地盤材料の力学特性:ミクロとマクロをつなげるために <マイクロメカニクス> 【粒子の粒度,粒形,粒子破砕を考慮した砂,礫の特性】 地盤工学の大きな課題である液状化現象や土石流の機構解明への原点といえるのが,材料の微視構造(マイクロメカニクス) についての研究です. 粗視化 粒子とその隙間 微視化 粗視化 粒のつながり 応力 連続した物体 フラクタル メゾ 供試体内における粒子回転勾配 小 大 粒状材料の挙動は,巨視的な変形に伴って変化する微視構造の発達・消滅 に支配されます.個別要素法(DEM)によるシミュレーションでは,10 万個近い 数の粒子で地盤を作成し,二軸載荷試験を行うことによって内部挙動を解析 します.本研究では,ミクロスケールから砂質土の基本的挙動と粒子特性と の定量的相互関係を明らかにしていきます. パーコレーション ミクロ 繰返し載荷後 土の供試体 微視化 クラスター 力を加えて 変化を調べる マクロ 地盤材料は観るスケールによって様相を変えていきます. ファイバー補強土の技術向上のために 【短繊維(ファイバー)補強土の変形・破壊挙動】 粒子集合体にファイバー をランダムに発生させて 供試体をモデル化. 拡大 力を加えて内部 の変化を調べる Averaged tensile stress (MPa) 供試体 供試体に等方的な力を加えると, ファイバーの曲率が変化し,混合し たファイバーの平均張力が増加し ます.これによって供試体の強度 が増加します. 力を加えるとファイバー の曲率が変化 0.5 0.3 5 MPa 0.1 MPa 左図は,せん断力を供試体 fibre content (%) 0.2 0.6 1.2 0.4 に加えた時のファイバーの 平均張力の変化を示してい 圧縮 ます.ファイバーは供試体が 0.2 壊れる間際で大きな張力を 0.1 0 0.01 0.1 1 Normal Strain, εyy(%) 10 発生させ,供試体にねばり を与えています. 等方圧縮時の供試体内部の様子 1.5 等方圧縮時 1.0 fibre content (%) 0.2 0.6 1.2 0.5 ファイバーの 張力が増加 0 0.05 0.1 0.5 1 Mean normal stress, σm (MPa) 0.6 5 medium dense, σc=0.1(MPa) Stress Ratio,τm/σm fibre Averaged tensile stress (MPa) ファイバー(短繊維)を地盤中に混入させると,地盤の強度・靭性が向上します.この地盤材料について個別要素法(DEM) によってシミュレーションを行い,ミクロレベルからの補強メカニズム解明に取り組んでいます. 0.4 fibre content (%) 0 (no fibre) 0.2 0.6 1.2 0.2 供試体の 0 0 強度が増加 1 2 Normal Strain, εyy(%) 3 陥没による事故を防ぐために 【粒子流出に伴う地盤の変形・破壊挙動とその対策】 陥没孔発生 陥没孔発生 ダムや海岸部といった水位変動が生じるところでは,構造 部の不安定化や陥没が発生することがあります.これら は,地盤内の細粒分流出や吸い出しが原因とされてお り,現象が進むにつれて粒度は変化します.この粒度変 化に伴う地盤の変形・破壊挙動のメカニズムを個別要素 法(DEM)を用いて解明することを目的としています. 陥没孔発生 陥没孔の発生 細粒分流出による 地盤の緩み 浸潤線 フィルター フィルダムにおける陥没孔発生 σ 主応力 σ yy 側圧 σ xx σ 供試体モデル 裏込石 基礎捨石 護岸の吸出し発生 護岸の吸い出し発生 粒子が抜けると,そこに働いていた力の繋がり(応力鎖)が失われますが, すぐに新しい経路の応力鎖が形成されます.これが繰り返されるにしたがって, 変形はどんどん大きくなり破壊に至ります. 粒子が抜ける前 xx 境界の壁を 制御し,応力 状態を保つ. yy 緩 埋立砂 ・ ・ ・・ ・ ・・・・ ・ フィルダムにおける陥没孔発生 wall ケーソン 吸い出しによって 細粒分が流出 コア (粘土) 供試体から強制的 に粒子を抜き,粒子 流出を再現. 粒子が抜けた後 粒子を除去したときの非平衡力が周囲に伝播している様子です. 赤色で凸な程,その力が大きいことを表します 名古屋工業大学 社会工学専攻 環境防災分野 前田研究室 http://www.cm.nitech.ac.jp/maeda-lab/
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