一 関 も ち - 一関市

一関
息災を祈る習わしがありま
した。
また、米のほかにも 各種
農産物が 豊かで、こうした
地域の 食文化を 背景に、さ
まざまなもちの具が生まれ
ま し た。小 豆、ご ま、く る
み、あ ん こ、ず ん だ、納 豆
など、その 食べ 方は 300
種以上。土産土法のもち 料
理は、郷土食となって 広が
り、今日に 伝えられてきま
した。
もち料理と共に受け継が
れてきたのが﹁もち食儀礼﹂
です。仙台藩の 武家社会の
儀 礼として﹁もち 本 膳 ﹂が
あり、それが 商 家へ、そし
て 農 家へと 伝わりました。
礼作法は 小笠原流、盛り 付
しじょう
けや 味付けは 四條流。祝儀
にも、不 祝 儀にも﹁もち 本
膳﹂を 振る 舞う 伝統は 一関
地方ならではで、市内には
作法を行うためのお膳やお
わん、その 歴史を 記した 古
文 書な ど も 残さ れ て い ま
す。
もちは最高のごちそう。
﹁
人生の節目には必ず食べま
した ﹂と 語るいわて 東山歴
史文化振興会長の佐藤育郎
さ ん︵ ︶は、一 関も ち 食
推進会議の 文化部長。もち
本膳の作法の伝承活動に励
んでいます。
この 世に 生を 受けた 喜
﹁
びに始まり、七五三、入学、
卒 業、結 婚、そして 人 生の
終 局ま で、も ち で 始ま り、
も ち で 締め く く っ た の で
す﹂と教えてくれます。
特集
もち
つきは、男 女の 共
きの 実 演などを 通して一関
同作業。男性はき
産もち 米の 普 及 拡 大と﹁も
ねを 振り、女 性は 臼のもち
ち 文 化 ﹂の 継 承 活 動に 取り
組んでいます。
をこねます。農 家の 風 習と
が 多 様 化し、もち
して 受け 継がれ、四 百 年 以
食 生活
米の 需 要が 年々減っている
上の歴史があります。
えが終わった後の﹁さ
ことを 危 惧していた一美さ
田植
、稲刈りを終え
なぶりもち﹂
んは﹁多くの人に、臼ときね
た 後の﹁ 刈り 上げもち ﹂な
でついた 昔ながらのおいし
ど、節目節目につくことで、 いもちを食べてほしい﹂と
年、
﹁祝い餅つき振舞隊﹂︵岩
家 庭の 融 和を 深めたり、村
の協調を図ったりしました。 渕一美 隊 長、隊 員 人 ︶を
結 成。以 来、慶 祝 行 事や 県
毎 日の 労 働の 中で、もちつ
きは 共 通の 楽しみであ り、 内外のイベントに出向いて、
ぎね
つくたびに、もちへの愛情は ﹁千本杵﹂でついたもちを 振
深まっていきました。
る舞ってきました。これまで
真柴の岩渕一美さん︵ ︶ 同隊が 実演したもちつきは
は、もち 米﹁こがねもち ﹂
900回以上です。
㌃とうるち 米﹁ひとめぼれ ﹂
ほかにも、体 験 実 習や 講
110㌃を 栽培する 稲作農
演 会などを 開いて、家 庭で
簡単にできるもち 料理を 紹
家です。農業の傍ら、もちつ
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儀礼や作法を伴うもち食文化は地域の
「宝」
組織的活動で後世へ伝えたい
儀礼・作法
いわて東山歴史文化振興会長
一関もち食推進会議文化部長
【継承者】
などで提供すれば、一関以外の人に
も発信できます。
一方、食品の保存技術は飛躍的な
進歩を遂げています。マイナス 30℃
で冷却したもちは、3年後に解凍して
も、つきたてと変わらない風味を保っ
「伝統食を新技術で保
ているのです。
存」
、素晴らしいですね。忙しい現代
人に普及するにも好都合です。
作法を伴う食文化は地域の「宝」
です。市内では、さまざまなイベント
や伝承活動が行われています。これ
からは、生産、もちつき、加工、販売、
作法など、もちに関わる全て分野、全
ての人たちが一つになって、組織的
な活動で普及・継承していくことが
大事だと思います。
介するなど、もちの 消 費 拡
大に精力的です。
﹁ 昔は、どの 家にも 臼、き
ね、せいろがありました。で
も、核家族化が進み、家電製
品が 普 及した 今は、もちを
つく家が少なくなりました﹂
とさみしさをにじませます。
﹁ 臼ときねでついた
一方で、
もちには、機 械で 出せない
風情があり、うまさも格別﹂
と自信をのぞかせます。
先人たちの 知恵が 詰まっ
た 郷 土 食の﹁もち ﹂は、一関
の風土や 暮らしが生み 出し
た食文化。一美さんは﹁もち
になじみのうすい子供たち
や一関を訪れる人たちにも、
たくさん食べてほしいです﹂
ときねを 持つ手に 力を 込め
ます。
協働、協調、連携、助け合い、絆な
ど、これらの言葉を一つにくるんでし
。もちは、人
まったような食が「もち」
と人とのつながりを象徴する食べ物
です。私たちは、この作法を伴う一関
の文化を後世へ継承していかなけれ
ばなりません。
学校給食は、子供たちに伝える最
適な機会。また、ホテルや結婚式場
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の 人 た ち は、正
月や 年 越し は も
ちろん、節 句、彼 岸やお 盆
など 季節の 区切りに、お 客
さまのおもてなしに、結婚
式や 葬 式など 冠 婚 葬 祭に、
事あるごとにもちを食べま
す。その 数は 年間 日以上
ともいわれ、
﹁もち 暦﹂が 存
在するほどです。
な ぜ、こ れ ほ ど ま で に、
もちと深い関係にあるので
しょう。ルーツは 藩政時代
にさかのぼります。江戸時
代、仙台藩は 国内有数の 米
どころで、多い 時には 江戸
に 流 通し た 米の 約 %が
この 地方のものでした。当
時、仙 台 藩は、毎 月 1 日と
日にもちを神仏に供える
ことを 推奨しており、平安
はもとより県内外で積極的な活動を
展開しています。
私たちのPR活動と、もち米生産
活動などが一体となって「もち食」の
普及を推進すれば、きっと、一関地
方の農業、商業、観光などの分野に
新しい活力を生み出すことができる
と思っています。
さとう・いくろう 1947 年東山町
生まれ。08 年一関市東山支 所地
域振興課長を最後に退職。いわて
東山歴史文化振興会長、一関もち
食推 進会議 文化部長。地域の 伝
統芸能やもち食文化の継承に貢献
16 66
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盛り付けも、ほとんどが地元産。あん
こ、ごま、くるみ、きなこ、くり、大根、
おろし、納豆、ずんだ、沼えび、山菜、
ふすべ、じゅうね、かぼちゃ、しょう
がなど、伝統的な食べ方だけでも紹
介しきれないほどあります。まさに、
一関の風土や暮らしが生み出した伝
統的な郷土料理です。
家庭の食としてだけでなく、おもて
なしの食として、行事、慶弔、接待な
どで出されているのも一関ならでは
の特長です。一関で「もちをごちそう
になる」ことは、最高の接待を受ける
ことなのです。
「祝い餅つき振舞隊」は、臼ときね
でついた昔の味を伝えながら「もちの
佐藤育郎さん
先人の知恵と一関の風土が育ん
だ
「もち文化」
は、
後世に伝えたい
豊かな郷土の食文化だ。
一関地方
では
「もち」
をキーワードに、
地域
が一体となって多彩なもち料理
を全国に発信している。
「辨慶
(べ
んけい)
の力餅大会」
「日本一のも
ちつき大会」
「祝い餅の振る舞い」
「もちりんピック」
「全国わんこも
ち大会」
「中東北ご当地もちサミッ
ト」など、年間を通してユニーク
なイベントを開催しているほか、
体験実習、儀礼や作法を学ぶ講
演会や講座なども開かれており、
新たなもち文化の創造にも力を
入れている。
㊤大食い自慢が競っ
た
「第6回わんこもち大会」㊦1万
3,650食を提供した
「第1回中東北
ご当地もちサミット2012in一関」
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里・一関」を広くPRしようと、市内
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一関のもちは、原料も、味付けも、
6
I-Style
I-Style
7
【継承者】
もちは一関で最高のごちそう
臼ときねでついた昔ながらの味を伝えたい
もちつき
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祝い餅つき振舞隊隊長
岩渕一美さん
いわぶち・かずみ 1947 年一関市生
まれ。伝統のもち料理や 新しいもち料
理をさまざまな場面 でたくさんの人に
味 わってもらおうと 94 年 に
「 祝い餅
つき振舞隊」を結成。市内はもとより
県内外で 積極 的 なPR活 動を展開中