脊椎破壊性病変の鑑別は? - e-CLINICIAN

Quiz
連載1
2
0
この患者をどう診断するか
解答は1
3
9∼1
4
0ページ
出題
脊椎破壊性病変の鑑別は?
愛知医科大学 放射線医学
愛知医科大学 放射線医学教授
松田 譲
石口恒男
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
<症例> 7
0歳代後半、男性
<主訴> 腰痛
<既往歴> 2年前、大脳鎌髄膜腫に
て手術施行。
<家族歴> 特記すべきことなし
<現病歴> 2週間前より腰痛が増強
し、1週間前より立位困難となった。
他院の腰椎 MRI で異常を指摘され、
精査・加療目的に入院となった。
<入院時現症> 右前脛骨筋および長
拇趾伸筋の軽度筋力低下と、両足内・
外側および足背(L4・5・S1レベ
ル)の知覚鈍麻を認める。
<血液学的検査(正常値)
> WBC4
1
0
0/µL(4
5
0
0∼5
1
0
0)
、CRP1.
2
8$/
dL(<0.
3
8)
、ALP4
5
5(1
0
0∼3
5
8)
、
その他異常なし。
73
CLINICIAN ’04 NO. 528
<腰 椎 単 純 撮 影(図!)
> L2/3
レベルの椎間腔の狭小化および L2・
3椎体終板の破壊を伴う変形を認める。
椎体周囲には不整形の石灰化を認める。
<腰椎 MRI> T1強 調 矢 状 断 像(図
!)では、L2・3の圧壊および信号
低下が見られ、椎体前・後面に腫瘤性
(図
病変が認められる。T2強調矢状断像
")で病変は不均一な高信号を示し、
椎体後面の腫瘤による硬膜嚢の圧迫も
明らかである。造影 T1強調矢状断像
(図#)では不均一な増強を認め、L
1椎体への広がりも明らかである。
<問題>
最も考えられる疾患は?
また、鑑別すべき疾患は?
(3
2
7)
!腰椎単純 X 線
"腰椎 MRI(T1強調)
#腰椎 MRI(T2強調)
$腰椎造影 MRI(T1強調)
(3
2
6)
CLINICIAN ’04 NO. 528
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出題は7
2∼7
3ページ
解答 この患者をどう診断するか
結核性脊椎炎
愛知医科大学 放射線医学
愛知医科大学 放射線医学教授
松田 譲
石口恒男
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
<解説>
CT ガイド下生検により、Langhans
型多核巨細胞を含む類上皮肉芽腫が証
明され、結核性脊椎炎と診断された。
L2レベルの造影 CT(図!)では、
椎体の破壊が明らかで、椎体周囲およ
び左大腰筋内に cold abscess(冷膿瘍)
を思わせる径1
0∼2
0#の低濃度域を
認め、辺縁に増強効果と石灰化を伴っ
ている。
脊椎破壊性病変の鑑別として、結核
性脊椎炎、化膿性脊椎炎、転移性脊椎
腫瘍が挙げられる。
結核性脊椎炎は骨結核の2
5∼6
0%
を占め、骨軟部領域の結核のなかで最
も高頻度に認められる。臨床症状とし
ては、全身倦怠感、軽度熱発、局所殴
打痛や比較的長期にわたる腰背部鈍痛
などが見られる。下部胸椎および上部
腰椎(とくに L1)に好発する。経動
脈性の血行性感染が多く、終板直下の
椎体前縁が最初の感染巣となる1)。感
染巣が前方へ進展すると前縦靭帯直下
を上下に広がる。また上・下方へ進展
すると椎間板の狭小化をきたす。さら
に、椎体周囲の靭帯・軟部組織に進展
すると傍脊柱膿瘍が形成される。腸腰
(3
9
4)
筋 膿 瘍(冷 膿 瘍:cold abscess)は 約
5%に認められ、大きな膿瘍を形成す
る傾向があり、膿瘍壁の多形性あるい
は涙滴状の石灰化が結核に特徴的であ
る。椎弓・椎弓根や関節突起など後方
成分への病変の進展は約1
0%に見ら
れ、それに伴う脊髄麻痺を Pott 麻痺
と呼ぶ。
画像および臨床症状での鑑別疾患と
して最も重要なのは化膿性脊椎炎であ
り、腰椎に好発し、次いで下部胸椎に
多い。病巣の進展経路は結核性脊椎炎
と同様で、起炎菌としては黄色ブドウ
球菌が最も一般的である。主な鑑別点
を表"に示す。
とくに病変が多椎体に及ぶ場合には
転移性脊椎腫瘍が鑑別として重要とな
る2)。転移性脊椎腫瘍では、椎間板の
変化が認められないことが最も重要な
鑑別ポイントとなる。転移性脊椎腫瘍
では、腰椎(とくに L5)に好発し、
まず椎体外側後部(つまり椎弓根の前
方椎体)に転移が起こり、椎弓根に進
展するとされる3)。また、後方成分へ
の進展が多く、MRI の T2強調像にて
脊椎炎ほど著明な高信号を呈さないこ
とも鑑別点となる。しかしながら、結
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!造影 CT 像
"結核性脊椎炎と化膿性脊椎炎の主な鑑別点
結核性脊椎炎
化膿性脊椎炎
好発年齢
6
0歳代
4
0歳代
性差
男性に多い
なし
病勢
結核性に比し急速
緩徐
椎間板の破壊・椎間腔の狭小化 多いが初期には少ない
高頻度かつ高度
罹患椎体数
約半数で3椎体以上に及ぶ4) 2椎体までの場合が多い
高度で楔状変形をきたす 比較的軽度で変形は少ない
椎体の破壊
ない、または軽度
骨硬化
多く、骨棘形成も認める
多く、大きく広範囲
膿瘍形成
少なく、小さい
あり
膿瘍壁の石灰化
稀
造影剤による膿瘍の増強 辺縁が増強される
均一に増強される
椎体は腹側に凸で楔状(亀背)椎体の硬化ないし象牙質化
終末像
核性脊椎炎で椎体の単発性の圧迫骨折
と椎間板が保たれていることを初発所
見とすることも実際には多いとされ、
鑑別に苦慮することも多い。
文献
1)
江原 茂:4−特殊菌による感染症:
骨・関節の X 線診断、金原出版株式
会社、東京、3
0
8∼3
0
9頁、1
9
9
5年
2)
前原忠行 編:3−脊椎炎と椎間板
炎:脊 椎・脊 髄 の MRI、南 江 堂、東
139
CLINICIAN ’04 NO. 528
京、1
4
2∼1
4
4頁、2
0
0
3年
3)
Algra, RR., Heimans, JJ., Valk, J., et al. :
Do metastases in vertebrae begin in the
body or the pedicles? Imaging study in 45
patients. AJR, 158, 1275∼1279(1992)
4)
Smith, AS., Weinstein, MA., Mizushima,
Y., et al. : MR imaging of characteristics
of tuberculous spondylitis vs vertebral
osteomyelitis., Am J Neuroradiol., 10,
619∼625(1989)
(3
9
3)