高性能ポリマー担体 SOURCE 5RPCを用いたペプチドの逆相クロマト

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Volume 3, No. 4 (1998)
GeneChip Technology
アフィメトリクス社GeneChipシステム
の紹介................................................................2
Protein Purification
新開発の高性能ポリマー担体SOURCE 5RPCを
用いたペプチドの逆相クロマトグラフィー............5
Protein Detection
マルチバイオイメージャーStormを使用した
ECL Plusの検出..................................................8
Gene Expression
96ウェルアレーを用いた大腸菌溶菌液中の
GST融合タンパク質の定量...............................11
DNA Sequencing
GeneRapidによるダイレクトシークエンス法
−食道癌におけるp53遺伝子解析の経験から−
...........................................................................13
Cell Biology
ドーパミン D4 レセプターに対する新規の
放射性リガンド[125 I]L-750,667..........................15
Lab Hints
AlkPhos Direct核酸標識・検出システムの
標識プローブのチェック法.................................16
取扱代理店
71-1538-01
製品のご注文は左記の代理店まで
アマシャム ファルマシア バイオテク株式会社
製品お問い合わせバイオダイレクトライン
電話番号:(03)5331-9336
FAX番号:(03)5331-9370
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GeneChip Technology
Microarray technologies have excellent possibilities in
genomics-related researches
−アフィメトリクス社GeneChipシステムの紹介−
New!
GeneChip System
ヒトゲノムの全塩基配列の解読は21 世紀初頭には終えようとしています。その約30 億
塩基対の中には約10 万種の遺伝子情報が存在すると推定されていますが、遺伝子機能
が解明されているものはまだ一部に過ぎません。ゲノム科学の分野において近年注目さ
れているマイクロアレイ技術は、遺伝子の多様な機能を迅速、かつ、効率的に解析でき
る手法として期待されています。本稿では、マイクロアレイを利用した技術として米国
アフィメトリクス社より製品化されましたGeneChip システムについて紹介します。
GeneChip システムは、現代生命科学の複雑さに挑戦している研究者にとって、飛躍的
に作業を軽減して、より効率的に遺伝情報解析に基づいた研究を進めるための確かな手
段となることでしょう。GeneChip 技術は、すでにバイオメディカル研究およびゲノミ
クスにおけるさまざまな研究に応用され、
60 報以上の論文報告があり、数多くの成功を
収め続けています。
はじめに
GeneChipプローブアレイ製造プロセス
目的とする遺伝子の発現量を定量する方
法としてはノザンブロッティングが広く利
用されています。また、多数の遺伝子の中
から特定の機能を有する遺伝子を検出する
方法として、ディファレンシャルディスプ
レイ、サブトラクション、ポジショナルク
ローニングおよびリンケージ解析などが利
用されています。
まず、合成されるオリゴヌクレオチドプ
ローブのセットが、目的とする遺伝子のコ
ーディング領域、ユニークな塩基配列、ま
たはハイブリダイズ能力等に基づいて決定
されます(1)
。そしてこの情報がプローブ
アレイ製造に使用されるフォトリソグラフ
ィックマスクの設計に適用されます。プロ
ーブアレイは固相化学合成と半導体産業に
おいて培われたフォトリソグラフィック製
造技術を組合せた光照射化学合成過程によ
り製造されます(2-4)
。
アフィメトリクス社により開発された
GeneChip は、フォトリソグラフィーとコ
ンビナトリアルケミストリーの手法を利用
した18 ∼25 mer オリゴヌクレオチドの高
密度チップです。GeneChip は、シーケン ハイブリダイゼーションおよび検出
ス解析、ジェノタイピング、および遺伝子
供給されるGeneChip は、そのままハイ
発現モニタリングをはじめとする核酸解析
において広範な適用が可能です。
GeneChip システムでは、サンプル調製か
らデータ収集まで実験条件が至適化されて
いるため、高感度、広いダイナミックレン
ジおよび再現性の高いデータの獲得が実現
されており、ユーザーは実験条件の検討等
にわずらわされることなく信頼性の高いデ
ータを容易に得ることができます。更に、
ゲノム科学によってもたらされる膨大な情
報を連携処理するためのシステムもアフィ
メトリクス社より提供されており、貴重な
実験データが宝の山に放置されることがな
いような配慮もなされています。
図1.GeneChip システムでの実験プロセス
2
Science Tools from Amersham Pharmacia Biotech 3, 4 (1998)
GeneChipプローブアレイ
ブリダイゼーションに使用できます(図1)
。
分析される核酸(ターゲット)を、細胞ま
たは組織から単離した後、 P C R または
in vitro 転写による増幅時に蛍光標識しま
す。そして、標識したターゲットを、
DNase 処理またはマグネシウムイオン存在
下で熱処理により約50 mer のサイズに断
片化した後、Fluidics ステーションまたは
ハイブリダイゼーションオーブンを利用し
てGeneChip とインキュベートします。ハ
イブリダイゼーションおよび洗浄終了後、
GeneChip をスキャナに挿入すると、ハイ
ブリダイゼーションパターンがリアルタイ
ムで表示され、蛍光強度情報が自動的に生
データファイルに保存されます。イメージ
を取得後、ソフトウエアアルゴリズムによ
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GeneChip Technology
り各プローブセル毎の平均強度値が計算さ
れ、シーケンス解析、ジェノタイピング、
および遺伝子発現モニタリングに応用する
ことができます。
広範なアプリケーション
GeneChip 技術は、バイオメディカル研
究、ゲノミクス関連研究および臨床診断研
究の3 つの領域において利用されています。
<バイオメディカル研究>
癌、感染性疾患および遺伝病を含む主要
な病気のカテゴリーにおける臨床研究を進
めることを目標に、HIV PRT、p53、およ
びCYP450 のシーケンス解析アッセイを開
発済で、さらに、その他の疾患関連遺伝子
のシーケンス解析のための新製品を開発中
です。これらの研究成果は、将来的に臨床
応用されることが期待されております。
<ゲノミクス関連研究>
最先端のバイオテクノロジーおよび製薬
会社等の研究を通して、遺伝子発現モニタ
リング、ジェノタイピングおよび大規模な
遺伝子多型のスクリーニングのために
GeneChip 技術が応用されています。ヒト、
マウス、および酵母の遺伝子またはEST を
アレイしたものが既に製品化されています。
現在、ラット、大腸菌、線虫、シロイヌナ
ズナなどの発現解析用、および癌、免疫、
毒性、神経系などに特異的な遺伝子の発現
解析用のGeneChip の開発が計画されてい
ます。
図 2.GeneChip 発現アレイのデザイン
遺伝子発現解析
GeneChip Hu6800、Mu6500、Ye6100
が既に製品化されており、mRNA 発現レ
ベルを定量的にモニターすることができま
す。引き続いて、ヒト42,000 個およびマ
ウス30,000 個の遺伝子発現レベルを解析
するための製品も、1999 年上旬に販売が
予定されております。
それぞれの遺伝子に対応したプローブ
は、3'末端側の複数の領域のパーフェクト
マッチとミスマッチのペアから構成されて
います(図2)
。ミスマッチオリゴヌクレオ
チドは、パーフェクトマッチの中央の塩基
をホモミスマッチに置換した配列です。こ
のユニークなプローブペアの利用により、
<臨床診断研究>
癌やその他の多遺伝子疾患の患者の管理
に遺伝子情報を利用するためには、多くの
異なった遺伝子の同時解析が必要になりま
す。GeneChip システムは、1 検体から多
くの遺伝子検査を同時に行うことを可能に
します。この処理能力は、サンプル調製お
よびデータ解析のための労力を減らし、さ
らに測定時間を短縮することにより、より
早く、しかもより低コストで臨床家に多く
の遺伝子情報を提供できるようになります。
図 3.GeneChipシステムの検出感度および再現性
遺伝子の同定と、非特異的なハイブリダイ
ゼーションやバックグランドシグナルの除
去が可能となります。プローブは、遺伝子
中のユニークな領域から選択されているた
め、同一ファミリー内の遺伝子間において
さえ、個々の遺伝子転写物を特異的に検出
することが可能です。また、プローブ選択
の工夫によりスプライスバリアントの検出
も可能となります。
発現解析用GeneChip は、細胞当たり数
コピー∼数百コピーの発現遺伝子を検出す
るのに使用されています(1)
。ハイブリダ
イズされたアレイから得られる蛍光強度情
報は、 m R N A 量を直接反映しており、
mRNA 濃度の広い範囲で高い再現性が示
されています(図3)
(5)
。各アレイは、既
知量のラベルされたコントロールRNA を
添加することにより、実験内および実験間
のデータを比較定量できるように、様々な
コントロール用RNA の相補鎖プローブを
含んでいます。発現解析用ソフトウエアの
アルゴリズムは、プローブペア強度値から
各 m R N A の存在や増減を読み取ります。
発現データは、解析パラメータに基づいて
直ちに解析され、検出された遺伝子サブセ
ットは、さまざまな形式で表示させること
ができます(図4)
。
この製品群の利用により、数千∼数万遺
伝子の同時モニターが可能になり、ゲノム
図4.GeneChip システムを利用して得られた典型的実験データ
Science Tools from AmershamPharmacia Biotech 3, 4 (1998)
3
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GeneChip Technology
研究が加速化されます。感度は細胞当たり
数コピーの mRNA まで検出可能であり、
かつ、高精度比較分析により 2 ∼ 3 倍以
上のmRNA レベルの変化を検出可能であ
ることから、医薬品開発における新規ター
ゲットの発見が容易になります。
シーケンス解析
シーケンス解析用のGeneChip として、
HIV PRT、p53、およびCYP450 が既に製
品化されており、HIV-1 プロテアーゼおよ
び逆転写酵素遺伝子、ヒトp53 腫瘍抑制遺
伝子の全コーディング領域(exons 2-11)
、
または、ヒトCYP2D6 およびCYP2C19 遺
伝子の18 の既知変異領域の高速かつ高性
能なシーケンス解析を可能にします。
それぞれの遺伝子に対応したプローブ
は、4 ∼ 5 種類がそれぞれにアレンジされ
ています。その 4 ∼ 5 種類のプローブは
“置換部位”と呼ばれる特異的なミスマッ
チ部位を除いて各遺伝子のリファレンスシ
ーケンスに完全に相補的です。置換部位に
おいては、4 つの可能な核酸(A, C, G, T
および欠損)のいずれかがプローブセット
中に存在します。ターゲット遺伝子の可能
な塩基配列のプローブセットが必ず存在し
ますので、目的の遺伝子の全塩基配列解析
に利用することも可能です。
GeneChip HIV PRT アッセイは、HIV-1
のプロテアーゼおよび逆転写酵素遺伝子の
シーケンス解析を行い、より効果のある抗
ウイルス薬を処方できるように、変異パタ
ーンを検索することができます。
(6)
GeneChip p53 アッセイは、p53 遺伝子
のシーケンス解析を行い、癌の性質、薬効
および薬剤耐性などとp53の変異との関連
性をより効果的に調べることを目指す科学
者の研究に主に用いられます。
GeneChip CYP450 アッセイは、シトク
ロム p 4 5 0 酵素遺伝子の多型解析を行い、
医薬品開発において個人間の薬効の違いが
薬物代謝酵素の遺伝子多型によるものか否
か判定できるように、 C Y P 2 D 6 および
CYP2C19 の遺伝子多型を検索することが
できます。
遺伝子多型解析
GeneChip HuSNP2K アッセイは、1999
年上旬の販売開始をめざし、現在複数の共
同研究機関と評価試験を行っている製品
で、2,000 種類以上のヒト1 塩基置換型遺
伝子多型(SNP)の高速な検出を可能にし
ます(7)。数百ナノグラム程度のゲノム
4
DNA を材料として、約24 本の反応チュー
ブを用いてPCR を行ったのち、それらを1
本のチューブに混合し、蛍光標識のための
2 回目のPCRを行います。そのサンプルを
用いたハイブリダイゼーションイメージの
パターンは、ホモジニアスおよびヘテロジ
ニアスジェノタイプを正確に識別します。
これらの操作は、わずか24 時間程度で行
うことができます。
マイクロアレイ技術の可能性
アフィメトリクス社にて開発された
GeneChip システムは、アプリケーション
毎のオリゴヌクレオチドプローブアレイ、
アレイの反応プロセスの制御や管理のため
のハイブリダイゼーション装置とアレイか
ら得られた実験データを解読するためのス
キャナ装置、そして獲得された遺伝子デー
タの収集、解析および管理のためのコンピ
従来のポジショナルクローニング法など
ュータシステムが含まれる統合化システム
による連鎖解析法では、染色体上での局在
であり、ゲノムサイエンス分野の研究者に
から20 cM(センチモルガン)程度の領域
対して、遺伝子情報への迅速で効率的なア
までしか絞り込むことができませんでした
クセス手段を提供します。一方、独自の
が、この製品を利用することにより、約40
cDNA クローンを豊富に所有している研究
個程度の発現遺伝子が存在すると推定され
者や、ターゲットとなるcDNA クローンを
る2 cM の領域にまで高速簡便かつ正確に
少数に選択し終えた研究者が、独自の
絞 り 込 む こ と が 可 能 に な り ま す 。 DNA Chip を作製して遺伝子発現解析を行
GeneChip HuSNP2K アッセイは、種々の
う場合には、もう一つのマイクロアレイ技
疾患関連遺伝子の発見や遺伝的特性を追求
術(スライドガラス等に予め合成された
する研究に主に用いられます。
DNA 断片をスポッターを利用して固定す
る方法)により解析する必要があります。
これらのマイクロアレイ技術を駆使すると
バイオインフォマティックスシステム
共に、さらに優れた日本独自の技術を開発
大量のデータを効率的に活用するための
することにより、ゲノムサイエンス分野に
バイオインフォマティックスツールとして、 おける多彩な実験手法として、マイクロア
GeneChip Laboratory Inform a t i o n
レイ技術が広く利用され、医薬品開発およ
Management System( L I M S)および
び生命現象の解明において大いに貢献でき
GeneChip Expression Data Mining Tool
ることを期待します。
(EDMT)を提供しています。
LIMSサーバーはMicrosoftWindows* NT
4.0 サーバーをOSとし、Microsoft Internet
Information サーバー、および、オープン
RDBMSサーバーを稼動させ、LIMS データ
ベースを構築します。LIMS機能を使用する
と、サンプル情報、実験条件、測定データ、
解析データがLIMSサーバーに格納され、複
数のワークステーションから同一の
LIMSサ
ーバーに接続することも可能です。また、
データを遺伝子関連解析技術の標準化のた
めのオープンコンソーシアム(GATC ;
http://www.gatconsortium.org/)で定めら
れた形式のデータベースへ出力する機能が
あります。
EDMT は GATC 互換データベースに接
続してデータを扱うためのソフトウエアで、
データ検索が簡単に行え、インターネット
上の様々な公開遺伝子情報データベース
(GenBank など)とリンクすることが可能
で、グラフに表示された遺伝子に関する情
報を参照できます。
ご注文情報
参考文献
1)Lockhart, D.J., et al., Nature Biotech.
14,1675-1680(1996)
2)Fodor, S.P.A., et al., Science 251,767773(1993)
3)Pease, A.C., et al., Proc. Natl. Acad.
Sci. 91,5022-5026(1994)
4)P i rrung, M.C. and Fallon, L., J . o rg .
Chem. 63,214-246(1998)
5)Wodicka, L., et al., N a t u re Biotech.
15,1359-1367(1997)
6)Gunthard, H.F., et al., AIDS Res. &
Human Retro v i ru s e s 1 4, 8 6 9 - 8 7 6
(1998)
7)Wang, D.G., et al., Science 280,10771082(1998)
* Windowsは米国マイクロソフト社の登録商標です。
製品の開発は随時進んでおりますので、製品の種類、価格等の詳細についてはお問い
合わせください。
Science Tools from Amersham Pharmacia Biotech 3, 4 (1998)
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Protein Purification
Characterization and optimization of reversed phase
chromatography by newly developed polymeric media
- SOURCE 5RPC −新開発の高性能ポリマー担体 SOURCE 5RPCを用いたペプチドの逆相クロマトグラフィー−
近日発売
SOURCE 5RPC ST 4.6/150
SOURCE 5RPC は、新たに開発された直径5 µm の単分散ポリスチレン/ジビニルベン
ゼンからなる逆相クロマトグラフィー担体で、合成ポリマー担体の弱点であった分離性
能を著しく改善して化学的安定性と分離特性を高いレベルで実現した次世代の担体で
す。従来のシリカ系担体では難しかった高塩基性領域での分離でも安定した性能を示し、
分離サンプルの性質に合わせて全ての
pH 範囲で逆相クロマトグラフィーを行うことがで
きます。また、強塩基による過酷なカラム洗浄を行うことも可能なので、長期にわたっ
て再現性の高い分離結果を得ることができます。
SOURCE 5RPC の分離選択性はシリ
カ系担体のそれとはわずかに異なる上に、
pH 条件やイオン強度などの分離条件を幅広く
選択することができるため、従来法では分離が困難であったペプチドの分離分析にも威
力を発揮します。
SOURCE 5RPC ST 4.6/150
はじめに
新開発SOURCE 5RPC担体
移動相pHの影響 - 保持時間 -
逆相クロマトグラフィー ( R e v e r s e d
Phase Chromatography : RPC) はペプチ
ドや低分子物質の分離分析で最も一般的に
用いられている手法です。多くの場合はシ
リカ系の担体が使用されていますが、高い
分離性能を示す反面、分離条件が酸性領域
に限定されること、ベース担体の劣化によ
る再現性の低下、アルカリによるカラム洗
浄ができないために添加するサンプルの前
処理が必要などの欠点も指摘されていま
す。新たに開発されたポリマー系逆相クロ
マトグラフィー担体 SOURCE 5RPC は、
ポリマー担体の特徴をそのままに、シリカ
系担体とほぼ同等の高い分離性能を実現し
ています。幅広い分離条件を適応すること
が可能なため、酸性条件下で不溶性あるい
は不安定なペプチドやシリカ系担体の分離
条件では十分な分離が得られないペプチド
などの分離でも、これまでにない良好な分
離結果を得ることができます。ここでは、
SOURCE 5RPC 逆相クロマトグラフィー
の分離条件(pH, 塩濃度)の検討と、最適
な分離条件を得るための手法をご紹介いた
します。
SOURCE 5RPC 担 体 を 充 填 し た
SOURCE 5RPC ST 4.6/15 カラムの特徴を
表1 に示しました。SOURCE 5RPC はポリ
スチレンとジビニルベンゼンから合成され
た均一な粒子径を持つ化学的に非常に安定
な真球状ビーズです。シリカ系担体のよう
にアルキル鎖を固定相にする担体とは異な
り、サンプルは担体の疎水性部位と直接相
互作用をします。また、正に荷電した分子
は担体骨格に含まれるポリスチレンの芳香
環とも弱くイオン的な相互作用をするもの
と考えられています(1)
。したがって、結
合の選択性はシリカ系担体とはわずかに異
なることになります。SOURCE 5RPC 担
体による逆相クロマトグラフィーでは、移
動相のpH や塩濃度を気にすることなく自
由に分離条件を設定できるので、最適の分
離を得るためにはシステマティックにクロ
マトグラフィー分離条件を検討していくこ
とが重要です。
ほとんどのペプチドはその分子中に酸性
あるいは塩基性のアミノ酸残基を持つため
移動相のpH によってペプチドの荷電状態
が変化し、逆相クロマトグラフィーの保持
時間も大きく変動します。表2 に示した15
種類のペプチドを、pH 2, pH 7 およびpH
11 の条件下で逆相クロマトグラフィーを行
い、移動相のpH と保持時間の関係を調べ
ました (図1)。
表 1. SOURCE 5RPC ST4.6/150 の特徴
マトリックス
粒子
カラムサイズ
最大耐圧
結合容量
pH 安定性
操作可能温度
ポリスチレン/ジビニルベンゼン
5 µm, 多孔性球形
0.46 x 15 cm (充填量 : 2.5 ml)
40 MPa (5,800 psi)
1~50 µg ペプチド(サンプルに依存)
pH 1 ~ 12 (洗浄時はpH 1~14)
4 ~ 60 ℃
表2. 本実験で用いたペプチドの性質
ペプチド
1. Spleinopentin
2. Arg-Arg-Phe-Leu
3. Ile7 Angiotensin III
4. Asp-Arg-Phe-Leu
5. Lys Bradykinin
6. Angiotensin III
7. Asp-Asp-Phe-Leu
8. Ac-GGQQLL-amide
9. Angiotensin I
10. Neurotensin
11. Met Enkephalin
12. Bombesin
13. DDFLLAA
14. Beta-Endorphin
15. Insulin
分子量
693
590
896
549
1,187
793
508
657
1,158
1,676
573
1,637
764
3,434
5,808
等電点
8.89
12.5
9.5
6.23
12.5
9.4
3.56
3.1
7.45
9.91
10.3
7.8
3.0
10.43
5.2
疎水性*
- 3.7
14.9
39.4
16.6
35.4
40.7
18.3
4.0
48.7
35.8
28.2
29.6
28.1
62.5
97.3
* 疎水性の計算はMeek らの報告による(2)
Science Tools from Amersham Pharmacia Biotech 3, 4 (1998)
5
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Protein Purification
各pH におけるクロマトグラフィー条件を
E n d o r p h i n)の保持時間は遅延しました
表3 に示しました。酸性条件下(pH 2)では (図1b)
。これはペプチドの疎水性が電荷の
ほとんどのペプチドは正に荷電しますが、 影響を強く受けているためで、移動相の
移動相中の大過剰のプロトン(H+)によって
pH 変更が最適分離条件をスクリーニング
電荷は希釈され、保持時間への影響は少な
する上で有効な手法であることを示唆して
いと考えられます。しかし、中性から塩基
います。
性条件下ではそれぞれのペプチドの等電点
図 1a は、酸性条件下で分離が困難な 3
によって、正に荷電したペプチド( Asp種類のペプチドが、それぞれの等電点の違
Asp-Phe-Leu, Ac-GGQQLL-amide, DDFLLAA) いを利用して中性条件下で明確に分離され
は速やかに溶出され、負電荷のペプチド
た例を示しています。
(Arg-Arg-Phe-Leu, Lys-Bradykinin, Beta移動相pHの影響 - ピーク形状 表3. クロマトグラフィー条件
システム:
ÄKTAexplorer 10XT
サンプル量:
10 µl (0.5 mg/ml)
流速: 1 ml/min (375 cm/hr)
検出: 214 nm
【pH 2 での分離条件】
溶出液 A :
5 mM リン酸
溶出液 B : 50% アセトニトリル+ 溶出液 A
グラジエント: 10 ℃ 100%B /20 min
【pH 7 での分離条件】
溶出液 A :
10 mM リン酸カリウムpH 7.0
溶出液 B : 50% アセトニトリル+ 溶出液 A
グラジエント: 10 ℃100%B /20 min
【pH 11での分離条件】
溶出液 A :
10 mM リン酸カリウムpH 11.0
溶出液 B : 50% アセトニトリル+ 溶出液 A
グラジエント: 10 ℃100%B /20 min
(塩添加実験では0.25 M KCl を溶出液A およびB に添加)
図1. pH 変化が分離におよぼす影響
6
ペプチドの電荷は保持時間だけでなくピ
ークの形状にも影響を与えます。シリカ系
担体では、不十分なエンドキャッピングや
担体自体の劣化などによって担体表面に露
出したシラノール基がpH 4~5 以上の条件
下で負に帯電し、正に荷電したペプチドと
のイオン的な相互作用により保持時間の遅
延とピーク幅の広がりを起こすことが知ら
れています。SOURCE 5RPC の場合にも
正電荷を持つペプチドと担体とのイオン的
相互作用によると考えられる保持時間の遅
延とピーク幅の広がりが観察されますが、
イオン的な相互作用は二つの方法で取り除
くことが可能です。一つはペプチドの等電
点以上の条件下で分離を行うことで、もう
一つは高いイオン強度のもとで分離を行う
ことです。これらの条件は、シリカ系担体
の場合は劣化をまねくために推奨される方
法ではありませんが、ポリマー系の
SOURCE 5RPC 担体ではいずれの方法に
よっても有害なイオン的相互作用を排除す
ることができます。図2 は中性条件下で正
に荷電するペプチドを分離した例で、
pH 7
ではピーク幅が広くテーリングが見られ、
良好な分離とは言えません。しかし、移動
相のpH を等電点以上 (pH 11) にするとピ
ーク形状はシャープになり保持時間も短縮
されました。
図2. ペプチドの電荷を変える効果
Science Tools from Amersham Pharmacia Biotech 3, 4 (1998)
イオン強度の影響
移動相に塩を加えてイオン強度を変化さ
せることによっても分離を改善できる場合
があります。図3 は塩の添加で顕著に分離
が改善された例を示しています。図3a で
示したように、Lys-Bradykinin(5)やArgArg-Phe-Leu(7)のような等電点が非常に高
いペプチドの場合は移動相のpH をpH 11
まで上げても十分な分離は見られていませ
んが、0.25 M KCl を添加することによっ
てピーク形状が大幅に改善され、保持時間
も有意に短縮されていることがわかりま
す。図3b には、それぞれのペプチドにつ
いて塩の影響を検討した結果を示しまし
た。Bombesin とNeurotensin でもKCl 添
加によりピーク対称性の値が低く、ピーク
形状は改善しています。
SOURCE 5RPC逆相クロマトグラフィーの
分離条件検討
SOURCE 5RPC 担体はシリカ系担体に
ないユニークな特徴を持つため、移動相の
pH やイオン強度などを分離対象のペプチ
ドの性質に合わせて自由に設定することが
できます。最善の分離パターンを得るため
にはペプチドと担体とのイオン的相互作用
を抑制する条件を適用するのが一般的で
す。すなわち、移動相のpH を十分に低く
保つか、中性から塩基性条件で高イオン強
図3. イオン強度の影響
98-3-4 99.6.2 10:04 AM ページ 7
Protein Purification
図4. ペプチド混合物の分離パターン
15 種類のペプチド混合物をそれぞれの条件下で分離しました。図中の矢印は酸性ペプチド(赤
: ペプチド番号8 / AcGGQQLL-amide)
、中性ペプチド(シアン: ペプチド番号9 / Angiotensin I)
、弱塩基性ペプチド(緑: ペプチド番
号11 / Met Enkephalin)
、塩基性ペプチド(青: ペプチド番号2 / Arg-Arg-Phe-Leu)を示しています。
図5. 合成β -アミロイドペプチドの分離
度の移動相を用いることが推奨されます。
まず、移動相のpH を変化させて最善の分
離パターンを調べます。十分な分離が得ら
れなかった場合は移動相のイオン強度を増
加することによってさらに分離条件を検討
することができます。図4 では今回使用し
た全てのペプチドの混合物を S O U R C E
5RPC ST 4.6/150 により分離したパターン
を示しています。分離条件の変更によりピ
ークパターンが大きく変化すること、溶出
順の入れ替わりやピーク形状の改善などを
見ることができます。
分離条件の適用によって、逆相クロマトグ
ラフィーの応用範囲が大幅に拡大すること
が期待されます。
合成ペプチドの精製例
SOURCE 5RPC ST 4.6/150 により合成
アミロイドβ1- 42ペプチド(分子量: 4,514/
pI=5.24)を精製しました(図 5)。移動相の
pH が等電点よりも十分に高い条件で良好
な分離が見られました。pH 9.0 でクロマト
グラフィーを行い、ピーク分画によって得
られた画分を質量分析の結果、図中の矢印
で示したピークがアミロイドβ1- 42 ペプチ
ドであることが確認されました。
まとめ
逆相クロマトグラフィーはペプチドなど
の低分子物質の分離分析で最も広く用いら
れている手法の一つです。分析目的の逆相
なお、SOURCE RPC シリーズには粒子径15 µm の
クロマトグラフィーでは再現性と分離性能 SOURCE 15RPCおよび30 µm のSOURCE 30RPC 担
体もあり、微量サンプルの分析から大量サンプルの分
が求められます。また、ペプチドやタンパ
離精製にいたる全てのラインナップがそろっています。
ク質の分離精製目的では高い分離性能に加
えてクロマトグラフィー条件の柔軟さとス
ケールアップの容易さが重要になります。 参考文献
SOURCE 5RPC ST 4.6/150 はいずれの条
1. Dennis A. Doughert y, S c i e n c e 2 1 7,
件も高いレベルで実現し、シリカ系担体の
163-168 (1996)
弱点を克服した高性能逆相クロマトグラフ
2. Meek L, Proc. Natl.Acad. Sci. USA 77,
ィー担体であると言えます。
“逆相クロマ
1632-1636 (1980)
トグラフィーはシリカ系担体”という従来
の概念を一掃する新しいポリマー系逆相ク
ロマトグラフィー担体の登場です。様々な
ご注文情報
製品名
SOURCE 5RPC ST 4.6/150
ÄKTAexplorer 10XT*2
ÄKTApurifier*2
*1
*2
価格
キャンペーン価格 *1
カラムサイズ
コード番号
0.46 × 15 cm
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18-1124-65 ¥10,700,000
18-1124-63
¥6,700,000
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ご好評いただいております ÄKTAdesign シリーズを99年 3 月31日までキャンペーン価格で提供します。
価格にはコンピュータ、カラープリンタ、UNICORNソフトウエア、電気伝導度モニター、pHモニター、
フラクションコレクターが含まれます。
Science Tools from AmershamPharmacia Biotech 3, 4 (1998)
7
98-3-4 99.6.2 10:04 AM ページ 8
Protein Detection
Detection of ECL Plus on the Multi BioImager Storm*
−マルチバイオイメージャーStorm を使用したECL Plusの検出−
ECLTM Plusウエスタンブロッティング検出試薬
ECL Plus ウエスタンブロッティング検出試薬は、化学発光(ケミルミネッセンス)を利
用した高感度検出システムです。
ECLPlus による検出は通常X 線フィルム上に露光させ
て行いますが、フラットベッド型蛍光イメージスキャナによっても、高感度に検出が可
能であることがわかりました。今回、マルチバイオイメージャー
Storm によるECL Plus
の検出が、X 線フィルムに露光する通常の検出方法と同等に高感度であること、また、
VistraTM ECF 化学蛍光試薬よりも、2 ∼8 倍高感度であることがわかりましたのでご紹
介します。
ECL Plus
はじめに
X線フィルムとの比較
ECL Plus は、horseradish peroxidase
(HRP)を検出するための化学発光検出試薬
です。ルミノール化合物を基にした従来の
ECL 試薬とは異なり、アクリジン化合物を
基にした化学反応を応用することにより、
高感度でしかも長時間にわたる安定した化
学発光を実現しています(1, 2)
(図1)
。
ECL Plusでは、ECLとは化学発光の機構が
異なるため、フラットベッド型蛍光イメー
ジスキャナによる検出も可能であることが
わかりました。これは、化学発光の過程で
蛍光性反応中間体が形成されるためである
と考えられています。このように、ECL
Plusは化学発光試薬として高感度なだけで
なく、化学蛍光試薬としても利用可能で、
従来の化学発光試薬にない特徴をもってい
ます。ここでは、ECL Plusによる検出をマ
ルチバイオイメージャーStorm を用いて行
い、その検出限界と定量性をX線フィルム
による通常の化学発光検出および化学蛍光
試薬Vistra ECFと比較しました。
[ 方法 ]
等倍希釈したラット脳ホモジネート
(1 : 1000 ∼ 1 : 256,000)と等倍希釈し
たマウスIgG(250 ∼0.98 ng)をサンプル
とし、12 % ポリアクリルアミドゲルを用
いSDS-PAGE 後、Hybond-P(PVDF メン
ブラン)にブロットしました。検出はECL
Plus ウエスタンブロッティング検出試薬の
プロトコールに従って行いました。全行
程においてバッファーは 0.1 % Tween20 を含んだ10 mM PBS(PBS-T)を、ブ
ロッキングバッファーには5 % スキムミル
クを含むPBS-T を使用しました。ラット脳
ホモジネートサンプルには、一次抗体とし
て1000 倍希釈したマウス抗βチューブリ
ン抗体、二次抗体として5000 倍希釈した
HRP 標識抗マウスIgG 抗体を、マウスIgG
サンプルには1000 倍希釈したHRP標識抗
マウスIgG 抗体を使用しました。
[ Stormを使用したデータのスキャニング]
図1:ECL Plusの化学発光原理
*StormはMolecular Dynamics社の製品です。
8
Science Tools from Amersham Pharmacia Biotech 3, 4 (1998)
Storm を使用して以下の方法で検出を行
いました。
1. 平坦面に置いた清浄な低蛍光性のプラ
スティックバックあるいはサポートシー
トの上にタンパク質のブロット面を上
にしておきます。
Storm でスキャンする際には、ポリメチ
ルペンテン製(またはポリエチレン製)
のバックを使用してください。塩化ビ
ニリデン製のラップ(サランラップな
98-3-4 99.6.2 10:04 AM ページ 9
Protein Detection
ど)は蛍光強度が強いため使用できま
せん。
2. ECL Plus 検出試薬(100 µl/cm 2)をブ
ロット面に添加します。プラスティック
バックの気泡をのぞきながらふたを閉
じ、ピペット等を用いて検出試薬がブ
ロット面全体に広がるようにのばしま
す。
3. 5 分間インキュベートします。
4. ブロット面を下にしてブロットをStorm
でスキャンします。
プラスティックバック等に入っているブ
ロットを取り出さないでください。スキ
ャナのガラス面に少量の水を滴下して、
ブロットとガラス面が密着するようにし
てください。さらに、ブロットの上にも
少量の水を滴下し、無蛍光のガラス板
をおきます。また、気泡は完全に除去
してください。
5.Storm のパラメーターは、下記のように
設定します。
スキャンモード
Blue Fluorescence/Chemifluorescence
PTM 電圧
650 ∼800 V
[ 結果 ]
Storm を使用した結果とフィルムに露光
した結果を比較し、それぞれにおいて検出
限界を検討しました。図2 はマウスIgG を
サンプルに用い、 ECL Plus を使用して
0.98
1.95
3.90
7.81
15.63
31.25
Storm で検出を行った結果(a)とフィルムに
露光した結果(b)です。検出限界はほぼ同
様な結果を得ることができました(表1)
。
表1:ECL Plus を使用したStormとX 線フィルムの
検出限界の比較
ラッド脳ホモジネート
Storm
今回は、AttoPhos を用いたケミフルオ
レッセンス検出法と、ECL Plus との比較
を行いました。
マウスIgG
X線フィルム
X線フィルム
( 1 分間 ) Storm ( 1 分間 ) [ 方法 ]
1:32000 1 :32000
1.95 ng
0.98 ng
Stormを使用したECL Plusの定量性
図2(a)のサンプルを用いて、Storm の
解析ソフトImageQuantTM を用いて定量性
を検討しました(図 3)。この結果より、
Storm で検出した結果は定量性に優れてい
ることがわかりました。
Vistra ECFとの比較
次に、通常Storm を用いて検出する化学
蛍光試薬Vistra ECF と、ECL Plus 基質の
感度と定量性について検討しました。
Vistra ECFは、PVDFメンブランにブロッ
トされた目的抗原をFluorImagerTM**もしく
はStorm で検出する試薬です。検出は、フ
ルオロセイン標識二次抗体を用いてその蛍
光を直接検出するか、ケミフルオレッセン
ス法によりシグナルを増強して、目的抗原
を高感度に検出することができます。この
62.5
125
ケミフルオレッセンスでは、アルカリフォ
スファターゼを使用して、AttoPhos TM か
ら生成されるAtto Fluor を励起させること
で 540 ∼ 560 nm の強い蛍光が放出され、
より高感度に検出ができます。
250(ng)
等倍希釈したラット脳ホモジネート
(1 : 1000 ∼ 1 : 256,000)と等倍希釈し
たマウスIgG(250 ∼0.98 ng)をサンプル
とし、12 % ポリアクリルアミドゲルを用
いたSDS-PAGE 後、Hybond-P(PVDF メ
ンブラン)にブロットしました。
検出はECL Plus およびVistra ECF のプ
ロトコールに従いました。全行程における
バッファーは前述同様PBS-Tを使用し、ラ
ット脳ホモジネートサンプルには、一次抗
体として1000 倍希釈したマウス抗βチュ
ーブリン抗体、二次抗体として5000 倍希
釈したAlkaline phosphatase(AP)標識抗マ
ウスIgG 抗体を使用しました。また、マウ
スIgGサンプルには5000 倍希釈したAP 標
識抗マウスIgG 抗体を使用しました。それ
ぞれ 1 5 分間検出を行いました。また、
Storm によるデータのスキャニングは前述
と同様に行いました。
[ 結果 ]
図4 はマウスIgG をサンプルとしてECL
P l u s あるいは Vistra ECF を基質として
Storm で検出した結果です。それぞれの検
出限界を表2 に記載しました。
その結果、 ECL Plus の検出感度は
Vistra ECF よりも2 ∼ 8 倍高いことがわか
りました。また、ECL Plus の蛍光シグナル
は長時間持続し、少なくとも24 時間は安
定した状態で放出されることも確認されま
した。
(a)
0.98
1.95
3.90
7.81
15.63
31.25
62.5
125
250(ng)
(b)
図 2 :ECL Plusを使用したStormと X 線フィルムの検出結果の比較
マウスIgG を等倍希釈したブロットを用いて、HRP標識抗マウスIgG抗体を使用してECL Plusで
検出しました。サンプルのマウスIgGを250∼0.98 ngまで等倍希釈して使用しています。
(a)Stormを使用して検出 ( b)Hyperfilm ECLを使用して検出
図3:ECL Plusの定量性
** FluorImagerはMolecular
Dynamics社の製品です。
Science Tools from AmershamPharmacia Biotech 3, 4 (1998)
9
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Protein Detection
1:32000
1:16000
1:8000
1:4000
1:2000
1:1000
1:32000
1:16000
1:8000
1:4000
1:2000
1:1000
(b)
(a)
図 4 :Stormを用いたECL PlusとVistra ECFの検出結果の比較
ラット脳ホモジネートを等倍希釈したブロットを用いてStormで検出、比較を行いました。ECL Plusを用いた検出には、一次抗体にマウス抗βチューブリン抗体、二
次抗体に HRP 標識抗マウス抗体を用いました。また、 ECF を用いた検出には、AP 標識抗マウス抗体を使用しました。サンプルは1: 1000 ∼1: 256,000 まで等倍希
釈したラット脳ホモジネートを使用し、検出結果は検出限界である1:32,000までを掲載しています。
(a)ECL Plusでの検出 ( b)Vistra ECFでの検出
表2:Storm を用いたECLPlus とVistra ECF を使用した検出限界の比較
ラット脳ホモジネート
マウスIgG
反応直後のスキャン
24時間後スキャン
ECLPlus
1 :32000
1 :32000
1.95 ng
Vistra ECF
1 :16000
1 :4000
15.6 ng
まとめ
図2 に示したウエスタンブロットの結果、
マウスIgG サンプルの場合、検出限界はフ
ィルムを使用しての検出とStorm による検
出はほぼ同等でした。しかしながら、定量
性に関してはStorm を使用して検出した方
が定量性が高いことがわかりました。この
ことから、X 線フィルムは定性的な解析に
使用し、定量性を求める場合にはStorm を
使用するといった、解析目的に合わせて、
検出方法を選択することができます。
Storm を使用する場合、ECL Plus のほ
うがVistra ECF を使用して検出するよりも
2 ∼ 8 倍、高い感度が得られました。また
ECL Plus、Vistra ECF ともに、大変定量
性に優れていることもわかりました(デー
タ未掲載)
。他の蛍光検出機器、たとえば、
FluorImager を使用してもECL Plus の検出
は可能ですが、Storm による結果に比べる
反応直後のスキャン
と若干感度が落ち、画像が悪いことがわか
っています(データ未掲載)
。
参考文献
1. AKHAVEN-TAFTI, H. et al., Clin.Chem.,
ECL Plus は、ウエスタンブロッティング
41, 1368-1369(1995)
による検出において、シグナルが長時間持 2. AKHAVEN-TAFTI, H. et al., Biolum.
続し、高感度であることが証明されていま
And Chemilum. Fundamentals and Applied
す。今回紹介した実験で、ECL Plus の検出
Aspects, 199-202, Chichester, (1994)
はStorm を用いて高感度で行うことができ、
高精度の定量が可能であることがわかりま
した。
ECL Plus と蛍光イメージスキャナの組み
合わせによる高感度検出・定量は、タンパ
ク質の発現解析、機能解析など多くの分野
で利用されていくものと期待されます。
ご注文情報
製品名
包装
コード番号
価格
ECL Plus Western blotting detection reagent
For 1000cm2 membrane detection
RPN2132
¥33,000
Vistra ECF Westren blotting kit
For 2500cm2 membrane detection
RPN5780
¥68,000
Mouse Ig, HRP linked whole Antibody (from sheep)
Mouse anti-β tubulin
10
Science Tools from Amersham Pharmacia Biotech 3, 4 (1998)
1 ml
150 µg
NA931
¥38,500
N357
¥54,000
98-3-4 99.6.2 10:04 AM ページ 11
Gene Expression
Quantitative detection of GST fusion proteins in bacterial lysates using a 96-well array
−96ウェル アレーを用いた大腸菌溶菌液中のGST融合タンパク質の定量 −
Peter Bell, Robert Dunst and Denise Garvin
Amersham Pharmacia Biotech, Milwaukee, WI, USA
New!
GST 96-Well Detection Module
GST 96-Well Detection Module は、GST 融合タンパク質を捕捉するためのポリクロー
ナル抗GST 抗体が、マイクロタイタープレートのウェルに固相化してあります。捕捉さ
れたGST 融合タンパク質をHRP 標識抗GST 抗体および発色基質により検出します。こ
のシステムは 1 ng の組換え G S T タンパク質 ( r G S T )を検出できる感度をもち、
Glutathion を固相化して定量する方法に比べ、10 ∼ 100 倍高感度です。GST 96-Well
Detection Module は、最適なブロッキング処理がすでに行われているプレートを使用し
ていますので、非特異的結合が少なく大腸菌溶菌液の様な粗抽出サンプルからそのまま
測定することが可能です。このGST 96-Well Detection Module では、プレート1 枚あ
たり96 サンプルのスクリーニングを迅速かつ特異的に行なうことができます。
はじめに
GST 96-Well Detection Moduleの標
準曲線作成法
組換えタンパク質の発現において検出や
精製を容易にするため目的のタンパク質に
r G S T を 1 × ブロッキングバッファー
‘ タグ ’を融合させる方法が開発されてい (3% スキムミルク、0.05% Tween 20を含
ます(1)
。迅速で高い特異性を持つ検出
む 1 × P B S)で段階希釈し、各 100 µl を
方法は大腸菌溶菌液などをハイスループッ
GST 96-Well Detection Plate のウェルに加
トスクリーニングで処理するには、欠かせ
え、一時間の反応後、各ウェルを洗浄しま
ない要素です。 GST 96-Well Detection
した。(洗浄バッファー: 0.05% Tween
Module を用いると、GST(Glutathione S20 を含む1 × PBS)
transferase)をタグにもつ融合タンパク質発
現系(2)において、ハイスループットス
クリーニングを簡便かつ正確に行なうこと
ができます。 GST 96-Well Detection
Module では、ポリクローナル抗GST 抗体
を固相化してあり、さらに最適なブロッキ
ング処理もされているので、サンプル中の
GST 融合タンパク質は特異的かつ強固に捕
捉されます。固相抗体に結合しないタンパ
ク質等を洗浄除去したあと、HRP 標識抗
GST 抗体で GST 融合タンパク質を検出し
ます。組換えGST タンパク質(rGST)を用
いて標準曲線を作成することによっても、
サンプル中のGST 量の定量もできます。ま
た、目的タンパク質に対する抗体を用い、
目的タンパク質に特異的なGST 融合タンパ
図 1 : GST 96-Well Detection Module による組換え
ク質を検出することもできます。
GST タンパク質の検出
各濃度の標準 r G S T を調製して、 G S T 9 6 - We l l
Detection Plate に加え、標準プロトコールに従いHRP
標識抗GST 抗体およびTMB を用いて発色させ、プレー
トリーダーで450nm の吸光度を測定しました。
GST Gene Fusion System
さらに 1 0 0 0 倍希釈した H R P 標識抗
GST抗体を加え、1 時間反応させ、洗浄操
作後、HRP の基質であるTMB(3,3',5,5't e t r a m e t h y l b e n z i d i n e)により発色させ、
反応産物の 450 nm の吸光度をプレート
リーダーで測定しました。
図 1 に10 pg ∼10 µg の範囲の標準曲線
を示します。1 ng のrGST でも、バックグ
ラウンドにくらべ高い吸光度が再現性よく
得られています。またこのアッセイ系は2
log 以上の濃度範囲にわたって直線性が得
られています。但し、この検出感度につい
ては融合パートナーにより異なることがあ
ります。
プレートを使用したGST検出系の比較
GST 96-Well Detection Module では抗
GST 抗体を固相化しGST 融合タンパク質
を捕捉しますが、固相化 glutathione で
GST 融合タンパク質を捕捉する系も市販さ
れています。検出感度を固相化glutathione
を採用しているA 社とB 社の製品と比較し
ました。
図2に0.1 ∼100 ng のrGSTを使用し比
較した例を示します。
図1にも示しましたように、アマシャム
ファルマシア バイオテクのGST 96-Well
Detection Module は1 ng でも高い吸光度
Science Tools from Amersham Pharmacia Biotech 3, 4 (1998)
11
98-3-4 99.6.2 10:05 AM ページ 12
Gene Expression
が得られています。しかし、GST 96-Well
Detection Module で1 ng の検出をしたと
きと同じ吸光度を得るにはA 社製品では10
∼ 100 ng、B 社の製品では100 ng 以上の
rGST が必要でした。
A社
B社
質の検出をおこないました。rGST を加え
た3列にはHRP 標識抗GST 抗体を加え反
応させました。すべてのウェルにTMB を
加え、プレートリーダーで吸光度を測定し
ました。
結果を図3に示します。GST-ルシフェ
ラーゼ融合タンパク質を含む溶菌液を加え
たウェルは強い陽性シグナルが検出されて
います。全く発色が認められない、あるい
は弱い陽性シグナルのウェルにはルシフェ
ラーゼ遺伝子が組み込まれていないpGEX6P-1 由来のGST が含まれていると考えら
れます。
まとめ
GST 96-Well Detection Module を用い
ると、1 ng のrGST でも充分な発色検出を
行えることが示されました。これは
g l u t a t h i o n e を固相化した製品にくらべ、
10 ∼100 倍感度が高いシステムです。GST
96-Well Detection Module が高感度なの
図2 : Glutathione 固相化法との検出比較
各濃度の標準 r G S T を調製して、 G S T 9 6 - We l l
Detection Module と Glutathione 固相化プレート(A
社、B 社)に加え、HRP 標識抗GST 抗体およびTMB
を用いて発色させ、プレートリーダーで450 nm の吸光
度を測定しました。
は、ポリクローナル抗GST 抗体を固相化し
ているために、GST 融合タンパク質の捕捉
効率が増大しているためではないかと考え
られます。さらに高い特異性を持つ抗体を
用い、あらかじめ最適なブロッキング処理
を行うことにより、非特異的結合を低く抑
え、大腸菌溶菌液のようなタンパク質の混
在した粗精製サンプルからの測定が可能と
なりました。 GST 96-Well Detection
Module では、キットに含まれるHRP 標識
抗GST 抗体を用いての検出もできますし、
融合パートナーに特異的な抗体を用いて検
出することもできます。大量のサンプルを
測定するようなハイスループットスクリー
ニング系としても、このシステムなら迅速
に行なうことができます。
参考文献
1. NILSSON,J. et al., Protein Expression
and Purification 11,1(1997)
2. Smith,D.B. and Johnson,K.S., G e n e
67,31(1988)
溶菌液中のGST融合タンパク質の検出に
よるスクリーニング
目的タンパク質に特異的な抗体を用い、
GST 96-Well Detection Plate を使って
GST 融合タンパク質を検出した結果を示し
ます。ルシフェラーゼ遺伝子断片をGST 融
合タンパク質発現ベクターである pGEX6P-1 に挿入し大腸菌BL21 株を形質転換し
たのち、得られたアンピシリン耐性形質転
換体から無作為に64 コロニーを選択しま
した。それらのコロニーを 3 ml の 2 ×
Y TA 培地で 3 7 ℃、一晩培養後、終濃度
0.1 mM のIPTG を加えて更に2 時間培養
し、GST 融合タンパク質の発現を誘導しま
した。その1.5 ml をとり、超音波処理によ
って溶菌液サンプルを調製しました。
図 3 :GST96-Well Detection Module を用いた大腸菌溶菌液サンプルのスクリーニング結果
1-3 列: rGST を段階希釈し、GST96-Well Detection Plate に加えHRP 標識抗GST 抗体を用いた標準アッセイ法
で3重測定しました。
4-12 列:ルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだ
pGEX-6P-1 ベクターにより形質転換された大腸菌BL21 株のうち、ア
ンピシリン耐性を示す64 コロニーをランダムに選択して溶菌液を調製し、
GST 96-Well Detection Plate
に加えて、ウサギ抗ルシフェラーゼ抗体および
HRP 標識抗ウサギ抗体で検出しました。
各溶菌液50 µl を等量の2 × ブロッキン
グバッファーで希釈し GST 96-We l l
Detection Plate のウェルに加えました。ま
ご注文情報
た、同じプレートの3 列を用いてコントロ
ールとしてrGST を段階希釈したものを測
製品名
包装
コード番号
価格
定しました。室温で1 時間反応させたあと、 GST 96-Well Detection Module
96-well × 5 枚
27-4592-01
¥60,000
pGEX-6P-1
25 µg
27-4597-01
¥40,000
すべてのウェルを洗浄バッファーで2回洗
E.coli BL21
1 vial
27-1542-01
¥5,000
浄しました。溶菌液サンプルを加えたウェ
Anti-GST Antibody
0.5 ml
27-4577-01
¥27,000
ルはウサギ抗ルシフェラーゼ抗体で反応さ
せた後、HRP 標識抗ウサギ IgG 抗体を反
この他にもGST 融合タンパク質システム研究用製品を各種ご用意しています。詳細につきましては
応させ、GST-ルシフェラーゼ融合タンパク
バイオダイレクトラインまでお問い合わせください。
12
Science Tools from Amersham Pharmacia Biotech 3, 4 (1998)
98-3-4 99.6.2 10:05 AM ページ 13
DNA Sequencing
Direct sequencing by the GeneRapid system:
Mutation analysis of the p53
GeneRapidによるダイレクトシークエンス法 -食道癌におけるp53 遺伝子解析の経験から久保田 健夫、中島 民江、関 博、小嶋 牧子、福嶋 義光
信州大学 医学部 衛生学講座
New!
GeneRapid 自動DNA シークエンサー
近年のゲノムプロジェクトの進展と相まってクローニングされた遺伝子の数は飛躍的
に増加した。それと同時に遺伝子診断の対象疾患の数も増加しており、塩基配列の決
定というプロセスは臨床検査分野においても重要な項目になりつつある。しかしなが
ら従来のシークエンス法は煩雑で多くの労力を必要とした。今回われわれはアマシャム
ファルマシアバイオテク社のパーソナルシークエンサーGeneRapid DNA シークエンサ
ーを使用する機会を得、これを用いて食道癌組織における
p53 遺伝子の変異を短時間に
同定し得た。本製品はその簡便性・迅速性から、少数のサンプルを迅速に解析すること
が必要な状況下で威力を発揮すると思われた。
GeneRapid 自動 DNA シークエンサー
はじめに
若年で種々の癌を発症する常染色体優
性遺伝性疾患であるLi-Fraumeni 症候群で
は、p53 遺伝子の変異が認められる(1)。こ
の遺伝子はp21 やRb 遺伝子を介して細胞
周期をG1 期で停止させる機能を有し、癌
抑制遺伝子の一つとされている。本遺伝子
に変異が生じてこの機能を失うと、細胞が
損傷を受けた際にG1 期で停止させ修復す
るという一連の機構が破綻し、癌化に至る
と推定されている。一方癌関連遺伝子の変
異においては、先天的な要因に加え後天的
な環境因子も重要な役割を果たしている
(2)。
例えば喫煙は肺癌のリスクファクターとし
て知られているが、肺癌患者の癌組織中の
p53 遺伝子を解析すると、喫煙既往者は非
喫煙者に比較し p53 遺伝子の変異が多い
(3)。遺伝子変異の頻度を組織学的に比較
すると、p53 遺伝子変異は扁平上皮癌に多
く、逆にras 遺伝子変異は腺癌に多く認め
られる(4)。さらにp53 遺伝子においては
頻度のみならず変異のホットスポットも扁
平上皮癌と腺癌間で異なる(5)。
て遺伝子変異の同定は、発癌などの疾患の
病態を明らかにするという本来の目的の他
に、変異の部位から疫学的に発癌環境因子
を推定できる点からも重要である。
現在われわれは、食道癌多発地域の食道
癌患者から得た癌組織におけるp53 遺伝子
の変異を解析し、これらの集団に共通の変
異が存在するか検討中である。本稿では本
プロジェクトに際し最近使用したパーソナ
ルシークエンサーによる解析データの一部
を、若干の経験とともに報告する。
テム MultiphorII、ExcelGel DNA フラグ
メント解析キットを用いて解析した。方法
は泳動温度を 1 5 ℃とし、その他は U s e r
Manual に従った。正常対照に比較してバ
ンドパターンが異なるものを遺伝子変異を
有する可能性があると判定した(図2)
。
これらの変異候補PCR産物は、はじめの
PCR ステップで用いたものと同一のプライ
マーで再増幅し、カラムシステム ( Q I A
quick DNA purification kit, QIAGEN)を
用いて精製した。
方法
方法のアウトラインを図1に示した。
まず癌組織からゲノム D N A を抽出し、
p53 遺伝子のエクソン5を増幅した。増幅
に用いたプライマーはエクソンの外側の
イントロン内にあり、そのシークエンスは
センス、アンチセンスプライマーそれぞれ、
5'-TGT TCA CTT GTG CCC TGA CT-3' 、
5'-CAG CCC TGT CGT CTC TCC AG-3'
である。PCR 条件は、DNA の変性と加熱
活性型 Taq polymerase (AmpliTaq Gold,
これらの結果は、変異の起こる遺伝子や
PE Applied Biosystems) のための 9 5 ℃
遺伝子内の領域が、環境因子(化学物質や
(10 min) のステップの後 9 4 ℃(30 sec)ウイルスなど)と宿主因子(臓器・組織な
62 ℃(30 sec)-72 ℃(30 sec) のステップを
ど)の相互作用によって決定されているこ
35 回 繰り返し、伸長反応として 72 ℃ (7
とを示唆している。たとえばウラン炭坑労
min) を、GeneAmp PCR system 9600
働者の肺癌においては、変異がp53 遺伝子
(PE Applied Biosystems) を用いて行った。
のコドン249(エクソン7)のアミノ酸に
得られたPCR産物を水平型電気泳動シス
高発することが知られている(6)
。したがっ
GeneRapidによるダイレクトシークエンス
PCR
癌組織サンプルから抽出したDNAを用いて
p53遺伝子をエクソンごとに増幅
SSCP
異常バンドを呈するサンプルを
スクリーニング(図2)
2nd PCR
スクリーニングしたサンプルをPCRで
再増幅(図3)
Purification
2nd PCR産物を精製(図4)
Sequencing
精製されたP C R 産物を用いてダイレクト
シークエンス(図5)
図1 :
Science Tools from Amersham Pharmacia Biotech 3, 4 (1998)
13
98-3-4 99.6.2 10:05 AM ページ 14
DNA Sequencing
結果
考案
S S C P により解析した6検体のうち、
サンプル1、3、6 に異常パターンを認めた
(図2)。これら3検体を変異候補として
図2:p53 遺伝子(エクソン5)のSSCP解析結果
Normal: 正常対照サンプル、1∼6: 食道癌サンプル。
M: DNAサイズマーカー。サンプル1、3、6に正
常サンプルに認められない異常なバンドを認める。
シークエンスを行った(3、6 の結果は提示
せず)
。シークエンスに際し、再増幅した
PCR 産物、およびカラムで精製した産物
が、それぞれのステップできちんと得られ
ていることをアガロースゲル上で確認した
(図3、4)。シークエンス反応は C y 5 . 5
dye terminator kit により行った。
その結果サンプル1では、G からA への
変異を示すダブルピーク(ヘテロ接合)を
認めた(図5)
。
この結果はエクソン5のreverse プライ
マーを使って得られたシークエンスと、他の
シークエンサーを用いて得られたシークエン
スによっても確認された(結果提示せず)
。
サンプル1に認められた変異は、p53 遺
伝子のコドン175 においてアルギニンがヒ
スチジンに置換するミスセンス変異であっ
た。このコドン175 は本遺伝子の5つのホ
ットスポットの一つとされ、p53 遺伝子の
機能的に重要な領域(塩基配列特異的DNA
結合ドメインⅢ)内に位置していた ( 7)。
従ってこの変異によってp53 遺伝子はその
癌抑制機能を失い、食道癌が生じたものと
考えられた。
上記の解析によりGeneRapid パーソナ
ル DNA シークエンサーは、従来用いられ
てきたシークエンサーと同等の精度を有す
ることがが判明した。しかも、操作はさら
に簡略化されており、ゲルキャスティング
からデータを得るまで1時間で完了する迅
速性も備えていた。データは、ベースライ
ンノイズが少ない均一性のあるシークエン
スシグナルが得られ、これにより癌組織か
らのシグナルと正常組織からのシグナルを
容易に判別することができた。これは、反
応系に非特異的な伸長停止フラグメント由
来のノイズの影響を受け難いダイ・ターミ
ネーター法を用いていること、高い伸長活
性と均一性のあるシグナルが得られる
Thermo Sequenase を採用していること、
および生データによるデータ評価を可能に
した単一蛍光色素法を採用している、と言
ったこのシステムの特性によるものと思わ
れる。
このようなことは、正常組織の混入を避
けることが困難な癌組織を用いての解析の
際に、癌由来の遺伝子変異を明確に同定す
る上で有利と思われる。今回われわれは、
本製品を多数のサンプル解析を要するプロ
ジェクトに使用したが、本製品のゲル作製
の簡便性やシークエンス結果が30 分間の
泳動で得られる迅速性、また安価であるな
どの利点から考えると、病院の検査室など
において少数の患者サンプルを迅速に解析
することが必要な状況下で、より威力を発
揮するものであると思われた。
文献
1. Malkin D, et al. S c i e n c e 2 5 0, 1233
(1990)
2. 中島民江, 福嶋義光. THE LUNG
perspectives 6, 396 (1998)
3. Suzuki H, et al. Cancer Res 5 2, 734
(1992)
4. Bos JL. Cancer Res 52,2665s (1989)
5. Husgafvel-Purusiainen K, et al.
J Occup Environ Med 37, 69 (1995)
6. Taylor JA, et al. Lancet 3 4 3, 86-87
(1994)
7. Jybbytat MHG et al. Mol Med Today
4, 250 (1998)
図 3 : SSCP で陽性であったサンプルを再増
幅した PCR産物
全てはっきりした1本のバンドを認める。
M: DNAサイズマーカー
レーンa:
サンプル 1
レーンb:
サンプル 3
レーンc:
サンプル 6
レーン d ∼f: 他のSSCP陽性サンプル
図 5 :サンプル1のシークエンス結果(p53 遺伝子 エクソン5)
ご注文情報
製品名
図 4 :図 3 の産物の精製後の結果
この精製産物をシークエンスに用いた。
GeneRapid自動DNAシークエンサー *
Multiphor II 電気泳動装置 *
ExcelGel DNAフラグメント解析キット
コード番号
価格
18-1018-06
17-1198-07
¥ 3,700,000
¥ 330,000
¥ 32,000
* システム構成などの詳細につきましては、バイオダイレクトラインまでお問合せください。
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Science Tools from Amersham Pharmacia Biotech 3, 4 (1998)
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Cell Biology
[125I]L-750,667, a novel radioligand for the dopamine
D4 receptor
−ドーパミンD4 レセプターに対する新規の放射性リガンド[125I] L-750,667−
[125I]L-750,667(Dopamine D4 ligand)
ドーパミンレセプターは精神分裂病やパーキンソン病といった多くの神経系疾患に関与
しています。精神分裂病の治療に効果がある薬物は、様々な化合物が知られていますが、
D2 レセプターと高い親和性を持つ活性型のアンタゴニストであるという共通の性質を持
ちます。
はじめに
近年、いくつかの異なるサブタイプのド
ーパミンレセプター遺伝子がクローニング
されました(1-5)。これらはD1-like(D1, D5)
及びD2-like (D2, D3, D4)の2 つのクラスに
分けられます。D4 レセプターは神経弛緩薬
clozapine と高い親和性を示すため、特に
注目を浴びています。clozapine は神経伝
達物質のレセプターに対し広く活性を持ち
中枢神経系(CNS)においてD2 レセプターよ
り高い割合でD4 レセプターをブロックして
います(6, 7)。
このように、選択的にD4 レセプターを
認識するアンタゴニストが抗精神病薬とし
て有効なのではないかと考え、調査をした
結果、 a z a i n d o l e の誘導体である L 750,667 * がD4 レセプターのアンタゴニス
トとして高い選択性を持つことがわかりま
した(図1)
。このL-750,667 の125I アナロ
グは、D4 レセプターの研究に理想的なリガ
ンドと考えられます(8, 9)。
ヒトD2 レセプターはチャイニーズハムス
ター卵巣(CHO)細胞で、またヒト D3, D4
レセプターはヒト胚腎臓(HEK)細胞で発現
させました (3, 4)。 [ 1 2 5I ] L - 7 5 0 , 6 6 7 と
hD4HEK細胞の結合は、0.02 ∼0.5 nM の
[125I]L-750,667 を室温にてインキュベート
することにより解析しました。また、置換
実験で0.03 nM の[125I]L-750,667 に様々
な量 (30∼80 µg)のタンパク質を加えて行
いました。インキュベート終了後、0.5%
PEI を浸したGF/B フィルターで分離し、洗
浄しました。非特異的な結合は、1 µM の
haloperidol(中枢神経抑制剤)を加えて、
放射活性を測定しました。
L-750,667 は D4 レセプターに対し非常
に高い親和性 (Ki 0.51 nM)を持ち、D 2 、
D3 レセプターと比較して2000 倍以上選択
的に結合活性を示しました。
L-750,667 は、
ラットD1/D5 レセプター、シグマレセプタ
ー、5HT1A、5HT2 レセプターに若干の親
和 性 を 持 ち ま す 。 h D 2 C H O 細胞、
hD3HBK 細胞由来の膜画分に対しては、放
射性リガンド[3H]spiperone が非選択的に
有意な結合を示す条件下においても[125I]L750,667 (0.03 nM)は特異的な結合を示し
ませんでした。[125I]L-750,667 は、選択
的かつ飽和的に h D 4H E K 細胞と結合し、
Scatchard 解析によれば、単一の物質に対
して解離定数Kd 0.16 ±0.06 nM、結合容
量250 ±71 fmol/mg protein で結合するこ
とが示されました。レセプター数は、
[3H]spiperone(β max227 ± 83 fmol/mg、
Kd 0.11 ±0.01 nM)で明らかになった値と
ほぼ同様でした。 0.03 nM の [ 1 2 5I ] L 750,667 が hD4HEK 細胞と結合すること
は、D4 レセプターと高い親和性を示す化合
物を用いて調べられました。ドパーミンレ
セプターアゴニストとして有効である可能
性の順位はドーパミン>quinpirole > 6,7
ADTN > 5,6 ADTN となりました。また、
ドーパミンレセプターアンタゴニストは次
に示す順で親和性を持ちます。
haloperidol >chlorpromazine>dopamine >
(+)butaclamol>(-)sulpride=(+)sulpride >
(+)SCH23390 >(-)butaclamol。
まとめ
L-750,667 はD4 レセプターと高い親和
性を持つ選択的なアンタゴニストです。さ
らに、[125I]L-750,667 はD 4 レセプターの
理想的な放射性リガンドであるため、
hD4HEK 細胞の薬理学的なプロフィールを
明らかにすることやCNS 系におけるD4 レ
セプター量の調査にも応用できます。脳中
のドーパミンD4 レセプターの密度を直接測
定する事により精神分裂病と、D4 レセプタ
ーの関係解明につながるものと期待されま
す(8-10)。
参考文献
1. Dearry, A.G.,et al., Nature, 347, 72 (1990)
2. B u n z o w, J.R.,et al., Nature , 3 3 6, 783
(1988)
3. okoloff, et al., Nature, 347, 146 (1990)
4. Van Tol, H.H.M., et al., Nature, 350, 610
(1991)
5. Sunahara, P. K . ,et al., Nature , 3 5 0, 614
(1991)
6. Coward, et al., Psychopharmacol.,99, S6
(1989)
7. Seeman, P., et al., Neuropsuchopharmacol.,
7, 261 (1992)
8. Rowley, M.,et al., J. Med, Chem., 39 (10),
1943 (1996)
9. Patel, S., et al., Molecular Pharmacology,
in press
10. Reynolds, G.P. and Mason, S.L., E u r. J.
P h a rmacol., 2 8 1, R5 (1995)
*[125I]L-750,667 is exclusively manufactured by
Amersham under license from Merck Sharp & Dohme
ご注文情報
製品名
コード番号
[125I]L-750,667(Dopamine D4 ligand)
図 1 :L-750, 667の構造
IM 293
包装
370kBq
925kBq
価格
¥90,000
¥170,000
*この製品はRI ですので、ご注文は使用施設の許可をご確認の上、日本アイソトープ協会へご注文ください。
Science Tools from Amersham Pharmacia Biotech 3, 4 (1998)
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AlkPhos Direct 核酸標識・検出システムの標識プローブ
のチェック法
(AlkPhos Direct ' Rapid Labelling Assay ' )
2 ml のハイブリダイゼーションバッファー
(ブロッキング試薬を含む)に5 µl の標識
プローブを添加して、50 ℃で30 分間ハイ
ブリダイゼーションを行います。プレハイ
ブリダイゼーションは不要です。
はじめに
AlkPhos Direct 核酸標識・検出システ
ムは、酵素を直接標識したプローブを使用
するアマシャムファルマシアバイオテク独
自のNon-RI ハイブリダイゼーションシス
テムです。RI を用いる場合の危険性や煩わ [手順3:コントロールブロットの作製]
しさがなく、RI 法とほとんど同じ操作手順
ハイブリダイゼーションを行っている間
でサザン/ノーザンブロッティング解析が
に、標識試薬を10-5 から二倍ずつ希釈した
できます。このシステムでは、熱変性した 希釈系列を作製します。各々1 µl をメンブ
DNA(あるいはRNA)にアルカリホスフ
ランにドットして風乾します。
ァターゼを化学的に共有結合させることに
[手順4:ブロットの洗浄]
よりプローブを作製します。標識された
手順2でハイブリダイゼーションが終了
DNA 断片と未反応のアルカリホスファタ
したメンブランと、手順3で作製したブロ
ーゼを分離することが困難なため、RI 法の
ットを、2次洗浄バッファーを用いて、室
ような標識効率の測定ができません。しか
温で5分間洗浄します。次に、バッファー
しながら、以下のような方法で、迅速に標
を交換して、再度室温で5分間洗浄しま
識プローブのチェックを行うことが可能で
す。1次洗浄は必要ありません。
す。
[手順5:シグナルの検出]
DNA希釈系列ブロットの作製
希釈系列
0 ng
0.1 ng
1 ng
10 ng
ハイブリダイゼーション
●ハイブリダイゼーションバッファー
(ブロッキング試薬を含む)
●標識プローブ
50 ℃ 30分間
洗浄が終了したブロットを、余分なバッ
ファーをできるだけ除いてから、ドットし
プローブ作製に用いるDNA の希釈系列
た面を上にしてサランラップの上に置きま
をドットしたフィルターを作製し、標識プ
す。検出試薬(30 ∼40 µl/cm2)をブロッ
ローブを用いて短時間のハイブリダイゼー
トに添加して、サランラップでメンブラン
ションを行った後、シグナルを検出します。
を挟み込み、ピペットを転がしてメンブラ
これとは別に、標識試薬(アルカリホスファ
ン全体に検出試薬を広げます。そのまま2
ターゼ)の希釈系列をフィルターにドットし、
∼5 分間放置します。余分な検出試薬を除
同様に検出試薬を用いてシグナルを検出し、
いた後、新しいサランラップに挟み込みま
両者のシグナルを比較します。
す。X 線フィルムを用いて30 分間露光後、
現像します。
方法
プローブの作製に用いるDNA を熱変性
し、0, 0.1, 1, 10 ng をナイロンメンブラン
にドットして、固定します。DNA は十分
に変性するように、水で希釈します。
[手順2:ハイブリダイゼーション]
手順1で作製したブロットを用いて、
5 µl
標識試薬希釈系列ブロットの作製
(ハイブリダイゼーションの間に行う)
希釈系列
原理
[手順1:ブロットの作製]
2 ml
1/100,000
1/200,000
1/400,000
1/800,000
1/1,600,000
1/3,200,000
1/6,400,000
1/12,800,000
1/25,600,000
1/51,200,000
結果の解析
通常、1 ng のプローブ用DNA のドット
のシグナルは、1/1,600,000 希釈の標識試
薬のドットと同程度か、それより強いシグ
ナル強度になります。これを基準にして、
標識プローブの作製の成功の程度を判断し
ます。
ブロットの洗浄
●ブロットの洗浄
● 2次洗浄バッファー
室温 5 分間 × 2
検出
露光30分間
ご注文情報
製品名
包装
AlkPhos Direct system for chemiluminescence
Reagents to label 25 probes and detect 2,500 cm2 with CDP-StarTM
Reagents to label 50 probes and detect 5,000 cm2 with CDP-Star
AlkPhos Direct system for chemifluorescence
Reagents to label 25 probes and detect 2,500 cm2 with ECF substrate
コード番号
RPN3690
RPN3691
¥56,000
¥100,500
RPN3692
¥56,000
著作権法により、文献のコピー権は読む本人に限られています。従って弊社から文献のコピーを送付することは、著作権法に規定する著作物の複製
禁止に抵触しますので、文献名、著作者名を記載するのみといたします。
16
Science Tools from Amersham Pharmacia Biotech 3, 4 (1998)
価格