4 野菜の病害虫防除

Ⅳ
野 菜 の 病 害 虫 防 除
効 率 的 防 除 の 推 進
効果的な防除を行なうためには、栽培環境の整備、耕種的防除、物理的防除と化学
的防除を組合せた総合防除を推進するとともに、防除適期の把握に努めることが重要
である。
(1)
作付体系を改善し、連作により増殖する土壌病害虫の発生を防止する。
(2)
病害虫防除のてびき等を参考にしながら適正な農薬の選定と適正量の散布を行
なう。
なお適正量は野菜の種類や生育ステージによって異なるが、生育初期∼生育中 期
は 100∼150L/10a、生育後期には 150∼300L/10aを基準とする。
(3)
同一系統の薬剤の連用は、薬剤抵抗性害虫を出現させるため、作用性が異なる薬
剤を組み合わせたローテーション防除を行う。
(4)
発生予察情報等を利用し、病害虫発生の的確な把握に努め、適期防除を行なう。
キュウリ
(1)
キュウリの病害虫
(病
害)
1.べ と 病
1)生
態
病原菌は糸状菌の一種で分生子と卵胞子を形成する。本菌は純寄生菌であり、また、寄
生性の分化が認められ、キュウリべと病菌はカボチャを侵さないが、カボチャの菌はキュ
ウリその他のウリを侵すことがある。被害植物で越年し、20℃∼24℃で蔓延が著しい。一
般に春期から発生が多くなり梅雨期に多発し、夏期には一時少なくなり秋期に再び多くな
る。病原菌の分生子が飛散して伝染する。分生子の発芽には水滴が必要なため、多湿条件
で葉の濡れる状態の時に発生が多い。特にハウスでは多湿になりやすいので発生が多く、
また、低温期の着果負担や肥料切れなどで草勢が衰えると発病が多くなる。
2)防除のねらい
(1)
幼苗期からの感染を防止する。
(2)
圃場の排水を促進する。
(3)
適湿管理に努める。
(4)
適正な肥培管理に努める。
(5)
土壌からの病原菌の跳ね上がりを防ぐ。
(6)
薬剤が葉裏に十分かかるように薬剤散布を行う。
(7)
薬剤感受性の低下(薬剤の効力低下)を防ぐため、同一系統薬剤の過度の連用を避 け、
作用性の異なる薬剤を組み合わせて使用する(P380 参照)。
(8)
圃場によっては、リドミルMZ水和剤の成分であるメタラキシル剤(フェニルアマイ
ド系剤;系統番号⑮)に対する感受性低下が確認されている(平成 13 年 12 月に検定)。
このため、これらの薬剤の効果が低下している圃場では、同一系統薬剤の使用を控える。
3)防
除
法
・耕種的防除
- 151 -
キュウリ
(1)
明渠、暗渠排水の整備など圃場の排水を図る。
(2)
密植を避け、透光や通風を良くする。
(3)
敷きワラやプラスチックフィルムによるマルチを行う。
(4)
ハウス栽培では換気を行い午後の過湿を避ける。
(5)
ハウス栽培では加湿器を活用し、夜間の過湿による結露を防ぐ。
(6)
急 激な 温 度 低 下 は 発 病 を 助 長 す る の で 、 保 温 開 始 期 の 温 度 管 理 に は 十 分 注 意 す る 。
(7)
肥料切れや着果負担による草勢の低下が起きないように適正な肥培管理を行う。
・薬剤防除
- 152 -
キュウリ
①
普通7∼10 日間隔ぐらいの農薬散布でよいが、多雨など発病しやすい条件や多発時
期には3∼4日ぐらいに散布間隔をせまくする。
②
くん煙剤、蒸散剤、FD剤等の使用については別項(P414)参照
③
ジマンダイセン水和剤は体質によりかぶれを生ずることがあるので注意する。
2.灰色かび病
1)生
態
病原菌は糸状菌の一種で分生子を形成し、また菌核も形成する。菌糸の生育は 15∼27℃
でよく、適温は 25℃前後である。病原菌は、被害植物や他の有機物で腐生的に繁殖し、ま
たは菌核で土壌中に生存する。伝染は分生子が飛散しておこる。発生は比較的低温時(約
20℃)に発生が多い。果実では花卉に発病しその後果実に侵入する。多湿条件で発病が多
く、特にハウスでは多湿条件になるため極めて発病が多い。
2)防除のねらい
(1)
ハウス栽培では換気や加温により適湿管理に努める。
(2)
予防を徹底する。
(3)
薬剤が葉裏に十分かかるように薬剤散布を行う。
(4)
薬剤耐性菌の出現を防ぐため、同一系統薬剤の過度の連用を避け、作用性の異なる薬
剤を組み合せて使用する。(P380 参照)
(5)
圃場によっては、ベンズイミダゾール系剤(系統番号⑨)、ジカルボキシイミド系剤(系
統番号⑪)、およびジエトフェンカルブ剤(系統番号⑩)に対する感受性低下が確認され
ている(平成 14 年6月に検定)。このため、これらの薬剤の効果が低下している圃場で
は、同一系統薬剤の使用を控える。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
プラスチックフィルムなどでマルチをする。
- 153 -
キュウリ
(2)
圃場の排水を良くし、過湿にならないようにする。
(3)
ハウス栽培で低温・多湿条件の時は、加温機を作動させ湿度低下に努める。
(4)
罹病果、罹病茎葉は圃場外へ持ち出し処分する。
・薬剤防除
3.菌
核
1)生
病
態
果実、葉、茎など地上部のすべてに発生するが、果実と茎の被害が大きい。病原菌は、
糸状菌の一種で子のう胞子および小型分生子を生じ、また菌核を形成する。多犯性で各種
の作物を侵す。伝染は、被害部に生じた菌核が地表面や土壌中で生存し、適度な温度と湿
- 154 -
キュウリ
度条件で菌核から子のう盤を生じ、胞子が飛散して行う。一般に春期と秋期の2回発生す
るがハウスでは冬期にも発生する。
2)防除のねらい
(1)
薬剤散布は発病初期から地表面にも十分行う。
(2)
発病圃場では作付け前に湛水か土壌消毒を行う。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
無病地に栽培する。
(2)
発病圃場では天地返しを行い、菌核を土中深く埋設する。
(3)
夏季高温時に1∼2ヶ月間湛水をし、菌核を腐敗させる。
(4)
プラスチックフィルムでマルチを行う。
(5)
排水をよくし、過湿にならないようにする。
(6)
発病の多いハウス栽培では、加温機の設定温度を高める。
・薬剤防除
4.褐
斑
1)生
病
態
病原菌は糸状菌の一種で、分生子を形成し伝染源となる。病原菌の生育適温は 28℃前後
であり、メロン、シロウリ、スイカ、ユウガオなどウリ科作物を侵す。伝染は、前作の被
害茎葉ともに土壌中に残るか、農業用資材に付着して越年し、伝染源となるほか、種子伝
染する。2次伝染はハウス分生子が風に乗って行われる。栽培では蒸し込んで温度が 28℃
程度になった高温多湿の条件で2∼3cm の大型病斑を形成し多発生する。
2)防除のねらい
- 155 -
キュウリ
(1)
発病が多くなってからでは防除が困難となるので、少発生のうちに防除を徹底する。
(2)
本病はべと病、炭そ病、斑点細菌病などの病害と混同される場合があるので、病原菌
を確認して防除対策をたてる。
(3)
発病が多かったハウスでは、ハウス内と資材の消毒を行う。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
窒素肥料の多用は本病の発病を助長するので避ける。
(2)
ハウスでは換気に注意し、高温多湿条件を改善する。
(3)
罹病葉は次作の伝染源となるので、圃場外へ持ち出し処分する。
・薬剤防除
①
5.炭
そ
1)生
ジマンダイセン水和剤は体質によりかぶれを生ずることがあるので注意する。
病
態
病原菌は糸状菌の一種で、分生子層上に分生子と剛毛を形成する。生育の適温は 23℃で、
スイカ、メロンなどウリ科作物を侵し類似の症状を示す。伝染は菌糸や分生子の形で被害
植物体の組織中で越年し、第一次伝染源となる。また、種子伝染の可能性もある。2次伝
染は分生子が雨滴によって周囲へ飛び散っておきる。露地栽培で発生が多く、雨にあたら
ない施設栽培ではほとんど発生しないが、22∼24℃の気温で発生が多い。排水不良地や多
雨の天候の時発生が多い。
2)防除のねらい
- 156 -
キュウリ
(1)
露地栽培では、梅雨期と秋雨期に発生が多いため、この時期の防除を徹底する。
(2)
被害植物の組織内で越年するので、病株は圃場外に持ち出し焼却処分する。
(3)
発病圃場で使用した支柱等の資材は、消毒をして用いる。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
排水をはかり湿度の低下をはかる。
(2)
窒素肥料の多用をさける。
(3)
支柱についているまきづるなどは除去して使用する。
(4)
プラスチックフィルムなどでマルチをする。
・薬剤防除
スイカの炭そ病(P296)参照
ただし、各薬剤の使用法については農薬ラベルを参照すること。
6.疫病・立枯性疫病
1)生
態
苗・葉・茎・果実を侵し、病斑部は暗緑色に軟腐し、果実では、表面は真っ白い菌糸が
密生する。ハウスでは茎の地際部に発生することが多く、はじめ地際の部分が水浸状にな
って軟化し、茎葉は急にしおれて枯死する。作付けの全期間を通じて発生する。病原菌は
糸状菌の一種で生育適温は 28∼32℃で、キュウリ、スイカ、カボチャなどウリ科以外は侵
さない。病原菌は、病植物とともに土壌中で越冬して幼植物を侵し、2次伝染は病斑に生
じた遊走子で水媒伝染する。また、支柱、前年の敷きわらも伝染源となる。
2)防除のねらい
(1)
床土および本圃の土壌消毒を行う。
(2)
排水をはかり多湿をさける。
(3)
茎葉・果実に発病を認めたら、直ちに除去し薬剤散布を行う。
(4)
灌水は病原菌の混入の恐れがない水を用いる。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
クリーク水、河川水のかん水は発病の原因となるので、水道水又は井戸水を用いる
のが望ましい。
(2)
初期の病株、茎葉は圃場外へ持ち出し処分する。
(3)
土壌からの病原菌の跳ね上りによる伝染を防ぐため、敷きワラかプラスチックフィ
ルムによるマルチを行う。
(4)
茎の地際部付近をやや乾燥ぎみとするため高畦とする。
(5)
かん水による多湿にならないように注意する。
・薬剤防除
(1)
土壌消毒・資材消毒の項(P392)参照
- 157 -
キュウリ
床上はあらかじめクロールピクリンで消毒する。
(2)
①
薬剤かん注
パンソイル乳剤は砂質土では低濃度(3,000 倍)で使用し、砂土では使用しない。
高温多湿時での播種時処理は避ける。
②
パンソイル乳剤は、幼苗期や定植直後では 3,000 倍液を使用し、株処理の場合には
株元の直径 30cm に 200 ㏄/株の割合で均一にかん注する。
(3)
①
散
布
ジマンダイセン水和剤、デランK水和剤には体質によりかぶれを生じることがある
ので注意する。
7.うどんこ病
1)生
態
本病の病原菌として
Podosphaera
xanthii
等があり、菌は分生子や閉子のう殻を作
る。本菌はメロン、カボチャ、ホウセンカ、コスモスなどに寄生し、生育適温は 25℃前後
である。越年は被害部の子のう殻で越年し、発生源となり2次伝染は分生子が風によって
飛散し行う。ハウスでは冬期にも発病し分生胞子で越年する。高温、過乾燥、多湿条件で
発生が多い。ハウスでは換気不十分の場合に多発する。
2)防除のねらい
(1)
発病初期のうちに防除の徹底をはかる。
(2)
耐性菌が発生しやすいので、同一系統の薬剤の連続使用は避け、作用性の異なる薬剤
を組み合わせて使用する。(P380 参照)
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
密植をさけ、通風採光をはかる。
- 158 -
キュウリ
(2)
排水をはかりかん水過多にならないようにする。
(3)
ハウス栽培では、乾燥しすぎないように適切な換気に努める。
(4)
チッ素不足や過多にならないようにする。
・薬剤防除
①
県内の一部圃場において、パンチョTF顆粒水和剤の1成分であるシフルフェ
ナミドに対する薬剤耐性菌の発生が確認されたため、効果が低下している圃場で
は使用を控える。
- 159 -
キュウリ
②
くん煙剤・蒸散剤・FD剤の使用については別項(P410)参照
8.つる割病
1)生
態
土壌中で被害植物に付き菌糸や厚膜胞子の形で越年する。種子伝染をする土壌病原菌で
土壌中に病菌が残って伝染するので連作地に発生が多い。病原菌の発育適温は 24∼27℃で
酸性土壌に発生が多い。
ネコブセンチュウの発生はつる割病の発生を助長する。ウリ類のつる割病菌はキュウリ
菌・スイカ菌の2つの生態種があり、キュウリ菌はキュウリ、マクワウリ、メロンを侵す
がスイカ、トウガンは侵さない。スイカ菌はスイカ、メロン、トウガンを侵すが、キュウ
リ、マクワウリは侵さない。
2)防除のねらい
(1)
育苗用の床土は必ず土壌消毒を行う。
(2)
発病のおそれのある畑は土壌消毒をして植付ける。
(3)
連作の場合は、必ず本病菌に抵抗性を有するカボチャ台木に接ぎ木を行う。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
健全苗を無病地に植付ける。
(2)
カボチャを台木として接ぎ木栽培する。
(3)
キュウリ栽培のあとの湛水処理は、病害虫防除や生理障害防止等考えて可能なかぎ
り実施する。
(4)
強 酸 性 で は 病 菌 の 発 育 が 盛 ん に な る の で P H 6.0∼ 6.5 に な る よ う 石 灰 類 を 使 用 す
る。
(5)
連作をさけ5年以上ウリ類を栽培しない。
(6)
支柱は新しいものを使用する。
やむを得ないときは消毒をして使用する。土壌消毒・資材消毒の項(P392)参照
(7)
被害株は圃場外へ持ち出し処分する。
・薬剤防除
土壌消毒・資材消毒の項(P392)参照
9.つる枯病
1)生
態
茎の地際部の病斑に小黒粒点を生じ、ひどくなると枯死する。病原菌は糸状菌の一種で、
病斑上に柄子殻などをつくる。生育適温は 20∼24℃でウリ科植物のみを侵す。病原菌は被
害部の柄子殻などで生存し伝染源となる。柄子殻は適度な水分と温度を得ると、分生子が
内部から漏れだし、雨滴によって周囲に飛び散る。子のう胞子は空気伝染する。また、分
生子、柄子殻などの形で種子伝染もする。発病適温は 24℃ぐらいであるが高温の時にも発
- 160 -
キュウリ
生する。降雨、密植など湿潤条件の時にも発生が多くなる。露地で発生が多いが、トン
ネルでもプラスチックフィルムなど除去後多くなる。
2)防除のねらい
地ぎわ部に病斑がみられたら直ちに薬剤散布を行う。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
支柱は更新するか又は消毒する。土壌消毒・資材消毒の項(P392)参照
(2)
健全苗を植付ける。
(3)
排水をはかり多湿をさける。
(4)
収穫後、茎葉は圃場外へ持ち出し処分する。
・薬剤防除
メロンのつる枯病の項(P302)参照
ただし、各薬剤の使用法については農薬ラベルを参照すること。
10.ウイルス病類
キュウリのウイルスによるモザイク病にはキュウリ緑斑モザイクウイルス(KGMMV)
のほか、カボチャモザイクウイルス(WMV)、ズッキーニ黄斑モザイクウイルス(ZYMV)、
キュウリモザイクウイルス(CMV)によるものがあり病徴のみによる判別は困難である。
また、これらのウイルスによっておこる急性萎ちょうは、カボチャ台木を用いた接ぎ木栽
培と自根栽培では原因となるウイルスの種類が異なる。接ぎ木栽培での発病はCMVとZ Y
MVまたはWMVの混合感染及びZYMVの単独感染による。一方、自根栽培での発病は K
GMMVの感染による。これらの症状は葉や果実にモザイク病を伴わない場合もあるため 、
他の病害と間違えないように注意する。
2004 年に本県で確認されたメロン黄化えそウイルス(MYSV)による黄化えそ病は、発
病初期に葉脈透過やモザイクを生じ、他のウイルス病の病徴と類似している(詳細につい て
は野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除P129 を参照)。
ウイルス病の特徴
耐熱性:10 分間処理した場合にウイルスの活性がなくなる温度のこと(不活化温度)。
- 161 -
キュウリ
耐希釈性:感染を起こしうる最も薄い希釈倍率のこと(希釈限界)。
(1)
キュウリ緑斑モザイクウイルス(KGMMV)
1)生
態
促成、半促成栽培に早くからでて被害も非常に大きい。本病による病徴は新葉に星
型の黄色小斑点を生じ、次第に黄色部が拡がって明瞭なモザイクとなり、その中に濃
緑色の隆起部を生じることが多い。果実は濃緑色の隆起部を生じて変形する。伝染方
法は汁液、接触、土壌によって伝染するがアブラムシによる伝染はしない。
2)防除のねらい
(1)
病徴だけでウイルスの区別は困難であるが、各ウイルスの伝染方法を熟知し伝染
を防止するようにつとめる。
(2)
KGMMVは非常にやっかいなウイルス病であるから、耕種的防除、薬剤防除な
ど総合的に集団で防除する。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
病株はすみやかに抜き取り、病株の茎、葉、根を残さないように圃場から除去
する。
(2)
残根の腐敗分解を促進するため、消石灰などを施用し、よく耕起する。
・薬剤防除
薬剤名及び処理方法
①
②
注
意
事
項
種子消毒
①
土 壌 消 毒 ・ 資 材 消 毒 の 項 (P363)参 照
第 3 燐 酸 ソ ー ダ 10% 液 に 20 分 間 浸 種 す る 。
②
第3燐酸ソーダはアルカリ性が強いので衣服
その他
につけると、破れたりするので注意する。
整 枝 、 収 穫 の 際 、 第 3 燐 酸 ソ ー ダ 10% 液 で 、
ハサミ等を毎回液に浸しながら消毒すれば伝染
を防ぐのに有効である。
(2)
カボチャモザイクウイルス(WMV)、ズッキーニ黄斑モザイクウイルス(ZYMV )
1)生
態
新葉に黄色斑紋、緑色濃淡のモザイクを生ずる。キュウリのほかカボチャ、スイカ、
メロンなどのウリ類、エンドウ、ソラマメなどに感染する。キュウリでの病徴はモザ
イク症状がはげしく、葉縁が鋸状になり葉がいちじるしく変形する。キュウリの果実
も濃緑色の隆起部を生じて変形することが多く、商品価値を失う。ほ場での伝染はも
っぱらアブラムシ類によって媒介され、主にモモアカアブラムシ、ワタアブラムシに
よって容易に伝染する。
また、カボチャ類では低率で種子感染が認められた事例があるが、キュウリでは種
子伝染しない。
このウイルスは、ウリ科作物の越冬栽培における病床が第一次伝染源となり、アブ
- 162 -
キュウリ
ラムシ類によって伝染を繰り返す。
2)防
除
法
アブラムシ類の項(P164)参照
ただし、各薬剤の使用法については農薬ラベルを参照すること。
(3)
キュウリモザイクウイルス(CMV)
1)生
態
CMVは、キュウリでは発生がそれほどひどくないが、他の多くの野菜類、花き類
など多数の植物に感染、発病し大きな被害を与えている。また雑草でもCMVにかか
っているものが多く、なかでもツユクサ、ハコベ、ミミナグサ、カラスウリなどやミ
ョウガのモザイク株はCMVの重要な伝染源である。伝染は、CMVを保毒したアブ
ラムシ類によって非永続的におこなわれる。CMVを媒介するアブラムシ類の主なも
のはモモアカアブラムシ、ワタアブラムシ、ダイコンアブラムシである。
2)防
除
法
アブラムシ類の項(P164)参照
ただし、各薬剤の使用法については農薬ラベルを参照すること。
(4)
メロン黄化えそウイルス(MYSV)
詳細については野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除(P148)を参照。
(5)
キュウリ退緑黄化病(仮称)ウイルス(CCYV(仮称))
詳細については、「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除(P150)を参照。
11.斑点細菌病
1)生
態
本病はキュウリのほかスイカ、カボチャ、メロン等にも伝染する。第一次伝染源は種子
であるが、一度多発したほ場では病原細菌が被害茎、葉とともに土壌中に残ったり、資材
等に付着して後の伝染源となる。ひとたび発病すると、接触伝染で農作業中容易に伝染し、
また、露滴に浮遊した細菌が飛散して次々に伝染する。ハウスでは、ハウス周辺の低温部 、
雨もり部、露滴落下部などから発生し始め漸次まん延していく。特に、低温で多湿条件は
本病の発生を助長する。発生部位は葉、果実、茎、巻つる、葉柄で一般に葉が多い。
葉の病斑は、べと病と類似しているが病斑の色が白っぽく、病斑部の葉肉が薄くなり、
透けてみえるようになる。また、べと病のように葉裏に黒いかびを生じなくて、病斑部が
古くなると破れやすくなり、穴があく。
2)防除のねらい
(1)
種子伝染するので種子消毒を徹底する。
(2)
多湿時にまん延しやすいので薬剤の予防散布をする。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
本病は低温、多湿時に発生、まん延するのでハウスでは保温・換気に十分注意する 。
- 163 -
キュウリ
(2)
発 病地 で は 連 作 を 避 け 、 夏 の 高 温 時 に 密 封 蒸 し 込 み 、 湛 水 等 に よ り 伝 染 源 を 断 つ 。
(3)
かん水はマルチ下、または地中かん水とし、少量ずつ回数を多くする。
(4)
側枝、下葉の摘除は晴天時に行い、曇雨天等多湿時には行わない。
・薬剤防除
(1)
土壌消毒および資材等の消毒をする。
(2)
散
①
布
銅剤は、連用すると葉が硬化し、薬害が生じる場合がある。
(害
虫)
1.アブラムシ類
1)生
態
キュウリにはワタアブラムシとモモアカアブラムシが寄生する。両種は種々の形態で越
冬するが、4∼5月ごろから有翅虫が現われ、これが作物に移動飛来する。一般的にモモ
アカアブラムシは3∼5月に、ワタアブラムシは6∼7月に発生が多い。施設栽培では定
植直後から冬期にかけても発生するが、特に3∼6月にかけて多くなる。ウリ科の果菜類
では、一般にワタアブラムシの寄生が多い。
二種とも芯葉や上位葉の葉裏に群棲し、吸汁するため株の伸長が悪くなる。主として有
翅虫で移動・分散し、無翅虫で増殖するが、ウイルス病類の媒介は有翅虫が行うことが多
い。
2)防除のねらい
(1)
施設では、有翅虫の飛来侵入が比較的少ないが、侵入すると高温乾燥により急激に増
殖する。防除は、苗床及び本ぽでの侵入定着を防止することに重点をおく。
(2)
露地では、有翅虫の飛来が多く、ウイルス病が媒介されやすいので、防除は、これら
- 164 -
キュウリ
の防止にねらいをおき、生育初期から徹底して行う必要がある。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
ハウス及びトンネル栽培では、ハウスサイド、出入口並びに換気口を寒冷紗等で被
覆し、有翅虫の侵入を防止する。
(2)
露地栽培では、シルバープラスチックフィルムや銀色ストライププラスチックフィ
ルムなどのマルチ資材を活用し、有翅虫の飛来定着を防ぐ。
・薬剤防除
①
近年アブラムシ類の薬剤感受性の低下が見られるので、同一薬剤あるいは同一
系統の薬剤の連用を避ける。詳しくはP379 参照。
2.オカボノアカアブラムシ(ネアブラムシ)
1)生
態
カボチャ台木に発生が多い。本種は 30℃以上でほとんど有翅虫となり、20∼25℃が発育
適温である。施設キュウリでの発生例が多く、被害が著しいと日焼け症状に類似し、葉は
黄変し枯死する。
2)防除のねらい
(1)
本虫は本来イネ科植物が主な寄主である。夏季休閑中、ハウス内で繁茂した雑草に寄
生したものが残存し、発生源となる場合がある。また、水田跡での発生も多い。
(2)
育苗土壌に生息したものが発生源になる場合もあるので、苗での持込みを防止する。
- 165 -
キュウリ
(3)
ワラ等の有機質資材を土壌に施用すると特に本虫の繁殖が盛んになる。
(4)
寄生が地下部であるため発生に気付くのが遅れがちであるので注意する。
(5)
栽培の後期(春季以降)には、野外から有翅虫が飛来し、ハウス内で発生加害する場
合があると思われる。また、野外からの有翅虫の飛来が少ない1∼3月でも秋季の発生
が多いとその後増殖し加害する場合がある。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
定植前の本ぽでの密度を下げるために、夏季の休閑期に十分湛水するか、数回耕転
し、雑草を生やさないようにする。
(2)
他のアブラムシ類も含め、野外からの有翅虫の飛び込み防止のため、ハウスのサイ
ドや出入口および換気口を寒冷紗で被覆する。
・薬剤防除
アブラムシ類(P164)に準じる。
3.ウリハムシ(ウリバエ)
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
スイカのウリハムシ(P299)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
成虫防除
4.ケ
ラ
タマネギのケラ(P260)参照
5.コナジラミ類
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」(P129)参照
法
・耕種的防除
- 166 -
キュウリ
・薬剤防除
- 167 -
キュウリ
6.ミナミキイロアザミウマ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」(P129)参照
法
・耕種的防除
・薬剤防除
- 168 -
キュウリ
7.ネコブセンチュウ類
1)生
態
主要な種類は、サツマイモネコブセンチュウ、キタネコブセンチュウ、ジャワネコブセ
ンチュウ、アレナリアネコブセンチュウの4種で、県下ではサツマイモネコブの発生が多
い。サツマイモネコブセンチュウの生育適温は地温 25∼30℃といわれ、適温域で好適植物
に寄生した場合は 25∼30 日で一世代を完了する。越冬は土壌中の卵や2期幼虫、あるいは
植物の根内に寄生した幼虫、成虫など全てのステージで行なう。施設では冬季においても
地温が高いため、生育が進行する。年世代数は温度と植物の状態によってかなり異なり、
数世代∼10 数世代の幅がある。根への侵入は2期幼虫(卵からふ化した幼虫)で行ない、
根内に定着して3期、4期幼虫を経て成虫となる。幼虫の定着した根は、幼虫の分泌物に
感応して根こぶ(ゴール)が形成される。
ネコブセンチュウは、いずれの種も多くの植物に寄生し、高等植物のほとんどすべてに
わたるため確認されていないものも多い。サツマイモネコブセンチュウでは確認された寄
生植物は約 700 種といわれ代表的な寄生しない作物はラッカセイとイチゴが知られている 。
ネコブセンチュウの寄生した作物は、根こぶが生じ根の機能が低下するため、生育が遅
延し、晴天乾燥時にはしおれたり、さらにひどい場合は下葉から枯上がる。また、青枯れ
病やつる割病などの各種病害菌との複合的被害が問題となっている。
2)防除のねらい
耕種的防除に重点をおき、薬剤防除を補助的に行なう。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
連作をさけ、田畑輪換を行う。この場合、水田化2年、畑作2年が提唱されている 。
(2)
夏季(7月∼8月)に湛水する。地温を高くしないと効果がなく、ハウスを密閉し
て滞水に保ち、浅水にすることが必要である。湛水できない圃場ではこの場合、畦立
てを行ない、十分散水するか畦間に一時湛水し、透明ビニール(古い被覆資材でもよ
い)でマルチして、ハウスを1ヶ月密閉放置する。このとき稲ワラや堆肥を石灰窒素
- 169 -
キュウリ
とともにスキ込むとより効果が上がる。
(3)
堆きゅう肥など有機物を施用する。
(4)
苗や客土および農機具などによって汚染土壌が持ち込まれることも多いので注意
する。
・薬剤防除
共通資料「土壌線虫」の項(P398)参照
8.チビクロバネキノコバエ
1)生
態
成虫は黒色で体長は約 1.8mm で、産卵は未熟堆肥等に好んで行われ、完熟堆肥には少な
い。幼虫は体長約4mm で半透明であり、頭部が黒色である。本虫は従来、農作物を加害す
ることはあまりなかったが、未熟堆肥の大量施用などによりハウス内の環境が本虫の増殖
に好適になり、害虫化したと思われる。キュウリで被害が多く、幼虫が根を食害しスポン
ジ状となり、日中しおれ、被害の激しい場合は立枯れとなる。
卵から成虫まで、20℃で約 15 日、25℃で約 12 日であり、20∼25℃の施設内では少なく
とも月2回の発生が可能である。
ハウス内での発生生態は明確でないが、施用された未熟堆肥などで数世代経過した後、
大量に発生した幼虫がえさ不足のため分散し、キュウリの細根部を加害すると思われる。
2)防除のねらい
(1)
未熟堆肥の多量施用はしない。
(2)
堆肥投入による持ち込みを防ぐ。
(3)
圃場の排水を図る。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
未熟有機物に誘引される傾向が強いので、完熟堆肥を使用する。
(2)
持込みを少なくするために野積堆肥はビニールで被覆する。
(3)
多湿圃場で被害が多い傾向にあるので排水をよくする。
9.ハダニ類・ホコリダニ類
1)生
態
ハダニ類ではナミハダニとカンザワハダニが発生する。一方、ホコリダニ類ではチャノ
ホコリダニの発生が多く、近年、近似種であるスジブトホコリダニの発生も認められてい
る。
- 170 -
キュウリ
ナミハダニとカンザワハダニは主として葉裏に寄生し、発生初期の症状は、葉の表に白
いカスリ状の小斑点があらわれる。発生が増加すると、葉が黄化して枯死する。
チャノホコリダニおよびスジブトホコリダニの雌はほぼ卵形の淡黄色をした体長約
0.25mm の小さなダニであり、両種の雄は体長約 0.17mm とさらに小型である。これらは、
キュウリの新葉、芯部や幼果に寄生する。このため、キュウリは生長が止まり芯止まり症
状となったり、被害果は鮫肌状やかさぶた状になる。一般に、スジブトホコリダニは定植
直後の被害が多く、チャノホコリダニは施設栽培後期に被害が多くなる。
2)防除のねらい
(1)
発生が多くなると、各態のものが混在し防除が困難となるので、早期発見、早期防除
を行う。
(2)
スジブトホコリダニは未熟有機物について圃場に持ち込まれる場合が多いので、完熟
堆肥を使用する。
(3)
葉裏へ寄生することが多いので、薬剤が葉裏へも十分かかるように散布する。
3)防
除
法
・薬剤防除
10.ケナガコナダニ
1)生
態
成虫は長さ約 0.4mm で、きわめて小型、全体乳白色の丸みをおびたダニであり、群がっ
ていることが多い。適当な温度と湿度(25∼28℃、85∼95%)さえあれば、短時間の間に
大繁殖して、地表面にはいだし、群生する。発生条件に恵まれれば、卵期間4∼6日、幼
ダニ、若ダニ期間3∼6日で経過する。
キュウリでは加害された芽から展開する葉が、ちぢれて奇形になる。また、展開葉では
やや緑色があせて、硬化するなど、全体として生育が遅れる。
稲わらや有機質肥料を多く使うハウスに発生が多く、とくに敷ワラや畦間のモミガラな
どで繁殖し、これが発生源となっている。
2)防除のねらい
耕種的防除に重点をおく。
3)防
除
法
(1)
敷ワラ用の稲わらは、よく乾燥したものを使用する。
(2)
発生圃場では油粕などの有機質肥料の増肥をしない。
- 171 -
キュウリ
(3)
コナダニは乾燥するとほとんど繁殖しなくなるので、発生をみとめたらハウス内の換
気をはかるなど、なるべく乾燥するように努める。
11.ワタヘリクロノメイガ(ウリノメイガ)
1)生
態
本種は年間6∼7世代の発生が可能と考えられる。産卵は完全に展開した葉の裏面に1
卵ずつ、もしくは数個を重ねて行われる。被害は9∼10 月頃の抑制栽培で多く、1∼2歳
幼虫は葉脈を残して葉裏から食害し、中齢以降は葉を繰り合わせ、その中で食害する。芯
止まりになると被害が大きい。
2)防除のねらい
・成虫の施設内への侵入を防ぐ。
・早期発見、早期防除に努める。
3)防
除
法
・耕種的防除法
(1)
ハウス栽培ではハウスサイド、出入口および換気口に寒冷紗を被覆し、成虫の侵入
を防止する。
・薬剤防除
12.ハモグリバエ類
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項(P129)参照
法
・薬剤防除
- 172 -
イチゴ
(2)イチゴの病害虫
(病
害)
1.うどんこ病
1)生
態
果実、葉、果梗およびランナーに発生する。病原菌は絶対寄生菌(生きた植物体上での
み生活する菌)で、他作物のうどんこ病菌とは種または系統が異なり、イチゴの株上での
み世代が繰り返され、本ぽ収穫後期に発生した本病菌が隣接の親株に伝染し、その後子苗
に伝染する。盛夏期には気温が発生適温より高くなるので葉の病斑が一時的にみえなくな
るが、病原菌は株についたまま生存しており、保菌苗が本ぽに定植され、発生に好適な条
件(ビニール被覆期、第1果房着果期頃)になると胞子が風媒伝染され発生し始める。本
病の発生適温は 20℃前後で、多湿、乾燥条件のどちらでも発生する。品種間で発病に差が
みられ、「とよのか」は弱い品種である。
2)防除のねらい
(1)
栽培株から次年度作の親株への伝染を防ぐ。
(2)
親株床、育苗床で防除を徹底し、本ぽには無病苗を定植する。
(3)
育苗期は胞子形成がなされる6月中下旬までの防除に重点をおく。また、育苗後期の
再発病を防ぐため、8月以降も防除を実施する。
本圃定植後の活着時∼頂花房開花前まで 10 日∼14 日間隔で薬剤防除を行って葉で の
(4)
発生を抑え、その後の果実発病を防ぐ。
(5)
被害果や被害葉は、除去処分した後に薬剤散布する。
(6)
葉裏にかかるよう十分量を散布する。また、古葉を除去して、薬剤が葉裏にかかりや
すくする。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
収穫後期に発生した本病菌が、隣接する親株への伝染源となるので、収穫終了後は
早めに栽培株を処分する。
- 173 -
イチゴ
(2)
育苗期は定期的に葉かぎを行い、潜在感染葉を除去する。
(3)
罹病葉や罹病果実は、圃場外に持ち出し処分する。
(4)
本圃では古葉の整理を行い、通風を良くする。
・薬剤防除
- 174 -
イチゴ
①
普通7∼10 日ごと散布し、発生が多ければ散布間隔を狭くする。
②
開花時の薬剤散布は、奇形果の発生が多くなるのでさける。
③
曇雨天が続く場合にはハウス内の多湿を避けるため、くん煙剤等の使用が望ましい。
くん煙剤の使用については別項(P414)参照
④
同一系統薬剤を連続散布すると、薬剤耐性菌が生じる恐れがあるので、薬剤は他系
統薬剤を輪番使用する。
(P380 参照)なお、DMI剤は他県での感受性低下の報告が
あるので、効果が低下している圃場では使用を控える。
⑤
県内の一部圃場において、アミスター20フロアブル及びストロビーフロアブルに
- 175 -
イチゴ
対する耐性菌の発生が確認されたため、効果が低下している圃場では使用を控える。
⑥
モレスタン水和剤は高温時には薬害を生じやすいので注意する。
⑦
アミスター20フロアブル、ストロビーフロアブルの使用においては、高温多湿条
件下での散布、浸透性展着剤(ニーズ、アプローチBI、ミックスパワー等)の加用
をしない。
2.灰色かび病
1)生
態
病原菌は被害部の菌糸や、分生胞子あるいは土中の菌核で越年し、胞子が飛散して伝染
する。20℃前後の多湿条件で発生しやすい。被害は結果期以降に多く、特に成熟果に被害
が著しい。
2)防除のねらい
(1)
ハウスにおいては多湿条件下で、発生が多くなるので、通風をはかり湿度を下げる。
(2)
発生初期はには7∼10 日おきに散布する。なお多発の場合は間隔をせまくする。
(3)
薬剤耐性菌の出現を防ぐため、同一系統薬剤の過度の連用を避け、作用性の異なる薬
剤を組み合わせて使用する。(P379 参照)
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
排水対策を十分行い、また、適切な換気管理により過湿にならないようにする。
(2)
チップバーンが発生した部分から本病が発生することが多いため、適切な灌水管理
と施肥管理を行い、チップバーンの発生を防ぐ。
(3)
花房内向け栽培の場合、花弁が畦面に残り本病の発生源となるので、ブロアー等を
用い定期的に花弁除去をする。
(4)
花房内向け栽培の場合、果実裏面に水分が溜まり本病の発生を助長するので、果実
マット等を敷く。
(5)
罹病果実等は早めに圃場外に持ち出し処分する。
(6)
込みすぎた株は古葉の整理を行い、通風を良くする。
・薬剤防除
- 176 -
イチゴ
・
くん煙剤・FD剤の使用については別項(P388)参照
・
同一系統薬剤の連用は避ける。(P379 参照)
3.炭
疽
1)生
病
態
病原菌としては、2種類の病原菌が存在し、従来から知られている病原菌である
Glomerella
cingulata ( Colletotrichum
Colletotrichum
fragariae ) お よ び 葉 枯 れ 病 状 が 中 心 の
acutatum (通称;葉枯炭疽病)がある。これらの病害の病徴および伝染
方法は以下のとおりである。
(1)
病徴
ランナーや葉柄に最初、黒色で陥没した紡錘形の病斑として現れ、拡大すると
ランナーや葉柄を取り巻く大型病斑となる。このような大型病斑上には病原菌の胞子を
多量に形成する(鮭肉色の胞子塊)のため、伝染源として非常に重要である。親株床や
育苗床でこの病斑がまず、最初に現れることが多い。展開直後の葉では直径2∼3mm の
薄い黒斑を形成する。激しく発病した場合、葉縁から枯れ上がり胞子を形成し、伝染源
となることもある。一方、同じ炭疽病でも葉枯れ炭疽病による場合は激しい葉枯れ症状
を示す。
病原菌がクラウン部を侵すと、はじめ株の生育が抑制されたり、新葉のつやがなくな
る等の症状を生じたり、時には萎黄病にみられるような新葉の奇形を生じることもある。
最終的には、全身的な萎ちょう症状を示し、枯死する。そのような株のクラウンを切断
すると外側から内側にむけて褐変している。育苗期に多発生することが多いが、特に近
年は定植後の発生が大きな問題となっている。一方、葉枯れ炭疽病による場合は立枯れ
は生じない。
また、平成9年以降にみられるようになった被害として、幼果では黒褐色の小斑点病
斑を形成し奇形果となり、着色した果実では黒褐色病斑が拡大し果実全体が腐敗する症
状がある。また、果実以外にも、花には乾腐症状、果梗には黒褐色の陥没病斑を形成す
る。特に夜冷、株冷育苗等の出蕾、開花が早い作型で、定植後の気温が高く、降雨日も
多いような時に発生する。
(2)
伝染源
炭疽病には立枯れをおこす炭疽病の他に葉枯れ炭疽病もあるが、基本的な伝
- 177 -
イチゴ
染方法や防除対策はほぼ同様と考えてよい。
本病の第一次伝染源(その年の最初の伝染源)は、外見上健全にみえる感染親株及び
前年の被害残さを含んだ土壌と言われている。しかし、後者による伝染は仮植床では問
題となるが、ポット育苗を行う本県の栽培においては、むしろ、前者の外見上健全な感
染親株からの伝染が重要である。感染親株の中でもクラウン周辺部や前年に感染した下
葉が分生子の供給源となる。
(3)
伝染方法
両炭疽病とも主な伝染は分生子によりおこる。伝染源は分生子が移動する
には、降雨や潅水などの水はねが必要である。外見健全な感染親株からの分生子の飛散
は4月から始まり、感染親株を撤去するまで続く。また、育苗床でも感染苗や発病苗か
ら 11 月まで分生子が飛散し、健全苗に伝染する。特に、高温多湿の梅雨期∼9月で降雨
が多い日は分生子の飛散量が増加し伝染リスクが高まる。また、Glomerella
cingulata
による炭疽病では、枯死株やランナーの黒色陥没病斑等に子のう殻を形成し子のう胞子
を飛散させ空気伝染する。子のう胞子の飛散量は分生子に比べかなり少ないが、降雨直
後を中心に数ヶ月にわたり飛散するため、発病株は直ちに処分することが必要である。
2)防除のねらい
(1)
炭疽病菌に感染していない親株の使用(第一伝染源の除去)
(2)
感染親株からの伝染を避けるため、採苗及びランナー切り離しはできるだけ早期に行
い親株を処分する(病原菌の伝染防止)。
(3)
ビニル被覆やチューブ潅水による病原菌の飛散防止(病原菌の伝染防止)
(4)
親株床∼育苗終了時までの異なる薬剤によるローテーションによる防除(健全苗の感
染防止)
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
親株として使用する苗は、潜在感染の可能性について検定を行い、無病親株から採
苗する。
(2)
採苗及び育苗はベンチ等を用いた高設条件で行う。
(3)
育苗期間を通じ、ビニール雨よけを行う。
(4)
地床育苗の場合は、本病の汚染が無く排水の良い圃場を選定し、排水対策を十分に
行う。
(5)
ポット内が過湿にならにように適切な灌水管理を行う。
(6)
育苗床面の排水を促進するため、傾斜を付け、畦面に防風ネット等を被覆する。
(7)
苗は十分な間隔を置いてならべ、過密条件としない。
(8)
古葉かぎ等植物体に傷が付く管理は、雨天日及び降雨が予想される前には行わない 。
(9)
用水の水質には十分注意を払い、水滴が出来るだけ小さい灌水装置にて散水を行う 。
(10) 本圃には罹病の可能性がある生育異常や生育不良の苗は植え付けない。
- 178 -
イチゴ
(11) 罹病苗や株は出来るだけ早く圃場外へ持ち出し、穴に埋めるかビニール袋に詰め込
み嫌気発酵をさせるかをして処分する。
・薬剤防除
ゲッター水和剤及びセイビアーフロアブル20は、Glomerella
cingulata
による炭
疽病に対し高い防除効果を示すが、ゲッター水和剤については一部の圃場で耐性菌の発
生が確認され、また、セイビアーフロアブル20についても、耐性菌が発生する可能性
がある。そこで、これら有効薬剤に対する耐性菌の発生・蔓延を防止し安定した効果を
維持するため、使用においては連用を避けるとともに、親株床∼育苗床における使用回
数をそれぞれ3回以内に留め、他系統剤とのローテーション散布を行う。
・ゲッター水和剤は Colletotrichum
acutatum
による炭疽病(葉枯炭疽病)には効果が
ないので、本病を対象とした防除に使用しない。
・耐性菌の発生防止のため、同一系統の薬剤を連続使用しない。
4.疫
病
1)生
態
本病は主として育苗中の苗に発生し、クラウン部、根、葉柄、葉を侵し、特にクラウン
部に発生した場合、急速な萎ちょう、立ち枯れをおこし、激発圃場では欠株となることが
- 179 -
イチゴ
ある。病原菌の発育適温は 30℃前後で 35℃でも発育する。本菌はナス、トマトの果実や苗
なども侵す多犯性の菌であるが、詳しい病徴と伝染方法は以下のとおりである。
(1)
病徴
高温多湿時には葉に黒褐色∼暗褐色で円形∼不整型の病斑を形成する。また、
葉柄にも黒褐色病斑を形成することがある。本病菌はクラウン部や根も侵す。特にクラ
ウン部を侵すと、急激な萎ちょうを示した後、枯死する。そのような株のクラウンを切
断すると外側から内側にむけて褐変している。これらの症状は炭疽病菌と同様であり、
肉眼での識別は困難である。育苗期に発生することが多いが、近年は定植後の発生が大
きな問題となっている。
(2)
伝染
本病は土壌伝染性の病害であり、病原菌は土壌中で前年の罹病残さ等とともに
残存、越冬する。このため、前年に発病した汚染圃場にイチゴを植え付けると、再発す
る可能性が高い。さらに、梅雨期∼8、9月の高温多雨期になると、これらから遊走子
(胞子の役割をする)が放出され、水の移動とともに広く伝染する。
病原菌は普段は土壌中に生息するため、汚染土の移動に伴い伝染がおこる。また、水
によっても移動する。大雨により苗が浸水し病原菌が直接苗に運ばれたり、通路の水溜
りの病原菌が降雨、灌水等により「水はね」で飛散し伝染する。
2)イチゴ疫病の診断方法
つぎの事項を参考にすると診断しやすい。
イチゴ疫病菌の簡易検定法
萎 ち ょ う・立 枯 れ 病( 主 と し て 苗 床 )
葉の病斑は不定
形、暗褐色(トマ
ト、ジャガイモの
疫病に類似
検鏡で疫病菌が確
認できることもあ
る。
クラウン部を横断し
横断面を観察する
横断面の外表部から
中心部に向かって褐
変が進行
導管部を中心に褐
変が広がる
「萎黄病」
「青枯病」
褐 変 部 か ら 4∼ 5 ㎜ 立 方 の 小 片 を
約 10 個 切 り と り( 殺 菌 処 理 不 要 )
ナ ス 果 実( 市 販 の も の で よ い 、新
鮮なもの)をカミソリ等で切り、
1 果 実 に 4∼ 6 個 の 切 片 を 埋 め 込 み
接種
ポリ袋に接種したナス果実を入
れ 湿 度 を 保 つ( 水 で 湿 し た 綿 を 入
れてもよい)
25∼ 35℃( 夏 期 の 室 温 )に 2∼ 4 日 お く
発病(ナス綿疫病と同様)
『イチゴ疫病』
発病しない
「炭そ病」
3)防除のねらい
無病ほから苗を採ることが基本で、苗床は排水のよいほ場を選ぶ。
4)防
除
法
・耕種的防除
- 180 -
イチゴ
(1)
採苗及び育苗はベンチ等を用いた高設条件で行う。
(2)
育苗は採苗からビニールや寒冷紗を用いた雨よけ条件下で行う。
(3)
地床育苗の場合は、本病の汚染が無く排水の良い圃場を選定し、排水対策を十分に行
う。
(4)
ポット内が過湿にならないように適切な灌水管理を行う。
(5)
育苗床面の排水を促進するため、傾斜を付け、畦面に防風ネット等を被覆する。
(6)
苗は十分な間隔を置いてならべ、過密条件としない。
(7)
古葉かぎ等植物体に傷が付く管理は、雨天日及び降雨が予想される前には行わない。
(8)
用水の水質には十分注意を払い、水滴が出来るだけ小さい灌水装置にて散水を行う。
(9)
本圃には罹病の可能性がある生育異常や生育不良の苗は植え付けない。
(10) 本圃は明渠や暗渠による排水対策を十分に行い、過湿を避ける。
(11) 罹病苗や株は出来るだけ早く圃場外へ持ち出し、穴に埋めるかビニール袋に詰め込み
嫌気発酵をさせるかをして処分する。
(12) 育苗圃や本圃周辺でのナス科作物の栽培は避ける。
・薬剤的防除
- 181 -
イチゴ
5.萎
黄
病
1)生
態
親株床では6月上旬から発病し、8月に入ると顕著になる。育苗床での発生は促成栽培
では7月上旬から9月中旬にかけてみられる。発病株は生育不良になり、葉は生気、光沢
を失って紅紫色を帯び、萎ちょうして葉縁から枯れ込み、ついには株全体が枯死する。ラ
ンナーの発生数も少なく、ランナーの新芽にも奇形葉を生ずる。病原菌は糸状菌の一種で
大型分生胞子、小型分生胞子、厚膜胞子を形成する。病原菌の伝染方法としてはランナー
の栄養繁殖による伝染と土壌伝染がある。
2)防除のねらい
(1)
感染していない親株の使用。
(2)
本圃での土壌消毒の実施、線虫によって本病の発生が助長される場合もあるので、線
虫防除も対策の一つとして考えることが必要である。
(3)
3)防
上記のような異常株があれば検定を受ける。
除
法
・耕種的防除
(1)
発病株から親株をとらない。
(2)
発病地に栽培しない。
(3)
被害株は圃場外へ持ち出し処分する。
(4)
夏期ハウス密閉による陽熱消毒を行う。
・薬剤防除
- 182 -
イチゴ
①
6.芽
親株床、育苗床及び本圃の土壌消毒は土壌消毒・資材消毒の項(P392)参照
枯
病
1)生
態
病原菌は糸状菌の一種で、生育適温は 22∼25℃である。本病は土壌病害で、土中におい
て菌糸・菌核で越年する。また苗でも伝染する。本ぽ定植後、活着時からの発病が多く、
また 2∼3 月に外気温が低く、換気が不十分で、ハウス内が多湿状態の時多発しやすい。
2)防除のねらい
健全苗を無病地に植付ける。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
深植えをしない。
(2)
発病地での栽培をさける。
(3)
換気を行ない湿度を下げる。
(4)
排水のよい土地を選びかん水過多をさける。
(5)
発病地から親株をとらない。
(6)
被害株は抜き取り圃場外へ持ち出し処分する。
・薬剤防除
(害
虫)
1.ハダニ類
1)生
態
イチゴには、ナミハダニ、カンザワハダニ、ニセナミハダニなどが寄生するが、佐賀県ではナ
ミハダニの発生が多い。高温、乾燥の条件下で繁殖が盛んになる。ナミハダニの生育期間は夏
で 7 日、春秋で 20 日、冬で 40 日前後である。ハウスなど好適条件下では周年発生する。
2)防除のねらい
- 183 -
イチゴ
(1)
ハダニは薬液がかかりにくい葉裏に寄生し、とくに下位葉にいることが多いので、葉
裏や下位葉にも薬剤が十分かかるよう、丁寧に散布する。
(2)
本ぽにおけるハダニの発生源は、ほとんどの場合が苗による持ちこみである。このた
め育苗後期から本圃初期にかけて防除を徹底する。
(3)
薬剤感受性の低下を防ぐため(薬剤の効果低下)、同一薬剤あるいは同系統薬剤の連 続
使用を避ける。(P379 参照)
(4)
圃場によっては、ダニトロンフロアブル、サンマイトフロアブル、ピラニカEWに対
する感受性低下が確認されている(平成 12 年、18 年に検定)。このため、これらの薬剤
の効果が低下している圃場では、使用を控える。
(5)
3)防
薬剤散布の場合、成虫に効果の高い薬剤と、卵に対して効果の高い薬剤を使い分ける。
除
法
・耕種的防除
老化した下葉を早目に除去すると、発生が少なくなる。
・薬剤防除
- 184 -
イチゴ
①スパイデックスの使用法については、参考資料「天敵利用の留意点」(P163)参照。
2.ハスモンヨトウ
1)生
態
イチゴには6月中旬頃から加害しはじめ、晩秋まで4∼6回発生する。被害最盛期は9
月下旬から 10 月下旬である。またビニール被ふく後(11 月中旬頃まで)も成虫はハウス
内で産卵を続け、これからふ化した幼虫は冬の間も、イチゴの果実を加害する。
2)防除のねらい
(1)
若令幼虫期の防除に重点をおく。
(2)
10 月中旬までは、イチゴ新葉の被害防止に重点をおく。
(3)
ビニール被ふく後はイチゴ果実の被害を防止するため、防除を徹底する。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
老令幼虫に対しては、ハウス周辺に遮断溝(中に水をためる)を設けたりサイドビ
ニールを早く張って侵入を防ぐ。
(2)
ハウス周辺にある増殖源の防除を徹底する。
・薬剤防除
- 185 -
イチゴ
・コテツフロアブルの使用はミツバチ導入の 10 日前までとする。
3.クルミネグサレセンチュウ
1)生
態
クルミネグサレセンチュウは、最近西南暖地の促成イチゴで発生が多くなった「イチゴ
根腐萎ちょう症」の主原因とみなされている。
この線虫は、イチゴの根の中及び周辺土壌中に生息して、根を加害し、腐敗させる。こ
のためイチゴの生育が阻害される。比較的低温を好む線虫なので、冬期ハウスの中でも繁
殖が盛んである。
2)イチゴ根腐萎ちょう症の診断方法
つぎの事項を参考にすると健全株と区別しやすい。
(1)
発症(寄生)株を親株として定植した場合、活着が悪く、またランナーの伸長が悪い 。
(2)
苗床育苗期及び本ぽ初期では、発症株の生育状況(地上部)は健全株と殆ど変わらな
いので区別しにくい。しかし根及び根辺土壌を調べてみると発症株からは、ネグサレセ
ンチュウが検出されることが多い。
(3)
12 月∼2月頃から、発症株の生育(地上部)は健全株に較べて劣りはじめ、3月∼ 4
月にはわい化症状を示す。被害が大きいときは、わい化と共に下葉の葉縁から枯れ込み、
さらに重症になると枯死する。
(4)
塩類の集積(濃度障害)だけに起因する下葉枯れの場合は、根及び根辺土壌から、ネ
グサレセンチュウが検出されない。
(5)
発症株は4月頃の新葉の伸長展開が少ないか、あるいは全くない。
(6)
発症株は上記症状を示すと共に3月∼4月にかけて急激に萎ちょうすることがある。
3)防除のねらい
(1)
陽熱消毒等の土壌消毒を行う。(P392 を参照)
(2)
土壌の検定を行い、汚染圃場での育苗は行わない。
- 186 -
イチゴ
4)防
除
法
・耕種的防除
(1)
株のわい化症状や、下位葉の葉縁からの枯れ込み及び株の枯死等の症状が出た圃場
では、必ずネグサレセンチュウの検定をする。
(2)
前年発生したほ場から親株を採取しないこと。また親株床・仮植床はネグサレセン
チュウや病原菌に汚染されないところに設ける。
(3)
ネグサレセンチュウが発生した場合は、別のほ場を利用するか、または、収穫終了
後から定植準備(7月下旬)までの2∼3ヵ月間湛水する。
(4)
長期間湛水できない圃場では、7月から8月の高温時に稲ワラや堆肥などを石灰窒
素とともにスキ込んで畦立てを行い、十分散水するか畦間に一時湛水し、透明ビニー
ル(古い被覆資材でもよい)でマルチして、ハウスを一ヶ月密閉放置する。
・薬剤防除
共通試料の土壌消毒・資材消毒の項(P392)を参照
4.イチゴメセンチュウ
1)生
態
芽の成長点近くに外部寄生する。症状は全身的で株が萎縮し葉は小さく内側にまき着果
不良となる、15℃以上の温度のときに活動が盛んになる。
生育期間は 15℃で約2ヵ月、20℃以上で約 15 日である。主に被害株からランナーによ
って子株にうつるが、雨やかん水によってもうつる。7∼9月ごろとくに秋季の定植前の
苗に被害が多くなる。
2)防除のねらい
親株から子株にうつる確率が高いので親株床ならびに育苗期間中の防除を徹底して健苗
を確保する。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
被害株は圃場外へ持ち出し処分する。
(2)
健全苗を植付ける。
(3)
連作をさける。
・薬剤防除
①
親株の時期に2∼3回と定植前の育苗中に2∼3回薬剤散布する。
- 187 -
イチゴ
②
苗の移植直後は薬害がでやすいので散布しない。
5.コガネムシ類(ドウガネブイブイ)
1)生
態
ドウガネブイブイおよびアオドウガネによる被害が大きく、これらの成虫は6月上旬か
ら9月下旬に出現し、新葉を食害する。
幼虫は7月中旬頃から出始めて、8月から9月にかけて苗の根を食害する。また本圃で
も秋季と翌年の春季に被害がみられ、特に春季では根をほとんど食害されるため萎ちょう
し、枯死する株がでる。
その他、ヒメコガネ、アカビロウドコガネも加害することが知られている。
2)防除のねらい
幼虫の防除には、育苗時または定植のとき、ほ場全面に粉剤を施用し、土と混和する。
また8月中旬から9月上旬にかけて、育苗床に乳剤を灌注するのも有効である。
3)防
除
法
・耕種的防除
栽培予定地は 2∼3 週間程度湛水する。
・薬剤防除
幼虫防除
- 188 -
イチゴ
6.アブラムシ類
1)生
態
ワタアブラムシとイチゴクギケアブラムシは、周年発生し、ウィルス病を媒介すること
もあり、多発すると株を萎ちょうさせたり、すす病が発生して脱皮殻と一緒に果実や葉を
汚す。
イチゴネアブラムシは体色が青緑色で、ワタアブラムシと非常によく似ており、1年中
地ぎわの茎や根の上部に寄生しているが、とくに初夏に発生が多い。本虫はアリとの共生
関係が密接で、アリはアブラムシの寄生部位を土で覆うことが多く、この点でワタアブラ
ムシと区別できる。
2)防除のねらい
(1)
本ぽのビニール被覆前後の薬剤散布に重点を置く(特に開花前まで)
(2)
薬剤感受性の低下(薬剤の効力低下)を防ぐため、同一薬剤あるいは同一系統薬剤の
連続使用を避ける(P379 参照)。
(3)
圃場によっては、マブリック水和剤20に対する感受性低下が確認されている(平成
3年5∼6月に検定)。このため、この剤の効果が低下している圃場では、使用を控える。
3)防
除
剤
・耕種的防除
(1)
寄生苗を本圃に持ち込まない。
(2)
圃場周辺の除草等の環境整備を行う。
・薬剤防除
- 189 -
イチゴ
①
くん煙剤の使用については別項(P421)参照
7.アザミウマ類
1)生
態
県下ではヒラズハナアザミウマによる被害が知られていたが、新たにミカンキイロアザ
ミウマによる被害も確認された。ヒラズハナアザミウマは、9月上旬頃から成虫の発生が
認められ、定植後、ハウス内に飛来した成虫が、がく片、葉の組織内に産卵し、ふ化幼虫
が果実や葉を加害する。本虫の加害を受けた果実は色あせ、果皮が褐色、肥厚し、果実の
肥大不良、部分的な着色不良となり、商品価値が低下する。高温乾燥時に発生が多い。
ミカンキイロアザミウマの生態については「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と
防除」(P136)参照
2)防除のねらい
薬剤散布は開花期までに徹底する。
3)防
除
法
・耕種的防除
圃場周辺のシロツメクサ(クローバ)などの雑草は発生源となるので環境整備を行う。
・薬剤防除
- 190 -
イチゴ
8.オオタバコガ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項(P129)参照
法
・耕種的防除
・薬剤防除
9.カキノヒメヨコバイ
1)生
態
カキ、ナシ、モモ、イチゴ等に寄生する。
4月上旬からカキの萌芽、展葉に伴って越冬成虫がカキに飛来し、新梢に産卵して以降、
11 月頃まで4∼6世代を繰り返し、常緑樹(ツツジ等)の葉裏で成虫越冬する。イチゴに
は第1世代以降の成虫が飛来し、6月から7月の育苗期間に加害、産卵を行う。親株、苗
の被害は、葉脈間に部分的な退緑斑紋を生じ、さらに、加害が進むと葉面の凹凸や葉のね
じれ等を生じる。8月以降は寄生、被害ともに減少する。
2)防除のねらい
・育苗床の周囲で寄生のみられているカキに対し、防除を徹底する。
10.コナジラミ
1)生
態
育苗期では9月頃から増加を始め、本圃で定植後から 10 月頃にかけて急激に発生が増加
する。幼虫は主に下葉に寄生する。多発生すると排泄物によるすすの発生や、マルチの汚
れを生じる。イチゴには、オンシツコナジラミやタバココナジラミ類、イチゴコナジラミ
が寄生することが知られているが、県内で調査を行った圃場では、タバココナジラミバイ
オタイプBのみが確認された。
詳細な生態については「野菜・花き類に発生する侵入害虫等の生態と防除」の項(P129)
参照。
2)防除のねらい
- 191 -
イチゴ
(1)
施設内の密度をさげるため、発生圃場では幼虫が寄生している下葉を整理し、圃場外
へ持ち出し処分する。
(2)
苗からの持込を防止するため、定植前には幼虫が寄生している下葉を除去する。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
圃場周辺の雑草は増殖源となるため、除草を行う。
(2)
幼虫が寄生している下葉を除去処分する。
11.ゴミムシ類
1)生
態
イチゴでは、ゴミムシ類は夜間に果実を食害し、日中はハウス内のマルチの下に潜む傾
向にある。また、被害は成熟果実に多く、未成熟果実ではほとんどみられない。本県で確
認された種はハラアカモリヒラタゴミムシであるが、他県では、本種以外にマルガタゴミ
ムシ、ゴミムシ、ホシボシゴミムシ、マルガタツヤヒラタゴミムシがイチゴを加害するこ
とが認められている。
2)防除のねらい
(1)
堆肥や籾殻等の有機物を投入する場合は、これらにゴミムシ類が発生していないこと
を確認し、ハウス内に持ち込まないように努める。
(2)
圃場内で発生した場合は、捕殺等して施設内における虫の密度低下に努める。
- 192 -
トマト
(3)トマトの病害虫
(病
1.疾
害)
病
1)生
態
葉、果実、茎に発生し、はじめ灰緑色の水浸状の病斑を生じ拡大して暗褐色の大病斑と
なる。多湿時には表面に白色のカビを生じ、乾燥すると茶褐色に変化する。病原菌は糸状
菌の一種で遊走子のうを生ずる。生育適温は 20℃で、トマトとジャガイモを侵すトマト型 、
ジャガイモを侵すが、トマトには病原性の弱いジャガイモ型などがある。病原菌は被害植
物中の菌糸によって地中で越年する。土中の菌糸が遊走子を生じて1次伝染源となる。2
次伝染源は病斑上の遊走子である。ハウスやトンネルでは周年発生をするようになった。
多湿の時や窒素過多の時に発生が多い。
2)防除のねらい
(1)
多湿条件とにならないようにする。
(2)
初期防除を徹底する。
(3)
窒素過多による過繁茂を防ぐ。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
排水を行い、またハウスでは換気をはかって多湿にならないようにする。
(2)
マルチを行って、土壌面から病菌がはね上がらないようにする。
(3)
窒素過多をさける。
(4)
発病初期のうちに病葉を圃場外へ持ち出し処分する。
・薬剤防除
- 193 -
トマト
①
ハウスなどで幼苗期の軟弱な場合薬害がでやすいので濃度を低くする。
②
くん煙剤、蒸散剤、FD剤等の使用については別項参照(P414)。
③
ジマンダイセン水和剤は体質によりかぶれを生ずることがあるので注意する。
2.灰色かび病
1)生
態
春秋の多雨の時発病が多いがハウスでは周年発生し、換気不良で多湿条件の時に多発す
る。土壌中に菌核が落ちて越年するが、最近では周年栽培により冬期でも発病する。比較
的低温の時発生しやすいのでハウスでは朝夕やや低温で多湿の時発病が多い
(詳しくキュウリの灰色かび病参照)
2)防除のねらい
(1)
ハウスでは換気をはかり多湿にならないようにする。
(2)
発生初期のうちに薬剤防除を徹底する。
(3)
薬剤感受性の低下(薬剤の効果低下)を防ぐため、同一系統薬剤の過度の連用を避 け、
作用性の異なる薬剤を組み合わせて使用する。(P379 参照)
- 194 -
トマト
(4)
多くの圃場においてベンズイミダゾール系剤(系統番号⑨)、ジガルボキシイミド系 剤
(系統番号⑪)およびジエトフェンカルブ剤(系統番号⑩)に対する感受性の低下が確
認されている(平成 14 年6月に検定)。このため、これらの剤の効果が低下している圃
場では、使用を控える。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
発病果・発病葉は直ちに除去し、また病葉や授粉後の花弁もできるだけ圃場外へ持
ち出し処分する。
(2)
冬期ハウスで低温多湿のときは、加温機を作動させ除湿に努める。
(3)
プラスチックフィルムで全面マルチをする。
・薬剤防除
- 195 -
トマト
①
スミレックス水和剤及びスミブレンド水和剤は高温多湿時や低温多湿時にはミニトマト及
び軟弱苗のトマトに薬害を生じるおそれがあるので注意する。
3.ウイルス病類(トマト黄化葉巻ウイルス、タバコモザイクウイルス、キュウリモザイクウイルス)
○トマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)
(野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除 P
143 も参照)
1)生
態
はじめ新葉が葉縁から退緑しながら葉巻症状となり、後に、葉脈とそのまわりを残し
て黄化し縮葉となる。病勢が進行すると、頂部が叢生し株全体が萎縮する。なお、果実
では、発病前に着果したものは正常に発育するが、発病後は開花しても不稔となること
が多い。
伝染は、主としてタバココナジラミによっておこる。経卵伝染はしない。作業管理に
よる汁液伝染、種子伝染、土壌伝染、およびアブラムシによる伝搬はない。
2)防除のねらい
(1)
媒介虫であるタバココナジラミの防除を徹底する。
(P202 参照)苗による本虫の本
圃への持ち込みを防ぐため、育苗期から体系的に薬剤防除を行う。
(2)
発病株は、早急に抜き取り、他株への伝染を防ぐ。
(3)
圃場内・圃場周辺の除草に努める。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
圃場周辺の雑草を徹底して除去し、タバココナジラミの発生源を断つ。
(2)
施設では、開口部を白色または銀色の寒冷紗等で被覆し、タバココナジラミの侵入
を防止する。
(3)
発病株は他株への伝染源となるので、見つけしだい抜き取り、埋没処分する。
・薬剤防除
(1)
タバココナジラミバイオタイプBおよびQの防除を行う。
- 196 -
トマト
○トマトモザイクウイルス(ToMV)
1)生
態
ToMVは、トマト、ピーマン、タバコなどナス科の多くの植物に感染する。病徴は、
はじめ新葉の葉脈が透化し、葉にモザイクが現れる。茎葉や果実にえそ斑点やえそ条斑
を生ずることもある。種子伝染、土壌中に残存した罹病植物残さによる土壌伝染、管理
作業による接触伝染を行う。
2)防除のねらい
(1)
早期発見・早期抜き取りをする。
(2)
芽かき、誘引、移植などのときは、発病株に触れないようにし、もし触れた場合は
手やハサミ、ナイフなどを石けんや洗剤でよく洗う。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
床土はナス科を栽培した土壌を使用しない。
(2)
連作をさける。
(3)
発病株の根は可能な限り圃場外へ持ち出し処分する。
(4)
発病の恐れがある圃場では抵抗性品種を栽培する。抵抗性品種については(P355)
を参照。
・薬剤防除
(1)
種子処理
第3りん酸ソーダ 10%液に 20 分間浸漬する。
(2)
土壌消毒
蒸気消毒(100℃、10 分)をする。
土壌消毒・資材消毒の項(P392)参照。
○キュウリモザイクウイルス(CMV)
1)生
態
CMVによる病徴は、新葉の葉脈が透化し、葉にモザイクを生じ、しばしば糸葉症状
を呈する。しかし、近年、糸葉症状を現さず、茎葉にえそ症状を示し、果実にえそ症状
や日焼け症状を呈するものが多発生し、問題となっている。生育初期において感染する
と、株全体が萎縮し、収穫果数が半分以下になるなど大きな被害となる。また後期感染
でも大幅な減収は避けられない。主に、アブラムシ類によって伝染し、種子伝染、土壌
伝染はしない。
2)防除のねらい
(1)
早期発見・早期抜き取りをする。
(2)
アブラムシ防除を徹底する。
3)防
除
法
・薬剤防除
(1)
アブラムシの防除を行う。
- 197 -
トマト
4.かいよう病
1)生
態
発病は果実の着色する頃から認められるが、病菌の侵入は苗床や定植時に多く起こる。
一般に初夏から梅雨期にかけて多雨の時に発生が多い。病原菌は細菌で第1次伝染源とし
て種子伝染源が最も重要で、そのほか土壌伝染をおこない土壌中で2年以上も生存し根の
傷口から侵入することが多い。また、支柱などの資材によっても伝染する。降雨時に摘芽
すると傷口から感染しやすい。また、発病地では灌水時に水路に沿って伝染する。発病の
適温は 25℃∼28℃で降雨を伴った強風が続く場合に発生の蔓延が著しい。
2)防
除
法
・耕種的防除
(1)
植えいたみをしないようにする。
(2)
発病ほ場は3年以上トマトを栽培しない。
(3)
被害株は圃場外へ持ち出し処分する。
(4)
摘芽あとからの感染防止のため、摘芯等の管理は晴天日に行う。
・薬剤防除
種子消毒、55℃温湯に 25 分間浸漬し、直ちに水で冷やす。
土壌消毒のクロールピクリンの項(P394)参照
5.青
枯
病
1)生
態
病原菌は細菌の一種で土壌中に生存し、主として根の傷口から侵入する。トマトの他、
ナス・ジャガイモ・ダイコン・イチゴなどの多くの作物を侵す。地温 20℃以上で発病が多
く適温は 35∼37℃である。またネコブセンチュウが寄生すると発生が多くなる。露のある
うちに芽かきすると傷口から侵入しやすい。
2)防除のねらい
(1)
抵抗性台木に接ぎ木を行う。
(2)
発病の恐れのある圃場は土壌消毒を行う。
(3)
根を傷めない。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
抵抗性品種を用いた接木によって被害を軽減できる(共通資料P387)参照
(2)
床土は必ず無病土を用いる。
(3)
発病株は圃場外へ持ち出し処分する。
(4)
発病株にふれた手で健全株にふれない。発病株にふれた手、ハサミ、ナイフは石け
んや洗剤でよく洗う。
(5)
発病ほ場の支柱など病菌が付着した資材は消毒する。
(6)
管理のさい根を傷めないようにする。(控えめの灌水等)
- 198 -
トマト
(7)
排水をよくし、地下水位の安定をはかるとともに多湿にならないようにする。
(8)
雨の日の管理作業はさける。
・薬剤防除
土壌消毒のクロールピクリンの項(P394)参照
6.萎ちょう病・根腐萎ちょう病
1)生
態
トマト萎ちょう病菌の生育適温は、27∼28℃で、罹病性品種のみを侵すレース1と罹病
性品種と抵抗性遺伝子Ⅰをもつ抵抗性品種の両者を侵すレース2の2つのレースが存在し
ている。いずれも根の先端や傷口から侵入し導管部を侵して株全体を萎ちょうさせる。萎
ちょうが認められる上部の茎まで導管褐変が達する。
一方、根腐れ萎ちょう病菌の生育適温は、28℃であるが、その発病適温は、10∼20℃と
低く、低温時に発生する。本菌は萎ちょう病の分化型(レースJ3)として扱われていた
が、現在は別の菌による病害として扱われている。症状は、導管褐変により立ち枯れとな
る。
これらの病原菌は、厚膜胞子により長期間土壌伝染を行い、線虫の寄生により感染が助
長される。また、種子伝染も知られている。
2)防除のねらい
(1)
床土は無病土を必ず使用する。
(2)
土壌消毒をする。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
無病床土で育苗し、無病地に栽培する。
(2)
抵抗性台木を利用した接ぎ木をする。
(3)
抵抗性品種を栽培する。
(4)
被害株は圃場外へ持ち出し処分する。
(P387)を参照
・薬害防除
土壌消毒のクロールピクリンの項(P394)参照
土壌線虫防除も同時にする。
7.苗立枯病
土壌消毒・資材消毒の項(P392)参照
8.葉かび病
1)生
態
本病は種子伝染および被害部やハウス資材に付着した病原菌が伝染源となる。病斑は主
として葉裏に生じ、灰褐色でビロード状のかびを密生する。病斑上には多数の胞子が形成
され、これが風によって健全葉に飛散し、葉面に露を生じると容易に発芽、侵入する。発
- 199 -
トマト
病は気温 22℃、湿度 90%以上の時に多くなるため、露地栽培では発生が少なく、ハウス栽
培で多発生する。
2)防除のねらい
(1)
健全種子の使用およびハウス資材の消毒を徹底する等して伝染源を本圃に持ち込まな
い。
(2)
栽培期間中は注意深く発病の有無を観察し、初期防除に努める。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
密植は避け、施肥を適正に行う。
(2)
ハウスやトンネル栽培では換気や排水をよくし、多湿をさける。
(3)
ほ場衛生に努める。
(4)
種子消毒および資材消毒を行う。
・薬剤防除
9.すすかび病
1)生
態
本菌は被害植物の残さで越年し、翌年の伝染源となる。病斑は葉に生じ、発生初期は淡
黄色で不明瞭の病斑が現れ、やがて葉裏に灰褐色粉状のかびを生ずる。病斑は次第に拡大
- 200 -
トマト
して、円形あるいは葉脈に囲まれた不正形病斑となり、灰褐色から黒褐色に変わる。症状が進
むと葉全体がかびで覆われ、ひどい場合には葉が枯れあがる。病徴は葉かび病に類似している
が、葉裏のかびの色は葉かび病に比べて少し黒みが強い。また、本病原菌と葉かび病菌の区別
は、光学顕微鏡下での分生子の形態観察によって容易にできる。
2)防除のねらい
(1) 多湿にならないよう、ハウスでは換気を図るとともに、過繁茂にならないよう管理す
る。
(2) 栽培期間中は注意深く発病の有無を観察し、発病葉は除去し、圃場外へ持ち出し処分
する。
(3) 次作の伝染源とならないように、残さは圃場外へ持ち出し処分するとともに、ハウス
資材の消毒を行う。
3)防 除 法
・耕種的防除
(1) 密植は避け、施肥を適正に行う。
(2) ハウスやトンネル栽培では換気や排水をよくし、多湿をさける。
(3) ほ場衛生に努める。
(4) 資材消毒を行う。
・薬剤防除
10.しり腐病
カルシウム欠乏症
1)生態と防除のねらい
果実が指頭大に生長した頃から発生し、夏季の高温乾燥時に多い。土壌中の石灰分の欠
乏と水分の過不足に起因するといわれ、極端な粘土や砂土に発生し被害が著しい。また堆
きゅう肥の多用や窒素肥料を偏用した場合にも発生しやすい。したがって予防のために石
灰分を施し、かん排水に注意してほ場を過乾、または加湿にしないことが大切である。な
お、地面に落下した病果は他の病害の発生源となることがあるので、すみやかに取り除く。
2)耕種的防除
(1) 土づくりを行い、耕土が深く保肥力や保水力が高い土壌にする。
(2) 結果期に水分不足にならないように注意する。
(3) 温室またはハウス栽培では室温が急に上がらないようにし、また過湿にならないよ
うに注意する。
(4) 堆厩肥の多投や窒素肥料の多施用は慎む。
11.条
腐
病
1)生態と防除のねらい
ハウストンネル栽培の果実に収穫間際に発生する。光合成物質の収支のアンバランスに
- 201 -
トマト
よる生理障害である。ビニールフィルムの汚れ、過繁茂、土壌の過湿、窒素質肥料の過用 、
通路をふみ固めた場合に多く、とくに日照不足、高夜温時に多発する。また、促成栽培で
は根腐萎ちょう病やウイルスでも同様な症状が見られる場合がある。
2)防
除
法
・耕種的防除
(1)
ビニールは新しいものか、よく洗浄したものを使用し、トマトの果面に対する日照
をよくする。
(2)
密植や窒素肥料の過多をさける。
(3)
排水をよくし、土壌の過湿をさける。
(害
虫)
1.コナジラミ類
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項(P129)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
- 202 -
トマト
- 203 -
トマト
- 204 -
トマト
2.アブラムシ類
ナスのアブラムシ類の項(P221)参照
ただし、各薬剤の使用法については農薬ラベルを参照すること。
3.オオタバコガ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項(P129)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
4.トマトサビダニ
1)生
態
体色は黄褐色でくさび型をしており、体長は 150∼200μm と微小なため肉眼による確認
は不可能である。
高温乾燥条件で増殖が速い。暖地性の害虫であるため、氷点下となるような野外では越
冬できない。
寄主作物は、トマト、ナス、バレイショ、ペチュニアなどのナス科作物である。
トマトの被害症状は下位葉の裏面が銀色に光沢を帯びて裏側にカールし、葉の先端から
黄変、落葉する。茎や果実も加害され壊死斑およびクロロシスによりさび色を呈する。ひ
どい場合には生育不良となり、枯死する場合もある。サビダニの生息部位は主に柔らかい
葉の裏面の毛の間であるが、多数寄生する場合はトマトの地上部の各部を加害する。
2)防除のねらい
上記の症状がみられる場合は、まず、実体顕微鏡(50 倍程度)で本虫の有無を確認する。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
発生初期は、本虫の寄生している株は抜き取り、圃場へ持ち出し処分する。
(2)
乾燥条件下で多発するので、ハウス内が乾燥し過ぎないようにする。
- 205 -
トマト
・薬剤防除
5.ハモグリバエ類
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項(P129)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
6.ハスモンヨトウ
1)生態と防除のねらい
本虫は春から秋まで発生がみられるが、特に9、10 月が多くなる。ハウス内では冬季で
も加害することがある。
オオタバコガと混発するが、本虫は葉を食害することが多い。
ふ化直後は葉裏で集合して加害するので、この時期の防除に重点を置く。
2)防
除
法
- 206 -
ミニトマト
(4)ミニトマトの病害虫
(病
1.疫
害)
病
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
トマトの「疫病」の項(P193)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
①ハウス等で幼苗期の軟弱な場合、薬害が発生しやすいので濃度を低くして使用する。
2.灰色かび病
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
トマトの「灰色かび病」の項(P194)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
- 207 -
ミニトマト
3.ウイルス病
トマトの「ウイルス病類」の項(P196)参照
4.か い よ う 病
トマトの「かいよう病」の項(P198)参照
5.青
枯
病
トマトの「青枯病」の項(P198)参照
6.萎ちょう病、根腐萎ちょう病
土壌消毒の項(P392)参照
7.苗 立 枯 病
トマトの「苗立枯病」の項(P199)参照
8.葉 か び 病
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
トマトの「葉かび病」の項(P199)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
- 208 -
ミニトマト
9.しり腐病
トマトの「しり腐病」の項(P201)参照
10.条腐病
トマトの「条腐病」の項(P201)参照
(害
虫)
1.コナジラミ類
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
トマトの「コナジラミ類」の項(P202)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
- 209 -
ミニトマト
- 210 -
ミニトマト
2.アブラムシ類
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
トマトの「アブラムシ類」の項(P204)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
- 211 -
ミニトマト
3.オオタバコガ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項
(P129)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
4.トマトサビダニ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
トマトの「トマトサビダニ」の項(P205)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
5.ハモグリバエ類
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
トマトの「ハモグリバエ類」の項(P206)参照
・耕種的防除
- 212 -
ミニトマト
・薬剤防除
6.ハスモンヨトウ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
トマトの「ハスモンヨトウ」の項(P206)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
- 213 -
ナ
ス
(5)ナスの病害虫
(病
害)
1.灰色かび病
1)生
態
病原菌は被害茎葉の菌糸や菌核の形で越年し、分生胞子で伝染する。発育適温は 20℃で
湿度との関連が高く、降雨が多く、多湿の場合に発生が多い。また軟弱なものは発病しや
すく、密植や過繁茂あるいは朝夕の急激な冷えこみは発生を著しく助長する。ナスの他、
トマト・キュウリ・イチゴ・レタスなどにも発生し、非常に多犯性である。
主としてハウスに発生が多く、2∼6月の多湿となりやすい時期に多く発生する。
2)防除のねらい
(1)
低温過湿条件とならないようにする。
(2)
花弁や枯れ葉はこまめに除去する。
(3)
罹病果や罹病葉等の伝染源は早めに除去しほ場外に持ち出す。
(4)
予防散布に重点を置く。
(5)
薬剤感受性の低下(薬剤の効力低下)を防ぐため、同一系統薬剤の過度の連用を避 け、
作用性の異なる薬剤を組み合わせて使用する(P380 参照)。
(6)
ほ場によっては、ベンズイミダゾール系剤(系統番号⑨)、ジカルボキシイミド系剤(系
統番号⑪)、およびジエトフェンカルブ剤(系統番号⑩)に対する感受性の低下が確認さ
れている(平成 14 年6月に検定)。このため、これらの剤の効果が低下しているほ場で
は、使用を控える。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
排水を良くし、整枝等に努めて風通しを良くし、過湿にならないようにする。
(2)
畦 間等 に 、 モ ミ ガ ラ ・ 敷 き ワ ラ な ど を 施 用 し 、 夜 間 の ハ ウ ス 内 湿 度 を 低 下 さ せ る 。
(3)
低温・多湿のときは、加温機を作動させ、茎葉上に結露しないように努める。
(4)
罹病果・罹病葉及び花弁は早めに除去し、ほ場外へ持ち出し処分する。また、ダブ
- 214 -
ナ
ス
ル花は1花とする。
(5)
果実の肥大を促進する温度管理に努め、窒素過多としない。
・薬剤防除
2.すすかび病
1)生
態
本病は主に施設栽培で発生する。病斑は葉裏にすす状のカビを生じ、落葉につながる。
病原菌は分生胞子で生存し、次作の第1次伝染源となる。胞子が葉に付着してから発病に
至るのは約 14 日∼30 日であり、高湿度条件になる程、その期間は短い。また樹勢が弱ま
った場合に多発生する傾向にある。
2)防除のねらい
(1)
一度蔓延すると、防除が困難なため、初期防除を徹底する。
【防除体系(例)】
保護殺菌剤であるダコニール 1000(TPN水和剤)とベルクートフロアブル(イミノ
クタジンアルベシル塩酸水和剤)を散布間隔1週間で各1回ずつ散布することを
ト散布
セッ
とする。本セット散布を初発生時から約1ヶ月間隔で繰り返す。これにより、
栽培期間中のすすかび病の発生を低く抑え、高い効果が持続する。
- 215 -
ナ
ス
(2)
常に菌密度を低く保つようにする。
(3)
多湿条件を改善する。
(4)
薬剤感受性の低下(薬剤の効力低下)を防ぐため、同一系統薬剤の過度の連用を避 け、
作用性の異なる薬剤を組み合わせて使用する。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
排水を図り、ハウスの換気を十分行って湿度の低下を図る。
(2)
灌水は、過多にならないように注意する。
(3)
発病葉は早めに除去し、ほ場外へ持ち出し処分する。
(4)
果実の成り込み時の追肥の遅れがないように注意する。
(5)
不良果・奇形果等は早期に除去し草勢の回復を図る。
(6)
草勢の急激な低下がないように、湿度管理等に注意する。
・薬剤防除
3.菌
核
病
1)生
態
病原菌は被害部に生じた菌核が落ちて土中で越年し、子のう盤を生じ、子のう胞子によ
って伝染する。また、ハウス内では被害植物上でも越冬する。発育適温は 15∼24℃で子の
う胞子は 16∼28℃、湿度 100%の時に最も発病しやすい。20℃前後の比較的低温、多湿で
発生しやすい。ハウスは発生が著しく、露地でも発病する。ハウスでは 10 月∼3月頃に 発
生が多い。
2)防除のねらい
灰色かび病の項参照
3)防
除
法
・耕種的防除
灰色かび病の項参照
- 216 -
ナ
ス
・薬剤防除
4.青
枯
1)生
病
態
本菌は、多犯性でナスの他にトマト・ピーマン・タバコなどナス科作物他 28 科 100 種以
上の植物を侵す。病原菌の生育適温は 25∼37℃で、地温が 20℃以上になると発病し始める。
病原菌は、土壌中や被害茎、根中で生存し、第1次伝染源となる。植物体へは、根や茎の
傷口から侵入して、導管内で急激に増殖して導管閉そくを引き起こし、罹病株を萎ちょう・
枯死に至らせる。
2)防除のねらい
本病発生のタイプと発生要因について、下図に示すとおりである。本病はこれらの要因
が複雑に関与しているため、単独の方法による防除は困難である。よって、防除は総合的
に行う。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
床土には必ず無病土を用いる。
(2)
抵抗性台木については表(P388)を参照
- 217 -
ナ
ス
(3)
発病株はほ場外へ持ち出し処分する。
(4)
発病株に触れた手で健全株に触れない。発病株に触れた手は石けんや洗剤でよく洗
う。
(5)
発病株に触れたハサミ、ナイフはその都度消毒する。(ケミクロンG、50∼100 倍)
(6)
発病ほ場の支柱など病菌が付着した資材は消毒する。
(7)
移 植 後 に 根 傷 み の な い よ う に 注 意 し 、 管 理 の 際 根 を 傷 め な い よ う に す る 。( 控 え め
な灌水等)
(8)
排水をよくし、地下水位の安定を図るとともに多湿にならないようにする。
(9)
雨の日の管理作業は避ける。
(10) 促成ナスでは定植時期が早いほど発病が助長されるため、発病の恐れがあるほ場で
は早期の定植を避ける。
・薬剤防除
土壌消毒の項クロールピクリンの項(P394)参照
5.半身萎ちょう病
1)生
態
病原菌は土壌中に生存し土壌伝染を行い、トマト、ピーマン、フキ、イチゴ、各種の花
卉類などかなり多くの植物を侵す。本菌は菌糸や菌核の形で被害株の根とともに土壌中に
生存している。侵入した病原菌は、茎の導管内で繁殖し、10∼15 日経つと発病する。地温
12∼30℃で発生し、気温が 19∼23℃の頃に最も発生しやすい。ナス、トマトを連作した時
に発生しやすい。苗床で感染した場合は被害が大きい。
2)防除のねらい
(1)
病原菌はナスのほかトマトやイチゴなどにも寄生することから、これらの作物との連
作を避ける。
(2)
発病株は、見つけ次第に早く抜き取り、処分する。収穫が終わったら株は根ごと抜き
取り、畑を清掃する。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
床土の消毒を徹底する。
(2)
抵抗性台木については(P388)を参照。
(3)
ナス、トマトなどの感染する作物の連作を避ける。
(4)
無病ほ場に栽培する。
(5)
発病ほ場は4∼5年間輪作を行う。
(6)
罹病株はほ場外へ持ち出し処分する。
- 218 -
ナ
ス
・薬剤防除
①
土壌消毒・資材消毒の項(P388)参照
4)青枯病との識別法
6.うどんこ病
1)生
態
ハウスに被害が大きく、特に換気不十分なハウスで多発する。発病が甚だしいと早期に
落葉する。(詳しくはキュウリのうどんこ病参照)
2)防除のねらい
発病初期の防除を徹底する。
3)防
除
法
・耕種的防除
不要な下葉は除去し、透光、通風をよくする。
・薬剤防除
7.苗立枯病
1)生
態
本葉の出る頃から苗が丈夫になるまでの初期に多い。病原菌はリゾクトニア菌であり、
ナスのほかトマト・インゲン・ハクサイなどの多数の作物を侵し、病植物については越冬
し、
- 219 -
ナ
ス
土壌中で長く生存している。土壌や空気が湿潤な時や酸性土壌に発生しやすい。特に本ぽ
での発生は病苗を持ち込んだ場合に多い。
2)防除のねらい
床土に無病土を使用する。土壌を酸性にならないようにし、苗床管理に気をつける。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
床土に無病土か、焼土を用いる。川砂、山土、水田土、焼もみ殻では病気が少ない。
床土は木灰、石灰を施し、堆肥や有機質肥料のよく腐熟したものを用いる。
(2)
通風や排水をよくする。
(3)
苗は厳選して健全苗を定植する。
・薬剤防除
(1)
8.綿
床土はあらかじめクロールピクリンで消毒する。
疫
病
1)生
態
果実で発生が多く、トマト・ジャガイモ・ピーマンなども侵される。果実では淡褐色に
軟腐し、白色の菌糸を生ずる。病原菌は卵胞子で土中越冬し、翌年、病斑上に形成した分
生胞子によって伝染する。頻繁な降雨が発生を助長する要因で、適温は 28℃位で夏期の高
温時に発病が多い。
2)防除のねらい
(1)
果実が地面に接しないようにする。
(2)
発病初期の防除に努める。
(3)
耕種的防除を徹底する。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
高畝にし、排水をよくする。
(2)
プラスッチックフィルムによるマルチをする。
(3)
連作を避ける。(ナス科は本病に侵される。)
(4)
病果は、ほ場外に持出し、土中深く埋める。
(5)
窒素過多や密植を避ける。
(害
1.ダ
ニ
1)生
虫)
類
態
露地では主にカンザワハダニ、ハウスではナミハダニとチャノホコリダニの発生が多い。
ハダニ類は主として、葉の裏に付着して加害するので、葉色はあせて白っぽくなり、し
- 220 -
ナ
ス
おれて落ちる。ハダニ類は生育が速く、1年で8∼10 世代を重ねると言われる。発生は干
ばつの時や砂地に多く、特にハウス等での発生が多くなってきた。
チャノホコリダニの被害は葉縁部が巻いて芯止まりとなり枯死落葉する。また、本虫は
盛夏では卵から5日前後で成虫になり、2∼3日後には産卵を開始する。
2)防除のねらい
(1)
早めに薬剤散布し、生き残った卵のふ化後、さらに薬剤散布する。
(2)
他の野菜類、花卉類等広く防除を実施する。
3)防
除
法
・薬剤防除
①
薬剤散布は5日おきに2∼3回くり返し散布する。
②
同一薬剤の連用をさけ、ローテーションを考えて薬剤を散布する。(P379 参照)
③
モレスタン水和剤は、高温時には薬害があるので注意する。
2.アブラムシ類
1)生
態
ナスには主としてモモアカアブラムシとワタアブラムシとが寄生する。両種は種々の形
態で越冬し、4∼5月ごろから有翅虫が作物に飛来する。一般的にモモアカアブラムシは
3∼5月に、ワタアブラムシは6∼7月に発生が多い。施設栽培では定植直後から冬期に
かけても発生するが、特に、3∼6月が多くなる。
本虫はウイルス病類を媒介し、また、新葉や葉裏に群がって吸汁するので葉は生気を失
い、しおれて落葉しやすくなり、果実の肥大も阻害される。すす病の原因ともなる。
2)防除のねらい
- 221 -
ナ
ス
(1)
薬剤散布は整枝、摘葉などの作業後に行うと、アブラムシの生息部位に薬剤がかかり
やすくなり、効果的である。
(2)
露地では、5月上旬の防除に重点をおく。
(3)
薬剤感受性の低下(薬剤の効力低下)を防ぐため、同一薬剤あるいは同一系統薬剤の
連続使用を避ける(P380 参照)。
(4)
ほ場によっては、有機リン剤(系統番号①)、合成ピレスロイド系(系統番号③)に対
する感受性の低下が確認されている(平成3年5∼6月、平成4年4∼5月に検定)。こ
のため、これらの剤の効果が低下している圃場では、使用を控える。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
幼苗期には寒冷紗で被覆し、有翅虫の飛来を防止する。
(2)
プラスチックシルバーフィルムや銀色ストライププラスチックフィルムなどのマ
ルチを行うか銀色テープを畦上に3本程度張りわたすと有翅虫の飛来が少なく有効で
ある。
・薬剤防除
- 222 -
ナ
①
ス
くん煙剤・蒸散剤・FD剤等の使用については別項(P414)参照
3.オオタバコガ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項
(P129 参照)
・耕種的防除
・薬剤防除
4.ハスモンヨトウ
1)生
態
促成ナスでは、9月から 11 月中旬まで、成虫が連続的に飛来し、ハウス内で幼虫がふ化
し、ナスの葉や実を加害する。防除が不十分な場合は、老熟幼虫が生き残り、冬期間も加
害する。夏秋ナスでは、9月から 10 月にかけて発生するが被害は少ない。
2)防除のねらい
(1)
ふ化直後から3令幼虫までに薬剤防除を徹底する。
(2)
若令幼虫は群生して主に葉裏をカスリ状に食害し表皮を残すので、葉裏を重点に薬剤
散布する。
3)防
除
法
- 223 -
ナ
ス
・薬剤防除
5.ニジュウヤホシテントウ(テントウムシダマシ)
1)生
態
年に3回発生し、成虫で落葉の下、草の根元などに潜りこんで越冬する。成虫・幼虫と
も加害し、その食痕はさざなみ状を呈す。産卵数が多く、雌1頭が 600∼700 位産卵する。
越冬成虫は4月下旬から5月上旬にジャガイモ、ホウズキなどに産卵し、卵期間は約1週
間程度である。若令幼虫の頃はかたまって食害するが、次第に分散する。幼虫は、20 日前
後で蛹となり5∼6日で新成虫となる。ジャガイモ収穫後の6∼7月頃、トマト・ナスに
飛来し、産卵加害する。8∼9月頃に再び成虫が現れる。発生は6∼7月頃に多い。
2)防除のねらい
(1)
成虫の飛来する6∼7月頃に防除をする。
(2)
幼虫の群生している若令期をねらって薬剤散布をする。
3)防
除
法
・薬剤散布
6.ネキリムシ類(タマナヤガ、カブラヤガ)
アブラナ科ネキリムシ(P237)参照
ただし、各薬剤の使用法については農薬ラベルを参照すること。
7.コナジラミ類
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項(P129)参照
法
・耕種的防除
- 224 -
ナ
ス
・薬剤防除
8.ミナミキイロアザミウマ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項(P129)参照
法
・耕種的防除
- 225 -
ナ
ス
・薬剤防除
- 226 -
ナ
ス
9.ハモグリバエ類
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項(P129)参照
法
・耕種的防除
・薬剤的防除
- 227 -
ハクサイ
(6)ハクサイの病害虫
(病
1.軟
腐
害)
病
1)生
態
病原菌は根圏土壌付近に多く、湿度が高く 20℃以下の場合土中に長く生存する。降雨時
に土粒とともに病原菌がはね上がり、害虫の食痕(主にキスジノミハムシ、コオロギ)や
下葉の葉柄部の傷口から侵入する。
発育適温は 32∼33℃で、乾燥に弱く排水不良の多湿地に発病が多い。秋季温暖多雨の年
には発生が多い。
2)防除のねらい
(1)
園芸作物の多くの種類を侵すので、耕種的防除、薬剤防除を組合せた総合的防除をし
なければならない。
(2)
排水のよいところを選んで栽培し、多湿にならないよう管理する。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
無病地を選び栽培する。
(2)
排水のよいほ場に栽培する。
(3)
連作しない。
(4)
被害植物は圃場外へ持ち出し処分する。
(5)
秋作では極端な早播きはしない。
・薬剤防除
(1)
薬剤散布
①
薬剤は地際部に十分散布する。
②
高温期の散布は薬害を生ずることがあるので注意する。
(2)
土壌消毒
土壌消毒・資材消毒の項(P392)参照
2.白
斑
1)生
病
態
病原菌は主に菌糸の形で病葉の組織内で越年し、これにより分生胞子を形成して空気伝
染し、侵入後 15∼16 日で発病する。
- 228 -
ハクサイ
晩秋から初冬にかけて多雨の年に発生が多く、また根いたみや肥料切れした場合にも発
生が多い。全期間を通じて発生するが結球期後に発生が多い。
2)防除のねらい
肥料切れしないようにし、発病初期の薬剤防除を徹底する。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
耐病性品種を栽培する。
(2)
連作地では発病が多いので輪作をする。
(3)
被害葉は圃場外へ持ち出し処分する。
(4)
根いたみや、肥料切れしないようにする。
・薬剤防除
3.べ
と
病
1)生
態
病原菌は卵胞子及び菌糸の形で被害植物体内で越年し、降雨により分生胞子を形成し空
気伝染する。また種子伝染も考えられる。
分生胞子の発芽適温は7∼13℃で多雨時に発生が著しい。この菌は多くの場合表皮細胞
縫合部より侵入し、一部は気孔からも侵入する。根いたみや肥料切れした場合にも発生が
多い。時期は秋季及び春季の低温多雨のときに発生が多い。
2)防除のねらい
(1)
3)防
発病初期から薬剤防除を徹底する。
除
法
・耕種的防除
(1)
病葉は圃場外へ持ち出し処分する。
(2)
アブラナ科以外の作物と輪作する。
(3)
根いたみや肥料切れしないようにする。
- 229 -
ハクサイ
・薬剤防除
4.根こぶ病
1)生
態
根りゅう組織内に休眠胞子が形成され土中で数年間生存し、好条件のもとで発芽すると
遊走子が泳ぎ出し、寄主の新根や根毛から侵入する。発育温度は 20∼24℃である。
本病の発生には土壌の pHと土壌湿度とがきわめて大きく左右し、pH7.0 以上の土壌に
おいては発病しにくい。地下水位の高いほ場では発生が多いが、土壌の乾燥に対する抵抗
力は弱く、45%の湿度においてはしだいに死滅する。時期的には8∼9月に多く発生する。
2)防除のねらい
(1)
発病地には4∼5年間イネ科作物などを栽培する。
(2)
土壌湿度の低下をはかる。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
輪作をする。
(2)
土壌の pHを 6.3∼6.8 に矯正するため石灰の施用を行う。
(3)
排水のよい地を選び土壌湿度を下げる。
(4)
被害株は除去焼却する。
・薬剤防除
(害
虫)
アブラナ科の害虫(P233)参照
ただし、各薬剤の使用法については農薬ラベルを参照すること。
- 230 -
キャベツ
(7)キャベツの病害虫
(病
1.べ
と
害)
病
ハクサイのべと病の項(P229)参照
ただし、各薬剤の使用法については農薬ラベルを参照すること。
2.菌
核
病
1)生
態
病原菌は被害部に生ずる菌核によって越年する。この菌核は環境に対する抵抗力が非常
に強く土中で2∼3年は生存する。春秋2期に菌核から子のう盤を生じ子のう胞子を飛散
して伝染する。
発育適温は約 20℃であり、時期的には春の4∼5月ごろと秋の 10∼11 月ごろに発生が
多く、特に多雨の後に発生しやすい。非常に多犯性である。病菌が付着していると、輸送
中などにおいても発病する。
2)防
除
法
・耕種的防除
(1)
水田化できるほ場では1∼2ヶ月湛水する。
(2)
被害株は菌核をつくらないように早く圃場外へ持ち出し処分する。
(3)
反転深耕を行う。
(4)
マルチ栽培を行う。
・薬剤防除
3.軟
腐
病
ハクサイの軟腐病の項(P228)参照
ただし、各薬剤の使用法については農薬ラベルを参照すること。
- 231 -
キャベツ
4.黒
腐
1)生
病
態
病原菌は、種子の表面に付着し種子伝染する。また、被害茎葉とともに、土中に残存し
て土壌伝染し、降雨の際に雨滴とともにはね上がり、葉緑の水孔や傷口から植物体に侵入
する。
病原菌の発育適温は 29℃であり、5、6月から秋にかけて発生する。5月ごろと9∼10
月ごろに比較的気温が低く、降雨が多い年に発病しやすい。特に、台風の被害を受け、葉
に傷ができると多発性し、キャベツ不作の一因となる。
2)防除のねらい
(1)
アブラナ科作物の連作をさけ、ムギ、マメ類などを輪作する。
(2)
定植後に大雨があると発生が多くなるので風水害対策を適切に実施する。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
輸作をする。
(2)
排水のよい圃場を選ぶ。
(3)
被害株は圃場外へ持ち出し処分する。
・薬剤防除
(害
虫)
アブラナ科の害虫(P222)参照
ただし、各薬剤の使用法については農薬ラベルを参照すること。
- 232 -
アブラナ科害虫
(8)アブラナ科の害虫
1.アブラムシ類
(モモアカアブラムシ、ニセダイコンアブラムシ、ダイコンアブラムシ)
1)生
(1)
態
モモアカアブラムシは晩秋にはモモ、ウメなどに移住し、そこで有性世代を営み新芽
や樹皮のくぼみなどで卵越冬することが知られているが、暖地ではダイコン・ハクサイや
アブラナ科雑草上で単為生殖をする無翅胎生雌虫や幼虫で越冬しているものも多い。春
(3月∼5月)に発生が最も多くなり、ナス科、アブラナ科、マメ科など多くの植物を
加害する。
(2)
ニセダイコンアブラムシの寄生はアブラナ科の野菜や雑草にほぼ限られており、無翅
胎生雌虫や幼虫で越冬する。一般に春の発生は少なく秋になると急に増殖し、大発生と
なることが多い。本種はハクサイ、ダイコンなどの葉がザラザラした植物に寄生が多い。
(3)
ダイコンアブラムシは、1年を通じてアブラナ科植物に寄生し、胎生雌虫だけで越冬
する。一般に春(4∼5月)の発生が多く、梅雨以降は減少する。本種は、キャベツ、
ハナヤサイ、アブラナなどの葉が平滑な植物に寄生が多い。
(4)
3種のアブラムシ類は、種により発生時期が異なるが、一般にアブラムシの発育適温
は 15∼20℃といわれており、4∼6月と 10 月に発生が多くなる。また、これらはいず
れも植物ウイルスを媒介する。
2)防除のねらい
(1)
生息密度の少ない時期に防除を徹底する。
(2)
干天が続くと発生が多くなるので初発生時に防除を徹底する。
(3)
アブラムシ類はウイルスを媒介するので直接被害よりもウイルス病による病害が大き
くなることがあり、幼苗期には十分防除をする。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
幼苗期には寒冷紗で被覆する。
(2)
イネ科作物との間作をする。
・薬剤防除
- 233 -
アブラナ科害虫
①
粒剤は播種前又は移植前の土壌処理が有効である。施用量は 10a当り溝処理が3kg、
全面処理は6kg、植穴処理は1株当り1∼2g とし、土とよくまぜる。
②
オルトラン水和剤は水溶性が高く、葉に浸透しやすいので高濃度重複散布した場合、
薬害がでやすい。
③
同一系統薬剤の運用を避ける。(P380 参照)
2.ヨトウムシ(ヨトウガ)
1)生
態
成虫は4月下旬∼5月下旬と9月下旬∼10 月中旬に現れる。1雌当たり 2,000∼3,000
粒の卵を産下し、卵は葉裏に数卵塊に分けて産みつけられる。卵期間は7∼10 日である。
幼虫は5∼6月、9∼10 月の年2回発生し、30 日程度で蛹化し土中で越冬、越夏する。き
わめて雑食性で多くの作物の葉を食害する。令期が進むと昼間は物影に潜み夜間食害する。
- 234 -
アブラナ科害虫
2)防除のねらい
(1)
ふ化直後から3令幼虫までに薬剤防除を徹底する。
若令幼虫は群生して、主に葉裏をカスリ状に食害し、表皮を残すので、早期発見に つ
とめ葉裏を重点的に薬剤散布する。
3)防
除
法
・薬剤防除
①
DDVP乳剤、オルトラン粒剤は、若令幼虫のみに、ディプテレックス乳剤は若中
令幼虫に、オルトラン水和剤、ランネート45DFは、老令に近い幼虫にも効果が あ
る。
- 235 -
アブラナ科害虫
3.ハスモンヨトウ
1)生
態
年4∼6回発生する。卵は葉裏に卵塊で産みつけられる。卵は3∼5日でふ化し、幼虫
期間は夏季で 15∼20 日、秋季で 20∼40 日で、6令幼虫は土中で蛹となり 7∼10 日で羽化
する。2令幼虫頃まで群生し、葉の表皮を残して食害する。令期が進むと昼間は葉裏、物
影に潜み夜間食害する。
2)防除のねらい
ヨトウムシに準ずる。
3)防
除
法
・薬剤防除
4.ネキリムシ類(タマナヤガ、カブラヤガ)
1)生
態
土中で蛹、または幼虫態で越冬し、年2∼4回発生する。越冬幼虫は春先から食害をは
じめ老熟すると土中浅いところで穴をつくり、蛹化し、4∼5月ごろ羽化する。
成虫は6∼7月と9∼10 月に多く現われ、点々と産卵する。卵期は2週間で幼虫は5∼
6月の春から初夏と秋に発生が多い。若令幼虫は葉を食害し、令期が進むと昼間は地中に
ひそみ、夜間、作物の地ぎわを切断して加害する。きわめて雑食性である。
2)防除のねらい
(1)
若令幼虫時の薬剤散布を徹底する。
(2)
発生時期の定植は種の場合、土壌に施薬する。
3)防
除
法
・耕種的防除
播種前に耕起して裸地にする。
- 236 -
アブラナ科害虫
・薬剤防除
(定植後株元施用)
4.アオムシ(モンシロチョウ)
1)生
態
年に5∼6回発生を繰り返し、主として蛹で越冬するが一部幼虫態でも越冬する。
3月下旬より羽化、産卵し適温では卵期3日内外であり、幼虫は2週間で蛹化する。幼
虫の加害は冬期を除いて春から秋まで長期にわたり行なわれ、平坦地では5∼6月と9月
中旬∼11 月中旬の被害が著しい。また山間地では7∼8月に被害が多い。
老熟幼虫は食草の葉裏または樹木、垣根について蛹化し、約1週間で羽化する。
2)防除のねらい
中令以降になると葉の間に深くはいりこむので若令幼虫期の薬剤防除を徹底する。
ふ 化 幼 虫 を 認 め た な ら ば 加 害 初 期 に 1 回 と そ の 後 7 ∼ 10 日 お き に 2 ∼ 3 回 薬 剤 散 布 す
る。
3)防
除
法
・耕種的防除
苗床は寒冷紗で覆い、成虫の飛来を防ぐ。
- 237 -
アブラナ科害虫
・薬剤防除
6.コ
ナ
1)生
ガ
態
年に約 10 回発生をくり返し、主に幼虫態で越冬するが、温度が5℃以上であれば成育を
続け、冬でも各態がみられることがある。産卵は年を通じて行なわれ 26℃で飼育すると卵
期は2∼3日、幼虫期は 10∼11 日である。
若令幼虫は葉を食害し、表皮を残す。老熟すると糸をはき、葉裏にまゆを作って蛹化す
る。年間を通じて発生するが晩春から秋に多い。
2)防除のねらい
(1)
定植時植穴あるいは株元への粒剤処理は、初期密度を低く保つうえで有効である。
(2)
年間の発生回数が多いので各態が混在している。したがって少なくとも1週間おきに
数回散布する。
- 238 -
アブラナ科害虫
(3)
コナガは同一農薬を連用すると抵抗性がつきやすいので、ローテーションを考えて薬
剤を使用する。(P379 参照)
3)防
除
法
・薬剤散布
- 239 -
アブラナ科害虫
- 240 -
アブラナ科害虫
7.キスジノミハムシ
1)生
態
年に4∼5回発生し、成虫態で土中や雑草の根元、落葉の下あるいは、アブラナ科の葉
にひそんで越冬する。特にダイコンの被害が大きい。
4月下旬から産卵を始め、土中浅く作物の根の近くに産みつけられ、卵期は夏で3日、
春秋で 10∼15 日くらいでふ化し、幼虫はアブラナ科の根部を食害して 10∼25 日で老熟する。
蛹は 3∼15 日で成虫となり4ヵ月生存し、葉を食害して孔をあける。成虫は年中認めら
れるが6∼7月にかけて急増し、7月にピークとなりその後しだいに減少する。
2)防除のねらい
成幼虫とも加害し、とくに幼苗の被害が大きいので、は種前に土壌施薬を行い、発芽後
は成虫の産卵を防止する。
3)防
除
法
・薬剤防除
- 241 -
アブラナ科害虫
8.ウスカワマイマイ・ナメクジ類
1)生
態
年に1回発生し冬は成虫・幼虫で殻に膜をはって作物の根の周辺や土中浅いところで越
冬する。産卵期は4∼7月で卵は卵塊として敷わらや土中浅く産みこまれ 20 日ほどでふ化
する。
幼虫は5月ごろから出現し 10 月下旬まで作物を加害するが7月中旬から8月にかけて
被害が減少し、9月以降の雨量増加にともない再び活動する。成長するにしたがい夜間の
活動が盛んになるが曇天、降雨のさいは日中でも活動する。乾燥や低温が続くと殻が3mm
以下の幼虫では1∼2週間で死滅するが、成虫では殻口に膜をはって休眠状態となり条件
がよくなれば再び活動する。酸性土壌や湿潤な場所での産卵数並びに生息数が多い。きわ
めて雑食性である。
2)防除のねらい
5月中旬から防除を行い生息密度をおさえる。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
排水をよくし前作物の残葉などを除去する。
(2)
石灰を施して酸度を矯正する
(3)
除草などをして、ほ場周辺を清潔にする。
(4)
捕殺につとめる。
・薬剤防除
①
作付前に畑の周囲の畦畔、畦間に散ぱんして、誘殺帯を設定する方がよい。
②
上記の剤は夕方施用するとよい。
強い雨にあうと流出して効果がなくなるので天候を見定めてから用いるようにする。
- 242 -
アブラナ科害虫
9.シンクイムシ(ハイマダラノメイガ)
1)生
態
年に5∼6回発生し老熟幼虫で越冬する。成虫は5∼10 月ごろ新葉などの葉脈にそって
点々と産卵し、卵は4∼5日でふ化する。幼虫は作物が発芽し本葉が出はじめるころから
新葉をつづり合わせその中にもぐりこんで食害する。10∼14 日で老熟する。
蛹は5∼7日で羽化し、成虫はかなり移動性がある。夏から初秋にかけて特に高温乾燥
の年に発生が多い。
2)防除のねらい
本葉の出はじめころからふ化幼虫をねらって1週間おきに2∼3回薬剤防除する。
3)防 除 法
・薬剤防除
10.コオロギ類(エンマコオロギ、ミツカドコオロギ、ツヅレサセコオロギ)
1)生
態
年1回発生し、卵態で越冬する。6月に入ってふ化した幼虫は9月始めに成虫になり、
10 月∼11 月に土中に産卵し死ぬ。
きわめて雑食性で、加害の多い時期は、8月中旬までで、アブラナ科、ウリ科、マメ科、
ホウレンソウ、花卉等を食害する。日中は草むらや穴の中に潜み、主として夜間に出て食
害する。
2)防 除 法
・薬剤防除
- 243 -
アブラナ科害虫
①
発芽直前に、ほ場や、周囲の雑草に散布する。
11.オオタバコガ
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」参照(P140)
・薬剤防除
- 244 -
レタス
(9)
レタスの病害虫
(病
1.菌
核
害)
病
1)生
態
病原菌は被害部に生じた菌核によって越年し、山間露地では5∼6月と 11∼12 月に、平
坦地のハウスやトンネル栽培では 11∼1 月に発生が多い。
菌核は非常に抵抗力が強く、土中の菌核そのものに対して薬剤防除による効果を上げる
ことは難しい。
菌 核 か ら 子 の う 盤 を 生 じ 子 の う 胞 子 を 飛 散 し て 伝 染 す る 。 子 の う 盤 の 発 生 適 温 は 15∼
20℃で、25℃以上の高温では発生しない。水田の裏作では発生が少なくなる。
2)防除のねらい
(1)
発生前から予防的に地ぎわや、葉の基部を主体に薬剤散布をする。
(2)
ハウス・トンネル栽培では、換気をはかり湿度をさげる。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
被害株を認めたならば、菌核をつくらないうちに早めに圃場外へ持ち出し処分する。
(2)
輸作をする。
(3)
ハウス・トンネルでは換気をはかり湿度を下げる。
・薬剤防除
①
備考欄に非結球レタスに適用と記載のないものは非結球レタスに使用できません。
- 245 -
レタス
2.灰色かび病
1)生
態
病原菌は菌核のほかに、被害組織上の菌糸や、分生胞子の形で越年し、発病適温は 20℃
前後である。
分生胞子の発芽には、水滴が必要で比較的低温多湿で発生が多い。露地では発生が少な
くハウス・トンネル栽培で朝夕が冷え込むと本病の発生が多くなる。
主に分生胞子で伝染し、傷口あるいは活力の衰えた組織などからも侵入する。
2)防除のねらい
(1)
ハウス・トンネル栽培では換気をはかり、多湿にならないようにする。
(2)
発生前から予防的に地ぎわや茎部を主体に薬剤散布をする。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
被害を認めたら圃場外へ持ち出し処分する。
(2)
ハウス・トンネル栽培では換気をはかり多湿にならないように注意する。
・薬剤防除
①
備考欄に非結球レタスに適用と記載のないものは非結球レタスに使用できません。
②
連続使用は耐性菌が発生するので同一系統薬剤の連用を避ける。(P379 参照)
3.軟
腐
1)生
病
態
本病は年間を通じ発生し初夏から初秋までの気温の高い時期に極めて発生しやすい。本
病は多犯性でレタスの他セロリ、ハクサイ、ダイコン等多くの作物を侵す。病原菌の侵入
- 246 -
レタス
は降雨時に土粒とともに病原菌がはね上がり、害虫の食痕や傷口から起こる。
一般に、春採りものでは湿度が高く収穫の遅れた場合に突発することがある。また、寒
害で茎葉が痛んだ場合に病原菌が侵入しやすく、発病が多くなる。露地の初夏採りでは収
穫期に降雨が続くと発生が多い。
2)防
除
法
・耕種的防除
(1)
排水をよくし湿度を下げる。
(2)
結球期が梅雨期となるような栽培はさける。
・薬剤防除
4.腐
敗
病
1)生
態
シュードモナス属の細菌によって、結球葉(内部にも発生)外葉に腐敗を生ずる病害で、
本病は年間を通じて発生するが、特に梅雨時期から初夏にかけて多い。また寒害で傷んだ
場合にも発生が多くなるので寒害を受けないようにする。露地の初夏採りでは収穫期に降
雨が続くと発生が多い。収穫が遅れた場合に突発的に大発生することがある。
2)防除のねらい
(1)
排水のよいところを選んで栽培し多湿にならないように管理する。
(2)
適期に収穫する。
(3)
寒害等を受けないようにする。
3)防
除
法
・耕種的防除
- 247 -
レタス
(1)
無病地を選び栽培する。
(2)
排水のよいほ場に栽培する。
(3)
連作しない。
(4)
被害植物は除去し地中深く埋める。
(5)
結球期が梅雨時期にくるような栽培はさける。
・薬剤防除
4.べ
と
1)生
病
態
冷涼で湿潤な時に発生が多い。山間では5∼7月と 10∼11 月に発生する。病原菌は卵胞
子の形で病葉についたまま土中で越冬するか、あるいはキク科の雑草(オオジシバリ、ニ
ガナ、アキノノゲシ、ジシバリなど)に寄生して越年し、翌年これより分生胞子を生じて、
空気伝染すると思われる。本病は昼夜の温度の較差が大きく、かつ日中曇のときに発病が
多い。
2)防
除
法
・耕種的防除
(1)
幼苗はとくに発生しやすいので、苗床の温度が高すぎないよう注意し、通風をよく
する。
(2)
定植時に羅病苗を除去し、健苗のみを植付ける。
(3)
ほ場付近のキク科の雑草をとり除く。
- 248 -
レタス
(害
虫)
1.アブラムシ類
1)生
態
レタスにはモモアカアブラムシとタイワンヒゲナガアブラムシが寄生する。
両種とも乾燥がつづくと多くなる。
2)防除のねらい
レタスの生育初期に発生すると生育が阻害されるので早めに薬剤を散布する。
2.ネキリムシ類(タマナヤガ、カブラヤガ)
1)生
態
雑食性が多くの作物を加害する。若令幼虫のうちは葉を食害しているが令が進むと昼間
は土中にひそみ、夜間出て作物の根際を切断する。春から秋まで連続して発生し、準高冷
地では7月から 11 月まで発生する。被害は秋口にもっとも多い。
2)防
除
法
・薬剤防除
3.ナメクジ類
1)生
(1)
態
フタスジナメクジは年1回発生で、3∼6月に鉛色の卵を雑草等に産みつける。ふ化
幼体は秋までに成熟して土中や物を積んだ下で越冬する。
(2)
ノハラナメクジは2回発生し、春秋2回の産卵で、春の卵からふ化した幼体が、秋に
は成体となって産卵する。
(3)
キイロナメクジは年1回発生する。幼体で越冬し、3月ごろから活動をはじめ、秋に
成体となり産卵する。ふ化した幼体はしばらく加害したのち越冬に入る。
2)防除のねらい
(1)
有機質肥料を多用した場合に被害が多い。
(2)
秋期の産卵前をねらって、早めに駆除する。
(3)
酸性土壌に発生が多いので、石灰を施用する。
- 249 -
レタス
4.オオタバコガ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項(P140)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
- 250 -
タマネギ
(10)タマネギの病害虫
(病
害)
1.白色疫病
1)生
態
本病はネギ類、ノビルなど広くユリ科植物に寄生し、土壌伝染を行う。病原菌の発育適
温は 15∼20℃で時期的には2∼4月上旬にかけて発生し、冬期(12 月∼2月)温暖多雨の
場合発生が多い傾向にある。とくに、2月上旬∼3月頃までの半旬気温が 12∼13℃で多雨
の場合発生が多い。また、半旬当たりの降水量が 30 ミリ以上になると病勢の進展が著しい。
その後は、気温の上昇に伴い病勢が劣える。
早生種は発病時期が早く、しかも罹病しやすい傾向にある。苗床でも発病するので病株
を本ぽに持ち込まないよう注意する。
2)防除のねらい
排水につとめるとともに育苗時からの早目の薬剤防除が大切である。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
発病苗は定植しない。
(2)
伝染源作物の近くに栽培しない。
(3)
被害の多いほ場での栽培はさける。
(4)
うね立て栽培をし排水をはかる。
・薬剤防除
- 251 -
タマネギ
①
ジマンダイセン水和剤は、体質によりかぶれを生ずることがあるので注意する。
②
薬剤が付着しにくいので、展着剤又は固着剤を使用する。
2.べ
と
1)生
病
態
病原菌は土壌中で卵胞子または被害残さ内で菌糸の形で越年し、これより分生胞子を生
じて空気伝染する。また、種子伝染の可能性もある。発病適温は 15℃で降雨の続くときに
発生しやすい。本病菌はタマネギのほかネギ、ワケギ、ノビル、ラッキョウ、ニラなども
侵す。
タマネギの場合、秋期に感染した苗により本病菌が本ぽに持ち込まれるが、冬の間は発
病することはない。3月上中旬ごろからこれらの越冬罹病株が発病し、4月上旬ごろから
その周囲の株へ二次感染し、4月中旬∼5月中旬に発生が多くなる。
2)防除のねらい
(1)
苗床で防除を徹底し、病苗を本ぽに持込まない。
(2)
越冬罹病株の早期発見(3月中下旬)と抜き取りを行い早期防除に努める。
3)防除方法
・耕種的防除
(1)
苗床はうすまきにし、肥料過多にならないようにする。
(2)
越冬羅病株除去につとめる。
(3)
栽培管理を適切にし、草勢を健全にする。
(4)
ほ場は排水につとめ、畦づくりを適正にする。
・薬剤防除
- 252 -
タマネギ
①
薬液が付着しにくいので展着剤又は固着剤を加え使用する。
②
往復散布とし、ムラ散布のないようにする。
③
ジマンダイセン水和剤は体質によりかぶれを生ずることがあるので注意する。
3.灰色かび病(ボトリチス葉枯症)
1)生
態
本病はボトリチス菌によっておこり、苗床末期ないし本ぽ初期にわずかに発生し、これ
が伝染源となって伸長最盛期以後にまん延する。
冬期に高温多湿が持続すると病原菌量が増加し、さらに伸長最盛期以後に曇雨天が続く
- 253 -
タマネギ
と多発生する。しかし、冬期の発病が少ないと伸長最盛期以後に曇雨天が続いても発生量
は少ないままに経過する。
2)防除のねらい
(1)
苗からの持ち込みがないよう、苗床での防除を徹底する。
(2)
特に春期及び秋期に降雨が多い場合多発するので、この時期の薬剤散布を徹底する。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
軟弱にならないよう栽培管理に注意する。
(2)
堆肥や緩効性肥料を施用して草勢を強健に育てる。
・薬剤防除
4.灰色腐敗病
1)生
態
本病はボトリチス・アーリーによる貯蔵病害として重要である。収穫期ごろに葉の基部
やりん茎に発生し、輸送や貯蔵中に腐敗する。本病の発生は立毛中の1∼3月の多雨、収
穫前の浸冠水、早い梅雨に収穫が重なった場合に多い。
2)防除のねらい
- 254 -
タマネギ
(1)
立毛中の薬剤散布は3月下旬∼5月下旬に かけて7∼10 日おきに6∼7回実 施する。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
収穫は晴天の日に行い、通風のよい場所に貯蔵する。
(2)
多肥栽培をさけ、追肥は3月上旬までに終えて、肥料のおそぎきをさける。
(3)
高うねとして浸冠水を防ぐ。
・薬剤防除
5.黒
1)生
斑
病
態
病原菌は被害部で菌糸または分生胞子の形で越年し、翌春病斑を形成しこれによ り 再び
分生胞子を生じて飛散伝染する。
- 255 -
タマネギ
胞子の発芽適温は 24∼27℃で風害などで葉が損傷した場合に発病しやすく、また高温多
雨のときに発生が多い。時期的には5月ごろから多く発生し、ネギでは秋期にも発生する。
2)防除のねらい
(1)
早期防除を徹底する。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
肥切れしないようにし、排水を良くする。
(2)
収穫後に被害葉を圃場外へ持ち出し処分する。
(3)
収穫のさい、病葉は圃場外へ持ち出し処分する。
・薬剤防除
①ジマンダイセン水和剤は体質によりかぶれを生ずることがあるので注意する。
6.苗立枯病
1)生
態
葉先が黄化し、生育不良となる。糸状菌の一種で、各種作物の苗立枯病をおこす多犯性
の病害である。本菌は土壌中の比較的浅いところに多く、土壌中の未分解有機物上で腐生
的に増殖し、組織内に圧壁の菌糸で存在している。連作圃場に発生が多い。
2)防除のねらい
(1)
床土は無病土を用い、発病のおそれがあれば土壌消毒を徹底する。
(2)
多湿にならないよう排水をはかる。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
床土は無病土を用いる。
(2)
多湿にならないよう排水をはかる。
(3)
連作をしない。
・薬剤防除
(1)
7.萎
土壌消毒・資材消毒の項(P392)参照
黄
1)生
病
態
本病はヒメフタテンヨコバイが媒介するマイコプラズマ様微生物によっておこる病害で、
9月上、中旬に播種する早生、中生種に多く発生する。苗床では、播種後 30 日頃(10 月
中、下旬)から病徴が現われる。病徴を呈した苗を除去し、肉眼的に健全な苗を本ぽに定
- 256 -
タマネギ
植しても、12 月∼2月頃になって生育が進むと苗床と同じような病徴を現わす株もかなり
みられる。このような株は、3月以降気温の上昇とともにわい化し、展開葉は黄化、そう
生し、りん茎の肥大がとまり、重症株は収穫前に枯死する。このような発病は4月下旬以
降から5∼6月の収穫期まで続く。軽症株ではまれに抽苔し、奇形花を生ずることもある。
発病株の球を貯蔵すると、収穫後1か月(6月中旬)頃から萌芽し始め、その萌芽葉は黄
化し、徒長し、かつ軟弱で、球の腐敗が早い。
2)防除のねらい
(1)
本病と病原体であるマイコプラズマ様微生物は、ヒメフタテンヨコバイが媒介するの
で、本虫の駆除が大切である。
(2)
定植時には苗の選別を行い、健全苗を用いる。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
畦畔及び苗床周辺の雑草防除を徹底しヒメフタテンヨコバイの密度を低下させる。
(2)
苗床を寒冷紗で被覆してヒメフタテンヨコバイの寄生を防止する。
(3)
定植には健全苗を用いる。
8.腐
敗
病
1)生
態
本病は
春腐病
と言われていた病害で、最近
腐敗病
となった。細菌により引き起
こされる病害で、病原菌は被害残渣とともにほ場内に残り、次作の第一次伝染源となる。
葉身に初め暗緑色の小斑点が現われ、のちに拡大しケロイド状の病斑となる。その後、融
合して葉鞘、葉鞘基部および鱗茎に達し軟化腐敗症状を示す。軟腐病のように悪臭を伴わ
ない。
2月下旬から4月にかけて発生し、風害、他の病害虫などで葉が傷ついた場合に発病し
やすく、また、降雨が多いと発生が多くなる。早生マルチ栽培で発生が多い。
2)防
除
法
・耕種的防除
(1)
多湿にならないよう排水をはかる。
(2)
被害株は二次伝染源となるので、早めに抜き取りほ場外へ処分する。
・薬剤防除
9.軟
腐
1)生
病
態
本病は、細菌により引き起こされる病害である。中、下位葉の葉鞘部および葉鞘基部が
- 257 -
タマネギ
軟化し、葉を引っ張ると容易に鱗茎から抜け、鼻をつくような悪臭を放つ。また、鱗 茎の
場合、表層がややくぼんで軟化する場合と、貯蔵中に鱗茎全体が軟腐する場合がある。
一般には、4月以降に発生がみられ、風害、他の病害虫などで葉が傷ついた場合に発病
しやすく、また、降雨が多いと発生が多くなる。
2)防
除
法
・耕種的防除
(1)
多湿にならないよう排水をはかる。
(2)
窒素過多を避ける。
(3)
収穫は晴天日に行い、貯蔵は風通しの良い場所を選ぶ。
・薬剤防除
- 258 -
タマネギ
10.乾
腐
病
1)生
態
立毛中では、はじめ葉の片側または全部が変色、萎ちょう枯死する。根は退色して細く
なる。鱗茎は盤根部や外側1∼2枚の鱗片が褐変し、その部分に白いかびを生じる。貯蔵
中に発病が多く、盤根部から始まり、灰褐色に変わる。のちに鱗片基部から水浸状または
乾腐状に腐敗し、ついには外皮2∼3枚を残して崩壊、消失する。
本病菌は種子伝染も行うが、土壌中に残存する厚膜胞子が最も重要な伝染源である。
タネバエなどの土壌害虫により加害を受けると発生しやすい。
2)防除のねらい
(1)
連作をさける。
(2)
土壌消毒を行う。(P392 を参照)
(3)
土壌害虫の防除を行う。
3)防
除
法
・耕種的防除
耐病性品種を用いる。
・薬剤防除
共通資料の土壌消毒・資材消毒の項(P392)を参照
(害
虫)
1.ネギアザミウマ
1)生
態
本虫は、タマネギ、ネギ、ニンニク、アスパラガス、ナス、キクなど多くの作物に寄生、
加害する害虫である。年に5∼6世代を経過し、タマネギ、ニンニクなどの栽培作物やノ
ビルなどの雑草中で、成虫と幼虫で越冬できる。気温が 10℃以上になる3月頃から増殖を
開始する。本虫の発育は非常に早く、20℃で 20 日、25℃で約 16 日で卵から成虫になる。
卵は葉の組織内に産卵され、ふ化した後、幼虫と成虫が葉を食害する。
高温少雨の干ばつ状態の気象条件であれば、急激に密度が高まる。暖冬の年では、発生
時期は早くなり、発生量は増加する。
2)防除のねらい
(1)
苗床での防除を行い、本ぽへ持ち込まないようにする。
(2)
本虫は、薬剤がかかりにくい葉と葉の隙間に寄生しているので、薬剤は十分量を用い
る。
(3)
本虫の食害によりできた傷口から他の病害が発生しやすくなるので、防除を行う。
(4)
卵は組織内に産みこまれ殺卵できないので、卵期間を考慮して1週間間隔で数回散布
する
- 259 -
タマネギ
3)防
除
法
・薬剤防除
・同一系統薬剤の連用を避ける。(P379 参照)
2.ケ
ラ
1)生態と防除のねらい
成幼虫とも雑食性で土壌中の有機物を食餌としているがウリ科作物のほか、ニンジン、
バレイショ、ネギ等の各種作物の根、茎を食害して立枯れを起こす。畑が湿潤であると地
上に出て作物を食害するので排水をよくして乾燥をはかる。とくに水田地帯の施設栽培で
は注意する。
1年1世代で成虫越冬するが成虫の生存期間は長く約1年とも言われる。越冬成虫は気
温 10℃前後になると活動しはじめ4∼7月に土かい(窩)を作り、50∼70 粒の卵をかため
て産む。卵は約 10 日でふ化する。6月中旬以降にふ化した幼虫は、成虫または幼虫で越冬
し、2年1世代型となる。成虫は夜間橙火にも飛来する。
2)防
除
法
・耕種的防除
湿地に被害が多いので排水をよくする。
- 260 -
ネ
ギ
(11)ネギの病害虫
(病
1.さ
び
害)
病
1)生
態
被害植物体上で冬胞子や夏胞子の形で越年し、翌春夏胞子を飛散して伝染し、春期と秋
期に比較的低温で降雨が多い場合に多発する。また、肥料切れして草勢が衰えると発病が
助長される。
2)防除のねらい
(1)
肥切れしないように堆肥を十分に施す。
3)防
除
法
・薬剤防除
①
ジマンダイセン水和剤は、体質によりかぶれを生じるので注意する。
(害
虫)
1.ネギアザミウマ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項(P129)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
- 261 -
ネ
ギ
2.ネギハモグリバエ
1)生
態
蛹で地中に越冬し、成虫は5月ごろから現れ、秋ごろまでに5∼6世代を営む。卵はネ
ギの葉組織に点々と産みこまれ、数日でふ化する。幼虫は葉肉部を食害し、老熟すれば地
中に入り、地中で蛹となる。
2)防除のねらい
(1)
被害の大きい苗は除去する。
3)防
除
法
・薬剤防除
3.シロイチモジヨトウ
1)生
態
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項(P142)参照。
2)防除のねらい
幼虫は葉の中にいて加害するため、幼虫が食入するまえの卵∼ふ化までに防除を行う。
- 262 -
ネ
3)防
除
法
・薬剤防除
- 263 -
ギ
ワケギ
(12)ワケギの病害虫
(病
1.さ
び
病
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
害)
除
ネギの「さび病」の項(P261)参照
法
・耕種的防除
・薬剤防除
(害
虫)
1.ネギアザミウマ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
タマネギの「ネギアザミウマ」の項(P259)参照
法
・耕種的防除
・薬剤防除
- 264 -
ワケギ
2.ネギハモグリバエ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
ネギの「ネギハモグリバエ」の項(P262)参照
法
・耕種的防除
・薬剤防除
3.シロイチモジヨトウ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項
(P142)参照
・耕種的防除
- 265 -
ワケギ
・薬剤防除
- 266 -
バレイショ
(13)バレイショの病害虫
(病
1.疫
害)
病
1)生
態
病原菌は被害部の菌糸の卵胞子の形で越年し、翌春の伝染源となる。
病原菌は比較的低温で高湿度のもとで生育しやすいので、曇雨天の続くようなときに発
生が著しい。また、窒素過多等で茎葉が茂り風通しの悪い場合にも多くなる。
時期的に春作では5月頃から、秋作では 10 月頃から発生し始め、悪天候のもとでは急激
にまん延する。
2)防除のねらい
(1)
被害いもはほ場に残さないようにする。
(2)
被害ほ場の種いも利用をさける。
(3)
発病初めに必ず防除を行う。
(4)
薬剤感受性の低下(薬剤の効力の低下)を防ぐため、同一系統薬剤の過度の連用を避
け、作用性の異なる薬剤を組み合わせて使用する。(P376 参照)。
(5)
一部の地域では、リドミルMZ水和剤の成分であるメタラキシル剤(フェニルアマイ
ド系;系統番号⑮)に対する感受性の低下が確認されている(平成 12 年 12 月に検定)。
このため、この薬剤の効果が低下している圃場では、同一系統薬剤の使用を控える。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
無病種いもの選択
(2)
窒素の過用をさける。
(3)
ほ場の排水をよくする。
・薬剤防除
- 267 -
バレイショ
2.ウイルス病
1)生
態
ウイルス病ではXモザイク病(Potato virus X)えそモザイク病(Potato virus Y)、
れん葉モザイク病(Potato virus X+Potato virus Y)葉巻(Potato leaf roll
virus)、黄斑モザイク病(Potato aucuba mosaic virus)などがある。
ほ場ではXウイルスとYウイルスの複合感染によるれん葉モザイク病が最も多い。
これらウイルス病は種いもを通じて伝染し、ほ場での葉のすれあいや管理作業によって
接触伝染をする。ウイルスはアブラムシ伝染をしないが、他のYウイルス、葉巻病、黄斑
モザイク病はアブラムシによって伝染する。葉巻病ウイルスを保毒したアブラムシは長い
間感染能力を失わない。
2)防除のねらい
(1) 健全な種いもを植えつける。
(2) アブラムシの防除を徹底する。
3)防 除 法
・耕種的防除
(1) 健全な種いもを植付ける。
(2) 病株は圃場外へ持ち出し処分する。
(3) ほ場近くの雑草を刈り清潔にする。
・薬剤防除
アブラムシの項(P270)参照
3.軟 腐 病
1)生
態
本病は生育中より貯蔵中に発生が多く、土壌伝染でアブラナ科その他の多くの作物を侵
す。収穫時、雨の多い場合あるいは排水不良水田の裏作で発病が多くなる。
2)防除のねらい
(1) ほ場の排水をよくする。
(2) 前作の多発ほ場では栽培しない。
3)防 除 法
・耕種的防除
(1) 収穫時いもを傷つけないように注意する。
(2) 春作いもは冷涼なほ場にうすく広げてから貯蔵する。
(3)
被害のあったほ場からの採種はしない。
・薬剤防除
(1)
土壌消毒・資材消毒の項(P392)参照
- 268 -
バレイショ
4.そうか病
1)生
態
新いもの形成直後からその生育中はたえず発病し、いもにコルク質の褐色で中央がくぼ
んだあばた状の病斑を作る。病原菌は放線菌でいもの病斑部で越冬するばかりでなく、ほ
場の土壌の中に残って腐植質から栄養をとり長時間生存する。種いもによって伝染するほ
か土壌伝染もする。発生は乾燥した軽い砂質地で通気のよい所や、中性∼微アルカリ性の
土壌に多い。
2)防除のねらい
(1) 伝染源を取除くことが大切である。
(2) 無病いもを植付け、連作を避け、土壌消毒など耕種的防除と薬剤防除を組合せた総合
防除が必要である。
3)防 除 法
・耕種的防除
(1) 健全種いもを選ぶ。
(2) 酸性肥料を用い、木灰、石灰の多施用をさける。
(pH5.2 以下であると発病しにくいが、石灰が土壌中に不足すると生育異常が発生す
ることもあるので、石灰含有量に注意する。)
(3) 連作をさける。
(4) 生育期間中の過乾燥をさける。
・薬剤防除
(1)
種いも消毒
①種いもに付着した土壌に含まれている病原菌を除去するために、薬剤処理前に種い
もを十分に水洗いし,付着した土を除去する。
②浸漬処理は種いもに薬剤を十分に付着させるため、種いもをつめたコンテナが十分
沈むくらいの薬液を用意する。なお、浸漬処理の場合、薬液は 10 回程度使用できる。
③ 散布処理の場合は、種いもを床等にうすく広げるかまたはコンテナに入れたまま、
種いも 100kg あたり5∼6L の割合で種いも全体に均一に散布する。
- 269 -
バレイショ
④
薬剤処理後は、種いもを風通しのよいところですみやかに乾燥させた後、切断し
切断面が十分コルク化した後(3∼4日後)に植付ける。
⑤
萌芽後の処理は、薬害を生じやすいので、できるだけ萌芽前に処理する。
⑥
薬剤処理したい種いもは、食用および飼料には供さないようにする。
⑦
本剤は、ゴム手袋とマスクを着用して取扱う。
⑧
薬剤処理後の廃液は川や養魚池等に流入しないように注意する。
⑨
そうか病の多発生ほ場では、種いも消毒の効果が小さいので、土壌消毒を併用す
る。
(2)
土壌消毒
多発地では、クロールピクリンで土壌を消毒する。
土壌消毒・資材消毒の項(P392)参照
5.象
皮
病
1)生
態
新いもの形成初期に感染し、いもの表皮層に浅い黄褐色∼黒褐色不整形の病斑をつくる。
病斑が乾燥すると網目状の亀裂ができる。土壌伝染し、種いもによる伝染力は低い。中性
∼微アルカリ性の土壌で、土壌水分含量の多いところに発生しやすい。
2)防除のねらい
耕種的防除と薬剤防除を組み合わせた総合防除が必要である。
3)防
除
法
そうか病に準ずる。
(害
虫)
1.アブラムシ類
1)生
(1)
態
モモアカアブラムシは早春から晩秋までジャガイモの全生育期間を通じて寄生し、葉
のほか茎や花に及び、ときには葉の表面にも寄生する。また、ジャガイモYウイルス(P
VY)、葉巻ウイルス(PLRV)、キュウリモザイクウイルス(CMV)などを媒介す
る。
(2)
ワタアブラムシは初夏になって寄生し、夏期の寄生が最も多く、下葉に寄生する傾向
がある。本種もCMVなどを媒介する。
(3)
ジャガイモヒゲナガアブラムシは生育初期から寄生するが、群生することは少なく、
直接の害よりも各種ウイルス病の媒介虫として重要である。
(4)
チューリップヒゲナガアブラムシは初夏になって寄生し、高冷地では多発生し直接の
害も大きいが、平地では各種ウイルス病の媒介虫として重要である。
- 270 -
バレイショ
2)防除のねらい
アブラムシ類はいずれもウイルスを媒介するので、萌芽時から特に葉の裏面からの散布
を行ない防除を徹底する。
3)防
除
法
・薬剤防除
2.ジャガイモガ
1)生
態
ほ場害虫であると共に貯蔵中の害虫でもある。年間の発生回数が多く(7∼8回)発生
は不斉一で夏期は一世代 20 日前後で経過する。成虫は一般に3月上旬ごろから春ジャガイ
モ、他のナス科作物のほ場に飛来し、約2世代を経過する。収穫後はナス、トマトに集中
加害しのち秋ジャガイモに移り、また約2世代を経過する。その後ほ場の残りいも、貯蔵
いも内で幼虫あるいは蛹で越冬する。
2)防除のねらい
年間の発生回数が多く、一世代の経過も早いので、栽培期間中は防除をひんぱんに行う。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
被害いもは取除き処分する。
(2)
ほ場または、ほ場の近くにくずいもを放置しない。
(3)
いもの貯蔵は、床下等の冷暗所を利用する。
- 271 -
バレイショ
・薬剤防除
3.ニジュウヤホシテントウムシ(テントウムシダマシ)
1)生
態
ナスのニジュウヤホシテントウムシの項(P224)参照
2)防除のねらい
ナスのニジュウヤホシテントウムシの項(P224)参照
3)防
除
法
・薬剤防除
- 272 -
レンコン
(14)
レンコンの病害虫
(病
1.腐
敗
害)
病
1)生
態
土壌中に病気にかかった部分が残っていたり、また、保菌種ハスを栽培した場合に発病
する。したがって盛夏にひどい。発病部位は全身であるが地下茎やフザリウム属菌による
褐色腐敗病ピシウム属菌による黒紫色腐敗は両菌による混合型の腐敗を起す。菌糸や厚壁
胞子の形で被害部で生存したもの、罹病レンコンの植え付けが主な伝染源である。
2)防
除
法
・耕種的防除
(1)
無病種蓮を確保するよう健全ほ場から採取する。
(2)
収穫後の茎葉を除去する。とくに被害茎葉や腐敗蓮には注意する。
(3)
フザリウム菌の場合は冬期間湛水状態にする。
ただし4∼5年以上経過した場合、根腐れを起すので排水をはかり土壌の風化をは
かる。
(4)
整地は均一になる様ていねいに行い、9月中∼下旬までは深水とする。
(5)
整地時に石灰窒素を 10a当り 60kg 内外を施し土壌と混和する。
なお、pHが7以上の場合は控える。
(6)
2.褐
施肥は窒素過多にならないようにする。
斑
病
1)生態と防除のねらい
病原菌の越年は主として枯死した罹病葉や葉柄で発育適温 28℃である。分生子は4月頃
から形成される。また、新葉は発病しやすいが、日数経過とともに耐病性が増大する。
2)防
除
法
・耕種的防除
(1)
圃場内の葉柄を年度内に刈り取る。
(2)
畦畔などに残存する罹病茎葉を圃場外へ持ち出し処分する。
(3)
施肥、灌水などを適正に行い、抵抗性を高める。
(害
虫)
1.アブラムシ類
1)生
態
モモ、スモモ、ウメなどで卵態で越冬し春季ハス、スイレン、カワホネ、クワイなどに
飛来し寄生する。ハスには4月中旬頃から飛来しはじめ、主として萌芽まもない立葉(巻
- 273 -
レンコン
葉)に多数寄生し、吸汁加害する。生息密度は5月中旬から6月下旬にかけて最も高い。
夏から秋にかけては主として若い立葉に寄生し、硬化した健全葉には、あまり寄生しない。
2)防除のねらい
ハスの立葉(巻葉)2∼3枚目まで(5月中旬∼下旬)の被害が最も大きいので、この
時期に徹底して防除する。
3)防
除
法
・薬剤防除
- 274 -
パセリ
(15)
パセリの病害虫
(病
害)
1.うどんこ病
1)生
態
病原菌は糸状菌の一種で、子のう菌類に属する純寄生菌である。二次伝染は罹病株上の
菌そうに形成された分生子の飛散により行われるが、一次伝染源となる子のう核の形成が
認められておらず、越冬形態については不明な点が多い。
葉と葉柄に発生し、罹病株は生育がやや劣り、多発すると生育が停滞する。7月から 10
月にかけて発生が多く、高温期と低温期には病勢は滞る。
2)防除のねらい
(1)
発生初期の防除を徹底する。
(2)
下葉かきを行い発病葉を除去する。
(3)
薬剤が葉裏にもかかるよう、十分量を丁寧に散布する。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
軟弱徒長・過繁茂は発生を助長するため、通風を良くし、適正な肥培管理を行う。
(2)
夜間の高湿度は発生を促進するので、夕方の潅水は避ける。
(3)
発病葉等はできるだけ除去し、圃場外に持ち出し処分する。
・薬剤防除
- 275 -
アスパラガス
(16)
アスパラガスの病害虫
(病
1.茎
枯
害)
病
1)生態と防除のねらい
病原菌は被害組織上に形成した柄子殻で越冬し、これが伝染源となる。発育適温は 24℃
付近、胞子の発芽適温は 28℃前後である。本病の潜伏期間は7∼10 日で、茎の罹病性は萌
芽直後から2週間以内が高く、1か月以上経過すると罹病しにくくなる。また乾燥した天
候がつづくときは伝染は余り行なわれず、雨まじりの風はまん延を促す。春芽収穫打切り
直後から梅雨明けまでと9月以降秋雨の多いときに多発する。防除は土壌表面の焼却、発
病茎の早期除去、薬剤防除(立茎後 20 日間隔)を組み合わせて実施する。
2)防
除
法
・耕種的防除
(1)
伝染源除去のため、発病茎は早期に除去するとともに、栽培終了後は全茎を株元か
らできるだけ低く刈り取り処分する。
(2)
茎葉刈り取り後の土壌表面の焼き、敷わらは発病抑制に有効である。
(3)
雨よけ圃場においても、降雨が降り込みやすいサイド部や前年に発病が認められた
所で初発生し、その後周辺に拡大する場合が多いため、このような場所での発生に注
意するとともに、雨の振り込みを防ぐため降雨時にはサイドビニルを下ろす。
(4)
茎葉が伸びすぎたら 110cm 位で先刈りし、通風を良くする。
(5)
潅水や降雨等といった水はねにより、伝染するので、できるだけ小さい水滴で潅水
する。
・薬剤防除
- 276 -
アスパラガス
2.斑
点
病
1)生態と防除のねらい
主に葉に発生する。病原菌は前年の被害茎葉上で越冬し、翌年、分生胞子を形成して伝
染源となる。茎葉が繁茂して通風が悪くなると発生しやすく雨の多いとき多発する。本病
菌は近紫外線により胞子形成が促進されるため、近紫外線除去フィルムを被覆し発病を抑
える。
2)防
除
法
・耕種的防除
(1)
紫外線カットフィルムを被覆する。
(2)
換気を図るため、茎葉の過繁茂を避け好天時にはサイドビニルを解放する。
・薬剤防除
3.褐
斑
病
1)生態と防除のねらい
主に枝部、葉部に周辺が赤褐色で内部が褐色の斑点を形成する。病斑は斑点病と類似し
ているが、本病は病斑の表面に肉眼で確認できる灰色∼黒色の分生子塊を多数形成し、斑
点病はこれを形成しないため、両病害の識別は可能である。病原菌の生育適温は 25℃前後
である。本病の潜伏期間は約 30 日間で、発生は秋期以降に増加する。
2)防
除
法
・耕種的防除
(1)
伝染源を除去するため、収穫終了後の刈り取った残さは必ず圃場外へ持ち出し、火
炎放射器でうね面及び通路を焼く。
(2)
換気を図るため、茎葉の過繁茂を避け好天時にはサイドビニルを解放する。
- 277 -
アスパラガス
(害
虫)
1.ハスモンヨトウ、シロイモチジヨトウ
1)生
態
ハスモンヨトウ・シロイチモジヨトウは雑食性で多くの作物を食害する。特に8月中旬
から 10 月上旬にかけて多発する傾向がある。
2)防除のねらい
中老令幼虫になると薬剤の効果がおちるので、早期発見に努め若令幼虫のうちに防除を
徹底する。
3)防
除
法
・薬剤防除
・コンフューザーVの使用上の留意点はP476 を参照。
2.ネギアザミウマ
1)生
態
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項(P139)参照。
2)防除のねらい
近紫外線除去フィルム被覆等による本虫の侵入抑制と薬剤防除を組み合わせて防除を行
う。
3)防
除
法
・耕種的防除
施設の入口、側面、換気部は必ず寒冷紗で被覆する。また、紫外線カットフィルムの
被覆や光反射シート等の圃場周辺部への設置を行い侵入防止を図る。
- 278 -
アスパラガス
・薬剤防除
3.ハダニ類
1)生
態
アスパラガスでは、6∼10 月に発生が多い。立茎した茎葉および収穫部位の鱗片葉を加
害する。本虫の加害により、茎葉では黄褐色となり落葉するほか、収穫部位では、白い斑
点となり商品価値が著しく低下する。
2)防除のねらい
本虫のハウス内での越冬およびハウスへの侵入を防止する。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
周辺雑草を除去する。
(2)
刈り取り後の残さをハウス内に残さない。
(3)
地上部刈り取り後、火炎照射器でうね面及び通路を焼く。
・薬剤防除
4.アブラムシ類
1)生
態
アスパラガスでは、3∼8月に発生が多い。収穫部位の鱗片葉および立茎した茎葉を加
害する。
2)防除のねらい
本虫のハウスへの侵入を防止する。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
周辺雑草を除去する。
(2)
施設の入口、側面、換気部は必ず寒冷紗で被覆する。
- 279 -
アスパラガス
5.オオタバコガ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項
(P140)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
- 280 -
サトイモ
(17)サトイモの病害虫
(病
1.軟
腐
害)
病
1)生
態
アブラナ科植物の軟腐病菌と同じで、ハクサイ・ダイコン・カブ・カンランのほか、ト
マト・ジャガイモ・キュウリ・インゲン・ニンジン・セロリ・レタス・タマネギなど多く
の作物を侵す。
2)防除のねらい
ハクサイの軟腐病(P228)参照
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
被害地では輪作をし、イネ科作物を栽培する。
(2)
病株を処分する。
(3)
排水をよくする。
・薬剤防除
クロールピクリンによる土壌消毒(P394)をする。
(害
虫)
1.ハスモンヨトウ
1)生
2)防
態
除
法
アブラナ科のハスモンヨトウの項(P236)参照
ただし、各薬剤の使用法については農薬ラベルを参照すること。
- 281 -
ショウガ
(18)ショウガの病害虫
(病
1.腐
敗
害)
病
1)生
態
はじめ地際部が侵されて黄褐色になり、次第に軟化腐敗して表皮だけ残すようになる。
被害株は葉が急激に萎ちょうし、鮮黄色から黄褐色に変色するとともに、葉緑より巻き上
ってついに枯死する。根茎は全く腐敗し灰白色の汁液がでて特有の悪臭がある。貯蔵中の
被害も大きい。
病原菌は土壌中または病根茎について越年し、これによって発病する。これが伝染源と
なる。発病後の防除は困難である。
2)防
除
法
・耕種的防除
(1)
種根茎は無病のほ場から採取する。
(2)
植付前病根茎を選別除去する。
(3)
排水のよい無病地に栽培する。
(4)
連作を避ける。
(5)
窒素肥料の過多を避ける。
2.根茎腐敗病
1)生
態
圃場における発生には、腐敗病と同様、種ショウガによる持込みと、圃場での発病によ
るものがある。種ショウガによる持込みの場合、生育の初期、多くは萌芽後まもなく株全
体黄変枯死する。圃場が原因で発病する場合は、はじめ地上茎地ぎわ部に水浸状の軟化病
斑を生ずる場合が多い。腐敗は下降し根茎に及ぶが、腐敗の進行は速い。地上部は黄変萎
ちょう、または倒伏し、ついに枯死する。
2)防
除
法
・耕種的防除
腐敗病の項参照
・薬剤防除
- 282 -
ショウガ
3.紋
枯
病
1)生
態
葉鞘に発生し、イネ紋枯病と同様の病斑を生ずるが、多くの場合病斑部分は消失して楕
円形に穴があく。
病斑が上位葉鞘まで及ぶことは少ないが、生育はかなり抑制される。
2)防
除
法
・耕種的防除
種ショウガは、無病の圃場から採取する。
・薬剤防除
(害
虫)
1.フキノメイガ
1)生
態
しんくい虫状に食害するのはフキノメイガ、アワノメイガ、イネヨトウの幼虫で、その
主体となるのはフキノメイガである。フキノメイガは年4回から5回発生し、ショウガを
加害するのは第2世代∼第4世代幼虫で、最も甚だしく加害するのは8月∼9月にかけて
の第3世代幼虫である。産卵部は上葉の葉舌部からは葉鞘の内側で、ふ化幼虫は止葉の葉
ざやに包まれた比較的柔らかい部分から茎内に食入し上方へしんくい虫状に食害する。
茎間移動は活発で平均6茎を食害する。したがって被害は坪枯状にあらわれる。防除は
幼虫のふ化食入期をねらうが、発生消長が入り乱れて防除適期の決定はきわめて困難であ
り、発生最盛期には散布間隔を短縮する。
2)防
除
法
・薬剤防除
- 283 -
ピーマン
(19)
ピーマンの病害虫
(病
害)
1.ウイルス病類
トマトのウイルス病類の項(P196)参照
2.青
枯
病
トマトの青枯病の項(P197)参照
3.疫
病
1)生
態
施設栽培では地際部や根に発生することが多く、地際部は暗緑色ないし暗褐色水浸状を
呈してしぼみ、根は部分的に褐変腐敗し、地上部は萎凋枯死する。露地栽培では、茎、葉、
果実に症状が発生しやすい。
病原菌は糸状菌の一種で、土壌中で越年し、水湿と適温を得ると遊走子のうを形成し、
伝染する。本病菌の生育適温は 28∼30℃で、ナス科、ウリ科作物に寄生しやすい。本病は
多湿環境で発病しやすく、連続降雨や圃場の浸冠水で多発する。
2)防除のねらい
(1)
前作または前年に本病が発病した圃場には作付けしない。
(2)
多湿条件にならないようにする。
(3)
早期発見、早期防除に努める。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
排水対策を行い、浸冠水を防ぐ。また、ハウスでは換気を図って、多湿にならないよ
うにする。
(2)
敷わら、マルチをして土壌面から病原菌のはねあがらないようにする。
(3)
発病葉や発病株等は2次伝染源となるので、抜き取り、圃場外へ持ち出し、処分する。
・薬剤防除
- 284 -
ピーマン
(害
虫)
1.タバコガ
1)生
態
本虫は年3∼4回の発生と考えられる。蛹態で土中で越冬し、第1回成虫は6月中旬頃
から発生がみられ、8月下旬∼9月上旬ごろに最も多い。卵は夜間に新葉や芽、花蕾、幼
果などに産卵する。ふ化幼虫は3令以後は果内に食入する。発生は不斉一で、発育の異な
る個体が混在し、1雌 400∼500 粒産卵する。
2)防除のねらい
(1)
タバコ畑近くのほ場に出やすい。
(2)
幼虫は果実に食入し、内部から食害して品質を著しく低下するので、防除は幼虫の果
実への食入防止をねらいとして実施する。
3)防
除
法
2.ミナミキイロアザミウマ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項(P132)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
- 285 -
ピーマン
3.ミカンキイロアザミウマ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項(P136)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
4.アブラムシ類
1)生
態
ピーマンにはワタアブラムシとモモアカアブラムシの寄生が多い。
ナスのアブラムシ類の項(P221)参照
2)防除のねらい
ナスのアブラムシ類の項(P221)参照
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
紫外線除去フィルム利用も有効である。
ナスのアブラムシ類の項(P221)参照
- 286 -
ピーマン
・薬剤防除
・同一系統薬剤の連用を避ける。(P380 参照)
5.オオタバコガ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項(P140)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
- 287 -
トウモロコシ
(20)トウモロコシの病害虫
(病
害)
1.倒伏細菌病
1)生態と防除のねらい
幼苗期には葉鞘に淡褐色水浸状の病斑を生じるが、病勢の進展が速く、茎も軟化腐敗し
て、株は倒伏するか、立枯れになる。幼苗期以後は、葉柄、側芽、雄穂、雌穂(苞葉)な
どに淡褐色水浸状の不整形病斑を生じる。葉鞘の病斑は、初め内側に現われ、のちに外側
に及ぶ。病勢が激しく、茎の内部が腐敗すると、その部分より折れることがある。茎の内
部の腐敗はメイガ類の食害痕からの二次的伝染による場合が多い。
第一次発生は種子伝染によるものと考えられる。現在までのところ、バンタム系品種に
発生が多い。8月に収穫するトウモロコシでは、6月上旬から7月にかけて高温多湿であ
ると多発する。また食入性害虫も本病を多発させる原因となる。
2)防
除
法
・薬剤防除
アワノメイガの防除法
(害
虫)
1.イネヨトウ
1)生
態
年4回発生する。発生は4月から5月にかけて、6月から7月にかけてが多い。トウモ
ロコシの若い時期に芯に食入し、芯枯れとなす。
2)防除のねらい
発生は田畑混合地域に多い、4月播きものは本葉5∼6葉期と7∼8葉期の2回、5月
播きものは5∼6葉期に1回薬剤を散布する。
3)防
除
法
・耕種的防除
早播きのものほど被害を受けやすいので被害の多い地域では晩播きにする。
2.アワノメイガ
1)生
態
年3回の発生で、第1回目は5月下旬∼6月、第2回7月中旬∼8月上旬、第3回8月
下旬から 10 月に出る。成虫は播種期に関係なく雄穂抽出期に飛来産卵する。
2)防除のねらい
(1)
7月中旬から8月上旬の第 2 回成虫によるものが最も被害がひどい。
(2)
薬剤防除の時期は播種期に関係なく雄穂抽出期から5∼7日毎に2回、発生が多い場
合には3回以上行う。
- 288 -
トウモロコシ
3)防
除
法
・耕種的防除
早播きほど被害が少ない。
・薬剤防除
- 289 -
ホウレンソウ
(21)ホウレンソウの病害虫
(病
害)
1.ウイルス病類
1)生
態
・病原ウイルスとして5種のウイルスが知られている。また、混合感染していることも多
い。
・ビートモザイクウイルス(BMV)はホウレンソウのほかフダンソウ、アカザ、ヒユ、
エンドウ、ナズナなどに感染する。
・インゲンマメ黄斑モザイクウイルス(BYWV)に感染した株は初め葉脈透化を生じた
後、葉がねじれるとともにモザイク症状を示す。その後葉脈・葉柄にえそを生じて萎縮
する。生育初期に感染すると萎ちょう、枯死することが多い。
・キュウリモザイクウイルス(CMV)は寄生範囲の広いウイルスで 100 種以上の植物を
侵すので、伝染源は常に畑の周囲にあると考えてよい。
・カブモザイクウイルス(TuMV)はホウレンソウのほかダイコン、各種アブラナ科植
物を侵す。
・タバコモザイクウイルス(TMV)ホウレンソウに発生しているTMVはTMV−C(ア
ブラナ科系)である。感染株での症状は退緑部と濃緑部の境界が比較的明りょうなモザ
イクで、葉は奇形となり、生育は悪く、若干萎縮する。
2)防除のねらい
5種の病原ウイルスはいずれもアブラムシによって伝染するので、アブラムシの防除及
び伝染源となるり病植物の除去に努める。
3)防
除
法
・耕種的防除
イネ科作物やネギ類の間作を行う。
・薬剤防除
ホウレンソウのモモアカアブラムシの項(P292)参照
2.べ
と
病
1)生
態
11 月∼翌年4月にかけて発生し、特に 11∼12 月、3∼4月に発生が多い。8∼18℃、
特に 10℃前後で曇天、多雨のとき発生しやすい。また早まき、厚まき及び肥料の多いもの
は、葉が繁茂して軟弱となるため発生が多い。病原菌の越冬量が多い場合は春期発病が始
まると防除が困難であるから、予防対策が重要である。連作圃場では発生が多い。
2)防
除
法
・耕種的防除
抵抗性品種を選ぶ。
- 290 -
ホウレンソウ
3.リゾクトニア菌による苗立枯病
1)生
態
土 壌 中 や 被 害 残 さ の 中 の 菌 核 や 厚 膜 化 細 胞 が 伝 染 源 と な る 。 病 原 菌 の 生 育 適 温 は 25∼
28℃であり、高温多湿時に発生が多い。
2)防
除
法
・耕種的防除
多湿にならないよう排水をはかる。
・薬剤防除
(1)
4.萎
薬剤散布
凋
病
1)生
態
第1次伝染源は土壌中に残存した厚膜胞子である。最初下葉から黄化、萎凋が起こり、
しだいに株の内側の葉に進展し、生育不良となり枯死する。被害株の根の導管は褐変して
いる。発病適温は 25∼30℃と高く、15℃以下では発病は認められない。
2)防
除
法
・耕種的防除
発病株は次作の伝染源となるので、圃場へ持ち出し処分する。
多湿にならないよう排水をはかる。
・薬剤防除
土壌消毒・資材消毒の項(P392)参照
- 291 -
ホウレンソウ
(害
虫)
1.モモアカアブラムシ
1)生
態
アブラナ科の病害虫のアブラムシの項(P233)参照
2)防除のねらい
ウイルス病を媒介するので、ウイルス病防除のため早めに防除する。
3)防 除 法
・薬剤防除
2.シロオビノメイガ
1)生
態
成虫は5∼6月から出現し、9∼10 月に発生が多くなる。幼虫による被害は秋季に多く、
ホウレンソウでは夏まきと秋まきの生育初期で被害が甚だしい。アカザ科のアカザ、イヌ
ビユ、ケイトウおよびフダンソウなどにも寄生する。
2)防 除 法
・耕種的防除
(1) 圃場周辺の雑草を除去し、近くでケイトウなどを栽培しないようにする。
3.ケナガコナダニ
1)生
態
ホウレンソウでは新芽や新葉を吸汁加害し、小さな穴をあける。展開葉はこぶ状の突起
を生じ、光沢を帯びて縮葉し、奇形化する。中心葉には小さな穴があき、穴の周辺が褐変
する。加害の激しい株は生育が著しく阻害され、場合によっては枯死する。
発生源は圃場内の残渣物などの有機物と考えられている。このため、まず土壌中で密度
が高まり、次いでホウレンソウに移り加害を始める。
2)防除のねらい
稲藁や籾殻およびホウレンソウの収穫残渣などが主な発生源・増殖源と考えられる。こ
のため稲藁や籾殻は使用を控えるとともに、収穫残渣は直ちに圃場外へ持ち出し、適切に
処分する。
3)防 除 法
・薬剤防除
- 292 -
ホウレンソウ
- 293 -
カンショ
(22)カンショの病害虫
(害
虫)
1.サツマイモネコブセンチュウ
1)生
態
キュウリのネコブセンチュウの項(P169)参照
2)防
除
法
・耕種的防除
(1)
健全な種いもを使用する。
(2)
連作を避け、ラッカセイなど寄主増殖の比較的少ない作物と輪作する(P402 の輪
作による線虫防除参照)。
(3)
堆厩肥を施し、耕土の肥培に注意する。
(4)
収穫時の被害残さは処分し、翌春の発生源を少なくする。
(5)
抵抗性品種を選ぶ。
サツマイモネコブセンチュウに対する品種抵抗性
・薬剤防除
共通資料の土壌消毒・資材消毒の項(P392)及び線虫類と防除法(P398)参照
2.ハスモンヨトウ
1)生
態
卵は 200∼300 粒ずつ円形にかためて産みつけられる。若令幼虫は、葉裏を集団で食害し、
被害を受けた葉は白くすけたようになる。幼虫は3∼4令で集団をはなれ、多発すると老
齢幼虫はカンショの葉脈や葉柄を残してほとんど食いつくしてしまい、被害が大きくなる。
2)防除のねらい
幼虫は生育が進むと薬剤の防除効果が劣り、また、日中は暗い所にかくれ薬剤がかかり
にくくなるので、初期の若令幼虫を狙って防除する。
3)防
除
法
- 294 -
カンショ
・薬剤防除
3.コガネムシ類
1)生
態
ドウガネブイブイおよびアオドウガネによる被害が大きく、その他、ヒメコガネ、アカ
ビロウドコガネも加害することが知られている。
コガネムシ類の年間の発生回数は、通常年1回であり、2∼3令幼虫で越冬する。羽化
成虫の寿命は約1月であり、その間に地表下に産卵する。第1世代幼虫は6月下旬頃から
みられる。成虫は植物上に群生し葉を食害し、幼虫は地下部の塊根を加害し品質を著しく
低下させる。
コガネムシ類は、砂壌土などの軽い土壌に発生が多い。また、堆厩肥など有機質を多用
すると発生が多い。
2)防除のねらい
植付時の粒剤土壌処理を行う。これで効果が不十分な場合、生育期(第1世代幼虫の加
害初期)にも薬剤を株元に散布する。
3)防
除
法
・薬剤防除
- 295 -
カンショ
4.ハリガネムシ類
1)生
態
本県では、クシコメツキ、クロクシコメツキ、サビキコリ類による被害が確認されてお
り、優占種はクシコメツキである。
ハリガネムシ類による被害は、幼虫が塊茎に食入し、針金を通したような食入痕をつく
るため、品質を著しく損なう。
ハリガネムシ成虫の発生は主として4月下旬から5月中旬に地上でみられ、雌は交尾を
行うと土中に潜り、地表から浅いところに産卵するとされている。幼虫期間は非常に長く、
1世代に完了するのに3∼4年を要するとされている。
2)防除のねらい
圃場内に生息する幼虫防除をねらって植付前に粒剤の土壌処理を行う。
3)防
除
法
・薬剤防除
- 296 -
スイカ
(23)スイカの病害虫
(病
1.炭
そ
害)
病
1)生
態
病原菌は糸状菌の一種で分生子層上に分生子と剛毛を生ずる。病原菌は主として菌糸、
時に分生胞子の形で被害部についたまま土中で越年する。発育適温は 22∼28℃で、キュウ
リの菌は比較的温度が低く、他のウリ類の菌は高い。第1次伝染は土中で形成されていた
分生子が降雨などの飛沫により植物体に付着して起こる。2次伝染は病斑上に形成された
分生子による。よって胞子の飛散には必ず雨を必要とするので、夏期降雨が多い年に発生
が多い。排水不良、湿潤な土地にも発生が多く、時期的には梅雨期に発生が多い。
2)防除のねらい
(1)
排水不良が本病の発生を助長するので、排水促進の対策を十分行う。
(2)
降雨による地表面からの病原菌の跳ね上がりによる感染を防ぐ。
(3)
梅雨期に発生が多いため、この時期の防除を徹底する。
(4)
罹病した果実は出荷後に腐敗することが多いので、果実に感染しないように、果実が
直接土壌に触れないなどの注意をする。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
連作をさける。
(2)
敷わら、プラスチックフィルムを行い、土粒のはね上りを防ぐ。
(3)
降雨を防ぐために、ハウスや大型トンネルを用いた雨よけ栽培を行う。
(4)
輸送中に腐敗することが多いので注意する。
(5)
誘引や整枝等の管理作業は晴天日に行う。
・薬剤防除
①
ジマンダイセン水和剤は体質によりかぶれを生ずることがあるので注意する。
- 297 -
スイカ
2.疫
病
1)生
態
病原菌は糸状菌の一種で生育適温は 28∼32℃で、スイカ、キュウリ、カボチャなどウリ
科以外は侵さない。病原菌は、病植物とともに土壌中で越冬して幼植物を侵し、2次的に
は病斑に生じた遊走子で水媒伝染する。降雨などの多湿条件で被害が著しい。畦底は湿度
が高くなるので、溝に伸びたつるや、溝近くのつるから最初発病することが多く、また梅
雨期ごろから発病が多い。排水不良、湿潤な土地および窒素過多で発生が多い。
2)防除のねらい
(1)
多湿条件で発病が多いので排水をはかり多湿をさける。
(2)
梅雨期に発生が多いため予防散布を行う。
(3)
薬剤散布は茎葉ばかりか、敷きワラや畦溝にも十分散布する。
(4)
発病後に防除する場合は、被害茎葉を圃場外に持ち出した後に散布を行う。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
無病地に植え付ける。
(2)
圃場の排水を図る。
(3)
敷きワラやプラスチックフィルムでマルチを行う。
(4)
畦溝につるを這わせない。
・薬剤防除
①
ジマンダイセン水和剤は体質によりかぶれを生ずることがあるので注意する。
3.つる枯病
1)生
態
病原菌は柄子殻および子のう殻の形で被害植物について越年し、翌年これより胞子を飛
散して伝染し、以後は病斑上に生じた胞子によりまん延し、また種子伝染もする。発育適
温は 24℃ぐらいで、湿潤な時に発生が多く、降雨は発病誘因となる。子葉や若葉は侵され
やすく、これが第2次伝染源となって茎葉の発病が多くなる。また、接ぎ木部の傷口およ
び整枝などの傷口から病菌が侵入して発病することが多い。発病は5月下旬ごろから多く
なる。
2)防除のねらい
(1)
接ぎ木部位に薬剤塗布をする。
(2)
発病前から薬剤散布を徹底する。
(3)
密植をさけ、適度に整枝して茎葉の重なりを少なくし風通しを良くする。
- 298 -
スイカ
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
圃場の排水を図る。
(2)
敷きワラやプラスチックフィルムでマルチを行う。
(3)
畦の定植部を高くし、株元の乾燥を図る。
(4)
無病苗を植え付ける。
(5)
被害茎葉は圃場外へ持ち出し処分する。
・薬剤防除
メロンのつる枯病の項(P302)参照
ただし、各薬剤の使用法については農薬ラベルを参照すること。
4.つる割病
1)生
態
キュウリのつる割病の項(P160)参照
2)防除のねらい
ユウガオ、カボチャを台木として接ぎ木栽培をする。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
接ぎ木栽培をする。
(2)
5年以上の輪作をする。
(3)
被害株は圃場外へ持ち出し処分する。
(4)
無病地に植付ける。
(5)
隣接スイカほ場からの流水を防ぐ。
(6)
石灰や完熟堆肥の施用は発病を抑制する。
・薬剤防除
土壌消毒、とくに育苗用土は必ず消毒する。
5.うどんこ病
キュウリのうどんこ病の項(P158)参照
ただし、各薬剤の使用法については農薬ラベルを参照すること。
6.緑斑モザイク病(スイカ系)
1)病
徴
葉はモザイク症状を示し、果皮にはえそ斑を生ずる。また果実内の種子の周辺が過熟状
になり赤紫色に変色する。果肉はコンニャク状に軟化する。果肉内に黄色繊維が固まって
筋ができる。
本県では、まだ発生がみられないが、被害がかなり大きいので注意する。
2)防
除
法
キュウリのウイルス病類(CGMMV)の項(P161)参照
- 299 -
スイカ
(害
虫)
1.タネバエ
1)生
態
年に4∼5回発生し、卵、幼虫、さなぎ、成虫の各態で越冬する。成虫は3月ごろから
増加しはじめ、4∼5月に最も多くなり、有機質の堆肥・油粕・魚肥などの腐敗臭気のあ
るものに誘引される。卵は湿った土の割れ目や土塊の間などに産みつけられ、4∼5日で
ふ化する。幼虫は種子を発芽時に加害して 15 日程度で蛹化する。夏期にはほとんど見られ
ないが 10 月ごろになると再び多くなり 12 月以降は減少する。
2)防除のねらい
予防に重点をおき薬剤の土壌処理をする。
3)防
除
法
・耕種的防除
堆肥、農産製造粕、魚粕などはなるべくひかえめにやり、施用後は、厚く覆土して お
く。
・薬剤防除
①
ダイアジノン粒剤3は、種子に直接ふれると薬害を起こすことがあるので注意する。
2.ウリハムシ(ウリバエ)
1)生
態
成虫態で日当たりのよい石垣やへいあるいは雑草の根元などで越冬する。4月ごろから
現われはじめ、5∼6月にかけて最も多くなり、株の根元や土中の浅い所に産卵し、10 日
∼14 日でふ化する。幼虫は土中で作物の根を食害し、約 30 日でさなぎとなる。6月上・
中旬より新成虫が現われはじめ8月上・中旬ごろ最も多くなり、10 月上旬から越冬に入り
はじめる。
ウリ類は最も被害が多く、そのほかハクサイ・ダイコン・ナス・シュンギク等を一時的
に食害する。
2)防除のねらい
防除は成虫の食害防止だけでなく、産卵防止に重点をおいて実施すべきであり、苗を寒
冷紗等で被覆するか、生育初期は薬剤散布によって防除を徹底する。
3)防
除
法
・耕種的防除
紙・寒冷紗・プラスチックフィルムのキャップで障壁をつくり成虫の飛来を防止する。
- 300 -
スイカ
・薬剤防除(成虫防除)
3.ハダニ類
1)生
態
スイカには主にナミハダニ・カンザワハダニが発生する。年間多くの世代を繰り返し高
温乾燥条件下で繁殖が盛んとなり1世代 10 日前後で卵から成虫になる。
しかし、低温条件下では成育および繁殖はおさえられる。時期的には夏と秋に発生が多
く見られるが、温室・ハウスおよびトンネルでは低温期や梅雨期でもかなりの発生がみら
れる。
2)防除のねらい
(1)
発生が多くなると完全な防除が困難となるため、早期発見、早期防除に努める。
(2)
葉裏へ寄生することが多いので、薬液が葉裏へも十分かかるように散布する。
3)防
除
法
・薬剤防除
①
抵抗性がつきやすいので同一薬剤の連用はさける。(P380 参照)
4.ネコブセンチュウ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
キュウリのネコブセンチュウ(P169)を参照
・耕種的防除
・薬剤防除
薬剤の使用については、共通資料「土壌線虫」の項(P398)を参照
- 301 -
スイカ
5.アブラムシ類
キュウリのアブラムシ類(P164)を参照
ただし、各薬剤の使用法については農薬ラベルを参照すること。
6.ミナミキイロアザミウマ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
「野菜・花きに発生する侵入害虫の生態と防除」の項(P132)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
- 302 -
メロン
(24)メロン類の病害虫
(病
害)
1.つる枯病
1)生
態
茎、葉および果実に発生し、茎では地際部や節部の病斑に小黒粒点を生じる。病原菌は
糸状菌の一種で、病斑上に柄子殻などをつくる。生育適温は 20∼24℃でウリ科植物のみを
侵す。病原菌は被害部の柄子殻などで生存し伝染源となる。柄子殻は適度な水分と温度を
得ると、分生子が内部から漏れだし、雨滴によって周囲に飛び散る。子のう胞子は空気伝
染する。また、分生子、柄子殻などの形で種子伝染もする。発育適温は 24℃くらいである。
降雨、密植など湿潤条件の時にも発生が多くなる。露地で発生が多いが、トンネルでもプ
ラスチックフィルムなど除去後多くなる。わき芽を摘芯した傷口から病原菌は侵入しやす
く発病も摘芯部に多い。また病原菌が柱頭から侵入し、果実の芯腐れをおこすこともある。
2)防除のねらい
(1)
わき芽を摘芯した部分に必ず薬剤塗布をする。
(2)
発病前から薬剤散布を徹底する。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
畦の定植部を高く株元の乾燥をはかる。
(2)
無病苗を植えつける。
(3)
排水をはかり多湿に注意する。
(4)
摘芯摘果は晴天時にする。
(5)
収穫後の茎葉は圃場外へ持ち出し処分する。
・薬剤防除
①
ジマンダイセン水和剤は体質によりかぶれを生ずることがあるので注意する。
- 303 -
メロン
2.べ と 病
1)生
態
病原菌は糸状菌の一種で分生子と卵胞子を形成する。また寄生性の分化において4つに
類別されている。病原菌は被害植物で越年し水滴によって生ずる飛沫土粒とともに下葉に
付着し、気孔より侵入して発病する。病原菌には生態種があり、侵すことがある。気温 20℃
前後で多湿、密植、肥料切れした場合に発生しやすくなる。時期的には5∼6月頃の温暖
多雨の時期に発生が多く秋期に再び多くなる。
2)防除のねらい
3)防
除
法
キュウリのべと病(P151)参照
ただし、各薬剤の使用法については農薬ラベルを参照すること。
3.炭
そ
病
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
スイカ炭そ病(P296)参照
法
ただし、各薬剤の使用法については農薬ラベルを参照すること。
4.つる割病
1)生
態
キュウリの項参照
2)防除のねらい
(1)
接ぎ木栽培を行うが、台木と穂木との親和性に注意する。
・台木の種類等については(P390)参照
3)防
除
法
キュウリのつる割病(P160)参照
ただし、各薬剤の使用法については農薬ラベルを参照すること。
5.うどんこ病
1)生
態
糸状菌の一種で子のう菌類に属し、分生子および子のうを生ずる。本病は 15∼28℃で多
発生し、30℃で抑制され、多湿になると抑制される。主として、葉に発生するが、葉柄、
茎にも発生することがある。被害部で子のう殻の形で越冬し、これから出た子のう胞子が
伝染源となる。ハウスで発生が多く、露地では、生育後期に発生が多い。また、通風不良、
多肥お場合は発生が多い。
2)防除のねらい
早期発見、早期防除に努める。
3)防
除
法
・耕種的防除
- 304 -
メロン
(1)
密植をさけ透光、通風をよくする。
(2)
窒素肥料の多用や偏用をさける。
(3)
ハウス、トンネルでは、換気をよくする。
(4)
排水をよくし、灌水過多にならないようにする。
・薬剤防除
※
同一系統薬剤の連用は避ける。(P380 参照)
6.斑点細菌病
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
キュウリの斑点細菌病の項(P163)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
①
銅剤は連用すると葉が硬化し、薬害が生じる場合がある。
7.褐斑細菌病
1)生
態
病原菌はカボチャ褐斑細菌病と同一細菌で、カボチャ、キュウリ、スイカ、シロウリ、
ヒョウタンにも寄生する。種子伝染を行い、カボチャでの発生が多い。これを台木として
- 305 -
メロン
用いると二次的に接ぎ穂のメロンに伝染する。二次伝染は風雨や管理作業などによって、
気孔、水孔、傷口などから侵入するものと考えられる。本病は茎葉に発生し葉の病斑は、
葉脈に沿って網目状に褐変し、それらが融合すると、角型病斑となり、べと病とよく似る。
2)防除のねらい
(1)
種子伝染するので、種子消毒を徹底する。
(2)
多湿時に発生まん延し易いので薬剤による予防散布をする。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
本病は多湿時に発生まん延するのでハウスでは換気に注意する。
(2)
発生地では連作をさける。
(3)
かん水はマルチ下または地中かん水とし少量ずつ回数を多くする。
(4)
発病地では夏の高温時密閉蒸込み、湛水等により伝染源をたつ。
(5)
側枝下葉の摘除は多湿時の曇雨天日をさけ、晴天日に行う。
8.灰色かび病
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
キュウリの灰色かび病の項(P153)参照
・耕種的防除
9.疫
病
台木用カボチャが疫病に侵されることが多く、地際部がくびれ、茎葉が萎凋して立枯れ症
状となる。病原菌は糸状菌の一種で、遊走子のうおよび卵胞子を生じ、生育適温は 30∼32℃
である。病原菌は、病植物とともに土壌中で越冬して、病斑に生じた遊走子で水媒伝染する。
降雨などの多湿条件で被害が著しい。排水不良、湿潤な土地で発生が多い。防除法はキュウ
リの疫病の項(P157)参照。
ただし、各薬剤の使用法については農薬ラベルを参照すること。
10.ウイルス病類
病原ウイルスはズッキーニ黄斑モザイクウイルス(ZYMV)、カボチャモザイクウイルス
(WMV)とキュウリモザイクウイルス(CMV)の3種がある。
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
キュウリのウイルス病類の項(P161)参照
法
- 306 -
メロン
11.えそ斑点病
1)生
態
葉、茎、根および果実など、植物体の各部に発病し、根を除き褐色のえそを現す。発病
の部位や症状により 10 種類に分けられ、その主なものは葉の小斑点、大型病斑、茎の鳥足
型、えそ型である。メロンえそ斑点ウイルス(MNSV)は菌類媒介性ウイルスで寄宿範
囲は比較的狭く、ウリ科植物に限定される。本ウイルスは、土壌伝染、接触伝染および種
子伝染をするが、アブラムシ伝染は行わない。伝染の主体は土壌伝染であり、土壌に生息
するオルピディウム菌によって媒介される。
2)防
除
法
・耕種的防除
(1)
土壌および堆肥等の消毒を行う。蒸気消毒の場合は 90℃、30 分以上行う。
(2)
種子は健全種子を使用し、保毒の恐れがある場合は 70℃、72 時間の乾熱消毒を行
う。
(3)
発病株は早期に抜き取り、圃場外へ持ち出し処分する。
・薬剤防除
土壌消毒・資材消毒の項(P394)参照
(害
虫)
1.アブラムシ類
1)生
態
キュウリのアブラムシ類(P164)参照
2)防除のねらい
苗床及び本ぽの生育初期に、有翅虫の侵入を徹底する。
3)防
除
法
・耕種的防除
キュウリのアブラムシ類(P164)参照
・薬剤防除
- 307 -
メロン
※
同一系統薬剤の連用は避ける(P380 参照)
2.ウリハムシ(ウリバエ)
1)生
態
2)防
除
3)防
除
スイカのウリハムシ(P299)参照
法
・耕種的防除
・薬剤防除
成虫防除
3.コナジラミ類
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項(P129)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
- 308 -
メロン
4.ミナミキイロアザミウマ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項(P132)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
- 309 -
メロン
5.ネコブセンチュウ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
キュウリのネコブセンチュウの項(P169)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
薬剤の使用法については、共通資料「土壌線虫」の項(P398)参照
- 310 -
カボチャ
(25)カボチャの病害虫
(病
害)
1.ウイルス病類
病原ウイルスはズッキーニ黄斑モザイクウイルス(ZYMV)、カボチャモザイクウイルス
(WMV)とキュウリモザイクウイルス(CMV)の3種があり、和種カボチャでは、大部
分がZYMVとWMVでCMVはほとんど発生しないが、洋種カボチャには3種のウイルス
が発生する。
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
キュウリのウイルス病類の項(P161)参照
法
ただし、各薬剤の使用法については農薬ラベルを参照すること。
2.べ
と
病
1)生
態
露地、トンネルのいずれの作型でも発生し、露地では降雨が続いた場合や排水不良な畑
にも多発し、またトンネルなどの多湿条件でも多発する。温度 20∼25℃で葉に水滴が付着
する様な時にはいつでも発生する。
2)防除のねらい
(1)
発生前からの定期的な予防散布を実施する。
(2)
肥料切れに注意し、発病の多い下葉から中葉を主体に葉の表裏に十分薬剤散布する。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
敷わらやプラスチックフィルムでマルチをする。
(2)
肥料切れにならないように肥培管理に注意する。
・薬剤防除
①
3.疫
ジマンダイセン水和剤は体質によりかぶれを生じることがあるので注意する。
病
1)生
態
葉・茎・果実を侵し、病斑部は褐色に軟腐し、果実では、表面は真っ白い菌糸が密生す
- 311 -
カボチャ
る。病原菌は糸状菌の一種で生育適温は 28∼30℃で、病植物とともに土壌中で菌糸、胞子
の形で存在し越冬して幼植物を侵し、以後病斑に生じた遊走子で水媒伝染する。発生は降
雨との関係が深いが前年の多発地でも乾燥状態が続くとほとんど発生しない。また、雨の
当たらないハウス内で発生は少なく、露地では梅雨期や秋雨の時に多い。
2)防除のねらい
(1)
排水をはかり、多湿をさけ、土粒が降雨などではね上がらないようにマルチする。
(2)
果実が直接土と接しないよう、ポリ製マットにのせる。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
クリーク水、河川水のかん水は発病の原因となるので、水道水又は井戸水を用いる
のが望ましい。
(2)
初期の病株、茎葉は圃場外へ持ち出し処分する。
(3)
水、露滴などで、はね上げ伝染をするので、敷わらかプラスチックマルチをする。
(4)
茎の地際部付近をやや乾燥ぎみとするため高畦とする。
(5)
かん水による多湿にならないように注意する。
・薬剤防除
(1)
土壌消毒、資材消毒の項(P392)参照
床土はあらかじめクロールピクリンで消毒する。
(2)
①
散
布
ジマンダイセン水和剤は体質によりかぶれを生じることがあるので注意する。
4.うどんこ病
1)生
態
病原菌は2種類あるが、普通見られるのは Sphaerotheca
fuliginea で分生子や閉子の
う殻を作る。本菌はメロン、カボチャ、ホウセンカ、コスモスなどに寄生し、生育適温は
25℃前後である。越年は被害部の閉子のう殻で越年し、発生源となり2次伝染は分生子が
風によって飛散し行う。ハウスでは冬期にも発病し分生胞子で越年する。高温、過乾燥、
多湿条件で発生が多い。ハウスでは換気不十分の場合に多発する。
2)防除のねらい
キュウリうどんこ病の項(P158)参照
- 312 -
カボチャ
3)防
除
法
・耕種的防除
キュウリうどんこ病の項(P160)参照
・薬剤防除
※
同一系統薬剤の連用は避ける。(P379 参照)
5.つる枯病
1)生
態
茎の地際部の病斑に小黒粒点を生じ、ひどくなると枯死する。病原菌は糸状菌の一種で、
病斑上に柄子殻などをつくる。生育適温は 20∼24℃でウリ科植物のみを侵す。病原菌は被
害部の柄子殻などで生存し伝染源となる。柄子殻は適度な水分と温度を得ると、分生子が
内部から漏れだし、雨滴によって周囲に飛び散る。子のう胞子は空気伝染する。また、分
生子、柄子殻などの形で種子伝染もする。発病適温は 24℃ぐらいであるが高温の時にも発
生する。降雨、密植など湿潤条件の時にも発生が多くなる。露地で発生が多いが、トンネ
ルでもプラスチックフィルムなど除去後多くなる。
2)防除のねらい
キュウリつる枯病の項(P160)参照
3)防
除
法
・耕種的防除
キュウリつる枯病の項(P160)参照
・薬剤防除
①
ジマンダイセン水和剤は体質によりかぶれを生じることがあるので注意する。
- 313 -
カボチャ
(害
虫)
1.ミナミキイロアザミウマ
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項(P132)参照
・耕種的防除
2.アブラムシ類
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
法
キュウリのアブラムシ類の項(P164)参照
・耕種的防除
・薬剤防除
3.ウリハムシ(ウリバエ)
スイカのウリハムシの項(P297)参照
ただし、各薬剤の使用法については農薬ラベルを参照すること。
- 314 -
ニンニク
(26)ニンニクの病害虫
(病
1.春
腐
害)
病
1)生
態
発生は2∼4月に多く、収穫期まで続く。病原菌は土壌中で長く生存しており、降雨時
に飛沫とともに茎葉に達し、風害や寒害等で受けた傷口から侵入する。病斑は、はじめ水
浸状になり、その後上下方向に拡大し、淡褐色となり腐敗する、さらに新葉も汚白色に変
わり腐敗し、次いで球部が軟化腐敗し枯死する。
2)防除のねらい
発生初期と風雨後の防除に重点をおく。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
連作を避ける。
(2)
圃場の排水に努め、過湿を避ける。
・薬剤防除
2.さ
び
病
1)生
態
病原菌は被害植物体上で越年し、翌年夏胞子を飛散する。4月頃から収穫期にかけて発
生するが、一般に生育末期に多発することが多い。肥料切れなどで草勢が衰えたり、多肥
の場合に発生が多い。
2)防除のねらい
肥料切れなどで草勢が衰えると被害が大きくなる。
3)防
除
法
・耕種的防除
ネギなど伝染源となるような作物を近くに栽培しない。
・薬剤防除
- 315 -
ニンニク
(害
1.ネ
ダ
虫)
ニ
1)生
態
ニンニク、ネギ、ラッキョウの外、各種の球根類、アブラナ科、野菜、ブドウなどの多
くの作物の地下部に寄生加害する。年 10 数世代をくり返し、球根や根に寄生した親ダニあ
るいは若ダニで越冬する。8∼50 日で1世代を終り地温の高低によって年間の発生世代数
が違うようである。
有機質に富んだ砂土、酸性の砂土に発生が多い。
2)防除のねらい
(1)
ダニの寄生していないものを植える。
(2)
連作をさける。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
酸性砂土に多いので石灰を施してpHを調整する。
(2)
施肥は繁殖期をさけ、作付け前の産卵期前に施す。
(3)
ネダニ寄生が比較的少ないスイカ、カボチャ、シロウリ、ダイズ、ソバ、ショウガ、
ナガイモなどと輪作する。
- 316 -
インゲン
(27)インゲンの病害虫
(病
1.炭
そ
害)
病
1)生
態
3月頃発芽とともに発生しはじめ、雨季にはいるとさや(莢)などに発生し被害が大き
い。おもに菌糸の形で種子について伝染源となり、また菌糸や胞子の形で病植物とともに
残る。どの部位にも発生するが、特にさや(莢)、種実の被害が大きい。葉では主として葉
脈部に黒色または暗褐色の病斑を形成し、茎、さやに生ずる時は褐色の病斑を作り、後に
くぼんで黒色となる。
2)防除のねらい
健全種子の使用および被害茎葉の除去が第一である。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
健全株から採種する。
(2)
連作を避ける。
(3)
有機質肥料を多用し、三要素の配合に注意し肥料ぎれしないようにする。
(4)
収穫後被害茎葉は圃場外へ持ち出し処分する。
・薬剤防除
(1)
薬剤防除
①
2.さ
ジマンダイセン水和剤は体質によりかぶれを生ずることがあるので注意する。
び
1)生
病
態
7∼8月頃から成熟期にかけて、葉に発病し、多湿、通風不良のほ場ではひどい被害を
生ずることがある。品種では炭そ病と反対に一般にわい性種が強く、つる性種の方に発生
が多い。葉では初め蒼白色の小斑を生じ、次第にふくれてさび病特有の病斑となり、赤褐
色の粉末(夏胞子)を飛散し、さらに秋には黒褐色の斑点を混在し黒褐色の粉末(冬胞子)
を飛散する。病原菌としては夏、冬胞子の形で越冬し、伝染源となるものと考えられる。
2)防除のねらい
輪作を行う。
- 317 -
インゲン
3.ウイルス病類
1)生
態
インゲンのモザイク病は現在4種のウイルスが確認されているが、そのなかでインゲン
黄斑モザイクウイルス(えそ系)による被害が増加している。幼苗期から発病し葉脈に沿
った部分にえそ症状、茎に内部からしみ出したような茶褐色の条斑をつくり、わい性とな
り枯死する。22∼26℃で最もよく病徴を現わし、つる性品種が弱い。種子伝染、汁液によ
る伝染、アブラムシでも伝染する。
2)防除のねらい
発病株の早期除去及びアブラムシによる伝染を防ぐためアブラムシの防除を十分するこ
とが大切である。
3)防
除
法
・耕種的防除
(1)
健全株から採種する。
(2)
病株の早期発見、早期除去
(3)
プラスチックシルバーマルチによるマルチを行う。
・薬剤防除
(1)
アブラムシ(モモアカアブラムシ、マメアブラムシ)の防除をする。
(2)
薬剤防除
アブラムシ類の項(P318)参照
4.青
枯
病
トマトの青枯病の項(P198)参照
5.白
絹
病
1)生
態
本病は主として地ぎわ部の茎に発生する。地ぎわ茎でははじめ白色綿状の菌糸が層状に
着生する。このため、地上部の生育は衰え、茎や葉は菌化し、ついには枯死する。病斑部
には粟粒大の黄褐色の菌核を形成する。この菌核が翌年の伝染源となる。
2)防除のねらい
(1)
高温多湿のときに発生が多い。
(2)
発病後の防除は困難であるからイネ科作物との輪作や病植物の処分、特に発病株は菌
核をつくる前に除去する。
(3)
3)防
湛水できるところでは3、4か月間湛水する。
除
法
・耕種的防除
(1)
発病ほ場では4か月湛水するか、田畑輪換する。
(2)
発病株は菌核がでないうちに早目に抜き取る。
- 318 -
インゲン
(害
虫)
1.アブラムシ類
1)生
態
主にマメアブラムシが寄生する、インゲン生育初期に高温、乾燥がつづくと多発生し、
汁液を吸収して害を出す。また、ウイルス病を媒介する。
2)防除のねらい
生育初期のアブラムシの防除を徹底する。
3)防
除
法
・薬剤防除
2.マメノメイガ
1)生
態
年2回∼3回の発生と考えられる。老熟幼虫は作物残屑の中で越冬し、7月∼8月頃成
虫が羽化してインゲンの葉柄やさやの基部に産卵する。ふ化幼虫はさやに食いこみ、食入
口から褐色の虫ふんが多量に排出するので、その被害は容易に察知できる。
2)防除のねらい
ほ場の清掃に努める。密植、過繁茂になるような栽培はさける。
薬剤は着莢の初期から数回散布する。
3.アザミウマ類
1)生
態
2)防除のねらい
3)防
除
「野菜・花きに発生する侵入害虫等の生態と防除」の項(P129)参照
法
・耕種的防除
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