アジマススラスタの首振角制限付き最適推力配分法の開発 - 三井造船

三井造船技報 No. 195(2008-10)
海洋関連技術小特集
アジマススラスタの首振角制限付き最適推力配分法の開発
五百木 陵 行***
門 元 之 郎****
五十嵐 和 之*****
小 寺 山 亘***
梶 原 宏 之****
中 村 昌 彦*****
Optimal Thrust Allocation Algorithm under the Azimuth Thrusters’Angle Constraints
Takayuki IOKI, Yukio KADOMOTO, Kazuyuki IGARASHI, Wataru KOTERAYAMA, Hiroyuki KAJIWARA, Masahiko NAKAMURA
In the recent dynamic positioning ship, the adoption of azimuth thrusters which can change the thrust directions
freely increases more than tunnel thrusters from the viewpoint of efficiency. The thrust allocation that decides the
azimuth angle and thrust(force)of each thruster is essential to use azimuth thrusters. One of the most famous
thrust allocation methods(conventional method)is to minimize the sum of the squares of all the thrust forces when
the ship receives strong external force from a constant direction like current. On the other hand, when the external
force is weak, the method to fix the azimuth angles has been often used.
Mitsui Engineering & Shipbuilding Co., Ltd. has developed in cooperation with Kyushu University the optimal thrust
allocation algorithm under the azimuth thrusters’angles constraints as a new allocation method usable in the intermediate disturbance environment. As the command of angle change occurs less in this method, the command is more
promptly achieved although its command of thrust forces is smaller than that of fixed angle method. In addition, the
influence of the thrusters’wakes on the hull appendage such as sonar installed on the bottom of a ship can be avoided.
近年の自動船位保持船では運航効率上,固定式のトンネルスラスタよりも,首振り可能なアジマススラスタの採用が増
加している.アジマススラスタでは首振角とスラストによる推力配分(図 1)が必要であり,外力(潮流等)が強い場合
にはスラスト 2 乗和最小化配分を行い,外力が弱い場合には首振固定法に切り替えるという方法がよく用いられてきた.
三井造船は,九州大学と共同で,配分法の切り替え判定が困難な中間的な外乱環境に適した方法として,首振角制限付
き最適推力配分法(図 2)を開発し,水槽模型試験でその有効性を検証した.この方法は,従来のスラスト 2 乗和最小化
法より首振りが低減され,かつ,固定法より大きな推力(船体に働く力)を生成でき,加えて,船底の付加物(ソーナー
等)への後流影響も回避できる特長を有する.
図 1 アジマススラスタの推力配分
Thrust Allocation of Azimuth Thrusters
*
**
***
8
株式会社三井造船昭島研究所 技術統括部
船舶・艦艇事業本部 事業開発部
九州大学
図 2 スラスタ配置及び首振角制限の例
Location of Thrusters and Constraint of Azimuth Angles
****
*****
九州大学大学院 工学研究院
九州大学 応用力学研究所
アジマススラスタの首振角制限付き最適推力配分法の開発
1.
新しい推力配分法
1.1
2.
従来のアジマススラスタの推力配分法
通常,DPS(Dynamic Positioning System)においては,
首振角制限付き最適推力配分法
次に,首振角制限付き推力配分の定式化から,実装までの
流れについて述べる.
船体の位置(前後左右)と船首方位の 3 自由度を制御するが,
2.1
各アジマススラスタ(以下,スラスタ)は首振りとスラスト
本報では,サージ( x ),スウェイ( y ),回頭( ψ )の船
推力配分の数学モデル
の 2 自由度を持つので,スラスタが 2 基以上の場合,スラス
体運動を考え,船体に働く x 軸方向の力 X,y 軸方向の力 Y,
タの合計自由度の方が大きくなり,推力配分が一意に定まら
回頭モーメント N が指令として与えられる場合の推力配分
ないため,何らかの基準を設定して適切に決定することが必
を取り扱う.ただし,x 軸は船首側を正,y 軸は右舷側を正
要になる.
とし,ψと N は上から見て時計回りを正とする(図 3).
スラスタ n
(>
_ 2)基による推力配分において,船体座標
推力配分法に関しては,スラストの 2 乗和を最小化する方
法(以下,従来法)が,スラストを小さく抑えることができ,
燃料消費の少ない優れた方法の一つとして知られている.た
だし,この方法は首振り指令が瞬時に実現されることを前提
としているため,実際には各スラスタが方向を変え終わるま
での,指令を実現できない時間が生じる.そのため,潮流の
ように特定の方向から,安定した外力が働き続ける状況以外
では,首振りを固定するなどの対策がとられる.これは,一
定方向からの外力がない,または弱い場合は,船体位置調整
の− x 方向(船尾側)を 0 度として各スラスタの首振角 δi
(i =1,
...,
n)を定義(上から見て時計回りを正)して,それ
ぞれのスラストを T(i
...,
n)とする.今,未知数である
i =1,
δi と Ti の総数は 2×(
n >
_ 4)であり,生成すべき推力τ=[X
Y N]T の要素数 3 より大きいため,あるτに対して,それ
を実現できる首振角δi とスラスト Ti の組み合わせは無数に
存在する.この無数に存在するδi と Ti の組み合わせの中か
ら適切な候補を選択することが推力配分と呼ばれる.
のために必要となる力(船体に働く推力)の方向が変わりや
通常,スラスタ首振角δi は−x 方向を基準(0 度)として
すく,そのような状況で従来法を直接適用すると,首振反転
いるが,本手法では,各スラスタの稼動域の中心方向を基準
指令が多発し,制御の安定性を損ねる場合があるからである.
δi0 としてその周りの角度θi を定義する.
一方,スラストの大きさと首振速度制限の両方を考慮した
オンライン最適化方法も提案されている 1).この方法は外乱
θi =δi −δi 0 …………………………………………( 1 )
環境に無関係に使用できる反面,実装プログラムが複雑にな
図 4 において,灰色の扇型が首振角制限によって許容され
り,計算負荷も大きくなるという問題が発生する.計算負荷
る稼動域,矢印がその中心方向( δi 0 の方向)に対応する.
が大き過ぎると,実装用コンピュータに高い処理能力が要求
次に,スラストをこの基準方向成分 Tix= Ti cosθi と,それ
され,ハードウェアが高価になってしまう.したがって,実
に直交する方向成分 Tiy= Ti sinθi を用いて表す.この Tix と
装プログラムを簡単な代数演算のみで済ませ,かつ,推力指
Tiy を船体固定の x,y 軸方向を基準にして見ると,図 5 のよ
令の方向変化が多い場合にも,一定の即応性を実現できる推
うになる.したがって,第 i スラスタによるサージ方向成分
力配分法が望まれる.
Xi,スウェイ方向成分 Yi,及び回頭モーメント Ni は次のよ
1.2
開発した首振角制限付き最適推力配分法の特徴
首振角制限付き推力配分法
2),3)
では,次の条件を満たすよ
うにあらかじめスラスタ首振角に稼動域制限を設ける.
(1)領域が連続であり,かつ,180 度を超えない
(2)他のスラスタまたは,ソーナーなどの付加物が存在する
方向を向かない
うに表される.
Xi = Tix cosδi0 −Tiy sinδi0 …………………………( 2 )
Yi = Tix sinδi0 +Tiy cosδi0 …………………………( 3 )
Ni =−Xi yi +Yi xi ……………………………………( 4 )
(3)可能な限り,スラスタを外側に向ける
首振角制限を設けることにより,すべてのスラスタを同じ
方向に向けることはできなくなるため,合成できる最大推力
は低下するが,本手法は外乱が弱い(推力指令の絶対値が比
較的小さく,かつ,方向変化が多い)状況での応答改善を目
的としており,強い外乱中では首振角制限を設けない手法に
切り替えることを想定している.
本報では,この首振角制限付き最適推力配分法を,6 基の
スラスタを搭載する模型船へ実装し,水槽試験を行った結果
について述べる.また,その試験データを用いて,首振角制限
付き最適推力配分法が,外乱が小さく,推力指令の方向変化
が多い場合に,従来法より制御性能を改善でき,かつ,その
際のスラストも従来法と同等以下に抑えられることを示した.
図 3 船体座標軸及び船体に働く力
Ship Fixed Coordinate System and Forces
9
三井造船技報 No. 195(2008-10)
海洋関連技術小特集
図 4 第 i スラスタのスラスト
Thrust Forces of the i-th Thruster
図 6 首振角の制限
Constraint of a Thruster’
s Angle
これらを用いて式(5)の解 Tex* は次の形で表される.
T
Tex* = V1 Σ−1
(8)
1 U τ+V2 c ……………………………
式(8)の c∈R 2n−3 は任意の実数ベクトルである.したが
って,推力配分を満足するためには,任意の値で良いが,何
らかの値に決定しなければ,具体的な実装ができない.そこ
で,スラスト 2 乗和を最小化する方法が従来法(首振角制限
を設けないスラスト 2 乗和最小化法)として知られている.
図 5 第 i スラスタによる x,y 軸方向の力
Surge and Sway Forces of the i-th Thruster
スラスト 2 乗和‖Tex‖2 を計算すると,
T
‖Tex‖2 = T12+…+ Tn2 =‖Σ−1
‖2 +‖c‖2 ……( 9 )
1 Uτ
となるので,‖Tex‖2 を小さくするためには‖c‖2 を小さく
ただし,xi ,yi は第 i スラスタの x,y 軸方向の位置とする.
最終的に,各スラスタによる力の総和が船体に働く力となり,
次のように表される.
分は式(8)の右辺第 1 項に等しい.また,第 2 項は推力指令
AexTex =τ ……………………………………………( 5 )
Aex =[ a1 … an]
ai =
cosδi0
−sinδi0
sinδi0
cosδi0
−yi cosδi0 +xi sinδi0 yi sinδi0 +xi cosδi0
Tex = ⋮ ,Tex,i =
Tex,n
ったものである.
首振角制限付き最適推力配分法では,式(8)中の c の値を
角制限 ±θi,max を持つスラスタの例を示す.この制限を満足
Ti,y
するには,次式を満たせば良い.
Ti,x >
_ 0,Ti,x tanθi,max >
_|Ti,y|,
(i=1,
...,
n)…( 10 )
首振角制限の定式化
く各スラスタの合力の式(5)において,Aex は,
T
Aex = U[Σ1 0]
[V1 V2]
………………………( 6 )
と分解できる.ただし,U∈R3×3 と V∈R2n×2n は直交行列
であり,Σ1 は Aex の特異値σ1 >
_σ2 >
_σ3 > 0 を対角成分
この条件を満たし,かつスラスト 2 乗和が最小になる配分
を求める.これは不等式制約条件付 2 次計画問題と呼ばれる
最適化問題の形式となるが,不等式
(10)は変動パラメータで
ある推力指令によって変化するため,この配分法を実装する
には推力指令τに応じた最適解 c*を求める必要がある(マ
ルチパラメトリック 2 次計画問題)
.
2.3
最適推力配分の解法
線形変動する不等式制約を持つ 2 次計画について,1 次元
とする.
10
を満足するために 3 個減少し,最終的に冗長自由度として残
Ti,x
次に,首振角制限を設ける方法について述べる.船体に働
Σ1 =
τには依存しない形となっており,船体に働く力としては,
釣り合いの力となり,生成される τ には影響を与えない.
この第 2 項に含まれる(2n − 3)次元ベクトル c は,元々ス
ラスタの有していた 2n の自由度が,推力指令(X,Y,N)
適切に調整することで首振角制限を満足させる.図 6 に首振
Tex,1
2.2
すれば良い.そのため,従来法では c = 0 とする.すなわち,
推力指令 τ を実現するための,スラスト 2 乗最小の推力配
σ1
0
0
0
σ2
0
0
0
σ3
の例(変数: c ,最小化: c 2 )を図 7 に示す.この例では,
解が x =0 を境に区分的に線形になる.同様に,多変数,か
………………………………
(7)
つ,複数変動パラメータを持つ(マルチパラメトリック 2 次
計画)場合にも,最適解は変動パラメータに対して区分的線
アジマススラスタの首振角制限付き最適推力配分法の開発
形の性質を持つ 3),4).したがって,図 7 の例のように,変数
3.1
とパラメータが少ない場合には簡単に最適解を求めることが
模型船の主要目を表 1 に,スラスタの配置及び,それぞれ
首振角制限付き最適推力配分法の実装
できる.しかし,本報で取り扱う模型船には 6 基のスラスタ
の首振角の基準方向δi 0 ,片側制限角度θi,max を表 2 に示す.
が搭載されているため,求める最適解は 9 次元ベクトル,不
ここで,各スラスタの番号,配置,基準方向は図 2 に準じる.
等式条件の数は 18 個(18 次元連立不等式)となる.したが
区分的線形補間による首振角制限付き最適推力配分法 4)
って,解析的に最適解を求めるためには,3 個の変動パラメ
では,初めに,有限個の離散的な推力指令に対して,首振角
ータ(X,Y,N)を含む,18(= 最適解の次元×2)の不等
制限を満たす,最適(スラスト 2 乗和最小)推力配分を計算
式の成立を 262144(=2 の「不等式条件数」乗)とおりの場
する.例として,X が−1 から+1 へ変化する際の最適解の
3)
合分けについて検討する必要があり ,現実的ではない.
変化を図 8 に示す.X 以外の指令は Y = N = 0 である.指令
一方,マルチパラメトリック 2 次計画問題は変動パラメー
X の変化に伴い,9 次元ベクトルである最適解 c*が区分的線
タを任意の定数で固定すると,単なる 2 次計画問題となり,
形に変化している様子が分かる.なお,スラスタ配置の左右
その最適解は簡単に求められる.そこで,変動パラメータを
対称性のため,何本かの線は重なっている.
適当な刻みで分割した点の最適解を計算し,区分的に線形な
最適解の全体像を求めた.
3.
水槽試験による性能評価
同様に,X を 1 に固定して,Y と N を−1 から+1 まで変
化させた際に,表 2 の値を用いて計算した最適解の例(9 次
元ベクトルの要素の一つ)を図 9 に示す.ここで,水平 2 軸
が Y 軸及び N 軸,縦軸が最適解 c*の値である.
開発した推力配分法を,スラスタを 6 基搭載する模型船に
実装し,水槽試験を行った.以下に,その概要を示す.
図 9 最適解 c*の分布(Y,N 変化時)
Distribution of the Optimal Solution“c*”
in Relation to Varying Y and N
図 7 線形パラメータ変動する不等式制約付き 2 次計画
Quadratic Programming with Linear Parametric
Inequality Constraint
表 1 模型船の主要目
Principal Particulars of the Model Ship
全長
(LOA)
3.80 m
垂線間長
(LPP)
3.49 m
型幅
(B)
0.69 m
型深さ
(D)
0.295 m
喫水
(d)
0.167 m
表 2 スラスタ配置及び首振角制限
Thrusters Configuration
図 8 最適解 c*の分布(X 変化時)
Distribution of the Optimal Solution“c*”
in Relation to Varying X
δi0(度) θi,max(度)
xi(m)
yi(m)
No. 1
1.545
0.000
180
90
No. 2
1.127
0.273
−90
90
No. 3
1.127
−0.273
90
90
No. 4
−1.218
0.000
0
23
No. 5
−1.691
0.273
−90
90
No. 6
−1.691
−0.273
90
90
11
三井造船技報 No. 195(2008-10)
海洋関連技術小特集
これら X,Y,N を変化させたときの最適解のデータから,
試験中の様子を写真 1 に示す.船位計測には船体上方に設
区分的な線形の境界及び補間式を求め,
実装プログラムには,
置した CCD カメラによる画像情報を用い,右側手前の制御
領域判別式と補間式のみを組み込む.
用コンピュータを用いて制御を行った.
3.2
試験条件
試験水槽は,九州大学応用力学研究所の小型水槽(全長 5
3.3
試験結果
水槽試験では,模型船を前進,右へ移動の後,右回頭させ,
m,幅 2.5 m,水深 1.2 m)を使用した.なお,本報では,首
最後に原点位置へ戻すという移動指令を与え,その際の制御
振角制限付き最適推力配分法の平水中(または,外乱が弱い
性能,スラスト使用量,首振量を計測した.また,比較のた
とき)の特性を取り扱うため,波浪,潮流などの外乱は取り
めに,従来法(首振角制限無しのスラスト 2 乗和最小化法)
入れず,平水中試験のみを行った.
についても試験を行った.
移動指令と船体応答の時系列を図 10 に示す.ここで,横
軸が時間,縦軸が応答量であり,黒破線が指令値,青の実線
が従来法を適用した際の船体応答,赤の実線が本報の提案法
を適用した際の船体応答を表す.
次に,1 番から 3 番までのスラスタの首振角及びスラスト時
系列(全 300 秒の内,時刻 0 から 50 秒まで)を図 11 及び図
12 に示す.図 11 において,青線が従来法の結果であり,首
振角制限を持たないため,±180 度自由に首を振れる反面,無
駄に回転を続ける状況も生じている.一方,赤線で示す首振
角制限付き最適推力配分法(提案法)は,表 2 の制限角を満
足しながら,ある程度首振りを行っている.このときのスラス
トを,図 12 に示す.首振角制限を設けた場合,従来法と比較
してスラストが小さくなっていることが分かる.なお,4 ∼ 6
番スラスタに関しても,1 ∼ 3 番と同様の傾向であった.
写真 1 推力配分の水槽試験
Tank Test of the Thrust Allocation
3.4
各種推力配分法の比較
試験データを数値的に評価するために,
次の指標を設けた.
T
J1 =∫
x x 2 (y0 − yc)2 +
(ψ−ψc)2 )dt …( 11 )
(
0( 0− c)+
図 10 船体応答時系列
Time Series Graph of Ship Response
12
図 11 首振角時系列(1 ∼ 3 番スラスタ)
Time Series Graph of Thrusters’Angles (No.1-3)
アジマススラスタの首振角制限付き最適推力配分法の開発
表 3 提案法の評価値(平水中)
Evaluation Values of Proposed Method
(in Still Water)
J1
J2
J3
J4
定点保持時
全時間(300秒)
0.35
約1.0
0.40
0.80
0.90
1.18
0.68
0.65
の増加であれば,特に問題にはならない.
外乱の弱い海象向けに実装されてきた首振固定法は,首振
りが完全に停止するため,指令への応答は本提案法以上に良
いが,本提案法には,より大きな推力(船体に働く力とトル
ク)を生成することができるという利点がある.
以上をまとめると,本提案法は
・首振固定法と従来法の選択が困難な中間的な海象下で定点
保持を行う
・外乱が十分に弱い海象下でも時折移動を行う
・スラスタの後流を当ててはならない付加物が存在する
図 12 スラスト時系列(1 ∼ 3 番スラスタ)
Time Series Graph of Thrusts(No.1-3)
などの状況下での使用に適している.
4.
おわりに
本報で開発した首振角制限付き最適推力配分法では,外乱
T
0
J2 =∫‖τc−τ‖ dt …………………………………( 12 )
2
が弱い状態において,アジマススラスタの首振量低減に効果
を発揮し,船体の制御性能を向上させることができる.
T
0
J3 =∫‖Tex‖dt ……………………………………( 13 )
なお,本報の研究内容は,九州大学と当社との共同研究
「掘削船用 DPS の高度化に関する開発研究」及び「掘削船の
T
6
dθi
| dt |dt
J4 =∫
0 Σ
………………………………
( 14 )
i =1
ライザー管リエントリ自動化に関する開発研究」の一部であ
ることを記し,関係各位に謝意を表する.
ここで,T は試験のデータ記録終了時刻を意味する.J1 は,
参 考 文 献
船位指令 xc,yc,ψc からの船位の誤差の 2 乗和であり,制
御性能の指標である. J 2 は,推力指令と実現される推力の
誤差の 2 乗和であり,推力配分法の追従性(指令実現の速さ)
1)T. I. Fossen : Marine Control Systems, Marine
Cybernetics,(2002)
を表す. J 3 はスラストの大きさ, J 4 は総首振量である.定
2)小寺山.ほか:CA行列の零化空間基底操作による推
点保持時(時刻 50 秒まで)と,各種移動を行った全時間
力配分法の実証実験,日本船舶海洋工学会平成 19 年春
(時刻 300 秒まで)の式
(11)∼(14)
の値を表 3 に示す.また,
それぞれの値は従来法の計算結果で無次元化しているため,
季講演会論文集,(2007),p. 259
3)五百木.ほか:区分的線形補間による首振角制限付き
1 より小さい値であることが従来法より改善されていること
アジマススラスタの最適推力配分法, 日本船舶海洋工
を示す.
学会論文集,第 6 号,(2007), p. 183
定点保持時は,制御性能 J 1 ,推力誤差 J 2 ,スラスト J 3 ,
首振量 J 4 すべてにおいて従来法からの改善が見られる.ス
ラストも低減されているが,これは従来法で存在した無駄な
4)A. Bemporad, et al. : The explicit linear quadratic regulator for constrained systems, Automatica, Vol. 38,
(2002), p. 3
首振りが提案法で改善されて,制御性能が上がり,位置保持
のための要求推力自体が小さくなったためと考えられる.
全時間分に関しては, J 1 は移動指令時の目標値との差
(時刻 50 秒の直後の前後位置など)が反映されてしまい,従
〔問い合わせ先〕
株式会社三井造船昭島研究所 技術統括部
TEL 042−545 −3118
五百木 陵行
来法と提案法の差が無くなり,ほぼ 1 となる.また,提案法
ではスラストの大きさに関する指標である J 3 が若干大きく
なるが,平水中では元々の要求推力自体が小さいため,多少
船舶・艦艇事業本部 事業開発部
TEL 03−3544 −3411
門元 之郎
13