
(2) 自社の経営力の現状を評価する ………………………………………………………………… 15
(3) 取り組むべき課題と経営ビジョンの方向 ……………………………………………………… 36
生き残りと発展のための
経営改善・基盤強化
―事例に基づく経営改善マニュアル
(4) 経営ビジョンの要件 ……………………………………………………………………………… 43
(5) 経営ビジョンの周知徹底 ………………………………………………………………………… 43
4.利益計画をたてる …………………………………………………………………………………… 45
(1) 利益管理の重要性(キャッシュフローによる利益管理)……………………………………… 45
(2) 利益計画の立て方 ………………………………………………………………………………… 46
(3) 損益分岐点分析の進め方 ………………………………………………………………………… 47
Ⅱ 高付加価値化による経営改善を進める事業者 ………………………………………… 53
―事例研究
1.経営の高付加価値化の視点 ………………………………………………………………………… 54
(1) トラック運送事業の経営における高付加価値化とは? ……………………………………… 54
(2) 今後の高付加価値化の方向 ……………………………………………………………………… 55
2.高付加価値経営の事例 ……………………………………………………………………………… 58
事例①:運送業から総合ロジスティクスへの経営改善 ……………………………………………… 58
事例②:業態の異なる同業3社と連携し、荷主の要請に多面的に対応する体制を構築 ………… 60
事例③:コンクリート製品輸送の取り扱いノウハウを活かし、危険物倉庫を建設・運営 ……… 62
事例④:自社で構築した書籍配送ネットワークを活用し、販売促進活動の代行を実現 ………… 64
Ⅲ おわりに …………………………………………………………………………………………… 67
1
目 次
はじめに
Ⅰ 生き残りと発展のための経営改善・基盤強化 ………………………………………… 1
―事例に基づく経営改善マニュアル
1.経営改善・基盤強化の取り組みにあたって ………………………………………………………
2
(1) 経営環境の変化と事業展開の方向 ………………………………………………………………
2
(2) 求められる経営資質 ………………………………………………………………………………
3
(3) 経営理念の策定から計画立案までのステップ …………………………………………………
8
2.経営理念をたてる ……………………………………………………………………………………
9
(1) 経営理念のあり方 …………………………………………………………………………………
9
Ⅰ
(2) 経営理念を見直す ………………………………………………………………………………… 12
(3) 新たに経営理念をたてる ………………………………………………………………………… 14
3.経営ビジョンを生み出す …………………………………………………………………………… 15
(1) 理念からビジョンへ ……………………………………………………………………………… 15
(2) 自社の経営力の現状を評価する ………………………………………………………………… 15
(3) 取り組むべき課題と経営ビジョンの方向 ……………………………………………………… 36
生き残りと発展のための
経営改善・基盤強化
―事例に基づく経営改善マニュアル
(4) 経営ビジョンの要件 ……………………………………………………………………………… 43
(5) 経営ビジョンの周知徹底 ………………………………………………………………………… 43
4.利益計画をたてる …………………………………………………………………………………… 45
(1) 利益管理の重要性(キャッシュフローによる利益管理)……………………………………… 45
(2) 利益計画の立て方 ………………………………………………………………………………… 46
(3) 損益分岐点分析の進め方 ………………………………………………………………………… 47
Ⅱ 高付加価値化による経営改善を進める事業者 ………………………………………… 53
―事例研究
1.経営の高付加価値化の視点 ………………………………………………………………………… 54
(1) トラック運送事業の経営における高付加価値化とは? ……………………………………… 54
(2) 今後の高付加価値化の方向 ……………………………………………………………………… 55
2.高付加価値経営の事例 ……………………………………………………………………………… 58
事例①:運送業から総合ロジスティクスへの経営改善 ……………………………………………… 58
事例②:業態の異なる同業3社と連携し、荷主の要請に多面的に対応する体制を構築 ………… 60
事例③:コンクリート製品輸送の取り扱いノウハウを活かし、危険物倉庫を建設・運営 ……… 62
事例④:自社で構築した書籍配送ネットワークを活用し、販売促進活動の代行を実現 ………… 64
Ⅲ おわりに …………………………………………………………………………………………… 67
1
1.経営改善・基盤強化の取り組みにあたって
(1) 経営環境の変化と事業展開の方向
図−1 輸送サービスの業態分化
輸送情報提供
輸送形態見直し
輸送エリア見直し
(貨物追跡等)
(一車貸切・積合せ)
(地域内、広域)
● かつてない経営環境の変化
「1年以内に収益をいまの3倍に伸ばす」
「生産性を50%向上させる」
複合一貫物流
専門化・特化
(異なる輸送手段の結合、
ネットワーク等)
(輸送品目限定等)
「5年前にさかのぼって売上が3倍に達していない取引先からは撤退する」
業務代行
これらは、いずれも中小事業者が実際に掲げた目標や方針の一例です。一昔前であれば、このよう
な大胆な変革を打ち出す中小事業者はほとんど見られませんでした。これほどの短期間で、経営のド
単純輸送
(流通加工、組立、
配送付帯業務等)
『経済のグローバリズム』の拡大が、大きな「リスク」とともに大きな「チャンス」をもたらし、巨
大企業といえども生き残りをかけて、大胆な経営改革を進めることを余儀なくされているのです。
(宅配、引越し等)
スピード輸送
ラスティックな見直しを図ろうとする発想自体が、従来の経験からはありえなかったことかもしれま
せん。しかしいま、わが国経済が直面している事態は以前のどの時代とも異なるものです。いわゆる
消費者物流
(時間短縮、即応)
物流センター業務
(ピッキング・仕分け、
梱包、出荷等)
保 管
特殊温度管理
(在庫管理等)
(冷凍冷蔵、チルド)
こうした経営環境の急激な変化は、トラック運送業界においても、少なからず影響を及ぼしていま
す。例えば、荷主が安価な原材料を海外から調達するため物流体系を変更したり、安い人件費を求め
て外国へ工場をそっくり移転してしまったり、といった話を耳にした経営者の方は大勢おられるはず
です。中には、実際にこうした経験をされた方もいらっしゃるでしょう。
いま、こうした変化を前にいったいどのように対処すべきなのかが問われています。しかしながら、
(2) 求められる経営資質
事業の規模を問わず多くの経営者はその対応策を持ち合わせていないのが現状です。
● 経営の現状に危機感を
● 新たな輸送分野への進出と業態の転換
中小事業者のなかには、「景気が回復すれば事態は好転する」、「いまの人員削減計画が軌道にのれ
事業規模の大小、あるいは地域や市場分野を問わず、トラック運送事業の経営環境が大きく変化し
ば業績も回復する」と環境変化を安易に捉えていたり、「赤字が続いても潰れることはない」、「今の
ているなかで、すべての事業経営には、いま何らかの「変化」が要請されているのです。今後は、輸
荷主の定型的な仕事があるかぎりはやっていける」といった“なりゆき経営”“漫然経営”に陥って
送市場の成長が期待できないにもかかわらず、新規参入が増え続け、競争は激化する一方です。それ
いたりなど、経営姿勢が疑われる経営者もあります。経営不振の原因は、資金力の不足や従業員の非
が、単純な価格やサービスの競争に陥るならば、資金力のある大手事業者だけが生き残ることになり
力によるものばかりとは限りません。まず、経営トップである自分自身に経営に対する危機感が欠け
ます。自社の事業を高付加価値化して競争での生き残りを図るためには、これまで、トラック運送事
るところはないかと自省してみましょう。
業が市場の変化に対応してさまざまに業態分化してきたように(図−1)、他社とは異なる物流市場
に進出したり、他社にマネができない独創的なサービスを提供したり、協同組合を核として他社との
経営者に危機感が薄いその要因として、次ページに示すようなことが考えられます。あなた自身に
心当たることはありませんか?
提携を図るなど、新たな取り組みに目を向けていかなければなりません。
2
3
1.経営改善・基盤強化の取り組みにあたって
(1) 経営環境の変化と事業展開の方向
図−1 輸送サービスの業態分化
輸送情報提供
輸送形態見直し
輸送エリア見直し
(貨物追跡等)
(一車貸切・積合せ)
(地域内、広域)
● かつてない経営環境の変化
「1年以内に収益をいまの3倍に伸ばす」
「生産性を50%向上させる」
複合一貫物流
専門化・特化
(異なる輸送手段の結合、
ネットワーク等)
(輸送品目限定等)
「5年前にさかのぼって売上が3倍に達していない取引先からは撤退する」
業務代行
これらは、いずれも中小事業者が実際に掲げた目標や方針の一例です。一昔前であれば、このよう
な大胆な変革を打ち出す中小事業者はほとんど見られませんでした。これほどの短期間で、経営のド
単純輸送
(流通加工、組立、
配送付帯業務等)
『経済のグローバリズム』の拡大が、大きな「リスク」とともに大きな「チャンス」をもたらし、巨
大企業といえども生き残りをかけて、大胆な経営改革を進めることを余儀なくされているのです。
(宅配、引越し等)
スピード輸送
ラスティックな見直しを図ろうとする発想自体が、従来の経験からはありえなかったことかもしれま
せん。しかしいま、わが国経済が直面している事態は以前のどの時代とも異なるものです。いわゆる
消費者物流
(時間短縮、即応)
物流センター業務
(ピッキング・仕分け、
梱包、出荷等)
保 管
特殊温度管理
(在庫管理等)
(冷凍冷蔵、チルド)
こうした経営環境の急激な変化は、トラック運送業界においても、少なからず影響を及ぼしていま
す。例えば、荷主が安価な原材料を海外から調達するため物流体系を変更したり、安い人件費を求め
て外国へ工場をそっくり移転してしまったり、といった話を耳にした経営者の方は大勢おられるはず
です。中には、実際にこうした経験をされた方もいらっしゃるでしょう。
いま、こうした変化を前にいったいどのように対処すべきなのかが問われています。しかしながら、
(2) 求められる経営資質
事業の規模を問わず多くの経営者はその対応策を持ち合わせていないのが現状です。
● 経営の現状に危機感を
● 新たな輸送分野への進出と業態の転換
中小事業者のなかには、「景気が回復すれば事態は好転する」、「いまの人員削減計画が軌道にのれ
事業規模の大小、あるいは地域や市場分野を問わず、トラック運送事業の経営環境が大きく変化し
ば業績も回復する」と環境変化を安易に捉えていたり、「赤字が続いても潰れることはない」、「今の
ているなかで、すべての事業経営には、いま何らかの「変化」が要請されているのです。今後は、輸
荷主の定型的な仕事があるかぎりはやっていける」といった“なりゆき経営”“漫然経営”に陥って
送市場の成長が期待できないにもかかわらず、新規参入が増え続け、競争は激化する一方です。それ
いたりなど、経営姿勢が疑われる経営者もあります。経営不振の原因は、資金力の不足や従業員の非
が、単純な価格やサービスの競争に陥るならば、資金力のある大手事業者だけが生き残ることになり
力によるものばかりとは限りません。まず、経営トップである自分自身に経営に対する危機感が欠け
ます。自社の事業を高付加価値化して競争での生き残りを図るためには、これまで、トラック運送事
るところはないかと自省してみましょう。
業が市場の変化に対応してさまざまに業態分化してきたように(図−1)、他社とは異なる物流市場
に進出したり、他社にマネができない独創的なサービスを提供したり、協同組合を核として他社との
経営者に危機感が薄いその要因として、次ページに示すようなことが考えられます。あなた自身に
心当たることはありませんか?
提携を図るなど、新たな取り組みに目を向けていかなければなりません。
2
3
経営漫然度チェック
● リーダーシップと経営管理
経営環境が大きく変化する今日では、従来の常識を覆し、業界の下位に低迷していた企業が、いき
●
現場任せになっている
「車が動いていれば大丈夫」、「空き車がなければ心配ない」といったように現場がそれ
なりに稼動してさえいれば、それで安心している。
●
危機がはっきりと捉えられない
会社の業績が徐々に落ち込んでおり、それが経営破たんに向けたサインであるにもかか
わらず、問題点の本質をうまく把握できないために、何ら手を打たずに済ませている。
●
なりトップに躍り出たり、過去の経験から再生困難と思われた巨大企業が、新たな経営戦略や事業の
再編、品質向上といった経営改革の断行で、見事によみがえるといったことが起きています。
これらの経営革新の成功例に共通する点は、経営に対する差し迫った危機感とともに、力強いリー
ダーシップ、正しい経営ビジョンが一体となって発揮されていることです(図−2)。自社の事業経
営の将来を見据え、その向かう方向を見出していくうえで、経営者には、以下のような取り組みを推
進することが不可欠であることを認識してください。
事業経営の健全さを顧みない
図−2 経営改善のプロセス
リスクの大きい仕事に関わっていないか、大きな借入金がないかなど、自社の事業の健
全性を点検しない。
●
稼働率の低い大型車両を保有している、旧式で使いにくいため保管の依頼がほとんどな
い倉庫があるなど、不良資産を抱えている。
●
経営ビジョン
活用されない資産が過剰にある
従業員を狭い担当分野におく
組織全体の構造やしくみが刷新されないため、従業員の関心や意欲が、狭い担当分野の
● 経営理念を確立する
・時代の変化に適合する、新
経営管理
経営戦略の策定
・ビジョンを達成していくう
計画を立てて、予算を
設定する
・予定した成果を達成するた
●
たな経営理念を確立する。
経営ビジョンの設定
・5年後、10年後を見据えた、
●
目標にのみ向かい、全社的改善意識が低くなっている。
●
経営戦略
えで必要な戦略を策定する。
目標の設定
・経営戦略とその目標を明確
めのステップとスケジュー
ルを作り、進行に必要な資
源を配分する。
にし、全社員に伝達し、そ
の合理性や妥当性について
の理解を深める。
体制の確立と人材配置
・計画達成のための組織を編
●
企業があるべき姿を、具体
的(売り上げ、収益、シェ
アなど)に設定する。
達成すべき経営目標がない
これまで売上や利益など、明確な経営目標をたてたことがない。
達成プロセスの設定
・経営ビジョンを達成するま
●
●
間違った業績評価を設定している
成果主義経営が適切でなく、従業員や事業の評価基準が明確になっていない。
●
動機付けと意欲昂揚
・すべての従業員に仕事への
●
でのプロセスやステップを
想定する。
動機付けを図り、障害を乗
り越えていくための意識を
高める。
経営に対する社外からの評価が不足している
自社の経営の評価について、会計事務所やコンサルタント、金融機関など社外からの評
価をまったく受けていない。
成果主義の導入
・成果と報酬をリンクさせ、
●
人事処遇と透明性を高める。
●
●
●
成し、適切な人材を配置する。
・人材を有効に動かすため目
標を示し、行動規範をつくる。
コントロールと問題解決
・ 報告の義務付けや、迅速な
●
情報伝達のしくみを構築し
事業の実績を速やかに把握
するとともに、逸脱や間違い
を発見して、問題を解決する。
自社の「いやなこと」を見ない、解決を避ける
自社の経営課題に対して正面から向き合わず、社内・外からのアドバイス等にも関心を
持たない。
●
重要な問題を先送りする
忙しさなどを理由に、自社の経営にとって重要な情報を軽視あるいは拒絶し、経営上の
問題点に対する取り組みを先送りする。
危機感を持つためには、まず自社の経営の現況を正確に把握していなければなりません。それには
管理体制のチェックなどを通じて、経営の現況をいつでも見えるようにしておくことが必要です。サ
ービス品質の基準やマニュアルづくり、あるいはISO(国際標準規格)の取得を通じて自社の現況
を把握していく方法も有効です。
4
5
経営漫然度チェック
● リーダーシップと経営管理
経営環境が大きく変化する今日では、従来の常識を覆し、業界の下位に低迷していた企業が、いき
●
現場任せになっている
「車が動いていれば大丈夫」、「空き車がなければ心配ない」といったように現場がそれ
なりに稼動してさえいれば、それで安心している。
●
危機がはっきりと捉えられない
会社の業績が徐々に落ち込んでおり、それが経営破たんに向けたサインであるにもかか
わらず、問題点の本質をうまく把握できないために、何ら手を打たずに済ませている。
●
なりトップに躍り出たり、過去の経験から再生困難と思われた巨大企業が、新たな経営戦略や事業の
再編、品質向上といった経営改革の断行で、見事によみがえるといったことが起きています。
これらの経営革新の成功例に共通する点は、経営に対する差し迫った危機感とともに、力強いリー
ダーシップ、正しい経営ビジョンが一体となって発揮されていることです(図−2)。自社の事業経
営の将来を見据え、その向かう方向を見出していくうえで、経営者には、以下のような取り組みを推
進することが不可欠であることを認識してください。
事業経営の健全さを顧みない
図−2 経営改善のプロセス
リスクの大きい仕事に関わっていないか、大きな借入金がないかなど、自社の事業の健
全性を点検しない。
●
稼働率の低い大型車両を保有している、旧式で使いにくいため保管の依頼がほとんどな
い倉庫があるなど、不良資産を抱えている。
●
経営ビジョン
活用されない資産が過剰にある
従業員を狭い担当分野におく
組織全体の構造やしくみが刷新されないため、従業員の関心や意欲が、狭い担当分野の
● 経営理念を確立する
・時代の変化に適合する、新
経営管理
経営戦略の策定
・ビジョンを達成していくう
計画を立てて、予算を
設定する
・予定した成果を達成するた
●
たな経営理念を確立する。
経営ビジョンの設定
・5年後、10年後を見据えた、
●
目標にのみ向かい、全社的改善意識が低くなっている。
●
経営戦略
えで必要な戦略を策定する。
目標の設定
・経営戦略とその目標を明確
めのステップとスケジュー
ルを作り、進行に必要な資
源を配分する。
にし、全社員に伝達し、そ
の合理性や妥当性について
の理解を深める。
体制の確立と人材配置
・計画達成のための組織を編
●
企業があるべき姿を、具体
的(売り上げ、収益、シェ
アなど)に設定する。
達成すべき経営目標がない
これまで売上や利益など、明確な経営目標をたてたことがない。
達成プロセスの設定
・経営ビジョンを達成するま
●
●
間違った業績評価を設定している
成果主義経営が適切でなく、従業員や事業の評価基準が明確になっていない。
●
動機付けと意欲昂揚
・すべての従業員に仕事への
●
でのプロセスやステップを
想定する。
動機付けを図り、障害を乗
り越えていくための意識を
高める。
経営に対する社外からの評価が不足している
自社の経営の評価について、会計事務所やコンサルタント、金融機関など社外からの評
価をまったく受けていない。
成果主義の導入
・成果と報酬をリンクさせ、
●
人事処遇と透明性を高める。
●
●
●
成し、適切な人材を配置する。
・人材を有効に動かすため目
標を示し、行動規範をつくる。
コントロールと問題解決
・ 報告の義務付けや、迅速な
●
情報伝達のしくみを構築し
事業の実績を速やかに把握
するとともに、逸脱や間違い
を発見して、問題を解決する。
自社の「いやなこと」を見ない、解決を避ける
自社の経営課題に対して正面から向き合わず、社内・外からのアドバイス等にも関心を
持たない。
●
重要な問題を先送りする
忙しさなどを理由に、自社の経営にとって重要な情報を軽視あるいは拒絶し、経営上の
問題点に対する取り組みを先送りする。
危機感を持つためには、まず自社の経営の現況を正確に把握していなければなりません。それには
管理体制のチェックなどを通じて、経営の現況をいつでも見えるようにしておくことが必要です。サ
ービス品質の基準やマニュアルづくり、あるいはISO(国際標準規格)の取得を通じて自社の現況
を把握していく方法も有効です。
4
5
表−2 経営力評価表
● 経営行動・経営資質を自己評価する
次ページでは、自社の現状を自己評価することを通じて、経営者のみなさんの経営行動や経営資質
を自己判断していただくことにします。この『経営力評価表』(表−2)で、自身の経営行動に該当
項 目
1 経営戦略や経営計画の策定は?
点数
項 目
9 新規需要開拓に対する取り組みの体制は?
点数
1
2
3
4
5
・特に対応していない
・必要を感じているができない
・努力しているが効果が薄い
・全社をあげて積極的に取り組んでいる
・自社を含む企業グループ全体で取り組んでいる
1
2
3
4
5
いて、トラック運送事業用に加工したものです。優良な企業にあてはまる選択肢の点数を高く、その
・策定していない
・管理職が策定する
・担当部署がまず策定する
・社長が独自に立案し策定する
・役員会が立案し策定する
逆は低く設定してあります。
2 経営方針や経営計画などを明確化し徹底していますか?
すると思われる番号を○で囲み、その点数を合計してみてください。この1∼16の評価表における点
数の配分(1点∼5点)は、業種・業態に関係なく多数の中小企業の経営実態を分析した結果に基づ
評価点数の合計による貴社の格付けと経営力の評価は、下表のようになります。ただし、ここでの
格付け・評価は絶対的なものではありません。本書を読み進む上でのひとつの目安にして下さい。
・ほとんどしていない
・管理職まで徹底
・中堅社員まで徹底
・全社員に徹底している
・全社員に徹底しているが弾力的
1
2
3
4
5
3 経営組織や職務分担などは明確になっていますか?
表−1 経営力の評価基準の例
評価点数の合計
格付記号
経営力評価
70点以上
AAA
「優秀」業績タイプの戦略と行動を保持
60点∼69点
AA
「優良」業績タイプの戦略と行動を保持
50点∼59点
A
「良」業績タイプの戦略と行動を保持
40点∼49点
BBB
平均的な業績タイプの戦略と行動を保持
30点∼39点
BB
低業績タイプの戦略と行動を保持
・ほとんど明確になっていない
・組織図と実態が不一致
・組織変更が多く不明確
・組織図と分担は規程通り運用
・明確になっているが対応は柔軟
1
2
3
4
5
1
0 この10年内に取引を開拓した荷主の売上構成比は?
・10年未満の顧客はない
・2割未満
・2∼3割程度
・4割以上を占めている
・3∼4割程度
1
2
3
4
5
1
1 この5年間で売り上げに貢献した要因は?
・経済環境の好調による
・主要荷主の業績の成長による
・運賃・料金面での自社の努力による
・新規顧客の開拓努力による
・顧客やサービスの差異化に成功したことによる
1
2
3
4
5
2 貴社の物流事業者としての業態は、現在の輸送市場
4 経営戦略上あなたが、最も重要と位置付けるものは 1
の動きに合致していると思いますか?
何ですか?
・業務管理や作業の効率化
・人材の確保や人事管理を通じたサービス品質の向上
・輸送関連業務への取り組みを通じた、付加価値の向上
・情報化に対応した、機動力の強化
・営業活動の拡大を通じた、多様なニーズへの対応
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
3 貴社の輸送市場における他社との競合の状況は?
5 営業活動であなたが、最も重視することは何ですか?
・現在の顧客の受注の維持
・効果的なプレゼンテーションの展開
・高付加価値化による運賃・料金の引き上げ
・輸送の付加価値化のための荷主ニーズの的確な把握
・多様なニーズに応えて新規荷主・市場を開拓
・していない
・どちらとも言えない
・していないところがある
・している
・合致するよう常に努力している
1
2
3
4
5
・運賃競争が厳しい
・業界の平均程度の競争
・過剰サービスの要請が厳しい
・平均よりやや安定
・棲み分けで安定共存
1
2
3
4
5
4(株式会社組織のみ)この5年間での株式配当金の支
6 要員や人材確保と労務管理であなたが、最も重視す 1
払いや配当政策は?
ることは何ですか?
・運転者はじめ従業員の指導教育
・賃金体系と勤務評価の整備、成文化
・営業担当者・業務管理者の人材確保
・新規採用の継続
・労働時間の短縮と福利厚生の充実
1
2
3
4
5
・配当するほど利益がない
・利益が出れば配当している
・利益はあるが配当はほとんどしていない
・毎期安定配当に心がけている
・高い配当金を維持している
1
2
3
4
5
5 過去10年間の増資実績と今後の考えは?
7 品質向上や業務の効率化であなたが、最も重視する 1
ものは何ですか?
・計画業務や管理業務の電算化
・荷主からのクレームの減少
・作業の合理化による労働時間の短縮
・アウトソーシングによる保有資産・自社部門の縮小
・荷主の新たな要請を先取り・提案する工夫・努力
1
2
3
4
5
8IT化に対応する、機器の整備や活用のレベルは?
・電話・FAXの利用が中心
・パソコン単体の活用段階
・社内LANの整備・活用段階
・支店や営業所とのネットワーク化段階
・荷主の受発注や在庫管理代行のためのネットワーク化
1
2
3
4
5
・実績なしで今後も予定はない
・実績はないが近々したい
・資本構成改善をめざして行う
・実績はあるが当面の予定はない
・株式公開を目指し増資したい
1
2
3
4
5
1
6 社長は決算書などの会計情報を検討されますか?
・ほとんど利用しない
・税理士等からの説明を受ける程度
・経理担当者から報告を聞く
・実績評価や意思決定に利用
・会議等で毎月報告説明を受ける
1
2
3
4
5
合計
* 稲岡潔 「戦略経営計画への企業分析」
(産業新聞社)より作成
6
7
表−2 経営力評価表
● 経営行動・経営資質を自己評価する
次ページでは、自社の現状を自己評価することを通じて、経営者のみなさんの経営行動や経営資質
を自己判断していただくことにします。この『経営力評価表』(表−2)で、自身の経営行動に該当
項 目
1 経営戦略や経営計画の策定は?
点数
項 目
9 新規需要開拓に対する取り組みの体制は?
点数
1
2
3
4
5
・特に対応していない
・必要を感じているができない
・努力しているが効果が薄い
・全社をあげて積極的に取り組んでいる
・自社を含む企業グループ全体で取り組んでいる
1
2
3
4
5
いて、トラック運送事業用に加工したものです。優良な企業にあてはまる選択肢の点数を高く、その
・策定していない
・管理職が策定する
・担当部署がまず策定する
・社長が独自に立案し策定する
・役員会が立案し策定する
逆は低く設定してあります。
2 経営方針や経営計画などを明確化し徹底していますか?
すると思われる番号を○で囲み、その点数を合計してみてください。この1∼16の評価表における点
数の配分(1点∼5点)は、業種・業態に関係なく多数の中小企業の経営実態を分析した結果に基づ
評価点数の合計による貴社の格付けと経営力の評価は、下表のようになります。ただし、ここでの
格付け・評価は絶対的なものではありません。本書を読み進む上でのひとつの目安にして下さい。
・ほとんどしていない
・管理職まで徹底
・中堅社員まで徹底
・全社員に徹底している
・全社員に徹底しているが弾力的
1
2
3
4
5
3 経営組織や職務分担などは明確になっていますか?
表−1 経営力の評価基準の例
評価点数の合計
格付記号
経営力評価
70点以上
AAA
「優秀」業績タイプの戦略と行動を保持
60点∼69点
AA
「優良」業績タイプの戦略と行動を保持
50点∼59点
A
「良」業績タイプの戦略と行動を保持
40点∼49点
BBB
平均的な業績タイプの戦略と行動を保持
30点∼39点
BB
低業績タイプの戦略と行動を保持
・ほとんど明確になっていない
・組織図と実態が不一致
・組織変更が多く不明確
・組織図と分担は規程通り運用
・明確になっているが対応は柔軟
1
2
3
4
5
1
0 この10年内に取引を開拓した荷主の売上構成比は?
・10年未満の顧客はない
・2割未満
・2∼3割程度
・4割以上を占めている
・3∼4割程度
1
2
3
4
5
1
1 この5年間で売り上げに貢献した要因は?
・経済環境の好調による
・主要荷主の業績の成長による
・運賃・料金面での自社の努力による
・新規顧客の開拓努力による
・顧客やサービスの差異化に成功したことによる
1
2
3
4
5
2 貴社の物流事業者としての業態は、現在の輸送市場
4 経営戦略上あなたが、最も重要と位置付けるものは 1
の動きに合致していると思いますか?
何ですか?
・業務管理や作業の効率化
・人材の確保や人事管理を通じたサービス品質の向上
・輸送関連業務への取り組みを通じた、付加価値の向上
・情報化に対応した、機動力の強化
・営業活動の拡大を通じた、多様なニーズへの対応
1
2
3
4
5
1
2
3
4
5
1
3 貴社の輸送市場における他社との競合の状況は?
5 営業活動であなたが、最も重視することは何ですか?
・現在の顧客の受注の維持
・効果的なプレゼンテーションの展開
・高付加価値化による運賃・料金の引き上げ
・輸送の付加価値化のための荷主ニーズの的確な把握
・多様なニーズに応えて新規荷主・市場を開拓
・していない
・どちらとも言えない
・していないところがある
・している
・合致するよう常に努力している
1
2
3
4
5
・運賃競争が厳しい
・業界の平均程度の競争
・過剰サービスの要請が厳しい
・平均よりやや安定
・棲み分けで安定共存
1
2
3
4
5
4(株式会社組織のみ)この5年間での株式配当金の支
6 要員や人材確保と労務管理であなたが、最も重視す 1
払いや配当政策は?
ることは何ですか?
・運転者はじめ従業員の指導教育
・賃金体系と勤務評価の整備、成文化
・営業担当者・業務管理者の人材確保
・新規採用の継続
・労働時間の短縮と福利厚生の充実
1
2
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4
5
・配当するほど利益がない
・利益が出れば配当している
・利益はあるが配当はほとんどしていない
・毎期安定配当に心がけている
・高い配当金を維持している
1
2
3
4
5
5 過去10年間の増資実績と今後の考えは?
7 品質向上や業務の効率化であなたが、最も重視する 1
ものは何ですか?
・計画業務や管理業務の電算化
・荷主からのクレームの減少
・作業の合理化による労働時間の短縮
・アウトソーシングによる保有資産・自社部門の縮小
・荷主の新たな要請を先取り・提案する工夫・努力
1
2
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5
8IT化に対応する、機器の整備や活用のレベルは?
・電話・FAXの利用が中心
・パソコン単体の活用段階
・社内LANの整備・活用段階
・支店や営業所とのネットワーク化段階
・荷主の受発注や在庫管理代行のためのネットワーク化
1
2
3
4
5
・実績なしで今後も予定はない
・実績はないが近々したい
・資本構成改善をめざして行う
・実績はあるが当面の予定はない
・株式公開を目指し増資したい
1
2
3
4
5
1
6 社長は決算書などの会計情報を検討されますか?
・ほとんど利用しない
・税理士等からの説明を受ける程度
・経理担当者から報告を聞く
・実績評価や意思決定に利用
・会議等で毎月報告説明を受ける
1
2
3
4
5
合計
* 稲岡潔 「戦略経営計画への企業分析」
(産業新聞社)より作成
6
7
2.経営理念をたてる
(3) 経営理念の策定から計画立案までのステップ
下図−3は、経営者が経営理念をたてて、企業の将来の経営ビジョンを生み出し、それを社内に定
(1)経営理念のあり方
着させ、計画を立案し、成果を得るまでをステップとして示したものです。
以下では、①経営理念をたて、②自社の経営力の現状を把握し、その結果に基づいて、③経営ビジ
ョンを生み、それを④社内に徹底し、⑤利益計画を立案するまでのプロセスを解説します。
● 経営理念の役割と要件
企業とは、多数の人々の多様な活動によって維持・運営されるものですから、経営を続けていくう
えで解決しなければならない問題は山積しています。日常業務のなかですぐ処理しなければならない
図−3 経営計画立案のプロセス
問題、3カ月から1年程度の期間にわたって改善を進めなければならない問題、もっと長期的な見通
本書の章建てとの対応
① 経営理念をたてる
Ⅰ−2
しから見えてくる問題もあります。現在の大きな経営環境の変化を受け止めて経営を継続していくに
は、山積する問題を整理して原因などを明確にし、従業員の自覚を促して全社員が同じ意識で問題解
決にあたるしくみを社内に構築していかなければなりません。
自社の経営目標を達成し、上記のような問題解決を進めるうえでの基本方針となるものが「経営理
② 自社の経営力の現状を評価する
念」です。それは前述の経営判断や経営管理を行ううえでの経営の原則であり、経営者が事業を行う
うえでの考え方や価値観、創業の精神、信念・理想・信条なども含めた自らの経営姿勢そのものです。
③ 経営ビジョンを生み出す
Ⅰ−3
ただし、その価値観や信念が経営者の「ひとりよがり」では意味がありません。経営理念は、事業が
求める人材をひきつけ、やる気を引き出すものでなければなりません。経営理念は、社員と共有でき
る価値観に基づくもので、経営者自らがそれにしたがって行動するのでなければ、だれもついてこな
④ ビジョンを社内に徹底し、
従業員の自発性を促す
いでしょう。
こうした基本方針や原則は、会社に関係するすべての人々が理解できるように、必ず「成文化」し
⑤ 目標をたて、達成のための
計画をつくる
Ⅰ−4
たものでなければなりません。社是や社訓などと呼ばれているものはこれをわかりやすく表現したも
のといえるでしょう。自社の経営がいったい何をめざしているのか、経営幹部・従業員、株主にはも
ちろん、荷主や荷主の顧客、地域の人々に至るまで、だれにでも自社がめざすところがイメージされ
⑥ 成果を評価する
るものでなければならず、その内容が曖昧なものであってはなりません。また、成分化される経営理
念は、経営幹部・社員はもちろん、荷主や株主などにもすぐに理解できるようシンプルで、かつそれ
らの人々の「心」に響く言葉で表現されていることが重要です。
しばしば、人員整理や組織の改編さえ行えば経営を改善できると安易に考えがちです。しかしなが
ら、そうした結果が、従業員のやる気や社内の連帯感を崩してしまうことがあります。人員整理は経
営改善ではありません。経営改善のステップは、一歩一歩段階を踏んで達成の感触を確かめながら推
進されねばなりません。
8
9
2.経営理念をたてる
(3) 経営理念の策定から計画立案までのステップ
下図−3は、経営者が経営理念をたてて、企業の将来の経営ビジョンを生み出し、それを社内に定
(1)経営理念のあり方
着させ、計画を立案し、成果を得るまでをステップとして示したものです。
以下では、①経営理念をたて、②自社の経営力の現状を把握し、その結果に基づいて、③経営ビジ
ョンを生み、それを④社内に徹底し、⑤利益計画を立案するまでのプロセスを解説します。
● 経営理念の役割と要件
企業とは、多数の人々の多様な活動によって維持・運営されるものですから、経営を続けていくう
えで解決しなければならない問題は山積しています。日常業務のなかですぐ処理しなければならない
図−3 経営計画立案のプロセス
問題、3カ月から1年程度の期間にわたって改善を進めなければならない問題、もっと長期的な見通
本書の章建てとの対応
① 経営理念をたてる
Ⅰ−2
しから見えてくる問題もあります。現在の大きな経営環境の変化を受け止めて経営を継続していくに
は、山積する問題を整理して原因などを明確にし、従業員の自覚を促して全社員が同じ意識で問題解
決にあたるしくみを社内に構築していかなければなりません。
自社の経営目標を達成し、上記のような問題解決を進めるうえでの基本方針となるものが「経営理
② 自社の経営力の現状を評価する
念」です。それは前述の経営判断や経営管理を行ううえでの経営の原則であり、経営者が事業を行う
うえでの考え方や価値観、創業の精神、信念・理想・信条なども含めた自らの経営姿勢そのものです。
③ 経営ビジョンを生み出す
Ⅰ−3
ただし、その価値観や信念が経営者の「ひとりよがり」では意味がありません。経営理念は、事業が
求める人材をひきつけ、やる気を引き出すものでなければなりません。経営理念は、社員と共有でき
る価値観に基づくもので、経営者自らがそれにしたがって行動するのでなければ、だれもついてこな
④ ビジョンを社内に徹底し、
従業員の自発性を促す
いでしょう。
こうした基本方針や原則は、会社に関係するすべての人々が理解できるように、必ず「成文化」し
⑤ 目標をたて、達成のための
計画をつくる
Ⅰ−4
たものでなければなりません。社是や社訓などと呼ばれているものはこれをわかりやすく表現したも
のといえるでしょう。自社の経営がいったい何をめざしているのか、経営幹部・従業員、株主にはも
ちろん、荷主や荷主の顧客、地域の人々に至るまで、だれにでも自社がめざすところがイメージされ
⑥ 成果を評価する
るものでなければならず、その内容が曖昧なものであってはなりません。また、成分化される経営理
念は、経営幹部・社員はもちろん、荷主や株主などにもすぐに理解できるようシンプルで、かつそれ
らの人々の「心」に響く言葉で表現されていることが重要です。
しばしば、人員整理や組織の改編さえ行えば経営を改善できると安易に考えがちです。しかしなが
ら、そうした結果が、従業員のやる気や社内の連帯感を崩してしまうことがあります。人員整理は経
営改善ではありません。経営改善のステップは、一歩一歩段階を踏んで達成の感触を確かめながら推
進されねばなりません。
8
9
表−3 中堅のトラック運送事業者・A社の経営理念
優れた経営理念は、以下の要件を備えていなければなりません。
経営理念の要件チェック
・当社は新輸送システムを構築し、物流サービスを通じて、「常にお客様の繁栄に寄与する」こ
とをモットーに社員の健康と幸福を願い、企業の発展を基に地域社会に貢献します。
●
明確である
経営の方向が、はっきりと示されていること。
●
●
・お客様とともに繁栄する:当社の経営理念の根本は、お客様あっての当社であるということ
実現が望まれている
です。急激なる環境変化の中にあってお客様のニーズもまた高度になっていますが、当社は
株主、顧客、取引先、従業員など経営に利害関係を持つ人々が長期的な利益を得られること。
新輸送システムによってお客様の物流部門としてともに繁栄していきます。
実現が可能である
・社員とともに成長する:当社は会社を支えてくれる社員とともに成長していく会社です。そ
目標が現実的で、達成可能であること。
のためには教育訓練を通じ、社員一人一人の能力開発を行い、同時に健康と家庭の幸福のた
●
変化に柔軟である
めに全員で知恵を出し合う会社です。
変化の激しい経営環境のなかで、柔軟性を備えていること。
●
簡単に説明できる
・地域社会に貢献する:会社の発展は同時に地域社会に対する貢献です。「地域社会の発展のた
少なくとも5分以内で、だれにでも説明できること。
めにA社に入りたい」私たちはそんな会社作りに邁進しています。
以下では、A社の経営理念を、先の経営理念の要件チェックで評価してみました。
● 経営理念を活かす
経営理念は、ただ掲げられるだけでは役に立ちません。理念が、経営目標や経営戦略、経営計画、
経営方針などによって具体化し、その内容と自身の役割が従業員に正しく認識・実践され、全社シス
●
「常にお客様の繁栄に寄与する」こと、と経営の方向は明らかです。
テムとして機能してはじめて価値を生むものです。最近では、経営者が一方的に経営理念を掲げる企
業ばかりでなく、従業員全員が参加して作成するタイプの企業が増えています。経営理念づくりを共
明確である
●
有することで、従業員が自分たちのものとして実践にむすびつけやすくすることがその目的です。そ
実現が望まれている
経営の方向に基づいて、顧客・社員・地域社会それぞれへの貢献が目標化されています。
うしたプロセスを経ることによって、従業員が心を一つにし、自発的に行動を起こすような原動力と
なってこそ経営理念と呼ぶにふさわしいものになるのです。そのため、価値判断や行動・実践を導き
出すような躍動的で魅力ある言葉で表現されていることが重要です(表−3参照)
。
●
実現が可能である
「教育訓練を通じ、社員一人一人の能力開発を行い」、「全員で知恵を出し合う」ことを通じて実現
するとしています。
世界の大企業の経営理念から
ヒューレット・パッカード
・利益はたしかに重要だが、
(会社は)そのために存在しているのではない。
基本的な価値観は変わらないが、実践は変わるかもしれない。
ジョンソン&ジョンソン
・失敗は当社にとって最も大切な製品である。
モトローラ
・前進しつづけろ!動かしつづけろ!動いていること自体に意味がある。
●
変化に柔軟である
「急激なる環境変化の中にあってお客様のニーズもまた高度になって」いることに対して、「新輸送
システムによって」
“柔軟に”対応していくことを想定しています。
●
簡単に説明できる
冒頭の基本理念に続き、だれのために(「お客様とともに繁栄する」)、どうやって(「社員とともに
成長する」)、どんな価値に基づいて(「地域社会に貢献する」)、経営を推進していくかが明確に示さ
れており、わかりやすくしています。
ウォールマート
・なんでもやってみて、手直しして、試してみる。
10
11
表−3 中堅のトラック運送事業者・A社の経営理念
優れた経営理念は、以下の要件を備えていなければなりません。
経営理念の要件チェック
・当社は新輸送システムを構築し、物流サービスを通じて、「常にお客様の繁栄に寄与する」こ
とをモットーに社員の健康と幸福を願い、企業の発展を基に地域社会に貢献します。
●
明確である
経営の方向が、はっきりと示されていること。
●
●
・お客様とともに繁栄する:当社の経営理念の根本は、お客様あっての当社であるということ
実現が望まれている
です。急激なる環境変化の中にあってお客様のニーズもまた高度になっていますが、当社は
株主、顧客、取引先、従業員など経営に利害関係を持つ人々が長期的な利益を得られること。
新輸送システムによってお客様の物流部門としてともに繁栄していきます。
実現が可能である
・社員とともに成長する:当社は会社を支えてくれる社員とともに成長していく会社です。そ
目標が現実的で、達成可能であること。
のためには教育訓練を通じ、社員一人一人の能力開発を行い、同時に健康と家庭の幸福のた
●
変化に柔軟である
めに全員で知恵を出し合う会社です。
変化の激しい経営環境のなかで、柔軟性を備えていること。
●
簡単に説明できる
・地域社会に貢献する:会社の発展は同時に地域社会に対する貢献です。「地域社会の発展のた
少なくとも5分以内で、だれにでも説明できること。
めにA社に入りたい」私たちはそんな会社作りに邁進しています。
以下では、A社の経営理念を、先の経営理念の要件チェックで評価してみました。
● 経営理念を活かす
経営理念は、ただ掲げられるだけでは役に立ちません。理念が、経営目標や経営戦略、経営計画、
経営方針などによって具体化し、その内容と自身の役割が従業員に正しく認識・実践され、全社シス
●
「常にお客様の繁栄に寄与する」こと、と経営の方向は明らかです。
テムとして機能してはじめて価値を生むものです。最近では、経営者が一方的に経営理念を掲げる企
業ばかりでなく、従業員全員が参加して作成するタイプの企業が増えています。経営理念づくりを共
明確である
●
有することで、従業員が自分たちのものとして実践にむすびつけやすくすることがその目的です。そ
実現が望まれている
経営の方向に基づいて、顧客・社員・地域社会それぞれへの貢献が目標化されています。
うしたプロセスを経ることによって、従業員が心を一つにし、自発的に行動を起こすような原動力と
なってこそ経営理念と呼ぶにふさわしいものになるのです。そのため、価値判断や行動・実践を導き
出すような躍動的で魅力ある言葉で表現されていることが重要です(表−3参照)
。
●
実現が可能である
「教育訓練を通じ、社員一人一人の能力開発を行い」、「全員で知恵を出し合う」ことを通じて実現
するとしています。
世界の大企業の経営理念から
ヒューレット・パッカード
・利益はたしかに重要だが、
(会社は)そのために存在しているのではない。
基本的な価値観は変わらないが、実践は変わるかもしれない。
ジョンソン&ジョンソン
・失敗は当社にとって最も大切な製品である。
モトローラ
・前進しつづけろ!動かしつづけろ!動いていること自体に意味がある。
●
変化に柔軟である
「急激なる環境変化の中にあってお客様のニーズもまた高度になって」いることに対して、「新輸送
システムによって」
“柔軟に”対応していくことを想定しています。
●
簡単に説明できる
冒頭の基本理念に続き、だれのために(「お客様とともに繁栄する」)、どうやって(「社員とともに
成長する」)、どんな価値に基づいて(「地域社会に貢献する」)、経営を推進していくかが明確に示さ
れており、わかりやすくしています。
ウォールマート
・なんでもやってみて、手直しして、試してみる。
10
11
(2)経営理念を見直す
以下は、経営理念の簡単な見直し方法です。
例に従って、自社の既存の経営理念から、上記の7つのポイント毎に該当する文章を抜き書きしま
す。表現が適切でないところは平易な文章に直し、該当する文章がないところには新たに書き込みま
● 見直しのポイントと手順
経営理念は自社の事業経営の「憲法」で、安易に変えるべきものではないという考え方もあります
す。社内の意識を高めるため、できれば経営幹部や従業員も交えて見直しましょう(表−4)
。
が、時代の変化とともに見直すべきところが出てくれば改めることも必要でしょう。特に、現在のよ
表−4 経営理念の見直しのステップ
うな経営環境の変化が激しい局面にあっては、どのような「経営理念」を掲げるかが重要な課題であ
り、経営者の姿勢が問われています。また、環境変化にあわせた経営理念の見直し・刷新にあたって
は、新たな「起業」にも等しい発想に基づいた取り組みが必要とされます。
社是や社訓のかたちで既に経営理念を掲げている企業の方は、ここで自社の経営理念をあらためて
見直してみましょう。見直しのポイントは以下の6つ(図−4)です。
・顧客満足:利益の基盤として顧客を第一とする経営か
荷主が納得できるサービス・価格であるか
・効 率 性:生産性や利潤の追求、計数管理による裏付けがあるか
検討項目
①
顧
客
満
足
・成 長 性:事業が成長していくためのサービス品質や高度化のレベルはどの程度か、目標とする地
位や蓄積すべき経営資源があるか
・社 会 性:自社を取り巻く環境、利害関係者に対する働きかけがあるか
・人 間 性:従業員の意欲をわきたたせて、心を一つにするようなヒューマニティあふれる表現にな
②
効
率
性
っているか
・先 進 性:新しい考え方や技術に興味を持ち、事業経営に積極的に取り入れているか
・独 自 性:他社にはマネのできないもの、物流市場でONLY ONEを主張できるものがあるか
図−4 経営理念見直しのポイント
経営理念
顧客満足
顧客利益の創造、共存共栄、コミュニケーション
効 率 性
生産性、採算性、労務管理・勤務評価、計数管理
成 長 性
事業規模、品質、サービスの高度化、市場選択
社 会 性
安全確保、環境保全、地域貢献、株主利益
人 間 性
12
物心両面の豊かさ、成長、人間形成
先 進 性
先取り、高度化、進化、進展、先行投資
独 自 性
独創、オリジナル、固有、ユニーク、工夫
③
成
長
性
④
社
会
性
⑤
人
間
性
⑥
先
進
性
⑦
独
自
性
顧客が納得する
ステップ1
ステップ2
ステップ3
現在の自社の経営理念
平明でわかりやすい文
6つのポイントから全体
章に直してみる。
のバランスを考慮して推
(社是、社訓など)から該
当する文章を抜き出す。
顧客第一主義
サービス・価格か?
敲する。
お客様の繁栄に寄与す
お客様の利益を第一に、
ることを第一に。
人材の育成や先進的な技
術の取得を通じて、全社
が一体となってその求め
効率性を追求して
いるか?
―
輸送の効率化で荷主業
るところに柔軟に対応
種の成長率年○%に比
し、独自性で市場での優
肩する実績をあげる。
位を保持すると同時に地
域への貢献を果たす。
事業の成長性は?
荷 主 の 繁 栄 と と も に 、 現在の輸送分野に特化
事業の成長をめざす。
し、顧客の利益を優先し
て高い収益性を求める。
社会や経営環境
事業の社会的責務を果
事業活動を通じて、地域
への働きかけは?
たし、地域の発展に資
社会と環境保全に貢献す
する。
る。
社員を結束する
意思の疎通を第一とし、
ヒューマニティは?
―
技術やノウハウの
社員相互の信頼を培う。
先取の気質を持って、
先取りは?
―
常に新技術の取得に努
める。
どこにもマネの
独自性こそが、競争力
○○の分野で独自性を
できないものは?
の源泉。
追求し、他社の追随を
許さない。
13
(2)経営理念を見直す
以下は、経営理念の簡単な見直し方法です。
例に従って、自社の既存の経営理念から、上記の7つのポイント毎に該当する文章を抜き書きしま
す。表現が適切でないところは平易な文章に直し、該当する文章がないところには新たに書き込みま
● 見直しのポイントと手順
経営理念は自社の事業経営の「憲法」で、安易に変えるべきものではないという考え方もあります
す。社内の意識を高めるため、できれば経営幹部や従業員も交えて見直しましょう(表−4)
。
が、時代の変化とともに見直すべきところが出てくれば改めることも必要でしょう。特に、現在のよ
表−4 経営理念の見直しのステップ
うな経営環境の変化が激しい局面にあっては、どのような「経営理念」を掲げるかが重要な課題であ
り、経営者の姿勢が問われています。また、環境変化にあわせた経営理念の見直し・刷新にあたって
は、新たな「起業」にも等しい発想に基づいた取り組みが必要とされます。
社是や社訓のかたちで既に経営理念を掲げている企業の方は、ここで自社の経営理念をあらためて
見直してみましょう。見直しのポイントは以下の6つ(図−4)です。
・顧客満足:利益の基盤として顧客を第一とする経営か
荷主が納得できるサービス・価格であるか
・効 率 性:生産性や利潤の追求、計数管理による裏付けがあるか
検討項目
①
顧
客
満
足
・成 長 性:事業が成長していくためのサービス品質や高度化のレベルはどの程度か、目標とする地
位や蓄積すべき経営資源があるか
・社 会 性:自社を取り巻く環境、利害関係者に対する働きかけがあるか
・人 間 性:従業員の意欲をわきたたせて、心を一つにするようなヒューマニティあふれる表現にな
②
効
率
性
っているか
・先 進 性:新しい考え方や技術に興味を持ち、事業経営に積極的に取り入れているか
・独 自 性:他社にはマネのできないもの、物流市場でONLY ONEを主張できるものがあるか
図−4 経営理念見直しのポイント
経営理念
顧客満足
顧客利益の創造、共存共栄、コミュニケーション
効 率 性
生産性、採算性、労務管理・勤務評価、計数管理
成 長 性
事業規模、品質、サービスの高度化、市場選択
社 会 性
安全確保、環境保全、地域貢献、株主利益
人 間 性
12
物心両面の豊かさ、成長、人間形成
先 進 性
先取り、高度化、進化、進展、先行投資
独 自 性
独創、オリジナル、固有、ユニーク、工夫
③
成
長
性
④
社
会
性
⑤
人
間
性
⑥
先
進
性
⑦
独
自
性
顧客が納得する
ステップ1
ステップ2
ステップ3
現在の自社の経営理念
平明でわかりやすい文
6つのポイントから全体
章に直してみる。
のバランスを考慮して推
(社是、社訓など)から該
当する文章を抜き出す。
顧客第一主義
サービス・価格か?
敲する。
お客様の繁栄に寄与す
お客様の利益を第一に、
ることを第一に。
人材の育成や先進的な技
術の取得を通じて、全社
が一体となってその求め
効率性を追求して
いるか?
―
輸送の効率化で荷主業
るところに柔軟に対応
種の成長率年○%に比
し、独自性で市場での優
肩する実績をあげる。
位を保持すると同時に地
域への貢献を果たす。
事業の成長性は?
荷 主 の 繁 栄 と と も に 、 現在の輸送分野に特化
事業の成長をめざす。
し、顧客の利益を優先し
て高い収益性を求める。
社会や経営環境
事業の社会的責務を果
事業活動を通じて、地域
への働きかけは?
たし、地域の発展に資
社会と環境保全に貢献す
する。
る。
社員を結束する
意思の疎通を第一とし、
ヒューマニティは?
―
技術やノウハウの
社員相互の信頼を培う。
先取の気質を持って、
先取りは?
―
常に新技術の取得に努
める。
どこにもマネの
独自性こそが、競争力
○○の分野で独自性を
できないものは?
の源泉。
追求し、他社の追随を
許さない。
13
3.経営ビジョンを生み出す
(3)新たに経営理念をたてる
● マトリクスで考えてみる
(1)理念からビジョンへ
これまで経営理念をたてたことのない方のために、上記までの経営理念の役割や要件を踏まえて、
以下のような「経営理念創作」のマトリクスを考えてみました。各項目および全体のバランスを考慮
して文章化してみてください。
経営基盤の改善・強化は、自社が自ら行うものであり、その方策は千差万別です。これだという決
め手や画一的な解決策、共通のお手本があるわけではありません。しかし、どのような改善を進める
にしろ、経営者は、これから自社が進むべき方向となる「経営ビジョン」を明確に示さなければなり
表−5 経営理念創作のマトリクス
ません。
目 的
対 象
方 向
手 段
① 顧客満足
荷主への貢献
荷主
サービス・価格の
競争力向上
物流サービスの
付加価値化
②効 率 性
収益率の向上
事業経営全体
生産性の向上
計数管理、
コスト意識の徹底
③成 長 性
④社 会 性
⑤人 間 性
既存事業の成長
*
実績と収益
既存事業活動の見直し 収益向上のための
事業再編
CSR =企業の
社会的責任
自社の顧客、地域社会
人材育成・能力開発
経営幹部、従業員
社会的責務
(2)自社の経営力の現状を評価する
経営ビジョンを生み出すには、まず、経営診断などの手法によって自社の経営力の現状や財務の実
態を評価し、経営ビジョンの方向や根拠を明らかにすることから始めなければなりません。ここでは、
その進め方について理解を深めていただくために、以下に示したA社とB社のケースを対象に、それ
ぞれの経営実態の分析・評価を進める過程を通じて、解説していくことにします。
安全確保、環境保全
A社 :
「顧客第一」の理念のもと、全国紙の新聞輸送と荷主の物流センター作業を一括して受
相互の信頼関係の樹立 コミュニケーションの
活発化
⑥先 進 性
事業の進化
経営幹部、従業員
先進技術の取得
IT化、高度技術
⑦独 自 性
競争力の強化
経営幹部、従業員
ニッチ分野の発見など
マーケティング、
技術開発
*:Corporate Social Responsibility
注し、荷主の業務拡大に合わせて事業を極めて安定的に伸長させてきた。バブル崩壊
後も一定の利益を確保してきたが、新たな事業発展の方向を見出せないでいる。
B社 :発電所などの設備機械を中心に大型・重量物の輸送と据え付けを中心に事業を展開し
てきたが、公共工事の抑制から需要減退や運賃低減が収益を直撃、経営の効率化も限
界にきており、業態転換や事業規模の縮小で乗り切りを図りたい。現状打開はやさし
いことではないが、時間がかかっても一歩一歩改善の道を歩む方針。
◆ 経営理念の例
●
荷主への貢献
●
多様な物流サービスを通じて荷主企業の繁栄に寄与し
ます。
●
効率的な事業運営
経営に取り組みます。
●
無駄を省き高効率で合理性の高い事業運営に徹します。
●
成長性の追求
常に事業の見直しを図り、事業の発展を目指します。
●
地域経済への貢献
雇用や経済活動を通じて地域経済に貢献します。
●
社会への貢献
人間性の重視
人間性を重視し、内外ともに円滑なコミュニケーショ
ン確保に努めます。
●
従業員の生活基盤安定
● 経営力分析は目標設定のため
経営力の評価は、単に企業の活動を定点観測するだけではなく、あくまで常に変化している経営を
「動態」として評価することが目的です。しかも、銀行が貸付企業に対して行う信用分析などとは異
なる企業内部での分析ですから、評価のためというよりは、むしろ自社の弱みを分析して、経営改善
の目標や経営戦略策定のために行うものです。
従業員の資質向上とともに生活基盤の安定確保を図り
ます。
●
高品質な物流システムの構築
ITを駆使して、先進的な物流体系の構築に挑戦します。
安全確保、環境保全を優先し、企業として社会的な責
務を果たします。
物流事業への自負
物流の果たす使命と役割を理解し、誇りをもって事業
●
独自性の追求
独自性の高い物流サービスを追求します。
14
15
3.経営ビジョンを生み出す
(3)新たに経営理念をたてる
● マトリクスで考えてみる
(1)理念からビジョンへ
これまで経営理念をたてたことのない方のために、上記までの経営理念の役割や要件を踏まえて、
以下のような「経営理念創作」のマトリクスを考えてみました。各項目および全体のバランスを考慮
して文章化してみてください。
経営基盤の改善・強化は、自社が自ら行うものであり、その方策は千差万別です。これだという決
め手や画一的な解決策、共通のお手本があるわけではありません。しかし、どのような改善を進める
にしろ、経営者は、これから自社が進むべき方向となる「経営ビジョン」を明確に示さなければなり
表−5 経営理念創作のマトリクス
ません。
目 的
対 象
方 向
手 段
① 顧客満足
荷主への貢献
荷主
サービス・価格の
競争力向上
物流サービスの
付加価値化
②効 率 性
収益率の向上
事業経営全体
生産性の向上
計数管理、
コスト意識の徹底
③成 長 性
④社 会 性
⑤人 間 性
既存事業の成長
*
実績と収益
既存事業活動の見直し 収益向上のための
事業再編
CSR =企業の
社会的責任
自社の顧客、地域社会
人材育成・能力開発
経営幹部、従業員
社会的責務
(2)自社の経営力の現状を評価する
経営ビジョンを生み出すには、まず、経営診断などの手法によって自社の経営力の現状や財務の実
態を評価し、経営ビジョンの方向や根拠を明らかにすることから始めなければなりません。ここでは、
その進め方について理解を深めていただくために、以下に示したA社とB社のケースを対象に、それ
ぞれの経営実態の分析・評価を進める過程を通じて、解説していくことにします。
安全確保、環境保全
A社 :
「顧客第一」の理念のもと、全国紙の新聞輸送と荷主の物流センター作業を一括して受
相互の信頼関係の樹立 コミュニケーションの
活発化
⑥先 進 性
事業の進化
経営幹部、従業員
先進技術の取得
IT化、高度技術
⑦独 自 性
競争力の強化
経営幹部、従業員
ニッチ分野の発見など
マーケティング、
技術開発
*:Corporate Social Responsibility
注し、荷主の業務拡大に合わせて事業を極めて安定的に伸長させてきた。バブル崩壊
後も一定の利益を確保してきたが、新たな事業発展の方向を見出せないでいる。
B社 :発電所などの設備機械を中心に大型・重量物の輸送と据え付けを中心に事業を展開し
てきたが、公共工事の抑制から需要減退や運賃低減が収益を直撃、経営の効率化も限
界にきており、業態転換や事業規模の縮小で乗り切りを図りたい。現状打開はやさし
いことではないが、時間がかかっても一歩一歩改善の道を歩む方針。
◆ 経営理念の例
●
荷主への貢献
●
多様な物流サービスを通じて荷主企業の繁栄に寄与し
ます。
●
効率的な事業運営
経営に取り組みます。
●
無駄を省き高効率で合理性の高い事業運営に徹します。
●
成長性の追求
常に事業の見直しを図り、事業の発展を目指します。
●
地域経済への貢献
雇用や経済活動を通じて地域経済に貢献します。
●
社会への貢献
人間性の重視
人間性を重視し、内外ともに円滑なコミュニケーショ
ン確保に努めます。
●
従業員の生活基盤安定
● 経営力分析は目標設定のため
経営力の評価は、単に企業の活動を定点観測するだけではなく、あくまで常に変化している経営を
「動態」として評価することが目的です。しかも、銀行が貸付企業に対して行う信用分析などとは異
なる企業内部での分析ですから、評価のためというよりは、むしろ自社の弱みを分析して、経営改善
の目標や経営戦略策定のために行うものです。
従業員の資質向上とともに生活基盤の安定確保を図り
ます。
●
高品質な物流システムの構築
ITを駆使して、先進的な物流体系の構築に挑戦します。
安全確保、環境保全を優先し、企業として社会的な責
務を果たします。
物流事業への自負
物流の果たす使命と役割を理解し、誇りをもって事業
●
独自性の追求
独自性の高い物流サービスを追求します。
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経営実態
● A社の事例
● 事業の経緯
事業概要
・昭和30年代に創業し、地場輸送を中心に事業を開始。現在の荷主構成は、創業時とほとんど変化が
・保有車両台数は49台、すべて2∼5t未満車。1位荷主の新聞輸送に33∼43台稼動。
ない。
・1位荷主(新聞社)の売上が9割を占める。
・従業員83人のうち30人は、1位荷主(新聞社)の構内作業のためのアルバイト雇用。
・1位荷主の販売拡張とともに事業も伸長、40年代後半の好景気から業績は急伸した。(新聞輸送と
いう性格から)バブル経済の崩壊後も安定的に利益を維持してきた。
表−6 A社の事業概要
業 態
地場輸送・一車貸切型(一部帰り荷による積合わせ輸送も)
営業エリア
首都圏
営業所数・
東京都内の荷主配送所内、他県に営業所
立 地
駐車場(2∼4t車・各7台)
従業員数
ドライバー
● 経営の現況
・現在の売上は年間、ほぼ単一荷主の状態である。バブル時は他の一般荷主で年間約1,200万円ほど
の売上があったが、現在は約600万円程度にまで落ち込んでいる。
・1位荷主は、地域を細分化して速報体制を構築するため印刷工場を分散しており、年々増加する物
流コストに頭を痛め、最近はコスト削減に力を入れている。しかし、新聞という公共性の高い商品
45人
保有車両
であるため、根拠のないダンピングは求められない。
10t以上
・1位荷主との取引はこの20年間変わっていない。以前は大企業の決算公告特集に伴う増ページ時に
数(台)
助手・荷役
事務員
約300万円程度の売上増加があったが、企業の決算公告がネット化されたことから(臨時収入は)
5∼10t未満
3人
2∼5t未満
49台
+傭車
5∼6台/日
パート・アルバイト
専従役員
30人
2t未満
5人
軽貨物等
なくなった。
・ディーゼル車排ガス規制による車両代替で経費がかさみ、今年度決算はマイナスの見込み。
● 経営者の自己評価
・正社員(運転と構内作業を兼務)の平均年齢は42才(構内作業のみのアルバイトを含めると39才)
で、正社員の平均給与は30.5万円。業種としては高い賃金だと思う。
保有施設
合計
83人
本社事務所
20坪
車庫
207坪
合計
49台
・当社の長年の問題は構内作業の労務管理にある。主要荷主(新聞社)は自社媒体のほかに、スポー
ツ紙1社、外資系新聞社1社の印刷・配送を行っているが、この2社の(午前2∼4時の深夜の)
構内作業の単価が良いため、賃金の高いベテラン社員が独占している。機械化などによって作業時
本社隣接(120坪)+近隣(賃貸・
間が短縮しているにもかかわらず、全体の人件費が減らず、生産性が上がっていないことが悩み。
67坪)+湾岸道路下(賃貸・20坪)
・以前は班編成(三勤一休)などで管理しやすい体制にしていたが、上記の作業の増加や労働時間の
保管庫等
100坪
茨城県
短縮の影響から、現在はすべて個人別に作業ローテンションをつくっている。この管理の方策も時
間がかかり影響が大きい。
合計
荷役状況
・他2社の構内作業は、刷り出しの時間や搬出のタイミングなどの調整が必要で、現場では「クオリ
327坪
業 種
新聞社(全国紙)
ティが高く、人手がかかる」というが、作業全体を標準化してだれでもできる作業工程にして平等
荷主数
受託業務の概要
1社
梱包・仕分け・配送
ドライバーと
1日:朝刊43台・夕刊
アルバイトは
33台が稼動
荷主配送所内
に配分し、従業員の雇用規模も圧縮したい。しかし、安易な標準化で安全性や信頼性には影響を与
の構内作業
機械設備関係メーカー
3社
えたくない。この2∼3年の経営目標は「計画的作業管理と実質賃金の確立」にしているがなかな
か実効があがらない。
・従業員に経営の目線から作業を見直してもらおうとの意図から、増資して社員持ち株制の導入も図
ったが効果は薄い。
大田区・千代田区に
立地、1日7∼8台稼動
16
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経営実態
● A社の事例
● 事業の経緯
事業概要
・昭和30年代に創業し、地場輸送を中心に事業を開始。現在の荷主構成は、創業時とほとんど変化が
・保有車両台数は49台、すべて2∼5t未満車。1位荷主の新聞輸送に33∼43台稼動。
ない。
・1位荷主(新聞社)の売上が9割を占める。
・従業員83人のうち30人は、1位荷主(新聞社)の構内作業のためのアルバイト雇用。
・1位荷主の販売拡張とともに事業も伸長、40年代後半の好景気から業績は急伸した。(新聞輸送と
いう性格から)バブル経済の崩壊後も安定的に利益を維持してきた。
表−6 A社の事業概要
業 態
地場輸送・一車貸切型(一部帰り荷による積合わせ輸送も)
営業エリア
首都圏
営業所数・
東京都内の荷主配送所内、他県に営業所
立 地
駐車場(2∼4t車・各7台)
従業員数
ドライバー
● 経営の現況
・現在の売上は年間、ほぼ単一荷主の状態である。バブル時は他の一般荷主で年間約1,200万円ほど
の売上があったが、現在は約600万円程度にまで落ち込んでいる。
・1位荷主は、地域を細分化して速報体制を構築するため印刷工場を分散しており、年々増加する物
流コストに頭を痛め、最近はコスト削減に力を入れている。しかし、新聞という公共性の高い商品
45人
保有車両
であるため、根拠のないダンピングは求められない。
10t以上
・1位荷主との取引はこの20年間変わっていない。以前は大企業の決算公告特集に伴う増ページ時に
数(台)
助手・荷役
事務員
約300万円程度の売上増加があったが、企業の決算公告がネット化されたことから(臨時収入は)
5∼10t未満
3人
2∼5t未満
49台
+傭車
5∼6台/日
パート・アルバイト
専従役員
30人
2t未満
5人
軽貨物等
なくなった。
・ディーゼル車排ガス規制による車両代替で経費がかさみ、今年度決算はマイナスの見込み。
● 経営者の自己評価
・正社員(運転と構内作業を兼務)の平均年齢は42才(構内作業のみのアルバイトを含めると39才)
で、正社員の平均給与は30.5万円。業種としては高い賃金だと思う。
保有施設
合計
83人
本社事務所
20坪
車庫
207坪
合計
49台
・当社の長年の問題は構内作業の労務管理にある。主要荷主(新聞社)は自社媒体のほかに、スポー
ツ紙1社、外資系新聞社1社の印刷・配送を行っているが、この2社の(午前2∼4時の深夜の)
構内作業の単価が良いため、賃金の高いベテラン社員が独占している。機械化などによって作業時
本社隣接(120坪)+近隣(賃貸・
間が短縮しているにもかかわらず、全体の人件費が減らず、生産性が上がっていないことが悩み。
67坪)+湾岸道路下(賃貸・20坪)
・以前は班編成(三勤一休)などで管理しやすい体制にしていたが、上記の作業の増加や労働時間の
保管庫等
100坪
茨城県
短縮の影響から、現在はすべて個人別に作業ローテンションをつくっている。この管理の方策も時
間がかかり影響が大きい。
合計
荷役状況
・他2社の構内作業は、刷り出しの時間や搬出のタイミングなどの調整が必要で、現場では「クオリ
327坪
業 種
新聞社(全国紙)
ティが高く、人手がかかる」というが、作業全体を標準化してだれでもできる作業工程にして平等
荷主数
受託業務の概要
1社
梱包・仕分け・配送
ドライバーと
1日:朝刊43台・夕刊
アルバイトは
33台が稼動
荷主配送所内
に配分し、従業員の雇用規模も圧縮したい。しかし、安易な標準化で安全性や信頼性には影響を与
の構内作業
機械設備関係メーカー
3社
えたくない。この2∼3年の経営目標は「計画的作業管理と実質賃金の確立」にしているがなかな
か実効があがらない。
・従業員に経営の目線から作業を見直してもらおうとの意図から、増資して社員持ち株制の導入も図
ったが効果は薄い。
大田区・千代田区に
立地、1日7∼8台稼動
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表−7 A社の輸送実績
平成13年度
輸送トン数
表−8 A社の要約貸借対照表
平成14年度
業界平均*
資産の部
42,568t
40,175t
72,724t
実 車 キ ロ
1,271,895 km
1,876,534 km
1,150,407 km
空 車 キ ロ
726,902 km
804,229 km
528,206 km
合 計
1,998,797 km
2,680,763 km
1,678,613 km
期末実在車両数
47台
49台
30.5台
延実在車両数
15,516日車
17,395日車
10,872日車
延実働車両数
12,520日車
14,299日車
7,310日車
実 車 率
63.6%
70.0%
68.5%
実 働 率
80.7%
82.2%
67.2%
輸 送 ト ン 数
3.4t
2.8t
9.9t
実 車 キ ロ
101.6 km
131.2 km
157 km
営 業 収 益
40,974円
47,992円
41,833円
営 業 費 用
38,564円
46,483円
41,723円
営 業 損 益
2,410円
1,509円
110円
営 業 収 益
258円
256円
182円
営 業 費 用
242円
248円
182円
営 業 損 益
17円
8円
0円
走行キロ
車 両 数
実働車1日
1車あたり
走行キロ
1kmあたり
(Ⅰ
流動資産)
現金及び預金
単位:千円
負債の部
(264,252)
163,282
(Ⅰ
流動負債)
買掛金
(165,694)
7,686
受取手形
10,314
短期借入金
74,799
売掛金
60,787
未払金
74,079
短期貸付金
27,049
その他
9,130
その他
3,220
貸倒引当金
‐400
(Ⅱ
固定資産)
(Ⅱ
固定負債)
長期借入金
(26,575)
26,575
(82,897)
負債の部合計
192,269
資本の部
(Ⅰ
資本金)
(Ⅱ
法定準備金)
(Ⅲ
剰余金)
1 任意積立金
2 当期未処分利益
(うち 当期利益)
資産の部合計
347,149
(12,000)
(6,480)
(136,400)
115,000
21,400
(17,606)
資本の部合計
154,880
負債・資本の部合計
347,149
*
「経営分析報告書−平成14年度決算版−」
(平成16年2月・全日本トラック協会)から
(車両規模21∼50台の事業者の輸送効率)
注1) 平成13年度に比べ、「実車キロ」が急伸しているのは、同14年度からスポーツ紙・外資系新聞
の配送を受託したため。
注2) 業界平均と比べ、実働車1日1車当りの「営業損益」が高いのは、構内荷役や一次保管収入
が含まれているため。
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表−7 A社の輸送実績
平成13年度
輸送トン数
表−8 A社の要約貸借対照表
平成14年度
業界平均*
資産の部
42,568t
40,175t
72,724t
実 車 キ ロ
1,271,895 km
1,876,534 km
1,150,407 km
空 車 キ ロ
726,902 km
804,229 km
528,206 km
合 計
1,998,797 km
2,680,763 km
1,678,613 km
期末実在車両数
47台
49台
30.5台
延実在車両数
15,516日車
17,395日車
10,872日車
延実働車両数
12,520日車
14,299日車
7,310日車
実 車 率
63.6%
70.0%
68.5%
実 働 率
80.7%
82.2%
67.2%
輸 送 ト ン 数
3.4t
2.8t
9.9t
実 車 キ ロ
101.6 km
131.2 km
157 km
営 業 収 益
40,974円
47,992円
41,833円
営 業 費 用
38,564円
46,483円
41,723円
営 業 損 益
2,410円
1,509円
110円
営 業 収 益
258円
256円
182円
営 業 費 用
242円
248円
182円
営 業 損 益
17円
8円
0円
走行キロ
車 両 数
実働車1日
1車あたり
走行キロ
1kmあたり
(Ⅰ
流動資産)
現金及び預金
単位:千円
負債の部
(264,252)
163,282
(Ⅰ
流動負債)
買掛金
(165,694)
7,686
受取手形
10,314
短期借入金
74,799
売掛金
60,787
未払金
74,079
短期貸付金
27,049
その他
9,130
その他
3,220
貸倒引当金
‐400
(Ⅱ
固定資産)
(Ⅱ
固定負債)
長期借入金
(26,575)
26,575
(82,897)
負債の部合計
192,269
資本の部
(Ⅰ
資本金)
(Ⅱ
法定準備金)
(Ⅲ
剰余金)
1 任意積立金
2 当期未処分利益
(うち 当期利益)
資産の部合計
347,149
(12,000)
(6,480)
(136,400)
115,000
21,400
(17,606)
資本の部合計
154,880
負債・資本の部合計
347,149
*
「経営分析報告書−平成14年度決算版−」
(平成16年2月・全日本トラック協会)から
(車両規模21∼50台の事業者の輸送効率)
注1) 平成13年度に比べ、「実車キロ」が急伸しているのは、同14年度からスポーツ紙・外資系新聞
の配送を受託したため。
注2) 業界平均と比べ、実働車1日1車当りの「営業損益」が高いのは、構内荷役や一次保管収入
が含まれているため。
18
19
表−9 A社の要約損益計算書
科 目
単位:千円
事業概要
金 額
〔
経
常
損
益
の
部
● B社の事例
・大型重量物の輸送が漸減、区役所や地元小規模荷主の小口貨物輸送で売上を維持
〕
(営業損益の部)
表−11 B社の事業概要
売上高
686,238
売上原価
562,155
売上総利益
業 態
一車貸切型、全国輸送
営業エリア
首都圏、中国地方
営業所数・
荷主工場に隣接して営業所1カ所
124,083
立 地
販売費及び一般管理費
102,502
従業員数
営業利益
(営業外損益の部)
営業外収益
9,588
営業外費用
2,959
経常利益
ドライバー
25人
助手・荷役
3人
事務員
6人
21,581
パート・アルバイト
専従役員
28,210
合計
保有車両
数(台)
10t以上
16台
5∼10t未満
2台
2∼5t未満
18台
18人
2t未満
10台
4人
軽貨物等
1台
56人
合計
47台
(特別損益の部)
特別利益
1,301
特別損失
296
税引前当期純利益
29,215
法人税及び住民税
11,609
当 期 純 利 益
17,606
前 期 繰 越 利 益
3,794
当期未払分利益
21,400
保有施設
本社事務所
243坪
車庫・倉庫
1,560坪
車庫、荷主用保管庫(一部賃貸)
マンション・車庫
149.5坪
賃貸事業
営業所
271.5坪
事務所・車庫
合計
2,224坪
荷役状況
業 種
運送事業者
表−10 A社の要約運送原価報告書
単位:千円
Ⅰ
燃料油脂費
Ⅱ
労務費
Ⅲ
外注運賃
77,138
Ⅳ
車両修繕費
16,597
Ⅴ
減価償却費
28,588
Ⅴ
Ⅰ 運送経費
22,565
355,448
20
荷主数
16社
(大手機械メーカーの物流子会社
受託業務の概要
大型重量物の輸送・搬入
大手機械・器
・据え付け
具メーカーの
など)
物流子会社
区役所など公共機関
3社
輸送・搬入
耐火煉瓦メーカー、築炉事業者
4社
耐火煉瓦の輸送
機械製造・加工
10社
月間3台
モーター関連機器の輸送
61,819
鉄工所
当期運送原価
敷地内で貸し駐車場営業
3社
同上
562,155
21
表−9 A社の要約損益計算書
科 目
単位:千円
事業概要
金 額
〔
経
常
損
益
の
部
● B社の事例
・大型重量物の輸送が漸減、区役所や地元小規模荷主の小口貨物輸送で売上を維持
〕
(営業損益の部)
表−11 B社の事業概要
売上高
686,238
売上原価
562,155
売上総利益
業 態
一車貸切型、全国輸送
営業エリア
首都圏、中国地方
営業所数・
荷主工場に隣接して営業所1カ所
124,083
立 地
販売費及び一般管理費
102,502
従業員数
営業利益
(営業外損益の部)
営業外収益
9,588
営業外費用
2,959
経常利益
ドライバー
25人
助手・荷役
3人
事務員
6人
21,581
パート・アルバイト
専従役員
28,210
合計
保有車両
数(台)
10t以上
16台
5∼10t未満
2台
2∼5t未満
18台
18人
2t未満
10台
4人
軽貨物等
1台
56人
合計
47台
(特別損益の部)
特別利益
1,301
特別損失
296
税引前当期純利益
29,215
法人税及び住民税
11,609
当 期 純 利 益
17,606
前 期 繰 越 利 益
3,794
当期未払分利益
21,400
保有施設
本社事務所
243坪
車庫・倉庫
1,560坪
車庫、荷主用保管庫(一部賃貸)
マンション・車庫
149.5坪
賃貸事業
営業所
271.5坪
事務所・車庫
合計
2,224坪
荷役状況
業 種
運送事業者
表−10 A社の要約運送原価報告書
単位:千円
Ⅰ
燃料油脂費
Ⅱ
労務費
Ⅲ
外注運賃
77,138
Ⅳ
車両修繕費
16,597
Ⅴ
減価償却費
28,588
Ⅴ
Ⅰ 運送経費
22,565
355,448
20
荷主数
16社
(大手機械メーカーの物流子会社
受託業務の概要
大型重量物の輸送・搬入
大手機械・器
・据え付け
具メーカーの
など)
物流子会社
区役所など公共機関
3社
輸送・搬入
耐火煉瓦メーカー、築炉事業者
4社
耐火煉瓦の輸送
機械製造・加工
10社
月間3台
モーター関連機器の輸送
61,819
鉄工所
当期運送原価
敷地内で貸し駐車場営業
3社
同上
562,155
21
表−12 B社の輸送実績
経営実態
● 事業の経緯
・B社は、創業が昭和16年(1941年)と地域で最も古くから営業している中規模のトラック運送事業
平成13年度
業界平均*
117,330t
98,957t
72,724t
実 車 キ ロ
2,944,092 km
3,099,038 km
1,150,407 km
空 車 キ ロ
500,579 km
490,842 km
528,206 km
合 計
3,444,671 km
3,589,880 km
1,678,613 km
期末実在車両数
50台
51台
30.5台
延実在車両数
18,615日車
20,432日車
10,872日車
延実働車両数
15,761日車
17,315日車
7,310日車
実 車 率
85.5%
86.3%
68.5%
実 働 率
84.7%
84.7%
67.2%
輸 送 ト ン 数
7.4t
5.7t
9.9t
実 車 キ ロ
187 km
179 km
157 km
ている。この荷主のほか、継続して取引のある荷主数は少なくないが、受注業務を大型重機の輸
営 業 収 益
48,291円
41,920円
41,833円
送・据え付けの分野に特化してきたため、どの荷主の輸送需要も急落しており、経営のダウンサイ
営 業 費 用
46,928円
39,931円
41,723円
営 業 損 益
1,333円
1,990円
110円
営 業 収 益
221円
202円
182円
営 業 費 用
215円
193円
182円
営 業 損 益
6円
10円
0円
者のひとつ。現在の社長は2代目、創業社長から経営権を引き継いで約30年が経過している。
・B社は、創業時から政府の電源開発事業の一翼を担い、首都圏に立地する大手の金属機械メーカー
輸送トン数
平成14年度
走行キロ
を荷主として、ダムの発電機や精密計測機器などの大型・重量の金属機械製品の長距離輸送とそれ
らの据え付け業務を中心に事業展開してきた。
・この他、地元の重機メーカーから、ガス会社への消火車やガスタンクの輸送・据え付け、同荷主か
ら全国の製塩会社への製塩機の輸送なども手がけている。
車 両 数
・水力発電開発が一段落した最近では、全国の火力・原子力発電所の開設に伴う発電器部品や高炉用
耐火レンガ、重機メーカーの研究所に各種精密計測機械や太軸鋼鉄ケーブル捲取り機などの輸送・
据え付けを行っている。
● 経営の現況
・バブル経済の破綻以降、政府の公共工事抑制の影響を受け、B社が特化していた大型・重機輸送の
市場では需要が急減、荷主である重機メーカーへの受注も急減したことから、運賃水準の低減を申
実働車1日
し渡されるなど、売上・収益の減退が経営を直撃し、経営規模の縮小を迫られる事態となった。
1車あたり
・現在の売上額は月間5,000万∼6,500万円で、いまも地元重機メーカー1社が売上の30%以上を占め
ジングとともに、業態の変更も迫られている。
・従業員や運転者は、長年の家族的な経営のなかで雇用しており、勤続年数の長い、重機輸送のベテ
ランが多く、荷主の出荷部門に出向させている者もいる。このため、同業種の他社と比較して人件
走行キロ
費率は高いものだったが、不採算の荷主との取引を整理し、売上額に比べて給与が高額な従業員の
1kmあたり
リストラを進めている最中にある。
・とくに経営の重荷になっているのが、バブル期に約4億円で購入した土地である。地価の急落で売
却する機会を逸しただけでなく、営業倉庫など現業に関連した活用もできず、この負債によって経
営は存亡の危機にあるといって過言ではない。
*
「経営報告書−平成14年度決算版−」
(平成16年2月・全日本トラック協会)から
(車両規模21∼50台の事業者の輸送効率)
● 経営者の自己評価
・当社が特化してきた輸送市場の低迷は構造的なものであり、例え景気の回復があっても以前のよう
には戻らないと思う。
・大胆な業容・業態の転換に活路を見出したい。具体的には、地域のトラック運送事業者として地域
内外で発生する小口貨物の配送や物流センター業務の受託などに着目しているが、いまのところ売
上からみた新規荷主の割合は小さい。
22
23
表−12 B社の輸送実績
経営実態
● 事業の経緯
・B社は、創業が昭和16年(1941年)と地域で最も古くから営業している中規模のトラック運送事業
平成13年度
業界平均*
117,330t
98,957t
72,724t
実 車 キ ロ
2,944,092 km
3,099,038 km
1,150,407 km
空 車 キ ロ
500,579 km
490,842 km
528,206 km
合 計
3,444,671 km
3,589,880 km
1,678,613 km
期末実在車両数
50台
51台
30.5台
延実在車両数
18,615日車
20,432日車
10,872日車
延実働車両数
15,761日車
17,315日車
7,310日車
実 車 率
85.5%
86.3%
68.5%
実 働 率
84.7%
84.7%
67.2%
輸 送 ト ン 数
7.4t
5.7t
9.9t
実 車 キ ロ
187 km
179 km
157 km
ている。この荷主のほか、継続して取引のある荷主数は少なくないが、受注業務を大型重機の輸
営 業 収 益
48,291円
41,920円
41,833円
送・据え付けの分野に特化してきたため、どの荷主の輸送需要も急落しており、経営のダウンサイ
営 業 費 用
46,928円
39,931円
41,723円
営 業 損 益
1,333円
1,990円
110円
営 業 収 益
221円
202円
182円
営 業 費 用
215円
193円
182円
営 業 損 益
6円
10円
0円
者のひとつ。現在の社長は2代目、創業社長から経営権を引き継いで約30年が経過している。
・B社は、創業時から政府の電源開発事業の一翼を担い、首都圏に立地する大手の金属機械メーカー
輸送トン数
平成14年度
走行キロ
を荷主として、ダムの発電機や精密計測機器などの大型・重量の金属機械製品の長距離輸送とそれ
らの据え付け業務を中心に事業展開してきた。
・この他、地元の重機メーカーから、ガス会社への消火車やガスタンクの輸送・据え付け、同荷主か
ら全国の製塩会社への製塩機の輸送なども手がけている。
車 両 数
・水力発電開発が一段落した最近では、全国の火力・原子力発電所の開設に伴う発電器部品や高炉用
耐火レンガ、重機メーカーの研究所に各種精密計測機械や太軸鋼鉄ケーブル捲取り機などの輸送・
据え付けを行っている。
● 経営の現況
・バブル経済の破綻以降、政府の公共工事抑制の影響を受け、B社が特化していた大型・重機輸送の
市場では需要が急減、荷主である重機メーカーへの受注も急減したことから、運賃水準の低減を申
実働車1日
し渡されるなど、売上・収益の減退が経営を直撃し、経営規模の縮小を迫られる事態となった。
1車あたり
・現在の売上額は月間5,000万∼6,500万円で、いまも地元重機メーカー1社が売上の30%以上を占め
ジングとともに、業態の変更も迫られている。
・従業員や運転者は、長年の家族的な経営のなかで雇用しており、勤続年数の長い、重機輸送のベテ
ランが多く、荷主の出荷部門に出向させている者もいる。このため、同業種の他社と比較して人件
走行キロ
費率は高いものだったが、不採算の荷主との取引を整理し、売上額に比べて給与が高額な従業員の
1kmあたり
リストラを進めている最中にある。
・とくに経営の重荷になっているのが、バブル期に約4億円で購入した土地である。地価の急落で売
却する機会を逸しただけでなく、営業倉庫など現業に関連した活用もできず、この負債によって経
営は存亡の危機にあるといって過言ではない。
*
「経営報告書−平成14年度決算版−」
(平成16年2月・全日本トラック協会)から
(車両規模21∼50台の事業者の輸送効率)
● 経営者の自己評価
・当社が特化してきた輸送市場の低迷は構造的なものであり、例え景気の回復があっても以前のよう
には戻らないと思う。
・大胆な業容・業態の転換に活路を見出したい。具体的には、地域のトラック運送事業者として地域
内外で発生する小口貨物の配送や物流センター業務の受託などに着目しているが、いまのところ売
上からみた新規荷主の割合は小さい。
22
23
表−13 B社の要約貸借対照表
資産の部
(Ⅰ
流動資産)
現金及び預金
負債の部
(124,216)
103,832
(Ⅰ
流動負債)
11,637
未払金
未収金
438
未払消費税
14,180
未収運賃
その他流動資産
(Ⅱ
固定資産)
1 有形固定資産
5,248
未払費用
21,755
4,275
短期借入金
62,844
1,268
預り金
9,600
前受金
1,128
その他流動負債
1,253
(489,785)
125,262
車輌
79,811
長期借入金
381,502
構築物・機材・工具
11,080
その他固定負債
285,178
負債の部合計
830,611
土地
経
(Ⅱ
固定負債)
30,328
3 投資等
16,784
益
の
部
(Ⅰ
資本金)
(Ⅱ
法定準備金)
(Ⅲ
剰余金)
1 任意積立金
2 当期未処分利益
(うち 当期利益)
資本の部合計
614,001
負債・資本の部合計
〕
売上高
725,852
売上原価
604,987
売上総利益
販売費及び一般管理費
120,865
86,411
営業利益
34,454
(営業外損益の部)
営業外収益
7,373
営業外費用
35,778
資本の部
24
損
(営業損益の部)
(666,680)
226,520
2 無形固定資産
資産の部合計
常
442,673
建物
単位:千円
金 額
〔
(163,931)
50,466
223
短期貸付
科 目
支払手形
受取手形
表−14 B社の要約損益計算書
単位:千円
営業外損益
‐28,405
経常利益
6,049
(特別損益の部)
(18,000)
(0)
特別利益
0
特別損失
3,522
(‐234,610)
0
‐234,610
(2,527)
‐216,610
614,001
税引前当期純利益
2,527
法人税及び住民税
0
当 期 純 利 益
2,527
前 期 繰 越 利 益
‐237,137
当期未処分利益
‐234,610
表−15 B社の要約運送原価報告書
単位:千円
Ⅰ
燃料油脂費
69,846
Ⅱ
労務費
Ⅲ
外注運賃
97,629
Ⅳ
車両修繕費
33,959
Ⅴ
減価償却費
22,959
214,561
Ⅴ
Ⅰ 運送経費
166,033
当期運送原価
604,987
25
表−13 B社の要約貸借対照表
資産の部
(Ⅰ
流動資産)
現金及び預金
負債の部
(124,216)
103,832
(Ⅰ
流動負債)
11,637
未払金
未収金
438
未払消費税
14,180
未収運賃
その他流動資産
(Ⅱ
固定資産)
1 有形固定資産
5,248
未払費用
21,755
4,275
短期借入金
62,844
1,268
預り金
9,600
前受金
1,128
その他流動負債
1,253
(489,785)
125,262
車輌
79,811
長期借入金
381,502
構築物・機材・工具
11,080
その他固定負債
285,178
負債の部合計
830,611
土地
経
(Ⅱ
固定負債)
30,328
3 投資等
16,784
益
の
部
(Ⅰ
資本金)
(Ⅱ
法定準備金)
(Ⅲ
剰余金)
1 任意積立金
2 当期未処分利益
(うち 当期利益)
資本の部合計
614,001
負債・資本の部合計
〕
売上高
725,852
売上原価
604,987
売上総利益
販売費及び一般管理費
120,865
86,411
営業利益
34,454
(営業外損益の部)
営業外収益
7,373
営業外費用
35,778
資本の部
24
損
(営業損益の部)
(666,680)
226,520
2 無形固定資産
資産の部合計
常
442,673
建物
単位:千円
金 額
〔
(163,931)
50,466
223
短期貸付
科 目
支払手形
受取手形
表−14 B社の要約損益計算書
単位:千円
営業外損益
‐28,405
経常利益
6,049
(特別損益の部)
(18,000)
(0)
特別利益
0
特別損失
3,522
(‐234,610)
0
‐234,610
(2,527)
‐216,610
614,001
税引前当期純利益
2,527
法人税及び住民税
0
当 期 純 利 益
2,527
前 期 繰 越 利 益
‐237,137
当期未処分利益
‐234,610
表−15 B社の要約運送原価報告書
単位:千円
Ⅰ
燃料油脂費
69,846
Ⅱ
労務費
Ⅲ
外注運賃
97,629
Ⅳ
車両修繕費
33,959
Ⅴ
減価償却費
22,959
214,561
Ⅴ
Ⅰ 運送経費
166,033
当期運送原価
604,987
25
表−16 収益性の指標
1)経営業績の評価
企業の財務状況は、日常の経営活動の結果です。貸借対照表や損益計算書を中心に財務分析を正し
く行い、自社の経営の現状や経営活動の軌跡を、常に把握する必要があります。このように計数管理
A社
B社
業界平均*
に基づいて経営の問題点を特定することは、経営のあり方を是正し、改善のための対策や経営が向か
① 営業収益経常利益率(%) (経常利益÷営業収益)×100
4.1
0.8
0.9
う方向を検討するうえで必須の条件となります。ここでは、経営力を判断する最もポピュラーな経営
② 総 資 本 経 常 利 益 率(%) (経常利益÷総資本)×100
8.1
1.0
1.2
③ 総 資 本 回 転 率(回) (売上高÷総資本)
2.0
1.2
1.4
診断の手法により、A社とB社の経営計数を使って経営の実態を分析し、業績を総合的に判断します。
① 収益性をみる
●
営業収益経常利益率
営業収益経常利益率は、最もポピュラーな経営指標で、利幅の大きさを表します。
A社では4.1%と業界平均と比べて格段に高く、利幅も大きいことが示され、コストダウンの成
*
「経営分析報告書−平成14年度決算版−」
(平成16年2月・全日本トラック協会)から
(車両規模21∼50台の事業者の指標)
御社の、上記指標を算出したうえで、結果を次ページの表に書き入れて問題点を明確にし、「改善
の着眼点」をチェックして自社の改善策を検討してください。
果も現れています。B社は0.8%と業界平均とほぼ同水準ですが、荷主別に収益や経費、利幅を比
較・検討する必要があるでしょう。
●
総資本経常利益率
総資本経常利益率は、投下された総資本(負債+資本)に対して、利益がどれほど得られたか
をみる、企業の収益力を計る総合的な指標です。この比率が高いほど企業の収益性が高いことに
なります。低ければ運送原価が高いか、一般管理費の支出が多いことになります。さらに悪い原
因をさかのぼるためには営業費や営業外費用を個々に比較します。
A社は8.1%と業界平均と比べて格段に高く、収益性は申し分ありません。A社の(単独)荷主
との関係が良好で運賃水準が適正であることや、パート、アルバイトの雇用による経費削減の努
力も現れています。B社は1.0%と業界平均1.2%を下回り、収益力が弱いことを示しています、売
上額の多い荷主の運賃水準が低下しているか、経費が逆に増大している状況が想像されます。
●
総資本回転率
総資本回転率は、自社の売上が事業へ投下した総資本額の何倍を確保したか、逆にいえば、売
上高を確保するために自社の総資産がどの程度効率的に活用されたかを見るものです。この値が
高いほど資本が有効に活用されていることになります。
A社では2.0回と業界平均と比べやや高いですが、B社は1.2回と業界平均の水準を下回っていま
す。B社では、ディーゼル車排ガス規制等に対応して車両代替の費用支出が響いており、これに
対して売上が十分に確保されていないためと思われます。
26
27
表−16 収益性の指標
1)経営業績の評価
企業の財務状況は、日常の経営活動の結果です。貸借対照表や損益計算書を中心に財務分析を正し
く行い、自社の経営の現状や経営活動の軌跡を、常に把握する必要があります。このように計数管理
A社
B社
業界平均*
に基づいて経営の問題点を特定することは、経営のあり方を是正し、改善のための対策や経営が向か
① 営業収益経常利益率(%) (経常利益÷営業収益)×100
4.1
0.8
0.9
う方向を検討するうえで必須の条件となります。ここでは、経営力を判断する最もポピュラーな経営
② 総 資 本 経 常 利 益 率(%) (経常利益÷総資本)×100
8.1
1.0
1.2
③ 総 資 本 回 転 率(回) (売上高÷総資本)
2.0
1.2
1.4
診断の手法により、A社とB社の経営計数を使って経営の実態を分析し、業績を総合的に判断します。
① 収益性をみる
●
営業収益経常利益率
営業収益経常利益率は、最もポピュラーな経営指標で、利幅の大きさを表します。
A社では4.1%と業界平均と比べて格段に高く、利幅も大きいことが示され、コストダウンの成
*
「経営分析報告書−平成14年度決算版−」
(平成16年2月・全日本トラック協会)から
(車両規模21∼50台の事業者の指標)
御社の、上記指標を算出したうえで、結果を次ページの表に書き入れて問題点を明確にし、「改善
の着眼点」をチェックして自社の改善策を検討してください。
果も現れています。B社は0.8%と業界平均とほぼ同水準ですが、荷主別に収益や経費、利幅を比
較・検討する必要があるでしょう。
●
総資本経常利益率
総資本経常利益率は、投下された総資本(負債+資本)に対して、利益がどれほど得られたか
をみる、企業の収益力を計る総合的な指標です。この比率が高いほど企業の収益性が高いことに
なります。低ければ運送原価が高いか、一般管理費の支出が多いことになります。さらに悪い原
因をさかのぼるためには営業費や営業外費用を個々に比較します。
A社は8.1%と業界平均と比べて格段に高く、収益性は申し分ありません。A社の(単独)荷主
との関係が良好で運賃水準が適正であることや、パート、アルバイトの雇用による経費削減の努
力も現れています。B社は1.0%と業界平均1.2%を下回り、収益力が弱いことを示しています、売
上額の多い荷主の運賃水準が低下しているか、経費が逆に増大している状況が想像されます。
●
総資本回転率
総資本回転率は、自社の売上が事業へ投下した総資本額の何倍を確保したか、逆にいえば、売
上高を確保するために自社の総資産がどの程度効率的に活用されたかを見るものです。この値が
高いほど資本が有効に活用されていることになります。
A社では2.0回と業界平均と比べやや高いですが、B社は1.2回と業界平均の水準を下回っていま
す。B社では、ディーゼル車排ガス規制等に対応して車両代替の費用支出が響いており、これに
対して売上が十分に確保されていないためと思われます。
26
27
中・長期的観点からみた計画目標設定
収益性の状況
(今年度)
■ 利 幅(A)
(前年度)
(今年度)
上 昇
横 這
%で 傾向にある。
下 降
営業収益経常利益率は % →
(目 標)
■ 営業収益経常利益率は % →
% 以上
■ 総 資 本 経 常 利 益 率 は % →
% 以上
■ 総 資 本 回 転 率 は 回 →
回 以上
☆上昇、下降の判断の目安は±2%程度
高 い
同レベル
(保有車両規模別の)業界平均 %に比較して 。
低 い
改善の着眼点(改善の必要な項目に )
(1)営業収入増進
■ 総合的収益力(B)
(前年度)
1.顧客管理の徹底
(今年度)
上 昇
横 這
%で 傾向にある。
下 降
総資本経常利益率は % →
会社の
総合的な収益性を高めるには
☆上昇、下降の判断の目安は±3%程度
2.荷主構成の見直し
3.地区別販売策の強化
4.営業部門・営業活動の強化
高 い
同レベル
(保有車両規模別の)業界平均 %と比較して 。
低 い
5.運輸・倉庫機能の連携強化
改 善 案
■ 営業収入増大策
6.車両構成の適正化
7.兼業部門の拡充
8.運送の品質管理(TQC)
(2)荷主取引改善
■ 資本効率(C)
(前年度)
(今年度)
総資本回転率は 回 →
上 昇
横 這
回で 傾向にある。
下 降
☆上昇、下降の判断の目安は±0.5%程度
1.価格見積方法の改定
2.特定荷主依存度の見直し
3.決済条件の見直し
■ 売上利益率改善策
4.適正運賃の収受
(3)荷主開拓
高 い
同レベル
(保有車両規模別の)業界平均 回に比較して 。
低 い
1.市場調査の実施とデータ活用
2.物流サービス機能の強化
3.流通加工等新サービスの提供
4.荷主運送システムへの対応強化
5.物流拠点(デポ)づくり
収益性に関し日頃問題だと意識している事項
■ 資産活用策
(4)経営資源
1.売上代金の回収管理
2.車両運行効率の向上
3.労働条件の改善による定着率の向上
4.車両・設備投資の採算管理の徹底
5.遊休資産の活用
28
29
中・長期的観点からみた計画目標設定
収益性の状況
(今年度)
■ 利 幅(A)
(前年度)
(今年度)
上 昇
横 這
%で 傾向にある。
下 降
営業収益経常利益率は % →
(目 標)
■ 営業収益経常利益率は % →
% 以上
■ 総 資 本 経 常 利 益 率 は % →
% 以上
■ 総 資 本 回 転 率 は 回 →
回 以上
☆上昇、下降の判断の目安は±2%程度
高 い
同レベル
(保有車両規模別の)業界平均 %に比較して 。
低 い
改善の着眼点(改善の必要な項目に )
(1)営業収入増進
■ 総合的収益力(B)
(前年度)
1.顧客管理の徹底
(今年度)
上 昇
横 這
%で 傾向にある。
下 降
総資本経常利益率は % →
会社の
総合的な収益性を高めるには
☆上昇、下降の判断の目安は±3%程度
2.荷主構成の見直し
3.地区別販売策の強化
4.営業部門・営業活動の強化
高 い
同レベル
(保有車両規模別の)業界平均 %と比較して 。
低 い
5.運輸・倉庫機能の連携強化
改 善 案
■ 営業収入増大策
6.車両構成の適正化
7.兼業部門の拡充
8.運送の品質管理(TQC)
(2)荷主取引改善
■ 資本効率(C)
(前年度)
(今年度)
総資本回転率は 回 →
上 昇
横 這
回で 傾向にある。
下 降
☆上昇、下降の判断の目安は±0.5%程度
1.価格見積方法の改定
2.特定荷主依存度の見直し
3.決済条件の見直し
■ 売上利益率改善策
4.適正運賃の収受
(3)荷主開拓
高 い
同レベル
(保有車両規模別の)業界平均 回に比較して 。
低 い
1.市場調査の実施とデータ活用
2.物流サービス機能の強化
3.流通加工等新サービスの提供
4.荷主運送システムへの対応強化
5.物流拠点(デポ)づくり
収益性に関し日頃問題だと意識している事項
■ 資産活用策
(4)経営資源
1.売上代金の回収管理
2.車両運行効率の向上
3.労働条件の改善による定着率の向上
4.車両・設備投資の採算管理の徹底
5.遊休資産の活用
28
29
② 輸送効率をみる
表−17 輸送効率の指標
財務分析から少し離れますが、輸送効率の指標も間接的に自社の経営の現状や問題点をつかむのに
A社
重要です。生産性の指標と輸送効率の指標とをつきあわせることによって、生産性の悪い資本の効率
や人的効率など、どこに問題があるのかを特定できます。
① キロ当たり
営業収益(円)
●
キロ当たり営業収益
キロ当たり営業収益は、走行距離1km当たりの営業収益、つまり走行距離当たりの効率を金額
で示すものです。
A社は256円と業界平均を大幅に上回っています。構内作業による収入が高いのはもちろんです
当該事業営業収益÷総走行キロ
B社
業界平均*
256
202
182
② 実働率(%)
(延実働車両数÷延実在車両数)×100
82.2
84.7
67.2
③ 実車率(%)
(実車キロ÷総走行キロ)×100
70.0
86.3
68.5
実車キロ÷延実働車両数
131.2
179.0
157.0
当該事業営業損益÷延実働車両数
1,509
1,990
110
④ 日車当たり
実車キロ(km)
が、新聞輸送では「社会の公器」という性格上、運賃は安定的な水準にあるようです。B社も202
円と業界平均と比べて高く、事業所の立地を活かして比較的輸送距離が短い輸送を数多く受託し
ているようすがうかがえます。
⑤ 日車当たり
営業損益(円)
*
「経営分析報告書−平成14年度決算版−」
(平成16年2月・全日本トラック協会)から
●
実働率
実働率は、年間日数に占める保有車両の実働日数の割合を示します。
(車両規模21∼50台の事業者の指標)
注;
A社は82.2%、B社は84.7%と業界平均とくらべて各段に高い水準です。A社は新聞輸送という
定型化された輸送であること、B社の場合は、収益の低迷を配車の効率化でしのいでいると思わ
れます。実働率でいえばA社・B両社ともほぼ限界といえるのではないでしょうか。
◆ 輸送効率について
走行距離は運行三費(燃料油脂費、タイヤ・チューブ費、修繕費)を主とする変動費と相関し
ます(走行距離が増えれば変動費も増え、走行距離が減れば変動費も減る)から、走行距離が増
減してもキロ当りの変動費は一定しています。ですから、キロ当たり営業収益が高い方が採算的
●
●
実車率
に有利であることになります。しかし、変動費の総輸送原価に占める割合は2割前後に過ぎず、
実車率は、一日の走行キロに占める実車キロの割合です。
距離の採算効率が高くても直ちに生産性には反映しません。残りは人件費や車両費などの固定費
A社は70.0%、B社は86.3%とこれも業界平均とくらべて高い水準です。これも上記と同じ理由
であり、距離の効率よりも「時間」当りの効率に相関します。時間効率を示す指標としては、実
によると考えられますが、B社の実車率の高さが注目されます。配車や積み合わせの効率のノウ
働率、実車率、日車当り実車キロ、日車当り営業損益があり、キロ当たり営業収益が低くても、
ハウが定着してきているとみるべきでしょうか。
これらの値が高ければ車両稼動の時間効率が良いことになるわけです。
日車当たり実車キロ
2)財務の健全性・安全性の評価
日車当たり実車キロは、一日の車両一両当たりの実車キロです。距離制運賃であれば、長いほ
ど売上げが伸びることになります。業界平均と比べ、A社はやや短く、B社は長くなっています。
① 財務の健全性をみる
貸借対照表は、企業における決算時点での財務状況の安全性を表しているといわれます。これを一
目で見られるようにするため、自社の貸借対照表を使って次ページに示すような「百分比の貸借対照
●
日車当たり営業損益
日車当たり営業損益は、一日の車両一両当たりの営業損益、つまり日車当たりの時間効率を金
額で示すものです。A社、B社とも業界平均に比べ、高い水準にあります。
表」を作成してみましょう。
作り方は、貸借対照表の左側の総資産を100%として、資産および負債、資本のそれぞれの科目に
ついて百分比を求めます。
それぞれの構成比を見ることによって、自社の経営の健全性が保たれているかを自己診断をするこ
とができます。
30
31
② 輸送効率をみる
表−17 輸送効率の指標
財務分析から少し離れますが、輸送効率の指標も間接的に自社の経営の現状や問題点をつかむのに
A社
重要です。生産性の指標と輸送効率の指標とをつきあわせることによって、生産性の悪い資本の効率
や人的効率など、どこに問題があるのかを特定できます。
① キロ当たり
営業収益(円)
●
キロ当たり営業収益
キロ当たり営業収益は、走行距離1km当たりの営業収益、つまり走行距離当たりの効率を金額
で示すものです。
A社は256円と業界平均を大幅に上回っています。構内作業による収入が高いのはもちろんです
当該事業営業収益÷総走行キロ
B社
業界平均*
256
202
182
② 実働率(%)
(延実働車両数÷延実在車両数)×100
82.2
84.7
67.2
③ 実車率(%)
(実車キロ÷総走行キロ)×100
70.0
86.3
68.5
実車キロ÷延実働車両数
131.2
179.0
157.0
当該事業営業損益÷延実働車両数
1,509
1,990
110
④ 日車当たり
実車キロ(km)
が、新聞輸送では「社会の公器」という性格上、運賃は安定的な水準にあるようです。B社も202
円と業界平均と比べて高く、事業所の立地を活かして比較的輸送距離が短い輸送を数多く受託し
ているようすがうかがえます。
⑤ 日車当たり
営業損益(円)
*
「経営分析報告書−平成14年度決算版−」
(平成16年2月・全日本トラック協会)から
●
実働率
実働率は、年間日数に占める保有車両の実働日数の割合を示します。
(車両規模21∼50台の事業者の指標)
注;
A社は82.2%、B社は84.7%と業界平均とくらべて各段に高い水準です。A社は新聞輸送という
定型化された輸送であること、B社の場合は、収益の低迷を配車の効率化でしのいでいると思わ
れます。実働率でいえばA社・B両社ともほぼ限界といえるのではないでしょうか。
◆ 輸送効率について
走行距離は運行三費(燃料油脂費、タイヤ・チューブ費、修繕費)を主とする変動費と相関し
ます(走行距離が増えれば変動費も増え、走行距離が減れば変動費も減る)から、走行距離が増
減してもキロ当りの変動費は一定しています。ですから、キロ当たり営業収益が高い方が採算的
●
●
実車率
に有利であることになります。しかし、変動費の総輸送原価に占める割合は2割前後に過ぎず、
実車率は、一日の走行キロに占める実車キロの割合です。
距離の採算効率が高くても直ちに生産性には反映しません。残りは人件費や車両費などの固定費
A社は70.0%、B社は86.3%とこれも業界平均とくらべて高い水準です。これも上記と同じ理由
であり、距離の効率よりも「時間」当りの効率に相関します。時間効率を示す指標としては、実
によると考えられますが、B社の実車率の高さが注目されます。配車や積み合わせの効率のノウ
働率、実車率、日車当り実車キロ、日車当り営業損益があり、キロ当たり営業収益が低くても、
ハウが定着してきているとみるべきでしょうか。
これらの値が高ければ車両稼動の時間効率が良いことになるわけです。
日車当たり実車キロ
2)財務の健全性・安全性の評価
日車当たり実車キロは、一日の車両一両当たりの実車キロです。距離制運賃であれば、長いほ
ど売上げが伸びることになります。業界平均と比べ、A社はやや短く、B社は長くなっています。
① 財務の健全性をみる
貸借対照表は、企業における決算時点での財務状況の安全性を表しているといわれます。これを一
目で見られるようにするため、自社の貸借対照表を使って次ページに示すような「百分比の貸借対照
●
日車当たり営業損益
日車当たり営業損益は、一日の車両一両当たりの営業損益、つまり日車当たりの時間効率を金
額で示すものです。A社、B社とも業界平均に比べ、高い水準にあります。
表」を作成してみましょう。
作り方は、貸借対照表の左側の総資産を100%として、資産および負債、資本のそれぞれの科目に
ついて百分比を求めます。
それぞれの構成比を見ることによって、自社の経営の健全性が保たれているかを自己診断をするこ
とができます。
30
31
表−18 百分比貸借対照表
② 経営分析による財務の安全性の診断
経営力分析のしめくくりは、事業経営の財務バランスの検討です。安全性の指標としては、短期の
100(%)
支払い能力をみる流動比率と当座比率、長期の財務体質をみる自己資本比率があります。
現金預金等15.2%
90
流
動
資
産
44.1
%
80
70
60
50
流
動
負
債
35.5
%
売掛債権22.4%
その他流動資産等6.5%
40
流動比率
流動比率は、短期(1年以内)の借入金と、これを返済するのに必要な財源を比較する指標で、
この比率が大きいほど返済能力があり、経営の健全性が保たれていることになります。企業の信
用度を示す基本的な指標です。
●
当座比率
流動資産のうち、さらに流動性の強い現金や短期貸付などと流動負債の割合を見ようとするも
固
定
負
債
41.4
%
固
定
資
産
55.8
%
30
●
短期借入金10.3%
負
債
76.9
%
資
産
100
%
支払債務等25.2%
のです。
長期借入金35.8%
●
事業に投下している総資本(負債+資本)のうち、どれ程を株主の持分である自己資本(返済
有形固定資産47.4%
その他固定負債5.6%
資本金4.8%
20
10
無形固定資産・投資8.4%
0
資
本
23.1
%
自己資本比率
の必要がない資金)で調達しているかを表す比率。
50%以上が安全で良好な財務体質といわれますが、30%∼40%が全中小企業の平均です。10%
を下回ると、銀行や債権者から倒産の危険性を指摘されますので、注意が必要です。
余剰金18.3%
表−19 財務の安全性の指標
繰延資産0.1%
A社
* TKC経営指標(H13年指標版・TKC全国会発行)より作成
表中の%数値は一般貨物自動車運送業黒字企業2,102社平均
「百分比貸借対照表」を使って自社の安全性を確認してみましょう
自己資本とは
会社の正味価値を表す
安全性のバロメーター
・株主が出資してくれた資本
・その資本を運用して、あげた利益
B社
業界平均*
① 流 動 比 率(%)
( 流 動 資 産 ÷ 流 動 負 債 )× 100
159.5
75.8
115.2
② 当 座 比 率(%)
( 当 座 資 産 ÷ 流 動 負 債 )× 100
114.9
72.0
108.0
③ 自己資本比率(%)
( 自 己 資 本 ÷ 総 資 本 )× 100
44.6
‐35.3(注)
3.5
※1 「経営分析報告書−平成14年度決算版−」
(平成16年2月・全日本トラック協会)から
(車両規模21∼50台の事業者の指標)
※2 ②の当座比率については、TKC経営指標(H13年指標版・TKC全国会発行)から
バランスシート(B/S)
負債合計
負債合計
資産合計
自己資本比率
目標50%以上
安 全
32
資産合計
資産合計
10%超
30%以下
注 意
負債合計
10%以下
危 険
上記の指標を算出したうえで、結果を次ページの表に書き入れて自社の問題点を明確にし、「改善
の着眼点」をチェックして自社の改善策を検討してください。
注)貸借対照表の資本の額がマイナスになっており、債務の額が資産の額を上回る“債務超過”の状態です。
33
表−18 百分比貸借対照表
② 経営分析による財務の安全性の診断
経営力分析のしめくくりは、事業経営の財務バランスの検討です。安全性の指標としては、短期の
100(%)
支払い能力をみる流動比率と当座比率、長期の財務体質をみる自己資本比率があります。
現金預金等15.2%
90
流
動
資
産
44.1
%
80
70
60
50
流
動
負
債
35.5
%
売掛債権22.4%
その他流動資産等6.5%
40
流動比率
流動比率は、短期(1年以内)の借入金と、これを返済するのに必要な財源を比較する指標で、
この比率が大きいほど返済能力があり、経営の健全性が保たれていることになります。企業の信
用度を示す基本的な指標です。
●
当座比率
流動資産のうち、さらに流動性の強い現金や短期貸付などと流動負債の割合を見ようとするも
固
定
負
債
41.4
%
固
定
資
産
55.8
%
30
●
短期借入金10.3%
負
債
76.9
%
資
産
100
%
支払債務等25.2%
のです。
長期借入金35.8%
●
事業に投下している総資本(負債+資本)のうち、どれ程を株主の持分である自己資本(返済
有形固定資産47.4%
その他固定負債5.6%
資本金4.8%
20
10
無形固定資産・投資8.4%
0
資
本
23.1
%
自己資本比率
の必要がない資金)で調達しているかを表す比率。
50%以上が安全で良好な財務体質といわれますが、30%∼40%が全中小企業の平均です。10%
を下回ると、銀行や債権者から倒産の危険性を指摘されますので、注意が必要です。
余剰金18.3%
表−19 財務の安全性の指標
繰延資産0.1%
A社
* TKC経営指標(H13年指標版・TKC全国会発行)より作成
表中の%数値は一般貨物自動車運送業黒字企業2,102社平均
「百分比貸借対照表」を使って自社の安全性を確認してみましょう
自己資本とは
会社の正味価値を表す
安全性のバロメーター
・株主が出資してくれた資本
・その資本を運用して、あげた利益
B社
業界平均*
① 流 動 比 率(%)
( 流 動 資 産 ÷ 流 動 負 債 )× 100
159.5
75.8
115.2
② 当 座 比 率(%)
( 当 座 資 産 ÷ 流 動 負 債 )× 100
114.9
72.0
108.0
③ 自己資本比率(%)
( 自 己 資 本 ÷ 総 資 本 )× 100
44.6
‐35.3(注)
3.5
※1 「経営分析報告書−平成14年度決算版−」
(平成16年2月・全日本トラック協会)から
(車両規模21∼50台の事業者の指標)
※2 ②の当座比率については、TKC経営指標(H13年指標版・TKC全国会発行)から
バランスシート(B/S)
負債合計
負債合計
資産合計
自己資本比率
目標50%以上
安 全
32
資産合計
資産合計
10%超
30%以下
注 意
負債合計
10%以下
危 険
上記の指標を算出したうえで、結果を次ページの表に書き入れて自社の問題点を明確にし、「改善
の着眼点」をチェックして自社の改善策を検討してください。
注)貸借対照表の資本の額がマイナスになっており、債務の額が資産の額を上回る“債務超過”の状態です。
33
中・長期的観点からみた計画目標設定
安全性の状況
(今年度)
■ 支払能力(D)
(前年度)
(今年度)
流動比率は % →
上 昇
横 這
%で 傾向にある。
下 降
☆上昇、下降の判断の目安は±10%程度
(目 標)
■ 流 動 比 率 は % →
% 以上
■ 当 座 比 率 は % →
% 以上
■ 自 己 資 本 比 率 は % →
% 以上
高 い
同レベル
(流動比率の)業界平均 %と比較して 。
低 い
改善の着眼点(改善の必要な項目に )
(1)現金・預金管理
■ 資金繰り(E)
(前年度)
(今年度)
当座比率は % →
上 昇
横 這
%で 傾向にある。
下 降
会社の
支払能力を向上させるには
1.入金・出金管理の徹底
2.資金繰りを綿密に管理
改 善 案
3.キャッシュフローの掌握
☆上昇、下降の判断の目安は±10%程度
■ 借入対策
高 い
同レベル
(当座比率の)業界平均 %に比較して 。
低 い
(2)売掛金の管理
1.取引先の信用調査、与信限度の見直し
例)・銀行別借入額や借入れ条件を見直し、
政府系金融機関の活用を図る。
2.現金回収率の向上
3.受取手形サイト等の回収条件の見直し
■ 長期財務体質(F)
(前年度)
(今年度)
自己資本比率は % →
上 昇
横 這
%で 傾向にある。
下 降
☆上昇、下降の判断の目安は±5%程度
4.不良債権、情報収集体制の整備
(3)買掛金の管理
1.仕入先の見直し
高 い
同レベル
(自己資本比率の)業界平均 %に比較して 。
低 い
2.支払条件の見直し
■ 支払対策
(4)短期借入金対策
1.銀行別借入額、借入れ条件見直し
2.政府系金融機関の活用
資金繰りに関し日頃問題だと意識している事項
3.資金の使途の見直し
4.長期借入金への移行
5.返済の促進
6.担保提供の見直し
7.貸し渋り対策
34
35
中・長期的観点からみた計画目標設定
安全性の状況
(今年度)
■ 支払能力(D)
(前年度)
(今年度)
流動比率は % →
上 昇
横 這
%で 傾向にある。
下 降
☆上昇、下降の判断の目安は±10%程度
(目 標)
■ 流 動 比 率 は % →
% 以上
■ 当 座 比 率 は % →
% 以上
■ 自 己 資 本 比 率 は % →
% 以上
高 い
同レベル
(流動比率の)業界平均 %と比較して 。
低 い
改善の着眼点(改善の必要な項目に )
(1)現金・預金管理
■ 資金繰り(E)
(前年度)
(今年度)
当座比率は % →
上 昇
横 這
%で 傾向にある。
下 降
会社の
支払能力を向上させるには
1.入金・出金管理の徹底
2.資金繰りを綿密に管理
改 善 案
3.キャッシュフローの掌握
☆上昇、下降の判断の目安は±10%程度
■ 借入対策
高 い
同レベル
(当座比率の)業界平均 %に比較して 。
低 い
(2)売掛金の管理
1.取引先の信用調査、与信限度の見直し
例)・銀行別借入額や借入れ条件を見直し、
政府系金融機関の活用を図る。
2.現金回収率の向上
3.受取手形サイト等の回収条件の見直し
■ 長期財務体質(F)
(前年度)
(今年度)
自己資本比率は % →
上 昇
横 這
%で 傾向にある。
下 降
☆上昇、下降の判断の目安は±5%程度
4.不良債権、情報収集体制の整備
(3)買掛金の管理
1.仕入先の見直し
高 い
同レベル
(自己資本比率の)業界平均 %に比較して 。
低 い
2.支払条件の見直し
■ 支払対策
(4)短期借入金対策
1.銀行別借入額、借入れ条件見直し
2.政府系金融機関の活用
資金繰りに関し日頃問題だと意識している事項
3.資金の使途の見直し
4.長期借入金への移行
5.返済の促進
6.担保提供の見直し
7.貸し渋り対策
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(3)取り組むべき課題と経営ビジョンの方向
◆ ここ数年売上にも陰り、単独荷主で大丈夫か?
・新聞業界は、コンピュータの活用で情報処理や印刷工程の地域細分化に伴って、物流拠点の分散化
● A社の場合
問題点の整理
◆「新聞輸送」という安定市場
・一般に新聞輸送は、荷主が「社会の公器」として民間資本でも公的な性格が強い事業であり、無理
な運賃低減や人員削減・労働強化をしないため、荷主としては安定的な取引相手といわれてきまし
た。
・それは、新聞輸送の市場が系列や受託各社の地域割、業務範囲などについて「棲み分け」が比較的
はっきりしていて、輸送ネットワークも配布地域に従って新聞社自身がコントロールするなど市場
競争が働きにくい構造にあるためと、これまではいわれてきました。
◆ 構内作業を独占的に受託し、高い収益力
が進んでいますが、A社はこれまでパート労働の活用で労働力と人件費の調整を図って、変化に対
応できる事業経営を行ってきました。
・A社の経営状況は、上記のように良好な状況にあるといえますが、これは主荷主(売上の約8割を
占める)の業績の向上にあわせて、とくに付加価値の源泉である構内作業に注力し、効率化努力を
図ってきた結果です。
・しかし、30年以上維持してきた売上もここ数年伸び悩みがみられます。また、新聞媒体の多様化や
荷主の物流合理化努力によって、構内作業も様変わりしており、上記のようにそうした変化に対応
して、適宜、仕事と成果の適正配分をすることは極めて難しいことのようです。
・問題点を指摘するとすれば、主荷主への依存度があまりにも高く、上記のように売上や労働分配の
問題でリスクがあることが指摘できます。このリスクが年々高まっていることは経営者自身も理解
するところであり、この問題処理の方向を決定しない限りは、将来への事業経営の展望や今後の事
業展開の方向は見えてきません。
・前記のように、財務諸表からA社の財務状況を分析すると、総資本経常利益率は8.1%と業界平均
(車両規模21∼50両)1.2%に比べて各段に高く、A社の総合的な収益性はかなり高いといえます。
・総資本回転率(営業収益を総資本で割った数字。資本の運用効率を総合的に示す)については、A
取り組むべき課題
社の場合2.0回で、業界平均の1.4回と比較すると資本の有効活用にもとくに問題はありません。
・これらの収益性の高さは、特定の荷主から受託した業務の範囲内で、しかも輸送に伴う荷主物流施
● 従業員の業績評価・成果配分のしくみの見直しを
設内の構内作業にのみこだわり、効率化や省力化を図ってきた結果といえます。
◆ 経営への参加意識の形成
◆ 正社員とパート・アルバイトとの仕事・報酬の配分にアンバランス
・A社の事業経営の特長は、前述のように、「輸送」そのものでは付加価値を生み出しにくいところ
を、長年にわたって練り上げてきた熟達した構内作業を受託し、時代の流れに応じてできるだけの
効率化を図ったことにあるといえます。労務比率は比較的高いです(63%以上)が、百貨店配送の
場合は62∼63%程度であることを考慮するととくには問題ではないでしょう。
・A社の場合、構内作業の収益性が高いにもかかわらず、必要な労働力の多くにパート労働を活用す
・A社は、経営目標として「計画的な作業管理と実質賃金の確立」を掲げていますが、その意味は、
単価の高い業務を高賃金の従業員が独占してしまうことによる生産性の低下を是正することにあ
り、A社が取り組むべき課題は、仕事の配分と給与・賃金体系の見直しにあります。
・それは、給与の源泉を利益に求めて、配分の根拠を年齢や勤続に置かず、成果の実績に求める成
果=配分のルールに転換することです。
・個人の業績のみで利益を配分することは、しばしば従業員に「自分さえよければ」という意識が働
ることで、人件費の膨張を抑えています。しかし、正社員の仕事とパート、アルバイトに割り振る
く余地を与えることになりかねません。
(「会社が赤字でも自分は関係ない」と考えることにも)
仕事の難度とその配分にアンバランスがあることも指摘できそうです。A社の事情に即していえば、
・これを防ぐには、従業員の会社に対する帰属意識を維持し、全員に「経営に参画する」という意識
他社の追随を許さない熟達した構内作業のしくみをつくり上げても、その成果は属人的なところに
の形成が不可欠であり、なによりまず、従業員に会社の業務内容をしっかり把握してもらう必要が
止まり、作業標準化など将来の効率化への取り組みがなされていないことが想像されます。
あります。
・ただ、財務の安全性については、流動比率は159%を超えて流動負債の支払い能力においても望ま
しい水準を保っており、安全性の他の指標も同様に特に問題はありません。
・しかし、その対象が作業内容の多様な「構内作業」であり、どのような作業プロセスをベースとし
て成果配分のルールをつくるかという難問が待ち受けています。
・荷主の構内作業は年々機械化が図られており、その中でさらに自社へのアウトソーシングを荷主に
促していくためには、細かな所への気配りや丁寧さなど「品質」で存在を主張していくしかありま
せん。現場では従業員の判断にすべてが委ねられるため、仕事の進め方は従業員の裁量に委ねられ
ることも客観評価を難しくしています。
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(3)取り組むべき課題と経営ビジョンの方向
◆ ここ数年売上にも陰り、単独荷主で大丈夫か?
・新聞業界は、コンピュータの活用で情報処理や印刷工程の地域細分化に伴って、物流拠点の分散化
● A社の場合
問題点の整理
◆「新聞輸送」という安定市場
・一般に新聞輸送は、荷主が「社会の公器」として民間資本でも公的な性格が強い事業であり、無理
な運賃低減や人員削減・労働強化をしないため、荷主としては安定的な取引相手といわれてきまし
た。
・それは、新聞輸送の市場が系列や受託各社の地域割、業務範囲などについて「棲み分け」が比較的
はっきりしていて、輸送ネットワークも配布地域に従って新聞社自身がコントロールするなど市場
競争が働きにくい構造にあるためと、これまではいわれてきました。
◆ 構内作業を独占的に受託し、高い収益力
が進んでいますが、A社はこれまでパート労働の活用で労働力と人件費の調整を図って、変化に対
応できる事業経営を行ってきました。
・A社の経営状況は、上記のように良好な状況にあるといえますが、これは主荷主(売上の約8割を
占める)の業績の向上にあわせて、とくに付加価値の源泉である構内作業に注力し、効率化努力を
図ってきた結果です。
・しかし、30年以上維持してきた売上もここ数年伸び悩みがみられます。また、新聞媒体の多様化や
荷主の物流合理化努力によって、構内作業も様変わりしており、上記のようにそうした変化に対応
して、適宜、仕事と成果の適正配分をすることは極めて難しいことのようです。
・問題点を指摘するとすれば、主荷主への依存度があまりにも高く、上記のように売上や労働分配の
問題でリスクがあることが指摘できます。このリスクが年々高まっていることは経営者自身も理解
するところであり、この問題処理の方向を決定しない限りは、将来への事業経営の展望や今後の事
業展開の方向は見えてきません。
・前記のように、財務諸表からA社の財務状況を分析すると、総資本経常利益率は8.1%と業界平均
(車両規模21∼50両)1.2%に比べて各段に高く、A社の総合的な収益性はかなり高いといえます。
・総資本回転率(営業収益を総資本で割った数字。資本の運用効率を総合的に示す)については、A
取り組むべき課題
社の場合2.0回で、業界平均の1.4回と比較すると資本の有効活用にもとくに問題はありません。
・これらの収益性の高さは、特定の荷主から受託した業務の範囲内で、しかも輸送に伴う荷主物流施
● 従業員の業績評価・成果配分のしくみの見直しを
設内の構内作業にのみこだわり、効率化や省力化を図ってきた結果といえます。
◆ 経営への参加意識の形成
◆ 正社員とパート・アルバイトとの仕事・報酬の配分にアンバランス
・A社の事業経営の特長は、前述のように、「輸送」そのものでは付加価値を生み出しにくいところ
を、長年にわたって練り上げてきた熟達した構内作業を受託し、時代の流れに応じてできるだけの
効率化を図ったことにあるといえます。労務比率は比較的高いです(63%以上)が、百貨店配送の
場合は62∼63%程度であることを考慮するととくには問題ではないでしょう。
・A社の場合、構内作業の収益性が高いにもかかわらず、必要な労働力の多くにパート労働を活用す
・A社は、経営目標として「計画的な作業管理と実質賃金の確立」を掲げていますが、その意味は、
単価の高い業務を高賃金の従業員が独占してしまうことによる生産性の低下を是正することにあ
り、A社が取り組むべき課題は、仕事の配分と給与・賃金体系の見直しにあります。
・それは、給与の源泉を利益に求めて、配分の根拠を年齢や勤続に置かず、成果の実績に求める成
果=配分のルールに転換することです。
・個人の業績のみで利益を配分することは、しばしば従業員に「自分さえよければ」という意識が働
ることで、人件費の膨張を抑えています。しかし、正社員の仕事とパート、アルバイトに割り振る
く余地を与えることになりかねません。
(「会社が赤字でも自分は関係ない」と考えることにも)
仕事の難度とその配分にアンバランスがあることも指摘できそうです。A社の事情に即していえば、
・これを防ぐには、従業員の会社に対する帰属意識を維持し、全員に「経営に参画する」という意識
他社の追随を許さない熟達した構内作業のしくみをつくり上げても、その成果は属人的なところに
の形成が不可欠であり、なによりまず、従業員に会社の業務内容をしっかり把握してもらう必要が
止まり、作業標準化など将来の効率化への取り組みがなされていないことが想像されます。
あります。
・ただ、財務の安全性については、流動比率は159%を超えて流動負債の支払い能力においても望ま
しい水準を保っており、安全性の他の指標も同様に特に問題はありません。
・しかし、その対象が作業内容の多様な「構内作業」であり、どのような作業プロセスをベースとし
て成果配分のルールをつくるかという難問が待ち受けています。
・荷主の構内作業は年々機械化が図られており、その中でさらに自社へのアウトソーシングを荷主に
促していくためには、細かな所への気配りや丁寧さなど「品質」で存在を主張していくしかありま
せん。現場では従業員の判断にすべてが委ねられるため、仕事の進め方は従業員の裁量に委ねられ
ることも客観評価を難しくしています。
36
37
・賃金体系の変更は経営者ひとりで決めるものではありません。社内での合意形成が当然としても、
・受託業務自体にアンバランスになる要因があったとしても、行っている作業の内容を細かな単位に
年齢や勤続で決めるのではなく現場での自らの工夫が給与・賃金に反映していくしくみをつくるこ
分けて、それぞれの難易度を相対的に評価していくこと、つまり作業の標準化から始めなければな
とを第一にめざし、作業のプロセスと成果を「グループ単位」で把握していくしくみが必要となる
らないでしょう。できれば、社内のマニュアルづくりも併行して行うのが効果的です。いまの作業
のではないでしょうか。
を「目に見えるもの」「だれにも理解できるもの」にして、それを従業員と共有することをひとつ
の目標にします。
◆ 業績評価のしくみへの変更の進め方
・成果=配分のルールの確立とは、労働時間を軸にした給与システムからの脱却であり、成果の評価
・そのうえで、例えば、社内での業務トレーニング・プログラムや、新たな業績評価のしくみを、従
業員と共同で検討していく体制をつくることを次の目標とします。
を業務の効率と生産性に求めていくことです。
・賃金水準の世間相場との比較という考え方もありますが、企業が常に成長を図っていくためには、
◆ 現在のサービス分野の拡大
業務の生産性を追求しなければなりません。業務の生産性を高めるには、経営目標を立て、目標利
・安定経営を誇るA社の最大の弱点は、将来を見据えた戦略的な経営ビジョンをもたないことにあり
益を明確にする必要があります。つまり賃金を決めるには「予算」を立てることが最初の一歩なの
ます。事業の発展を志向しない企業は、いわば夢のない人生のようなものです。従業員のやる気や
です。
創意、経営への参加意識を引き出していくには、経営ビジョンが不可欠です。
・業務に係る収入と必要経費を明確にし、その上でこれらの経営数値を示してこそ、経営への「全員
参加」を求めることが可能となります。
・まず、足下にあるニーズ、つまり現荷主に対して提供しているサービスをもって、新たな荷主への
営業展開を考えることが先決でしょう。
・A社は、パート、アルバイトも経営に不可欠な戦力になっていますから、これらの人々にも経営を
・A社では常時30人以上のパート、アルバイトを雇用していますが、この労働力の集積と(蓄積され
考えてもらうことが重要です。例えば、作業内容を細分化して、その重みにより賃金を社内レート
た)人材管理のノウハウを活かせる、労働集約的な分野を、現荷主の構内業務のなかから見つけだ
へ転換し、社内で高い仕事、安い仕事のバランスをとったり、単価の高い仕事、低い仕事をグルー
して提供サービスの分野を拡大したり、あるいは、輸送力を強化して、新聞折り込み・チラシ配送
プ毎にローテーションして業績を全員で比較する方法があります。
と他の小口貨物との積合わせ輸送を行うなどの付加価値化の方向が考えられます。
・こうしたしくみで経営が行われると、日々の実績を迅速に把握しなければならなくなるため、業務
全体の効率や生産性、問題点が明らかになって、具体的な改善の方向も把握できるようになるとい
◆ リスク回避のための荷主の分散
う副次的な効果もあります。
・A社においては、売上1位荷主が9割を占めるという経営が長期にわたって定着していますが、組
織の若返りや活性化など将来を見越した事業経営にあたっては、1位荷主の寡占状態を脱却して分
散化を図り、例えば、1位荷主の売上比を相当程度まで抑えることを目標に、現在保有している資
経営ビジョンの方向
源を活用できる、他分野の荷主の開拓を進めることが、課題としてあげられます。
◆ 現業務の効率化・省力化
・トラック運送事業は、この40年間に単純な実輸送から、その業態を様々に変化させ、近年では、輸
送部門本体に比べて付帯作業などの売上高が全体の過半を占める事業者も少なくありません。A社
もそうした業態のひとつであり、パート、アルバイトの労働力を積極的に活用し、人件費を抑えて
高い収益性を維持してきました。しかしながら荷主から受託する業務の内容が多様化するにつれ、
経験・技術を持つ賃金の高い社員比率が高くなり、全体に高コスト構造が進みました。
・いまの受託業務をどのように効率化して、作業内容と報酬とをバランスさせるかが、最大の経営課
題です。
38
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・賃金体系の変更は経営者ひとりで決めるものではありません。社内での合意形成が当然としても、
・受託業務自体にアンバランスになる要因があったとしても、行っている作業の内容を細かな単位に
年齢や勤続で決めるのではなく現場での自らの工夫が給与・賃金に反映していくしくみをつくるこ
分けて、それぞれの難易度を相対的に評価していくこと、つまり作業の標準化から始めなければな
とを第一にめざし、作業のプロセスと成果を「グループ単位」で把握していくしくみが必要となる
らないでしょう。できれば、社内のマニュアルづくりも併行して行うのが効果的です。いまの作業
のではないでしょうか。
を「目に見えるもの」「だれにも理解できるもの」にして、それを従業員と共有することをひとつ
の目標にします。
◆ 業績評価のしくみへの変更の進め方
・成果=配分のルールの確立とは、労働時間を軸にした給与システムからの脱却であり、成果の評価
・そのうえで、例えば、社内での業務トレーニング・プログラムや、新たな業績評価のしくみを、従
業員と共同で検討していく体制をつくることを次の目標とします。
を業務の効率と生産性に求めていくことです。
・賃金水準の世間相場との比較という考え方もありますが、企業が常に成長を図っていくためには、
◆ 現在のサービス分野の拡大
業務の生産性を追求しなければなりません。業務の生産性を高めるには、経営目標を立て、目標利
・安定経営を誇るA社の最大の弱点は、将来を見据えた戦略的な経営ビジョンをもたないことにあり
益を明確にする必要があります。つまり賃金を決めるには「予算」を立てることが最初の一歩なの
ます。事業の発展を志向しない企業は、いわば夢のない人生のようなものです。従業員のやる気や
です。
創意、経営への参加意識を引き出していくには、経営ビジョンが不可欠です。
・業務に係る収入と必要経費を明確にし、その上でこれらの経営数値を示してこそ、経営への「全員
参加」を求めることが可能となります。
・まず、足下にあるニーズ、つまり現荷主に対して提供しているサービスをもって、新たな荷主への
営業展開を考えることが先決でしょう。
・A社は、パート、アルバイトも経営に不可欠な戦力になっていますから、これらの人々にも経営を
・A社では常時30人以上のパート、アルバイトを雇用していますが、この労働力の集積と(蓄積され
考えてもらうことが重要です。例えば、作業内容を細分化して、その重みにより賃金を社内レート
た)人材管理のノウハウを活かせる、労働集約的な分野を、現荷主の構内業務のなかから見つけだ
へ転換し、社内で高い仕事、安い仕事のバランスをとったり、単価の高い仕事、低い仕事をグルー
して提供サービスの分野を拡大したり、あるいは、輸送力を強化して、新聞折り込み・チラシ配送
プ毎にローテーションして業績を全員で比較する方法があります。
と他の小口貨物との積合わせ輸送を行うなどの付加価値化の方向が考えられます。
・こうしたしくみで経営が行われると、日々の実績を迅速に把握しなければならなくなるため、業務
全体の効率や生産性、問題点が明らかになって、具体的な改善の方向も把握できるようになるとい
◆ リスク回避のための荷主の分散
う副次的な効果もあります。
・A社においては、売上1位荷主が9割を占めるという経営が長期にわたって定着していますが、組
織の若返りや活性化など将来を見越した事業経営にあたっては、1位荷主の寡占状態を脱却して分
散化を図り、例えば、1位荷主の売上比を相当程度まで抑えることを目標に、現在保有している資
経営ビジョンの方向
源を活用できる、他分野の荷主の開拓を進めることが、課題としてあげられます。
◆ 現業務の効率化・省力化
・トラック運送事業は、この40年間に単純な実輸送から、その業態を様々に変化させ、近年では、輸
送部門本体に比べて付帯作業などの売上高が全体の過半を占める事業者も少なくありません。A社
もそうした業態のひとつであり、パート、アルバイトの労働力を積極的に活用し、人件費を抑えて
高い収益性を維持してきました。しかしながら荷主から受託する業務の内容が多様化するにつれ、
経験・技術を持つ賃金の高い社員比率が高くなり、全体に高コスト構造が進みました。
・いまの受託業務をどのように効率化して、作業内容と報酬とをバランスさせるかが、最大の経営課
題です。
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● B社の場合
問題点の整理
◆ 重厚長大産業の衰退とエネルギー需要
・B社は早くから大型・重機の長距離輸送・据え付けという専門分野に特化して、高度成長期のイン
フラ整備促進の波に乗って業績をあげてきましたが、大規模なインフラ整備が一段落、公共事業へ
の資金投入が抑制されはじめるなかで、業績が急速に悪化しています。
◆ この先数年はリストラと業態転換を進める意向
・B社の経営状況は危機的な状況にあり、経営者は人員と経費の削減および業態の転換に取り組んで
いる最中にあります。しかしながら、今のところ結果が出ているわけではなく、この改善の取り組
みが正しい方向にあるのかも判断しかねるところです。
・経済社会の変化とともにB社の専門性は薄れ、物流市場での付加価値が生み出しにくくなっている
ことは確かであり、今後事業の内容をどのような方向に転換していくのかを早急に検討しなければ
なりません。
・B社の荷主は、電気機械などの輸出の好調に支えられて業績復調の兆しが見られますが、公共工事
の抑制や国のエネルギー政策の転換に伴って、これまでの大型発電器の需要が復調するとは考えに
くい状況です。
◆ 低い収益性は土地などの経営資産が効果的に活用されていない結果
取り組むべき課題
● 土地の有効活用を
・B社の財務状況を分析すると、総資本経常利益率が1.0%で業界平均(車両規模21∼50両)1.2%さ
えも下回っており、収益性はかなり低い水準にあります。
・また、B社の営業収益経常利益率は0.8%で業界平均と同水準であり、収益における利益率も過去最
低の水準にあります。
・さらに、総資本回転率については、B社の場合1.2回と、業界平均の1.4回と比べても低く、資本の
有効活用に大きな問題があることがわかります。
・B社の収益性の低さは、土地や大型車両をはじめとした資産がほとんど有効に活用されていないこ
とを示しています。
・B社の事業経営の特長は、大型重機を「長距離」輸送し、それの据え付けを行ってきたことにあり、
そうした技術やノウハウが他社にはまねのできないB社の付加価値となってきました。
・B社の付加価値は、創業以来長年にわたって現場で練り上げ、経営ソフトとして熟達を図ってきた
結果といえますが、日本経済の構造転換が進んで、このような技術・ノウハウの需要は減退してお
◆ 倉庫など物流施設への転用
・B社は経営改善の方向として、輸送需要が漸減している重機輸送分野から徐々に撤退し、重機物流
の技術やノウハウを持つベテラン運転者の退職を勧め、地域の小口貨物の積み合わせ配送などへ転
換しています。
・B社が立地する地域は国際港湾の直背圏(港湾貨物ヤードに近接する地域)であり、輸入の急増で
倉庫需要が急速に高まりつつあります。
・現状を打開するには、こうした立地条件を有効に活かし、倉庫を建設するといった手段が考えられ
ますが、厳しい財務状況下では、さらなる投資が経営リスクを高めることも事実です。しかし、現
在の経営をそのまま続ければ、借り入れ残金さえ返せない状態にあります。
・恵まれた立地を活かし、土地などの資産を活用して現状打破を図ることが、とりあえず前向きの処
方箋といえそうです。
り、高度な技術力ではあっても、現在の輸送市場ではもはや付加価値たりえない情勢になっている
ことを示しています。
・運転者・従業員の技術力が高く、勤続年数の長いベテランが多いため、賃金水準も他者と比べて決
して低いものではありません。しかしながら、B社の技術力はこれらの社員によってもたらされて
きたものであり、将来の経営ビジョンなしに直ちに減額することはできません。
・また受託業務の内容から、パート、アルバイト雇用への転換も直ちには難しく、業務の標準化に取
り組むには機を逸したと言わざるを得ません。
・しかも、財務の安全性では、流動比率が75.8%と厳しい状況に陥っています。
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経営ビジョンの方向
◆ 財務体質の抜本的な改善
・B社の課題は、何よりその財務体質の抜本的な改善にあります。財務諸表にみられるように、B社
の事業の将来は見通しが立てづらく、明るさの見えない状況です。ともかく、必要な増資など財務
体質の抜本的な強化を早急に決断しなければ、企業の存続が図れない状況になるとも限りません。
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● B社の場合
問題点の整理
◆ 重厚長大産業の衰退とエネルギー需要
・B社は早くから大型・重機の長距離輸送・据え付けという専門分野に特化して、高度成長期のイン
フラ整備促進の波に乗って業績をあげてきましたが、大規模なインフラ整備が一段落、公共事業へ
の資金投入が抑制されはじめるなかで、業績が急速に悪化しています。
◆ この先数年はリストラと業態転換を進める意向
・B社の経営状況は危機的な状況にあり、経営者は人員と経費の削減および業態の転換に取り組んで
いる最中にあります。しかしながら、今のところ結果が出ているわけではなく、この改善の取り組
みが正しい方向にあるのかも判断しかねるところです。
・経済社会の変化とともにB社の専門性は薄れ、物流市場での付加価値が生み出しにくくなっている
ことは確かであり、今後事業の内容をどのような方向に転換していくのかを早急に検討しなければ
なりません。
・B社の荷主は、電気機械などの輸出の好調に支えられて業績復調の兆しが見られますが、公共工事
の抑制や国のエネルギー政策の転換に伴って、これまでの大型発電器の需要が復調するとは考えに
くい状況です。
◆ 低い収益性は土地などの経営資産が効果的に活用されていない結果
取り組むべき課題
● 土地の有効活用を
・B社の財務状況を分析すると、総資本経常利益率が1.0%で業界平均(車両規模21∼50両)1.2%さ
えも下回っており、収益性はかなり低い水準にあります。
・また、B社の営業収益経常利益率は0.8%で業界平均と同水準であり、収益における利益率も過去最
低の水準にあります。
・さらに、総資本回転率については、B社の場合1.2回と、業界平均の1.4回と比べても低く、資本の
有効活用に大きな問題があることがわかります。
・B社の収益性の低さは、土地や大型車両をはじめとした資産がほとんど有効に活用されていないこ
とを示しています。
・B社の事業経営の特長は、大型重機を「長距離」輸送し、それの据え付けを行ってきたことにあり、
そうした技術やノウハウが他社にはまねのできないB社の付加価値となってきました。
・B社の付加価値は、創業以来長年にわたって現場で練り上げ、経営ソフトとして熟達を図ってきた
結果といえますが、日本経済の構造転換が進んで、このような技術・ノウハウの需要は減退してお
◆ 倉庫など物流施設への転用
・B社は経営改善の方向として、輸送需要が漸減している重機輸送分野から徐々に撤退し、重機物流
の技術やノウハウを持つベテラン運転者の退職を勧め、地域の小口貨物の積み合わせ配送などへ転
換しています。
・B社が立地する地域は国際港湾の直背圏(港湾貨物ヤードに近接する地域)であり、輸入の急増で
倉庫需要が急速に高まりつつあります。
・現状を打開するには、こうした立地条件を有効に活かし、倉庫を建設するといった手段が考えられ
ますが、厳しい財務状況下では、さらなる投資が経営リスクを高めることも事実です。しかし、現
在の経営をそのまま続ければ、借り入れ残金さえ返せない状態にあります。
・恵まれた立地を活かし、土地などの資産を活用して現状打破を図ることが、とりあえず前向きの処
方箋といえそうです。
り、高度な技術力ではあっても、現在の輸送市場ではもはや付加価値たりえない情勢になっている
ことを示しています。
・運転者・従業員の技術力が高く、勤続年数の長いベテランが多いため、賃金水準も他者と比べて決
して低いものではありません。しかしながら、B社の技術力はこれらの社員によってもたらされて
きたものであり、将来の経営ビジョンなしに直ちに減額することはできません。
・また受託業務の内容から、パート、アルバイト雇用への転換も直ちには難しく、業務の標準化に取
り組むには機を逸したと言わざるを得ません。
・しかも、財務の安全性では、流動比率が75.8%と厳しい状況に陥っています。
40
経営ビジョンの方向
◆ 財務体質の抜本的な改善
・B社の課題は、何よりその財務体質の抜本的な改善にあります。財務諸表にみられるように、B社
の事業の将来は見通しが立てづらく、明るさの見えない状況です。ともかく、必要な増資など財務
体質の抜本的な強化を早急に決断しなければ、企業の存続が図れない状況になるとも限りません。
41
◆ 新たな市場への適合はまだ可能か?
(4)経営ビジョンの要件
・B社にとって不利なことは、高い付加価値の源泉であった技術・ノウハウが時代遅れになってしま
ったことです。そうした見方からすれば、B社と同じような経営に追い込まれている事業者は少な
くないでしょう。新規参入事業者の増大が言われて久しいですが、物流市場では新旧の交代はより
激しいものになりつつあります。
● 優れた経営ビジョンの条件
経営者自身が思い描く将来の自社の姿が「経営ビジョン」だとすれば、なぜそうした将来を築くこ
とに努力すべきなのか、その方向の選択がなぜ妥当なのかなどが、これまでの経営診断などを通じた
・事業継続を前提としたとき、B社が選択できる道はそれほど多くはありません。「現在のサービス
数値などを通して明らかになるものでなければなりません。もちろん、診断や評価によって解決すべ
の幅を広げていくしかない」と言うのは簡単ですが、ニーズの掘り起こしにさえ遅れがあったこと
き問題が新たに明らかになってくることでしょう。このような問題や解決すべき課題をできるだけ明
を考えると、B社の最大の問題は、なにより営業力にあるといえそうです。
確に整理し、解決に向けて社内システムを確立することが最初の一歩です。
・まだ、市場への働きかけの余地があるとすれば、多大なリスクを前提として、経営者が言うように
業態を大転換し、活用されない遊休土地をデリバリーの拠点として、地域の小口集配に挑戦するこ
とも選択のひとつでしょう。しかし、地域の貨物をいかに集めるかが小口集配事業の最大の要件で
あり、それはとりもなおさず営業力如何にかかっています。B社の改善の成果を見極めるには、ま
その意味で優れた経営ビジョンとは、
◆ 目標や方針を明確にして経営計画の意思決定を容易にするものであること
◆ 社内のすべての人材が正しい行動を取ることを促すものであること
◆ 掲げる目標に向かって迅速に効率的に人材の行動をまとめることができること
だ少し時間がかかるかもしれません。
の3つの条件を満たすものです。
また、経営ビジョンは、金融機関との融資交渉などにおいて与信判断に影響することもあり、外部
からも実現性や合理性が判断できるものでなければなりません。
(5)経営ビジョンの周知徹底
● ビジョンが示すメッセージの伝達
経営ビジョンが示す新しい方向について、人々の理解と貢献を引き出すことは簡単な作業ではあり
ません。なによりまず、ビジョンそのものが人々に正しく伝達されなければなりません。あるメッセ
ージ(ビジョン)が効果的に伝達されるには、通常以下の要件が必要といわれています。
●
だれにもわかる
専門用語、技術用語は使わないこと。
●
例えや実例をひく
目に見えるようにすること。
●
伝達の手段を活用する
社内報、全体ミーティング、専門分野の打合せ、メモの配布などあらゆる機会をとらえて
ビジョンを伝えつづけること。
●
繰り返す
何度も耳にすれば、やがてメッセージは浸透するもの。
●
経営者が規範を示す
経営者自身がビジョンを体現することで信頼を得ること。
●
意見を聞く
双方向のコミュニケーションが活発であること。
42
43
◆ 新たな市場への適合はまだ可能か?
(4)経営ビジョンの要件
・B社にとって不利なことは、高い付加価値の源泉であった技術・ノウハウが時代遅れになってしま
ったことです。そうした見方からすれば、B社と同じような経営に追い込まれている事業者は少な
くないでしょう。新規参入事業者の増大が言われて久しいですが、物流市場では新旧の交代はより
激しいものになりつつあります。
● 優れた経営ビジョンの条件
経営者自身が思い描く将来の自社の姿が「経営ビジョン」だとすれば、なぜそうした将来を築くこ
とに努力すべきなのか、その方向の選択がなぜ妥当なのかなどが、これまでの経営診断などを通じた
・事業継続を前提としたとき、B社が選択できる道はそれほど多くはありません。「現在のサービス
数値などを通して明らかになるものでなければなりません。もちろん、診断や評価によって解決すべ
の幅を広げていくしかない」と言うのは簡単ですが、ニーズの掘り起こしにさえ遅れがあったこと
き問題が新たに明らかになってくることでしょう。このような問題や解決すべき課題をできるだけ明
を考えると、B社の最大の問題は、なにより営業力にあるといえそうです。
確に整理し、解決に向けて社内システムを確立することが最初の一歩です。
・まだ、市場への働きかけの余地があるとすれば、多大なリスクを前提として、経営者が言うように
業態を大転換し、活用されない遊休土地をデリバリーの拠点として、地域の小口集配に挑戦するこ
とも選択のひとつでしょう。しかし、地域の貨物をいかに集めるかが小口集配事業の最大の要件で
あり、それはとりもなおさず営業力如何にかかっています。B社の改善の成果を見極めるには、ま
その意味で優れた経営ビジョンとは、
◆ 目標や方針を明確にして経営計画の意思決定を容易にするものであること
◆ 社内のすべての人材が正しい行動を取ることを促すものであること
◆ 掲げる目標に向かって迅速に効率的に人材の行動をまとめることができること
だ少し時間がかかるかもしれません。
の3つの条件を満たすものです。
また、経営ビジョンは、金融機関との融資交渉などにおいて与信判断に影響することもあり、外部
からも実現性や合理性が判断できるものでなければなりません。
(5)経営ビジョンの周知徹底
● ビジョンが示すメッセージの伝達
経営ビジョンが示す新しい方向について、人々の理解と貢献を引き出すことは簡単な作業ではあり
ません。なによりまず、ビジョンそのものが人々に正しく伝達されなければなりません。あるメッセ
ージ(ビジョン)が効果的に伝達されるには、通常以下の要件が必要といわれています。
●
だれにもわかる
専門用語、技術用語は使わないこと。
●
例えや実例をひく
目に見えるようにすること。
●
伝達の手段を活用する
社内報、全体ミーティング、専門分野の打合せ、メモの配布などあらゆる機会をとらえて
ビジョンを伝えつづけること。
●
繰り返す
何度も耳にすれば、やがてメッセージは浸透するもの。
●
経営者が規範を示す
経営者自身がビジョンを体現することで信頼を得ること。
●
意見を聞く
双方向のコミュニケーションが活発であること。
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● 従業員の自発性を促す
4.利益計画をたてる
義務やノルマから創造的な活動や喜びは決して生まれません。その意味で、経営ビジョンの最も大
きな使命は、それによって従業員の改革意識を刺激し、自発的な改善を促すことにあるといえます。
(1)利益管理の重要性(キャッシュフローによる利益管理)
自発性を引き出していくには最低でも以下に考慮する必要があるでしょう。
● 経営理念の役割と要件
●
納得してもらえる従業員から
ビジョンの目的意識を共有できる従業員から始める。
企業の資本の運用は、正常な現金の動き(キャッシュフロー)を前提とした、適切な資金の保有
(ストック)によって行われます。それは、以下①∼④の事業活動を継続・反復して運用成果を得て
いくことを通じて実現されます(図−5)
。
●
組織の改編
人材をビジョンに適合させていくため、会社の組織構造を変革する。
●
トレーニング機会の提供
自発性を引き出すには、適切な能力やマナーを身に付けることが不可欠である。
●
人事やシステムの変更
ビジョンに適合しない社内のシステムは適宜変えていく。
① 現金が支払いによって車両などの資産や燃料などの資材に転換される
↓
② (①が)荷主の貨物の輸送などを経てサービス資産に転換される
↓
③ (②が)売上となって売り掛け資産に変わる
↓
●
経営トップのリーダーシップ発揮
経営トップ自らが直接社員に説明・実践し、自発を促す。
④ 最後は(売り掛け資産の)回収を経て現金として還元される
図−5 事業資金の循環(キャッシュフロー)
現金
預金
資機材
購入活動
サービス
準備活動
売り上げ
提供活動
売掛債権
現金
預金
回収活動
このように、自社の資本の運用を継続的に反復して運用価値を得ていくことが「事業」であり、こ
の循環を目標をたてて円滑にコントロールしていくことが「利益計画」なのです。ですから、自社の
目標利益をどのようにたてるか、また、それをどのように実現していくか、という課題の解決こそが
「利益計画」の中心なのです。
44
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● 従業員の自発性を促す
4.利益計画をたてる
義務やノルマから創造的な活動や喜びは決して生まれません。その意味で、経営ビジョンの最も大
きな使命は、それによって従業員の改革意識を刺激し、自発的な改善を促すことにあるといえます。
(1)利益管理の重要性(キャッシュフローによる利益管理)
自発性を引き出していくには最低でも以下に考慮する必要があるでしょう。
● 経営理念の役割と要件
●
納得してもらえる従業員から
ビジョンの目的意識を共有できる従業員から始める。
企業の資本の運用は、正常な現金の動き(キャッシュフロー)を前提とした、適切な資金の保有
(ストック)によって行われます。それは、以下①∼④の事業活動を継続・反復して運用成果を得て
いくことを通じて実現されます(図−5)
。
●
組織の改編
人材をビジョンに適合させていくため、会社の組織構造を変革する。
●
トレーニング機会の提供
自発性を引き出すには、適切な能力やマナーを身に付けることが不可欠である。
●
人事やシステムの変更
ビジョンに適合しない社内のシステムは適宜変えていく。
① 現金が支払いによって車両などの資産や燃料などの資材に転換される
↓
② (①が)荷主の貨物の輸送などを経てサービス資産に転換される
↓
③ (②が)売上となって売り掛け資産に変わる
↓
●
経営トップのリーダーシップ発揮
経営トップ自らが直接社員に説明・実践し、自発を促す。
④ 最後は(売り掛け資産の)回収を経て現金として還元される
図−5 事業資金の循環(キャッシュフロー)
現金
預金
資機材
購入活動
サービス
準備活動
売り上げ
提供活動
売掛債権
現金
預金
回収活動
このように、自社の資本の運用を継続的に反復して運用価値を得ていくことが「事業」であり、こ
の循環を目標をたてて円滑にコントロールしていくことが「利益計画」なのです。ですから、自社の
目標利益をどのようにたてるか、また、それをどのように実現していくか、という課題の解決こそが
「利益計画」の中心なのです。
44
45
一般に、利益計画の要件は以下のように整理できます。
● 損益分岐点による分析
「目標利益」の設定の次に問題になるのは、達成のための売上高と費用はどうするかということで
◆ 1年間を通した期間計画であること
す。これをできる限り正確に予測するには、過去の売上データにおける「費用、売上高、利益」の相
◆ 自社にとって必要あるいは必ず達成すべき目標金額(目標利益率)を決定すること
互関係を明らかにし、さらには次期以降に予見される変化を織り込んだ関係式をつくって検討しなけ
◆ 目標利益額を確実に実現するために必要な売上高の達成方法と、可能なコストダウンの方法
ればなりません。それには、CVP(Cost−Volume−Profit)分析がその中心的な手法となります。
を明らかにすること
◆ これらを企業全体で組織的に進めるため、経営幹部と従業員の全員が理解し責任を共有する
こと
なかでも「損益分岐点」(費用・売上高・利益の関係が、売上高と費用が同じで利益が0となるとき)
や「限界利益率分析」などの手法が用いられています。
こうした分析の手順を経て、「目標利益」を達成するために必要な売上高と費用を明らかにするこ
とが「利益計画」です。
これらの要件を備えた利益計画は、企業の各部門別、担当別、役職別に役割と具体的な活動内容を
分担し、その実施と管理にあたっては、「予算編成」や「事業管理」などの手続きとなって実質的に
(3)損益分岐点分析の進め方
機能していくことになります。
● 採算点をつかむ
(2)利益計画の立て方
自社のキャッシュフローを正確に把握し、目標利益を設定して、利益計画をたてていくためのモノ
サシが「損益分岐点」です。損益分岐点とは、営業収入(売上高)と費用がちょうどバランスする点、
前記のように、利益計画をたてるにはまず「目標利益」または「目標利益率」を決めなくてはなり
ません。
● 同業他社の業績・経験も考慮
目標利益の水準をどうきめるかについてはいろいろな考え方があります。そのひとつは、特定期間
つまり企業の損益が±0となる分岐点の売上高です。売上が分岐点を上回れば利益が生じ、反対に分
岐点を下回れば損失が発生するポイント、そこを「採算点」といいます。
「損益分岐点分析」を行うことは、売上高と費用の関係を明確にすることです。まず、自社の費用
を固定費と変動費に分解することから始めます。これを「固変分解」と呼びます。
の組織目標を、
◆ 変動費とは、費用の中で売上高の増減に比例して発生する費用です。
◆ 前期の組織目標の水準
◆ 固定費とは、売上高の増減とは関係なく一定額発生する費用です。
◆(前期に)その目標に基づいて企業が得た経験(現実の達成度)
◆ 同業他社が前期にたどった経験など
「固変分解」の方法はいろいろありますが、一般的には簡便な「勘定科目法」が広く用いられてい
ます。次ページの表を使って、自社の費用を固変分解してみましょう。
の3つ要素から総合的に決定しようとするものです。つまり、目標利益の水準は、自社の過去の年度
の利益目標とその達成の度合い、同業他社の実績とを勘案して決定します。実際の目標利益額の設定
はこれらをもとに、通常、以下の2つの方法が相互補完的に用いられています。
① 資本利益率あるいは売上利益率から目標利益額を設定する方法
② 必要な利益処分から積み上げていく方法
46
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一般に、利益計画の要件は以下のように整理できます。
● 損益分岐点による分析
「目標利益」の設定の次に問題になるのは、達成のための売上高と費用はどうするかということで
◆ 1年間を通した期間計画であること
す。これをできる限り正確に予測するには、過去の売上データにおける「費用、売上高、利益」の相
◆ 自社にとって必要あるいは必ず達成すべき目標金額(目標利益率)を決定すること
互関係を明らかにし、さらには次期以降に予見される変化を織り込んだ関係式をつくって検討しなけ
◆ 目標利益額を確実に実現するために必要な売上高の達成方法と、可能なコストダウンの方法
ればなりません。それには、CVP(Cost−Volume−Profit)分析がその中心的な手法となります。
を明らかにすること
◆ これらを企業全体で組織的に進めるため、経営幹部と従業員の全員が理解し責任を共有する
こと
なかでも「損益分岐点」(費用・売上高・利益の関係が、売上高と費用が同じで利益が0となるとき)
や「限界利益率分析」などの手法が用いられています。
こうした分析の手順を経て、「目標利益」を達成するために必要な売上高と費用を明らかにするこ
とが「利益計画」です。
これらの要件を備えた利益計画は、企業の各部門別、担当別、役職別に役割と具体的な活動内容を
分担し、その実施と管理にあたっては、「予算編成」や「事業管理」などの手続きとなって実質的に
(3)損益分岐点分析の進め方
機能していくことになります。
● 採算点をつかむ
(2)利益計画の立て方
自社のキャッシュフローを正確に把握し、目標利益を設定して、利益計画をたてていくためのモノ
サシが「損益分岐点」です。損益分岐点とは、営業収入(売上高)と費用がちょうどバランスする点、
前記のように、利益計画をたてるにはまず「目標利益」または「目標利益率」を決めなくてはなり
ません。
● 同業他社の業績・経験も考慮
目標利益の水準をどうきめるかについてはいろいろな考え方があります。そのひとつは、特定期間
つまり企業の損益が±0となる分岐点の売上高です。売上が分岐点を上回れば利益が生じ、反対に分
岐点を下回れば損失が発生するポイント、そこを「採算点」といいます。
「損益分岐点分析」を行うことは、売上高と費用の関係を明確にすることです。まず、自社の費用
を固定費と変動費に分解することから始めます。これを「固変分解」と呼びます。
の組織目標を、
◆ 変動費とは、費用の中で売上高の増減に比例して発生する費用です。
◆ 前期の組織目標の水準
◆ 固定費とは、売上高の増減とは関係なく一定額発生する費用です。
◆(前期に)その目標に基づいて企業が得た経験(現実の達成度)
◆ 同業他社が前期にたどった経験など
「固変分解」の方法はいろいろありますが、一般的には簡便な「勘定科目法」が広く用いられてい
ます。次ページの表を使って、自社の費用を固変分解してみましょう。
の3つ要素から総合的に決定しようとするものです。つまり、目標利益の水準は、自社の過去の年度
の利益目標とその達成の度合い、同業他社の実績とを勘案して決定します。実際の目標利益額の設定
はこれらをもとに、通常、以下の2つの方法が相互補完的に用いられています。
① 資本利益率あるいは売上利益率から目標利益額を設定する方法
② 必要な利益処分から積み上げていく方法
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表−20 トラック運送事業の運送費における固変分解(◎は全額、○は案分)
● 損益分岐点図表をつくる
費用を変動費と固定費とに分解したら、図にしたがって、「損益分岐点図表」をつくってみましょ
当期運送費
変動費
人 件 費
固定費
◎
燃 料 油 脂 費
◎
修 繕 費
○
傭 車 費
◎
変動費割合
固定費割合
(%)
区分の目安
変動費化の方向
う。横軸に売上高を目盛り、縦軸に費用を目盛っておき、固定費線をPから横軸に平行に引きます。
次に、実際の売上高Rをとり垂直線を引きます。これが交わるQの上に変動費を乗せた値をOとして、
PとOを結んだ線を「総費用線」といいます。この総費用線と売上高線が交わる点が損益分岐点にな
ります。
○
法定車検は固定
図−6 損益分岐点図
減 価 償 却 費
◎
11
保 険 料
◎
10
施 設 使 用 料
◎
9
自動車リース料
◎
施 設 賦 課 税
8
◎
事 故 賠 償 費
◎
道 路 使 用 料
○
○
売上高線
利用状況により
↑
費
用
・
損
益
実際売上高 R点
7
損益分岐点
6
利益
P点
5
変動費
4
フェリー使用料
○
水 道 光 熱 費
消 耗 品 費
○
利用状況により
◎
○
○
租 税 公 課
◎
その他運送費
◎
3
点
2
タイヤは変動費
総費用線
O点
固定費
損失領域
1
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
売上高→
損益分岐点分析を行う目的のひとつは、売上げと経費の相関関係を理解することであり、自社の費
用(コスト)を洗いざらい見直すことが必要です。前表の各コストの増加、とくに管理部門のコスト
については、常日頃から注意を向けるべきでしょう。単月では少ない額でも年間では多額になり、収
益を圧迫します。経営幹部のコスト意識が徹底しないと、従業員のコスト管理もルーズになりがちで
す。長い不況で、コスト削減はやりつくしたと思っても、「なお、やらねばならない」のがトラック
運送業界の置かれた状況なのです。
48
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表−20 トラック運送事業の運送費における固変分解(◎は全額、○は案分)
● 損益分岐点図表をつくる
費用を変動費と固定費とに分解したら、図にしたがって、「損益分岐点図表」をつくってみましょ
当期運送費
変動費
人 件 費
固定費
◎
燃 料 油 脂 費
◎
修 繕 費
○
傭 車 費
◎
変動費割合
固定費割合
(%)
区分の目安
変動費化の方向
う。横軸に売上高を目盛り、縦軸に費用を目盛っておき、固定費線をPから横軸に平行に引きます。
次に、実際の売上高Rをとり垂直線を引きます。これが交わるQの上に変動費を乗せた値をOとして、
PとOを結んだ線を「総費用線」といいます。この総費用線と売上高線が交わる点が損益分岐点にな
ります。
○
法定車検は固定
図−6 損益分岐点図
減 価 償 却 費
◎
11
保 険 料
◎
10
施 設 使 用 料
◎
9
自動車リース料
◎
施 設 賦 課 税
8
◎
事 故 賠 償 費
◎
道 路 使 用 料
○
○
売上高線
利用状況により
↑
費
用
・
損
益
実際売上高 R点
7
損益分岐点
6
利益
P点
5
変動費
4
フェリー使用料
○
水 道 光 熱 費
消 耗 品 費
○
利用状況により
◎
○
○
租 税 公 課
◎
その他運送費
◎
3
点
2
タイヤは変動費
総費用線
O点
固定費
損失領域
1
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
売上高→
損益分岐点分析を行う目的のひとつは、売上げと経費の相関関係を理解することであり、自社の費
用(コスト)を洗いざらい見直すことが必要です。前表の各コストの増加、とくに管理部門のコスト
については、常日頃から注意を向けるべきでしょう。単月では少ない額でも年間では多額になり、収
益を圧迫します。経営幹部のコスト意識が徹底しないと、従業員のコスト管理もルーズになりがちで
す。長い不況で、コスト削減はやりつくしたと思っても、「なお、やらねばならない」のがトラック
運送業界の置かれた状況なのです。
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● 損益分岐点売上高、損益分岐点比率(健全率)を計算式で求める
● 目標利益、売上高利益率の算出
採算割れになる損益分岐点の売上高などは計算によって求めることができます。
設定された目標利益を実現するための売上高は、他の条件が変化しない限り固定費に目標利益を加
算することによって求めることができます。
前述のように、利益計画の策定の目的は目標利益の設定にあり、そのために必要な売上高を明らか
① 損益分岐点売上高の計算式
にする必要があるのです。もしも経営環境の変化によって、計画された売上高の達成が困難であれば、
固定費や変動費の削減といった企業努力が検討され、サービスミックス(提供している物流サービス
の再編)等の営業展開の見直しやさらには運賃・料金の適否も検討された上で計画売上高が修正され
固定費
固定費
損益分岐点売上高 = = =
1−変動費率
変動費
1−
売上高
固定費
ることになります。
限界利益率
③ 目標利益を確保する売上高は
固定費+目標利益
目標利益の実現売上高 = 変動費
1−
売上高
② 安全余裕率の計算式
損益分岐点売上高
損 益 分 岐 点 比 率 = ×100
実際売上高
安 全 余 裕 率 = 100 − 損益分岐点比率 (100%を下回る程良い)
④ 目標売上利益率の達成に必要な売上高を求める計算式
固定費
目標売上利益率実現の売上高 = 1−変動比率−目標高売上利益率
それでは、自社の損益分岐点を書いてみましょう。
50
51
● 損益分岐点売上高、損益分岐点比率(健全率)を計算式で求める
● 目標利益、売上高利益率の算出
採算割れになる損益分岐点の売上高などは計算によって求めることができます。
設定された目標利益を実現するための売上高は、他の条件が変化しない限り固定費に目標利益を加
算することによって求めることができます。
前述のように、利益計画の策定の目的は目標利益の設定にあり、そのために必要な売上高を明らか
① 損益分岐点売上高の計算式
にする必要があるのです。もしも経営環境の変化によって、計画された売上高の達成が困難であれば、
固定費や変動費の削減といった企業努力が検討され、サービスミックス(提供している物流サービス
の再編)等の営業展開の見直しやさらには運賃・料金の適否も検討された上で計画売上高が修正され
固定費
固定費
損益分岐点売上高 = = =
1−変動費率
変動費
1−
売上高
固定費
ることになります。
限界利益率
③ 目標利益を確保する売上高は
固定費+目標利益
目標利益の実現売上高 = 変動費
1−
売上高
② 安全余裕率の計算式
損益分岐点売上高
損 益 分 岐 点 比 率 = ×100
実際売上高
安 全 余 裕 率 = 100 − 損益分岐点比率 (100%を下回る程良い)
④ 目標売上利益率の達成に必要な売上高を求める計算式
固定費
目標売上利益率実現の売上高 = 1−変動比率−目標高売上利益率
それでは、自社の損益分岐点を書いてみましょう。
50
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表−21 損益分岐点図のパターン
A. 売上高が損益分岐点を上回る、黒字の企業
実際の売上高
利
益
損益分岐点
費
用
・
損
益
費
用
Ⅱ
売上高
B. 売上高が損益分岐点とほぼ同じ、利益0の企業
高付加価値化による
経営改善を進める事業者
―事例研究
費
用
・
損
益
損益分岐点=
実際の売上高
売上高
C. 売上高が損益分岐点を下回る、赤字の企業
損益分岐点
費
用
・
損
益
損
失
実際の
売上高
費
用
売上高
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表−21 損益分岐点図のパターン
A. 売上高が損益分岐点を上回る、黒字の企業
実際の売上高
利
益
損益分岐点
費
用
・
損
益
費
用
Ⅱ
売上高
B. 売上高が損益分岐点とほぼ同じ、利益0の企業
高付加価値化による
経営改善を進める事業者
―事例研究
費
用
・
損
益
損益分岐点=
実際の売上高
売上高
C. 売上高が損益分岐点を下回る、赤字の企業
損益分岐点
費
用
・
損
益
損
失
実際の
売上高
費
用
売上高
52
53
1.経営の高付加価値化の視点
(1)トラック運送事業の経営における高付加価値化とは?
(2)今後の高付加価値化の方向
社会・経済の激しい変化から、何が「高付加価値」経営と呼べるのかも刻々と変わってきています。
前記(1)の基本的な要件に加えて以下の点からのチェックも必要です。
ここでは、既存のトラック運送事業者における経営の「高付加価値化」の事例を紹介します。経営
環境が劇的に変化するなかで、市場での生き残りを図るには、これまでの経営手法の改善と、変化に
対応したサービスの高度化が必要です。そのような観点から、企業経営における高付加価値化とは、
① 新たな価値の創造
流通加工など輸送に付帯して発生する業務の受託や、納品など荷主の販売と結びつく業務の受諾を
以下の4つの要件を満たすことが必要でしょう。
通じて、市場に新たな価値をもたらすものであること。
① 荷主物流への貢献
② ニッチ市場の確立
荷主の物流合理化やサービスレベル向上の要請に、コストやサービスの面で貢献度が高いこと。荷
適合しようとする市場が、資金力・システム化能力のある大手と市場で競合しないものであること。
主の「信頼」を基盤に、ビジネス・パートナーとして均衡のとれた取引条件を確立していること。
③ 企業イメージの向上
② 提供サービスの採算性
提供するサービスが、採算点をクリアする効率的で合理的な「サービス生産」で支えられているこ
接客、広報・ディスクロージャー、車両・施設、安全・環境、社会活動、「安全性優良事業所」の
認定、ISO認証の取得など事業活動のすべてにわたって企業イメージの向上が図られていること。
と。ローコスト・オペレーションやスケール・メリットの発揮が可能なしくみを構築していること。
④ 弾力性
③ 適切な市場の選択
地域、荷主業種、荷主の営業領域、輸送品目、提供する物流サービスの範囲、サービスのレベルな
経営戦略や経営計画のレベル、あるいは業務の現場において、状況の変化に柔軟に対応していける
仕組み備えていること。
どで細分化される市場の中から、その市場の成長性、既存他社のサービス内容、自社の持つ経営資源
(施設・設備、技術力、ノウハウ、信頼性など)が活用できるか否か、収益確保の可能性等を十分検
討したうえで選択していること。
⑤ サービス品質の向上、人材養成・教育の徹底
QC活動の実践などを通じ、提供サービスが常に刷新されることによって競争力の強化に繋がって
いること。
④ 荷主との適正な取引関係
荷主の信頼を背景とした強い営業力を持ち、提供するサービスが明確に商品として認識され、サー
ビスの対価となる運賃・料金の立て方や水準が適切であること。
⑥ 車両・設備の近代化
最新規制適合車両への代替、低公害車、エアサスペンション装備車両など付加価値の高い車両・設
備の導入で、近代化が常に図られていること。
⑦ 作業の標準化
荷主から受託した作業やその手順の見直し、定期的な点検と改善、マニュアル化などを通じて、作
業が標準化され、技術の伝達が円滑に行えること。
54
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1.経営の高付加価値化の視点
(1)トラック運送事業の経営における高付加価値化とは?
(2)今後の高付加価値化の方向
社会・経済の激しい変化から、何が「高付加価値」経営と呼べるのかも刻々と変わってきています。
前記(1)の基本的な要件に加えて以下の点からのチェックも必要です。
ここでは、既存のトラック運送事業者における経営の「高付加価値化」の事例を紹介します。経営
環境が劇的に変化するなかで、市場での生き残りを図るには、これまでの経営手法の改善と、変化に
対応したサービスの高度化が必要です。そのような観点から、企業経営における高付加価値化とは、
① 新たな価値の創造
流通加工など輸送に付帯して発生する業務の受託や、納品など荷主の販売と結びつく業務の受諾を
以下の4つの要件を満たすことが必要でしょう。
通じて、市場に新たな価値をもたらすものであること。
① 荷主物流への貢献
② ニッチ市場の確立
荷主の物流合理化やサービスレベル向上の要請に、コストやサービスの面で貢献度が高いこと。荷
適合しようとする市場が、資金力・システム化能力のある大手と市場で競合しないものであること。
主の「信頼」を基盤に、ビジネス・パートナーとして均衡のとれた取引条件を確立していること。
③ 企業イメージの向上
② 提供サービスの採算性
提供するサービスが、採算点をクリアする効率的で合理的な「サービス生産」で支えられているこ
接客、広報・ディスクロージャー、車両・施設、安全・環境、社会活動、「安全性優良事業所」の
認定、ISO認証の取得など事業活動のすべてにわたって企業イメージの向上が図られていること。
と。ローコスト・オペレーションやスケール・メリットの発揮が可能なしくみを構築していること。
④ 弾力性
③ 適切な市場の選択
地域、荷主業種、荷主の営業領域、輸送品目、提供する物流サービスの範囲、サービスのレベルな
経営戦略や経営計画のレベル、あるいは業務の現場において、状況の変化に柔軟に対応していける
仕組み備えていること。
どで細分化される市場の中から、その市場の成長性、既存他社のサービス内容、自社の持つ経営資源
(施設・設備、技術力、ノウハウ、信頼性など)が活用できるか否か、収益確保の可能性等を十分検
討したうえで選択していること。
⑤ サービス品質の向上、人材養成・教育の徹底
QC活動の実践などを通じ、提供サービスが常に刷新されることによって競争力の強化に繋がって
いること。
④ 荷主との適正な取引関係
荷主の信頼を背景とした強い営業力を持ち、提供するサービスが明確に商品として認識され、サー
ビスの対価となる運賃・料金の立て方や水準が適切であること。
⑥ 車両・設備の近代化
最新規制適合車両への代替、低公害車、エアサスペンション装備車両など付加価値の高い車両・設
備の導入で、近代化が常に図られていること。
⑦ 作業の標準化
荷主から受託した作業やその手順の見直し、定期的な点検と改善、マニュアル化などを通じて、作
業が標準化され、技術の伝達が円滑に行えること。
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⑧ 輸送の効率化
株式会社ハマキョウレックス(静岡県浜松市)の経営理念
幹線輸送の大型化・トレーラ化を通じた他社との共同輸送、物流拠点の共同整備、地域内の集配の
共同化、融通配車などの取り組みを通じて、輸送が効率化されていること。
経営理念
当社は設立当初から「心」を経営理念としております。
⑨ 営業体制・手法の確立
開発した輸送サービスの営業活動は重要であり、マーケティング活動の展開や提案型営業の推進を
目標とした営業体制や手法の確立がなされていること。
一.人と接するときは 心を込めて
一.仕事をするときは 初心を忘れず前向きに
一.物を扱うときは 心を込めて丁寧に
一.物を運ぶときは 心を込めて安全に
⑩ 顧客管理
一.如何なるときにも 感謝の心を大切に
荷主にとって目に見える安心や安全を提供していくことは重要であり、こまめな顧客管理が社内に
徹底していること。
人間の原点は心で始まり心で終わります。
物を作り出すにも大勢の人の真心がこもっています。
⑪ 輸送ネットワーク構築
輸送ネットワークの構築には、従来の協同組合をはじめとした共同化ばかりでなく、互いの得意分
野を活かし、苦手とする分野を補い合う、相互補完を目的とした、戦略的な提携関係の構築など、こ
れまでとは異なる共同化のための準備ができていること。
私たちは物に携わる者として、初心を基本に感謝の心を大切にいたします。
基本方針
一.現状に満足せず「物流通業」の実現に挑み、
「物流通業」のトップを目指します
一.経営の基本を守り、常に提案営業を通じ物流センター運営の拡大を図ります
一.収益体質の強化と利益向上を目指し、従業員の福利向上と社会に貢献します
行動指針
『基本とルールを守ろう
何事にも真剣に取組もう
和と協調をもって一生懸命頑張ろう
失敗を恐れずプラス思考で前進しよう』
社会の中には決め事があります。
運転にも仕事にも基本とルールがあります。
私たちはこの中で仕事を進めます。
世の中も会社も一つの組織です。
ひとりよがりの考え、行動は良いものではありません。
私たち一人ひとりが歯車のヒト駒です。
ヒト駒が止まれば歯車は止まります。
その為に和と協調が必要です。
失敗は責めません。しかし報告は必ずしましょう。
要は真剣に一生懸命頑張ったかどうかです。
失敗の後には必ず成功があります。
プラス思考で進めば必ず道は開けます。
∼HMKは心の経営を基本にお客様の繁栄のサポートを致します。∼
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⑧ 輸送の効率化
株式会社ハマキョウレックス(静岡県浜松市)の経営理念
幹線輸送の大型化・トレーラ化を通じた他社との共同輸送、物流拠点の共同整備、地域内の集配の
共同化、融通配車などの取り組みを通じて、輸送が効率化されていること。
経営理念
当社は設立当初から「心」を経営理念としております。
⑨ 営業体制・手法の確立
開発した輸送サービスの営業活動は重要であり、マーケティング活動の展開や提案型営業の推進を
目標とした営業体制や手法の確立がなされていること。
一.人と接するときは 心を込めて
一.仕事をするときは 初心を忘れず前向きに
一.物を扱うときは 心を込めて丁寧に
一.物を運ぶときは 心を込めて安全に
⑩ 顧客管理
一.如何なるときにも 感謝の心を大切に
荷主にとって目に見える安心や安全を提供していくことは重要であり、こまめな顧客管理が社内に
徹底していること。
人間の原点は心で始まり心で終わります。
物を作り出すにも大勢の人の真心がこもっています。
⑪ 輸送ネットワーク構築
輸送ネットワークの構築には、従来の協同組合をはじめとした共同化ばかりでなく、互いの得意分
野を活かし、苦手とする分野を補い合う、相互補完を目的とした、戦略的な提携関係の構築など、こ
れまでとは異なる共同化のための準備ができていること。
私たちは物に携わる者として、初心を基本に感謝の心を大切にいたします。
基本方針
一.現状に満足せず「物流通業」の実現に挑み、
「物流通業」のトップを目指します
一.経営の基本を守り、常に提案営業を通じ物流センター運営の拡大を図ります
一.収益体質の強化と利益向上を目指し、従業員の福利向上と社会に貢献します
行動指針
『基本とルールを守ろう
何事にも真剣に取組もう
和と協調をもって一生懸命頑張ろう
失敗を恐れずプラス思考で前進しよう』
社会の中には決め事があります。
運転にも仕事にも基本とルールがあります。
私たちはこの中で仕事を進めます。
世の中も会社も一つの組織です。
ひとりよがりの考え、行動は良いものではありません。
私たち一人ひとりが歯車のヒト駒です。
ヒト駒が止まれば歯車は止まります。
その為に和と協調が必要です。
失敗は責めません。しかし報告は必ずしましょう。
要は真剣に一生懸命頑張ったかどうかです。
失敗の後には必ず成功があります。
プラス思考で進めば必ず道は開けます。
∼HMKは心の経営を基本にお客様の繁栄のサポートを致します。∼
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2.高付加価値経営の事例
事例①:運送業から総合ロジスティクスへの経営改善
(3)取り組み
平成13年に承認された経営革新の内容は、運送業から総合ロジスティクスへの業務改善で、計画の
ポイントは①総合ロジスティクスへの転換、②超低温冷凍倉庫の購入、③新事業の確立、である。
(1)会社の概要
「総合ロジスティクスへの転換」としては、フィジー産の冷凍カツオならびにマグロ製品を生産、
輸入、販売するプロジェクトに物流の中軸を担当する立場から参加した。
会社名 A社
物流の中軸を担うには、輸入された商品の品質管理と納品先へのタイムリーなデリバリーを保証す
所在地 東京都港区
るため、「超低温冷凍倉庫の確保」が必要条件になる。そこで、マイナス60度の保冷能力を持つ倉庫
事業開始 平成11年
を購入し、適正在庫および品質管理システムの確立を図った。さらに、物流コントロールを行うため、
資本金 900万円
インターネット決済などについての研究も進めていった。
保有車両 10台
こうした「新事業の確立」のため、パソコンによるリアルタイム管理と効率化システムを構築。そ
のために、専任責任者1名、荷役責任者1名、運転者3名を順次増員し、さらに、超低温中型冷凍ト
ラック2台の購入も計画した。
(2)経営改善までの経緯
これらの経営革新には、冷凍・冷蔵倉庫の確保および超低温冷凍車の導入に伴う設備投資資金とし
て8,500万円が必要であった。そこで経営革新支援法を申請し、信用保証協会の保証枠の拡大を利用
平成11年にトラック運送事業に参入し、市場から生鮮食品(鮮魚)を都内および近郊に輸送する業
務を主に行ってきた。しかし、新規参入後、過当競争による運賃低下の中で、今後ますます進展する
情報化などに取り残されないか、という懸念を常に持っていた。
このような折り、大手スーパーの物流センターを見学する機会があった。この物流センターの現場
した。
その後、人件費の安いフィジー産“カツオのタタキ”の価格競争力が強いことから、現地法人から
のカツオ取扱高の増加を目的に、民間金融機関から3,000万円を別途に借入れした。この資金で現地
で中古船を2艘購入し、現地法人に対するリースを行うことになった。
では、大手運送会社が業務全般を受託し、顧客の物流業務全般を取り仕切っており、問屋などは取引
をうち切られ、中小運送事業者が、この大手運送会社の下請となっている実態を目の当たりにした。
(4)成果と今後の課題
ここから学んだことは、中小規模の運送事業者もロジスティクスに取り組まなければ、運送
業として生き残ることが出来ない、という現実であった。
このような時、市場関係者から輸入魚の商品保管、管理業務を含むロジスティクス業務の話が持ち
今回の業務の延長上で新たな展開を考えていたが、その後、千葉県の銀行管理になっている冷凍倉
庫の話があった。これは3,300m2の敷地に建坪が1,650m2の倉庫で、容量800t、保冷温度マイナス25度
込まれた。フィジーからカツオのタタキを新規に輸入する、というもので取扱量は年間1,000tであ
の能力をもつ。この冷凍倉庫を取得するために鮮魚業者(マグロ、カツオ)2社と青果業者(ミカン)
る。A社では、この新規業務に取り組むことにした。しかし、この業務を受託するには冷凍倉庫を保
1社に呼びかけ、A社と4社で異業種組合を設立する話が進行している。
有しなければならない。
倉庫取得のために必要な費用は、購入費と3温度帯対応への改築費を合わせて2億円となり、組合
そこで、トラック協会の所属支所に相談したところ、中小企業経営革新支援法の説明を受け、東京
設立後に各種制度の適用を中央会などにも相談しながら進めていく予定である。冷凍倉庫保有のメリ
都の担当窓口も紹介してもらうことができた。A社は早速、東京都の担当者の指導を受け、申請手続
ットは、営業倉庫を利用するよりも保管コストが削減でき、営業倉庫では対応できない営業時間外の
きを行った。
緊急対応なども可能となる点である。A社では将来、成田空港の航空貨物の取り扱いも視野に入れて
経営革新を進めている。
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2.高付加価値経営の事例
事例①:運送業から総合ロジスティクスへの経営改善
(3)取り組み
平成13年に承認された経営革新の内容は、運送業から総合ロジスティクスへの業務改善で、計画の
ポイントは①総合ロジスティクスへの転換、②超低温冷凍倉庫の購入、③新事業の確立、である。
(1)会社の概要
「総合ロジスティクスへの転換」としては、フィジー産の冷凍カツオならびにマグロ製品を生産、
輸入、販売するプロジェクトに物流の中軸を担当する立場から参加した。
会社名 A社
物流の中軸を担うには、輸入された商品の品質管理と納品先へのタイムリーなデリバリーを保証す
所在地 東京都港区
るため、「超低温冷凍倉庫の確保」が必要条件になる。そこで、マイナス60度の保冷能力を持つ倉庫
事業開始 平成11年
を購入し、適正在庫および品質管理システムの確立を図った。さらに、物流コントロールを行うため、
資本金 900万円
インターネット決済などについての研究も進めていった。
保有車両 10台
こうした「新事業の確立」のため、パソコンによるリアルタイム管理と効率化システムを構築。そ
のために、専任責任者1名、荷役責任者1名、運転者3名を順次増員し、さらに、超低温中型冷凍ト
ラック2台の購入も計画した。
(2)経営改善までの経緯
これらの経営革新には、冷凍・冷蔵倉庫の確保および超低温冷凍車の導入に伴う設備投資資金とし
て8,500万円が必要であった。そこで経営革新支援法を申請し、信用保証協会の保証枠の拡大を利用
平成11年にトラック運送事業に参入し、市場から生鮮食品(鮮魚)を都内および近郊に輸送する業
務を主に行ってきた。しかし、新規参入後、過当競争による運賃低下の中で、今後ますます進展する
情報化などに取り残されないか、という懸念を常に持っていた。
このような折り、大手スーパーの物流センターを見学する機会があった。この物流センターの現場
した。
その後、人件費の安いフィジー産“カツオのタタキ”の価格競争力が強いことから、現地法人から
のカツオ取扱高の増加を目的に、民間金融機関から3,000万円を別途に借入れした。この資金で現地
で中古船を2艘購入し、現地法人に対するリースを行うことになった。
では、大手運送会社が業務全般を受託し、顧客の物流業務全般を取り仕切っており、問屋などは取引
をうち切られ、中小運送事業者が、この大手運送会社の下請となっている実態を目の当たりにした。
(4)成果と今後の課題
ここから学んだことは、中小規模の運送事業者もロジスティクスに取り組まなければ、運送
業として生き残ることが出来ない、という現実であった。
このような時、市場関係者から輸入魚の商品保管、管理業務を含むロジスティクス業務の話が持ち
今回の業務の延長上で新たな展開を考えていたが、その後、千葉県の銀行管理になっている冷凍倉
庫の話があった。これは3,300m2の敷地に建坪が1,650m2の倉庫で、容量800t、保冷温度マイナス25度
込まれた。フィジーからカツオのタタキを新規に輸入する、というもので取扱量は年間1,000tであ
の能力をもつ。この冷凍倉庫を取得するために鮮魚業者(マグロ、カツオ)2社と青果業者(ミカン)
る。A社では、この新規業務に取り組むことにした。しかし、この業務を受託するには冷凍倉庫を保
1社に呼びかけ、A社と4社で異業種組合を設立する話が進行している。
有しなければならない。
倉庫取得のために必要な費用は、購入費と3温度帯対応への改築費を合わせて2億円となり、組合
そこで、トラック協会の所属支所に相談したところ、中小企業経営革新支援法の説明を受け、東京
設立後に各種制度の適用を中央会などにも相談しながら進めていく予定である。冷凍倉庫保有のメリ
都の担当窓口も紹介してもらうことができた。A社は早速、東京都の担当者の指導を受け、申請手続
ットは、営業倉庫を利用するよりも保管コストが削減でき、営業倉庫では対応できない営業時間外の
きを行った。
緊急対応なども可能となる点である。A社では将来、成田空港の航空貨物の取り扱いも視野に入れて
経営革新を進めている。
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事例②:業態の異なる同業3社と連携し、荷主の要請に多面的に対応する体制を構築
一般に荷主業界では利益が出れば設備投資が過剰になるといわれるが、効率化や合理化に目が向い
ていない時期から立案していた合理化計画は、不景気を逆手にとって実現したものといえる。
(1)会社の概要
この結果、荷主は建設関連機器を保有して、リースのための営業活動のみを行う会社となり、新会
社は、荷主の委託で、機器の保管・管理からメンテナンス・現場輸送・撤収までを行う会社としてス
会社名 B社
所在地 群馬県
タートした。
B社は、分離による車両の有効活用のメリットが大きい事を理由に、早くから輸送分離を提案して
事業開始年 昭和28年
いたが、荷主の輸送機能すべてを引き取るための資金は調達できなかった。仕事が急減したことから
資本金 1,600万円
荷主も決断することになったが、当初は事業のめどがつくまでには少なくとも4∼5年はかかるもの
保有車両数 60台(別会社に中・大型車を移籍)
とみていた。ところが、B社の優れた配車ノウハウによって初年度で収益が出るなど、好調なスター
トとなった。
現在は、埼玉県・神奈川県・栃木県など東京外周を輸送エリアとして事業展開しており、荷主会社
(2)経営改善までの経緯
の委託貨物はもちろん、B社が独自に営業した別のリース業者や、他の貨物の輸送も手掛けている。
様々な用途に応じた多様なユニック車を保有することで、各車の特性を十分に活かした営業展開が
B本社が立地する県南部地区は、首都圏の拡大に合わせて大手企業の大規模工場が撤退していった
可能となったほか、配車要請に柔軟に対応できることで、稼働率も向上している。
ほか、東京への交通の集中・高速化によっていわゆる「支店」経済が早くに崩壊し、供給基地・物流
センターとしての役割を果たす地域がどんどん遠方化していくことで、物流からみた地位が低下して
(4)成果と今後の課題
いった。
地元発のまとまった貨物が出る企業はこの地区でも数社しかなく、地域で今日まで事業を維持して
いくには様々な工夫と努力が求められた。
また最近、荷主の物流効率化の意欲は非常に高まっており、輸送を委託しているといっても、担当
者は自社の物流をすみずみまで知りつくしている場合が多くなった。
B社自体の売上は、景気の低迷によって落ち込んでおり、食品卸・化学製品メーカーの主要4社の
落ち込みが著しい。このため、B社は営業エリアが同じで業態の違う同業他社3社と同盟的に連携
(アライアンス)する体制を確立した。
これは、3社が受託した輸送のうち、特別積合わせ事業者には幹線長距離・大型車および小口配送
輸送の現場からみると抵抗のある注文が来る場合もあるが、そうしたときでも荷主側はこれまでの
を、倉庫業者には保管需要を、ローリー事業者には液体・流体輸送の需要を相互に斡旋すること
物流の実績とその分析の結果をしっかり把握しており、根拠もなしに「できない」という運送
にし、それぞれの荷主のどのような注文・要請にも多面的に応えていける体制を整える
もので、ときには斡旋先に対して赤字になる場合もあるが、地域内や外部大手との競争力の維持
会社は仕事はいらないといっているのと同義にさえなっている。
に果たしている役割は大きい。
(3)取り組み
地域の老舗トラック事業者であるB社は、首都圏を地盤にこれまで多種多様な物流を手がけてきた。
現在は、加工食品会社の小売店チェーンなど顧客店舗への配送や建設用化学製品の現場輸送を中心に
事業を展開、食品・化学製品メーカーの売上が全体の約半数を占めている。
こうした経営のなか、建設不況が始まった11年春に、B社は売上シェアは低いが、地元の荷主であ
る建設資機材リース業者と共同出資で、現場への建設関連資機材輸送を専門に行う運送会社を、B社
の別会社として設立した。新会社の設立は、基本的には荷主から経営の合理化策の一貫として提案さ
れたもので、荷主の自社輸送部門(車両+従業員)と、B社が保有する2∼18tのユニック車両と運
転者を、本社から分離させ合併するかたちで行った。
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事例②:業態の異なる同業3社と連携し、荷主の要請に多面的に対応する体制を構築
一般に荷主業界では利益が出れば設備投資が過剰になるといわれるが、効率化や合理化に目が向い
ていない時期から立案していた合理化計画は、不景気を逆手にとって実現したものといえる。
(1)会社の概要
この結果、荷主は建設関連機器を保有して、リースのための営業活動のみを行う会社となり、新会
社は、荷主の委託で、機器の保管・管理からメンテナンス・現場輸送・撤収までを行う会社としてス
会社名 B社
所在地 群馬県
タートした。
B社は、分離による車両の有効活用のメリットが大きい事を理由に、早くから輸送分離を提案して
事業開始年 昭和28年
いたが、荷主の輸送機能すべてを引き取るための資金は調達できなかった。仕事が急減したことから
資本金 1,600万円
荷主も決断することになったが、当初は事業のめどがつくまでには少なくとも4∼5年はかかるもの
保有車両数 60台(別会社に中・大型車を移籍)
とみていた。ところが、B社の優れた配車ノウハウによって初年度で収益が出るなど、好調なスター
トとなった。
現在は、埼玉県・神奈川県・栃木県など東京外周を輸送エリアとして事業展開しており、荷主会社
(2)経営改善までの経緯
の委託貨物はもちろん、B社が独自に営業した別のリース業者や、他の貨物の輸送も手掛けている。
様々な用途に応じた多様なユニック車を保有することで、各車の特性を十分に活かした営業展開が
B本社が立地する県南部地区は、首都圏の拡大に合わせて大手企業の大規模工場が撤退していった
可能となったほか、配車要請に柔軟に対応できることで、稼働率も向上している。
ほか、東京への交通の集中・高速化によっていわゆる「支店」経済が早くに崩壊し、供給基地・物流
センターとしての役割を果たす地域がどんどん遠方化していくことで、物流からみた地位が低下して
(4)成果と今後の課題
いった。
地元発のまとまった貨物が出る企業はこの地区でも数社しかなく、地域で今日まで事業を維持して
いくには様々な工夫と努力が求められた。
また最近、荷主の物流効率化の意欲は非常に高まっており、輸送を委託しているといっても、担当
者は自社の物流をすみずみまで知りつくしている場合が多くなった。
B社自体の売上は、景気の低迷によって落ち込んでおり、食品卸・化学製品メーカーの主要4社の
落ち込みが著しい。このため、B社は営業エリアが同じで業態の違う同業他社3社と同盟的に連携
(アライアンス)する体制を確立した。
これは、3社が受託した輸送のうち、特別積合わせ事業者には幹線長距離・大型車および小口配送
輸送の現場からみると抵抗のある注文が来る場合もあるが、そうしたときでも荷主側はこれまでの
を、倉庫業者には保管需要を、ローリー事業者には液体・流体輸送の需要を相互に斡旋すること
物流の実績とその分析の結果をしっかり把握しており、根拠もなしに「できない」という運送
にし、それぞれの荷主のどのような注文・要請にも多面的に応えていける体制を整える
もので、ときには斡旋先に対して赤字になる場合もあるが、地域内や外部大手との競争力の維持
会社は仕事はいらないといっているのと同義にさえなっている。
に果たしている役割は大きい。
(3)取り組み
地域の老舗トラック事業者であるB社は、首都圏を地盤にこれまで多種多様な物流を手がけてきた。
現在は、加工食品会社の小売店チェーンなど顧客店舗への配送や建設用化学製品の現場輸送を中心に
事業を展開、食品・化学製品メーカーの売上が全体の約半数を占めている。
こうした経営のなか、建設不況が始まった11年春に、B社は売上シェアは低いが、地元の荷主であ
る建設資機材リース業者と共同出資で、現場への建設関連資機材輸送を専門に行う運送会社を、B社
の別会社として設立した。新会社の設立は、基本的には荷主から経営の合理化策の一貫として提案さ
れたもので、荷主の自社輸送部門(車両+従業員)と、B社が保有する2∼18tのユニック車両と運
転者を、本社から分離させ合併するかたちで行った。
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事例③:コンクリート製品輸送の取り扱いノウハウを活かし、危険物倉庫を建設・運営
倉庫は常温と定温に分けて管理している。事業をスタートして1年たつ。荷主は現在20数社。特定
の大手荷主を核にした倉庫ではなく、もともと複数の荷主に利用してもらうことを想定していた。
(1)会社の概要
危険物の荷姿は多種多様であり、コンピュータで管理を行っている。保管から輸送まで一貫し
所在地 埼玉県
て請け負っており、出荷の都度、品名・数量・行き先などの出荷履歴管理を行い、必要
に応じて荷主にフィードバックしている。このほか、倉庫の空情報も荷主に提供してい
る。保管スペースを確保できるかどうかは、メーカーの生産計画にも影響を及ぼすことになるため、
事業開始年 昭和36年
この情報は荷主に歓迎されている。
会社名 C社
資本金 6,000万円
保有車両数 54台
(4)成果と今後の課題
年間売上額 約18億円
輸送面については①コンピュータによる情報を早期に入手でき、業務の効率が上がった、②ドライ
バーの質がよく、顧客からのクレームが少ない、と評価されている。料金についてはC社のサービス
(2)経営改善までの経緯
と設備を勘案しながら協議していく。
新規分野は、品目ごとにスペシャリストが必要。人材の育成が急務である。今年は新卒を5人採用
C社は、コンクリート二次製品の出荷、輸送などを主に手がけてきた。景気の悪化、住宅着工件数
する。これからも、若い人材を増やしていく。
や公共投資の減少などから、コンクリート製品全般の輸送量も減ってきた。C社の場合、自車比率を
三分の一に抑えてきたため、物量全体が目減りしていても自社便の稼働率はそれほど落ちてはいない。
しかしながら、このままでは事業の発展が見込めないため、新たな市場開拓が必要になってきた。
(3)取り組み
県内に、危険物倉庫が不足していると知り、新たなビジネスのチャンスとして注目した。少量なら
ば危険物にはならないが、一定数量まとまると、危険物扱いになり、危険物倉庫での保管が義務付け
られる製品がある。
在庫数量の変動によって、保管数量が増え、危険物倉庫での保管が必要になったにもかかわらず、
スペースが確保できないため、一般倉庫に保管されるケースもあるときき、危険物倉庫を手当てすれ
ば、こうした荷主にスペースを提供できると考えた。
全くの異分野で知識も経験もなかったため、取り扱い方法など一から勉強した。保管を委託される
品目によっては、取り扱い免許などが必要になり、その都度、取得した。倉庫の設備についても、消
防署に相談しながら対応した。一般倉庫よりもコストがかかった。社員教育も大変だった。
だが、その分、付加価値も高い分野と見て、必要な投資はすべて行った。
C社の長年携わってきたコンクリート二次製品の輸送は、リスクは高いが他者に比して「安全」の
評価は高い。危険物の取り扱いも、同様にリスクを伴う事業だが、これまでに蓄積したリスクを伴う
業務の管理ノウハウには自信があり、新分野にも積極的に取り組んだ。
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事例③:コンクリート製品輸送の取り扱いノウハウを活かし、危険物倉庫を建設・運営
倉庫は常温と定温に分けて管理している。事業をスタートして1年たつ。荷主は現在20数社。特定
の大手荷主を核にした倉庫ではなく、もともと複数の荷主に利用してもらうことを想定していた。
(1)会社の概要
危険物の荷姿は多種多様であり、コンピュータで管理を行っている。保管から輸送まで一貫し
所在地 埼玉県
て請け負っており、出荷の都度、品名・数量・行き先などの出荷履歴管理を行い、必要
に応じて荷主にフィードバックしている。このほか、倉庫の空情報も荷主に提供してい
る。保管スペースを確保できるかどうかは、メーカーの生産計画にも影響を及ぼすことになるため、
事業開始年 昭和36年
この情報は荷主に歓迎されている。
会社名 C社
資本金 6,000万円
保有車両数 54台
(4)成果と今後の課題
年間売上額 約18億円
輸送面については①コンピュータによる情報を早期に入手でき、業務の効率が上がった、②ドライ
バーの質がよく、顧客からのクレームが少ない、と評価されている。料金についてはC社のサービス
(2)経営改善までの経緯
と設備を勘案しながら協議していく。
新規分野は、品目ごとにスペシャリストが必要。人材の育成が急務である。今年は新卒を5人採用
C社は、コンクリート二次製品の出荷、輸送などを主に手がけてきた。景気の悪化、住宅着工件数
する。これからも、若い人材を増やしていく。
や公共投資の減少などから、コンクリート製品全般の輸送量も減ってきた。C社の場合、自車比率を
三分の一に抑えてきたため、物量全体が目減りしていても自社便の稼働率はそれほど落ちてはいない。
しかしながら、このままでは事業の発展が見込めないため、新たな市場開拓が必要になってきた。
(3)取り組み
県内に、危険物倉庫が不足していると知り、新たなビジネスのチャンスとして注目した。少量なら
ば危険物にはならないが、一定数量まとまると、危険物扱いになり、危険物倉庫での保管が義務付け
られる製品がある。
在庫数量の変動によって、保管数量が増え、危険物倉庫での保管が必要になったにもかかわらず、
スペースが確保できないため、一般倉庫に保管されるケースもあるときき、危険物倉庫を手当てすれ
ば、こうした荷主にスペースを提供できると考えた。
全くの異分野で知識も経験もなかったため、取り扱い方法など一から勉強した。保管を委託される
品目によっては、取り扱い免許などが必要になり、その都度、取得した。倉庫の設備についても、消
防署に相談しながら対応した。一般倉庫よりもコストがかかった。社員教育も大変だった。
だが、その分、付加価値も高い分野と見て、必要な投資はすべて行った。
C社の長年携わってきたコンクリート二次製品の輸送は、リスクは高いが他者に比して「安全」の
評価は高い。危険物の取り扱いも、同様にリスクを伴う事業だが、これまでに蓄積したリスクを伴う
業務の管理ノウハウには自信があり、新分野にも積極的に取り組んだ。
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事例④:自社で構築した書籍配送ネットワークを活用し、販売促進活動の代行を実現
(1)会社の概要
(4)成果と今後の課題
通常の雑誌・書籍が、出版社から取次会社を通して一般書店に配送されるのに対して、後発の求人
情報誌は、出版社から直接書店に配達する仕組みになっている。出版取次会社を経由して配達される
会社名 D社
書籍・雑誌は、梱包した状態のまま書店に投込み配本されるだけだが、同社では、梱包を解いての店
所在地 大阪府
頭陳列、ポスターや販促ポップの添付、返本回収、返本数確認など、配達に付随する販促サービス一
事業開始年 昭和42年
切を運転手が行っている。このため、書店員と対面する際の応接マナーを始めとする従業員教育を徹
資本金
底して、きめ細かな販促ノウハウを集積している。
保有車両数 57台(臨時雇用を含む)
荷主が強く求めているのは、納品代行など、物流に付随するサービス業務を信頼して任せきること
ができる運送業者である。運送事業者から見れば「貨物」でも、荷主から見れば「商品」で
ある、という至極当然の視点の転換のなかに、新たなビジネスチャンスがあるといえる。
(2)経営改善までの経緯
D社は、出版社の子会社として創業したが、取扱商品の販売促進ノウハウを蓄積することで、親会社
以外の荷主を獲得して成長してきた。納品代行、販売促進などを行うには、まず接客マナーなど運転
D社は、昭和54年に大手求人雑誌出版社が創刊する求人雑誌を書店に配本するために、出版社の子
手の質や教育が重要である。それと同時に、コンピュータを使った商品の売行き動向の把握など、情
会社として設立した。出版界では、運送事業者の仕事は配送だけであり、運転手は書店が開店する前
報処理能力を高めることで、これまで荷主の担当分野であった業務に進出しているところに、D社の
に梱包した書籍・雑誌を投げ込むだけで、梱包を解いて店頭に陳列するのは書店員の仕事である。店
新しさがある。
頭陳列スペースを確保したり、ポスターや販促ポップを添付するといった販促活動は、出版社の営業
マンの仕事であった。
(3)取り組み
これに対して、D社では、書店の営業時間中に配達を行い、運転手が梱包を解いて雑誌を陳列し、
ポスターや販促ポップの添付なども行う。さらに、前号返本の回収も行う。書店サイドでは、荷解き、
検品、陳列などに人手を掛けることなく商品が店頭に並ぶ。
配本計画は、荷主サイドの指示を受けて実施しているが、D社では、書店ごとの売行き動向の調査
集計などを行い、より返本の少ない、適正な配本計画が実施できるよう出版社にフィードバックする
システムを取っている。これによって、荷主である出版社サイドでは、雑誌の編集だけに専念できる
ことになる。店頭陳列や販促活動を安心して委託できることが高く評価され、親会社以外からも引き
合いがあり、順調に業績を伸ばしている。現在では、親会社以外にも荷主を獲得し、求人情報誌だけ
でなく、住宅情報誌など約50誌を配達している。
コンビニの出現によって配達先が増加したことも、D社には追い風となった。現在では、書店を中
心に、駅売店・コンビニなども配達先となっている。
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事例④:自社で構築した書籍配送ネットワークを活用し、販売促進活動の代行を実現
(1)会社の概要
(4)成果と今後の課題
通常の雑誌・書籍が、出版社から取次会社を通して一般書店に配送されるのに対して、後発の求人
情報誌は、出版社から直接書店に配達する仕組みになっている。出版取次会社を経由して配達される
会社名 D社
書籍・雑誌は、梱包した状態のまま書店に投込み配本されるだけだが、同社では、梱包を解いての店
所在地 大阪府
頭陳列、ポスターや販促ポップの添付、返本回収、返本数確認など、配達に付随する販促サービス一
事業開始年 昭和42年
切を運転手が行っている。このため、書店員と対面する際の応接マナーを始めとする従業員教育を徹
資本金
底して、きめ細かな販促ノウハウを集積している。
保有車両数 57台(臨時雇用を含む)
荷主が強く求めているのは、納品代行など、物流に付随するサービス業務を信頼して任せきること
ができる運送業者である。運送事業者から見れば「貨物」でも、荷主から見れば「商品」で
ある、という至極当然の視点の転換のなかに、新たなビジネスチャンスがあるといえる。
(2)経営改善までの経緯
D社は、出版社の子会社として創業したが、取扱商品の販売促進ノウハウを蓄積することで、親会社
以外の荷主を獲得して成長してきた。納品代行、販売促進などを行うには、まず接客マナーなど運転
D社は、昭和54年に大手求人雑誌出版社が創刊する求人雑誌を書店に配本するために、出版社の子
手の質や教育が重要である。それと同時に、コンピュータを使った商品の売行き動向の把握など、情
会社として設立した。出版界では、運送事業者の仕事は配送だけであり、運転手は書店が開店する前
報処理能力を高めることで、これまで荷主の担当分野であった業務に進出しているところに、D社の
に梱包した書籍・雑誌を投げ込むだけで、梱包を解いて店頭に陳列するのは書店員の仕事である。店
新しさがある。
頭陳列スペースを確保したり、ポスターや販促ポップを添付するといった販促活動は、出版社の営業
マンの仕事であった。
(3)取り組み
これに対して、D社では、書店の営業時間中に配達を行い、運転手が梱包を解いて雑誌を陳列し、
ポスターや販促ポップの添付なども行う。さらに、前号返本の回収も行う。書店サイドでは、荷解き、
検品、陳列などに人手を掛けることなく商品が店頭に並ぶ。
配本計画は、荷主サイドの指示を受けて実施しているが、D社では、書店ごとの売行き動向の調査
集計などを行い、より返本の少ない、適正な配本計画が実施できるよう出版社にフィードバックする
システムを取っている。これによって、荷主である出版社サイドでは、雑誌の編集だけに専念できる
ことになる。店頭陳列や販促活動を安心して委託できることが高く評価され、親会社以外からも引き
合いがあり、順調に業績を伸ばしている。現在では、親会社以外にも荷主を獲得し、求人情報誌だけ
でなく、住宅情報誌など約50誌を配達している。
コンビニの出現によって配達先が増加したことも、D社には追い風となった。現在では、書店を中
心に、駅売店・コンビニなども配達先となっている。
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株式会社カワキタエクスプレス(三重県亀山市)の経営理念
経営理念
「すべての人の笑顔の為に、今を自分らしく、ベストを尽くす」
経営目的
一、お客様に喜びと感動を提供できる企業として発展し、社員が活き活きと笑顔で
仕事に取り組める環境を創る。
一、プロとしての自覚と自信と誇りを持ち、心配りと創意工夫で、新たな物流文化
を創造する。
一、出会うすべての人が笑顔で幸せに暮らせる永続可能な社会を実現する。
Ⅲ
行動指針
一、始まりは、挨拶から。明るく元気な挨拶をする。
おわりに
一、嘘はつかない、ごまかさない。良心に従った行動をする。
一、陰口、愚痴は言わない。意見は正々堂々と言う。
一、世の中に偶然はない。すべてを素直に受け入れる。
一、本気で思えば必ず実現する。
より良い、明るい未来を創造する。
一、前進あるのみ。
とりあえずできる事から、責任を持ってベストを尽くす。
一、人事尽くして天命を待つ。
ベストを尽くしたら、あとは、在るがまま・成すがままに。
一、すべては自分次第。
自分に素直に正直に、ありたい自分であり続ける。
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株式会社カワキタエクスプレス(三重県亀山市)の経営理念
経営理念
「すべての人の笑顔の為に、今を自分らしく、ベストを尽くす」
経営目的
一、お客様に喜びと感動を提供できる企業として発展し、社員が活き活きと笑顔で
仕事に取り組める環境を創る。
一、プロとしての自覚と自信と誇りを持ち、心配りと創意工夫で、新たな物流文化
を創造する。
一、出会うすべての人が笑顔で幸せに暮らせる永続可能な社会を実現する。
Ⅲ
行動指針
一、始まりは、挨拶から。明るく元気な挨拶をする。
おわりに
一、嘘はつかない、ごまかさない。良心に従った行動をする。
一、陰口、愚痴は言わない。意見は正々堂々と言う。
一、世の中に偶然はない。すべてを素直に受け入れる。
一、本気で思えば必ず実現する。
より良い、明るい未来を創造する。
一、前進あるのみ。
とりあえずできる事から、責任を持ってベストを尽くす。
一、人事尽くして天命を待つ。
ベストを尽くしたら、あとは、在るがまま・成すがままに。
一、すべては自分次第。
自分に素直に正直に、ありたい自分であり続ける。
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● 変化しつづける物流市場への対応が存続の分かれ目
社会構造の変化や景気の変動があっても、国民の生活や経済の営みがある以上、トラック輸送への
ニーズは不断にあり続けます。一方で、社会全体が高度化し、複雑化していくにつれ、輸送ニーズも
確実に変化していきます。問題なのは、その対応が中小事業者にはますます難しくなっていることで
あり、今後もその取り組み如何が事業存続の分かれ目にもなりかねないことです。
● ビジネス・チャンスを生かす受け皿としての経営基盤の強化
既述のように、社会構造の変化を、新しいビジネス・チャンスを生み出す好機と捉え、チャンスに
反応する鋭い感性と、事業化に向けて積極的に取り組んでいく意欲が、経営者の基本的な資質として
ますます重要なものになっています。ビジネスチャンスを確実に獲得するためには、その受け皿とな
る組織や経営体制を確立し、基本となるヒト・モノ・カネといった三大要素ばかりでなく、従業員の
能力開発やIT活用などソフト面での経営基盤の強化を図る取り組みが、より重要になってくるでし
ょう。
● チャンスを契機に上昇のスパイラルを形成
そうした意味で、事例研究の対象としてあげた4社は、通常、その場、その時点ではなかなか気が
付きにくく、対応が遅れれば霧散してしまうようなワンチャンスを、適確に活かしている点に共通す
るものがあります。また、少ないチャンスを最大限に効果のあるものにするため、チャンスのインパ
クトが次々と自社の別の要素と反応し合い、良い循環、つまり「上昇のスパイラル」を形成するため
の体制の整備を図っていることも見落とせません。
● システマティックに考え、行動する
現在のような変化の激しい時代にあっては、どの経営者にもビジネス・チャンスが必ず訪れると考
えられます。チャンスを適確に掴んで成長の契機にしている事業者は、経済社会情勢の変化、荷主ニ
ーズの変化に注意し、気を配り、些細な変化を見逃さないよう、多数のアンテナを常に張り巡らして
本書は、課題解決のためのマニュアルとして作成したものであり、本書の成否はみなさんの実践に
いるものです。こうした事業者は、チャンスをモノにし、発展させていくために、従業員の経営参加
かかっています。全国約6万社を数えるトラック運送事業者の事業内容や経営実態は、まさに千差万
意識を喚起し、全社一体となった対応を可能としているばかりでなく、状況の変化に即座に対応でき
別です。また、現在、大きな経営の危機に直面していたり、厳しい経営局面に立っている事業者の方
る“経営システム”を構築しているのです。経営者は、常にシステマティックに考え、事業経営を高
もおられるかもしれません。こうした時にこそ、経営の原点に帰るための「経営理念」「経営ビジョ
度化する必要があります。
ン」が必要なのであり、そのことに気づいていただくためにも本書が役立つことを期待します。
● 経営ビジョンを示して、全員参加で
自社をシステム化し、効率よく運営していくには、経営者の考えや事業に対する思いを経営ビジョ
ンとして、成文化したものとして、全社に示すことが何より重要です。ここまでの段階に達してはじ
めて、経営改善のスタートにつくことができるのであり、現在の業容・業態、「単純輸送」型の経営
から脱却できる入口にたどりつけるのです。
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● 変化しつづける物流市場への対応が存続の分かれ目
社会構造の変化や景気の変動があっても、国民の生活や経済の営みがある以上、トラック輸送への
ニーズは不断にあり続けます。一方で、社会全体が高度化し、複雑化していくにつれ、輸送ニーズも
確実に変化していきます。問題なのは、その対応が中小事業者にはますます難しくなっていることで
あり、今後もその取り組み如何が事業存続の分かれ目にもなりかねないことです。
● ビジネス・チャンスを生かす受け皿としての経営基盤の強化
既述のように、社会構造の変化を、新しいビジネス・チャンスを生み出す好機と捉え、チャンスに
反応する鋭い感性と、事業化に向けて積極的に取り組んでいく意欲が、経営者の基本的な資質として
ますます重要なものになっています。ビジネスチャンスを確実に獲得するためには、その受け皿とな
る組織や経営体制を確立し、基本となるヒト・モノ・カネといった三大要素ばかりでなく、従業員の
能力開発やIT活用などソフト面での経営基盤の強化を図る取り組みが、より重要になってくるでし
ょう。
● チャンスを契機に上昇のスパイラルを形成
そうした意味で、事例研究の対象としてあげた4社は、通常、その場、その時点ではなかなか気が
付きにくく、対応が遅れれば霧散してしまうようなワンチャンスを、適確に活かしている点に共通す
るものがあります。また、少ないチャンスを最大限に効果のあるものにするため、チャンスのインパ
クトが次々と自社の別の要素と反応し合い、良い循環、つまり「上昇のスパイラル」を形成するため
の体制の整備を図っていることも見落とせません。
● システマティックに考え、行動する
現在のような変化の激しい時代にあっては、どの経営者にもビジネス・チャンスが必ず訪れると考
えられます。チャンスを適確に掴んで成長の契機にしている事業者は、経済社会情勢の変化、荷主ニ
ーズの変化に注意し、気を配り、些細な変化を見逃さないよう、多数のアンテナを常に張り巡らして
本書は、課題解決のためのマニュアルとして作成したものであり、本書の成否はみなさんの実践に
いるものです。こうした事業者は、チャンスをモノにし、発展させていくために、従業員の経営参加
かかっています。全国約6万社を数えるトラック運送事業者の事業内容や経営実態は、まさに千差万
意識を喚起し、全社一体となった対応を可能としているばかりでなく、状況の変化に即座に対応でき
別です。また、現在、大きな経営の危機に直面していたり、厳しい経営局面に立っている事業者の方
る“経営システム”を構築しているのです。経営者は、常にシステマティックに考え、事業経営を高
もおられるかもしれません。こうした時にこそ、経営の原点に帰るための「経営理念」「経営ビジョ
度化する必要があります。
ン」が必要なのであり、そのことに気づいていただくためにも本書が役立つことを期待します。
● 経営ビジョンを示して、全員参加で
自社をシステム化し、効率よく運営していくには、経営者の考えや事業に対する思いを経営ビジョ
ンとして、成文化したものとして、全社に示すことが何より重要です。ここまでの段階に達してはじ
めて、経営改善のスタートにつくことができるのであり、現在の業容・業態、「単純輸送」型の経営
から脱却できる入口にたどりつけるのです。
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中小トラック運送事業者のための経営改善マニュアル
発行日
制作・発行
平成16年3月
社団法人 全日本トラック協会
〒163−1519
東京都新宿区西新宿1−6−1 新宿エルタワー19階
TEL 03−5323−7109(代表) FAX 03−5323−7230
URL h t t p : / / w w w . j t a . o r . j p
中小トラック運送事業者のための
中
小
ト
ラ
ッ
ク
運
送
事
業
者
の
た
め
の
経
営
改
善
マ
ニ
ュ
ア
ル
平
成
16
年
3
月
社
団
法
人
全
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ホームページ h t t p : / / w w w . j t a . o r . j p
04095000
経営改善マニュアル
平成16年3月