日本の海運 - 公益財団法人 日本海事広報協会

日本の海運
SHIPPING
NOW
2013-2014
海運は暮らしと産業のインフラ
湾岸道路。横浜港あたりで外を眺めると整然と積み重なるコン
テナ、大きなクレーンと荷役中のコンテナ船を見下ろすことがで
きます。東京お台場、ゲートブリッジに向け出港した水上バスで、
まず目にするのは大井・青海コンテナターミナル。コンテナの荷
役が終了した大型船は、悠然と東京港を後に進んでいきます。石
油製油所見学で偶然見る機会があった停泊中のLNG船。
普段あまり目にすることのないこれらの船。実は私たちの暮ら
しで大変重要な役割を担っています。
私たちの衣食住・国内産業に必要な原材料(鉄鉱石、穀物、木材
など)
、原油、石炭、天然ガスなどのエネルギー資源のほとんどは
海外から運んでいます。私たちの身近にあるコンビニに並ぶほと
んどの品物は、元をたどれば海外からの原材料を使った製品です。
また、デパートやスーパーに並ぶ衣類をはじめ、食品、家電、家
具なども多くは海外から輸入されています。驚くべきことに、こ
暮らしと経済の原点を支える海上輸送
暮らしと経済の原点を支える海上輸送
れら日本の貿易物資の実に「99.7%」
(重量ベース)が船で運ばれて
おり
(2A円グラフ)、その量は9億6000万トン
(2012年)、世界全体
の10.1%にもなります。
(3B/2B棒グラフ)
中東から日本に向けて原油を運ぶ巨大タンカーは、海賊事件が
多発する海域を通ります。もしも、この重要な輸送ルートが断た
れることになればエネルギーをはじめとした産業や私たちの暮ら
しに大きな影響が出てきます。外航海運と私たちの生活は強くつ
ながっているのです。
国内輸送においても、長距離・大量輸送の利点を生かし船が活
躍しています。例えば北海道から首都圏へ生乳を毎日運んでいる
RORO船
(通称、牛乳船)
のおかげで、私たちは四季を通じ安定的
に牛乳や乳製品を手に入れることができます。
▲日本の豊かな生活と産業を支える外航海運
世界の暮らしと産業に欠かせない物資を輸送する重要な役割を
担っている
「船」
は、まさに、世界経済の重要なインフラなのです。
■国際貨物輸送における海上輸送と
航空輸送の割合(2011年、重量ベース)[2A]
航空輸送300万トン
(0.3%)
CONTENTS
世界 [3A]
8,238
海上輸送9億0,300万トン
(99.7%)
暮らしと経済の原点を支える海上輸送 2∼6
原油
暮らしを運ぶ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
出典:日本船主協会「日本海運の現状」
エネルギーを運ぶ・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
産業を運ぶ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
内航海運の活躍
7
日本海運の現況と課題
8
安全運航への取り組み
9
環境問題への取り組み
10
船員育成への取り組み
11
日本と世界をつなぐ日本の海運
12∼13
船のいろいろ
14∼18
海運用語集
■主要品目別海上荷動き量 単位:100万トン
原 油
鉄鉱石
石 炭
穀 物
19
10.1%
11.8%
SHIPPING NOW 2013–2014
841
石炭
776
323
その他
17.7%
日本商船隊
による
輸送量
7.1%
3,599
866
2008
出典:国土交通省海事局
2
鉄鉱石
穀物
9.7%
7,838
1,858
812
771
992
898
824
2009
1,833
3,693
819
2010
9,468
1,053
945
345
4,057
967
2011
970
1,856
原油
205
LNG
887
868
898
338
778
317
3,281
9,101
8,591
1,793
796
石油製品
■わが国の海上荷動き量が
世界に占める割合(2012年)[2B]
全 体
1,903
日本 [3B]
(液化天然ガス)
1,110
(液化石油ガス)
1,047
鉄鉱石
368
4,200
833
180
69
14
LPG
65
12
140
石炭
192
穀物
28
960
903
181
177
70
12
79
12
134
105
180
87
13
131
128
185
175
26
27
26
283
306
306
162
322
その他
915
185
26
338
974
2012
2008
(推計値)
SHIPPING NOW 2013–2014
2009
2010
2011
2012
出典:Clarksons
「SHIPPING REVIEW DATABASE」
国土交通省海事局
3
ひとつひとつの家庭に彩りを
暮らしを運ぶ
▲国際定期航路の主力として多種多様な貨物を運ぶコンテナ船
今や、衣料品店には中国製やベトナム製の衣料品が
和牛のえさとなるトウモロコシや、冷凍エビ、ウナギ、
たくさん並んでいますが、日本製の衣類でも、その原
バナナ、グレープフルーツもそうです。
料となる綿花や羊毛は全て輸入に頼っています。
住まいでは、マンションの建築用鋼材、木造家屋の
スーパーに並んでいる食料品も同様です。パン、豆
柱、フローリング、テーブル・イス、カーテンなどい
腐、ケーキ、ハム、これらの原料となる小麦、大豆、
ずれもこれらの原材料は、カナダ、米国、オーストラ
砂糖類、肉類などは、いずれも米国、オーストラリア、
リアなどの海外から船で運ばれています。
(4A帯グラフ・
ブラジルなどの海外から船で運ばれてきたものです。
4B 円グラフ)
■主な「衣・食・住」関連物資の輸入依存度
(2011年)[4A]
綿花
羊毛
米
小麦
大豆
とうもろこし
野菜
果実
肉類
砂糖類
魚介類
木材
■
「衣・食・住」関連物資の主な輸入先(2012年)[4B]
100%
100%
4%
89%
93%
100%
21%
62%
46%
74%
48%
73%
0
50
100(%)
出典:「食料需給表」平成23(2011)年度版「木材需給表」平成23(2011)年 他
(注)数値は概算値(綿花、羊毛、木材を除く)。
衣
食
その他
インド
大韓民国
17.6%
4.8%
ブラジル
5.1%
26.2%
綿花
輸入量10万t
米国
25.6%
ギリシャ
7.5%
フランス
5.9%
マレーシア
14.6%
その他
0.1%
オーストラリア
21.6%
小麦
輸入量597万t
カナダ
米国
54.1%
中国
4.9%
ロシア
4.5%
その他
13.2%
木材
衣
ウルグアイ
3.4%
その他
5.6%
ニュージーランド
羊毛
23.9%
輸入量5,336万㎥
中国
1.5%
13.8%
ブラジル
オーストラリア
23.3%
台湾
16.2%
その他
チリ
0.1%
カナダ
20.0%
輸入量1万t
カナダ
16.8% 15.0%
24.2%
オーストラリア
7.1%
中国
住
大豆
輸入量273万t
欧州
9.8% 10.4%
マレーシア
米国
64.6%
米国
11.0%
7.0%
ニュージーランド
5.2%
オーストラリア
10.5%
インドネシア
4.9%
(注)木材のみ2011年
出典:財務省貿易統計、「森林・林業白書」平成25(2013)年版
4
SHIPPING NOW 2013–2014
活動の源を供給
▲暮らしに欠かせない天然ガスを運ぶLNG船
供給はごくわずかな量で、その供給量は石炭、天然ガ
る電力、家庭の明かりや料理に使う電力は石炭、天然
スによる発電には遠く及びません。エネルギー資源を
ガスなどを用いて発電されています。私たちが普段使
十分に産しない日本はエネルギー全体の90数%を海外
っているテレビやスマートフォンにも、電力が不可欠
に依存しているのです。
です。また、乗用車はガソリン、トラック・バスは軽
原油は中近東から、石炭はオーストラリア、インド
油、船は重油で動いていますが、その元は原油です。
ネシアなどから、また、天然ガスはマレーシア、カタ
このような石炭、天然ガス、原油のようなエネルギ
ール、オーストラリアなどから、それぞれ、安定的に
ー源が途絶えたり、不足したりすると、私たちの暮ら
運んでいるのは船です。
しや産業は停止するか、著しく不便になってしまいま
外航海運は、エネルギー資源国と日本をつなぐ欠く
す。原子力発電の停止により、太陽光、風力、更には
ことのできないパイプラインといえるのです。
(5A 帯グ
地熱などの発電が見直されていますが、これらによる
ラフ・5B 円グラフ)
■エネルギー原料の輸入依存度(2010年度)[5A]
エネルギー
全 体
■エネルギー原料の主な輸入先(2011年度)[5B]
クウェート 7.0%
95%
ロシア 4.1%
その他 17.3%
サウジアラビア
原油
原 油
99.6%
イラン 7.8%
カナダ 5.1%
アメリカ 3.6%
中国 2.4%
アラブ首長国連邦
カタール 10.2%
22.5%
その他 1.5%
輸入量 2 億 0,917 万キロリットル
6.5%
インドネシア 19.4%
ロシア
石 炭
31.1%
100%
石炭
一般炭及び
( )
無煙炭
オーストラリア
61.5%
その他 15.3%
50
LNG
18.2%
ロシア 9.3%
96.9%
0
マレーシア
輸入量 1 億 7,537 万トン
ブルネイ 7.4%
LNG
アラブ首長国連邦 6.8%
インドネシア 9.5%
100(%)
出典:「エネルギー白書」2012年版
SHIPPING NOW 2013–2014
5
カタール
17.2%
オーストラリア
輸入量 8,318 万トン
16.3%
エネルギーを運ぶ
現代社会は、電車、交通信号機、病院などが使用す
日本商船隊、地球の海を跨ぐ
▲世界の港に日本製の自動車を運ぶ自動車専用船
産業を運ぶ
従来、日本の経済は、海外からの工業原料・エネル
これらの地域で現地生産された製品がもっと別の地域
ギーの調達、海外への製品の輸出によって発展してき
に輸出されたり、日本に逆輸出されるなど、貿易の形
ました。この中で、日本の海運企業は、日本の荷主企
態や地域が大きく、かつ、複雑に変化しています。
業や商社とともに、コストを抑えつつ、効率よく輸送
日本の海運はこれら海外進出した日本企業の輸送ニ
するよう努めているのです(6A円グラフ)。
ーズに応えて、グローバル輸送ネットワークを形成し、
現在では、日本企業が中国、インド、近年ではさら
世界の国々と国境を越えてつながり、世界の産業や人々
にインドネシア、タイ、ミャンマーなどの東南アジア
の生活に必要な物資を輸送する重要なインフラストラ
へと進出し、海外での現地生産が多極化しています。
クチャーとして貢献しているのです(6B円グラフ)。
■日本の地域別海上貿易量の内訳(2012年)[6A]
欧州
中南米
5.2%
2.9%
アジア
30.9%
7.8%
インド
アフリカ
7.1%
北米
■主な工業原料の輸入先(2012年)[6B]
南アフリカ
その他
2.0%
4.3%
ブラジル
28.7%
3.4%
23.8%
鉄鉱石
輸入量
1億 3,110 万t
61.6%
21.1%
米国
大洋州
7.6%
25.0%
カナダ
10.4%
出典:国土交通省海事局
インドネシア
パプアニューギニア
6.7%
その他
4.3%
インドネシア
8.3%
銅鉱
カナダ
8.5%
25.0%
チリ
48.1%
輸入量 514 万t
オーストラリア
8.6%
44.0%
ニッケル鉱
輸入量469 万t
オーストラリア
中東
インドネシア
ニューカレドニア
ロシア
2.8%
フィリピン
32.2%
その他
1.6%
原料炭
輸入量
7.148 万t
オーストラリア
52.6%
中国
5.9%
オーストラリア
17.7%
その他
2.9%
インドネシア
アルミニウム鉱
41.6%
輸入量74 万t
インド
31.9%
ペルー
15.5%
6
出典:財務省貿易統計
SHIPPING NOW 2013–2014
モーダルシフトへの期待
……基幹産業としての役割
▶スピーディーな荷役で雑貨輸送
に活躍するRORO船
度の依存から生じた道路混雑や騒音公害への対応と、
といい、社会生活においてなくてはならない重要な役
二酸化炭素排出の削減をめざす地球温暖化対策等の環
割を担っている輸送機関です。
境問題への取り組みが社会的に求められています。そ
国内の貨物輸送というとトラックや鉄道を連想する
こで、トラックが運んでいる貨物の一部を二酸化炭素
ことが多いと思われますが、島国の日本では、昔から
の排出が少なくてエネルギー効率が良く、さらに長距
船舶による輸送が盛んに行われてきました。現在では
離・大量輸送に適した内航海運や鉄道に振り替える“モ
約5,000隻の内航船が国内の貨物輸送の約4割を担って
ーダルシフト ”が推進されています。
おり、産業基礎資材
(石油製品、鉄鋼、セメントなど)
内航海運は、地球環境の保全にも大きく貢献すると
については8割以上を担い、日本の産業を支えていま
ともに、東日本大震災の際には被災地に救援物資を継
す。さらに私たちの暮らしに身近な生鮮食料や日常品
続的に輸送し、非常時における意義も再認識されるな
など、様々な物資がその製品輸送に適した船舶によっ
ど様々な面で私たちの生活を守る重要な基幹産業とし
て運ばれています。
ての役割は今後も変わることはありません。
※
また、国内の貨物輸送の分野では、トラックへの過
※は巻末「海運用語集」参照
※
■主要品目別内航輸送量(2011年度)
20.5%
■輸送機関別にみる国内貨物輸送トンキロ (2011年度)
自動車
石灰石・原油等非金属鉱物 35,869
206(313)5.8%
96(20)2.7%
セメント専用船
361(139)10.1%
油送船
航空
0.2%
(200 億トンキロ)
(10 億トンキロ)
出典:国土交通省「交通関連統計資料集」
合計
3,566
(5,302)
セメント 17,532
化学薬品・肥料・その他 9,476
10.0%
土・砂利・石材専用船
239(387)6.7%
鉄道
12.4%
自動車専用船
(1,749 億トンキロ)
4.7%
鉄鋼等金属 21,706
■内航海運の船別船腹量(2013年)
特殊タンク船
41.0%
(2,311億トンキロ)
石油製品 40,166
23.0%
内航
54.1%
5.4%
その他貨物船
1,725(3,463)
48.4%
砂利・砂・石材 4,925
石炭 2,880
輸送用等機械 7,977
2.8%
1.6%
4.6%
19.7%
939(980)26.3%
2013年3月31日現在/単位千総トン ( )内は隻数
出典:国土交通省海事局
数値については四捨五入しているため、合計と内計が一致しない場合がある。
SHIPPING NOW 2013–2014
その他 34,369
単位:100万トンキロ %は国内全輸送量に占める割合
出典:「内航船舶輸送統計総括表」平成23(2011)年度
7
内航海運の活躍
船舶で国内の港から港へ貨物を運ぶことを内航海運
国際競争力の強化は、
競争条件の均衡化から
日本海運の現況と課題
外航海運企業は、世界単一市場の中で熾烈な国際競
しかしながら、諸外国の制度は外国籍船を含むすべ
争にさらされています。このため海運主要国では、自
ての船舶を対象にしており、わが国の制度と比べ、き
国海運企業、自国籍船の国際競争力維持の観点等から、
わめて有利な条件であることから、わが国においても
税制をはじめとする様々な海運政策を講じています。
対象の拡充についての検討がなされ、2013年4月より、
特に1990年代後半から、トン数標準税制(船舶のトン
一定の要件を満たす外国籍船にも拡充されることにな
数に応じて法人税額を決める制度)
の導入が世界で相次
りました。
いだため、わが国においても2008年に日本籍船を対象
わが国外航海運企業活動の国際競争条件が、諸外国
とする同税制の導入が決定されました。
と真に同等となるための努力が続けられています。
※は巻末「海運用語集」参照
※
■世界船腹量に占める日本商船隊の割合(2012年)
(2,000総トン以上の外航貨物船)
■日本商船隊の構成の推移(各年央)
世界船腹量
10億8,120万総トン
隻数の推移
100%
IHS統計による
100総トン以上の貨物船
日本商船隊
1億2,915万総トン
約12%
全体
日本籍船
0.7%
26.0%
日本籍船
10.1%
727
2,555
98
2,428
107
119
2,672
136
2,698
150
2,742
日本商船隊65.3%
日本商船隊
92
2,623
100%
100%
2,214
2,535
全体
輸入
日本籍船
2,653
■日本商船隊によるわが国の物資の積取比率(2012年)
輸出
日本籍船
全体2,306隻
出典:IHS(旧ロイド船級協会)「WORLD FLEET STATISTICS」/国土交通省海事局
船腹量の推移
外国用船
2,808
2,848
出典:国土交通省海事局 (注)数値は暫定値。
2007
2008
2009
2010
2011
2012
718
788
1,011
1,119
1,286
外国用船
8,582
全体9,309万総トン
9,781
10,499
10,092
10,880
10,829
11,840
10,915
12,034
11,629
12,915
出典:国土交通省海事局 (注)対象船舶は2000総トン以上の外航貨物船
8
SHIPPING NOW 2013–2014
物資を安全に運ぶために
……海賊対策の更なる推進を
安全運航への取り組み
▲安全運航会議
▲船舶を護衛する護衛艦
▲
ソマリア沖・アデン湾に赴く
海上自衛隊を見送る
国民生活に欠かせない物資を安定輸送するためには、
社が船舶内に籠城設備を設置するなどの自衛措置を講
船舶の安全運航を確保しなければなりませんが、近年、
じた結果、海賊事件は2012年には75件にまで減少しま
そうした船舶や乗組員の安全を脅かす凶悪化した海賊
した。しかしながら、事件数自体は減少したものの、
事件が多発しています。特にソマリア沖・アデン湾を
ソマリア海賊の脅威は依然として高く、さらに、各国
航行中の船舶が襲撃される海賊事件は2008年以降に急
艦艇による護衛・哨戒活動が及んでいないインド洋や
増し、2010年に219件、2011年には237件に上りました。
アラビア海の全域や西アフリカ・ギニア湾周辺にまで
このような状況に対応すべく、日本の海上自衛隊を
海賊事件が拡大しており、引き続き万全な安全対策が
はじめとする各国海軍による海賊対処活動や、海運会
求められる状況にあります。
SHIPPING NOW 2013–2014
9
地球環境に優しい海運の実現に向けた取り組み
外航海運は最も地球環境に優しい輸送モードで、大
たり、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを利用
量の物資を長距離輸送します。しかし、世界経済の成
した次世代の船舶を開発するなど、様々なGHG削減
長にともない、海上輸送量が今後も増大していくこと
対策に取り組んでいます。
が想定されるため、CO2等の温室効果ガス
(GHG)の排
このほかにも、船の構造や設備などが国際基準を満
出量が増加するなど、地球環境への負荷が増大するこ
たしていないサブスタンダード船の排除や環境に優し
とが懸念されます。
い老齢船解撤(シップ・リサイクル)方法の検討なども
こうした状況を受け、船舶からのGHG排出削減対策
行われています。
については、国際海事機関
(IMO)
の場で検討され、条
「国際海運からのGHG排出削減」は、海上輸送で世界
約改正によって着実にその成果を上げており、2013年
経済を支え続けている海運業界の責務といえます。海
には他の業界に先駆け、初めて国際的なCO 2排出規制
運業界は、これからも、船舶による環境負荷の低減に
が導入されることになりました。
向けたルール作りや技術開発、様々な工夫を続けてい
また、それぞれの海運会社においても、運航スケジュ
くことによって、地球環境保全に貢献しようとしてい
ールに配慮しながら低速で航行することで燃料の消費
ます。
※
※
量とCO2の排出量を抑えるなどの、運航上の工夫を行っ
※は巻末「海運用語集」参照
環境問題への取り組み
■地球環境保護のための海運の対策
船体形状の改善
プロペラ・船尾形状の改善
省エネの推進と
地球温暖化対策
船体重量の軽減
省エネ・低公害エンジンの開発
▲太陽光発電システムを搭載したハイブリッド自動車船(商船三井)
地球に
優しい海運
タンカーの二重構造化
サブスタンダード船の排除
シップ・リサイクルの促進
■タンカーのダブルハル化
海洋環境の保全
海洋での排出物規制
シングルハル
安全な船底塗料の使用
ダブルハル
航路環境整備の促進
■1トンの貨物を1km運ぶために必要なエネルギー (2008年度)
航空(国内線)
21,072
自家用自動車
営業用自動車
原油
原油
10,734
外板
内板
■燃料タンクの二重構造化
従来型
新型
2,128
内航海運
543
鉄道
437
単位:キロジュール/トンキロ
出典:「交通関連統計資料集」
燃料タンク
10 SHIPPING NOW 2013–2014
バラストタンク 燃料タンク
世界で活躍できる優秀な海技者の確保・育成
▲シミュレータを使った訓練
(注)総乗組員24人の場合
一等航海士 二等航海士 三等航海士 甲板部員6人
船長
▲次世代の優秀な日本人船員の確保に向けて
機関長 一等機関士 二等機関士 三等機関士 機関部員6人
通信長
事務部員3人
▲日本の海運会社では外国人船員の育成に努めている
日本商船隊は、世界中の海で活躍していますが、そ
在です。海運各社は、世界各地の商船系教育機関と提
の安全運航を維持するために、優れた船員(海技者)の
携し、船員養成施設を国内外に設置のうえ、外国人船
育成は、欠かすことのできないものです。
員も将来の幹部候補とするため、その養成に力を入れ
安全・効率運航を担っていく将来の核となる優秀な
ています。
日本人船員を確保するため、日本の海運会社では、国
これからの船員には、海上現場のみならず、広く海
や教育機関と連携して、生徒・学生を対象としたガイ
運界全体でリーダーシップを発揮できる能力が期待さ
ダンスの実施や様々な広報活動を展開しており、また、
れており、定期的な事故対応訓練や最新のシミュレー
社船を使った乗船実習等、育成にも積極的に取り組ん
タを利用した研修、その他、海陸現場でのOJT等をと
でいます。
おして高い技術力に加え、グローバルな視野・思考を
一方、外国人船員も日本海運にとって欠かせない存
身に着けられるよう意識向上を図っています。
SHIPPING NOW 2013–2014
11
船員育成への取り組み
■職務体制
日本を中心とする海上物流ルート
ヘルシンキ
ストックホルム
オスロ
ゴーテボルク
サンクトペテルブルク
ヤクタート
モスクワ
チェリヤビンスク
フェリクストウ
サザンプトン
ミュンヘン
ルアーブル
パリ
ウィーン
マイアミ
マジュロ
ポナペ
タラワ
マタラニ
アリカ
スパ
アントファガスタ
カルデラ
グアヤカン
バルパライソ
ポートケンブラ
エデン
リオグランデ
イキケ
ニューカレドニア
リオデジャネイロ
セペティバ
ツバロン
ビトリア
ラウトカ
モンテビデオ
ブエノスアイレス
バーニー
ワイラ
パゴパゴ
サントス
パラナグア
ダーウィン
タウンズビル
ポートヘッドランド アボットポイント
ポートウォルコット マッケイ
ヘイポイント
ポートダンピア
グラッドストーン
ポートカビア
ブリスベーン
フリーマントル
ニューキャッスル
バンバリー
アデレード
シドニー
アードロサン
メルボルン
ジーロング
カラオ
アピア
レシフェ
サルバドル
ホニアラ
ワイハ
グルートアイランド
ベレン
パナマ運河
ブエルトカベヨ
カルタヘナ
クリストバル
ブエナベンツラ
マカパ
マンタ
ムングバ
グアヤキル
マナウス
サンアントニオ
オークランド
コロネル
ナピア
ウェリントン
プエルトマドリン
リッテルトン
ポートチャルマーズ
四面環海の日本は、海で世界中とつなが
また、原材料や部品の調達から、生産や
っています。
販売、さらには在庫保管からデリバリーま
暮らしに欠くことのできない穀物や衣料
での企業ニーズに応えるため、日本の海運
品をはじめとする生活物資、産業に欠くこ
は陸運や空運とも総合的な物流ネットワー
とのできない原油や天然ガスなどのエネル
クを形成して、暮らしや産業の維持発展の
ギー資源が、今日もまた目に見えない「ラ
向上に寄与するよう、日々努力を続けてい
イフライン」としての船で運ばれてきます。
るのです。
12 SHIPPING NOW 2013–2014
●この地図は、わが国の代表的な輸出入品目の
凡 例
主な積揚港をもとに、日本船主協会が作成し
たものです。なお、地図の経路は実際の航路
生活物資の輸入経路(穀物・羊毛・綿花・木材等)
エネルギー資源の輸入経路(石油・石炭・LNG・LPG等)
工業原料の輸入経路(鉄鉱石・原料炭・銅鉱石・ニッケル鉱石等)
国際定期航路(製品等の輸入航路)
ランドブリッジ・サービス
SHIPPING NOW 2013–2014
13
ではありません。
日本と世界をつなぐ日本の海運
トラック
ラエ
ポートモレスビー
サンファン
ロンボク海峡
ニューオーリンズ
コタバル
マカッサル
ニューヨーク
フィラデルフィア
ボルチモア
ノーフォーク
ウイルミルトン
チャールストン
サバンナ
ジャクソンビル
プエルトケツアル
アカジュトラ
コリント
グアム
タワウ
タラカン
ポンタン
バリクパ パン
セントジョン
ハリファックス
モビール
アトランタ
ヒューストン
カガヤン
ダラス
バタンガス
セブ
ゴーブ
レユニオン
エスペランス
アルバニー
サンダカン
スラバヤ
セマラン
スンダ海峡
ジャカルタ
マラッカ・シンガポール海峡
ポンチアナ
バンジェルマシン
マニラ
ビューモント
ロングビーチ
セドロス
グァイマス
ルムット
クーチン
コロンボ
シンガポール
ニャチャン
ホーチミン
ペナン
トリンコマリー
ダナン
コタキナバル
バンコク
ポートレイス
タマタブ
ケープタウン
サルダナ
リチャードベイ ダーバン イーストロンドン ポートエリザベス
ポートサラザール
オークランド
ロサンゼルス
基隆
高雄
香港
カンザスシティ
サイパン
カンファ
ロスマウエ
ルアンダ
ポートランド
エウレカ
サンフランシスコ
セブンアイランズ
デトロイト
トリード
シカゴ
クースベイ
厦門
ハイフォン
モンバサ
タンガ ダルエスサラーム
シアトル
タコマ
上海
寧波
深
ケベック
ボストン
モントリオール
トロント
バンクーバー
釜山
コルカタ
アデン湾
ソマリア沖
バブ・アル・マンデブ海峡
ホルムズ海峡
ドバイ アブダビ
ダス島
アビジャン
モンロビア
日本と世界をつなぐ日本の海運
ラゴス/アパパ
コトノウ
ロメ
テマ
ジェッダ
カラチ
マンガロール チェンナイ
モルムガオ
ムンバイ
カンドラ
スエズ運河
クウェート
ラスタヌラ
ダンマン
バーレーン
ラスラファン
ドーハ
青島
チッタゴン
ポートサイド
アバダン
バンダルホメイニ
カーグ
ブシェール
バンダルアバス
バスラ
ピレウス
タンジール
カサブランカ
ポチ
仁川
イスタンブール
大連
リスボン
マデイラ
オデッサ
チューリッヒ
ミラノ
トリエステ
マルセイユ
フォス
ジェノバ
バルセロナ
ランゲル
スチュワート
プリンスルパート
ノボシビルスク
ボストーチニー
ナホトカ
ウラジオストック
コペンハーゲン
ハンブルク
アムステルダム
ロッテルダム
アントワープ
個性豊かな船たち
船は様々な貨物を運んでいます。原油、LNG(液化
した。また、大量輸送を効率的に行うための大型化も
天然ガス)
、鉄鉱石、穀物、自動車、雑貨など、液体が
進んでいます。
あれば固体もあり、その形や大きさも千差万別。それ
今の時代のニーズに応えながら、暮らしや産業を支
ぞれの貨物の特徴に合わせて、もっとも安全で効率的
え続ける海上輸送のエキスパート。ここにご紹介した
な輸送方法を追求した結果、多彩な専用船が生まれま
のは、そんな個性豊かな船のプロフィールです。
水を積むバラストタンク 積荷スペース 荷役装置
暮らしを運ぶ船
コンテナ船
貨物船の中では最速を誇る雑貨輸送の専用船。
衣類や電気製品などの生活雑貨から危険品ま
で多種多様な貨物を国際規格のコンテナに収
納して運ぶ。コンテナ化された貨物はトラッ
クや鉄道などへの積み替えが容易なため、荷
役の迅速化とともに海陸一貫によるドア・ツ
ー・ドアの輸送を実現。国際定期輸送に画期
的な変化をもたらした。
NYK VIRGO(8,600TEU)
97,825総トン/103,207重量トン/全長338.17m
ばら積み船
船のいろいろ
穀物や石炭などのばら積み貨物を運ぶ。貨物
の流動を防ぐため、船倉上部に傾斜をつけ、
トップサイドタンクという三角形のバラスト
タンクを設置している。本船自体に荷役装置
を持つものと持たないものがあるが、穀物の
揚げ荷役には、通常、陸上に設けられたニュ
ーマチックアンローダーというバキューム方
式の荷役装置が使われる。
CAPE SAKURA
92,697総トン/181,529重量トン/全長291.98m
木材専用船
木材を専門に運ぶ船。貨物は船倉内だけでな
く甲板上にも積まれ、甲板積みの木材は両舷
に建てられたスタンションと呼ばれる支柱で
左右を押さえ、丈夫なワイヤーで固定される。
荷役施設の不備な積み地が多いため、ほとん
どの船がクレーンを装備する。積み荷役は、
筏に組んで運ばれた木材を沖合いで積み取る
FRAGRANT ISLAND
方法が一般的である。
19,885総トン/33,362重量トン/全長177m
チップ専用船
製紙原料となるチップ(木材を砕いた小片)
を専門に運ぶ。チップは比重がきわめて小さ
いため、船倉容積を最大限にして大量に積み
込むとともに、バラストスペースを船底部に
設けている。積み荷役は、陸上のニューマー
(空気圧送式荷役装置)で行われ、揚げ荷役
には、本船装備のベルトコンベヤーとバケッ
トクレーンが使用される。
14 SHIPPING NOW 2013–2014
SHIN CHUETSU
22,601総トン/25,331重量トン/全長162.0m
暮らしを運ぶ船
冷凍運搬船
野菜や果物、冷凍肉、鮮魚などの生鮮食品を
低温輸送する。野菜や果物のように常温に近
いものからマイナス 50 ℃ という超低温が必
要な冷凍マグロまで、さまざまな条件に対応
できるよう船倉内の温度は広範囲に調整が可
能。温度も適切にコントロールできる。船倉
は中甲板で何層かに仕切られ、輸送温度の異
なる貨物を積み分けて運べる。
CROWN GARNET
10,519総トン/10,332重量トン/全長152m
エネルギーを運ぶ船
原油タンカー
原油を運ぶ専用船。複数の区画に仕切られた
タンク状の船倉を持ち、事故時の原油流出を
最小限に抑えるため船側と船底を二重構造化
している。荷役用のパイプラインとポンプを
持ち、積み荷役には陸側のポンプを、揚げ荷
役には本船装備のポンプを使う。50万重量
トンを超す大型の船も出現したが、現在は30
万重量トン級のVLCCが主力。
ENEOS TOKYO
160,062総トン/300,976重量トン/全長333m
LPG船
船のいろいろ
プロパンやブタンなどを液化した LPG(液化
石油ガス)を運ぶ。輸送方式には常温で加圧
して液化する加圧式、常圧で冷却して液化す
る冷却式及び半冷加圧式があるが、大型 L P
G 船はすべて冷却式。防熱材はばら積み船の
ような船倉内に防熱を施した低温 L P Gタン
クを設置している。輸送中に気化したガスを
液化する再液化装置も備えている。
SUNNY VISTA
47,914総トン/55,154重量トン/全長230m
LNG船
天然ガスをマイナス162℃の超低温で液化し
たL NG(液化天然ガス)を運ぶ。超低温輸送
のための特殊な材質のタンク、荷役時の事故
を防ぐ緊急遮断装置、輸送中に気化した天然
ガスを燃料として使うタービンエンジンなど、
先端技術を駆使したハイテク船。船価が高い
ため、特定の天然ガス輸入プロジェクトの専
用船として建造されることが多い。
MUSCAT LNG
118,219総トン/77,351重量トン/全長289.5m
石炭専用船
石油代替エネルギーとして近年比重が高まる
電力用石炭の効率輸送に活躍する専用船。国
内の石炭専焼発電所の専用バースサイズに合
わせた船型や喫水、バースに備え付けられた
揚炭機の可動範囲に合わせたハッチ構成など、
日本の発電所向けの輸送に最適な船として設
計されている。現在、日本とオーストラリア
SAKURA WAVE
などを結んでいる。
SHIPPING NOW 2013–2014
48,950総トン/88,299重量トン/全長229.93m
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原料を運ぶ船
鉱石専用船
鉄鉱石を専門に運ぶ船。鉄鉱石は比重が極端
に大きいため、積荷スペースを狭くし、船体
中央部に積荷を高く積み上げられるようにな
っている。戦後、日本の製鉄業の発展にとも
なって登場し、スケールメリットの追及から
タンカーに次いで大型化した船種。最大級の
ものでは30万重量トンに及ぶものもある。
NSU INSPIRE
132,868総トン/250,813重量トン/全長329.95m
鉱炭兼用船
製鉄原料の石炭と鉄鉱石を運ぶ。鉱石専用船
同様、大型化が進んだ船種で、最近は製鉄原
料輸送の主力。鉄鉱石と比べてはるかに比重
の小さい石炭も運ぶため、鉱石専用船より積
荷スペースは広い。石炭の場合は全船倉に満
載されるが、比重の大きい鉄鉱石の場合は船
倉 1つおきに積み込むジャンピングロードと
いう方法を採用する場合もある。
FIRST EAGLE
90,411総トン/180,199重量トン/全長288.93m
ケミカルタンカー
船のいろいろ
プラスチックや化学繊維の原料となる石油化
学品や燐酸、硫酸など液状の化学品を運ぶ。
多種類の貨物を積み合わせるため、数多くの
タンクを持ち、タンクごとに独立したポンプ
とカーゴラインを備えている場合が多い。腐
食や貨物同士の汚染を防ぐため、ステンレス
を用いたり、特殊なコーティングを施すなど、
タンク内も工夫されている。
CHEMROUTE BRILLIANT
16,360総トン/25,594重量トン/全長159.03m
製品を運ぶ船
自動車専用船
自動車を専門に運ぶ船。貨物となる自動車を
専門のドライバーが運転し、船側のランプウ
ェイから船内に積み込む。船内は何層ものデ
ッキに分かれ、バスなど大型車両を積むため
のデッキは車高に合わせて上下する。全体に
屋内駐車場のような構造をしている。最大級
のものでは13層ものデッキを持つ6,500台
LONDON HIGHWAY
積みの大型船もある。
55,600総トン/17,765重量トン/全長199.94m
重量物船
プラント部品や大型建設機械など重量物を専
門に運ぶ。構造は一般貨物船に似ているが、
重い貨物を自力で積み降ろせるよう、強力な
荷役装置を備えている。船倉内に入らない大
きな貨物は甲板上に積んで運ぶので、甲板は
強固に建造されている。重量物の荷役中に船
体が大きく傾斜するのを防ぐため、大容量の
バラストタンクを両舷に設置している。
16 SHIPPING NOW 2013–2014
KAMO
8,145総トン/9,433重量トン/全長120m
国内貨物を運ぶ船
一般貨物船
鋼材、機械、家具、食料、衣類などのばら積
み貨物を運ぶ、最もオーソドックスな内航貨
物船。船倉内に雑貨を混載し、さまざまな貨
物に対応できるよう汎用性のある構造になっ
ている。699総トン型、499総トン型 、199
総トン型が輸送効率の高い船型として多く建
造されている。
豊竜丸
499総トン/1,600重量トン/全長74.86m
油タンカー
石油製品を運ぶ油送船。重油用の黒油船(ダ
ーティー・タンカー)とガソリン、ナフサ、
灯油、軽油用の白油船(クリーン・タンカー)
に分類される。黒油船はタンク内が鉄板のま
まなのに対し、白油船はコーティングされて
いるのが特徴。タンク内は壁で仕切られ、船
体が揺れても、油が片側に移動しないようバ
鶴宝丸
3,869総トン/4,999重量トン/全長104.94 m
ランスが保たれている。
ケミカルタンカー(内航)
船のいろいろ
合成樹脂やポリウレタンなどの原料となる石
油化学品をはじめ、液体化学品を専門に運ぶ
船。油タンカーの構造と似ているが、タンク
内を細かく区切っているのが特徴である。有
害な液体物質を運ぶことが多いため、タンク
内をコーティングしたり、ステンレス製のタ
ンクを用いるなど、腐食や汚染防止、環境保
のじぎく
499総トン/1,199重量トン/全長64.8m
全が考慮されている。
LPG船(内航)
LPG(液化石油ガス)を国内輸送するための
専用船。冷却式の外航LPG船に対して、内航
LPG船は常温で加圧して液化する加圧式を採
用。球形または円筒形の圧力タンクを持つ。
常温で輸送できるので断熱材は持たない。加
圧式はタンクの大型化に限界があるため、小
型船に限られるが、貨物の取り扱いは冷却式
よりはるかに容易である。
第三十二雄豊丸
749総トン/960重量トン/全長67.9 m
セメント専用船
工場でつくられたセメントをばら荷の状態で
全国の流通基地まで運ぶ。軽い粉末であるセ
メントの特徴を利用し、積み降ろしには空気
圧で搬送する方式がとられ、そのための荷役
装置を装備している。流通基地で荷揚げされ
たセメントはセメントサイロに格納され、そ
の後、袋詰めまたはばら荷のままタンクロー
リーに積まれて搬送される。
SHIPPING NOW 2013–2014
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第六芙蓉丸
3,610総トン/5,477重量トン/全長98.02m
国内貨物を運ぶ船
石灰石専用船
鉄鋼業界やセメント業界向けの石灰石を専門
に運ぶ。ばら積み船のような構造の船もある
が、最近はセルフアンローダー型の船型が増
えている。これはベルトコンベヤー方式の揚
げ荷役装置を船底部に持ち、ホッパー状の船
倉から落とされた石灰石をそのまま陸上に運
び出す方式で、荷役に人手がほとんどかから
ないという特徴を持つ。
名友丸
4,734総トン/7,400重量トン/全長105.63m
RORO船
船の前後のランプウェイからトラックやトレ
ーラー、フォークリフトによって直接貨物を
積み降ろしするRORO(ロールオン/ロール
オフ)方式の貨物船。クレーンで荷役する方
式はLOLO(リフトオン/リフトオフ)方式
と呼ばれる。主に定期航路に就航し、雑貨輸
送に活躍。荷役の迅速化とともにモーダルシ
フトの受け皿としても注目される。
ほっかいどう丸
11,386総トン/6,890重量トン/全長173.08m
自動車専用船(内航)
船のいろいろ
自動車を専門に運ぶ船。専門のドライバーが
自動車を運転して船内に積み込む。船内は床
を広くとり、5層以上の多層構造になってい
る。バスやトラックなど車高の高さに合わせ
て床の一部を上下することもできる。海上雑
貨輸送の需要増加にともない、トレーラーな
どの大型車両を同時に運べる構造の船も増え
しゃとるえーす
8,280総トン/5,271重量トン/全長161.52m
ている。
プッシャーバージ
貨物を積むバージ(はしけ)とそれを押すプ
ッシャー(押船)を組み合わせた水上輸送シ
ステム。バージの船尾に造られたノッチ(切
り欠き部)にプッシャーの船首部分をはめ込
んで連結し、プッシャーの推進力でバージを
運航する。波やうねりのある沿岸でもある程
度活動できるように改良が加えられ、近年、
プッシャー:鉱翔丸 全長24m/幅15.72m
石灰石バージ:鉱翔 全長117.4m/幅21m
大型化も進んでいる。
レジャーを楽しむ船
外航客船
レジャークルーズのための客船。5 ∼6層に
分かれたデッキには、客室やレストラン、ラ
ウンジ、シアターなど贅沢な設備が整えられ、
航海中はショーやイベントなどが開催
される。単なる移動手段を超えて、
船旅そのものを楽しむために、設
備とサービスの充実をめざす。新
しい時代のレジャーとして人気を高めている。
18 SHIPPING NOW 2013–2014
飛鳥Ⅱ
50,142総トン/全長241m
【サブスタンダード船】
構造・設備・人員等の面で、国際条約による安全基準に達して
いない船舶。海上交通の安全からも海洋汚染防止の観点からも、
国際海運市場から排除する必要がある。また、寄港国(港が所
海運
用語集
在する国)
は、入港船舶に対し、船舶設備や船員の資格等につい
てIMO
(国際海事機関)
などが定めた国際条約に適合しているか
検査を行うことが認められており、これをポートステートコン
トロール(PSC)という。このPSCによって、サブスタンダード
船については、条約の基準を満たすまで改善措置(場合によっ
ては航行停止)
をとらせることができる。
【シップ・リサイクル】
【日本商船隊】
日本の外航海運会社が運航する船隊全体を指し、日本籍船と外
国船主から用船した外国籍船によって構成される。近年は、日
本商船隊全体に占める日本籍船の割合は減少し、隻数で5.3%、
トン数で10.0%(2012年)となっている。
【トンキ口】
輸送トン数に輸送距離 (km) を乗じた単位で、船舶など輸送機
関の活動量を表すために用いる。
【モーダルシフト】
地球環境問題や道路混雑、労働力問題など、制約要因が顕著に
なってきたトラックから低公害で効率的な大量輸送機関である
船舶などへ輸送モードをシフトさせることをいう。
老朽船を解体し、資源を再利用すること。船舶は解撤による鋼
材や部品の再利用/再使用率が90%以上と、自動車や家電と比
較しても極めて高く、解徹の促進は、海洋環境の保全とともに
資源の有効活用という点でも意義が大きい。
【当直】
24時間休みなく運航される船舶では、航海士と部員
(甲板手)の
ペアによって構成される当直員が交替で船橋に立ち、運航状況
や周囲の船舶の動きなどを監視する。これが航海当直で、通常
は 1日を4時間ごとの6 つの時間帯に分け、一等から三等の各航
海士が甲板手1名と組み、それぞれが4時間当直して8 時間休む
というサイクルで当直を行う。同様に機関室の当直も機関士と
部員によって行われるが、最近では自動運転され、機関当直を
行わない船も多くなっている。
00:00
12:00
従来のトラック輸送
■当直体制
三航士
二航士
甲板手C 甲板手B
地球環境問題/道路混雑
労働力不足/エネルギー問題
工場
モーダルシフトの
推進
08:00
20:00
消費地
一航士
甲板手A
04:00
16:00
【総トンと重量トン】
内航海運
地球環境問題/道路混雑緩和
省人化対策/省エネ効果
海運
豆知識
総トン数は、船舶の大きさ(容積)を表す単位。重量トン数は、
満載喫水線の限度まで貨物を積載した時の全重量から船舶自体
の重量を差し引いたトン数であり、燃料・水・食料などの重量
を含むが、船が積める貨物の重量を示す目安となる。
∼船の大きさ∼
原油を運ぶタンカーは20∼30万トン級のVLCC(Very Large
Crude Carrier)と呼ばれるタンカーが中心となっています。
就航の多い26万tクラスのタンカーで全長は約330m。東京タ
ワーとほぼ同じ長さです。
船員になるには
船員になるには、様々な方法があります
が、外航船員になるためには、中学校卒業
後に商船高等専門学校へ進学する道と、高
校卒業後に専門部のある大学へ進学する道
● 原油タンカー(約330m)
が一般的です。資格を得て、乗船すると航
海士・機関士としてスタート。乗船履歴を
積みながら、上のクラスへ試験にパスして
いくと、やがて船長・機関長として船を運
航するチャンスがやってきます。
● 大型バス(12m)
● 東京タワー(333m)
また、国内の貨物輸送に携わる内航船員
になるためには、別の教育機関があります。
● 新幹線のぞみ16両編成(400m)
SHIPPING NOW
2013-2014
●協力●
(一社)日本船主協会
http://www.jsanet.or.jp
(公財)日本海事センター
http://www.jpmac.or.jp
●編集・発行●
(公財)日本海事広報協会
http://www.kaijipr.or.jp
〒104-0043 東京都中央区湊 2-12-6
TEL03-3552-5033 FAX03-3553-6580