中央家畜衛生通信 第 66 号 平成 25 年 11 月発行 岩手県中央家畜保健衛生所・岩手県中央家畜衛生協議会 目 次 高病原性鳥インフルエンザの防疫対策の強化を! ・・・・・・・・・・ 1 冬期における飼養管理のポイント ・・・・・・・・・・・・ 2 「豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針」の全部変更について ・・・ 3 牛舎内の石灰消毒を実施しましょう! ・・・・・・・・・・4 牛 RS ウイルス病にご注意を! ・・・・・・・・・・ 5 高病原性鳥インフルエンザの防疫対策の強化を! 秋が深まり、今年も渡り鳥の本格的な飛来シーズンを迎えています。 これまで日本で発生した高病原性鳥インフルエンザは、感染経路のはっきりし た原因は究明されていないものの、渡り鳥等の野鳥によって国内に持ち込まれた 可能性が高いと言われています。今年に入ってからも、中国や北朝鮮等の近隣諸 国において本病が散発的に発生しています。 これからのシーズン、次の事項に注意して高病原性鳥インフルエンザの防疫対 策の強化をお願いします。 1 「飼養衛生管理基準」を遵守すること。 2 特に次の事項を徹底すること。 (1)野鳥の侵入防止対策及びねずみの駆除対策を徹底すること。 (2)飼養家きんの健康観察を毎日行い、異常が確認された場合は直ちに家畜 保健衛生所に通報すること。 (※夜間・休日の場合は下記にある当所の携帯電話へ連絡願います。担当者 の携帯電話につながります。) 当所の携帯電話番号:090-8926-2732 -1- ※※休日対応※※ 冬期における飼養管理のポイント 家畜は冬の寒さには比較的耐えられるといわれていますが、畜種や年齢によっ て差があり、その対策が不十分だと病気の発生や生産性の低下につながることが あります。今年の冬は例年より寒くなることが予想されていますので、以下の点 に気を付けて寒い冬を乗り切りましょう。 1 牛の冬期管理のポイント (1) 子牛は寒さに弱く、体感温度を下げるすきま風への対策が重要です(風 速 1m/秒で 4℃低下)。体感温度が低いと呼吸器病や下痢の発生要因とな ります。体に風が直接当たらないようにしましょう。 一方で、保温のために畜舎内を閉めきってしまうと、アンモニアやほこ り、牛の呼気から出る二酸化炭素等で畜舎環境が悪くなります。暖かい日 中に窓やカーテンを開ける等、十分な換気に努めてください。 (2) 肥育牛では、寒さのため飲水量が減って尿が濃くなり尿石症になりやす い時期なので注意が必要です。また、寒い時期は体温を作るためエネルギ ーが余分に必要になります。他の時期と同様の栄養管理では不足分を考慮 しないとカロリーが不足し、身になるべきタンパク質成分がアンモニアと して尿に排泄されるため尿 pH が上昇して尿石を 形成しやすくなります。冬場はトウモロコシ圧片 500g~1kg の増量が推奨され、固形のミネラル 製剤の設置は必須です。 2 豚の冬期管理のポイント (1) 温度管理は豚舎内の気温だけでなく、豚が実際に感じる体感温度が重要 です。床材、断熱、すきま風によって体感温度は大きく左右されます。低 温ストレスは肺炎の発生要因になりますので、戸の内側にカーテンを張 る、スノコ下の吹き込み口など風が入るところに麻袋を垂らすなどの対策 が必要です。 (2) 適正な温度管理だけでなく、湿度管理も重要です。一般的には 50~ 70%、離乳直後 3 週間の子豚では 60~80%が目標です。同じ気温でも 湿度が 10%下がると体感温度は 5℃下がると言われていますので、適正 な湿度を保ちましょう。 (3) 離乳後の子豚はいろいろなストレスを受け、低温に対して非常に敏感で す。離乳直後 1 週間は 28~30℃に保ち、 その後 1 週間に 2℃ずつ下げて最終的に 20~22℃になるようにコントロールし ましょう。温度×湿度=2,000 が目安の ひとつです。 次頁に続く -2- 3 鶏の冬期管理のポイント (1) 肉用鶏では、代謝が最も盛んになるといわれている 18℃前後に鶏舎内 の温度を保ちましょう。鶏舎温度が下がると飼料をたくさん食べることで 熱産生を行い、対応しようとしますが、それ(18℃)以上に温度が低下 すると熱産生が追い付かず体温も低下し、凍死につながってしまいます。 (2) 採卵鶏では、温度の急変が産卵率の低下を起こします。日中温められた 鶏舎内の熱は夜間に流出し、空気を冷やします。カーテンは日中の太陽熱 を逃がさず保持するのに役立つだけでなく、冷たい風が鶏舎内に吹き込む のを防いでくれます。鶏の体感温度を下げないように注意しましょう。 (3) 換気が悪いとアンモニアガスの発生により産卵 低下を起こすだけでなく、呼吸器病の発生を増加 させます。暖かい日中に換気を行いましょう。 <衛生課> 「豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針」の 全部変更について 日本では、平成 18 年3月に「豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針」を 策定、公表し、豚コレラワクチン接種を全面的に中止し、平成 19 年4月に豚コ レラ清浄国となりました。今回、同指針の見直しが行われ、平成 25 年6月 26 日付けで公表されました。主な変更内容は、以下のとおりです。 ①患畜・疑似患畜の判定基準を明確化 患畜・疑似患畜の迅速な判定を可能とするため、遺伝子検査を導入しました。 ②発生農場における 24 時間以内の殺処分と 72 時間以内の埋却 口蹄疫及び鳥インフルエンザと同様に、迅速なまん延防止措置について、明 記されました。 ③移動制限区域及び搬出制限区域の設定 移動制限区域は発生農場を中心として半径3Km、搬出制限区域は半径3~ 10Km と設定されることとなりました。 豚コレラは、近隣の国々をはじめ、 世界で発生が継続しています。農場 への侵入防止対策の徹底と、異常が 認められた場合の早期通報を、今後 もよろしくお願いします。 <防疫課> -3- 牛舎内の石灰消毒を実施しましょう! 牛の生産性向上対策において飼養環境の改善は大変重要です。特に消毒等による 環境改善は、下痢症や呼吸器病の予防対策を実施するうえで、ワクチン接種等と伴 に、対策の効果を大きく高めることから、定期的な牛舎内石灰消毒が推奨されてい ます。 しかし、ハケなどを用いた人力での石灰乳塗布は、作業時間が長いこともあり、 一部の農家で行われているに過ぎない状況です。 今回、盛岡地方農業農村振興協議会(畜産振興部会)では、石灰乳を塗布できる 動力噴霧機(石灰消毒機)を購入し、牛舎内石灰消毒の実証展示を 10 月に滝沢村 通年預託施設、八幡平市及び紫波町の農家で、市町村・農協・農家併せて 38 名の 出席を得て開催しました。約 20 頭規模の搾乳牛舎の石灰乳塗布を 2 時間たらずで 塗り終わるのを見た農家の方からは、 「あまり時間がかからない。」、 「結構、簡単で すね。」と好評でした。 盛岡地方農業農村振興協議会では、本機を貸出しますので、牛舎内石灰消毒を実 施する際には、当所まで御相談願います。 石 灰 乳 塗 石灰乳塗布後 布 <衛生課> 風 景 石灰乳消毒機械 -4- 牛 RS ウイルス病にご注意を! 牛 RS ウイルス(BRSV)病は、呼吸器症状を主徴とする急性熱性伝染病です。 BRSV は、主に子牛(1~5 カ月齢)に感染し肺炎を引き起こしますが、昨年末、 青森県では 70 頭を飼養する酪農場において BRSV 及び Mannheimia haemolytica※の混合感染によって成牛 20 頭が死亡した事例が確認されました。 県内においても6例の発生がありました。 ➢主な発生要因 ①導入牛によって BRSV が農場に持ち込まれる例が散見されます。 ②BRSV が単独で感染した場合、発症2~3週間で回復しますが、他のウイル ス、細菌、マイコプラズマ等との混合感染で重症化します。 ③年間を通して発生しますが、飼育環境の変化(気温の変動、長時間の輸送、集 団飼育)によるストレスが発生の引き金になります。特に冬場は寒暖の差が激し く、免疫機能が低下するため好発するとされています。 ➢症状 発熱(40~42 度)、発咳、鼻汁の漏出、流涎等の症状に加え、頭頚部及び背部 の皮下気腫等を伴うことがあります。死亡例の肺は肺気腫(写真 1・2)を呈し、 退縮不全となります。 ➢対策 飼養牛へのワクチン接種が有効です。導入牛が本病ウイルスの感染源となるた め、導入牛のワクチン接種と導入後2~3週間の隔離及び観察が重要です。また、 細菌やマイコプラズマの混合感染による重症化を防ぐため、飼養衛生管理基準を遵 守しましょう。 <病性鑑定課> ※Mannheimia haemolytica 牛に肺炎を起こす細菌で、健康牛の気道にも常在しています。飼育環境の変化によるストレスやウイルス感 染によって個体の免疫機能が低下した場合、菌は増殖し産生した毒素によって肺の組織に障害を起こします。 (写真1)牛 RS ウイルス病及び Mannheimia haemolytica 混合感染例の肺 (写真2)写真1の四角部位拡大図 顕著な肺気腫 < お問合せ先 > ○岩手県中央家畜保健衛生所 電話:019-688-4111, FAX:019-688-4012 ホームページ:http://www.pref.iwate.jp/info.rbz?ik=3&nd=707 「岩手県中央家畜」で検索してください ○沿岸広域振興局農林部宮古農林振興センター 電話:0193-64-2214, FAX:0193-64-5631 ○岩手県中央家畜衛生協議会 電話&FAX:019-688-4015 -5-
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