資料3(補足) 鳥取沿岸の砂浜海岸復元・港内堆砂抑制に向けた技術検討事業 補足説明資料 1. サンドバイパスの検討事例 1.1 日本におけるサンドバイパスの実施事例 サンドバイパスの実施事例を表 1 に示す。 実施事例の収集から、以下の点を把握できた。 ・ 日本で実施されているサンドバイパスは、静岡県の福田(ふくで)漁港を除いてポンプを 使用した事例は無い。 <平成 24 年 6 月末現在:静岡県 交通基盤部 港湾局 漁港整備課からの聞き取り> ・ポンプ建屋内の機械設備・電気設備は設置完了 ・桟橋上の配管50%完了 <今後の作業予定> ・桟橋上の配管 7 月末までに完了予定 ・8 月末までに単動チェック完了予定 ・9 月から稼動予定 但し、1 ヶ月~1.5 ヶ月 総合試運転(期間は状況に応じて) 総合試運転完了後に試験稼動を開始 ・ 日本で実施されているサンドバイパスは、主にグラブ船とダンプトラックを使用した形式 である。 1 表 1 サンドバイパスの事例 ① 海岸名・ 位置 天橋立海岸(京都府) 駿河海岸(静岡県) 宮崎漁港・大屋海岸(富山県) 河川流出土砂の減少、沿岸漂砂量の総体的な不足、漁港などの構造物 による漂砂の阻止 サンドバイパス 昭和 62 年度~平成 2 年度(その後も継続) 6.4 万 m3 ・漁港での浚渫土砂をダンプトラックによって陸上運搬し、陸上から 浜に投入する方法で行われている。 資料: 「天橋立」パンフレット 京都府 平成 12 年 3 月 ② 侵食原因 防波堤による沿岸漂砂の遮断 大井川からの流出土砂量の減少および防波堤による沿岸漂砂の遮断 ③工法 ④期間 ⑤養浜量 ⑥ 採取箇 所・方法 ⑦ 運搬方法 ⑧ 投入箇 所・方法 サンドバイパス・サンドリサイクル 1980~1990 年時点 約 12 万m3 サンドバイパス 昭和 58 年~昭和 63 年 約 6 万m3/年 堆砂域からの陸上採取-ダンプトラックによる陸上運搬-陸上投入 グラブ浚渫船と土運船により投入地点に搬入し、陸上部へ投入。投入後、ブルドーザー により海側へ押出し、整形。 駿河海岸のサンドバイパスおよび短突堤の施工状況 ⑨費用 - - - 資料: 「天橋立パンフレット」 (平成 12 年 3 月, 京都府) 「宮津港 天橋立~日置海岸環境整備技術研究 調査報告書」 (平成 11 年 3 月, 京都府) 2 表 2 サンドバイパスの事例 ① 海岸名・ 位置 皆生海岸(鳥取県) 鹿嶋海岸(茨城県) (参考)オーストラリアのゴールドコースト ② 侵食原因 ③工法 日野川からの流出土砂量の減少 サンドリサイクル 航路維持のための導流堤建設に伴う海岸侵食の未然防止 サンドバイパス ④期間 ⑤養浜量 平成 6 年~平成 10 年 1~3 万m3/年 ⑥ 採取箇 所・方法 ⑦ 運搬方法 ⑧ 投入箇 所・方法 (平成 6 年) :非航式グラブ船により土砂採取、運搬、投入 (平成 7~10)堆砂域からの陸上採取-ダンプトラックによる陸上運搬-陸上投入 構造物設置による漂砂環境の改変。 サンドリサイクル(季節的な変動により、港内に捕捉された土砂を再度 海岸域へ投入) 平成 12 年~平成 14 年 鹿嶋海岸 4.2 万 m3 波崎海岸 13 万 m3 平成 12 年:鹿嶋港航路掘削土砂-ダンプによる陸上輸送-陸上投入 平成 13・14 年:鹿嶋漁港船溜り・波崎漁港浚渫土砂-ダンプによる陸上輸送- 陸上投入 ⑨費用 - - 総プロジェクトコスト:5,000 万豪州ドル(39 億円) ランニングコスト:1 年あたり 70 万~90 万豪州ドル(5,460~7,020 万円) (1 豪州ドル≒78 円(2003 年 7 月時点)で計算) 資料: 「JCCA No.207」 (2000 年 4 月) 1986 年~ 50 万m3/年 資料: 「世界の海洋土木技術」 (社団法人日本海洋開発建設協会) 3 1.2 海外でのサンドバイパスシステムの事例 サンドバイパスシステムの実施事例を表 3 に示す。 実施事例の収集から、以下の点を把握できた。 ・ サンドバイパスシステムにはジェットポンプが使用されている。 ・ サンドバイパスシステムの稼働時間には制限を持っている。 ・ 維持管理のためには、電気代、メンテナンスのための人件費が必要であるため、年間数千 万円の維持管理費が掛かる。 ・ 採水方法の違う 1~5 の手法がある。採水ポンプを固定する手法としては、桟橋を設置し、 そこから海底までジェットポンプをおろして海底の砂を吸い上げる方法(1、2)と、桟橋 ではなくポンプに旋回可能なブームがついた固定式ポンプを利用するもの(3)がある。 採水ポンプを固定しない手法としては、ポンプをクレーンに取り付け、海底部から吸い上 げる方法(4)や、配砂管を直接汀線際から海底部にたらし込み海底の砂を吸い上げる方 法(5)がある。 4 表 3 ポンプを使用したサンドバイパスシステム事例について システム の区分 適用箇所 システム構成 システムの概要 バイパス土量、底 質特性 水路固定のための導流堤に (導流堤)、桟橋、 よる沿岸漂砂の遮断対策。 オーストラリア東部: jetpumps、給水管、 500,000m3/ 侵食側へのサンドバイパス。 Nerang River 年、0.2~ 給水ポンプ、スラリーピ Entrance システムが有効に機能して 0.3mm ット、排出管、排出ポ (1986~) おり水路内での浚渫は実施 ンプ、電力 されていない。 1 海象条件 2 不明 5 3 固定式 (海底,表層) 4 移動式 (海岸,表層) 5 水路固定のための導流堤に (導流堤)、伸縮可 年間漂砂量 よる沿岸漂砂の遮断対策。 アメリカ南部: 変・旋回式ブーム、 153,000m3/年 侵食側へのサンドバイパス。 South Lake suction-pump、給 の内、バイパス 9 月~4 月に北東か 伸縮可変で旋回するブーム長 Worth Inlet , 水管、給水ポンプ、 土量としては ら激浪が来襲する Florida により採取範囲が限定され 排出管、排出ポン 54,000m3/年、 (1937~) るため全沿岸漂砂をバイパ プ、燃料 0.3mm スすることはできない。 (導流堤)、jet 水路固定のための導流堤に アメリカ北東部: -pump、クローラークレーン よる沿岸漂砂の遮断対策。 Indian River (ブーム長 37m)、給 侵食側へのサンドバイパス。 84,000m3/年、 不明 Inlet , 水管、給水ポンプ、 汀線に沿って移動可能。 0.4mm Delaware 排出管、排出ポン Jet-pump を海底中に挿入し (1990~) プ、燃料 て採取。 オーストラリア西部: Dawesville Channel、 Mandurah Ocean Entrance (1996~) 発注方式 波浪観測データ (40m水深):H max=9.98m、対象 平日(夜間 10 時 地点:平均波高 間運転) 1m 以下、0.25~ 3.0m(99%)、3~ 15s(99%) 固定式 (海底,地中) (導流堤)、桟橋、 水路固定のための導流堤に オーストラリア東部: jetpumps、給水管、 よる沿岸漂砂の遮断対策。 Tweed Rive 500,000m3/ 給水ポンプ、スラリーピ 侵食側へのサンドバイパス。 年、0.23mm r Entrance ット、排出管、排出ポ 南導流堤が短いため水路内 (2001~) ンプ、電力 での浚渫も実施。 稼働期間 設計・施工方式 管理運 営 方式 維持管理 体制 初期建設費 維持管理費 5,600 万円/年(電気 桟橋、サンドバ 代:1,440 万円、給 オペレータ、作 Qweens イパスシステム: 料・労賃:895 万円、 業員で 4 land 州 8.2 億円 修理・メンテ代:3,245 人 万円) 、110 円 (1987) /m3('94~'96 平均) 技術提案型(9 件;海上 浚渫方式、jet-pumps 方 式等) 、建設主体の民間 企業が公共施設を所 桟橋、サンドバ オペレータ、作 有・運営する BOOT 方 受注企 イパスシステム: 365 日(夜間) 業員で 4 式 業 13.9 億円 人 (build,own,operate,tr (2000) ansfer)、25 年契約、条 件としてはバイパス土量 のみ提示 31.5 億円/25 年 (1.26 億/年)(電気 代、人件費、修理メ ンテ代)、250 円/m3、 月毎出来高払い 9 月~翌 4 月(北 東からの激浪来 襲後) 、平日(昼 間) 不明 オペレータ、作 Palm-b 業員で 3 each 郡 人 9 月~翌 5 月の 平日(昼間 7 時間 運転) 不明 オペレータ(ポ サンドバイパスシ 2,500 万円/年、280 Delawa ンプ、クレーン) ステム:2 億円 re 州 円/m3(1995) 3人 (2001) 技術提案型(2 件; 水路固定のための導流堤に Dawesville:12 月 jet-pumps 式、スラリートラッ Dawesville:85 ~翌 3 月(4 ヶ月) (導流堤)、スラリートラ よる沿岸漂砂の遮断対策。 ク)、Dawesville ,000m3/ 平日(昼間 6 時 オペレータ2 ック、パワーショベル、給 侵食側へのサンドバイパス。 年,Mandurah: 南西からの「うね と Mandurah の2箇所 受注企 間)、 水管、給水ポンプ、 汀線に沿って移動可能。シス 人、監督1 100,000m3/ を対象、設計、施工と維 業 り」 Mandurah:7 月 人 排出管、排出ポンプ、 テムが有効に機能しており 年、細砂、貝、 持管理(DBO)、5 年契 水路内での浚渫は実施され ~9 月(3 ヶ月) 燃料 海藻、転石あり 約、条件としてはバイパ ていない。 平日(昼間 6 時間) ス土量のみ提示 不明 不明 460 円/m3(2003) 280 円/m3(1997)、 月毎出来高払い(企 業利益込み) 出典:福田漁港・浅羽海岸サンドバイパス検討委員会 表 4 ポンプを使用したサンドバイパスシステム事例について システム の区分 固定式 (海底,地中) 1 2 6 3 4 5 採取部分 適用箇所 システム能力 800,000m3/年 (2003 実績)、 採取能力:80m3/h/ 台、排出濃度:希釈 率約 3 倍、消費電 固定式 力:3.86kwh/m3 (海底,表層) 700,000m3/年 オーストラリア東部:Tweed (2002 実績)、 River 排出量:1440m3/ Entrance h/(4~5 台)、排出 (2001~) 濃度:希釈率約 3 倍 年間漂砂量 アメリカ南部: 153,000m3/年の South Lake Worth 移動式 内、バイパス土量とし Inlet , (海岸,表層) ては 54,000m3/8 ヶ Florida 月、採取能力: (1937~) 110m3/h/台 オーストラリア東部: Nerang River Entrance (1986~) 採取方法 採取箇所 運搬部分 運搬方法 敷設箇所 排出部分 排出方法 排出箇所 排出部付近への環境影響 延長 利用 未利用地 桟橋直下(固 jet-pumps 定)、水深 4~5 (総数 10 台、4 m、海底下 5~ ~5 台/運転時) 6m、採取部は すり鉢形状 管路(非圧力 自然排出、排 管:採取~スラリ出高さ 1~2 1箇所:砂浜、 ピット、圧力管: 地表、土中 (満潮面高 波打ち際 スラリーピット~排 さ)m 出地点) 1.3km 桟橋直下(固 jet-pumps 定)、水深 4~5 (総数 11 台、4 m、海底下 5~ ~5 台/運転時) 6m、採取部は すり鉢形状 suction-pump (1 台)、ジェット ブーム(約 10m) 水併用(底質攪 伸縮・旋回によ 拌用) る範囲、表層採 取 管路(非圧力 自然排出、排 管:採取~スラリ出高さ 3m、 1箇所:岩場、 ピット、圧力管: 地表、土中 0(干潮面高 波打ち際 スラリーピット~排 さ)m 出地点) 1~2km 管路(圧力管: 自然排出、排 1箇所:砂浜、 採取~排出地 地表、土中 出高さ 1m 波打ち際 位 点) 400m 導流堤上手側 80,000m3/9 ヶ月、 (移動)、海岸 アメリカ北東部: jet-pump 採取能力: 汀線部、海底面 Indian River Inlet , max250m3/h/台、排 (1 台)、クローラー Delaware 下 5.5m 直径 クレーン 出濃度:希釈率約 3 (1990~) 15m のすり鉢 倍 形状 オーストラリア西部: Dawesville 採取能力:225m3/h/ パワーショベル、スラ 導流堤上手側 Channel、 台、排出濃度:希釈 リートラック、給水に (移動)、海岸 Mandurah Ocean よるスラリー化 汀線部 率約 3 倍 Entrance (1996~) 管路(圧力管: 1 箇所(複数箇 自然排出、排 採取~排出地 地表、土中 所切替え) 、砂 出高さ 0m 点) 浜、波打ち際 460m 管からの騒 排出先の濁 配慮すべき事 音、振動 り 項(動植物等) なし:鋼管 (ポリウレタン被 覆) あり なし なし:鋼管 釣り、サーフィン (ポリウレタン被 覆) あり なし なし:ポリエチ レン管 不明 夏期の海 水浴客 不明 営巣時期 (3 月~8 月) の千鳥(隔離) 、 夏期の観光シ ーズン あり なし 海水浴客 釣り、サーフィン、なし:ポリエチ 観光客 レン管 自然排出、排 1km(D 管路(圧力管: 出高さ 1~2 地表、海底面 1箇所:砂浜、 awesville) 漁業(伊勢エ なし:ポリエチ スラリートラック内ピッ m 上 波打ち際 ビ) レン管 ト~排出地点) 出典:福田漁港・浅羽海岸サンドバイパス検討委員会 7 図 1 1.サンドバイパスシステム事例【Nerang River Entrance(1986~) 】出典:福田漁港・浅羽海岸サンドバイパス検討委員会 8 図 2 2.サンドバイパスシステム事例【Tweed River Entrance(2001~)】出典:福田漁港・浅羽海岸サンドバイパス検討委員会 9 図 3 3.サンドバイパスシステム事例【South Lake Worth Inlet, Florida(1937~) 】出典:福田漁港・浅羽海岸サンドバイパス検討委員会 10 図 4 4.サンドバイパスシステム事例【Indian River Inlet , Delaware(1990~) 】出典:福田漁港・浅羽海岸サンドバイパス検討委員会 11 図 5 5.サンドバイパスシステム事例【Dawesville Channel(1996~) 】出典:福田漁港・浅羽海岸サンドバイパス検討委員会
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